(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166263
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】人工衛星、宇宙データセンタ、事業装置、コンテンツ配信事業装置、ネットワーク事業装置、サーバ事業装置、宇宙データセンタ事業装置、地上設備、低軌道ブロードバンドコンステレーション事業装置、オンデマンドコンテンツ配信方法、およびライブビデオコンテンツ配信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H04B7/185
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153558
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2023548421の分割
【原出願日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/034402
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
(57)【要約】
【課題】衛星通信によりオンデマンドコンテンツ配信を合理的に実現したい。
【解決手段】人工衛星は、記録装置43と再生中継装置72と送信装置74とを備える。記録装置43は、地上に存在するアップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が通信装置45を経由して記録装置43にアップロードした識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータを配信要求データベース61に格納する。再生中継装置72は、配信指令に基づいて、記録装置43に格納されている識別子付コンテンツを示すデータを送信信号に変調する。送信装置74は、対象配信要求を示すデータを記録装置43にアップロードしたアップロード装置に対して、対象配信要求に対応する識別子付コンテンツとして再生中継装置72が変調した送信信号を送信する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に存在する少なくとも1つのアップロード装置から構成されるアップロード装置群を構成する各アップロード装置と直接的にまたは間接的に通信する人工衛星であって、
識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータをデータベース化した配信要求データベースを格納する記録装置と、
計算機と、
受信装置と送信装置と処理装置と再生中継装置とを具備する通信装置と
を備え、
前記アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバと、ユーザ機器とのいずれかであり、
前記人工衛星は、前記アップロード装置群を構成するいずれかのアップロード装置である対象アップロード装置と間接的に通信する場合において、ゲートウェイを介して前記対象アップロード装置と通信し、
前記記録装置は、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が前記通信装置を経由して前記記録装置にアップロードした識別子付コンテンツを示すデータを格納し、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が前記通信装置を経由して前記記録装置にアップロードした識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータを前記配信要求データベースに格納し、
前記計算機は、
前記配信要求データベースに含まれている配信要求である対象配信要求を示すデータを前記記録装置にアップロードしたアップロード装置を選択アップロード装置として選択し、
前記対象配信要求に対応する識別子付コンテンツを示すデータを、前記再生中継装置を経由して配信する配信指令を前記通信装置に対して与え、
前記受信装置は、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置がアップロードした識別子付コンテンツを示すデータを受信し、
前記処理装置は、前記受信装置が受信したデータを、前記記録装置において格納可能な形態のデータに変換して前記記録装置に格納し、
前記再生中継装置は、前記配信指令に基づいて、前記記録装置に格納されている識別子付コンテンツを示すデータを送信信号に変調し、
前記送信装置は、前記選択アップロード装置に対して、前記対象配信要求に対応する識別子付コンテンツとして前記再生中継装置が変調した送信信号を送信する人工衛星。
【請求項2】
前記アップロード装置群を構成するエッジサーバである対象エッジサーバは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを直接的にまたは間接的に請求項1に記載の人工衛星が備える記録装置にアップロードし、
前記人工衛星は、前記記録装置にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付コンテンツを配信するオンデマンドコンテンツ配信方法。
【請求項3】
前記アップロード装置群を構成するエッジサーバである対象エッジサーバは、低軌道ブロードバンドコンステレーションから、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から前記低軌道ブロードバンドコンステレーションが収集した配信要求を示すデータを低軌道衛星収集データとして受信し、受信した低軌道衛星収集データを直接的にまたは間接的に請求項1に記載の人工衛星が備える記録装置にアップロードし、
前記人工衛星は、前記記録装置にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付コンテンツを配信するオンデマンドコンテンツ配信方法。
【請求項4】
請求項1に記載の人工衛星は、静止衛星であり、静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備え、
低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星は、前記GEO-LEO間通信装置を備え、
前記人工衛星と、前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、静止衛星と低軌道衛星との間における通信回線であるGEO-LEO間通信回線によって通信可能に接続しており、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを前記GEO-LEO間通信回線を経由して前記人工衛星が備える記録装置にアップロードし、
前記人工衛星は、前記記録装置にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付コンテンツを配信するオンデマンドコンテンツ配信方法。
【請求項5】
経度方向に分散配置されている3機以上の請求項1に記載の人工衛星から構成される静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとから成る宇宙データセンタであって、
前記静止衛星群を構成する各人工衛星が具備する記録装置はエッジサーバであり、
前記静止衛星群を構成する各人工衛星は、静止衛星であり、赤道上空において隣接する人工衛星の間において双方向通信を実行するGEO-GEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群を構成する3機以上の人工衛星は、赤道上空において円環状通信網を形成しており、
前記静止衛星群を構成する少なくとも1機の人工衛星は、静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備え、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星は、前記GEO-LEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群と、前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、前記GEO-LEO間通信装置を用いて通信し、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、前記静止衛星群を構成する人工衛星が備える記録装置に収集したデータをアップロードし、
前記静止衛星群と前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは請求項4に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実施する宇宙データセンタ。
【請求項6】
経度方向に分散配置されている3機以上の請求項1に記載の人工衛星から構成される静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとから成る宇宙データセンタであって、
前記静止衛星群を構成する各人工衛星は、静止衛星であり、赤道上空において隣接する人工衛星の間において双方向通信を実行するGEO-GEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群は、赤道上空において円環状通信網を形成しており、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションにおいて、複数の軌道面が経度方向に分散配置されており、
前記複数の軌道面の各軌道面において低軌道を周回している各低軌道衛星が各低軌道衛星の前後を飛翔している各低軌道衛星と双方向通信を実行することによって円環状通信網が形成されていること、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が他の軌道面と軌道間通信を実行することによって、前記低軌道ブロードバンドコンステレーションにおいてメッシュ状通信網が形成されており、
前記静止衛星群を構成する少なくとも1機の人工衛星は、静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備え、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星は、前記GEO-LEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群と、前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、前記GEO-LEO間通信装置を用いて双方向通信を実行し、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星はエッジサーバを備え、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、前記静止衛星群を構成する人工衛星が備える記録装置に収集したデータをアップロードし、
前記人工衛星と前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは請求項4に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実施する宇宙データセンタ。
【請求項7】
地上に存在する少なくとも1つのアップロード装置から成るアップロード装置群を構成する各アップロード装置と直接的にまたは間接的に通信する人工衛星であって、
識別子付ライブビデオコンテンツに対する配信要求を示すデータをデータベース化した配信要求データベースを格納する記録装置と、
計算機と、
受信装置と送信装置と処理装置とを具備する通信装置と
を備え、
前記アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバと、ユーザ機器とのいずれかであり、
前記人工衛星は、前記アップロード装置群を構成するいずれかのアップロード装置である対象アップロード装置と間接的に通信する場合において、ゲートウェイを介して前記対象アップロード装置と通信し、
前記記録装置は、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が前記通信装置を経由して前記記録装置にアップロードした識別子付ライブビデオコンテンツに対する配信要求を示すデータを前記配信要求データベースに格納し、
前記計算機は、
前記配信要求データベースに含まれている配信要求である対象配信要求を示すデータを前記記録装置にアップロードしたアップロード装置を選択アップロード装置として選択し、
前記対象配信要求に対応する識別子付ライブコンテンツを示すデータを、前記処理装置を経由して配信する配信指令を前記通信装置に対して与え、
前記受信装置は、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置がアップロードした識別子付ライブビデオコンテンツを示すデータを受信し、
前記処理装置は、前記受信装置が受信したデータを送信信号に変調し、
前記送信装置は、前記選択アップロード装置に対して、前記対象配信要求に対応する識別子付ライブビデオコンテンツとして前記処理装置が変調した送信信号を配信する人工衛星。
【請求項8】
前記アップロード装置群を構成するエッジサーバである対象エッジサーバは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを直接的にまたは間接的に請求項7に記載の人工衛星が備える記録装置にアップロードし、
前記人工衛星が、前記記録装置にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付ライブビデオコンテンツを配信するライブビデオコンテンツ配信方法。
【請求項9】
前記アップロード装置群を構成するエッジサーバである対象エッジサーバは、低軌道ブロードバンドコンステレーションから、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から前記低軌道ブロードバンドコンステレーションが収集した配信要求を示すデータを低軌道衛星収集データとして受信し、受信した低軌道衛星収集データを直接的にまたは間接的に前記記録装置にアップロードする請求項8に記載のライブビデオコンテンツ配信方法。
【請求項10】
請求項7に記載の人工衛星は、静止衛星であり、静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備え、
低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星は、前記GEO-LEO間通信装置を備え、
