(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016628
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240131BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20240131BHJP
G01J 3/28 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01J1/02 Z
G01N21/359
G01J3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118893
(22)【出願日】2022-07-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年2月15日に、神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 令和3年度修士論文公聴会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】菅野 公二
(72)【発明者】
【氏名】磯野 吉正
【テーマコード(参考)】
2G020
2G059
2G065
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020BA12
2G020CB42
2G020CC08
2G020CC27
2G020CD06
2G020CD12
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB08
2G059BB11
2G059EE01
2G059EE11
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ01
2G059KK03
2G059KK10
2G065AA08
2G065AA13
2G065AB22
2G065BA03
2G065BA14
2G065BA33
2G065BB27
2G065BC40
(57)【要約】
【課題】光吸収量および光熱変換効率が向上した小型の振動型光センサを提供する。
【解決手段】振動型光センサ1は、微小機械振動子10と、基体30と、を備え、微小機械振動子10は、基体30と非接触で配置された、凹凸構造を有する受光部200と、受光部200と基体30とを接続する梁21U、21D、22Uおよび22Dと、を備え、受光部200は、支持層12および支持層12に積層された金属層11を有し、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれは、一端が支持層12の異なる位置に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小機械振動子と、
基体と、を備え、
前記微小機械振動子は、
前記基体と非接触で配置された、凹凸構造を有する受光部と、
前記受光部と前記基体とを接続する4本以上の梁と、を備え、
前記受光部は、支持層および該支持層に積層された金属層を有し、
前記4本以上の梁のそれぞれは、一端が前記支持層の異なる位置に接続されている、
振動型光センサ。
【請求項2】
前記基体は、前記受光部を挟んで前記4本以上の梁の長尺方向に対向する第1接続部および第2接続部を有し、
前記受光部は、前記第1接続部と最近接する第1端部および前記第2接続部と最近接する第2端部を有し、
前記4本以上の梁のそれぞれの他端は、前記第1接続部および前記第2接続部のいずれかに接続されており、
前記4本以上の梁のそれぞれの前記一端は、前記第1端部および前記第2端部を除く前記支持層の位置に接続されている、
請求項1に記載の振動型光センサ。
【請求項3】
前記4本以上の梁のそれぞれの前記一端は、前記第1端部よりも前記受光部の前記長尺方向の長さの1/4以上前記第1接続部から離れた位置、かつ、前記第2端部よりも前記受光部の前記長尺方向の長さの1/4以上前記第2接続部から離れた位置に接続されている、
請求項2に記載の振動型光センサ。
【請求項4】
前記基体は、前記受光部を挟んで前記4本以上の梁の長尺方向と交差する方向に対向する第3接続部および第4接続部を有し、
さらに、
前記第3接続部と前記受光部との間に接続された第1櫛歯容量素子と、
前記第4接続部と前記受光部との間に接続された第2櫛歯容量素子と、を備える、
請求項1に記載の振動型光センサ。
【請求項5】
前記金属層は、前記支持層の上方に配置され、前記4本以上の梁の長尺方向に繰り返された凹凸構造を有し、
前記受光部は、さらに、
前記金属層の上方に配置された誘電体層を有する、
請求項1に記載の振動型光センサ。
【請求項6】
前記金属層は、前記支持層の上方に配置され、
前記金属層および前記支持層は、前記4本以上の梁の長尺方向に繰り返された凹凸構造を有し、
前記金属層の上方表面は、露出している、
請求項1に記載の振動型光センサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の振動型光センサを複数備え、
前記複数の振動型光センサのそれぞれは、前記受光部の前記凹凸構造の繰り返しピッチが異なる、
分光器。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の振動型光センサを複数備え、
前記複数の振動型光センサのそれぞれは、前記受光部の前記凹凸構造の繰り返しピッチが異なる、
食品分析装置。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の振動型光センサを複数備え、
