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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001663
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電源供給システム及び電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H02J1/00 304E
H02J1/00 306K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100467
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乗松 崇泰
(72)【発明者】
【氏名】古後 健治
(72)【発明者】
【氏名】前田 功治
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165DA02
5G165EA04
5G165JA04
5G165JA07
5G165JA09
5G165NA05
5G165NA06
(57)【要約】
【課題】 冗長構成の電源・通信ネットワークにおいて、電源ハーネス増加に伴い、重量・コストが増加するという課題があった。
【解決手段】 第一のスイッチ回路401は、第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、第一の制御回路301への第一の電圧の供給を遮断し、第二のスイッチ回路402は、第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、通信線216への第一の電圧の供給を遮断し、電源スイッチ回路403は、第一の制御回路301への電源電圧の供給元を第一の電源201から第二の電源202へ切り替える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の制御回路と、
前記第一の制御回路に電源電圧として供給される第一の電圧を出力する第一の電源と、
前記第一の電源と前記第一の制御回路に接続され、前記第一の制御回路への前記第一の電圧の電源供給を遮断する第一のスイッチ回路と、
前記第一の電源と第二の制御回路との通信に使用される通信線とに接続され、前記通信線への前記第一の電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、
前記第二の制御回路に電源電圧として供給される第二の電圧を出力する第二の電源と、
前記第一の制御回路と前記通信線に接続され、前記第一のスイッチ回路により前記第一の制御回路への前記第一の電圧の供給が遮断されたときに、前記第二の電圧を前記通信線を介して前記第一の制御回路に供給する電源スイッチ回路と、を備え、
前記第一の電圧の前記第二の制御回路への電源供給、及び前記第二の電圧の前記第一の制御回路への電源供給は、前記通信線を用いた双方向の電力伝送であって、
前記第一のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、前記第一の制御回路への前記第一の電圧の供給を遮断し、
前記第二のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、前記通信線への前記第一の電圧の供給を遮断し、
前記電源スイッチ回路は、前記第一の制御回路への電源電圧の供給元を前記第一の電源から前記第二の電源へ切り替える
電源供給システム。
【請求項2】
前記第一のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さい合に、前記第一の制御回路へ前記第一の電圧を供給し、
前記第二のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さく、かつ前記第二の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、前記通信線へ前記第一の電圧を供給し、
前記電源スイッチ回路は、前記第一の制御回路と前記通信線を遮断する
請求項1に記載の電源供給システム。
【請求項3】
前記第一のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さいときに、前記第一の電源と前記第一の制御回路の間を通電する第一のスイッチング素子と、前記第一の電源と前記第一の制御回路の間に、前記第一のスイッチング素子と直列に且つ極性を反対に接続したスイッチング素子とを備え、
前記第二のスイッチ回路は、前記第一の電圧及び第二の電圧ともに電圧降下が閾値よりも小さいときに、前記第一の電源と前記通信線の間を通電する第二のスイッチング素子と、前記第一の電源と前記通信線の間に、前記第二のスイッチング素子と直列に且つ極性を反対に接続したスイッチング素子とを備え、
前記電源スイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さいときに、前記第一の制御回路と前記通信線の間を通電する第三のスイッチング素子と、前記第一の制御回路と前記通信線の間に、前記第三のスイッチング素子と直列に且つ極性を反対に接続したスイッチング素子とを備える
請求項1に記載の電源供給システム。
【請求項4】
前記第一の制御回路への前記第一の電圧の電源供給が遮断されたとき、前記第一の制御回路は、外部装置へ前記第一の電源が異常であることを通知する
請求項1に記載の電源供給システム。
【請求項5】
第一の電源から電源電圧として第一の電圧が供給される第一の制御回路と、
前記第一の電源と前記第一の制御回路に接続され、前記第一の制御回路への前記第一の電圧の電源供給を遮断する第一のスイッチ回路と、
前記第一の電源と、第二の電源から電源電圧として第二の電圧が供給される第二の制御回路との通信に使用される通信線とに接続され、前記通信線への前記第一の電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、
前記第一の制御回路と前記通信線に接続され、前記第一のスイッチ回路により前記第一の制御回路への前記第一の電圧の供給が遮断されたときに、前記第二の電圧を前記通信線を介して前記第一の制御回路に供給する電源スイッチ回路と、を備え、
前記第一の電圧の前記第二の制御回路への電源供給、及び前記第二の電圧の前記第一の制御回路への電源供給は、前記通信線を用いた双方向の電力伝送であって、
前記第一のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、前記第一の制御回路への前記第一の電圧の供給を遮断し、