前記人工衛星と、前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、静止衛星と低軌道衛星との間における通信回線であるGEO-LEO間通信回線によって通信可能に接続しており、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを前記GEO-LEO間通信回線を経由して前記人工衛星が備える記録装置にアップロードし、
前記人工衛星は、前記記録装置にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付ライブビデオコンテンツを配信するライブビデオコンテンツ配信方法。
【請求項11】
経度方向に分散配置されている4機以上の請求項7に記載の人工衛星から構成される静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとから成る宇宙データセンタであって、
前記静止衛星群を構成する各人工衛星が備える記録装置はエッジサーバであり、
前記静止衛星群を構成する各人工衛星は、静止衛星であり、赤道上空において隣接する人工衛星の間において双方向通信を実行するGEO-GEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群を構成する3機以上の人工衛星は、赤道上空において円環状通信網を形成しており、
前記静止衛星群を構成する少なくとも1機の人工衛星は、静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備え、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星は、前記GEO-LEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群と、前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、前記GEO-LEO間通信装置を用いて通信し、
前記低軌道ブロードバンドコンステレーションは、前記アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、前記静止衛星群を構成する人工衛星が備える記録装置に収集したデータをアップロードし、
前記静止衛星群と前記低軌道ブロードバンドコンステレーションとは請求項10に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施する宇宙データセンタ。
【請求項12】
前記通信装置は、ビーム制御装置とビームフォーミング装置とを具備する請求項1または請求項7に記載の人工衛星。
【請求項13】
前記アップロード装置群を構成するアップロード装置の少なくとも一部は移動体である請求項12に記載の人工衛星。
【請求項14】
前記計算機は、前記アップロード装置群を構成する複数のエッジサーバにおける識別子付コンテンツの通信トラフィックの分布と時間変動との関係を学習した推論モデルを用いて、複数の識別子付コンテンツの各識別子付コンテンツを配信する優先順位と、前記複数の識別子付コンテンツの各識別子付コンテンツを各アップロード装置に対して配信する順序とを分析し、コンテンツをビーム制御して配信するシーケンスを決定する請求項1に記載の人工衛星。
【請求項15】
経度方向に分散配置されている3機以上の静止衛星から構成される静止衛星群と、複数の低軌道衛星から構成される低軌道衛星群と、前記静止衛星群と前記低軌道衛星群との各々を運用制御する地上設備とを備える宇宙データセンタであって、
前記静止衛星群を構成する各静止衛星は、エッジサーバと再生中継装置とを備え、赤道上空において隣接する人工衛星の間において双方向通信を実行するGEO-GEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群は、赤道上空において円環状通信網を形成しており、
前記低軌道衛星群を構成する各低軌道衛星は、経度方向に分散配置されている複数の軌道面のいずれかを飛翔しており、
前記複数の軌道面の各軌道面において低軌道を周回している各低軌道衛星が各低軌道衛星の前後を飛翔している各低軌道衛星と双方向通信を実行することによって円環状通信網が形成されていること、かつ、前記複数の軌道面の各軌道面が他の軌道面と軌道間通信を実行することによって、前記低軌道衛星群はメッシュ状通信網を形成しており、
前記静止衛星群を構成する少なくとも1機の静止衛星は、静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備え、
前記低軌道衛星群を構成する少なくとも1機の低軌道衛星は、前記GEO-LEO間通信装置を備え、
前記静止衛星群と前記低軌道衛星群とは、前記GEO-LEO間通信装置を用いて双方向通信を実行し、
前記低軌道衛星群を構成する少なくとも1機の低軌道衛星はエッジサーバを備え、
前記低軌道衛星群は、地上に存在する少なくとも1つのアップロード装置から構成されるアップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器から配信要求を示すデータを収集し、前記静止衛星群を構成する静止衛星が備えるエッジサーバである対象エッジサーバに収集したデータをアップロードし、
前記アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバと、ユーザ機器とのいずれかであり、
前記静止衛星群は、配信要求を示すデータを前記対象エッジサーバにアップロードした各アップロード装置に対して各アップロード装置がアップロードしたデータが示す配信要求に対応するオンデマンドコンテンツを配信する宇宙データセンタ。
【請求項16】
請求項2に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実行する事業装置であって、
オンデマンドコンテンツの通信トラフィックを計測し、計測した結果を示すデータを記録する通信回線利用モニタ装置を
備える事業装置。
【請求項17】
請求項2に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実行する事業装置であって、
各オンデマンドコンテンツのデータ量と、各オンデマンドコンテンツの保管期間を示すデータとを記録するサーバ利用モニタ装置を備える事業装置。
【請求項18】
請求項15に記載の宇宙データセンタにおいてオンデマンド配信を実施する事業装置であって、
オンデマンドコンテンツの通信トラフィックを計測し、計測した結果を示すデータを記録する通信回線利用モニタ装置と、
各オンデマンドコンテンツのデータ量と、各オンデマンドコンテンツの保管期間を示すデータとを記録するサーバ利用モニタ装置と
を備える事業装置。
【請求項19】
前記記録装置は、さらに、
モニタ装置として、請求項16に記載の通信回線利用モニタ装置、または請求項17に記載のサーバ利用モニタ装置
を備え、
前記計算機は、前記モニタ装置の出力情報を機械学習することによって前記推論モデルの学習推論アルゴリズムを更新する請求項14に記載の人工衛星。
【請求項20】
前記事業装置は、さらに、自動翻訳装置を備え、
オンデマンドコンテンツまたはライブビデオコンテンツに含まれている音声言語を前記自動翻訳装置によって自動翻訳し、自動翻訳した結果を含むデータを配信する請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の事業装置。
【請求項21】
前記再生中継装置は自動翻訳装置を具備し、
前記自動翻訳装置は、各識別子付コンテンツに含まれている音声言語に対して自動翻訳を実行し、
前記再生中継装置は、自動翻訳を実行した結果を示すデータを送信信号に変調する請求項1に記載の人工衛星。
【請求項22】
請求項16に記載の通信回線利用モニタ装置と、
請求項17に記載のサーバ利用モニタ装置と
を備えるコンテンツ配信事業装置であって、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法、または請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施することにより、通信回線利用料とサーバ利用料とを集計するコンテンツ配信事業装置。
【請求項23】
請求項16に記載の通信回線利用モニタ装置を備えるネットワーク事業装置であって、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法、または請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施するコンテンツ事業装置に対して請求する通信回線利用料を集計するネットワーク事業装置。
【請求項24】
クラウドサーバとエッジサーバとの少なくともいずれかのメモリ領域を貸出したことの対価であるサーバ利用料を請求するサーバ事業装置であって、
請求項17に記載のサーバ利用モニタ装置を備え、
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法、または請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施するコンテンツ事業装置に対して請求するサーバ利用料を集計するサーバ事業装置。
【請求項25】
請求項18に記載の宇宙データセンタにおいてオンデマンド配信を実行するコンテンツ事業装置とネットワーク事業装置とサーバ事業装置との全てまたは一部から構成される宇宙データセンタ事業装置。
【請求項26】
請求項25に記載の宇宙データセンタ事業装置を構成する事業装置であって、
前記事業装置は、コンテンツ事業装置とネットワーク事業装置とサーバ事業装置とのいずれかである事業装置。
【請求項27】
請求項5と請求項6と請求項11と請求項18とのいずれか1項に記載の宇宙データセンタを運用制御する地上設備。
【請求項28】
請求項1または請求項7に記載の人工衛星を運用制御する地上設備。
【請求項29】
低軌道ブロードバンドコンステレーションによる通信回線利用事業装置に対して通信回線利用料を課す低軌道ブロードバンドコンステレーション事業装置であって、
静止衛星と低軌道衛星との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備える低軌道衛星を含み、
請求項4に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法によってユーザからの配信要求を示すデータをアップロードする低軌道ブロードバンドコンステレーション事業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工衛星、宇宙データセンタ、事業装置、コンテンツ配信事業装置、ネットワーク事業装置、サーバ事業装置、宇宙データセンタ事業装置、地上設備、低軌道ブロードバンドコンステレーション事業装置、オンデマンドコンテンツ配信方法、およびライブビデオコンテンツ配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムにおいて、軌道上における運用寿命の長期化に伴い、ユーザニーズが時間推移することに伴う通信トラフィックの変動に動的に対応することができるフレキシブルペイロードが待望されている。
また、衛星搭載機器をフルデジタル化して、周波数領域と時間領域と空間領域との各々に対応する可変パラメータを最適化することにより、衛星リソースを最大限に活用する研究が進んでいる。
また、クラウドコンピューティング技術が進歩している。さらに、データ量の飛躍的な増大と通信の高速化に伴う集中処理方式の負担を軽減するため、また、並列処理により高速化するため、処理の分散と、IoT(Internet of Things)化とが進んでいる。しかしながら、地上に設置された地上システムにおいて処理の分散とIoT化とを実現する場合、電力消費量の増大と、処理の高速化などに伴う排熱量の増大が課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/146750号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示するような従来技術によるフレキシブルペイロードを採用した衛星通信システムでは、地上のNOC(Network Operation Center)において複数のゲートウェイの通信トラフィックを示す情報を収集し、収集した情報が示す通信トラフィックの偏りを減少させるための周波数領域と時間領域と空間領域とを最適化する手段を選択し、選択した手段に基づいて通信装置の可変パラメータの最適値を導出し、指令値として導出した最適値を衛星に送信していた。また、従来技術において、衛星通信によるオンデマンドコンテンツの配信方法は確立されていない。
本開示は、衛星通信によりオンデマンドコンテンツ配信を合理的に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る人工衛星は、
地上に存在する少なくとも1つのアップロード装置から構成されるアップロード装置群を構成する各アップロード装置と直接的にまたは間接的に通信する人工衛星であって、
識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータをデータベース化した配信要求データベースを格納する記録装置と、
計算機と、
受信装置と送信装置と処理装置と再生中継装置とを具備する通信装置と
を備え、
前記アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバと、ユーザ機器とのいずれかであり、
前記人工衛星は、前記アップロード装置群を構成するいずれかのアップロード装置である対象アップロード装置と間接的に通信する場合において、ゲートウェイを介して前記対象アップロード装置と通信し、
前記記録装置は、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が前記通信装置を経由して前記記録装置にアップロードした識別子付コンテンツを示すデータを格納し、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が前記通信装置を経由して前記記録装置にアップロードした識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータを前記配信要求データベースに格納し、
前記計算機は、
前記配信要求データベースに含まれている配信要求である対象配信要求を示すデータを前記記録装置にアップロードしたアップロード装置を選択アップロード装置として選択し、
前記対象配信要求に対応する識別子付コンテンツを示すデータを、前記再生中継装置を経由して配信する配信指令を前記通信装置に対して与え、