前記複数の振動型光センサのそれぞれは、前記受光部の前記凹凸構造の繰り返しピッチが異なる、
画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光熱変換可能な、ナノ凹凸構造を有する微小機械振動子の構造が開示されている(例えば、非特許文献1および特許文献1)。これによれば、微小機械振動子は、波長選択可能な光センサとして適用可能であり、分光器、食品分析装置および画像診断装置への応用が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】"Si薄膜被覆金ナノグレーティング構造の近赤外域光吸収スペクトル",新居直之、上杉晃生、菅野公二、磯野吉正, IEEJ Trans. of Sensors and Micromachines, Vol.140, No.4,pp72-78, 2020
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1および特許文献1に開示された微小機械振動子を、高性能かつ小型の光センサに適用する場合、受光部の光吸収量および光熱変換効率を向上させることが要求される。
【0006】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、光吸収量および光熱変換効率が向上した小型の振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る振動型光センサは、微小機械振動子と、基体と、を備え、微小機械振動子は、基体と非接触で配置された、凹凸構造を有する受光部と、受光部と基体とを接続する4本以上の梁と、を備え、受光部は、支持層および該支持層に積層された金属層を有し、上記4本以上の梁のそれぞれは、一端が支持層の異なる位置に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、光吸収量および光熱変換効率が向上した小型の振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る振動型光センサの平面図および断面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施の形態に係る振動型光センサの受光部の構造を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、実施の形態に係る振動型光センサの受光部の構造を示す断面図である。
【
図2C】
図2Cは、変形例1に係る振動型光センサの受光部の構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る振動型光センサの検出システムを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態および比較例に係る振動型光センサの平面構造を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態および比較例に係る振動型光センサの共振周波数変化率を示すグラフである。
【
図6A】
図6Aは、変形例2に係る振動型光センサの微小機械振動子の平面図である。
【
図6B】
図6Bは、変形例3に係る振動型光センサの微小機械振動子の平面図および断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る振動型光センサの光吸収率の波長依存性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る分光器のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一態様に係る振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0011】
また、本開示において、平行および垂直等の要素間の関係性を示す用語、矩形状等の要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
【0012】
以下の各図において、x軸およびy軸は、基体の主面と平行な平面上で互いに直交する軸である。具体的には、平面視において基体の外形が矩形状である場合、x軸は基体の第1辺に平行であり、y軸は基体の第1辺と直交する第2辺に平行である。また、z軸は基体の主面に垂直な軸であり、その正方向は上方向を示し、その負方向は下方向を示す。
【0013】
また、本開示において、「基体の平面視」とは、z軸正側からxy平面に物体を正投影して見ることを意味する。「AがBおよびCの間に配置される」とは、B内の任意の点とC内の任意の点とを結ぶ複数の線分のうちの少なくとも1つがAを通ることを意味する。
【0014】
また、本開示において、AおよびBの間隔とは、Aの表面の任意の点とBの表面の任意の点とを結ぶ線分のうちの最短の長さを意味する。
【0015】
また、本開示において、「AがBに配置される」とは、AがBの主面上に配置されること、および、AがBの内部に配置されることを含む。「AがBの主面上に配置される」とは、AがBの主面に接触して配置されることに加えて、Aが主面と接触せずに当該主面の上方に配置されること(例えば、Aが主面と接触して配置された他の部品上に積層されること)を含む。また、「AがBの主面上に配置される」は、Bの主面に形成された凹部にAが配置されることを含んでもよい。「AがB内に配置される」とは、AがB内にカプセル化されることに加えて、Aの全部がBの両主面の間に配置されているがAの一部がBに覆われていないこと、および、Aの一部のみがB内に配置されていることを含む。