前記第二のスイッチ回路は、前記第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、前記通信線への前記第一の電圧の供給を遮断し、
前記電源スイッチ回路は、前記第一の制御回路への電源電圧の供給元を前記第一の電源から前記第二の電源へ切り替える
電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信信号に電源を重畳する技術を利用した電源供給システム及び電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電動化及び自動運転への対応のため、センサ等の車載電子制御部品が増加傾向にあり、車内通信ネットワークが複雑化している。車内通信ネットワークの複雑度が増すと、通信ケーブル本数の増加によるコスト増や組立難易度増によるコスト増が懸念される。そのため、車内ECU(Electronic Control Unit)アーキテクチャを、ドメイン型からゾーン型へ移行することが提唱されている。ゾーンアーキテクチャは、高速通信とルーティングを導入して車内通信ネットワークをシンプルにするものである。
【0003】
また、自動運転では、部品が一つ壊れても運転継続可能とする「Fail operational」(故障時動作継続)が要求されるため、基本的に電源や通信を冗長化する。電源の冗長化においては、主電源と副電源を持ち、主電源が壊れた際に副電源に切り替える方式となっている。片方の電源は常時使用しておらず、電源ハーネスも冗長化によって倍の数が必要である(特許文献1参照)。
【0004】
電源ハーネスの増加は、部品コスト増、車体重量増、組立コスト増につながる。別用途で用いている電源を冗長電源として使用させる方式も考えられるが、それぞれの電源電圧が異なることもあり、双方に対して動作を保証し合うということはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-142486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、電源冗長化により、電源の増加、電源ハーネスの増加が予想され、車体重量増や部品コスト増、そして組立コスト増が課題となる。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、電源冗長化を行うシステムにおいて、電源冗長化に伴い増加する電源ハーネスの削減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の電源供給システムは、第一の制御回路と、その第一の制御回路に電源電圧として供給される第一の電圧を出力する第一の電源と、その第一の電源と第一の制御回路に接続され、第一の制御回路への第一の電圧の電源供給を遮断する第一のスイッチ回路と、第一の電源と第二の制御回路との通信に使用される通信線とに接続され、通信線への第一の電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路と、第二の制御回路に電源電圧として供給される第二の電圧を出力する第二の電源と、第一の制御回路と通信線に接続され、第一のスイッチ回路により第一の制御回路への第一の電圧の供給が遮断されたときに、第二の電圧を通信線を介して第一の制御回路に供給する電源スイッチ回路と、を備える。第一の電圧の第二の制御回路への電源供給、及び第二の電圧の第一の制御回路への電源供給は、通信線を用いた双方向の電力伝送である。
上記第一のスイッチ回路は、第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、第一の制御回路への第一の電圧の供給を遮断し、上記第二のスイッチ回路は、第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、通信線への第一の電圧の供給を遮断し、上記電源スイッチ回路は、第一の制御回路への電源電圧の供給元を第一の電源から第二の電源へ切り替える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一態様によれば、電源ハーネスを増やさずに電源冗長化を実現することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来の電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る電源供給システムが備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態における電子制御装置が備える電源切替器の構成例を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施形態における電源切替器を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第1の例を示す回路図である。
図6】本発明の第1の実施形態における電源切替器を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第2の例を示す回路図である。
図7】本発明の第1の実施形態における電源切替器を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第3の例を示す回路図である。
図8】本発明の第1の実施形態における電源切替器を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第4の例を示す回路図である。
図9】本発明の第2の実施形態における電子制御装置が備える電源切替器の構成例を示すブロック図である。
図10】本発明の第2の実施形態における電源切替器を構成する制御器の第1の例を示す回路図である。
図11】本発明の第2の実施形態における電源切替器を構成する制御器の第2の例を示す回路図である。
図12】本発明の第2の実施形態における電源切替器を構成する制御器の第3の例を示す回路図である。
図13】本発明の第3の実施形態に係る電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。
図14】本発明の第3の実施形態に係る電源供給システムが備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
図15】本発明の第4の実施形態に係る電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。
