(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166275
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】拡張ビームによるニアアイビューイング用ウェアラブルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241121BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20241121BHJP
G02C 11/00 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
G02C11/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154186
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2021576052の分割
【原出願日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】62/863,300
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519191846
【氏名又は名称】アマルガメイテッド ヴィジョン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】デヴィス アダム ジェイ
(57)【要約】
【課題】看者の視認性が阻害にくいウェアラブルビューイング装置を提供する。
【解決手段】光学装置であり、変調ビームを走査鏡の方へと差し向けるレーザ光源を有する。対物レンズ1220とその鏡1214とにより、その走査鏡に曲率中心がある湾曲合焦面を画定する。数値開口(NA)エキスパンダ960をそれに対し同心な湾曲合焦面に対し形状一致させる。瞳リレー光学系により入射瞳を看者の出射瞳へと中継し、その瞳リレー光学系により入射瞳・出射瞳看光路を画定する。その光路が、その変調ビーム由来の光のうち半分を透過させる湾曲鏡面を有し、且つ入射瞳在の第1曲率中心を有する。その光路上の第1偏向ビームスプリッタPBSが走査鏡から受光し、第1偏向の入射光を反射、第2偏向の入射光を透過させる。その光路により、その変調光ビームを第1偏光子へと2回差し向ける。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
看者により着用される光学装置であって、
変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、
を備え、前記対物レンズ及び前記走査鏡により前記走査された変調ビームに係る湾曲合焦面が画定され、その湾曲合焦面が前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有する光学装置であり、
前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するエキスパンション面を有し、そのエキスパンション面により前記走査された変調ビームの数値開口(NA)を増大させるNAエキスパンダであり、屈折力を有していないNAエキスパンダと、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継するよう配置されており、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系と、
を備え、前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏向の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏向に直交する第2偏向の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子と、を備え、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームが前記第1偏光子に2回差し向けられ、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームが平行化され前記出射瞳の方へと差し向けられる光学装置。
【請求項2】
請求項1の光学装置であって、更に、前記対物レンズ・前記走査鏡間の集束光路上にビームスプリッタとして配置された第2偏光子を備え、その第2偏光子が、前記対物レンズ・前記走査鏡間に延びる光軸に対し約5~30度の斜角に向けられている光学装置。
【請求項3】
請求項1の光学装置であって、更に、前記対物系から前記走査鏡に向かいそこから前記数値開口(NA)エキスパンダに向かう経路に沿い、前記変調ビームの前記経路を屈曲させる偏向性反射レンズを備える光学装置。
【請求項4】
請求項1の光学装置であって、前記NAエキスパンダがレンズレットアレイである光学装置。
【請求項5】
請求項1の光学装置であって、前記NAエキスパンダが拡散性光学素子である光学装置。
【請求項6】
請求項1の光学装置であって、前記NAエキスパンダがホログラフィック光学素子である光学装置。
【請求項7】
請求項1の光学装置であって、更に、前記光路沿いに1枚又は複数枚の1/4波長板が備わる光学装置。
【請求項8】
請求項1の光学装置であって、更に、前記NAエキスパンダと凹レンズ表面の間に配置された円偏光子が備わる光学装置。
【請求項9】
請求項8の光学装置であって、前記円偏光子が円柱状湾曲面を有する光学装置。
【請求項10】
請求項1の光学装置であって、前記瞳リレー光学系が、更に、前記NAエキスパンダのところに形成された像を看者の網膜へと中継する光学装置。
【請求項11】
請求項8の光学装置であって、前記NAエキスパンダが、円偏向されている入射光の偏向状態を保持する光学装置。
【請求項12】
請求項1の光学装置であって、更に、前記NAエキスパンダに振動又は運動を付与するよう構成されており前記走査鏡に対する前記NAエキスパンダの表面の同心性を保持するアクチュエータを備える光学装置。
【請求項13】
請求項1の光学装置であって、更に、前記対物レンズ及び前記NAエキスパンダの同期的運動をもたらすよう、ひいては前記投射像の深さアニメーションのため複数通りの焦点距離を前記レーザビームにもたらすよう構成された、1個又は複数個のアクチュエータを備える光学装置。
【請求項14】
看者により着用される光学装置であって、
変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、
を備え、前記対物レンズ及び前記走査鏡により前記走査された変調ビームに係る湾曲合焦面が画定され、その湾曲合焦面が前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有する光学装置であり、
屈折力を有しておらず、前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するエキスパンション面を有し、そのエキスパンション面により前記走査された変調ビームの数値開口(NA)を増大させるNAエキスパンダであり、前記NAエキスパンダエキスパンション面が光軸沿いに配置されているNAエキスパンダと、
前記光軸に対し一通り又は複数通りの方向に沿い前記NAエキスパンダを並進させるよう励振可能なアクチュエータと、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継するよう配置されており、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系と、
を備え、前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏向の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏向に直交する第2偏向の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子と、を備え、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームが前記第1偏光子に2回差し向けられ、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームが平行化され前記出射瞳の方へと差し向けられる光学装置。
【請求項15】
請求項14の光学装置であって、前記アクチュエータが第1アクチュエータである光学装置であり、更に、前記光軸沿いで前記対物レンズを並進させるよう励振可能な第2アクチュエータを備える光学装置。
【請求項16】
請求項14の光学装置であって、更に、前記対物レンズ・前記走査鏡間の集束光路上にビームスプリッタとして配置された第2偏光子を備え、その第2偏光子が、前記対物レンズ・前記走査鏡間に延びる光軸に対し約5~30度の斜角に向けられている光学装置。
【請求項17】
請求項14の光学装置であって、前記瞳リレー光学系が単一ピースとして形成されている光学装置。
【請求項18】
請求項14の光学装置であって、前記アクチュエータが、前記NAエキスパンダエキスパンション面の被走査部分に関しそのNAエキスパンダエキスパンション面の曲率中心を保持する並進をもたらすよう、構成されている光学装置。
【請求項19】
看者向けに画像を表示する方法であって、
走査鏡からの走査パターン及び対物レンズに従い変調光ビームに係る湾曲合焦面を画定し、但しその湾曲合焦面を、前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有するものとし、
屈折率を有していない数値開口(NA)エキスパンダ表面を前記変調光ビームの経路沿いに配置することで前記変調走査光ビームのNAを増大させ、但し前記NAエキスパンダ表面を、前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するものとし、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系を用い、光学的に中継する方法であり、
前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏向の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏向に直交する第2偏向の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子と、を備え、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームを前記第1偏光子に2回差し向け、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームを平行化して前記出射瞳の方へと差し向ける方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記NAエキスパンダ表面の配置に際し拡散素子を配置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本願では、「拡張ビームによるニアアイビューイング用ウェアラブルディスプレイ」(WEARABLE DISPLAY FOR NEAR-TO-EYE VIEWING WITH EXPANDED BEAM)と題するDavid Kessler及びAdam J. Davis名義の2019年6月19日付米国暫定特許出願第62/863300号に基づく利益を主張し、その全容を本願に繰り入れる。同一譲受人による係属中の「ニアアイビューイング用ウェアラブルディスプレイ」(WEARABLE DISPLAY FOR NEAR-TO-EYE VIEWING)と題するKessler et al.名義の特許文献1を参照する。
【0002】
[技術分野]
本件開示は総じてニアアイ(near-to-eye)ディスプレイに関し、より具体的には、同心デザインを呈する瞳リレー(中継)構成を採るイメージング装置を採用したディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
画像コンテンツをウェアラブル(着用可能)デバイスから提供する策が多数提案されている。その装置を着用している看者(viewer)向けに画像コンテンツを表示するため、様々な種類のゴーグル、眼鏡その他の装置が発表されている。それらのデバイスのなかには完全没入型のものがあり、そうしたものによれば、デバイス着用時に看者に見えるのがその装置による生成像のみであり外界を見ることができない仮想現実(VR)表示を提供することができる。これに代え、現実世界の見え具合が様々に違うものが他のデザインで以て提供されており、そうしたものによれば、生成像を現実世界像上に重畳させて拡張現実(AR)又は複合現実(MR)表示にすることや、生成像を何らかのやり方で用い看者視野内の現実世界可視コンテンツを補強することができる。
【0004】