前記受信装置は、前記アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置がアップロードした識別子付コンテンツを示すデータを受信し、
前記処理装置は、前記受信装置が受信したデータを、前記記録装置において格納可能な形態のデータに変換して前記記録装置に格納し、
前記再生中継装置は、前記配信指令に基づいて、前記記録装置に格納されている識別子付コンテンツを示すデータを送信信号に変調し、
前記送信装置は、前記選択アップロード装置に対して、前記対象配信要求に対応する識別子付コンテンツとして前記再生中継装置が変調した送信信号を送信する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、人工衛星が備える送信装置が、人工衛星が備える記録装置に対象配信要求を示すデータをアップロードした選択アップロード装置に対して、対象配信要求に対応する識別子付コンテンツとして再生中継装置が変調した送信信号を送信する。ここで、選択アップロード装置は地上に存在する。識別子付コンテンツは、オンデマンドコンテンツであってもよい。
従って、本開示によれば、衛星通信によりオンデマンドコンテンツ配信を合理的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1に係る衛星通信システム1の概要を示す図。
【
図2】実施の形態1に係る衛星通信システム1の構成例を示す図。
【
図3】実施の形態1に係る静止衛星30のハードウェア構成例を示す図。
【
図4】実施の形態1に係る地上データセンタ90のハードウェア構成例を示す図。
【
図5】実施の形態1に係る衛星通信システム1の構成例を示す図。
【
図6】実施の形態1に係る衛星通信システム1の構成例を示す図。
【
図7】実施の形態1の変形例に係る地上データセンタ90のハードウェア構成例を示す図。
【
図8】実施の形態2に係る衛星通信システム1の構成例を示す図。
【
図9】実施の形態2に係る衛星通信システム1を説明する図。
【
図10】実施の形態2に係る衛星通信システム1を説明する図。
【
図11】実施の形態2に係る衛星通信システム1を説明する図。
【
図12】実施の形態2に係る衛星通信システム1を説明する図。
【
図13】実施の形態2に係るメッシュ状通信網を説明する図。
【
図14】実施の形態2に係る衛星通信システム1を説明する図。
【
図15】実施の形態2に係る衛星通信システム1の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態の説明および図面において、同じ要素および対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れまたは処理の流れを主に示している。また、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」または「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。本明細書では、人工衛星を単に衛星と表記することもある。
【0009】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
***構成の説明***
図1は、衛星通信システム1の概要を示している。
衛星通信システム1は、静止衛星30と、複数のゲートウェイ20と、地上データセンタ90とを備える。
静止衛星30は、具体例としてエッジサーバ42を備える。静止衛星30はゲートウェイ20と通信可能である。なお、静止衛星30とゲートウェイ20との間の通信は、通信衛星を介して実行されてもよい。静止衛星30は衛星コンステレーションを形成してもよい。衛星通信システム1は、静止衛星30の代わりに静止衛星ではない人工衛星を備えてもよい。
ゲートウェイ20は、中継機能などを有する通信装置であり、典型的には通信事業者によって運用されている。
地上データセンタ90は、地上に配備されているデータセンタであり、具体例としてクラウドコンピューティングにおいて用いられるデータセンタである。地上データセンタ90は静止衛星30と通信可能である。なお、地上データセンタ90と静止衛星30との間の通信は、中継装置などを介して実行されてもよい。
また、地球600上において各ユーザがユーザ機器91を有している。ユーザ機器91は、具体例として、ユーザである企業などが所有する中継装置、またはユーザが所有する携帯端末である。ユーザ機器91はゲートウェイ20と通信可能である。なお、ユーザ機器91とゲートウェイ20との間の通信は、中継装置などを介して実行されてもよい。
【0011】
図2は、衛星通信システム1の構成例を示している。衛星通信システム1は、静止衛星30と、地上システム50と、地上データセンタ90と、ユーザ機器91とから成る。“-1”などの表記は、複数存在する要素を互いに区別するためのものである。NとMとLとの各々は自然数を示す。
地上システム50は、複数のゲートウェイ20と、追跡管制設備と、NOC(Network Operation Center)と、SOC(Security Operation Center)とを備える。
ユーザ機器91Bは、典型的にはBtoB(Business-to-Business)において用いられる機器である。典型的には、通信事業者と契約している企業などがユーザ機器91Bを所有している。ユーザ機器91Cは、典型的にはBtoC(Business-to-Consumer)において用いられる機器である。典型的には、通信事業者と契約している個人がユーザ機器91Cを所有している。
地上データセンタ90は、クラウド事業者ネットワーク内に存在し、複数のゲートウェイ20の少なくともいずれかと通信可能に接続している。クラウド事業者ネットワークは、クラウドコンピューティングの事業者が利用するネットワークである。地上データセンタ90が複数存在し、各地上データセンタ90は複数のゲートウェイ20の一部と通信可能に接続していてもよい。
静止衛星30は、追跡管制設備と通信する衛星バス系通信装置と、計算機41と、エッジサーバ42と、通信装置45とを備える。通信装置45は、ビーム制御装置46と、ビームフォーミング装置47とを備える。通信装置45はミッション系通信装置とも呼ばれる。BFはビームフォーミングの略記である。
エッジサーバ42は、地上データセンタ90と通信するサーバであり、地上データセンタ90のエッジサーバに当たる。エッジサーバ42は記録装置43を備える。エッジサーバ42が記録装置43を備えなくてもよい。計算機41とエッジサーバ42とは一体的に構成されていてもよい。
【0012】
図3は、静止衛星30のハードウェア構成例を示している。
図3を参照して、静止衛星30のハードウェア構成を説明する。
静止衛星30は、衛星制御装置31と通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35とを備える。静止衛星30は、その他の各種の機能を実現する構成要素を備えていてもよいが、
図3では、衛星制御装置31と通信装置32と推進装置33と姿勢制御装置34と電源装置35とについて説明する。
【0013】
衛星制御装置31は、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御するコンピュータであり、処理回路を備える。具体的には、衛星制御装置31は、地上システム50などから送信される各種コマンドにしたがって、推進装置33と姿勢制御装置34とを制御する。
通信装置32は、静止衛星30の外部との通信を実行する装置である。
推進装置33は、静止衛星30に推進力を与える装置であり、静止衛星30の速度を変化させる。
姿勢制御装置34は、静止衛星30の姿勢と静止衛星30の角速度と視線方向(Line Of Sight)といった姿勢要素を制御するための装置である。姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置34は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置34は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサといった装置である。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロといった装置である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上システム50などからの各種コマンドに従ってアクチュエータを制御する。
電源装置35は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置といった機器を備え、静止衛星30に搭載される各機器に電力を供給する。
【0014】
衛星制御装置31に備わる処理回路について説明する。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより実現することができる。専用のハードウェアは、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0015】
図4は、地上データセンタ90のハードウェア構成例を示している。地上データセンタ90は静止衛星30との間で通信する。地上データセンタ90は、地上側通信装置810に接続しており、地上データセンタ90は、地上側通信装置810を介して静止衛星30と通信する。地上データセンタ90には移動端末が含まれてもよい。
ゲートウェイ20と静止衛星30が備える各機器との各々の構成は、地上データセンタ90の構成と同様であってもよい。
【0016】
地上データセンタ90は、プロセッサ710を備えるとともに、主記憶装置720、補助記憶装置730、入力インタフェース740、出力インタフェース750および通信インタフェース760といった他のハードウェアを備える。
図4においてインタフェースはIFと表記されている。プロセッサ710は、信号線770を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0017】
地上データセンタ90は、機能要素として、制御部711を備える。制御部711の機能は、ハードウェアあるいはソフトウェアにより実現される。制御部711は、衛星通信プログラムの指示に従い処理を実行する。
【0018】
***動作の説明***
衛星通信システム1の動作手順は衛星通信方法に相当する。また、衛星通信システム1の動作を実現するプログラムは衛星通信プログラムに相当する。衛星通信プログラムは、衛星通信システム1が備える各機器において動作するプログラムの総称である。衛星通信プログラムは、コンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体に記録されていてもよい。不揮発性の記録媒体は、具体例として、光ディスクまたはフラッシュメモリである。衛星通信プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0019】
<実施の形態1に係る動作例1>
図5は、本動作例に係る衛星通信システム1の構成例を示している。本動作例において、記録装置43は、通信装置45と、地上に配備されている複数のゲートウェイ20の少なくともいずれかとの間における通信トラフィックを示す情報を記録する。計算機41は、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックに偏りがある場合に、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックの偏りが減じるようビームフォーミング装置47を制御する可変パラメータの値を導出し、導出した可変パラメータの値を示す情報をビーム制御装置46に送信する。可変パラメータの値の導出は、可変パラメータの値の設定値を求めることである。ビーム制御装置46は、計算機41が導出した可変パラメータの値を示す情報を受信し、受信した情報が示す可変パラメータの値に基づいてビームフォーミング装置47を制御する。ビーム制御装置46は、具体例として、受信した可変パラメータに基づいてビームフォーミング装置47の周波数とビーム幅と指向方向とを変更する。
【0020】
近年、通信衛星の高速大容量化と、軌道上における運用期間の長期化に伴うユーザニーズの変動に適応するために、通信機器がフルデジタル化し、また、デジタルビームフォーミング技術を利用したフレキシブルペイロード化技術が進歩した。一方、チャネライザを広帯域化したビーム制御装置を用いて大容量の通信が可能となるハイスループット衛星(HTS:High Throughput Satellite)による高速ブロードバンド衛星通信システムのニーズが増加している。
【0021】
本動作例の目的は、地上システム50において従来実施しているリソース管理機能の少なくとも一部を軌道上に移管することにより、通信トラフィックが変化する状況下において、フレキシブルペイロードと呼ばれる通信装置を、自律的、動的、かつタイムリーに監視すること、および管理することによって、宇宙ベースの高速ブロードバンド衛星通信システムを構築することである。フレキシブルペイロードと呼ばれる通信装置は、周波数割り当てとサービスカバレッジに関する柔軟性を持つ。
【0022】
フレキシブルペイロードは、デジタルチャネライザとデジタルビームフォーミングとによる可変ビーム制御により、周波数割り当てと、ビーム幅および視野方向を変更してフレキシビリティを確保するフルデジタル化を近年指向されている。しかしながら、フレキシブルペイロードをデジタル機器に限定する必要はなく、デジタル機器とアナログ機器とを組合せたフレキシブルペイロードによって安価な衛星通信システム1を構築してもよい。
【0023】
通信トラフィックの変動は送受したデータ量の変動である。複数のゲートウェイ20の各々のデータ量に大きな偏差がある場合に、データ量の多いゲートウェイ20に対して指向する周波数帯域を広げるようビーム種別を増やす手段、または単位サービス範囲当たりのビーム数を増やす手段などによって伝送容量を拡大することにより、データレートを平準化することができる。
【0024】
静止衛星30が、通信トラフィックを監視し、監視した結果に基づいて通信装置45のデジタルペイロードのリソースを管理する機能の実現例として、最適化アルゴリズムを用いて最適化制御する具体例を説明する。本例において、まず、計算機41は地上に配備した複数のゲートウェイ20の各々の通信量の変化を監視する。次に、計算機41は、監視した結果に基づいて、静止衛星30の持つ電力および通信能力などのリソースを最適配分するように、デジタルビームをフレキシブルに制御して、複数のゲートウェイ20の各々の間のデータレートを平準化する。最適化アルゴリズムは、具体例として、ビームフォーミング装置47を制御する可変パラメータの値を決定するアルゴリズムである。
【0025】