図16】本発明の第4の実施形態に係る電源供給システムが備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
図17】本発明の第4の実施形態に係る電源供給システムが備える他の電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において、同一の構成要素又は実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
<従来の電源供給システム>
本発明の実施形態に係る電源供給システムを説明する前に、従来の電源供給システムの電源冗長化の例について図1を参照して説明する。
【0013】
図1は、従来の電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。図1に示す電源供給システム100は、ゾーンアーキテクチャにおいてECU103~106間をリング型で接続した構成であって、電源重畳技術を使わずに、電源と通信を冗長化した例である。電源101と電源102が冗長電源となっており、電源101が故障したときのみ電源102からECU103~106に電源(電力)が供給される。
【0014】
電源101は、電源ハーネス107を介してECU103に、電源ハーネス108を介してECU105に電力を供給する。さらに、電源101は、ECU103から電源ハーネス109を介してECU104に、ECU105から電源ハーネス110を介してECU106へ電力を供給する。
【0015】
電源101の故障時には、電源102は、電源ハーネス111を介してECU104に、電源ハーネス112を介してECU106に電力を供給する。さらに、電源102は、ECU104から電源ハーネス113を介してECU103に、ECU106から電源ハーネス114を介してECU105へ電力を供給する。
【0016】
ECU103~106間は、冗長化された通信線で相互に接続されており、通信も冗長化されている。ECU103とECU104は、通信線116と通信線120とを介して通信を行う。ECU103とECU105は、通信線115と通信線119とを介して通信を行う。ECU104とECU106とは、通信線118と通信線122とを介して通信を行う。ECU105とECU106とは、通信線117と通信線121とを介して通信を行う。
【0017】
ECU103は、センサ131に電源線141を介して電源を供給し、通信線142を介してセンサ131に対して制御及びデータの授受を行う。また、ECU103は、アクチュエータ132に電源線143を介して電源を供給し、通信線144を介してアクチュエータ132に対して制御及びデータの授受を行う。
【0018】
ECU104は、センサ133に電源線145を介して電源を供給し、通信線146を介してセンサ133に対して制御及びデータの授受を行う。また、ECU104は、アクチュエータ134に電源線147を介して電源を供給し、通信線148を介してアクチュエータ134に対して制御及びデータの授受を行う。
【0019】
ECU105は、センサ135に電源線149を介して電源を供給し、通信線150を介してセンサ135に対して制御及びデータの授受を行う。また、ECU105は、アクチュエータ136に電源線151を介して電源を供給し、通信線152を介してアクチュエータ136に対して制御及びデータの授受を行う。
【0020】
ECU106は、センサ137に電源線153を介して電源を供給し、通信線154を介してセンサ137に対して制御及びデータの授受を行う。また、ECU106は、アクチュエータ138に電源線155を介して電源を供給し、通信線156を介してアクチュエータ138に対して制御及びデータの授受を行う。
【0021】
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態に係る電源供給システムの構成について図2を参照して説明する。本発明は、例えば、ゾーンアーキテクチャに用いられるECUについて電源重畳技術を用いて通信線により電源冗長化することにより、電源ハーネスを増やすことなく電源冗長化することを可能とする。通信線は全てのECU間を接続するため、各電源は一部のECUを管轄して電源ハーネスを接続し、故障時にECUと直接電源ハーネスで接続していない電源からの電力供給は通信線を用いて行う。各電源が故障した時は通信線からの電力供給に切り替えるが、故障する電源によりどちらから電源供給するか変化するため、双方向に電力供給可能な電源切替器を用い、通信線による電源冗長を行う。
【0022】
[電源供給システムの構成]
図2は、第1の実施形態に係る電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。図2に示す電源供給システム200は、電源重畳技術を用いて通信線により電源冗長を行い、電源ハーネスを削減した例である。本実施形態では、電源供給システム200にリング型のネットワークアーキテクチャを用いている。電源供給システム200では、図1の電源供給システム100から、ECU203とECU204間に相当する電源ハーネス109,113、及び、ECU105とECU106間に相当する電源ハーネス110,114を削減している。その代わりに、ECU203とECU204間を結ぶ通信線216と、ECU205とECU206間を結ぶ通信線217において、電力と通信を伝送する電源重畳を行い、電源冗長化を実現する。
【0023】
電源供給システム200は、電源201、電源202、ECU203、ECU204、ECU205、ECU206、電源ハーネス207~208、電源ハーネス211~212、実線で示した通信線215~218、及び、破線で示した通信線219~222で構成される。実線で示した通信線215~218は電源重畳用の通信線である。また、破線で示した通信線219~222は通信用の通信線である。ただし、通信線219~222に、通信線215~218と同じ電源重畳用の通信線を用いてもよい。
【0024】
電源201は、電源ハーネス207を介してECU203に、電源ハーネス208を介してECU205に電力を供給する。また、電源202は、電源ハーネス211を介してECU204に、電源ハーネス212を介してECU206に電力を供給する。
【0025】
ECU203とECU204は、通信線216を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU204から通信線216を介してECU203に供給される。逆に、電源202が故障した際には、電源201の電力がECU203から通信線216を介してECU204に供給される。