ウェアラブル表示装置は情報提示及び補強画像表示に関し少なからぬ展望をもたらす装置であり、それにより多くの分野で性能及び効率を高めることができ、またそれを助けとして看者による視野内可視コンテンツ理解を増進することができる。医療及び歯科医療では、例えば、事前に格納された画像コンテンツやオプション的に後処理された画像コンテンツ、或いは別観点から現在取得中の画像コンテンツを見せる能力が助力となり、医療従事者が、診断及び処置の助けになるであろう詳細データをより正確に得ることができる。現状では高コストな3Dイメージングシステムからしか入手できないイメージングデータを、さほど高価でないウェアラブルイメージング器具上でのビューイング(看取)に使用可能なフォーマットにて提供することで、医療従事者がその情報を活発な臨床環境にて受け取ることが可能となる。その空間把握性が高く関連細部提示に秀でる立体イメージングは、医用イメージング案内又は医用データを用い患者を処置する者だけでなく他分野習熟者にとっても、ひときわ有用たりうる。加えて、非立体的2D画像コンテンツの提示であっても、阻害なく一次視野の明澄可視性をもたらしうるアイウェアにより提供されるのであれば、患者観察及び遠隔医療での使用や遠隔診断又は施療案内での使用、並びに産業用電子機器、コンシューマ向け電子機器その他の用途での使用を初め、様々な機能との関連で有用たりうる。
【0005】
ウェアラブルディスプレイとの関連で提案されている装置の多くには、装置のサイズ、かさばり及び不便さ、部材及び像の配置、貧弱な画質、眼疲労その他の難点があるため、患者がその装置により何とはなしに煩わされている。より自然なビューイング体験を提供すべく多くの賢明な策が構想され、また画質向上を目指して多くの前進が導入されているとはいえ、それらの策の多くでフォームファクタがなおも、それらの装置の広域採用の獲得、とりわけ長期使用向けのそれや仕事又はレクリエーション活動時のそれを困難化させている。それらの嵩張ったサイズ及び外観がなお、多くの人々にとってのウェアラブルイメージング装置の訴求力を制限する重大な要因であると考えられる。
【0006】
長年に亘る設計努力と最適化、例えば小型化とイメージングテクノロジ改良の積み重ねにもかかわらず、人間工学的に許容でき高画質なウェアラブルディスプレイデバイスを設計することは、明らかに継続的難題のままとなっている。自然な「感触」があり容易に着用及び使用できるウェアラブルディスプレイデバイスにする上首尾策を、捉えられないままとなっている。即ち、察せられる通り、高画質がもたらされ、軽量、安価で使いやすく従来デザインに比べ人間工学的に侵襲的でも面倒でもなく、しかも一次視野を阻害又は削減することなく拡張表示機会が提供されるような、単眼若しくは両眼2D表示又は両眼立体表示を行えるウェアラブルデバイスを求める需要が存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0149862号明細書
【特許文献2】米国特許第3748015号明細書
【特許文献3】米国特許第8274720号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0242635号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jampel and Shi, “The Primary Position of the Eyes, The Resetting Saccade and the Transverse Visual Head Plane”, Investigative Ophthalmology and Visual Science, Vol 33, No.8, July 1992, page 2501
【非特許文献2】The Dictionary of Optometry and Visual Science, 8th Edition, Michel Milodot, Elsevier 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件開示の目的は直接的仮想網膜表示の分野、より一般にはウェアラブル装置からの仮想現実ビューイング向け虚像提示として知られている分野を、進歩させることにある。本件開示の諸実施形態では、好適画質が得られその視野に亘る看者の視認性がほとんど又は全く阻害されないウェアラブルビューイング装置が提供される。本件開示の諸実施形態によれば、従来型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の数多な光学的、生理学的及び人間工学的制約を減らして改善型ビューイング装置を提供することができる。本件開示の諸実施形態によれば、ウェアラブルビューイング装置の視野を広げ、走査、ビーム幅調整、多焦点明視野及び関連する光学諸部材による多用途配列を超ニアアイイメージング配列の態にすること、例えば光学部材が目の物焦点距離内に入り込んでいる諸実施形態を提供することができる。
【0010】
これらの目的は専ら実証例として与えたものであり、その種の目的を以て本件開示の1個又は複数個の実施形態の代表例とすることができる。本願では、語「代表例」を、「一例、事案又は例証として働くもの」という意味で用いている。本願にて「代表例」として述べられている全ての態様が、必ずしも、他の諸態様に比べ好適又は有利であると解されるわけではない。
【0011】
その他の望ましい諸目的並びに本件開示により生来的に達成される諸長所は、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には想起可能であり或いは察せられよう。本発明は添付する特許請求の範囲によって定義される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本件開示のある態様により提供されるニアアイビューイング用光学装置は、看者により着用される光学装置を備え、その装置が、
変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、
を備え、前記対物レンズ及び前記走査鏡により前記走査された変調ビームに係る湾曲合焦面が画定され、その湾曲合焦面が前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有する光学装置であり、
屈折率を有しておらず、前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するエキスパンション面を有し、前記走査された変調ビームの数値開口(NA)をそのエキスパンション面により増大させるNAエキスパンダと、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継するよう配置されており、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系と、
を備え、前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏向の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏向に直交する第2偏向の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子と、を備え、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームが前記第1偏光子に2回差し向けられ、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームが平行化され前記出射瞳の方へと差し向けられるものである。
【0013】
本件開示の上述その他の諸目的、特徴及び長所については、本件開示の諸実施形態についての後掲のより具体的な記述並びに添付図面中での描写から明らかとなろう。図中の諸要素は必ずしも互いに同縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】看者の水平視野を示す模式的上面図である。
【
図1B】前方を見ている起立看者の垂直視野を通常視野及び周辺視野で以て示す模式的側面図である。
【
図1C】前方を見ている着席看者の垂直視野を通常視野及び周辺視野で以て示す模式的側面図である。
【
図1D】目の諸部分並びにその目の物焦点距離及び像焦点距離を示す断面図である。
【
図1E】本件開示のある実施形態に係る画像源の構成諸部材を示す模式図である。
【
図1F】イメージング装置のアイピース向けの在来「パンケーキ」型デザインを示す模式図である。
【
図2A】本件開示のある実施形態に係るニアアイビューイング用イメージング装置内瞳リレーの構成諸部材を示す斜視図である。
【
図2B】本件開示のある瞳リレー実施形態に係るニアアイビューイング用イメージング装置の構成諸部材を示す側面図である。
【
図2C】ニアアイビューイング用瞳リレーの別の実施形態の側面図である。
【
図3A】本件開示のある実施形態に係る走査及びプレフォーカス用入射光学系を示す模式図である。
【
図3B】本件開示のある実施形態に係る走査及びプレフォーカス用入射光学系を示す模式図である。
【
図3C】その入射光学系に係る面及びレンズ特性のリストを示す図である。
【
図4A】「パンケーキ」型光学構成を有する瞳リレーを用いたニアアイビューイング用イメージング装置に係る構成の側面外観を示す図である。
【
図4B】
図4の屈折型構成に係る面及びレンズ特性のリストを示す図である。
【
図4C】瞳リレーを用いたニアアイビューイング用イメージング装置に係る構成の斜視外観を示す図である。
【
図4F】屈曲光路を有するシステムを示す図である。
【
図6】看者顔面上におけるイメージング装置の側面外観を示す図である。
【
図7】看者顔面上におけるイメージング装置の正面外観を示す図である。
【
図8A】歪補正用ビームスプリッタ付対称配列の模式的側面外観を示す図である。
【
図8C】非補正時に
図4Aの実施形態に係る走査により生じうる台形歪を示す図である。
【
図8D】その歪に関しなされる補正を示す図である。
【
図9A】同心数値開口(NA)エキスパンダを利用する瞳リレー装置を示す模式図である。
【
図9B】NAエキスパンダにより走査イメージングビームの角度特性がどのようにして変更されるかを示す模式図である。
【
図10A】ある実施形態に係る瞳リレー装置に関し湾曲、厚み及び素材データを示す図である。
【
図10B】ある実施形態に係る瞳リレー装置に関し湾曲、厚み及び素材データを示す図である。
【
図11】走査システムに対する改善型入射ビーム整形器を示す模式図である。
【
図12】改善型走査システムを有する瞳イメージング装置を示す模式図である。
【
図13】走査鏡に対し同心なNAエキスパンダと併せ画像発生器を示す斜視図である。
【
図14】円筒状に湾曲した円偏光子が光路上に配置された実施形態を示す斜視図である。
【
図15】NAエキスパンダに機械的運動をもたらすオプション的なアクチュエータを示す側面図である。
【
図16】パンケーキ型イメージング光学系により形成される虚像の見掛け上の所在個所を、明視野イメージングを用い変更する段取りを、簡略化された形態で示す図である。
【
図17】複数通りの焦点距離を有する仮想網膜ディスプレイを用い明視野イメージングを行うイメージング装置の機能部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願提示の諸図面は、本件開示に従い動作原理及び個別光路沿い部材間関係を描写するために与えられており、実際のサイズ又は縮尺を示す意図で以て描かれてはいない。基本構造上の関係や動作原理を強調するには幾らか誇張が必要であろう。記載されている諸実施形態の実現に必要であろう幾つかの従来部材、例えば電力供給、パッケージング及び実装に用いられる支援部材については、記述を簡略化するため図中に示さないようにしている。後掲の図面及び文章中、類似部材には類似する参照符号を割り振ってあり、諸部材及び配列に関し或いは既述部材の相互作用に関する類似記述については、省かれていることがある。
【0016】
語「第1」、「第2」等が用いられている場合、それにより必ずしも何らかの順序関係又は優劣関係が示されるわけではなく、寧ろある要素又は期間を別のそれからよりはっきり区別するため用いられていることがある。語「複数」は少なくとも2個を意味している。
【0017】
本件開示の文脈上、語「励振可能な」は、電力の受領に応じ、またオプション的にはイネーブル信号の受信に応じて、ある部材又はデバイスにある機能を実行させうることを、表している。
【0018】
本件開示の文脈上、位置指示語例えば「上」及び「下」、「上方」及び「下方」並びにそれに類する表現は、アセンブリ又は構造の様々な面又は外観を差別化すべく記述的に用いられており、光学装置におけるそのアセンブリの何らかの必須姿勢が記述されているわけではない。本願中の用語「上流」及び「下流」にはそれら自身の在来用法があり、それによって、光路沿いに進む光につき光源や調光又は方向転換部材の相対位置を指し示すことができる。
【0019】
本件開示の文脈上、語「結合された」の意図は、2個以上の部材間に機械的連携、連結、関連又はリンクがあること、ひいてはある部材の配置がその結合先部材の空間配置に影響することを、指し示すことにある。機械的結合、という場合、2個の部材が直に接している必要はなく、1個又は複数個の介在部材を介しリンクされていてもかまわない。