ここで、ビームフォーミング技術は、電波、音波、または超音波を、特定の方向に向けて送信する技術、または特定の方向から受信する技術である。ビームフォーミング技術として、フェーズドアレーアンテナ(APAA:Active Phased Array Antenna)において、複数の送受信モジュール毎の送信電力を制御して送信ビームの指向方向およびビーム幅を制御する技術と、複数の送受信モジュール毎の送信電力を制御する技術などが知られている。フィードを多数配列してビームフォーミングするビームフォーミング装置も近年知られている。ビームフォーミング装置47における増幅器として進行波管増幅器(TWTA:Traveling Wave Tube Amplifier)または固体電力増幅器(SSPA: Solid State Power Amplifier)などが使われる。
【0026】
ビーム制御装置46としては、複数チャネルのルーティングを変更するチャネライザが知られている。当該チャネライザは、具体例として、Ka帯またはKu帯など複数の周波数帯を選択する、または、同じ周波数帯の中で使用する中心周波数と帯域とを変更する周波数ホッピングと呼ばれる周波数制御を実行する。また、当該チャネライザは、ビームフォーミング装置のビーム幅と指向方向と電力とを制御する。
【0027】
なお、一般的な通信リソース管理ではデジタルペイロードのリソース管理をするが、本動作例に係る通信装置45は、アナログペイロード、またはアナログとデジタルが混在したセミデジタルペイロードのリソース管理をしてもよい。
【0028】
本動作例のように静止衛星30において従来地上で実施した通信リソース管理の動作を実施すれば、地上における負担を軽減することができるという効果がある。また、本動作例によれば、ユーザニーズが時間推移することに適応する最適化管理であって、通信トラフィックの最適化管理を宇宙空間で自律的に実施することにより、地上システム50の負担を軽減することができる。
【0029】
<実施の形態1に係る動作例2>
本動作例では、静止衛星30にエッジサーバ42を配備して静止衛星30をIoT(Internet of Things)化し、地上システム50の処理の一部をIoT化した静止衛星30に分散することにより、地上システム50における排熱量を低減することを目的とする。
【0030】
図6は、本動作例に係る衛星通信システム1の構成例を示している。本動作例において、地上に配備されている地上データセンタ90のエッジサーバ42が記録装置43を備える。本動作例は、実施の形態1に係る動作例1と同様である。
【0031】
(クラウドコンピューティングの説明)
情報社会の高度化に伴う情報量の増大に伴い、消費電力の増大と排熱対策が課題となっている。特に、中央集中型の仕組みでは、スーパーコンピュータまたは大規模データセンタなどの大電力化と排熱対策とが深刻な課題になっている。
一方、宇宙空間では放射冷却により深宇宙に排熱することができる。そのため、人工衛星側にクラウド環境を実現するためのスーパーコンピュータまたはデータセンタなどを具備し、軌道上で演算処理をした後に必要なデータのみを地上のユーザに伝送するシステムが考えられる。当該システムによれば、クラウド環境を維持することができ、また、地上における温室効果ガスの排出量を低減することにより、地上のSDGs(Sustainable Development Goals)に貢献することができるという効果がある。
従来地上に設置されていたクラウドデータセンタの少なくとも一部の機能を静止衛星30に搭載されたエッジサーバ42が具備し、軌道上でクラウドデータセンタの処理の少なくとも一部を実行することにより、地上における処理の負担軽減に貢献することができるという効果がある。
従来技術によれば、フレキシブルペイロードの可変パラメータを設定するために、地上でトラフィックモニタをして、ゲートウェイ間の偏りを減少する最適化のための解析処理と可変パラメータの設定とを地上で実行して衛星に送信していた。本動作例によれば、従来地上で実行していた処理を宇宙空間で自律的に実行するため、地上における処理の負担が軽減される。
【0032】
また、本動作例によれば、地上データセンタ90と静止軌道上のエッジサーバ42との間で大容量のデータを通信する場合に、ゲートウェイ20間のデータレートを平準化することにより、複数のゲートウェイ20を介して高速大容量の通信をすることができるという効果がある。さらに、地上クラウド環境が備える地上データセンタ90の情報を軌道上のエッジサーバ42に送信することにより、地上データセンタ90とエッジサーバ42とで情報を共有すること、または地上データセンタ90とエッジサーバ42とに情報を分散することができる。
【0033】
<実施の形態1に係る動作例3>
本動作例は、実施の形態1に係る動作例1または2を拡張した動作例に当たる。本動作例に係る計算機41は、複数のゲートウェイ20の各々の通信トラフィックと、可変パラメータの値との関係を学習した推論モデルを用いて可変パラメータの値を導出する。本動作例において、地上データセンタ90は、衛星通信システム1を模擬したソフトウェアモデルを具備している。
【0034】
AI(Artificial Intelligence)によるディープラーニングなどの機械学習の技術が進歩していることから、計算機41がAIを具備することにより、計算機41は多くの機能を実現することができる。AIを具備する計算機41は、軌道上でゲートウェイ20の通信トラフィックを監視し、監視した通信トラフィックの変動に応じたフルデジタル機器の最適制御を実施する。
一方、クラウド事業者が、SDN(Software Defined Network)と呼ばれるモデリング手法を地上アセットに対して適用した上でユーザニーズの変動を分析し、VSN(Virtual Satellite Network)と呼ばれるモデリング手法を衛星アセットに適用した上でソフトウェアにおいてユーザニーズの変動に応じて通信トラフィックを最適化する研究が近年進んでいる。地上データセンタ90が具備するソフトウェアモデルは当該研究の成果を反映したものである。
地上データセンタ90が具備するシミュレータは、当該ソフトウェアモデルを用い、ユーザニーズの変動を分析し、分析した結果に基づいて教師データまたは教師モデルを生成し、生成した教師データまたは教師モデルをエッジサーバ42にアップロードする。計算機41は、アップロードされた教師データまたは教師モデルを用いて最適化アルゴリズムを更新する。そのため、当該シミュレータは、計算機41が具備するAIの性能向上と機械学習効果の向上とを実現することができる。
【0035】
本動作例に係る衛星通信システム1の動作例を説明する。
まず、地上データセンタ90は、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックの偏りを減少するための可変パラメータであって、ビームフォーミング装置47の可変パラメータを、ソフトウェアモデルを用いたシミュレーションにより分析する。
次に、地上データセンタ90は、可変パラメータを分析した結果に基づいて、ユーザニーズの時間推移に応じた適切な可変パラメータである推奨パラメータの値を導出し、教師データとして、導出した推奨パラメータと、可変パラメータを分析した結果との各々を示す情報をエッジサーバ42に送信する。可変パラメータを分析した結果を示す情報は、具体例として、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックの偏りを示す情報、または、当該偏りが生じる時間帯など、当該偏りの特徴を示す情報である。
次に、計算機41は、エッジサーバ42から地上データセンタ90が導出した推奨パラメータと、可変パラメータを分析した結果との各々を示す情報を受け取り、受け取った情報を教師データとして用いてディープラーニングなどの機械学習を行うことにより推論モデルを生成する。
【0036】
通信トラフィックが変動する要因としては、リアルタイムで大規模にビーム制御パラメータを変更するニーズ、具体例として、災害時などにおける通信衛星の利用のような高頻度パラメータ更新のニーズが考えられる。また、当該要因として、15年以上に及ぶ静止衛星の設計寿命期間内におけるユーザニーズの変動に適応するための年単位のパラメータ更新ニーズも考えられる。
また、フレキシブルペイロードを制御する可変パラメータとしては、周波数領域と、空間領域と、時間領域などの各々に対応するパラメータがある。周波数領域に対応するパラメータは、P帯、L帯、S帯、C帯、X帯、Ku帯、Ka帯、Q帯、またはV帯など、通信事業者などが周波数権益を持つ周波数帯の中でニーズの変動に応じて構成比率を変更することに対応するパラメータである。空間領域に対応するパラメータは、多数ビームのビーム幅と視野方向とを変更することにより地上サービス領域を変更することに対応するパラメータである。時間領域に対応するパラメータは、リアルタイムの最適制御、昼夜の日変動への適応、季節変動への適応、および年単位の変動への対応など様々に対応するためのパラメータである。
また、通信対象が移動体である場合、移動体の移動範囲に応じたサービスカバレッジの確保と、ビーム視野変更とが必要である。
これら多数の可変パラメータを扱うためには、計算機41が人工知能を具備し、計算機41が、過去の通信リソース管理によるパラメータ制御結果と、パラメータ制御結果に伴うトラフィックモニタ結果の変動結果をエッジサーバ42に格納し、機械学習により最適化アルゴリズムの更新をすることが合理的である。
推論モデルへの入力は、複数のゲートウェイ20の各々の通信トラフィックに関係がある情報である。当該情報は、具体例として、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックの偏りを示す情報、またはユーザニーズ変動分析における入力情報である。ユーザニーズ変動分析における入力情報について具体例を用いて説明する。ユーザニーズが時間推移と強い相関をもって変動することが経験的に把握された場合、推論モデルが、ユーザニーズの時間推移に応じた適切な可変パラメータである推奨パラメータの値を導出することが合理的である。別の具体例として、人口変動または人口密度の地域分布の変動など、ユーザ数に強い相関がある要素に変動があれば、通信総量およびビーム指向方向の最適値が変化する。そのため、ユーザ数に強い相関がある要素の変動に応じた適切な可変パラメータである推奨パラメータの値を導出することが合理的である。また、別の具体例として、新規技術開発または社会インフラの整備などの通信環境の変動に伴ってユーザニーズが変化した場合、通信環境の変動に伴うユーザニーズに応じた適切な可変パラメータである推奨パラメータの値を導出することが合理的である。従って、計算機41は、推論モデルを生成する際、複数のゲートウェイ20の各々の通信トラフィックに関係がある情報として、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックの偏りを示す情報の代わりに、ユーザニーズの時間推移を示す情報、ユーザ数に強い相関がある要素の変動を示す情報、または通信環境の変動を示す情報などのユーザニーズ変動分析における入力情報を教師データの一部として用いてもよい。このように生成された推論モデルは、複数のゲートウェイ20の各々の通信トラフィックと、可変パラメータの値との関係を学習した推論モデルに当たる。
なお、地上データセンタ90が推論モデルを生成してもよい。
【0037】
<実施の形態1に係る動作例4>
本動作例は、実施の形態1に係る動作例1または2を拡張した動作例に当たる。本動作例において、地上データセンタ90は、衛星通信システム1を模擬したソフトウェアモデルを具備している。
【0038】
本動作例に係る衛星通信システム1の動作例を説明する。
まず、地上データセンタ90は、複数のゲートウェイ20の各々の間の通信トラフィックの偏りを減じるための可変パラメータを、ソフトウェアモデルを用いたシミュレーションにより分析する。
次に、地上データセンタ90は、可変パラメータを分析した結果に基づいて、計算機41が用いる最適化アルゴリズムを生成し、生成した最適化アルゴリズムを示す情報をエッジサーバ42に送信する。
次に、エッジサーバ42は、最適化アルゴリズムを示す情報を受信し、受信した最適化アルゴリズムを示す情報を計算機41に送信する。
次に、計算機41は、最適化アルゴリズムを示す情報を受信し、計算機41の記録装置に記録されている最適化アルゴリズムを、受信した最適化アルゴリズムに置き換える。
【0039】
***他の構成***
<変形例1>
本実施の形態では、制御部711の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、制御部711の機能がハードウェアで実現されてもよい。
図7は、本変形例を示している。
【0040】
地上データセンタ90は、プロセッサ710に替えて電子回路780を備える。
電子回路780は、制御部711の機能を実現する専用の電子回路である。
電子回路780は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC(Integrated Circuit)、GA(Gate Array)、ASIC、または、FPGAである。
制御部711の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
別の変形例として、制御部711の一部の機能が電子回路780で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0041】
プロセッサ710と電子回路780と主記憶装置720と補助記憶装置730とを総称して、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、地上データセンタ90において、制御部711の機能は、プロセッシングサーキットリにより実現される。
【0042】
実施の形態2.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
オンデマンドコンテンツ配信とライブビデオ配信との各々を衛星通信回線を利用して実現する方法が待望されている。本実施の形態では、エッジサーバと再生中継装置とを具備する静止衛星がコンテンツの配信を要求したユーザに対してコンテンツをマルチキャスト配信することによって地上通信トラフィックを削減する方法を提案する。ここで、エッジサーバは、低軌道ブロードバンドコンステレーションが収集したコンテンツの配信要求を示すデータを格納するデータベースを具備する。また、本実施の形態では、低軌道コンステレーションが配信要求を示すデータを収集し、静止衛星が再生中継装置とビーム制御とを活用することにより配信要求に対応するコンテンツをマルチキャストする宇宙データセンタを提案する。
【0043】