【0016】
(実施の形態)
[1.振動型光センサの構成]
本実施の形態に係る振動型光センサ1の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態に係る振動型光センサ1の平面図および断面図である。
図1の(a)には、基体30の主面をz軸正方向側から見た場合の振動型光センサ1の平面図が示されている。また、
図1の(b)には、
図1の(a)のIb-Ib線における振動型光センサ1の断面図が示されている。また、
図1に示された振動型光センサ1は、さらに、基体30の表面および側面の一部を覆う樹脂部材および遮光部材などを備えてもよい。
【0017】
図1に示すように、振動型光センサ1は、微小機械振動子10と、基体30と、櫛歯容量素子26および28と、を備える。微小機械振動子10は、受光部200と、梁21D、21U、22Dおよび22U(以降、4本の梁と記す場合がある)と、を備える。基体30は、接続端子23、24、25および27を含む。
【0018】
受光部200は、基体30と非接触で配置されており、支持層12および支持層12に積層された金属層11を有している。支持層12は、支持層12L、12Mおよび12Rを含む。金属層11は、金属層11L、11Mおよび11Rを含む。受光部200は、4本の梁の長尺方向(y軸方向)に伸びた支持層12Lおよび金属層11Lの積層体と、上記長尺方向に伸びた支持層12Mおよび金属層11Mの積層体と、上記長尺方向に伸びた支持層12Rおよび金属層11Rの積層体とが、上記長尺方向と交叉する方向(x軸方向)に、この順で並置され、これら3つの積層体は、上記長尺方向と交叉する方向に伸びた受光部200の結合体で結合されている。
【0019】
梁21D、21U、22Dおよび22Uのそれぞれは、受光部200と基体30とを接続している。
図1の(a)に示すように、梁21Uの一端は受光部200の結合体の位置201に接続され、梁21Dの一端は受光部200の結合体の位置202に接続され、梁22Uの一端は受光部200の結合体の位置203に接続され、梁22Dの一端は受光部200の結合体の位置204に接続されている。つまり、4本の梁のそれぞれは、一端が受光部200を構成する支持層12の異なる位置に接続されている。
【0020】
次に、受光部200の積層構造について説明する。
図2Aは、実施の形態に係る振動型光センサ1の受光部200の構造を示す斜視図である。また、
図2Bは、実施の形態に係る振動型光センサ1の受光部200の構造を示す断面図である。
図2Aおよび
図2Bには、受光部200を構成する積層体のうち、支持層12Mおよび金属層11Mの積層体の構造が示されている。なお、支持層12Lおよび金属層11Lの積層体、ならびに、支持層12Rおよび金属層11Rの積層体の構造も、
図2Aおよび
図2Bに示された積層構造と同様である。
【0021】
図2Aおよび
図2Bに示すように、金属層11Mは、支持層12Mの上方(z軸正方向)に配置され、4本の梁の長尺方向(y軸方向)に繰り返された凹凸構造を有している。ここで、金属層11Mの上記長尺方向の凹凸が繰り返されるピッチをPauとする。なお、本実施の形態に係る受光部200は、さらに、金属層11Mの上方(z軸正方向)に配置された誘電体層13Mを有し、金属層11Lの上方(z軸正方向)に配置された誘電体層13L(
図2Aおよび
図2Bに図示せず)を有し、金属層11Rの上方(z軸正方向)に配置された誘電体層13R(
図2Aおよび
図2Bに図示せず)を有している。なお、以下において、誘電体層13M、13Lおよび13Rを、まとめて誘電体層13と記す場合がある。
【0022】
誘電体層13によれば、当該誘電体層が形成されていない構成と比較して、ピッチPauを小さくできる。ピッチPauは、例えば近赤外光を受光部200で検出する場合、400nm~800nmである。これにより、集積度の高い受光部200を形成できるので、小型の振動型光センサ1を提供できる。
【0023】
ここで、支持層12L、12Mおよび12Rは、例えば、Si(ケイ素)で構成されている。また、金属層11L、11Mおよび11Rは、例えば、Au(金)、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、およびCu(銅)の少なくとも1つで構成されている。また、誘電体層13L、13Mおよび13Rは、例えば、Si(ケイ素)およびSiOx(酸化ケイ素)の少なくとも1つで構成されている。
【0024】
振動型光センサ1の上記構成によれば、受光部200に光が照射されると、受光部200の凹凸構造において表面プラズモン共鳴により高効率な光熱変換が行われる。この高熱変換により発生する微小機械振動子10の熱応力を、微小機械振動子10の共振周波数の変化として高感度に検出できる。
【0025】
ここで、微小機械振動子10の共振周波数の変化量をΔf、受光部200が遮光されている場合の微小機械振動子10の共振周波数をf0、入射光量をP、受光部200の光吸収率をβ、梁の幅をw、微小機械振動子10(支持層12および4本の梁)の厚さをt、4本の梁のそれぞれの長さをl、支持層12および4本の梁の熱膨張係数をα、支持層12および4本の梁の熱伝導率をkとすると、共振周波数の変化量Δfは、式1で表される。
【0026】
【0027】
式1より、入射光量Pおよび梁長さlが大きいほど、また、梁の断面積(t×w)が小さいほど、共振周波数の変化量Δfは大きくなり、検出感度が高くなることが解る。つまり、入射光量Pを大きくすべく受光部200の受光面積を大きくするほど、また、4本の梁を細くかつ長くするほど共振周波数の変化量Δfは大きくなり、微小機械振動子10の光吸収量および光熱変換効率が向上する。