【0020】
本件開示の文脈上、句「左目像」は看者の左目内に形成された虚像を、また「右目像」は看者の右目内に形成された対応する虚像を指している。句「左目」及び「右目」を、立体像対をなす個々の像を形成させるイメージング部材同士を区別するための形容句として用いてもよく、そうした考え方は立体イメージング技術習熟者には広範に理解されている。
【0021】
光学的瞳リレーシステムでは光軸及び光路が画定され、その光路によって、第1位置在の第1瞳に入射したビームが第2瞳位置へと伝達される。即ち、第1位置在のアパーチャ(開口)から出てくる走査ビームを全て差し向け、1:1なるサイズ比にて又は何らかの倍率で以て第2位置にて重ならせることができる。本件開示の諸実施形態では瞳拡大が必要でないので、本願記載の瞳リレー光学系は、1:1リレーとすることができる。とはいえ付加的な拡大を行うこともできる。第1,第2瞳位置それぞれにおけるビームは同一ではなく、そのリレーシステムへの入射瞳にて発散的であったビームが出射瞳では平行化されている。瞳リレーシステムにおける入射瞳及び出射瞳は諸光学部材により明瞭に画定される。
【0022】
周知の通り光学システムには二組の主要な共役面がある。一組目の共役面はその光学システムの物面及び像面で構成され、二組目の共役面は入射瞳及び出射瞳で構成される。既定として、イメージングを論ずる際の共役面は、物面及び像面のことであると理解されたい。
【0023】
光学分野及び本件開示での用法によれば、語「瞳リレー」は、その光学システムの主機能が入射瞳を出射瞳へと結像させる(イメージングする)ことである旨を強調するため、用いられるものである。イメージングは瞳リレー光学系を用いるシステムで以て成し遂げることができる;但し、その動作原理は、光学設計技術習熟者にはよく知られている通り、第1瞳の第2瞳への中継に依拠している。
【0024】
光学システムに係る収差補正条件は、そのシステムが物対像イメージャであるのかそれとも瞳リレーであるのかにより異なる。イメージングシステムは一般に非コヒーレント光と併用されるので、物点間位相差はほとんど又は全く関心事にならない。しかしながら瞳リレーでは入射瞳での位相が考察対象となる。通常、瞳リレーは入射瞳を中心としある画角をなす平行化ビームを受け入れて出射ビーム、通常は平行化され出射瞳を中心としているそれをもたらすものであり、入射ビームの位相の劣化を伴わない。
【0025】
光学設計習熟者には周知の通り、それら二組の共役に対応し二組の収差を補正する必要があろう。光学系習熟者の間では、出射瞳に対する入射瞳の共役に関わる一組の収差のことを、「瞳収差」と称している。例えば、周知なイメージングシステムの一つに、「単位パワーイメージングカトプトリックアナスティグマート」(Unit Power Imaging Catoptric Anastigmat)と題するOffner名義の特許文献2にて開示されている「オフナーシステム」がある。オフナーシステムは像平面在の弧が補正されるよう設計される。しかしながらリレーとしては補正されず、入来する平行化ビームは、オン軸な場合でさえも、強く劣化することとなる。「同心アフォーカルビームリレー」(Concentric Afocal Beam Relay)と題するKessler名義の特許文献3では、オフナーイメージャをアフォーカル(無限焦点)瞳リレーに転換するのに必要な諸工程及び大規模修正を論じている。
【0026】
注目すべきことに、大抵の瞳リレーはアフォーカルである。即ち、瞳リレーでは入射ビーム及び出射ビームが共に平行化光である。このシステムは一般に屈折力を有していないが、通常は、共に屈折力を有する2個の群で構成されていて、それら光学系群それぞれがフォーカル(有限焦点)である。それら二群の組合せによりアフォーカルなリレーがもたらされる要領は、アフォーカルなケプラー式望遠鏡が中間合焦面を伴う2個の正群で構成されるのと同じ要領であり、それら二群はそれ自身の二通りの焦点距離により大きく分離されている。
【0027】
本件開示の諸実施形態に係る瞳リレーはフォーカルである。フォーカル瞳リレーでは、集束入射ビームを受け入れ平行化ビームを出射する光路が画定される。一般に、フォーカル瞳リレーは複数個のレンズ素子及び関連する光学諸部材を有し、それらを少数個の群に編成可能で、群をなす諸素子が一体接合され又は密集して一体クラスタ化されたものである。この特徴があるため、フォーカル瞳リレーは、相隔たる群例えば鏡を用いるアフォーカルリレーに比べコンパクトになる。アフォーカルリレーの一例がOka名義の特許文献4にて与えられている。注記すべきことに、その光路は光軸をなぞりはするが全点でその光軸に対し共線的であるとは限らない。その光軸は、2個の瞳を結ぶ1本の非分岐線とされうるほか、後掲の諸実施形態に記載の通り、方向が異なる複数個の直線セグメントを有し屈曲しているもの、例えば鏡又は反射性偏光子光学系を用いるそれとされることもある。
【0028】
一般に、イメージング光学系に比した瞳リレーの特徴は、その入射瞳及び出射瞳がその光学システムの幾何により明瞭に画定されることにある。本件開示のフォーカル瞳リレー光学系は、イメージングタスクにとりひときわ意義のある二通りの機能、即ち(i)走査鏡が位置する入射瞳を看者の目の虹彩又は水晶体の位置にある出射瞳と共役化する、並びに(ii)湾曲している入射合焦面を平行化する、という機能を実行する。
【0029】
フォーカル瞳リレーとは対照的に、アフォーカルリレーでは第1の機能(i)、即ち入射及び出射瞳の共役化しか提供されない。平行化がアフォーカルリレーにて提供されないのは、入射ビームが既に平行化されているため及びそのリレーシステムに屈折力がないためである。
【0030】
語「斜め」は、本件開示にて用いられるところによれば、平行でも直交でもない角度関係、即ち90°の整数倍でない角度関係を表している。実際のところ、2個の光学面が平行又は直交から少なくとも±約2°以上ずれていれば、それらは互いに斜めであると考えられる。同様に、ある線及びある平面が平行又は直交から少なくとも±約2°以上ずれていれば、それらは互いに斜めであると考えられる。実質的に平行な平面とは、±2°の枠内で平行なもののことである。同様に、実質的に平行なビームとは、±2°の枠内で平行なもののことである。
【0031】
本件開示の文脈上、語「約」は、計測との関連で用いられている場合、計測誤差及び不正確さが、実際上許容される期待公差の枠内である、という意味である。ある医療従事者と別の医療従事者とでは計測に違いがあろうから、例えばある特定の看者の視野の広がり具合を求める際の計測上の差異に関しては、幾ばくかの穏当な公差が許容されねばならない。
【0032】
微細電気機械システム(MEMS)デバイスは複数個の機械部材を有し、それらにより小型機械素子及び小型電気機械素子からなるシステム(即ちデバイス及び構造)を提供するものであり、半導体デバイス形成用のそれに類する微細製造技術を用い作成される。MEMSデバイスは、可動素子を有していない比較的単純な構造から、集積微細電子回路の制御下にある複数個の可動素子を伴う極めて複雑な電気機械システムまで、多岐に亘りうる。MEMSデバイスでは、それら素子のうち少なくとも幾つかが、その素子自体が可動か否かは別として、機械的機能を有する。MEMSデバイスのことを「微細機械加工デバイス」、即ち微細システムテクノロジを用い形成され動作するデバイスとも呼ぶことができる。個別のMEMS素子の物理寸法は、1μmを大きく下回る寸法から数mmにまで及びうる。本件開示の文脈上、MEMSデバイスは、光が時間的及び空間的に変調されるよう励振すること、ひいてはラスタ走査パターンを用い虚像を提供することができる、機械可動素子例えばリフレクタ(反射器)を提供するもののことである。
【0033】
実像を形成する方法とは対照的に、虚像は表示面上には形成されない。即ち、知覚上の虚像所在個所に表示面を配置したとしても、その面上に像が形成されることはなかろう。虚像を形成する光学システムによりビューイングパラメタ、例えば遠点、見かけ上の角度幅その他の特性も定まる。虚像表示には、拡張現実及び仮想現実ビューイング向けの生来的長所が複数個ある。例えば、虚像のサイズは、表示面のサイズや所在個所による制限を受けない。加えて、虚像をもたらすおおもとの物が小さくてもよい;単純例としては、拡大鏡によりその物の虚像がもたらされる。おわかり頂けるように、ある程度の距離だけ離れて見える配置にて虚像を形成することで、実像を投射するシステムに比べ、よりリアリスティックなビューイング体験を提供することができる。変調光のみを用い虚像を提供することで、実像を形成する際には必要とされることがあった、スクリーンその他のディスプレイでの偽像を補償する必要性も全くなくなる。
【0034】
従来の用法では、語「視野」(FOV)が、比較的正常な視力を有する看者が昼光ビューイング条件下で利用可能な視野全体に、広く関連付けられている。視野は、通常、相直交する水平(横)方向及び垂直(縦)方向に沿い計測される。
図1Aは、本件開示に従い水平視野の角度区分がどのように定義されるかを示したものである。水平単眼視野限界(horizontal monocular visual limits)は、一般に、中央水平視線(見通し線)S1を中心としていて120°より僅かに広いと考えられており、その境界が線16及び18により示されている。水平FOV沿い記号認識は、一般に、水平視線S1から±約30°のエリア内であると考えられており、その境界が線56及び58により示されている。
【0035】
本願にて垂直視野と称する計測対象を、
図1Bに模式的に示す。水平視線S1が、起立看者に関し、真の水平線に対するずれが±約2°未満であり水平線に対し概ね約0°の方向に延びるものとして定義されている。定義によれば、水平視線は、第1眼位(primary position of the eye)、即ち網膜平面(retinal plane)が視覚頭部横断平面(transverse visual head plane)(TVHP)と同一平面になる眼位である。このTVHPが、目、動眼神経核(oculomolar nucleus)及び鳥距皮質(calcarine cortex)の回動中心となる。定義によれば、それは外眼角外耳道線(canthomeatal line)に対し定常的な関係を有していて、リスティングの平面(Listing's plane)に対し垂直である。
【0036】
人体解剖学研究習熟者には既知な通り、標準体格の機敏な人間の場合、第1眼位は解剖学的に規定される自然な定常姿勢であり、重力、視線固定(fixation)、眼球融合反射(fusion reflex)、頭部姿勢等の要因には依存していない。
【0037】
人的被験者の場合、主水平網膜平面(principal horizontal retinal plane)はTVHPと同一平面である。これにより第1眼位が定義され、その敷衍により主水平視覚平面(primary horizontal plane of vision)が定義されることが、医学文献(非特許文献1)にて重々記述されている。これは非特許文献2にて定義されている。
【0038】
正常視力を有する成人看者では、垂直FOV全体が、概ね、水平線に対し約60°上方(+60°と表現)から約75°下方(-75°と表現)まで広がっており、虚像表示向けの通常「使用可能」垂直視野(FOV)F1が、典型的には、水平視線S1に対し+25°上方から-30°下方までの角度範囲内で定義されるものと考えられる。
【0039】
視野の様々な部分を互いに区別することができる。中心視野(foveal vision)は、網膜錐体(retinal cone)密度が最高であるため最高の視力を呈するところであり、人間の視野の中心部分が包括されている。この領域は私たちの視神経のうち約50%を使用する。傍中心視野(parafoveal vision)は、網膜錐体濃度が高いため高質視力だけでなく色覚をももたらすところであり、従って、概ね、視線に対し±約5°以内の角度αをなすものと考えられる。約10°に亘るこの傍中心視野は、総じてその視線を中心とする円状であり、22インチ(1インチ=約2.5cm)の距離にて約4インチの直径を呈する。成人看者に関する近似としては、この領域は、腕を長く伸ばし手に持ったときの、標準的なコンパクトディスク(CD)やディジタルビデオディスク(DVD)の表面よりも、僅かに小さくなるであろう。この領域の外側、即ち周辺視野(peripheral)と考えられるところでは、もたらされる視覚情報がどんどん少なくなっていく。人間の目の網膜桿体(retinal rod)分布からすると、大半の周辺視覚情報は傍中心視野を越え最初の約20°以内に存する。
【0040】
本願記載の諸実施形態における通常使用可能垂直FOV F1は傍中心FOVよりも広く、視線に対しおよそ+25~-30°の範囲内にあるところと定義される。FOV F1は概ね色識別限度(limits of color discrimination)内にあるものと考えられ、この領域の遙か外側にある視角では色識別性がかなり劣化する。
図1B及び