衛星通信事業はフルデジタル衛星の登場により過渡期を迎えている。従来の衛星通信事業において、広告収入に基づいてコンテンツを制作した放送事業者がベントパイプ方式の通信衛星を用いて広域に対して一斉に放送するサービスを実行するビジネスモデルが主流であった。一方、近年、地上におけるインターネットの普及により、オンデマンドコンテンツを配信してユーザから課金収入を得るビジネスモデルが急速に増加したために通信トラフィックが増大している。そこで、地上における通信トラフィックの緩和対策として、フルデジタル衛星による衛星通信を活用することに対する期待が高まっている。
しかしながら、現状、衛星通信によるオンデマンドコンテンツの配信方法は確立されていないため、人工衛星の本来のメリットが活かされていない。
静止衛星には、広域に対する一斉放送が可能であることなどの強みがあるが、双方向のスマートフォンのダイレクト通信を実現するためには巨大なアンテナが必要であることなどの弱みがある。
一方、昨今急速に整備が進む低軌道ブロードバンドコンステレーションには、スマートフォンのダイレクト通信を実現する期待がある反面、大容量のコンテンツを広域に同時に配信することが得意とは言えない面がある。低軌道ブロードバンドコンステレーションによって同じコンテンツを膨大な数のユーザに個別に送信することは、膨大な回数の衛星間通信を繰り返す必要があるために非合理的だからである。
【0044】
そもそも、オンデマンドユーザの増加に伴う地上における通信トラフィックの逼迫の原因は、低軌道ブロードバンドコンステレーションには広域に同時に配信することが得意とは言えない面があることと同様である。そのため、静止衛星により一斉放送することが地上における通信トラフィックの緩和対策として効果的と考えられる。地上における通信トラフィックの緩和の具体例としては、静止衛星が分散配置されている複数のエッジサーバに対して一斉放送によりデータを配信し、各エッジサーバが配信されたデータをキャッシングし、各エッジサーバから近距離ユーザに配信することが挙げられる。
そこで、本実施の形態では、衛星通信によりオンデマンドコンテンツ配信を合理的に実現する方法を提供する。
具体例として、まず、低軌道ブロードバンドコンステレーションが、ID(Identification)付オンデマンドコンテンツの配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを静止衛星にアップロードする。次に、広域に存在する各ユーザ機器が静止衛星からデータをダウンロードする。本例によれば、両者のメリットを活かすことができる。
静止衛星をエッジサーバとしてID付デジタルコンテンツを保管し、静止衛星が配信要求に応じて再生中継すれば、衛星通信によるオンデマンドコンテンツ配信を実現することができる。
赤道上空において経度方向に分散配置されている3機以上の静止衛星が双方向通信を実行することによって円環状通信網を形成している場合において、全世界に対するオンデマンドコンテンツ配信サービスを実現することができる。また、この場合において、低軌道ブロードバンドコンステレーションの併用による宇宙データセンタ構想によれば、全世界に対するライブビデオ配信を実行することができる。
【0045】
また、放送衛星として活躍してきたベントパイプ方式とは異なり、搭載機器のデジタル化が進んだフレキシブルペイロードによれば、多様な方法によって一斉配信を実現することができる。具体例として、当該フレキシブルペイロードによれば、地域毎に互いに異なるコンテンツを配信することと、配信要求が密集する地域への伝送容量を増やすことなどの合理化とが可能である。さらに、多種多様なコンテンツを広域に配信するに当たり、通信帯域を拡大することによって伝送容量を増やした場合、個別コンテンツの配信を短時間で実現することができる。また、この場合において、時分割的に多様なコンテンツを配信すればユーザの配信待ち時間をストレスを感じにくいレベルまで解消することが可能である。このように、フレキシブルペイロードによるマルチキャストによれば、ベントパイプ方式と比較して質的にも量的にも優れた一斉配信を実行することができる。
【0046】
オンデマンドコンテンツの配信において、コンテンツ配信事業者と、衛星運用事業者と、ネットワーク事業者と、クラウドサーバおよびエッジサーバなどのサーバ事業者と、低軌道衛星通信事業者とがステークホルダーとして関与する。ここで、当該配信に係るシステムの運用の原資はユーザからの課金収入であり、当該配信に係るシステムの運用は通信回線利用料とサーバ利用料とに関する相互の契約関係に基づいて成立する。そのため、通信回線利用モニタ装置およびサーバ利用モニタ装置を各事業者が具備することにより、各事業者の利用料授受の算定根拠が明確になることに加えて、各事業者は、エッジサーバの数量および配置と、コンテンツの更新頻度および保管期間などのシステム運用の最適化に資する情報を取得することができる。
【0047】
昨今、AIの宇宙利用が期待されている。具体例として、通信システムの運用の最適化に資する条件およびアルゴリズムを衛星に搭載されているAI計算機が機械学習し、機械学習の結果に基づいて軌道上ビーム制御によりコンテンツを最適配信する事により、地上における通信トラフィックの劇的な改善が期待される。
【0048】
昨今、複数のステークホルダーによる合弁事業またはチーミングなどによる新しい業態が発生している。
具体例として、衛星運用事業者とサーバ事業者とネットワーク事業者と低軌道ブロードバンドコンステレーション業者とコンテンツ配信事業者との全てまたは一部が、宇宙データセンタ事業に取り組み、オンデマンド配信コンテンツに含まれている音声言語を自動翻訳し、自動翻訳した結果を示すデータを含むデータを宇宙データセンタから配信するオンデマンドコンテンツ配信方法を実行する事業を実践した場合、デジタル通信インフラの整備が遅れている地域に存在する全世界の全てのユーザに対してオンデマンドコンテンツを配信することができる。オンデマンド配信コンテンツは、具体例として、米国のハリウッド映画、韓国のドラマ、または日本のアニメーション作品である。
オンデマンドコンテンツ配信およびライブビデオ配信の特徴として、配信要求において、要するデータ量が微少であり、かつ、配信要求の件数が膨大であることが挙げられる。一方、当該特徴として、配信要求に対応するコンテンツの配信において、1件当たりのデータ量が大きく、かつ、膨大な数のユーザに対して同一のデータを送信することが挙げられる。さらに、要求と配信とには双方向性の関係があるが、コンテンツ配信には一方向性の性質があるという特徴がある。
従って、配信要求に対応するアップリンクを低軌道ブロードバンドコンステレーションが担い、配信に対応するダウンリンクをマルチキャストが得意である静止衛星が担うよう役割を分担することが合理的であると考えられる。
一般的に、静止衛星による衛星通信では遅延時間がデメリットとされる。しかしながら、オンデマンドコンテンツ配信にもライブビデオ配信にも一方向性の性質があるため、数秒程度の遅延時間は問題とならない。
【0049】
一斉に放送するコンテンツに対して課金する有効な方法としては、具体例として、ID付コンテンツを示すデータを暗号化し、課金して暗号鍵を取得したユーザだけが暗号化されたデータを復号化することができる方法と、会員制システムにおいて課金したユーザのユーザIDと紐づけてパスワードを管理する従来の方法とが挙げられる。
昨今、通信衛星のプライスにおいて、地上通信インフラとのコスト競争に伍する必要があるために価格破壊が進んでいる。これは、インターネット回線を単に宇宙経由とした場合における前提であって、データ量が大きいコンテンツの配信をユーザ毎に実行することによって膨大な回数の配信を実行する場合におけるプライス決定方法である。
しかしながら、1回の一斉放送によって配信されるコンテンツに対して課金するユーザの数を課金額に乗じた金額である通信回線利用料に対する回収効率を考慮した通信価値の指標に着目すれば、衛星によるオンデマンド配信は、地上通信回線によるオンデマンド配信に対して数桁高い通信価値を持つことになる。ここで、当該ユーザには地上インフラが十分に整備されていない地域に存在するユーザが含まれる。
従って、宇宙データセンタを活用したオンデマンド配信が実用化されれば、地上通信回線において従来発生した膨大な無駄な作業が解消される。無駄な作業は、具体例として、同じコンテンツの送信と、遠く離れた地点間における繰り返し送信とである。そのため、当該オンデマンド配信が実用化されれば、通信総量が激減し、地上通信回線の利用料を回収することが困難となり、地上通信事業者の競争力が相対的に低下すると考えられる。
なお、宇宙データセンタによるオンデマンド配信の実用化が、エネルギーロスの削減など、SDGsの観点において望ましい方向へのパラダイムシフトとなることは言うまでもない。また、この観点において、たとえ整備に要するコストが一見高額であったとしても、宇宙データセンタの存在意義があると考えられる。
【0050】
なお、地上携帯基地局において「再生中継装置」という用語を使う場合に、移動通信システムの世代を区別する場合もある。移動通信システムの世代を区別する場合において、地上携帯基地局は、具体例として、4G(Generation)基地局であるeNB(evolved NodeB)、または5G基地局であるgNB(next Generation NodeB)である。
本願において、「再生中継装置」という用語を使う場合に移動通信システムの世代を区別する意図はなく、また、再生中継装置を「コンテンツ再生装置」と読み替えてもよい。
【0051】
***動作の説明***
<実施の形態2に係る動作例1>
本動作例に係る衛星通信システム1において実行される各処理は、オンデマンドコンテンツ配信方法を構成する各処理に当たる。
図8は、本動作例に係る衛星通信システム1の具体例を示している。
本動作例に係る人工衛星は、アップロード装置群を構成する各アップロード装置と直接的にまたは間接的に通信する。人工衛星は、具体例として静止衛星30である。アップロード装置群は、地上に存在する少なくとも1つのアップロード装置から構成される。アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバ42と、ユーザ機器91とのいずれかである。人工衛星は、アップロード装置群を構成するいずれかのアップロード装置である対象アップロード装置と間接的に通信する場合において、ゲートウェイ20を介して対象アップロード装置と通信する。人工衛星は、記録装置43と、計算機41と、通信装置45とを備え、また、具体例として静止衛星30である。
記録装置43は、識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータをデータベース化したデータベースである配信要求DB(Database)61を格納する。記録装置43は、アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が通信装置45を経由して記録装置43にアップロードした識別子付コンテンツを示すデータを格納する。当該データは、具体例として配信コンテンツ62である。また、記録装置43は、アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が通信装置45を経由して記録装置43にアップロードした識別子付コンテンツに対する配信要求を示すデータを配信要求DB61に格納する。
配信要求DB61は、配信要求を示すデータから成り、ID付配信コンテンツ配信要求DBとも呼ばれる。IDは識別子と同義である。
配信コンテンツ62は、配信コンテンツを示すデータであり、ID付配信コンテンツとも呼ばれる。
計算機41は、配信要求DB61に含まれている配信要求である対象配信要求を示すデータを記録装置43にアップロードしたアップロード装置を選択アップロード装置として選択する。計算機41は、対象配信要求に対応する識別子付コンテンツを示すデータを、再生中継装置72を経由して配信する配信指令を通信装置45に対して与える。
通信装置45は、受信装置73と送信装置74と処理装置71と再生中継装置72とを具備する。
受信装置73は、アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置がアップロードした識別子付コンテンツを示すデータを受信する。受信装置73は、ゲートウェイ20と、エッジサーバ42と、ユーザ機器91との少なくともいずれかからデータを受信する。
処理装置71は、データを処理する機能を有する。処理装置71は、受信装置73が受信したデータを、記録装置43において格納可能な形態のデータに変換して記録装置43に格納する。変換されたデータは、具体例として配信コンテンツ62である。
再生中継装置72は、配信指令に基づいて、記録装置43に格納されている識別子付コンテンツを示すデータを送信信号に変調する。再生中継装置72は、一般的な再生中継装置であってもよい。
送信装置74は、選択アップロード装置に対して、対象配信要求に対応する識別子付コンテンツとして再生中継装置72が変調した送信信号を送信する。
計算機41とエッジサーバ42と記録装置43との各々は、一般的なコンピュータであってもよい。
【0052】
近年、デジタルコンテンツのオンデマンド配信に対する需要が急増している。そのため、地上に配備されているクラウドサーバ、または地上に分散配置されている各エッジサーバ42にコンテンツを一時保存し、相手先を指定した上で複数のユーザに対してコンテンツを配信する方式では地上における通信トラフィックが増大している。
なお、利用頻度が高いコンテンツの一時保存はキャッシングと呼ばれ、相手先を指定した上で複数のユーザに対して配信することはマルチキャストと呼ばれる。
地上における通信環境を改善する対策として、人工衛星の広域性を利用してデジタルコンテンツのオンデマンド配信を衛星通信によって実施するシステムが待望されている。
本動作例では、人工衛星が備える記録装置43においてID付配信コンテンツをキャッシングし、コンテンツの配信要求に応じて複数のユーザに対してマルチキャストを実施する。
オンデマンドコンテンツの配信方法としては、人工衛星が備える記録装置43に格納されているID付コンテンツをユーザに直接マルチキャストする方法と、人工衛星からエッジサーバ42に対してコンテンツをキャッシングし、エッジサーバ42がユーザに対してマルチキャストする方法がある。
【0053】
近年、人工衛星の通信装置のフルデジタル化が進んだため、人工衛星は、ゲートウェイ20を経由する通信と、エッジサーバ42またはユーザ機器91との直接通信との各々を実施することができる。そのため、エッジサーバ42がゲートウェイ20を経由してID付コンテンツを示すデータを人工衛星に送信してもよく、エッジサーバ42またはユーザ機器91がID付コンテンツを示すデータを人工衛星に直接送信してもよい。
同様に、ユーザ機器91がID付コンテンツの配信要求を示すデータを人工衛星に直接送信してもよく、エッジサーバ42が、配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを人工衛星にアップロードしてもよい。