【0026】
また、ECU205とECU206間での電力伝送も同様であり、ECU205とECU206は、通信線217を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU206から通信線217を介してECU205に供給される。逆に、電源202が故障した際には、電源201の電力がECU205から通信線217を介してECU206に供給される。
【0027】
ECU203は、通信線216と通信線220を介してECU204と冗長化された通信を行い、通信線215と通信線219を介してECU205と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU203は、センサ231に対し電源線241を介して電源供給を行うとともに、通信線242を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU203は、アクチュエータ232に対し電源線243を介して電源供給を行うとともに、通信線244を介して制御及びデータの授受を行う。
【0028】
ECU204は、通信線216と通信線220を介してECU203と冗長化された通信を行い、通信線218と通信線222を介してECU206と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU204は、センサ233に対し電源線245を介して電源供給を行うとともに、通信線246を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU204は、アクチュエータ234に対し電源線247を介して電源供給を行うとともに、通信線248を介して制御及びデータの授受を行う。
【0029】
ECU205は、通信線215及び通信線219を介してECU203と冗長化された通信を行い、通信線217及び通信線221を介してECU206と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU205は、センサ235に対し電源線249を介して電源供給を行うとともに、通信線250を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU205は、アクチュエータ236に対し電源線251を介して電源供給を行うとともに、通信線252を介して制御及びデータの授受を行う。
【0030】
ECU206は、通信線218と通信線222を介してECU204と冗長化された通信を行い、通信線217と通信線221を介してECU205と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU206は、センサ237に対し電源線253を介して電源供給を行うとともに、通信線254を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU206は、アクチュエータ238に対し電源線255を介して電源供給を行うとともに、通信線256を介して制御及びデータの授受を行う。
【0031】
ここでは、センサ及びアクチュエータが各ECU203~206に一つずつ接続されている例を示したが、センサ及びアクチュエータの個数は1個に限らない。センサ及びアクチュエータの個数が増減しても、電源供給システム200の電源冗長化の構成は同様である。
【0032】
[電子制御装置の構成]
次に、電源供給システム200が備える電子制御装置(ECU)の構成について図3を参照して説明する。
【0033】
図3は、電源供給システム200が備える電子制御装置(ECU203)の構成例を示すブロック図である。ECU204、ECU205、及びECU206についても、ECU203と同様の構成である。ECU203は、制御や情報処理を行うECUコア部301と、電源切替器302と、送受信機303と、電源重畳フィルタ304とで構成される。
【0034】
電源重畳フィルタ304は、通信線216を介してECU204と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ304は、電源線305を介して電源切替器302と接続し、通信線308を介して送受信機303と接続している。電源重畳フィルタ304において、通信線216と電源線305の間は、DC(Direct Current)電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線216と通信線308の間は、高周波の通信信号のみ通過する。電源重畳フィルタ304は、例えば、PoDL(Power over DataLines)を用いて構成され、通信信号と電力の分離及び重畳を行う。PoDLでは、1対のねじれケーブルを用いて、信号(差動)にDC(Direct Current)電力を重畳させて伝送する。
【0035】
電源切替器302は、電源ハーネス207を介して供給される電源201の電力と、電源線305を介して供給される電源202の電力とが入力される。そして、電源切替器302は内部で、電源ハーネス207を通った電圧と、電源線305を通った電圧とをモニタして、どちらの電圧を出力につなぐかを判断して切り替える。それにより、電源切替器302は、電源線307を介してECUコア部301に、電源線306を介して送受信機303に、電源線241を介してセンサ231に、電源線243を介してアクチュエータ232にそれぞれ電力を供給する。
【0036】
電源201が正常の場合、電源切替器302は、電源ハーネス207からの電力を、ECUコア部301、送受信機303、センサ231、及びアクチュエータ232に供給する。一方、電源201が故障し電源202が正常の場合は、電源切替器302は、電源線305を通って伝送されてきた電力を、ECUコア部301、送受信機303、センサ231、及びアクチュエータ232に供給する。また、電源切替器302は、電源201が故障していることを表す情報(電源故障情報)を得られるため、電源故障情報を通信線309を介してECUコア部301に送って、他のECUと電源故障情報を共有することもできる。
【0037】
このように、第一の制御回路(ECUコア部301)への第一の電源(電源201)の第一の電圧の電源供給が遮断されたとき、第一の制御回路は、外部装置(例えば、他のECU)へ第一の電源が異常であることを通知する。これにより、例えば、車載の他のECUは、第一の電源が異常であることを受けて、運転継続制御など適切な制御を行うことができる。
【0038】