図1Cには、通常垂直FOV F1の下部、即ち前方水平視線S1より下方の部分が示されており、またその境界が水平視線S1に対し角度θのところに示されている。看者の+60~-75°垂直視野限界内にある領域だが、通常垂直FOV F1より上方又は下方の諸領域内にある領域は、「垂直周辺視覚」野或いは単純に周辺垂直視野であると考えられ、それぞれ上部F2A,下部F2Bを有している。
【0041】
図1Bに示す周辺垂直視野の二部分のうち、上部F2Aは視線S1より上方にあり、それに対応する下部F2Bは水平視線S1より下方にある。上部F2Aは、視線S1から約60°のところを示す線12と、視線S1の上方約25~30°にあるFOV F1上部境界線と、の間に存している。周辺垂直視野の下部F2Bは、およそ-30°下方まで延びるFOV F1より下方にあり、視線S1からおよそ-75°のところを示す線14が部分F2Bの境界とされている。即ち、周辺垂直FOVの下部F2Bは、水平視線S1に対しおよそ-30~-75°の間に存している。
【0042】
視線S1は概ね頭部姿勢に追従する。例えば着席看者では、基準となる視線S1が水平線から約15°下方に偏倚する傾向となる。傍中心視野及び周辺視野を画定している他の垂直座標及び角度が皆、
図1Cに模式的に示されている通り、然るべく偏倚する。本件開示の文脈上、垂直視野に関し基準とされる視線S1は、起立看者では水平線相当であり、着席看者では水平線から約15°傾斜していると考えられる。この視線のことを以下の記述では水平視線と称している。
【0043】
縦断面図たる
図1Dに示す通り、人間の目Eの光学システムは、主として水晶体(レンズ)24及び角膜28を有する光学部材と考えられるものであり、水晶体24、角膜28及びその周囲媒質の幾何形状により決まる焦点距離を有している。正常な非矯正視力を有する成人では目Eの前方焦点距離F
oが約16.7mmとなる。正常で非矯正な成人の目Eでは後方焦点距離F
iが約22.3mmとなる。前方焦点距離F
oは気中、後方焦点距離F
iは目Eの屈折性液体媒質中であり、
図1Dに示す如くその屈折性液体媒質により実光学距離寸法が効果的に短縮されている。虹彩は目の瞳を結像系に仕立て、アパーチャを約7mm未満に制限するものであるが、明瞭性に鑑み
図1Dには示していない。高輝度照明条件下では、瞳直径が虹彩により制御され、平均して僅か約2.5mmとなる。「通常」の目であれば、遠方被写体からの平行光線を網膜26上へと合焦させること、即ち無限遠在と考えられる平行光線を目Eの後部にある網膜26上の一点に合焦させことができ、その上で視覚情報の処理が始まることとなる。他方で、被写体を目Eに近づけていくと、筋肉の働きにより水晶体24の形状が変わり、光線によって網膜26上に倒立実像が形成されることとなる。水晶体の前方、16.7mmのところにある理論的合焦領域が対物結像ゾーンであり、一般に、正常な生理学的焦点の下限にある。
【0044】
模式的ブロック図たる
図1Eに、本件開示のある実施形態に係る変調ビーム形成用画像発生器212の構成諸部材を示す。制御論理プロセッサ20は、メモリ又は他の何らかの画像源から例えば無線伝送(例.Bluetooth(登録商標))を介し画像データを取得し、看者の各目内に像を形成するのに必要なタイミング信号及び制御信号を提供する。制御論理プロセッサ20は、カラー画像コンテンツを提供すべくライトモジュール30と信号通信してモジュール30からの光を変調させる。周波数、持続時間、強度及び色の変調が行われる。ある実施形態によれば、ライトモジュール30にて、光路に沿い且つオプション的な対物レンズL10を介し光ファイバ40等の光導波路に結合されている赤色、緑色及び青色のレーザダイオード32r、32g及び32bそれぞれにより、変調光を提供する。この変調ビームの特徴は、色、持続時間及び強度が可変なレーザ光パルスであることにある。認知可能な像を形成するにはこの光でラスタ走査する必要がある。光ファイバ40は、この光源光を、MEMSスキャナ装置50に、例えばオプション的なコリメータレンズL12を介し差し向ける。そのオプション的なコリメータレンズL12によって、焦点に加えビームサイズを改変することができる。その代わりにオプション的なビームエキスパンダを用いることもできる。励振時におけるMEMSスキャナ装置50による走査は、入射レンズ240を介し光ファイバ40からもたらされる光を、後に詳述の如く、ラスタ走査パターンに従い、反射させることで行われる。電力は電源22例えば電池により供給される。
【0045】
立体イメージングを行う諸実施形態では、光ファイバ40及びスキャナ装置50を目E毎に設けることができる(明瞭性に鑑み
図1Eには片方の目Eに係るシステムしか示していない)。同じライトモジュール30を用いて両目向けの諸像を生成すること、例えば左目及び右目変調光を同期生成することもできるし、それに代え、目E毎に別々のライトモジュール30を設け、それに相応しい画像処理論理を制御論理プロセッサ20により提供すること並びにその光路に相応しい光ハンドリング部材で左目像及び右目像それぞれを形成することもできる。
【0046】
ライトモジュール30は、入力画像データに従い変調光ビームを生成する市販のモジュール状部材、例えば米国ワシントン州レドモンド所在のMicrovision, Inc.から入手可能なピコプロジェクタ(商品名)デバイスとすることができる。専ら例としてではあるが、このデバイスでは、3個の原色レーザダイオードからの638nm(赤色)、517nm(緑色)及び450nm(青色)の光を用い像が形成される。原色に代え他の波長を用いることもできる。それらのレーザを低パワークラス1デバイスにすることで、有害と思われるエネルギレベルになる懸念無しで看者の目に光が向かうようにすることができる。各原色レーザからの光を別々に提供することで、赤色、緑色及び青色ビームが矢継ぎ早に提供されるようにすることができる。これに代え、相異なる原色波長のビームを結合させてカラー像を形成することもできる。ビーム結合技術の例としては多層ダイクロイック結合器の使用を伴うものがある。光ビームのスポットサイズを互いに異ならせることで、例えば効率を改善することができる。後に詳述する通り、光ビームを平行化して最小好適サイズにすることや、光ビームを拡大して小型又は大型MEMS走査鏡全体をそれで満たすことができる。ビームを略ガウス的なプロファイルから平頂プロファイルへと変換することで、ビームホモジニティを改善することができる。
【0047】
光ファイバ40の代表例はシングルモード光ファイバであろう。この種の光導波路は、後述の通り、看者の顔面上にスキャナ装置50をフィットさせるのに用いられるバンド内に、容易に組み込むことができる。その光ファイバに、角度付終端部その他の整形終端部を設けて、例えば後方反射防止に役立てることができる。1本のファイバを用いて、全てのレーザダイオード32r,32g,32bから光を案内することができる。或いは、3本のファイバを用いつなぎ合わせることで、スキャナ装置50に備わる光出射部にて1本のファイバに仕立てることもできる。
【0048】
個々のウェアラブルイメージング装置にて用いられるスキャナ装置50の光学的構成諸部材は多様たりうるものであり、MEMSスキャナデバイスに加え、別の種類の反射型及び屈折型リレー光学系、光屈折力を提供可能又は不能な屈曲光学系、並びに画像コンテンツを目E内へと走査供給するのに用いられる他の諸部材が、それに含まれうる。スキャナ装置50の一部となりうる代替的諸部材については、本件開示の後掲の諸実施形態との関連で述べることにする。
【0049】
模式図たる
図1Fに、看者向け像形成を意図したアイピースに備わる在来「パンケーキ」型光学システム90の分解外観を示す。このカタジオプトリックパンケーキ型光学システムでは、偏向を用い変調ビームの光路をそれ自身の上に折り重ねており、また湾曲鏡M1付の反射集束光学系を採用している。湾曲鏡M1により光軸OAが画定されている。従来型画像源60たる陰極線管その他の放射面により、二次元(2D)像野が提供されている。本光学配列の何れの実現形態でも、画像源60は、湾曲鏡M1の前方合焦面に像が形成されるように配置される。平行化ビームが個々の野点から目Eに供給される。この在来パンケーキ型光学系デザインでは、倍率が非常に高く、実質的には無限大であると考えることができる。
【0050】
図1Fに示されているパンケーキ型システム90は以下のようにして稼働する:無偏向光であるCRTその他の画像源60からの変調ビームが偏光子POL1により直線偏向され、1/4波長板QWP1により左旋円偏向光に変換される。その光が半透明な湾曲鏡M1に通され、その光のうち半分が反射されて失われる。鏡M1は「部分透過性」又は「半透過性」又は「半透明」であると考えられるものであり、それによりQWP1からの入射光のうち少なくとも約35%を透過させること、好ましくはその入射光のうち50%を透過、50%を反射させてピーク効率にすることができる。本件開示の諸実施形態にて、湾曲鏡が「部分透過性」又は「半透明」であると考えることができるのは、入射光のうち65%以下しかその鏡を透過しない場合である。
【0051】
透過した円偏向光は、もう一つのQWP2に通されて垂直直線偏向光になり、反射性偏光子たる偏向ビームスプリッタPBS1へと差し向けられ、そこでその光の大半が湾曲鏡M1の方へと遡行反射される。PBS1からの反射光はQWP2を再び通って右旋円偏向光になる。湾曲鏡M1は再びその光のうち約半分を反射させ他の半分を透過により失わせる。鏡M1からの反射偏向光は今や左旋円偏向光となっており、1/4波長板QWP2により水平偏向光へと変換され、反射性偏光子即ち偏向ビームスプリッタPBS1、更にはオプション的なクリーニング偏光子POL3を介し、看者の目E内へと通される。1/4波長板(QWP)内を光が通過するたびにその位相が45°位相シフト分だけ遅れ偏向状態が変化する。
【0052】
見た目に複雑な偏向兼光差し向け機構であるにもかかわらず、パンケーキ型光学系は良好に機能するけれども、光源60にて原発生した光のうち75%超という多大な損失がその代償となる。この不効率さ及び顕著な光損失故に、パンケーキ型光学構成は、従来型変調光源を伴う多くの用途で使用不能になっている。しかしながら、本願出願人の知見によれば、看者アイボックスに供給される光エネルギを制限することが望ましくレーザ及びMEMS変調併用時の高レベルな光減衰が許される場合、この光学的構成が有用たりうる。
【0053】
有益なことに、この構成ではオン軸鏡が用いられているので、その鏡への入射ビームを出射ビームから分離させるために他の手段を設ける必要がない。その光路の屈曲は、条件というよりオプション的である。
【0054】
パンケーキ型光学系をフラットパネル画像源向け対物レンズの一種として採用している従前の光学システムとは違い、本件開示の諸実施形態では、パンケーキ型光学アプローチを用い瞳リレーを形成している。後述の諸実施形態によれば、様々な手法の適用により、そのパンケーキ型デザインを、従前のパンケーキ型光学システムに備わる平坦イメージング光学系とは違い、走査平行化光を用いるよう設計されひいては光効率の低さ及び部品点数の多さに関わる問題が克服されていて、より好適なニアアイイメージング用プラットフォームたるものに、することができる。後に詳述する通り、その数値開口の拡張により、平行化レーザ光及びMEMSデバイスを用いる他のイメージング装置よりも入射瞳及び出射瞳を広くすることができ、ひいては平坦像野によりもたらされる長所を実現可能となる。
【0055】
以下の諸実施形態によれば、更に、そのパンケーキ型光学系デザインを、傾斜鏡システムに比べ広い視野(FOV)に亘り分解能が高い、という長所を有するものにすることができる。本件開示のパンケーキ型光学デザインは、スプリッタを用いる単一鏡システムに比べ小さく、超ニアアイポジションにあってはより優れたアイレリーフをもたらし、また
図1Fに示した在来型フラットパネルイメージングデザインでは得られない多数の長所を提供するものである。
【0056】
[実施形態1]
斜視図たる
図2A及び側面図たる
図2Bに、本件開示のある実施形態に係る1:1瞳リレー装置250の配列を用いたニアアイビューイング用イメージング装置200の構成諸部材を示す。本実施形態では、光学的「パンケーキ」型構成を光リレーシステムとして採用し、そのシステムにてビーム整形及び集束用反射部材を用い光軸を画定し且つ入射瞳を出射瞳へと中継している。
図2A及び
図2Bに示されている配列では、イメージング装置200により、画像発生器212在の入射瞳P1が看者の目E在の出射瞳P2へと中継される。言い換えれば、イメージング装置200により、合焦面214在の湾曲像(合焦面214に生成された像はその光学系に対し「被写体(物)」位置を占める)が網膜R在の像野へと運ばれる。即ち、瞳リレー光学系としての役割に加え、装置200は更に、画像発生器212からの集束走査変調ビームにより生じ合焦面214に形成された光パターン又は「像」たる湾曲空中「被写体」を、網膜Rへと結像させる。
【0057】