【0028】
また、受光部200にて最大の吸収量となる波長(ピーク波長)を、ピッチPauを調整することにより制御することが可能となる。
【0029】
なお、受光部200は、誘電体層13を備えていなくてもよい。
図2Cは、変形例1に係る振動型光センサ1Aの受光部200Aの構造を示す断面図である。同図に示すように、受光部200Aにおいて、金属層11Mは、支持層12Mの上方(z軸正方向)に配置されている。誘電体層13Mは配置されず、金属層11Mの上方表面は露出している。支持層12Mおよび金属層11Mは、4本の梁の長尺方向(y軸方向)に繰り返された凹凸構造を有している。
【0030】
これによれば、支持層12M、12Lおよび12Rに凹凸が形成されているので、金属層11M、11Lおよび11R自体にあらためて凹凸を形成する必要がない。また、金属層11M、11Lおよび11Rの上方(z軸正方向)に誘電体層が形成されず露出しているので、受光部200Aの製造工程を簡素化できる。なお、ピッチPauは、例えば近赤外光を受光部200Aで検出する場合、1.2μm~5μmである。
【0031】
図1に戻って、振動型光センサ1の構成について説明する。
【0032】
基体30は、微小機械振動子10を支持する。具体的には、基体30の中央に設けられた凹部35(または空洞)に微小機械振動子10が配置されている。基体30のz軸正方向側の主面には、接続端子23、24、25および27が設けられている。
【0033】
接続端子23は第1接続部の一例であり、接続端子24は第2接続部の一例である。接続端子23および24は、受光部200を挟んで4本の梁の長尺方向(y軸方向)に対向配置されている。接続端子23および24のそれぞれは、接続層40を介して基体30の本体に接続されている。梁21Uの他端は接続端子23に接続され、梁21Dの他端は接続端子24に接続され、梁22Uの他端は接続端子23に接続され、梁22Dの他端は接続端子24に接続されている。つまり、4本の梁のそれぞれは、両端のうち一端が受光部200に接続され、他端が接続端子23および24のいずれかに接続され、両端以外の部分は基体30および受光部200を構成するいずれの部材とも接触していない。
【0034】
接続端子25は第3接続部の一例であり、接続端子27は第4接続部の一例である。接続端子25および27は、受光部200を挟んで4本以上の梁の長尺方向と交差する方向(x軸方向)に対向配置されている。接続端子25および27のそれぞれは、
図1の(b)に示すように、接続層40を介して基体30の本体に接続されている。
【0035】
接続端子23、24、25および27は、例えば、Si(ケイ素)で構成されている。接続層40は、例えば、SiO2(二酸化ケイ素)で構成されている。
【0036】
櫛歯容量素子26は、第1櫛歯容量素子の一例であり、接続端子25と受光部200との間に接続されている。また、櫛歯容量素子28は、第2櫛歯容量素子の一例であり、接続端子27と受光部200との間に接続されている。櫛歯容量素子26および28のそれぞれは、例えば、x軸方向に対向する一対の櫛歯電極を有する。一対の櫛歯電極のそれぞれは、x軸に沿って伸びる複数の電極指を含む。櫛歯容量素子26および28の上記構造によれば、容量素子を省面積化できる。
【0037】
櫛歯容量素子26および28によれば、受光部200で吸収した光の波長および強度を検出するにあたり、例えば、櫛歯容量素子26を微小機械振動子10の励振アクチュエータとして用い、櫛歯容量素子28を微小機械振動子10の振動変化を電気信号で検出するセンサとして用いることができる。よって、小型の光検出システムを実現できる。
【0038】
なお、微小機械振動子10の支持層12L、12Mおよび12R、接続端子23、24、25および27を含む基体30、ならびに櫛歯容量素子26および28は、例えば、シリコンウエハからMEMS(Microelectromechanical systems)加工技術を用いて作製できる。これにより、振動型光センサ1の微細化と低コスト化が可能となる。
【0039】
図3は、実施の形態に係る振動型光センサ1の検出システムを示すブロック図である。同図に示すように、ロックインアンプ52の出力端子から、接続端子25上に配置された電極41を介して櫛歯容量素子26に交流信号が印加される。一方、櫛歯容量素子28で検出された信号は、接続端子27上に配置された電極42およびチャージアンプ51を介してロックインアンプ52の入力端子に入力される。上記検出システムを用いて、受光部200の遮光時に対する照射時の共振周波数の変化量Δfが計測される。
【0040】
振動型光センサ1の上記構成によれば、2本の梁で支持された構造を有する従来の振動型光センサと比較して、梁21D、21U、22Dおよび22Uが、それぞれ支持層12の異なる位置201~204に接続されているので、受光部200を対称的かつ安定的に支持できる。これにより、受光部200の面積を大きく確保しつつ微小機械振動子10の不安定振動を抑制できる。よって、微小機械振動子10の光吸収量および光熱変換効率が向上した小型の振動型光センサ1を提供できる。
【0041】
InGaAs(インジウムガリウムヒ素)などの化合物半導体を用いた従来のフォトダイオードを用いた光センサは高コストであり、感度向上のため冷却器が必要となり、小型化に課題がある。これに対してSiおよびAuのショットキー接合型の光センサ、Siボロメータおよびサーモパイル型の光センサは低コストが可能であるが、感度に課題がある。また、波長依存性を有するフィルタまたは吸収体を集積したセンサは、小型化に課題がある。