再生中継装置72は、記録装置43に一時保管されているID付コンテンツを示すデータを送信データの形態に編集する。送信装置74は、再生中継装置72が編集したデータを計算機41が指定した配信先に対してマルチキャストする。
【0054】
なお、エッジサーバ42とユーザ機器91との各々は、地上に存在してもよく、宇宙に存在してもよい。
人工衛星が備える記録装置43は、エッジサーバ42と呼ばれることもある。
【0055】
<実施の形態2に係る動作例2>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例1を拡張した動作例に当たり、オンデマンドコンテンツ配信方法の実施例に当たる。
本動作例において、アップロード装置群を構成するエッジサーバ42である対象エッジサーバは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを直接的にまたは間接的に実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星が備える記録装置43にアップロードする。
本動作例に係る人工衛星は、記録装置43にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付コンテンツを配信する。
【0056】
図9は、本動作例に係る衛星通信システム1を説明する図である。
図9に示すように、本動作例は、低軌道ブロードバンドコンステレーションを介在せずにエッジサーバ42がID付コンテンツ配信要求を示すデータを収集し、エッジサーバ42が収集したデータを人工衛星にアップロードする方法である。
【0057】
<実施の形態2に係る動作例3>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例1を拡張した動作例に当たり、オンデマンドコンテンツ配信方法の実施例に当たる。
本動作例において、アップロード装置群を構成するエッジサーバ42である対象エッジサーバ42は、低軌道ブロードバンドコンステレーションから低軌道衛星収集データを受信し、受信した低軌道衛星収集データを直接的にまたは間接的に実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星が備える記録装置43にアップロードする。低軌道衛星収集データは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から低軌道ブロードバンドコンステレーションが収集した配信要求を示すデータである。
本動作例に係る人工衛星は、記録装置43にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付コンテンツを配信する。
【0058】
図10は、本動作例に係る衛星通信システム1を説明する図である。
図10に示すように、本動作例に係るオンデマンドコンテンツ配信方法は、低軌道ブロードバンドコンステレーションを利用してID付コンテンツの配信要求を示すデータを収集し、収集されたデータを静止衛星30にアップロードする方法である。また、実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星と、低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する低軌道衛星80との双方がGEO-LEO(Geostationary Orbit-Low Earth Orbit)間通信装置を具備しない場合に、地上に設置されているエッジサーバ42を経由して配信要求を示すデータを静止衛星30にアップロードする方法である。
なお、低軌道衛星80が配信要求を示すデータを収集するエッジサーバ42を兼ねてもよい。また、本動作例に係るエッジサーバ42は、スマートフォンのダイレクト通信によって送信されたユーザからの配信要求を示すデータを収集してもよい。
現在整備が進むStarlink(登録商標)などの低軌道ブロードバンドコンステレーションは、地上と通信する通信装置と、LEO-LEO(Low Earth Orbit-Low Earth Orbit)間通信装置とを具備するため、地上に存在するユーザからID付コンテンツに対する配信要求を示すデータを収集することはできる。しかしながら、低軌道ブロードバンドコンステレーションはGEO-LEO間通信装置を備えないので、実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星に対するデータのアップロードは地上に設置されているエッジサーバ42を経由して実施される。
【0059】
<実施の形態2に係る動作例4>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例1を拡張した動作例に当たり、オンデマンドコンテンツ配信方法の実施例に当たる。
本動作例において、実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星は、静止衛星30であり、GEO-LEO間通信装置を備える。GEO-LEO間通信装置は、静止衛星30と低軌道衛星80との間における通信を実行する。低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星80は、GEO-LEO間通信装置を備える。人工衛星と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、GEO-LEO間通信回線によって通信可能に接続している。GEO-LEO間通信回線は、静止衛星30と低軌道衛星80との間における通信回線である。低軌道ブロードバンドコンステレーションは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータをGEO-LEO間通信回線を経由して人工衛星が備える記録装置43にアップロードする。人工衛星は、記録装置43にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付コンテンツを配信する。
低軌道衛星80のハードウェア構成は、静止衛星30のハードウェア構成と同様である。
【0060】
図11は、本動作例に係る衛星通信システム1を説明する図である。
図11に示すように、実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星と、低軌道衛星80との各々がGEO-LEO間通信装置を具備する場合に、低軌道衛星80は、低軌道衛星80が収集した配信要求を示すデータを当該人工衛星に対して直接アップロードすることができる。
なお、低軌道衛星80が配信要求を示すデータを収集するエッジサーバ42を兼ねてもよい。また、当該エッジサーバ42は、スマートフォンのダイレクト通信によって送信されたユーザからの配信要求を示すデータを収集してもよい。
【0061】
<実施の形態2に係る動作例5>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例4を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、宇宙データセンタは、静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとから成る。静止衛星群は、経度方向に分散配置されている3機以上の実施の形態2に係る動作例1に記載の人工衛星から構成される。静止衛星群を構成する各人工衛星が具備する記録装置43はエッジサーバ42である。静止衛星群を構成する各人工衛星は、静止衛星30であり、赤道上空において隣接する人工衛星の間において双方向通信を実行するGEO-GEO間通信装置を備える。静止衛星群を構成する3機以上の人工衛星は、赤道上空において円環状通信網を形成している。静止衛星群を構成する少なくとも1機の人工衛星は、静止衛星30と低軌道衛星80との間における通信を実行するGEO-LEO間通信装置を備える。低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星80は、GEO-LEO間通信装置を備える。静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、GEO-LEO間通信装置を用いて通信する。低軌道ブロードバンドコンステレーションは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、静止衛星群を構成する人工衛星が備える記録装置43に収集したデータをアップロードする。静止衛星群と低軌道ブロードバンドコンステレーションとは実施の形態2に係る動作例4に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実施する。
【0062】
人工衛星がエッジサーバ42として機能する場合において、全世界のユーザに対してデジタルコンテンツのオンデマンド配信を実現するためには、当該エッジサーバ42にキャッシングされたデジタルコンテンツを、衛星通信回線を経由してダイレクトにユーザに配信することが合理的である。
図12は、本動作例に係る衛星通信システム1を説明する図である。
図12に示すように、静止軌道上において3機以上の人工衛星が双方向通信を実行することによって赤道上空に円環状通信網を形成し、かつ、全世界に存在するユーザ機器91との通信網を形成する低軌道ブロードバンドコンステレーションとの通信を静止衛星群が確立すれば、静止軌道上のエッジサーバ42から全世界のユーザに対する通信網を形成することができる。そのため、本動作例によれば、全世界のユーザに対してデジタルコンテンツのオンデマンド配信を実現することができるという効果がある。
【0063】
図13は、本動作例に係る低軌道ブロードバンドコンステレーションを説明する図である。
図13に示すように、低軌道ブロードバンドコンステレーションにおいて円環状通信網およびメッシュ状通信網が形成されている。具体的には、低軌道ブロードバンドコンステレーションには複数の軌道面があり、各軌道面において、各低軌道衛星80が前後を飛翔している低軌道衛星80の各々と通信する。また、対象軌道衛星は隣接軌道衛星と通信する。対象軌道衛星は、複数の軌道面のいずれかである対象軌道面を飛翔している低軌道衛星80である。隣接軌道衛星は、対象軌道面に隣接する軌道面を飛翔している低軌道衛星80である。
【0064】
インターネットの全世界普及と、デジタルコンテンツ配信の需要増加とが通信トラフィックの増加および集中という課題を引き起こした。現状、エッジサーバ42などを用いて分散化を進めることによって負荷緩和対策が進むことによって、ユーザをさらに開拓することができ、需要がさらに増えると考えられる。この課題を合理的に解決するためには、コンテンツの配信要求に対してエッジサーバ42を広域かつ階層的に構成することが合理的である。そのため、エッジサーバ42を備える人工衛星を階層構造の上位に据え、全世界に存在するユーザ機器91との通信網を構築する宇宙データセンタ構想が有効である。ここで、当該通信網は低軌道ブロードバンドコンステレーションを含む。
宇宙データセンタが再生中継装置72を備え、コンテンツの配信要求に対して階層構造の下位の地上エッジサーバ42を介してユーザに配信することによって、通信トラフィックの負荷を分散して通信網を運用することができる。この際、ライブ配信事業者のコンテンツを示すデータを宇宙データセンタにアップロードし、アップロードされたデータを全世界にリアルタイム配信することが合理的である。また、ビデオコンテンツの高精細化などによるデータ容量の増大に対応するために、人工衛星が搭載するデジタルペイロードのフレキシビリティを利用して通信スポットビームをニーズに応じて最適制御することが合理的である。
【0065】
<実施の形態2に係る動作例6>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例4を拡張した動作例に当たる。
本動作例において、宇宙データセンタは、実施の形態2に係る動作例5と同様に、静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとから成る。静止衛星群を構成する各人工衛星は、静止衛星30であり、GEO-GEO間通信装置を備える。静止衛星群は、赤道上空において円環状通信網を形成している。低軌道ブロードバンドコンステレーションにおいて、複数の軌道面が経度方向に分散配置されている。複数の軌道面の各軌道面において低軌道を周回している各低軌道衛星80が各低軌道衛星80の前後を飛翔している各低軌道衛星80と双方向通信を実行することによって円環状通信網が形成されていること、かつ、複数の軌道面の各軌道面が他の軌道面と軌道間通信を実行することによって、低軌道ブロードバンドコンステレーションにおいてメッシュ状通信網が形成されている。静止衛星群を構成する少なくとも1機の人工衛星は、GEO-LEO間通信装置を備える。低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星80は、GEO-LEO間通信装置を備える。静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、GEO-LEO間通信装置を用いて双方向通信を実行する。低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星80はエッジサーバ42を備える。低軌道ブロードバンドコンステレーションは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、静止衛星群を構成する人工衛星が備える記録装置43に収集したデータをアップロードする。人工衛星と低軌道ブロードバンドコンステレーションとは実施の形態2に係る動作例4に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実施する。
【0066】
静止衛星30の通信トラフィックが増加した場合に、軌道上においてエッジサーバ42を分散配置することにより静止衛星30の通信トラフィックを緩和することが有効である。低軌道衛星群を構成する各低軌道衛星80がエッジサーバ42として記録装置43を備え、地上からコンテンツを示すデータをエッジサーバ42にアップロードし、エッジサーバ42がアップロードされたデータを保管し、エッジサーバ42が必要に応じて円環状通信網とLEO-GEO間通信を経由してコンテンツを示すデータを静止衛星30にアップロードすることにより分散管理が可能である。
図14は、本動作例に係る衛星通信システム1を説明する図である。
なお、低軌道衛星群を構成する各低軌道衛星80をエッジサーバ42にする場合において、ドーンダスク軌道と呼ばれる太陽同期軌道であるLocal Sun Time06:00または18:00である軌道を低軌道衛星群が採用し、発熱が大きな記録装置43の排熱をアンチサンサイドに対して実行する構成とすることが合理的である。