画像発生器212は、入射瞳P1在の走査鏡により集束変調光ビームを差し向けることで合焦面214に湾曲空間像を形成し、それをイメージング装置200による以後の結像に係る光学的な「被写体(物)」にする態で、提供されている。その空間像における変調光は直線偏向光であり、第1偏向の光を透過させその第1偏向に直交する第2偏向の光を反射する偏光子210へと差し向けられる。そこを透過した変調光は、相応な位相遅延をもたらす1/4波長板216を介し、部分反射性(公称50%反射)且つ部分透過(公称50%透過)性であり一種のビームスプリッタとして働く湾曲鏡220へと差し向けられ、それによりその変調光ビームが集束される。鏡220による一部の光の反射によりその光の円偏向が反転され、逆方向伝搬時にはその光が1/4波長板216を透過する。鏡220を透過した光は偏向され、円偏光子230により吸収される。鏡220からの反射光はその円偏向が変化しており、偏光子210により反射され1/4波長板216を介し戻っていく。この光のうち一部分が湾曲鏡220内を伝搬し、通り抜けてオプション的な円偏光子230によりクリーニングされる。このクリーニングは、直交方向の偏向を有しており画像ゴースト発生を引き起こしかねないあらゆる漏洩光を除去するのに、役立つ。イメージング装置200からの平行化光は、看者の目E内に差し向けられ、出射瞳P2に至り、最終的には看者の網膜Rに至って図示の如く像を形成する。
【0058】
図2Bのパンケーキ型光学システムは、
図2Aの配列と同じく素子210、216、220及び230を有する瞳リレー装置250である。この第1実施形態では構成部材間にエア空間が存在しているので、語「エアパンケーキ」をこの光学配列に適用することができる。
【0059】
走査鏡からの光路上に配置されている偏光子210は、光軸OAに対し発散的な第1角度で入射した第1偏向の入射光を湾曲鏡220の表面の方へと透過させるよう、形成されている。偏光子210は、次いで、鏡220からの入射光のうち、透過入射光の第1偏向と直交する第2偏向を有し且つ偏光子表面法線に対し第2角度をなすものを、反射する。偏光子210及び湾曲鏡220は、協働して変調ビームを偏光子210に2回差し向けるよう光路沿いに配置されている。即ち、偏光子210は湾曲鏡220に至りそこから戻ってくる光路上にあり、その光路を湾曲鏡220の方へと折り返させている。その偏光子から2回に亘り出射された光は平行化されており、瞳P2の方向へと且つ光軸OAに対し収束的な態で差し向けられる。
【0060】
パンケーキ型構成によりアイピースを形成しそれによりフラットパネル光源を平行光化する従来配列とは違い、本件開示の諸実施形態では、パンケーキ型光学系を用い
図2B中の走査鏡212が観察者の虹彩232へと中継される。そのパンケーキ型光学系により形成される瞳リレーでは、
図2A上の入射瞳P1が走査鏡在であり、P2が目在の出射瞳である。この場合のパンケーキ瞳倍率は有限であり、例えばおよそ-1が望ましい。
【0061】
合焦面214在の湾曲像と鏡220は、湾曲鏡220により画定される瞳P1に対し実質的に同心であり、合焦面214在の像と鏡220とで画像発生器212在の曲率中心又は軸を共有している。画像発生器212の走査鏡の回動軸と、湾曲鏡220の曲率中心とが、同じ線沿いに所在している。
【0062】
本件開示の文脈上、2個のフィーチャが瞳P1又はP2に対し「実質的に同心」であると考えられるのは、それら2個の湾曲フィーチャの径方向距離のうち大きい方の20%以内の精度でそれらが同一且つ共通の軸及び曲率中心を共有しているため、それらの個別的な曲率中心間の距離に差があってもそれが僅かであり、その軸又は中心からの径方向距離のうち大きい方の20%以内になるときである。
【0063】
偏光子210及び230は、例えば、米国ユタ州オレム所在のMoxtek Inc.によるデバイス等のワイヤグリッド偏光子とすることができる。これに代え従来型偏光子を採用することもできよう。
【0064】
本件開示の諸実施形態の瞳リレー光学系により画定される光路のデザインは、本質的に無収差である。オフ軸ビームがオン軸ビームのそれと厳密に同一の光学系に遭遇するので、一般に光学システム性能を制約するオフ軸収差、例えばコマ収差、非点収差及び歪が現れない。即ち、本ディスプレイシステムでは広いFOVを提供することができる。ある実施形態によれば、
図2A及び
図2Bに示すシステムのFOVが水平方向43°、垂直方向25°となる。これが一例に過ぎないことを協調しておく。より広い又は狭いFOVを、別の仕様及び性能を有する振動MEMS鏡及びレンズを用い生成することもできよう。
【0065】
なお、
図2A及び
図2Bの何れでも、網膜Rが平坦面として理想表現されているが、これはこのモデルにおける眼水晶体が理想的な近軸レンズとして表現されているからである。より現実的な眼モデルを用い目を表現する際には、網膜を湾曲した網膜として表現する。
【0066】
図2A及び
図2Bに示されている実施形態を、
図2Cに示す如く、光軸OAに沿い鏡220の湾曲を反転させた1:1瞳リレーと併用することもできる。瞳リレー装置260では、合焦面214に形成される空間像が円偏向光で組成される。公称上、その光のうち半分が半透明湾曲鏡220により却けられ、半分が透過していく。透過した部分はQWP216内を通って直線偏向光になり、ひいては反射性偏光子210から湾曲鏡220へと遡行反射される。この光は平行化光であり、直交偏向の態で偏光子210を介し瞳P2へと差し戻され、その偏光子210を介し虹彩232の方へと透過していく。オプション的なクリーニング偏光子236を用いることで、反射性偏光子を介し漏れてくることがある誤偏向光を除去することもできる。湾曲鏡220の曲率半径の中心は瞳P2にあり、それに対し同心になっている。
図2Aの実施形態と同様、偏光子210上への1回目入射光は光軸OAに対し発散的である。偏光子210上への2回目入射光は平行化されて光軸OAに沿い差し向けられる。
【0067】
図2A~
図2Cの配列を用いる別の実施形態によれば、湾曲鏡220を、50-50半透明鏡とはせずに、第1偏向の光を透過させ且つそれに直交する偏向状態の光を反射する湾曲した反射性偏光子として動作させる。平坦な反射性偏光子210が半透明鏡で以て置換される。イメージング技術習熟者には察せられる通り、湾曲鏡220を反射性偏光子として用い且つ平坦な半透明鏡を用い、付加的な変形をなすことが可能である。
【0068】
[入射光学系]
模式的側面図たる
図3A及び展開図たる
図3Bに、本件開示の諸実施形態に従い、光をプリフォーカス(予合焦)させ偏光子210その他の瞳リレー構成部材内に差し向ける入射光学系240を示す。対物レンズ244が、生成された変調光ビームを走査鏡242へと差し向ける経路上に配置されている。レンズ244は、その入射ビームを拡大すること並びに走査鏡242・瞳リレー間位置に合焦させることでその変調光を調光し、走査パターンに従い合焦面214(
図2A,
図2B)を画定し形成させる。対物レンズ244は、後に示すように、接合ダブレット(cemented doublet)の形態或いは空間的に分離された形態を採り、2個の素子により構成することができる。相異なる波長を有する3本以上のレーザビームが用いられる場合、既製のダブレットを用いそのリレーの軸色を補正することができる。システムの残りの部分が対称的且つ反射性であり、且つ軸色が入射光学系により補正されるので、
図3A及び
図3Bの実施形態では軸又は横色収差が現れない。後述する拡張された諸実施形態では低屈折力円柱レンズがそのダブレットより前段に付加され、光軸OAに対しある入射角をなす傾斜偏向ビームスプリッタの使用により引き起こされる非点収差がそれによって補償される。
【0069】
図2A、
図2B、
図2C及び後続の図に示される諸実施形態では、入射光学系240により光が合焦され、それにより合焦面214に湾曲した空間像が形成される。走査鏡242を用い、光路を屈曲させること並びに差し向けられた光ビームから2D像を形成することができる。
【0070】
専ら例として、
図3Cに、本件開示のある実施形態に係る入射光学系240向けの面及びレンズ特性を列挙する。
【0071】
その光源は走査レーザその他の固体光源とすることができる。
【0072】
[実施形態2]
図4A~
図4H及び
図5に、本件開示のある実施形態に係るニアアイビューイング用イメージング装置400内の瞳リレー装置450に関し、全ガラスパンケーキ型構成の諸方からの外観を示す。先の
図2A及び
図2Bの実施形態と同様、装置450は、およそ-1の倍率で稼働する有限共役瞳リレーである。合焦面414とレンズL1の湾曲入射面92が瞳P1に対し実質的に同心である。レンズL1の出射面420とレンズL3の出射面94が瞳P2に対し実質的に同心である。瞳リレー装置450により画定される光路上では、偏光子430が、光軸OAに対し発散角をなす第1偏向の光を受光し、レンズL2上に形成された部分反射性湾曲面420の方へとその光を遡行反射させ、その面によってその光が集束される。QWP424内2回通過によりその光ビームの偏向が変化し、偏光子430では第1偏向状態に直交する第2偏向状態となる。偏光子430は、今や平行化されているその返戻光を透過させて瞳P2の方に差し向ける。
【0073】
瞳リレー装置450の一部分又は全部分を目の物焦点距離たる16.7mm以内に配置することができる。この可能性は後述する他の瞳リレー装置諸実施形態にも当てはまる。この超ニアアイ配置により、広いFOVを保ち使用可能視野の阻害を回避しつつそのデバイスのサイズ及び「フットプリント」が縮小される、という重要な長所がもたらされる。
【0074】
図4Bに、本件開示のある実施形態に係るイメージング装置400向けのレンズ及び偏光子面の例を列挙する。
【0075】
図4Cは、入射光学系240が走査鏡242の片側に配置されたイメージング装置400を示す斜視図である。
【0076】
本件開示の実施形態によってはレンズL1、L2及びL3が球面レンズでないこともある。
図4Dにイメージング装置400の垂直外観を示す。走査方向は紙面に直交している。
【0077】
図4Eにイメージング装置400の水平外観を示す。走査方向は水平方向であり紙面に対し平行な面に沿っている。
【0078】
図4Fに示すように、光路を屈曲させることで、全長及びデバイスフットプリントを縮小することができる。屈曲鏡454,456が例示されている。
【0079】
図4Gに示すのは
図4Aの瞳リレー装置450のパンケーキ型配列の分解外観であり、その光学システムにより画定される光路に沿った偏向状態が示されている。入射瞳P1在の走査鏡412は、光を差し向けることで合焦面414に湾曲空中被写体を形成する。その光は円偏向光であり、入射ビーム段階で円偏向であったか、或いは直線偏向光として入射されスキャナ鏡412より後段にあるオプション的な1/4波長板(QWP)(図示せず)により円偏向されたものである。この光は第1レンズL1内で屈折され、部分反射面420を介し第2レンズL2に至る。次いでその光が1/4波長板QWP424を通り抜けて直線偏向光になる(
図4Gには垂直偏向として示されている)。この光は反射性偏光子430に出会って遡行反射され、QWP424を再度通過して面420の方に向かう。次いで、その光のうち約半分がその半透明面420により反射される。レンズL2の湾曲面420におけるこの反射により、その合焦個所、即ち合焦面414に形成された空中光パターンに由来するビームが、平行光化される。次いで、その平行化光がQWP424を通過し、この3回目通過により直線偏向光になる(
図4Gには水平偏向光として示されている)。この光は偏光子430及び第3レンズL3を通り抜ける。その出射光が面420から出射瞳P2在の虹彩440へと差し向けられる。オプション的に、クリーニング直線吸収偏光子(図示せず)を、レンズL3と瞳P2在の虹彩との間に配置することができる。合焦面414とレンズL1の入射面96は入射瞳P1に対し実質的に同心である。出射面98及び100と鏡面420は瞳P2に対し実質的に同心である。虹彩440は瞳P2にある。合焦面414は、偏光子430の働きで折り返された、鏡420の前方合焦面にある。
【0080】
図4H及び
図5に瞳リレー装置450の斜視外観を示す。
【0081】
図6及び
図7に、看者の顔面上におけるイメージング装置400の側面外観,正面外観をそれぞれ示す。従来型マウント、例えば眼鏡フレーム、バンドその他の構造(図示せず)を準備して看者の目のすぐそばにイメージング装置400を配置することができ、それによりそのイメージング装置の光学諸部材を眼水晶体の物焦点距離以内、角膜から8~16mm以内のところに所在させることができる。走査鏡及び光学装置を収容するハウジングは主に着用者の使用可能垂直視野外、実質的には周辺視野内にある;これらの視野については先に詳述した通りである。そのハウジングを、看者の顔面上に配置して頬に沿わせ、下眼窩縁(inferior orbital rim)沿いで安定化させ、上顎骨(maxillary bone)、鼻根点(nasion)及び頬骨(zygoma)により支えることができる。
【0082】
[対称的実施形態]
模式的側面図たる
図8A及び斜視図たる
図8Bに、
図4Aのイメージングシステムにビームスプリッタ110が付された対称的修正配列を示す。ビームスプリッタ110は偏向ビームスプリッタとすることができ、これは台形歪みを補正するのに役立つ。
図4Cの如く、ある角度をなす走査鏡242に入射ビームを近付けると、
図8C中の像野の輪郭に現れている通り、台形歪が誘起されることがある。