【0042】
これに対して、本実施の形態に係る振動型光センサ1によれば、例えばSiを材料として一体成型できるため低コスト化が可能であり、また、光を熱応力に変換する検出原理を用いているため、冷却器は不要である。また、微小機械振動子10として4本の梁を採用しているので、受光部200の面積を大きく確保しつつ不安定振動を抑制できる。よって、光検出感度が向上した小型の振動型光センサ1を提供できる。
【0043】
[2.受光部および梁の配置]
次に、本実施の形態に係る振動型光センサ1を構成する受光部200と4本の梁との配置関係について説明する。
【0044】
図4は、実施の形態および比較例に係る振動型光センサの平面構造を示す図である。同図の(a)には、本実施の形態に係る振動型光センサ1が備える微小機械振動子10の平面構成図が示されており、同図の(b)には、比較例に係る振動型光センサ500が備える微小機械振動子の平面構成図が示されている。
【0045】
図4の(b)に示すように、比較例に係る振動型光センサ500において、受光部520は、接続端子23と最近接する端部501を有している。また、受光部520は、接続端子24と最近接する端部502を有している。梁521Uの一端は端部501に接続され、梁521Dの一端は端部502に接続されている。また、梁521Uの他端は接続端子23に接続され、梁521Dの他端は接続端子24に接続されている。
【0046】
比較例に係る振動型光センサ500の受光部520、梁521Uおよび521Dの配置によれば、梁521Uは接続端子23の最近接点である端部501に接続され、梁521Dは接続端子24の最近接点である端部502に接続される。つまり、比較例に係る振動型光センサ500では、接続端子23および24の間隔をH1とし、受光部520の梁の長尺方向の長さをH2とし、梁521Uの長さをL521Uとし、梁521Dの長さをL521Dとすると、H1=H2+L521U+L521Dが成立している。このため、梁521Uおよび521Dを長く確保すると、受光部520の長さH2が小さくなる。また、受光部520の長さH2を大きく確保すると、梁521Uおよび521Dが短くなる。よって、受光面積の増大と2本の梁の長尺化とが両立できない。さらに、受光部520を2本の梁521Uおよび521Dにより2点支持しているので、例えば、梁の長尺方向と交差する方向(x軸方向)への面内振動、および、2本の梁521Uおよび521Dを回転軸とした振動などの不安定な振動モードが発生する。
【0047】
これに対して、
図4の(a)に示すように、本実施の形態に係る振動型光センサ1では、受光部200は、接続端子23と最近接する端部205(第1端部)および接続端子24と最近接する端部206(第2端部)を有し、梁21Uの一端、梁21Dの一端、梁22Uの一端、および梁22Dの一端は、端部205および206を除く位置に接続されている。具体的には、梁21Uの一端は位置201に接続され、梁21Dの一端は位置202に接続され、梁22Uの一端は位置203に接続され、および梁22Dの一端は位置204に接続されている。
【0048】
これによれば、4本の梁は受光部200と基体30の接続端子とを最短で接続しない。つまり、受光部200の長さH2は、梁21U、21D、22Uおよび22Dの長さに規制されることなく、最大H1まで大きく確保できる。また、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれの長さは、受光部200の長さH2に規制されることなく、それぞれの梁が対称性を確保しつつ、最大(H1/2)まで大きく確保できる。よって、受光面積の増大と4本の梁の長尺化とを両立できる。さらに、受光部200を4本の梁により支持しているので、梁の長尺方向と交差する方向(x軸方向)への面内振動、および、梁を回転軸とした振動などの不安定な振動モードを抑制できる。よって、微小機械振動子10の小型化を確保しつつ、受光部200の光吸収面積を向上でき、微小機械振動子10の光熱変換効率を向上できる。
【0049】
図5は、実施の形態および比較例に係る振動型光センサの共振周波数変化率(Δf/f
0)を示すグラフである。同図に示されたグラフにおいて、横軸は受光部での発熱密度を表し、縦軸は振動型光センサの共振周波数変化率(Δf/f
0)を表している。同図に示すように、本実施の形態に係る振動型光センサ1は、比較例に係る振動型光センサ500と比較して、同じ発熱密度に対しての共振周波数変化率が高い。つまり、本実施の形態に係る振動型光センサ1は、比較例に係る振動型光センサ500よりも光熱変換効率が高いことが解る。これは、
図4に示された比較例に係る受光部520の面積が4000μm
2であるのに対して、本実施の形態に係る受光部200の面積は60224μm
2(梁長さl:225μm、梁幅w:2μm)となっており、約15倍の面積増加となっていることが主要因と考えられる。
【0050】
なお、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれの一端は、端部205よりも受光部200の長さH2の1/4以上、接続端子23から離れた位置に接続され、かつ、端部206よりも受光部200の長さH2の1/4以上、接続端子24部から離れた位置に接続されていることが望ましい。
【0051】
これによれば、4本の梁が受光部200と接続端子23および24とを最短で接続するのではなく、4本の梁のそれぞれと受光部200とが、上記長尺方向に受光部200の長さH2の1/4以上重複する。よって、受光面積の増大と4本の梁の長尺化とを両立できる。よって、微小機械振動子10の小型化を確保しつつ、受光部200の光吸収面積および光吸収密度を向上でき、微小機械振動子10の光熱変換効率を向上できる。