低軌道衛星80がエッジサーバ42を兼ねる方法は[参考文献1]などに記載されている。
【0067】
[参考文献1]
国際公開第2022/065256号パンフレット
【0068】
<実施の形態2に係る動作例7>
図15は、本動作例に係る衛星通信システム1の構成例を示している。衛星通信システム1は、ライブビデオコンテンツ配信方法を実行する。以下、実施の形態2に係る動作例1との差異を主に説明する。
本動作例において、人工衛星81は、アップロード装置群を構成する各アップロード装置と直接的にまたは間接的に通信する。
通信装置45は、受信装置73と送信装置74と処理装置71とを具備する。アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバ42と、ユーザ機器91とのいずれかである。
人工衛星81は、アップロード装置群を構成するいずれかのアップロード装置である対象アップロード装置と間接的に通信する場合において、ゲートウェイ20を介して対象アップロード装置と通信する。
記録装置43は配信要求DB61を格納する。配信要求DB61は、識別子付ライブビデオコンテンツに対する配信要求を示すデータをデータベース化したデータベースである。記録装置43は、アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置が通信装置45を経由して記録装置43にアップロードした識別子付ライブビデオコンテンツに対する配信要求を示すデータを配信要求DB61に格納する。
計算機41は、配信要求DB61に含まれている配信要求である対象配信要求を示すデータを記録装置43にアップロードしたアップロード装置を選択アップロード装置として選択する。計算機41は、対象配信要求に対応する識別子付ライブコンテンツを示すデータを、処理装置71を経由して配信する配信指令を通信装置45に対して与える。
受信装置73は、アップロード装置群を構成する少なくともいずれかのアップロード装置がアップロードした識別子付ライブビデオコンテンツを示すデータを受信する。
処理装置71は、受信装置73が受信したデータを送信信号に変調する。
送信装置74は、選択アップロード装置に対して、対象配信要求に対応する識別子付ライブビデオコンテンツとして処理装置71が変調した送信信号を配信する。
【0069】
ライブビデオ配信と呼ばれるライブ中継サービスでは、リアルタイムでライブビデオコンテンツの配信を要求したユーザに対してコンテンツを配信する。そのため、人工衛星は、受信データを一時保管して再生中継するのではなく、受信データを一時保管せず、処理回路を用いて受信データを変調して送信データを生成し、配信を要求したユーザに対して生成した送信データを配信する。この衛星通信方式はベントパイプ方式と呼ばれる。
ID付ライブコンテンツを示すデータがエッジサーバ42から人工衛星81にアップロードされる場合もあるが、ユーザが当該データを人工衛星81に直接アップロードしてもよい。
エッジサーバ42とユーザ機器91との各々は、地上に存在してもよく、宇宙に存在してもよい。
【0070】
マルチキャストとライブ配信とでは通信トラフィックが異なり、後者の方が人工衛星から送信する通信トラフィックが多くなる。しかしながら、本動作例によれば、将来の人工衛星の通信容量拡大によりライブ配信の即応性が高くなるという効果がある。また、企業などビッグユーザが増加すれば、通信トラフィックの分布が変化する可能性がある。
【0071】
本動作例において、アップロード装置群を構成するエッジサーバ42である対象エッジサーバは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータを直接的にまたは間接的に人工衛星81が備える記録装置43にアップロードしてもよい。また、人工衛星81は、記録装置43にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付ライブビデオコンテンツを配信してもよい。
【0072】
本動作例において、アップロード装置群を構成するエッジサーバ42である対象エッジサーバは、低軌道ブロードバンドコンステレーションから、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から低軌道ブロードバンドコンステレーションが収集した配信要求を示すデータを低軌道衛星収集データとして受信し、受信した低軌道衛星収集データを直接的にまたは間接的に記録装置43にアップロードしてもよい。
【0073】
<実施の形態2に係る動作例8>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例7を拡張した動作例に当たり、ライブビデオコンテンツ配信方法の実施例に当たる。
本動作例において、人工衛星81は、静止衛星であり、GEO-LEO間通信装置を備えてもよい。低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星80は、GEO-LEO間通信装置を備える。人工衛星81と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、GEO-LEO間通信回線によって通信可能に接続している。
低軌道ブロードバンドコンステレーションは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、収集したデータをGEO-LEO間通信回線を経由して人工衛星81が備える記録装置43にアップロードする。
人工衛星81は、記録装置43にアップロードされた配信要求を示すデータに対応する識別子付ライブビデオコンテンツを配信する。
【0074】
<実施の形態2に係る動作例9>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例7を拡張した動作例に当たる。
本動作例に係る宇宙データセンタは、経度方向に分散配置されている静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとから成る。静止衛星群は、4機以上の人工衛星81から構成される。
静止衛星群を構成する各人工衛星81が備える記録装置43はエッジサーバ42である。静止衛星群を構成する各人工衛星81は、静止衛星30であり、GEO-GEO間通信装置を備える。静止衛星群を構成する3機以上の人工衛星81は、赤道上空において円環状通信網を形成している。静止衛星群を構成する少なくとも1機の人工衛星81はGEO-LEO間通信装置を備える。
低軌道ブロードバンドコンステレーションを構成する少なくとも1機の低軌道衛星80は、GEO-LEO間通信装置を備える。
静止衛星群と、低軌道ブロードバンドコンステレーションとは、GEO-LEO間通信装置を用いて通信する。
低軌道ブロードバンドコンステレーションは、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、静止衛星群を構成する人工衛星81が備える記録装置43に収集したデータをアップロードする。
静止衛星群と低軌道ブロードバンドコンステレーションとは実施の形態2に係る動作例8に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施する。
【0075】
全世界のユーザに対するライブビデオ配信を実現するためには、人工衛星のベントパイプ放送機能を利用して広域に存在する各ユーザに対してリアルタイムで一斉に配信することが合理的である。
静止軌道上の通信衛星によれば、ライブビデオの配信ユーザからコンテンツを示すデータを受信し、軌道上においてリアルタイムで受信したデータを変調し、変調したデータを用いてベントパイプ方式の放送機能により広域に存在する各ユーザに対してライブ配信を実行することができる。また、3機以上の静止衛星30が静止軌道上における円環状通信網を経由して全世界にライブ配信を実行することができる。
なお、極域を含む高緯度地域に存在する各ユーザに関しては静止衛星の通信視野の限界がある。そこで、高緯度地域については、低軌道ブロードバンドコンステレーションを経由してライブ配信を実行することが合理的である。
【0076】
<実施の形態2に係る動作例10>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例1または動作例7を拡張した動作例に当たる。
本動作例に係る通信装置45は、ビーム制御装置46とビームフォーミング装置47とを具備する。
【0077】
ビーム制御装置46とビームフォーミング装置47とを具備する通信装置45であれば、選択したゲートウェイ20、選択したエッジサーバ42、または選択したユーザ機器91に対して、スポットビームと呼ばれる大容量集中ビームによって比較的効率的にコンテンツを配信することができる。
【0078】
<実施の形態2に係る動作例11>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例10を拡張した動作例に当たる。
本動作例に係るアップロード装置群を構成するアップロード装置の少なくとも一部は移動体である。
【0079】
船舶または航空機のような移動体におけるインターネット利用が進んだ。その結果、移動体がエッジサーバ42の役割を担うことによって乗客に通信サービスを提供することができる。また、個人所有船舶または航空機がユーザとして振る舞うこともできる。
ビーム制御装置46を具備する人工衛星81は、移動体の位置に応じて通信ビームの方向を変更することができる。
【0080】
<実施の形態2に係る動作例12>
本動作例は、実施の形態2に係る動作例1を拡張した動作例に当たる。
本動作例に係る計算機41は、アップロード装置群を構成する複数のエッジサーバ42における識別子付コンテンツの通信トラフィックの分布と時間変動との関係を学習した推論モデルを用いて、複数の識別子付コンテンツの各識別子付コンテンツを配信する優先順位と、複数の識別子付コンテンツの各識別子付コンテンツを各アップロード装置に対して配信する順序とを分析し、コンテンツをビーム制御して配信するシーケンスを決定する。
【0081】
AIの宇宙利用が進み、各エッジサーバ42におけるID付コンテンツに対する配信要求の分布状況と分布状況の時間変動とを学習し、日変動と、季節変動と、個人ユーザの数と企業ユーザの数との構成比率の変動と、地上で発生するイベントの影響などに伴う将来のID付コンテンツ要求増減との各々を予測する推論モデルを利用すれば、迅速かつ合理的に中継再生によるコンテンツ配信が実現することができ、通信トラフィックの総量が減少し、電力などの衛星リソースを低減することができるという効果がある。
【0082】
デジタル通信環境の整備が進むにつれてオンデマンド配信およびライブビデオ配信のニーズが高まり、地上における通信トラフィックが過多である状況を緩和する対策として、衛星通信による広域的かつ合理的なコンテンツ配信が待望されている。
通信衛星のフルデジタル化およびフレキシブル化が進んだ結果として、通信衛星は、地上に配備されている複数のゲートウェイ20のみならず、複数のエッジサーバ42および複数のユーザ機器91と直接通信することが可能となった。また、通信装置45がビーム制御装置46とビームフォーミング装置47とを備えることによって、通信装置45は、広域に偏在するエッジサーバ42およびユーザ機器91に対して選択的に通信することができ、迅速かつ合理的にデジタルデータを送信することができる。
衛星通信によりオンデマンド配信を実現する構成として、記録装置43がID付コンテンツを示すデータを格納し、再生中継装置72が記録装置43に格納されているデータを配信する構成が必要である。また、オンデマンド配信を実現するために、ID付コンテンツの配信要求を収集する仕組みが必要である。
そこで、実施の形態2に係る動作例1では、コンテンツ配信事業者が利用するエッジサーバ42が収集したID付コンテンツの配信要求を示すデータを記録装置43に格納し、多くの配信要求を収集したエッジサーバ42を計算機41が選択し、再生中継装置72によりID付コンテンツが配信される。
なお、各エッジサーバ42が多くの配信要求を収集したか否かを判定する方法は様々である。当該方法は、コンテンツ配信事業者があらかじめ配信要求の数が多いか否かを判断する基準である要求数を決める方法であってもよく、複数のエッジサーバ42間の相対比較により収集した配信要求が多い順に所定の数のエッジサーバ42を選択する方法であってもよい。
【0083】
<実施の形態2に係る動作例13>
本動作例に係る宇宙データセンタは、静止衛星群と、低軌道衛星群と、地上設備とを備える。静止衛星群は、経度方向に分散配置されている3機以上の静止衛星30から構成される。低軌道衛星群は、複数の低軌道衛星80から構成される。地上設備は、静止衛星群と低軌道衛星群との各々を運用制御する。
静止衛星群を構成する各静止衛星30は、エッジサーバ42と再生中継装置72とを備え、GEO-GEO間通信装置を備える。静止衛星群は、赤道上空において円環状通信網を形成している。静止衛星群を構成する少なくとも1機の静止衛星30はGEO-LEO間通信装置を備える。
低軌道衛星群を構成する各低軌道衛星80は、経度方向に分散配置されている複数の軌道面のいずれかを飛翔している。複数の軌道面の各軌道面において低軌道を周回している各低軌道衛星80が各低軌道衛星の前後を飛翔している各低軌道衛星80と双方向通信を実行することによって円環状通信網が形成されていること、かつ、複数の軌道面の各軌道面が他の軌道面と軌道間通信を実行することによって、低軌道衛星群はメッシュ状通信網を形成している。低軌道衛星群を構成する少なくとも1機の低軌道衛星80は、GEO-LEO間通信装置を備える。低軌道衛星群を構成する少なくとも1機の低軌道衛星80はエッジサーバ42を備える。
静止衛星群と低軌道衛星群とは、GEO-LEO間通信装置を用いて双方向通信を実行する。
低軌道衛星群は、アップロード装置群を構成する少なくとも1つのユーザ機器91から配信要求を示すデータを収集し、静止衛星群を構成する静止衛星30が備えるエッジサーバ42である対象エッジサーバに収集したデータをアップロードする。
アップロード装置群を構成する各アップロード装置は、エッジサーバ42と、ユーザ機器91とのいずれかである。
静止衛星群は、配信要求を示すデータを対象エッジサーバにアップロードした各アップロード装置に対して各アップロード装置がアップロードしたデータが示す配信要求に対応するオンデマンドコンテンツを配信する。
【0084】
<実施の形態2に係る動作例14>
本動作例に係る1つの実施例において、事業装置は、実施の形態2に係る動作例2から4のいずれか1つに記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実行し、また、通信回線利用モニタ装置を備える。通信回線利用モニタ装置は、オンデマンドコンテンツの通信トラフィックを計測し、計測した結果を示すデータを記録する。