図8Cに示されているのは、入射角が軸から見て25°であるときの、43°×25°の視野を有する未補正台形歪である。破線は無歪時の視野を示している。この歪は、イメージングシステムに送られてきた画像データを電子的に修正することで、或いは僅かに非球面的な歪補正素子(図示せず)を走査鏡242とリレー450の光学系との間に付加することで、補正することができる。ビームスプリッタ110により走査鏡242内への入射角が0°の光路が画定されるので、
図8C上に示されている歪が低減されて、
図8D上に示す如く、より対称的になる。対物レンズ244は2個のレンズ素子を有しており、それらはエアギャップにより空間的に隔てられている。オプション的な1/4波長板246は、偏向ビームスプリッタPBSとして設けられている場合にビームスプリッタ110にて生じる損失を、低減するのに役立つ。第2の1/4波長板248は、ビームスプリッタ110からの光を円偏向光へと逆変化させる。鏡220は
図4A上の鏡面420と同じく半透過鏡とすることができ、もう1個の1/4波長板252がそれに後続している。鏡220からの反射オン軸光はビームスプリッタ110にて反射され廃棄される。素子L1、鏡220、1/4波長板252及び偏光子230を単体の接合ユニットにしてもよい。その接合ユニットとレンズL2との間にエアギャップがあってもよい。
【0083】
図8A及び
図8Bに示す実施形態によれば、ライトモジュール30から入来する変調ビームがS偏向光となる。瞳リレー装置450により画定される光路上では、この光が偏向ビームスプリッタ110にて反射され、1/4波長板(QWP)246を介し走査鏡242へと差し向けられて、円偏向光になる。走査鏡242はその変調ビームをQWP246を介し遡行反射させ、それによりその変調ビームの偏向をP偏向状態へと変化させる。P偏向光はその後ビームスプリッタ110内及びQWP248内を透過し、それによりその偏向状態が円偏向に変化する。この光がレンズL1を介し運ばれる。その光のうち一部分が光軸OAに沿い半透過鏡220から遡行反射される。その反射光は再びQWP248を通ってS偏向になり、ひいてはビームスプリッタ110にて反射され廃棄される。一方で、変調ビームのうち半透過鏡220内を透過した部分は別のQWP252内に通され、そこでその偏向がS偏向状態へと変化する。この発散光が偏光子230により反射され、次いで鏡220にて反射され、今や平行になったそれが瞳P2へと向かう。この平行化変調光は、QWP252への2回通過を受けP偏向へと変化し、偏光子230を介し出射レンズL2へと通される。
【0084】
本件開示の装置により、仮想現実(VR)又は拡張現実(AR)ビューイング、並びに複合現実(MR)及びスマートガラス「参照表示」ビューイングに適する光学装置が提供される。AR及びMRビューイングは、「パススルー」技術を用い、実世界由来のビデオコンテンツ(そのアイウェア製品内に組み込まれたビデオキャプチャ装置により捕捉されたものでもよい)をコンピュータ生成データ上、例えば画像、アイコン及びテキストの上に重ねることで、実現することができる。即ち、実世界シーンコンテンツの相異なる代替的な2個のビューを、提供することができる。
【0085】
そのイメージング配列は、その光学的対称性故に、本質的に無収差である。本装置は、アイピースの使用例えばカトプトリック光学系の使用に依拠するAR又はVR光学構成とも、マイクロミラーデバイスアレイ又はLEDアレイその他の発光器を用い像を形成するデバイスやLCOS(液晶オンシリコン)ディスプレイ等のフラットパネル画像源を平行光化及び拡大する屈折性光学システムとも異なっている。
【0086】
本件開示のある実施形態では、水平軸に沿い少なくとも約40°のFOVがもたらされ、光ビームが走査光実施形態に対し幅的に拡大される。視線追跡を用い看者の目の動きを検出して補償することができるであろうし、例えばそのビューがその装置を見ていないときにインジケータ又はセンサにより電源をオンオフさせることもできるであろう。
【0087】
本件開示のある実施形態によれば、ビームを走査鏡に差し向けうるよう励振可能なレーザ光源と、その走査鏡に対し光学的に同心で部分透過性な湾曲鏡面と、それら走査鏡・湾曲鏡面間に配置されており第1偏向軸を有する第1偏光子と、それら偏光子・湾曲鏡面間に配置された1/4波長板と、その湾曲鏡より下流に配置されており第1偏向軸に直交する第2偏向軸を有する第2偏光子と、を備えるニアアイビューイング又は超ニアアイビューイング用光学装置が提供される。
【0088】
本願中の用語「代表例」は、「例、事例又は例証として働くもの」を意味している。本願にて「代表例」と記載されている何れの態様も、他の諸態様に比し好ましく又は有利であると解されるとは限らない。
【0089】
本願と譲受人が同一であり「ニアアイビューイング用ウェアラブルディスプレイ」(WEARABLE DISPLAY FOR NEAR-TO-EYE VIEWING)と題するKessler及びDavis名義の特許文献1にも詳述されている「パンケーキ」型光学デザインにより提供されるハイブリッドカタジオプトリック法によれば、デバイスサイズの縮小、エルゴノミクスの改善、使用可能視野及び画質改善を阻害しない配置の実現、並びに競合デザインのウェアラブル光学系を損ねている歪及び光学収差の解消又は軽減、に関わる多数の長所がもたらされる。しかしながら、パンケーキ型デザインに依拠する光学装置には、着用者にとっての全体的使用性を改善するのを難しくしかねない幾つかの生来的な短所がある。パンケーキモデルにとり生来的なそれら短所のなかには、以下のものがある:
(i)小さなアイボックス即ち出射瞳サイズ。そのシステム光学系により画定されるアイボックス領域、即ち看者の目が全視野を知覚できる領域が小さい。入射瞳にて小さな走査鏡を使用し、1秒当たり複数回に亘り表示をリフレッシュするのに十分な速度にしうるほど小さな鏡とすると、アイボックス在でそれに対し共役な出射瞳のサイズが制約される。アイボックスが大き目な方が、看者の目の位置取り及び正常な目のサッケード運動の補償に関する自由度が増すので、有利である。主にはアイボックスの高さ及び幅寸法が出射瞳の因子であり、出射瞳が広いほど対応するアイボックスの高さ及び幅が大きい;
(ii)その光学システムのサイズ。性能改善と引き換えにサイズ及び複雑性が増す。目標は、その光学システムを小型軽量に保ち、最小限の支えで以て顔面上に配置しうるようにすることである;
(iii)偏向光により課される条件。そのシステム光学系に入射する光が円偏向光でなければならない。光源それ自体により円偏向光を提供するのが理想的である。そうするのに代え、付加的な偏光子及び1/4波長板(群)を光路に付加することもできるが、サイズ、重量、コスト及び複雑性の増大という潜在的不利益が伴う;
(iv)遠近調整機能(accommodation)上の制約。従来のパンケーキモデルを用いる既存デザインでは、ある固定的な遠近調整距離が利用できる。両眼離反運動(vergence)及び遠近調整機能を可変としうるよう改善された焦点深度指標を提供し、プレノプティック又は明視野ディスプレイに係る焦点を可変にすることが有益であろう。
【0090】
本件開示のある実施形態は、上掲の懸案事項に関しそのイメージングシステムの光学性能及び使用性が改善される光学装置を提供することを、指向している。加えて、その光学装置を然るべく設計することで、既述のカタジオプトリックシステムを用い邪魔にならないニアアイイメージングを実現することができる。
【0091】
[アイボックスサイズの拡張]
先に注記した通り、
図2Aに従い概述された光学システムでは相異なる二組の共役が規定される:
(i)瞳共役。その光学系により、画像発生器212の走査鏡在の入射瞳P1を虹彩在の出射瞳P2へと中継する瞳リレーが提供される;並びに
(ii)像共役。その光学系により、合焦面214を網膜Rへと中継する像リレーが提供される。
【0092】
先に注記した通り、アイボックス寸法は出射瞳サイズの関数である。
図2Aの実施形態及び前述したその変種に関し出射瞳サイズを増大させる単純な途は、その光学的共役たる画像発生器212在走査鏡の直径を単純に大きくすることである。しかしながら、この策は、走査鏡のサイズ及び質量が増すことで、適切な画像リフレッシュに必要な振動速度を維持するのが難しくなるので、望ましくない。鏡直径を大きくすることは、運動中の変形が増してビーム収差が入り込みうるようになる点でも不利なことである。更に、そのように大きくて高速振動する二軸鏡は、商業的に入手することができない。
【0093】
本願出願人の策は、出射瞳拡張問題に対し別の手法を採るものである。本件開示のある実施形態では、出射瞳に対し共役な入射瞳走査鏡の実サイズを変化させることなく、入射瞳からの走査光により湾曲合焦面に形成される光源像の数値開口(NA)が拡張される。
図2Aの文脈で言えば、この拡張により、湾曲合焦面214を形成する光のNAが増大する。像形成光学系940(
図9A)の観点で言えば、本件開示の諸実施形態では、像形成光学系940に提示される入射光の角度的拡がりを変化させることで、入射瞳サイズが実効的に改変される。
【0094】
図9Aに示されているのは一実施形態に係る瞳リレー装置950であり、レンズL1、L2及びL3と、それらレンズの間に挟まれている偏光子410及びQWPと、を備える像形成光学系940にとり光学被写体を形成する入射光を調光するため、同心数値開口(NA)エキスパンダ960を利用している。
【0095】
同心NAエキスパンダ960は、光学装置950内に形成される湾曲合焦面914に配置されている。この光学的デザインの無収差益を享受するため、同心NAエキスパンダ960は、合焦面914の球面曲率を維持し、且つ走査鏡912在の瞳P1に対し光学的に同心な出射面を提供している。
【0096】
標準慣行に従い、光学システムにより中間像を例えばNAエキスパンダ960の位置に形成する際には、屈折力を有する視野レンズをその像の付近にて用いることで、その光路上の後続部材によりハンドリングされる光の角度を実効的に変化させる。これに対し、本件開示のある実施形態によれば、NAエキスパンダ960が屈折力のないものとされる。例えば、均一厚基板上の表面ディフューザの湾曲シートは屈折力を有していない。即ち光学アセンブリにNAエキスパンダ960を付加することで、その光学システム全体に更なる条件が課されることはないし、エキスパンダ960の下流にある光学素子がより大きなNAを容れるべくサイズ変更されうることを除けば、そのデザインにおけるレンズ曲率その他の光学的諸側面に対し変更が求められることもない。NAエキスパンダ960を付加しても光学システムの対称性は保たれる。
【0097】
本件開示の実施形態のうち
図9Aの瞳リレー構成を用いるものでは、NAエキスパンダ960が、先に定義した像共役及び瞳共役の双方との関連で光角度に影響を及ぼす。瞳共役との関連では、NAエキスパンダ960が、実効的に、入射瞳P1の所在個所における走査鏡412のサイズを見掛け上増大させ、そこに走査鏡412の拡大虚像912を形成させる。それでいて、
図9Aに示す通り、像形成光学系940に備わるレンズの組合せによりもたらされる倍率を、変化させる必要がない。更に、NAエキスパンダ960の追加による光学装置950の全長の変化もないため、他のニアアイイメージング策に比べフットプリントを小さくすることができ、VR、AR、MRイメージング向け並びに参照ディスプレイとして有利である。これも注記されるべきことに、このNAエキスパンダ960の像を像形成光学系940へと中継すべく、「中間像」を形成する付加的光学系を設ける必要もない。付加的なリレー光学系が無くても、光学「被写体(物)」たる球状湾曲合焦面914を形成することや、面914に光学被写体として形成された像をイメージング光学系940に差し向けることができる。即ち、イメージング幾何(偏向を除く)との関連では、NAエキスパンダ960の導入は、光角度が修正されるものの、諸光学素子のアパーチャが大きめになること、例えばもたらされる拡張されたビーム幅を容れるべくアパーチャが数mm大きくされること以外は、その光学構成に影響を及ぼさない。
【0098】
図9Bに、NAエキスパンダ960により走査イメージングビームの角度特性がどのようにして変更されるかを示す。実線は、その走査ビームを合焦面914内で動かし空間像を形成する際の走査ビームの角度を示している。破線は、NAエキスパンダ960を用い変更された角度特性を示している。
図9Aとの関連で、光学系940のレンズ群に対する入射光のエタンデュが相応に増大する。
【0099】
NAエキスパンダ960は、屈折性又は拡散性光学素子、様々なサイズ及びパターンの要素レンズ群を有する1個又は複数個のマイクロレンズアレイ、非球面レンズ群の配列、1個又は複数個のホログラフィック光学素子、或いはその他の好適デバイスを初め、多種に亘る部材の何れともすることができる。
【0100】
例として、
図10A及び
図10Bに、ある実施形態に係る瞳リレー装置950に関し湾曲、厚み及び素材データを示す。複数個の光学素子に係る面割当が示されている。OBJは湾曲合焦面914在の光学被写体(物)である。開口絞りSTOはスキャナ表面在である。面Surf3は接合アセンブリ1010の第1レンズ表面である。光路上での反射のため鏡面が面Surf5~Surf15として2回リストアップされている。面Surf10は反射性偏光子である。面Surf23は虹彩にある。