【0052】
なお、本開示の振動型光センサ1の配置構成は、
図1および
図4の(a)に示された配置構成に限定されない。
【0053】
図6Aは、変形例2に係る振動型光センサ1Bの平面図である。同図には、変形例2に係る振動型光センサ1Bのうち、微小機械振動子、接続端子23および24の平面構成が示されている。本変形例に係る振動型光センサ1Bは、受光部200Bと、梁31U、31D、32Uおよび32Dと、接続端子23および24と、を備える。
【0054】
受光部200Bは、基体30の主面を平面視した場合、矩形となっている。梁31Uの一端は受光部200Bの位置211に接続され、他端は接続端子23に接続されている。梁31Dの一端は受光部200Bの位置212に接続され、他端は接続端子24に接続されている。梁32Uの一端は受光部200Bの位置213に接続され、他端は接続端子23に接続されている。梁32Dの一端は受光部200Bの位置214に接続され、他端は接続端子24に接続されている。受光部200Bの位置211~214のそれぞれは、接続端子23と最近接する端部ではなく、また、接続端子24と最近接する端部ではない。
【0055】
これによれば、4本の梁は受光部200Bと接続端子23または24とを最短で接続しない。つまり、受光部200Bの長さH2は、梁31U、31D、32Uおよび32Dの長さに規制されることなく、最大H1まで大きく確保できる。また、梁31U、31D、32Uおよび32Dのそれぞれの長さは、受光部200Bの長さH2に規制されることなく、それぞれの梁が対称性を確保しつつ、最大(H1/2)まで大きく確保できる。よって、受光面積の増大と4本の梁の長尺化とを両立できる。さらに、受光部200Bを4本の梁により支持しているので、4本の梁の長尺方向と交差する方向(x軸方向)への面内振動、および、梁を回転軸とした振動などの不安定な振動モードを抑制できる。よって、微小機械振動子の小型化を確保しつつ、受光部200Bの光吸収面積を向上でき、微小機械振動子の光熱変換効率を向上できる。
【0056】
図6Bは、変形例3に係る振動型光センサ1Cの平面図および断面図である。同図の(a)には、変形例3に係る振動型光センサ1Cのうち、微小機械振動子、接続端子23および24の平面構成が示されている。また、同図の(b)には、
図6Bの(a)のVIB-VIB線における振動型光センサ1Cの断面図が示されている。本変形例に係る振動型光センサ1Cは、受光部200Cと、梁33U、33D、34Uおよび34Dと、接続端子23および24と、を備える。
【0057】
受光部200Cは、基体30の主面を平面視した場合、矩形となっている。梁33Uの一端は受光部200Cの位置215に接続され、他端は接続端子23に接続されている。梁33Dの一端は受光部200Cの位置216に接続され、他端は接続端子24に接続されている。梁34Uの一端は受光部200Cの位置217に接続され、他端は接続端子23に接続されている。梁34Dの一端は受光部200Cの位置218に接続され、他端は接続端子24に接続されている。受光部200Cの位置215~218のそれぞれは、受光部200Cの受光面と反対側の裏面に存在し、接続端子23と最近接する端部ではなく、また、接続端子24と最近接する端部ではない。
【0058】
これによれば、4本の梁は受光部200Cと接続端子23または24とを最短で接続しない。つまり、受光部200Cの長さH2は、梁33U、33D、34Uおよび34Dの長さに規制されることなく、最大H1まで大きく確保できる。また、梁33U、33D、34Uおよび34Dのそれぞれの長さは、受光部200Cの長さH2に規制されることなく、それぞれの梁が対称性を確保しつつ、最大(H1/2)まで大きく確保できる。よって、受光面積の増大と4本の梁の長尺化とを両立できる。さらに、受光部200Cを4本の梁により支持しているので、4本の梁の長尺方向と交差する方向(x軸方向)への面内振動、および、梁を回転軸とした振動などの不安定な振動モードを抑制できる。よって、微小機械振動子の小型化を確保しつつ、受光部200Cの光吸収面積を向上でき、微小機械振動子の光熱変換効率を向上できる。
【0059】
なお、受光部200Bおよび200Cは、上記平面視において矩形でなくてもよく、円形または多角形などであってもよい。
【0060】
[3.分光器100の構成]
本実施の形態に係る振動型光センサ1は、分光器として適用することが可能である。
【0061】
図7は、実施の形態に係る振動型光センサ1の光吸収率の波長依存性を示すグラフである。同図に示されたグラフは、振動型光センサ1のピッチPauに対する光吸収率の波長依存性を示しており、異なるピッチPauごとの波形を重ねて表している。
図7に示すように、ピッチPauを変化させると、ピーク波長が変化する。具体的には、ピッチPauを大きくするほど、ピーク波長が大きくなる。
図7に示された特性を利用することにより、本実施の形態に係る振動型光センサ1を用いた分光器を構成することができる。
【0062】
図8は、実施の形態に係る分光器100のブロック構成図である。同図に示すように、分光器100は、振動型光センサ1、1D、1E、および1Fと、信号処理回路60と、を備える。
【0063】