送受信機303は、通信線308及び電源重畳フィルタ304を経由した通信線216と、通信線220とを介して、ECU204と通信を行う。また、送受信機303は、通信線215と通信線219とを介して、ECU205と通信を行う。そして、送受信機303は、通信線310を介して、他のECUに対する送信信号及び受信信号をECUコア部301とやり取りする。
【0039】
ECUコア部301は、通信線310を通じて送受信機303を制御し、送受信機303を介して、ECU204、ECU205、及びECU206(図2)とデータを授受する。ECU203とECU206とは、ルーティングにより相互に送信元及び送信先に指定することで、他のECU204又はECU204を介して通信が可能である。また、ECUコア部301は、センサ231及びアクチュエータ232に対して制御及びデータの授受を行い、データの処理を行う。
【0040】
例えば、ECUコア部301は、図示しないプロセッサに加えて、メモリ(ROM、RAM)や不揮発性ストレージを有していてもよい。例えば、ECUコア部301のプロセッサに、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等のプロセッサを用いることができる。プロセッサが、ROM又は不揮発性ストレージに格納されたコンピュータープログラムを実行することにより、本発明の実施形態におけるECUコア部の機能が実現される。
【0041】
[電源切替器の構成]
次に、本実施形態に係る電子制御装置(ECU)が備える電源切替器の構成について図4を参照して説明する。
【0042】
図4は、ECU203が備える電源切替器302の構成例を示すブロック図である。電源切替器302は、自電源スイッチ401、他負荷スイッチ402、他電源スイッチ403、及び電源回路404を備える。自電源スイッチ401、他負荷スイッチ402、及び他電源スイッチ403に接続する矢印のない実線は電力の電源用途を表し、矢印付きの実線は電力の制御用途を表している。
【0043】
自電源スイッチ401は、電源ハーネス207の電圧をモニタし、その電圧が予め設定された閾値電圧以上であれば内部スイッチをONし、電源ハーネス207と電源線405とを導通させ、電源線405を通じて電源回路404に電力を供給する回路である。電源ハーネス207の電圧が閾値電圧を下回れば、自電源スイッチ401は、内部スイッチをOFFし、電源ハーネス207と電源線405間を遮断する。また、自電源スイッチ401は、電源ハーネス207からの電圧と閾値電圧との比較結果に基づく信号を、通信線309を介してECUコア部301へ出力する。この信号は、図3で説明した電源故障情報に相当する。
【0044】
他負荷スイッチ402は、電源ハーネス207及び電源線305の電圧をモニタし、両電圧が予め設定された閾値電圧以上であれば内部スイッチをONし、電源ハーネス207と電源線305間を導通させる回路である。電源ハーネス207の電圧と電源線305の電圧のいずれかが閾値電圧を下回ったときは、他負荷スイッチ402は、内部スイッチをOFFし、電源ハーネス207と電源線305間を遮断する。
【0045】
他電源スイッチ403は、電源ハーネス207の電圧をモニタし、その電圧が予め設定された閾値電圧以上であるときは内部スイッチをOFFし、電源線305と電源線405間を遮断し、電源回路404への電力供給を行わない回路である。電源ハーネス207の電圧が閾値電圧を下回ったときは、他電源スイッチ403は、電源線305と電源線405間を導通させ、電源線405を通じて電源回路404へ電力供給を行う。
【0046】
電源回路404は、電源線405から伝送された電力の電圧を供給先に応じて変換し、電源線306、電源線307、電源線241、及び電源線243のそれぞれを介して電力を供給する。
【0047】
[各スイッチの第1の例]
ここで、本実施形態における電源切替器302を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第1の例について図5を参照して説明する。
【0048】
図5は、電源切替器302を構成する自電源スイッチ401、他負荷スイッチ402、及び他電源スイッチ403の第1の例を示す回路図である。自電源スイッチ401は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)501、コンパレータ502、及び閾値電圧源503で構成される。
【0049】
MOSFET501は、P型MOSFETの例を示しており、高電圧型ではダイオードがドレイン-ソース間に接続される。以降の各スイッチで用いられるMOSFETも同様とする。
【0050】
コンパレータ502は、電源ハーネス207からの電圧を閾値電圧源503の閾値電圧と比較し、電源ハーネス207からの電圧が閾値電圧以上であれば出力をLowレベルとして、MOSFET501をONし、電源ハーネス207と電源線405とを導通させる。一方、コンパレータ502は、電源ハーネス207からの電圧が閾値電圧よりも低ければ出力をHighレベルとして、MOSFET501をOFFし、電源ハーネス207と電源線405間を遮断する。コンパレータ502の出力は、通信線309を介してECUコア部301へ伝送される。
【0051】
他負荷スイッチ402は、MOSFET504、OR回路505、コンパレータ506、閾値電圧源507、コンパレータ508、及び閾値電圧源509で構成される。コンパレータ506は、電源ハーネス207からの電源201の電圧を閾値電圧源507の閾値電圧と比較し、電源ハーネス207からの電圧が閾値電圧以上であれば出力をLowレベルとし、逆に、電源ハーネス207からの電圧が閾値電圧よりも低ければ出力をHighレベルとする。
【0052】
コンパレータ508は、電源線305からの電源202の電圧を閾値電圧源509の閾値電圧と比較し、電源線305からの電圧が閾値電圧以上であれば出力をLowレベルとし、逆に電源線305からの電圧が閾値電圧よりも低ければ出力をHighレベルとする。
【0053】
OR回路505は、コンパレータ506の出力電圧とコンパレータ508の出力電圧のいずれかがHighレベルであれば自身の出力をHighレベルとし、いずれの出力電圧もLowレベルであれば自身の出力をLowレベルとする論理和回路である。
【0054】
MOSFET504は、OR回路505の出力がLowレベルであればONし、電源ハーネス207と電源線305とを導通させる。一方、MOSFET504は、OR回路505の出力がHighレベルであればOFFし、電源ハーネス207と電源線305間を遮断する。
【0055】