【0101】
像形成光学系940が同心デザインであるため横色収差及び歪は解消される。注記されることに、スキャナ鏡の上流にあるあらゆるレンズ素材、即ち像形成光学系940のレンズL1,L2,L3を、単一の光学素材で形成すること、例えばガラスやPMMAで形成することができる。同じポリマレンズ基板の使用には、重量及びコストの低減に関わる利点がある。入手可能であれば、同じポリマの反射性偏光子を用いることもできる。
【0102】
限定ではなく例として
図10A及び
図10Bに示されている具体的配列によれば、その光学装置の全体的フォームファクタを変化させることなく、公称的な出射瞳サイズを、1mmから2mm~約8mmの範囲へと、増大させることができる。NOA61(商品名)は光学接着剤であり、公称0.025厚の層をなしている。
【0103】
更に注記されるべきことに、本件開示のある実施形態によれば、アイボックス拡張に係る諸手法の組合せ、即ち実際の走査鏡912のサイズの増大並びに付加されたNAエキスパンダ960による走査鏡の見掛け上のサイズ増大を、双方共利用することができる。
【0104】
斜視図たる
図13に、走査鏡1214に対し同心なNAエキスパンダ960の湾曲面と併せ画像発生器212を示す。
【0105】
[入射/スキャナ構成の改善]
本願出願人が確認したところによれば、従来のスキャナデザインに対する改善の一つは、反射性偏向ビームスプリッタで以て光路を屈曲させることでサイズが更に縮小されることであり、その反射性偏向ビームスプリッタはビーム経路に対し必然的に傾斜されることとなる(
図11~
図13)。この改善型実施形態では、傾斜板経由で集束ビームを差し向けることで生じることがある少量の収差が補正される。
図11~
図13に、両凹レンズL123を介し光を差し向ける光源1210を有する画像発生器212と、非球面平凸レンズL122及び円柱レンズL121を有する走査対物系1220とを、簡略化された模式的形態で示す。円柱レンズL121は非常に屈折力が低く、光軸OAに対しある入射角θ1をなす傾斜偏向ビームスプリッタ板208により引き起こされる非点収差を補償するのに、役立っている。
【0106】
図11に示す通り光軸OAに対し斜めな傾斜偏向ビームスプリッタ(PBS)208を設けることは、そのシステム光学系の全体サイズが小さくなり、ニアアイビューイング用光学システムをパッケージングするタスクが簡略になる点で、ひときわ有益たりうる。その斜角は、例えば、対物レンズ・走査鏡間に延びる光軸に対し5~30°の範囲内とすることができる。PBS208は、光源1210から来るある偏向状態の光を走査鏡1214の方へと透過させる;PBS208は、それと直交する偏向状態の光であり走査鏡1214を通り逆方向に差し向けられてきたものを反射する。1個又は複数個のQWP(
図12には示さず
図14に示してある)を、走査鏡1214との間で往来する光路上に配置し、それによりスキャナからの光の偏向状態を変化させることができる。
【0107】
図12に示す通り、走査鏡1214にて光軸OAを屈曲させることができる;
図11に、模式的な非屈曲配列におけるOAを示す。
【0108】
図11の入射光学系ではダブレットL122及びL123により縦色収差が解消される。
【0109】
[偏向オプション]
開示されている装置のイメージング光学系では、円偏向光の入射が必要とされる。この入射は、光源それ自体によって、或いはそれに代えその走査光の光路上に偏光子及び1/4波長板QWPを付加することによって、なすことができる。
【0110】
NAエキスパンダ960は偏向保持素子、例えばレンズレットアレイとすることができる。QWP(
図9A)上に入射される以前に、その光が円偏向になっていなければならない。直線偏向光がエキスパンダ960に到来する場合、そのNAエキスパンダ960とレンズL1との間でQWPを用い円偏向を実行する。
【0111】
NAエキスパンダ960にて偏向が保たれないのであれば、QWPと偏光子とを組み合わせることで円偏光子にしたものを、NAエキスパンダ960より後段に付加すればよい。その円偏光子は、球面状に湾曲したものにすることや、円筒状に湾曲したもの即ちある単一の軸に対し湾曲したものにすることができる。
【0112】
斜視図たる
図14に、円筒状に湾曲した円偏光子1410が光路上に配置された実施形態を示す。
【0113】
偏向性反射レンズにより、変調ビームの経路を、被写体から走査鏡に向かい更に数値開口(NA)エキスパンダに向かう経路に沿うよう、屈曲させることができる。
【0114】
これに代わる実施形態によれば、スキャナ光が、部分反射性湾曲面上にではなく反射性偏光子上にまず入射される。この配列により、走査鏡と後続する光学系との間にQWPを設ける必要性を、なくすことができる。
【0115】
[ディザリングオプション]
湾曲合焦面914(
図9A)在の何れの被写体に関しても、その光学システムにより、拡大鏡と同様の動作を実行することができる。この特徴的挙動の短所の一つは、NAエキスパンダ960の表面上のあらゆる構造(例.素材欠陥や構造的パターン)が拡大されて看者に届くこととなりがちなことである。NAエキスパンダ960の表面の組成によっては、これにより、粒状性その他の不要効果がその知覚像内に生じることとなりうる。
【0116】
ある実施形態によれば、機械的ディザリングを用い、合焦面在構造の看者知覚の低減を助けることができる。側面図たる
図15に、NAエキスパンダ960に機械的運動をもたらすアクチュエータ1512を示す。アクチュエータ1512は、そのエキスパンダの高速振動を引き起こす圧電アクチュエータとすることができる。これに代え、NAエキスパンダ960の形状及び曲率中心を維持しつつ、回動、揺動、振動その他の変位運動を付与することもできよう。ディザリングのための並進を、光軸沿い方向に沿い行ってもよいし、その光軸に対し何らかの角度をなす方向に沿い行ってもよい。曲率中心が維持される運動を用いたディザリング、とは、光軸OAに対するNAアダプタ960の周期的変位があっても走査鏡在の曲率中心がそのまま保たれる、という意味である。球状湾曲面上の何れの点に関しても、ディザリング運動により引き起こされる変位は、本質的に、その点における曲率半径に対し垂直となる。即ち、ディザリングによる変位では、NAエキスパンダ表面の形状及び曲率中心を、画定されている合焦面914の被走査領域と一致した態に保つことができる。
【0117】
[明視野イメージング]
遠近調整機能制約との関連での走査式パンケーキ型デザインの限界に対処するため、本件開示のある実施形態により明視野イメージングを実行することができる。
【0118】
状況によっては、無限遠焦点に虚像を形成するのが最適ではないことや、虚像をある有限な光学的距離に或いは漸変させつつ一連の光学的距離に形成しうるようにすることが役立ちそうなことがある。この効果を達成するため、明視野イメージング技術を採用し、被制御要領にて焦点を変えうるよう本願記載の光学装置を修正することができる。
【0119】
例として、模式図たる
図16に、パンケーキ型イメージング光学系940により形成される虚像の見掛け上の所在個所を、明視野イメージングを用い変更する段取りを、簡略化された形態で示す。この段取りに示されている通り、NAアダプタ960を光軸OAに沿い並進させると、瞳P2在の看者に到達する光の角度が変化し、それにより形成される虚像の見掛け上の所在個所が変化する。
【0120】
NAエキスパンダ960を採用していない諸実施形態、例えば
図2A及び
図2Bを参照して示し記述した実施形態では、走査パターン由来の光を用い合焦面214を形成する対物レンズ244(
図3A及び
図8A)の焦点を変化させることで、明視野イメージングを実施することができる。この焦点変化により、光軸OAに沿い前方又は後方へと、合焦面214の位置が実効的にシフトする。ひいては、その光学システムにて看者向けに形成される像の焦点位置が相応に変化する。
【0121】
明視野イメージングは、走査レーザビームにより提供される細いビームを用い、NA拡張無しで実行することができる。しかしながら、非常に小さな入射瞳を用いておりNA拡張を欠く明視野イメージングでは焦点距離しか変化させることができず、従ってその値打ちが限定的である;像が比較的小さなNAで以て看取されることは、焦点深度が比較的大きいことを意味している。走査レーザビームそれ自体を用いる場合、明視野法は深さ知覚の点で不利であり、両眼離反運動及び遠近調整機能に関してはその看者にとり貧弱な策となる。実際上、
図2A及び
図2Bに示した光学配列による明視野イメージングには、ほとんど又は全く、知覚しうる利点はなかろう。
【0122】
NAエキスパンダ960の付加を伴う明視野イメージングには、深さ表現の改善等の長所を提供しうる見込みがより多くある。本件開示のある実施形態によれば、光軸に沿ったNAエキスパンダ960の長手方向位置を変化させることと併せ、対物レンズ1220の軸方向位置の相応な変化により、明視野イメージングの能力を発揮させることができる。
【0123】
模式的側面図たる
図17に、パンケーキ型光学システムたる像形成光学系940に依拠し明視野イメージングを実行するイメージング装置1600であり、
図9A以降の図に記載のNAエキスパンダ960が付加されたものの、機能的諸部材を示す。1個又は複数個のアクチュエータ1622,1624を用い、屈曲した光軸OAに沿い走査対物系1220及びNAエキスパンダ960を同期的に変位させることで、合焦面914の位置を調整することができる。プロセッサ20により1個又は複数個のアクチュエータ1622,1624の動作を同時運動向けに協調させることで、出射瞳における光の角度、ひいては虚像が形成される際の知覚上の被写体の距離が所望のものとなる。
【0124】
像距離にある具体的なシフトを引き起こすのに必要な焦点シフトの計算は直截的である。例えば、レンズL1~L3で以て11mmなる実効焦点距離fが画定される光学システムが与えられている場合、0.5m(500mm)なる距離dに像を形成するのに必要な焦点シフトd’は、
d’d=f2
を用い計算することができる。この場合、
d’=(112/500)mm=0.242mm
となる。
【0125】
これは光路の長さに比し相対的に小さな変位であり、商業的に入手可能なアクチュエータの動作限界の範囲内であるので、明視野ディスプレイに係る現実策となる。
【0126】
明視野ディスプレイによれば、看者から見て一連の漸変的角度又は位置に表示コンテンツが現れる深さアニメーション、即ち眼球運動からの看者関心感知及び視線追跡と協調する深さアニメーションを初め、複数の有用な像形成技術を利用することが可能となる。明視野ディスプレイによれば、システム光学系を視線追跡計測からのフィードバックに対し適合させることが可能であるため、その光学システムによりある有限焦点に虚像を形成すること、また焦点位置を例えば看者視線追跡に従い決定することが可能となる。
【0127】
本件開示のある実施形態によれば、そのパンケーキ型光学系のうち少なくとも一部分が、上述の通り、目の物焦点距離以内に存することとなる。NAエキスパンダを有する光学装置を、看者の顔面上に配置しうるよう構成し、下眼窩縁と鼻根点及び頬骨とに沿い安定化させること及び一次視野が遮蔽されないようにすることができる。
【0128】
本件開示のある態様に係る光学装置は看者により着用される光学装置であり、変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、その走査鏡に向かう変調ビームの経路上にある対物レンズと、を備える。それら対物レンズ及び走査鏡によりその走査変調ビームに係る湾曲合焦面を画定し、またその湾曲合焦面の合焦面曲率中心を走査鏡に所在させる。屈折力を有していない数値開口(NA)エキスパンダのエキスパンション面を、その画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致させ、そのエキスパンション面によりその走査変調ビームのNAを増大させる。瞳リレー光学系を、走査鏡在の入射瞳が看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継されるよう配置し、その瞳リレー光学系によりそれら入射瞳・出射瞳間の光路を画定し、またその光路を、(i)変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、(ii)走査鏡からの光を受光するよう光路上に配置されており、第1偏向の入射光を湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏向に直交する第2偏向の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子と、を備えるものとし、瞳リレー光学系により画定されるこの光路により変調光ビームを第1偏光子に2回差し向け、その第1偏光子上に2回入射した変調光ビームが平行化されて出射瞳の方に向かうようにする。そのNAエキスパンダはレンズレットアレイ、拡散性光学素子又はホログラフィック光学素子とすることができる。その湾曲鏡面は、入射瞳又は出射瞳に曲率中心があるものとすることができる。1枚又は複数枚の1/4波長板を、その光路沿いに設けることができる。円偏光子をそのNAエキスパンダと凹レンズ表面との間に配置することができる。その瞳リレー光学系により、更に、そのNAエキスパンダに形成された像を看者の網膜へと中継することができる。本光学装置を、その対物レンズ・走査鏡間の集束光路上に配置された第2偏向ビームスプリッタであり、それら対物レンズ・走査鏡間に延びる光軸に対しある斜角に向けられたものを、有するものとすることができる。そのNAエキスパンダを、円偏向されている入射光の偏向状態を保持するものにすることができる。アクチュエータを、そのNAエキスパンダに振動又は運動を付与するよう、且つ走査鏡に対するそのNAエキスパンダ表面の同心性を保つよう、構成することができる。1個又は複数個のアクチュエータを、それら対物レンズ及びNAエキスパンダの同期的運動をもたらすよう、ひいては複数通りの焦点距離をそのレーザビームに関し提供し投射像の深さアニメーションに供するよう構成することができる。偏向性反射レンズにより、その対物系からその走査鏡に向かいそこからその数値開口(NA)エキスパンダに向かう経路に沿い、その変調ビームの経路を屈曲させることができる。