振動型光センサ1は、本実施の形態に係る振動型光センサ1であり、例えばピッチPau=500nmとなっている。振動型光センサ1Dは、本実施の形態に係る振動型光センサ1の一例であり、例えばピッチPau=550nmとなっている。振動型光センサ1Eは、本実施の形態に係る振動型光センサ1の一例であり、例えばピッチPau=600nmとなっている。振動型光センサ1Fは、本実施の形態に係る振動型光センサ1の一例であり、例えばピッチPau=800nmとなっている。つまり、振動型光センサ1、1D、1E、および1Fは、ピッチPauのみが異なる。
【0064】
信号処理回路60は、振動型光センサ1、1D、1E、および1Fを制御する制御回路の一例である。信号処理回路60は、例えば、ロックインアンプ、チャージアンプおよびプロセッサなどを有し、振動型光センサ1、1D、1E、および1Fの微小機械振動子を励振させるための信号を出力し、振動型光センサ1、1D、1E、および1Fから共振周波数の変化量を取得する。信号処理回路60は、取得した共振周波数の変化量に基づいて対象物に入射した光の波長分析を実行する。
【0065】
上記構成によれば、複数の振動型光センサにおける受光部の凹凸構造のピッチPauが異なるので、振動型光センサごとに光の検出波長が異なる。よって、光を波長ごとに分割する回折格子や、フォトダイオードの高検出感度を確保するための冷却器などを必要としない小型の分光器100を構成できる。
【0066】
なお、本実施の形態に係る分光器100は、食品分析装置に適用できる。これによれば、振動型光センサごとに光の検出波長が異なることを利用して、食品の新鮮度や腐食状況により反射光スペクトルが異なることで食品の鮮度などを分析することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態に係る分光器100は、画像診断装置に適用できる。これによれば、振動型光センサごとに光の検出波長が異なることを利用して、人体臓器の状態などにより反射光スペクトルが異なることで人体を診断する装置として利用することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態に係る分光器100は、アルコールセンサおよびガスセンサとしても適用可能である。本実施の形態に係る分光器100は、小型および低コストにより、携帯端末にも搭載可能であり、また、車載用にも適用が可能である。
【0069】
(その他の実施の形態など)
以上、本発明に係る振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置について、実施の形態および変形例を挙げて説明したが、本発明に係る振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置は、上記実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、上記実施の形態および変形例に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、上記振動型光センサ、分光器、食品分析装置および画像診断装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0070】
上記実施の形態において、振動型光センサ1の微小機械振動子10を構成する梁は4本に限定されず、4本以上であればよい。なお、微小機械振動子10を構成する4本以上の梁のうちの2本以上の梁のそれぞれの一端は受光部200の異なる位置に接続され、当該2本以上の梁のそれぞれの他端は対向する接続端子23および24のうちの一方の接続端子23に接続され、また、上記2本以上の梁と異なる2本以上の梁のそれぞれの一端は受光部200の異なる位置に接続され、当該2本以上の梁のそれぞれの他端は接続端子23および24のうちの他方の接続端子24に接続されていることが好ましい。これによれば、微小機械振動子10を構成する4本以上の梁が、対称的に受光部200を支持できるので、受光面内の振動などの不安定な振動モードを抑制できる。よって、微小機械振動子10の小型化を確保しつつ微小機械振動子10の光熱変換効率を向上できる。
【0071】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様の振動型光センサ1は、微小機械振動子10と、基体30と、を備え、微小機械振動子10は、基体30と非接触で配置された、凹凸構造を有する受光部200と、受光部200と基体30とを接続する梁21U、21D、22Uおよび22Dと、を備え、受光部200は、支持層12および支持層12に積層された金属層11を有し、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれは、一端が支持層12の異なる位置に接続されている。
【0072】
これによれば、2本の梁で支持された構造を有する従来の振動型光センサと比較して、4本の梁21U、21D、22Uおよび22Dが支持層12の異なる位置に接続されているので、受光部200を対称的かつ安定的に支持できる。これにより、受光部200の面積を大きく確保しつつ微小機械振動子10の不安定振動を抑制できる。よって、微小機械振動子10の光吸収量および光熱変換効率が向上した小型の振動型光センサ1を提供できる。
【0073】
また、第2の態様の振動型光センサ1では、第1の態様において、基体30は、受光部200を挟んで梁21U、21D、22Uおよび22Dの長尺方向に対向する接続端子23および24を有し、受光部200は、接続端子23と最近接する端部205および接続端子24と最近接する端部206を有し、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれの他端は、接続端子23および24のいずれかに接続されており、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれの一端は、端部205および206を除く支持層12の位置に接続されている。