【0085】
本動作例に係る1つの実施例において、事業装置は、実施の形態2に係る動作例2から4のいずれか1つに記載のオンデマンドコンテンツ配信方法を実行し、また、サーバ利用モニタ装置を備える。サーバ利用モニタ装置は、各オンデマンドコンテンツのデータ量と、各オンデマンドコンテンツの保管期間を示すデータとを記録する。
【0086】
本動作例に係る1つの実施例において、事業装置は、通信回線利用モニタ装置と、サーバ利用モニタ装置とを備える。当該事業装置は、実施の形態2に係る動作例13に記載の宇宙データセンタにおいてオンデマンド配信を実施する。
【0087】
本動作例に係る1つの実施例において、記録装置43は、モニタ装置として、通信回線利用モニタ装置、またはサーバ利用モニタ装置を備える。当該実施例において、計算機41は、モニタ装置の出力情報を機械学習することによって推論モデルの学習推論アルゴリズムを更新する。
【0088】
オンデマンドコンテンツ配信に関わるステークホルダーとしては、コンテンツ配信事業者と、衛星運用事業者と、ネットワーク事業者と、クラウドサーバまたはエッジサーバなどのサーバ事業者と、低軌道衛星通信事業者とが挙げられる。オンデマンドコンテンツを配信するシステムの運用においてユーザからの課金収入を原資とし、当該システムの運用は相互に通信回線利用料とサーバ利用料による契約関係に基づいて成立する。そのため、通信回線利用モニタ装置と、サーバ利用モニタ装置とを各事業者が具備することによって、利用料授受の算定根拠が明確になる。各装置が収集した情報は、複数のエッジサーバ42の数量および配置、コンテンツの更新頻度および保管期間などのシステム運用の最適化に資する情報である。ここで、通信回線利用モニタ装置およびサーバ利用モニタ装置の各々は、オンデマンドコンテンツの配信に関して各事業者間相互の透明性があるアルゴリズムに基づく処理を実行する。
【0089】
また、昨今、複数のステークホルダーによる合弁事業またはチーミングによる新しい業態が発生している。
衛星運用事業者とサーバ事業者とネットワーク事業者と低軌道ブロードバンドコンステレーション業者とコンテンツ配信事業者との全てまたは一部が、宇宙データセンタ事業に取り組み、米国のハリウッド映画または韓国ドラマ、さらに日本のアニメーション作品をオンデマンド配信コンテンツとし、自動翻訳を活用し、オンデマンドコンテンツ配信方法を実行することによって宇宙データセンタからオンデマンド配信コンテンツを配信する事業を実践すれば、デジタル通信インフラの整備が進んでいない地域に存在する全世界の全てのユーザに対してオンデマンドコンテンツ配信を実行することができる。
この際、複数の事業者の各々の貢献度に応じた契約条件を設定し、活動実態をモニタするためにも通信回線利用モニタ装置とサーバ利用モニタ装置とが有効である。
【0090】
<実施の形態2に係る動作例15>
本動作例の1つの実施例において、実施の形態2に係る動作例14に係る事業装置は自動翻訳装置を備える。当該事業装置は、オンデマンドコンテンツまたはライブビデオコンテンツに含まれている音声言語を自動翻訳装置によって自動翻訳し、自動翻訳した結果を含むデータを配信する。
【0091】
本動作例の1つの実施例において、実施の形態2に係る動作例1に係る再生中継装置72は自動翻訳装置を具備する。自動翻訳装置は、各識別子付コンテンツに含まれている音声言語に対して自動翻訳を実行する。当該再生中継装置72は、自動翻訳を実行した結果を示すデータを送信信号に変調する。
【0092】
コンテンツ事業装置が機械翻訳を実施してもよいが、機械翻訳が高性能化しているため、衛星運用事業者が人工衛星の再生処理回路を用いて機械翻訳を実施してもよい。なお、人工衛星が軌道上で自動翻訳することは、衛星を運用する事業装置が機械翻訳を実施することに該当する。
【0093】
<実施の形態2に係る動作例16>
本動作例において、コンテンツ配信事業装置は、通信回線利用モニタ装置と、サーバ利用モニタ装置とを備える。当該コンテンツ配信事業装置は、実施の形態2に係る動作例2から4のいずれか1つに記載のオンデマンドコンテンツ配信方法、または、実施の形態2に係る動作例7もしくは8に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施することにより、通信回線利用料とサーバ利用料とを集計する。
【0094】
<実施の形態2に係る動作例17>
本動作例において、ネットワーク事業装置は通信回線利用モニタ装置を備える。当該ネットワーク事業装置は、実施の形態2に係る動作例2から4のいずれか1つに記載のオンデマンドコンテンツ配信方法、または、実施の形態2に係る動作例7もしくは8に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施するコンテンツ事業装置に対して請求する利用料である通信回線利用料を集計する。
【0095】
<実施の形態2に係る動作例18>
本動作例において、サーバ事業装置は、サーバ利用モニタ装置を備え、クラウドサーバとエッジサーバ42との少なくともいずれかのメモリ領域を貸出したことの対価であるサーバ利用料を請求する。当該サーバ事業装置は、実施の形態2に係る動作例2から4のいずれか1つに記載のオンデマンドコンテンツ配信方法、または、実施の形態2に係る動作例7もしくは8に記載のライブビデオコンテンツ配信方法を実施するコンテンツ事業装置に対して請求するサーバ利用料を集計する。
【0096】
<実施の形態2に係る動作例19>
本動作例において、宇宙データセンタ事業装置は、実施の形態2に係る動作例14に記載の宇宙データセンタにおいてオンデマンド配信を実行するコンテンツ事業装置とネットワーク事業装置とサーバ事業装置との全てまたは一部から構成される。
【0097】
<実施の形態2に係る動作例20>
本動作例に係る事業装置は、実施の形態2に係る動作例19に記載の宇宙データセンタ事業装置を構成する事業装置であり、コンテンツ事業装置とネットワーク事業装置とサーバ事業装置とのいずれかである。
【0098】
<実施の形態2に係る動作例21>
本動作例に係る1つの実施例において、地上設備は、実施の形態2に係る動作例5と6と9と14とのいずれか1つに記載の宇宙データセンタを運用制御する。地上設備の構成は地上データセンタ90の構成と同様であってもよい。
【0099】
本動作例に係る1つの実施例において、地上設備は、実施の形態2に係る動作例1または7に記載の人工衛星を運用制御する。
【0100】
<実施の形態2に係る動作例22>
本動作例に係る低軌道ブロードバンドコンステレーション事業装置は、低軌道ブロードバンドコンステレーションによる通信回線利用事業装置に対して通信回線利用料を課す。当該低軌道ブロードバンドコンステレーション事業装置は、GEO-LEO間通信装置を備える低軌道衛星80を含み、実施の形態2に係る動作例4に記載のオンデマンドコンテンツ配信方法によってユーザからの配信要求を示すデータをアップロードする。
【0101】
***実施の形態2の効果の説明***
図16は従来のコンテンツ配信を説明する図である。
図16において、地上コアサーバからユーザへの配信が示されている。従来のコンテンツ配信では、地上に配備されているコアサーバにコンテンツを格納し、ユーザに対して地上通信回線を経由して配信していた。この場合、遠隔地に存在するユーザに対しても個別にコンテンツを配信する。そのため、従来のコンテンツ配信において、遠距離通信を繰り返すことによる、コアサーバへの負荷集中と、通信トラフィックの増大とが課題であった。
【0102】
この課題を解決する手段として、複数のエッジサーバ42を分散配置しておき、コアサーバから各エッジサーバ42にコンテンツを予め格納(プリキャスト)し、各エッジサーバ42から近傍のユーザ機器91に対してコンテンツを配信する手段が挙げられる。
図17は本手段を説明する図である。
図17において、地上エッジサーバを介するユーザへの分散配信が示されている。この手段により、負荷分散と、遠距離通信回数の削減とが実現される。
【0103】
本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信方法の1つの実施例は、コアサーバの機能を人工衛星が備えるエッジサーバ42に移管し、地上に分散配置されている各エッジサーバ42に対するコンテンツのプリキャストを人工衛星からの一斉配信(マルチキャスト)により実現するものである。
図18は本実施例を説明する図である。
図18において、衛星から地上エッジサーバへの一斉配信と、地上エッジサーバからユーザへの分散配信とが示されている。本実施例によれば、コアサーバから各エッジサーバ42に対してコンテンツをプリキャストするために遠距離通信を繰り返し実行することを解消することにより、通信トラフィックの総量を削減することができる。
マルチキャストに伴う通信トラフィックの改善効果は、コンテンツの人気の統計的分布に依存すると考えられる。ここで、人気がある上位20個のコンテンツの配信が全配信の8割を占めるという分析結果がある。この分析結果が実際に実現されているとき、本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信方法により上位20個のコンテンツを広域に点在するエッジサーバ42に一斉配信し、各エッジサーバ42から近傍のユーザ機器91に対して配信サービスを実施した場合に、コアサーバから各エッジサーバ42までの遠距離通信に対応する通信トラフィックの総量が2割に減少する効果がある。
【0104】
ユーザに対して直接マルチキャストする方法は、具体例として、オンデマンドコンテンツの配信要求を示すデータをアップロードしたユーザ機器91が、オンデマンドコンテンツを解読する鍵を示すデータと、当該コンテンツの一斉配信予定を示すタイムテーブルを示すデータとをダウンロードしておき、BS(Broadcasting Satellite)放送をビデオ録画することと同様にユーザ機器91のストレージにダウンロードする方法である。ここで、BS放送では録画時間としてコンテンツの再生時間と同じ時間が必要である。しかしながら、本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信方法によれば、コンテンツのダウンロード時間は短時間である。そのため、本実施の形態によれば、コンテンツの配信事業者が多種多様なコンテンツを配信することができるという効果がある。
また、人気が高いコンテンツの配信頻度を高くすることにより、ユーザの配信待ち時間を短縮することができるという効果がある。
【0105】
昨今のシネマコンプレックスでは、同一の施設内に複数のスクリーンを持ち、多数の人気コンテンツを同時に上映すると共に繰り返し上映することにより集客している。ここで、人工衛星のビーム制御機能が高度化したため、ビーム制御機能を活用することによって、周波数と、エリアと、時間帯との各々の使い分けにより、多種多様なコンテンツを複数回繰り返し一斉に配信することがシネマコンプレックスのアナロジとして考えられる。このアナロジにより、ユーザが選択することができるオンデマンドコンテンツの選択肢と、受信する時間帯の自由度とが増えるという効果がある。
また、新作映画の封切りと同時に本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信方法による全世界に向けたコンテンツの配信が将来的に実現されれば、シネマコンプレックスのような設備がなく、上映可能なコンテンツの数に限りのある地域においても多種多様な新作映画を配信することができる。また、映画館では実時間の拘束が必要あるが、デジタルコンテンツのダウンロード時間は短時間であるため、本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信方法を活用することによりユーザを集客する効果が増大することが期待される。
【0106】
昨今、宅配システムが高度化し、オンラインで購入した多くの商品が一晩待てば配達されるようになった。ここで、宅配システムのアナロジとして、宇宙データセンタが、宅配システムにおける自動集配システムの役割を担い、デジタルコンテンツの配信要求に対してデジタルコンテンツを収集すると共に通信トラフィックが少ない夜間にデジタルコンテンツを一斉配信することが考えられる。夜間の通信によって、ユーザは通信費用を節約することができる。宅配システムでは、配達員が多種多様なコンテンツを地域毎に分担して配達することによって合理化されている。一方、本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信システムには、いわば人工衛星が配達員を広域に渡って担うことによって配信システムが合理化される効果がある。
【0107】
現状のオンデマンドコンテンツ配信ビジネスにおいて、ユーザはコンテンツに対して料金を支払う他に通信事業者に対して通信料を支払う。一方、本実施の形態に係るオンデマンドコンテンツ配信方法に関する事業を展開する事業者が軌道上サーバ利用料と通信回線利用料とを含む料金を徴収するコンテンツ課金による投資回収モデルを創出すれば、当該事業者は、衛星マルチキャストによる効率化により競争力が高いユーザ課金モデルを実現することができる。
【0108】
***他の実施の形態***
実施の形態1について説明したが、本実施の形態のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、本実施の形態を部分的に実施しても構わない。その他、本実施の形態は、必要に応じて種々の変更がなされても構わず、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施されても構わない。
なお、前述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示と、その適用物と、用途の範囲とを制限することを意図するものではない。説明した手順は、適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 衛星通信システム、20 ゲートウェイ、30 静止衛星、31 衛星制御装置、32 通信装置、33 推進装置、34 姿勢制御装置、35 電源装置、41 計算機、42 エッジサーバ、43 記録装置、45 通信装置、46 ビーム制御装置、47 ビームフォーミング装置、50 地上システム、61 配信要求DB、62 配信コンテンツ、71 処理装置、72 再生中継装置、73 受信装置、74 送信装置、80 低軌道衛星、81 人工衛星、90 地上データセンタ、91,91B,91C ユーザ機器、600 地球、710 プロセッサ、711 制御部、720 主記憶装置、730 補助記憶装置、740 入力インタフェース、750 出力インタフェース、760 通信インタフェース、770 信号線、780 電子回路、810 地上側通信装置。