【0129】
本件開示では現下の好適実施形態を具体的に参照しているが、ご理解頂けるように、本件開示の神髄及び技術的範囲内で諸変形及び諸修正をなすことができる。例えば、上掲の記述では片目向けの像形成に狙いを絞っていたが、直ちにご理解頂けるように、立体イメージング技術習熟者にとりなじみ深い方法を用い右目像及び左目像双方に係る画像コンテンツを形成し協調させるのに必要な立体像を、対応する諸素子及び論理回路を用い形成することができる。形成される像を立体像とすることも、或いはモノスコープ表示のため両目に同じ画像コンテンツが供給されるビオキュラ像とすることもできる。
【0130】
本願記載の諸実施形態は、従って、あらゆる意味で例証的であり限定的ではないと考えられる。本発明の技術的範囲は添付する特許請求の範囲により示されており、その均等物の意味及び範疇に収まる改変は皆、想定上それに包含される。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
看者により着用される光学装置であって、
直線偏光または円偏光の変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、
を備え、前記対物レンズ及び前記走査鏡により前記走査された変調ビームに係る湾曲合焦面が画定され、その湾曲合焦面が前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有する光学装置であり、
前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するエキスパンション面を有し、そのエキスパンション面により前記走査された変調ビームの数値開口(NA)を増大させるNAエキスパンダであり、屈折力を有していないNAエキスパンダと、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継するよう配置されており、少なくとも一部が前記看者の目の物焦点距離内にあり、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系と、
を備え、前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏光の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏光に直交する第2偏光の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子であって、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームが前記第1偏光子に2回差し向けられ、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームが平行化され前記出射瞳の方へと差し向けられる第1偏光子と、
(iii)前記第1偏光板と前記湾曲鏡面との間に設けられ、前記変調光ビームが3回通過する1/4波長板と、
を含む、
光学装置。
【請求項2】
請求項1の光学装置であって、更に、前記対物レンズ・前記走査鏡間の集束光路上にビームスプリッタとして配置された第2偏光子を備え、その第2偏光子が、前記対物レンズ・前記走査鏡間に延びる光軸に対し約5~30度の斜角に向けられている光学装置。
【請求項3】
請求項1の光学装置であって、更に、前記対物系から前記走査鏡に向かいそこから前記数値開口(NA)エキスパンダに向かう経路に沿い、前記変調ビームの前記経路を屈曲させる偏光性反射レンズを備える光学装置。
【請求項4】
請求項1の光学装置であって、前記NAエキスパンダがレンズレットアレイである光学装置。
【請求項5】
請求項1の光学装置であって、前記NAエキスパンダが拡散性光学素子である光学装置。
【請求項6】
請求項1の光学装置であって、前記NAエキスパンダがホログラフィック光学素子である光学装置。
【請求項7】
請求項1の光学装置であって、更に、前記光路沿いに1枚又は複数枚の1/4波長板が備わる光学装置。
【請求項8】
請求項1の光学装置であって、更に、前記NAエキスパンダと前記瞳リレー光学系の入射レンズ面である凹レンズ表面との間に配置された円偏光子が備わる光学装置。
【請求項9】
請求項8の光学装置であって、前記円偏光子が円柱状湾曲面を有する光学装置。
【請求項10】
請求項1の光学装置であって、前記瞳リレー光学系が、更に、前記NAエキスパンダのところに形成された像を看者の網膜へと中継する光学装置。
【請求項11】
請求項8の光学装置であって、前記NAエキスパンダが、円偏光されている入射光の偏光状態を保持する光学装置。
【請求項12】
請求項1の光学装置であって、更に、前記NAエキスパンダに振動又は運動を付与するよう構成されており、投射像の深さアニメーション用にレーザビームの複数の焦点距離を提供するアクチュエータを備える光学装置。
【請求項13】
請求項1の光学装置であって、更に、前記対物レンズ及び前記NAエキスパンダの同期的運動をもたらすよう、ひいては前記投射像の深さアニメーションのため複数通りの焦点距離を前記レーザビームにもたらすよう構成された、1個又は複数個のアクチュエータを備える光学装置。
【請求項14】
看者により着用される光学装置であって、
直線偏光または円偏光の変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、
を備え、前記対物レンズ及び前記走査鏡により前記走査された変調ビームに係る湾曲合焦面が画定され、その湾曲合焦面が前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有する光学装置であり、
屈折力を有しておらず、前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するエキスパンション面を有し、そのエキスパンション面により前記走査された変調ビームの数値開口(NA)を増大させるNAエキスパンダであり、前記NAエキスパンダエキスパンション面が光軸沿いに配置されているNAエキスパンダと、
前記光軸に対し一通り又は複数通りの方向に沿い前記NAエキスパンダを並進させるよう励振可能なアクチュエータと、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継するよう配置されており、少なくとも一部が前記看者の目の物焦点距離内にあり、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系と、
を備え、前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏光の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏光に直交する第2偏光の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子であって、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームが前記第1偏光子に2回差し向けられ、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームが平行化され前記出射瞳の方へと差し向けられる第1偏光子と、
(iii)前記第1偏光板と前記湾曲鏡面との間に設けられ、前記変調光ビームが3回通過する1/4波長板と、
を含む、
光学装置。
【請求項15】
請求項14の光学装置であって、前記アクチュエータが第1アクチュエータである光学装置であり、更に、前記光軸沿いで前記対物レンズを並進させるよう励振可能な第2アクチュエータを備える光学装置。
【請求項16】
請求項14の光学装置であって、更に、前記対物レンズ・前記走査鏡間の集束光路上にビームスプリッタとして配置された第2偏光子を備え、その第2偏光子が、前記対物レンズ・前記走査鏡間に延びる光軸に対し約5~30度の斜角に向けられている光学装置。
【請求項17】
請求項14の光学装置であって、前記瞳リレー光学系が単一ピースとして形成されている光学装置。
【請求項18】
請求項14の光学装置であって、前記アクチュエータが、前記NAエキスパンダエキスパンション面の被走査部分に関しそのNAエキスパンダエキスパンション面の曲率中心を保持する並進をもたらすよう、構成されている光学装置。
【請求項19】
看者向けに画像を表示する方法であって、
走査鏡からの走査パターン及び対物レンズに従い、直線偏光または円偏光の変調光ビームに係る湾曲合焦面を画定し、但しその湾曲合焦面を、前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有するものとし、
屈折率を有していない数値開口(NA)エキスパンダ表面を前記変調光ビームの経路沿いに配置することで前記変調走査光ビームのNAを増大させ、但し前記NAエキスパンダ表面を、前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するものとし、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと、少なくとも一部が前記看者の目の物焦点距離内にありそれら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系を用い、光学的に中継する方法であり、
前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏光の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏光に直交する第2偏光の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子であって、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームを前記第1偏光子に2回差し向け、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームを平行化して前記出射瞳の方へと差し向ける第1偏光子と、
(iii)前記第1偏光板と前記湾曲鏡面との間に設けられ、前記変調光ビームが3回通過する1/4波長板と、
を含む、
方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、前記NAエキスパンダ表面の配置に際し拡散素子を配置する方法。
【請求項21】
看者により着用される光学装置であって、
円偏光の変調ビームを走査鏡の方に差し向けるよう励振可能なレーザ光源と、
前記走査鏡に向かう前記変調ビームの経路上にある対物レンズと、
を備え、前記対物レンズ及び前記走査鏡により前記走査された変調ビームに係る湾曲合焦面が画定され、その湾曲合焦面が前記走査鏡在の合焦面曲率中心を有する光学装置であり、
前記画定された湾曲合焦面に対し位置及び湾曲の面で一致するエキスパンション面を有し、そのエキスパンション面により前記走査された変調ビームの数値開口(NA)を増大させるNAエキスパンダであり、屈折力を有していないNAエキスパンダと、
前記走査鏡在の入射瞳を前記看者の眼水晶体在の出射瞳へと中継するよう配置されており、少なくとも一部が前記看者の目の物焦点距離内にあり、それら入射瞳・出射瞳間の光路を画定する瞳リレー光学系と、
を備え、前記光路が、
(i)前記変調ビーム由来の入射光のうち実質的に半分を透過させるよう配置されており前記出射瞳在の第1曲率中心を有する湾曲鏡面と、
(ii)前記走査鏡からの光を受光すべく前記光路上に配置されており、第1偏光の入射光を前記湾曲鏡面の方へ反射させるよう且つその第1偏光に直交する第2偏光の入射光を透過させるよう形成されている第1偏光子であってと、を備え、前記瞳リレー光学系により画定された前記光路により前記変調光ビームが前記第1偏光子に2回差し向けられ、その第1偏光子上に2回入射した前記変調光ビームが平行化され前記出射瞳の方へと差し向けられる第1偏光子と、
を含む、
光学装置。