他電源スイッチ403は、MOSFET510のみで構成される。もちろん自電源スイッチ401と同様に、他電源スイッチ403にコンパレータを用いてもよい。電源ハーネス207の電圧が、電源線405の電圧に対しMOSFET510をスイッチングさせるのに必要な電圧分よりも低い(ソース-ゲート電圧が閾値電圧よりも小さい)ときのみ、MOSFET510はONし、電源線405と電源線305間が導通する。
【0056】
初期状態では、電源線405の電圧は低い状態でスタートするため、MOSFET501とMOSFET510はOFFとなる。例えば、初期状態は、電源立ち上げ時、ECU203の起動時、自動車の起動時などである。ここで、MOSFET501ではドレイン-ソース間にダイオードが接続されているため、電源ハーネス207の電圧がダイオードの閾値電圧より高くなれば電源線405と電源ハーネス207とが導通し、電源線405の電圧の値が上がるため、MOSFET501もONする。また、電源線305の電圧が低い状態でスタートした場合も同様で、MOSFET504は最初OFFとなるが、MOSFET504のドレイン-ソース間に接続するダイオードを介して電源ハーネス207と電源線305間が導通し、電源線305の電圧の値が上昇し、MOSFET504もONする。
【0057】
上記構成の電源切替器によれば、電源故障時に電源ハーネスを通った電源と、通信線を通った電源とを、高速かつ低損失に切り替えることができる。
【0058】
[各スイッチの第2の例]
次に、本実施形態における電源切替器302を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第2の例について図6を参照して説明する。
【0059】
図6は、電源切替器302を構成する自電源スイッチ401A、他負荷スイッチ402A、及び他電源スイッチ403の第2の例を示す回路図である。図6に示す電源切替器302の構成が、図5に示した第1の例の電源切替器302と異なるところは、閾値電圧源の代わりにレベルシフタ(図中「LV」と表記)を使用した点であり、その動作は第1の例とほぼ同じである。
【0060】
自電源スイッチ401Aは、MOSFET501、コンパレータ502、及びレベルシフタ601で構成されている。レベルシフタ601は、電源ハーネス207からの電圧を予め設定された電圧分シフトさせてコンパレータ502に出力する。コンパレータ502は、レベルシフタ601の出力電圧が正であればLowレベル、負であればHighレベルを出力して、MOSFET501のON/OFFを制御する。その際、コンパレータ502の出力は、通信線309を介してECUコア部301に伝送する。
【0061】
他負荷スイッチ402Aは、MOSFET504、OR回路505、コンパレータ506、レベルシフタ602、コンパレータ508、及びレベルシフタ603で構成されている。レベルシフタ602は、電源ハーネス207からの電圧を予め設定された電圧分シフトさせてコンパレータ506に出力する。コンパレータ506は、レベルシフタ602の出力電圧が正であればLowレベル、負であればHighレベルを出力する。レベルシフタ603は、電源線305からの電圧を予め設定された電圧分シフトさせてコンパレータ508に出力する。コンパレータ508は、レベルシフタ603の出力電圧が正であればLowレベル、負であればHighレベルを出力する。
【0062】
OR回路505は、コンパレータ506及びコンパレータ508の出力電圧のいずれかがHighレベルであれば出力をHighレベルとし、いずれの出力電圧もLowレベルであれば出力をLowレベルとして、MOSFET504のON/OFFを制御する。
【0063】
[各スイッチの第3の例]
次に、本実施形態における電源切替器302を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第3の例について図7を参照して説明する。
【0064】
図7は、電源切替器302を構成する自電源スイッチ401B、他負荷スイッチ402B、及び他電源スイッチ403Bの第3の例を示す回路図である。図7に示す電源切替器302の構成が、図5に示した第1の例の電源切替器302と異なるところは、電源線405と電源線305とそれらの接続先が地絡によって電流リークを起こさない対策が各スイッチに施されている点である。
【0065】
自電源スイッチ401Bに、ドレイン-ソースの向きをMOSFET501と逆にしたP型のMOSFET701を追加する。図7の例では、MOSFET501のドレインとMOSFET701のドレインが接続し、MOSFET701のゲートがコンパレータ502の出力端子と接続している。
【0066】
また、他負荷スイッチ402Bに、ドレイン-ソースの向きをMOSFET504と逆にしたMOSFET702を追加する。図7の例では、MOSFET504のドレインとMOSFET702のドレインが接続し、MOSFET702のゲートがOR回路505の出力端子と接続している。そして、自電源スイッチ401BのMOSFET701のソースと、他負荷スイッチ402BのMOSFET702のソースが接続している。また、MOSFET701及びMOSFET702の各ソースは、電源ハーネス207に接続している。
【0067】
さらに、他電源スイッチ403Bに、ドレイン-ソースの向きをMOSFET510と逆にしたMOSFET703を追加する。図7の例では、MOSFET510のドレインとMOSFET703のドレインが接続し、MOSFET703のソースが電源線305に接続し、MOSFET703のゲートが電源ハーネス207に接続している。
【0068】
MOSFET701、MOSFET702、及びMOSFET703はともに、元々あるMOSFET501、MOSFET504、及びMOSFET510とダイオードの向きが逆になっている。これらのMOSFET701~703のダイオードにより電流リークの発生を防止することができる。
【0069】
このように、本実施形態に係る電源切替器(電源切替器302)において、第一のスイッチ回路(自電源スイッチ401B)は、第一の電圧(電源201の電圧)の電圧降下が閾値よりも小さいときに、第一の電源(電源201)と第一の制御回路(ECUコア部301)の間を通電する第一のスイッチング素子(MOSFET501)と、第一の電源と第一の制御回路の間に、第一のスイッチング素子と直列に且つ極性を反対に接続したスイッチング素子(MOSFET701)とを備える。また、第二のスイッチ回路(他負荷スイッチ402B)は、第一の電圧及び第二の電圧(電源202の電圧)ともに電圧降下が閾値よりも小さいときに、第一の電源と通信線(通信線216(電源線305))の間を通電する第二のスイッチング素子(MOSFET504)と、第一の電源と通信線の間に、第二のスイッチング素子と直列に且つ極性を反対に接続したスイッチング素子(MOSFET702)とを備える。また、電源スイッチ回路(他電源スイッチ403B)は、第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さいときに、第一の制御回路と通信線(通信線216(電源線305))の間を通電する第三のスイッチング素子(MOSFET510)と、第一の制御回路と通信線の間に、第三のスイッチング素子と直列に且つ極性を反対に接続したスイッチング素子(MOSFET703)とを備える。