【0074】
これによれば、梁21U、21D、22Uおよび22Dが受光部200と接続端子23または24とを最短で接続しないので、梁の長さに制限されずに受光部200の上記長尺方向の長さを大きく確保できる。よって、受光部200の光吸収量を向上できる。
【0075】
また、第3の態様の振動型光センサ1では、第2の態様において、梁21U、21D、22Uおよび22Dのそれぞれの一端は、端部205よりも受光部200の上記長尺方向の長さの1/4以上接続端子23から離れた位置、かつ、端部206よりも受光部200の上記長尺方向の長さの1/4以上接続端子24から離れた位置に接続されている。
【0076】
これによれば、梁21U、21D、22Uおよび22Dが受光部200と接続端子23または24とを最短で接続するのではなく、4本の梁のそれぞれと受光部200とが、上記長尺方向に、受光部200の長さの1/4以上重複する。よって、接続端子23および24で挟まれた領域における受光部200の占有面積を大きくできるので、受光部200の光吸収量を、より向上できる。
【0077】
また、第4の態様の振動型光センサ1では、第1~第3のいずれかの態様において、基体30は、受光部200を挟んで上記長尺方向と交差する方向に対向する接続端子25および27を有し、振動型光センサ1は、さらに、接続端子25と受光部200との間に接続された櫛歯容量素子26と、接続端子27と受光部200との間に接続された櫛歯容量素子28と、を備える。
【0078】
これによれば、受光部200で吸収した光の波長および強度を検出するにあたり、例えば、櫛歯容量素子26を微小機械振動子10の励振アクチュエータとして用い、櫛歯容量素子28を微小機械振動子10の振動変化を電気信号で検出するセンサとして用いることができる。よって、小型の光検出システムを実現できる。
【0079】
また、第5の態様の振動型光センサ1では、第1~第4のいずれかの態様において、金属層11は、支持層12の上方に配置され、上記長尺方向に繰り返された凹凸構造を有し、受光部200は、さらに、金属層11の上方に配置された誘電体層13を有する。
【0080】
これによれば、金属層11の上方に誘電体層13が形成されているので、上記凹凸構造のピッチPauを小さくできる。よって、集積度の高い受光部200を形成できるので、小型の振動型光センサ1を提供できる。
【0081】
また、第6の態様の振動型光センサ1では、第1~第4のいずれかの態様において、金属層11は、支持層12の上方に配置され、金属層11および支持層12は、上記長尺方向に繰り返された凹凸構造を有し、金属層11の上方表面は露出している。
【0082】
これによれば、支持層12に凹凸が形成されているので金属層11にあらためて凹凸を形成する必要がなく、また、金属層11の上方に誘電体層13が形成されず露出しているので、受光部200Aの製造工程を簡素化できる。
【0083】
また、第7の態様の分光器100は、第1~第6のいずれかの態様の振動型光センサ1を複数備え、当該複数の振動型光センサ1のそれぞれは、受光部200の凹凸構造のピッチPauが異なる。
【0084】
これによれば、複数の振動型光センサ1における受光部200の凹凸構造のピッチPauが異なるので、振動型光センサ1ごとに光の検出波長が異なる。よって、光を波長ごとに分割する回折格子や、フォトダイオードの高検出感度を確保するための冷却器などを必要としない小型の分光器100を構成できる。
【0085】
また、第8の態様の食品分析装置は、第1~第6のいずれかの態様の振動型光センサ1を複数備え、当該複数の振動型光センサ1のそれぞれは、受光部200の凹凸構造のピッチPauが異なる。
【0086】
これによれば、振動型光センサ1ごとに光の検出波長が異なるので、食品の新鮮度や腐食状況により反射光スペクトルが異なることで食品の鮮度などを分析する食品分析装置に適用できる。
【0087】
また、第9の態様の画像診断装置は、第1~第6のいずれかの態様の振動型光センサ1を複数備え、当該複数の振動型光センサ1のそれぞれは、受光部200の凹凸構造のピッチPauが異なる。
【0088】
これによれば、振動型光センサ1ごとに光の検出波長が異なるので、人体臓器の状態などにより反射光スペクトルが異なることで人体を診断する画像診断装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、小型、低コストおよび高感度の振動型光センサ、当該振動型光センサを有する分光器として、食品管理、製造管理、および医療分野などに適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、500 振動型光センサ
10 微小機械振動子
11、11L、11M、11R 金属層
12、12L、12M、12R 支持層
13、13L、13M、13R 誘電体層
21D、21U、22D、22U、31D、31U、32D、32U、33D、33U、34D、34U、521U、521D 梁
23、24、25、27 接続端子
26、28 櫛歯容量素子
30 基体
35 凹部
40 接続層
41、42、43 電極
51 チャージアンプ
52 ロックインアンプ
60 信号処理回路
100 分光器
200、200A、200B、200C、520 受光部
201、202、203、204、211、212、213、214、215、216、217、218 位置
205、206、501、502 端部
H1 間隔
H2 長さ
Pau ピッチ