【0070】
[各スイッチの第4の例]
次に、本実施形態における電源切替器302を構成する自電源スイッチ、他負荷スイッチ、及び他電源スイッチの第4の例について図8を参照して説明する。
【0071】
図8は、電源切替器302を構成する自電源スイッチ401C、他負荷スイッチ402C、及び他電源スイッチ403Bの第4の例を示す回路図である。図8に示す電源切替器302の構成が、図6に示した第2の例の電源切替器302と異なるところは、電源線405と電源線305とそれらの接続先が地絡によって電流リークを起こさない対策が各スイッチに施されている点である。すなわち、電源切替器302の第4の例は、第3の例と同趣旨の対策が行われている。
【0072】
自電源スイッチ401Cにおいて、MOSFET501のドレインと電源ハーネス207との間にドレイン-ソースの向きをMOSFET501と逆にしたMOSFET701を追加し、MOSFET701のゲートをコンパレータ502の出力端子と接続している。
【0073】
他負荷スイッチ402Cにおいて、MOSFET504のドレインと電源ハーネス207との間にドレイン-ソースの向きをMOSFET504と逆にしたMOSFET702を追加し、MOSFET702のゲートをOR回路505の出力端子と接続している。
【0074】
図7に示した電源切替器302の第3の例と同様に、MOSFET701、MOSFET702、及びMOSFET703はともに、元々あるMOSFET501、MOSFET504、及びMOSFET510とダイオードの向きが逆になっている。これらのMOSFET701~703のダイオードにより電流リークの発生を防止することができる。
【0075】
なお、上述した各スイッチのMOSFETにN型MOSFETを用いて、電源切替器302の各スイッチの回路を構成してもよい。また、MOSFETに代えて、他のスイッチング素子を用いてもよい。以下、本明細書において、自電源スイッチ401~401Cを区別しない又は総称する場合には、単に「自電源スイッチ401」と記載することがある。同様に、他負荷スイッチ402~402Cを「他負荷スイッチ402」、他電源スイッチ403,403Bを「他電源スイッチ403」と記載することがある。
【0076】
以上のとおり、第1の実施形態に係る電源供給システム(電源供給システム200(ECU203))では、第一の制御回路(ECUコア部301)と、その第一の制御回路に電源電圧として供給される第一の電圧を出力する第一の電源(電源201)と、その第一の電源(電源ハーネス207)と第一の制御回路に接続され、第一の制御回路への第一の電圧の電源供給を遮断する第一のスイッチ回路(自電源スイッチ401~401C)と、第一の電源と第二の制御回路との通信に使用される通信線(例えば、通信線216)とに接続され、通信線への第一の電圧の供給を遮断する第二のスイッチ回路(他負荷スイッチ402~402C)と、第二の制御回路に電源電圧として供給される第二の電圧を出力する第二の電源(電源202)と、第一の制御回路と通信線に接続され、第一のスイッチ回路により第一の制御回路への第一の電圧の供給が遮断されたときに、第二の電圧を通信線を介して第一の制御回路に供給する電源スイッチ回路(他電源スイッチ403,403B)と、を備える。ここで、第一の電圧の第二の制御回路への電源供給、及び第二の電圧の第一の制御回路への電源供給は、通信線を用いた双方向の電力伝送である。
上記第一のスイッチ回路は、第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、第一の制御回路への第一の電圧の供給を遮断し、上記第二のスイッチ回路は、第一の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、通信線への第一の電圧の供給を遮断し、上記電源スイッチ回路は、第一の制御回路への電源電圧の供給元を第一の電源から第二の電源へ切り替える。
【0077】
上記構成の本実施形態によれば、電源冗長化技術を利用して双方向の電力伝送により、電源供給元を第一の電源から第二の電源へ切り替えられるので、従来のように電源ハーネスを増やすことなく、電源冗長化を実現することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る電源供給システム(電源供給システム200(ECU203))では、第一のスイッチ回路(自電源スイッチ401~401C)は、第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さい合に、第一の制御回路へ第一の電圧を供給し、第二のスイッチ回路(他負荷スイッチ402~402C)は、第一の電圧の電圧降下が閾値よりも小さく、かつ第二の電圧の電圧降下が閾値以上だった場合に、通信線へ第一の電圧を供給し、電源スイッチ回路(他電源スイッチ403,403B)は、第一の制御回路と通信線を遮断する。
【0079】
上記構成の本実施形態によれば、電源冗長化技術を利用して双方向の電力伝送により、第二の電源の第二の電圧に異常がある場合に、第一の電圧を第二の制御回路へ供給することができる。それゆえ、電源ハーネスを増やすことなく、電源冗長化を実現することができる。
【0080】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子制御装置(ECU)が備える電源切替器の構成について図9を参照して説明する。
【0081】
[電源切替器の構成]
図9は、ECU203が備える電源切替器302Aの構成例を示すブロック図である。図9に示す電源切替器302Aの構成が、図4に示した電源切替器302と異なるところは、自電源スイッチ401、他負荷スイッチ402、及び他電源スイッチ403の各々に設けられた判定制御回路(図5図8のコンパレータ、OR回路等)を、一つの制御器907にまとめた点である。
【0082】
電源切替器302Aは、自電源スイッチ901、他負荷スイッチ902、他電源スイッチ903、制御器907、及び電源回路404を備える。
【0083】
自電源スイッチ901、他負荷スイッチ902、及び他電源スイッチ903は全て、図5図8に示したような1個のMOSFET又は2個のMOSFETを用いて構成される。自電源スイッチ901、他負荷スイッチ902、及び他電源スイッチ903は、図4に示した自電源スイッチ401、他負荷スイッチ402、及び他電源スイッチ403と同様のスイッチング機能を有する。
【0084】
制御器907は、電源ハーネス207からの電圧と電源線305からの電圧が入力される。そして、制御器907は、電源ハーネス207の電圧及び電源線305の電圧に応じて、自電源スイッチ901を通信線309を介して制御し、他負荷スイッチ902を制御線905を介して制御し、他電源スイッチ903を制御線906を介して制御する。
【0085】
1個又2個のMOSFETで構成された自電源スイッチ901において、各MOSFETのゲートは、通信線309を介して、制御器907からの制御信号が入力される。また、1個又2個のMOSFETで構成された他負荷スイッチ902において、各MOSFETのゲートに、制御線905を介して、制御器907からの制御信号が入力される。また、1個又2個のMOSFETで構成された他電源スイッチ903において、各MOSFETのゲートに、制御線906を介して、制御器907からの制御信号が入力される。
【0086】
[制御器の第1の例]
ここで、本実施形態における電源切替器302Aを構成する制御器907の第1の例について図10を参照して説明する。
【0087】
図10は、電源切替器302Aを構成する制御器907の第1の例を示す回路図である。
制御器907は、コンパレータ1001、閾値電圧源1002、コンパレータ1003、閾値電圧源1004、OR回路1005、及びNOT回路1006で構成される。
【0088】
コンパレータ1001は、電源ハーネス207からの電圧を閾値電圧源1002の閾値電圧と比較し、電源ハーネス207からの電圧が閾値電圧以上であれば出力をLowレベルとし、逆に電源ハーネス207からの電圧が閾値電圧よりも低ければ出力をHighレベルとする。コンパレータ1001は、比較結果に応じた信号を通信線309に出力する。
【0089】
コンパレータ1003は、電源線305からの電圧を閾値電圧源1004の閾値電圧と比較し、電源線305からの電圧が閾値電圧以上であれば出力をLowレベルとし、逆に電源線305からの電圧が閾値電圧よりも低ければ出力をHighレベルとする。
【0090】
OR回路1005は、コンパレータ1001の出力電圧とコンパレータ1003の出力電圧のいずれかがHighレベルであれば出力をHighレベルとし、いずれの出力電圧もLowレベルであれば出力をLowレベルとする。OR回路1005は、論理演算結果に応じた信号を、他負荷スイッチ902に接続した制御線905に出力する。
【0091】
NOT回路1006は、コンパレータ1001の出力値を反転して、他電源スイッチ903に接続した制御線906に出力する。NOT回路1006は、コンパレータ1001の出力電圧がLowレベルのときはHighレベルを出力し、コンパレータ1001の出力電圧がHighレベルのときはLowレベルを出力する。
【0092】
[制御器の第2の例]
次に、本実施形態における電源切替器302Aを構成する制御器907Aの第2の例について図11を参照して説明する。
【0093】
図11は、電源切替器302Aを構成する制御器907Aの第2の例を示す回路図である。図11に示す制御器907Aの構成が、図10に示した第1の例の制御器907と異なるところは、閾値電圧源の代わりにレベルシフタ(図中「LV」と表記)を使用した点であり、動作は第1の例とほぼ同じである。
【0094】
制御器907Aは、コンパレータ1001、レベルシフタ1101、コンパレータ1003、レベルシフタ1102、OR回路1005、及びNOT回路1006で構成される。
【0095】
レベルシフタ1101は、電源ハーネス207からの電圧を予め設定された電圧分シフトさせてコンパレータ1001に出力する。コンパレータ1001は、レベルシフタ1101の出力電圧が正のときはLowレベルを出力し、負のときはHighレベルを出力する。
【0096】
レベルシフタ1102は、電源線305からの電圧を予め設定された電圧分シフトさせてコンパレータ1003に出力する。コンパレータ1003は、レベルシフタ1102の出力電圧が正のときはLowレベルを出力し、負のときはHighレベルを出力する。
【0097】
OR回路1005は、コンパレータ1001及びコンパレータ1003の出力電圧のいずれかがHighレベルであればHighレベルで出力し、いずれの出力電圧もLowレベルであればLowレベルで出力する。NOT回路1006は、コンパレータ1001の出力値を反転させる。NOT回路1006は、Lowレベル入力のときはHighレベルで出力し、Highレベル入力のときはLowレベルで出力する。
【0098】
[制御器の第3の例]
次に、本実施形態における電源切替器302Aを構成する制御器907Bの第3の例について図12を参照して説明する。
【0099】
図12は、電源切替器302Aを構成する制御器907Bの第3の例を示す回路図である。制御器907Bは、ADC(アナログデジタルコンバータ)1201、ADC1202、及びマイクロプロセッサ(図中「MCU」と表記)1203で構成される。マイクロプロセッサ1203には、例えば、MCU(Micro Controller Unit)を用いることができる。一般的に、MCUは、プロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ、I/Oなどを備える。本実施形態における制御器907Bは、電源ハーネス207及び電源線305からの電圧(アナログ信号)をデジタルデータ化できるため、制御内容をプログラミングにより修正可能となる。
【0100】
ADC1201は、電源ハーネス207からの電圧の値をデジタル値に変換し、当該デジタル値をマイクロプロセッサ1203へ出力する。また、ADC1202は、電源線305からの電圧の値をデジタル値に変換し、当該デジタル値をマイクロプロセッサ1203へ出力する。
【0101】
マイクロプロセッサ1203は、ADC1201の出力とADC1202の出力が入力される。そして、マイクロプロセッサ1203は、ADC1201の出力コード(電圧のデジタル値)が設定されたコードよりも大きければ、通信線309への出力をLowレベルに設定し、他電源スイッチ903に接続した制御線906への出力をHighレベルに設定する。また、マイクロプロセッサ1203は、それ以外の条件では、通信線309への出力をHighレベルに設定し、制御線906への出力をLowレベルに設定する。また、マイクロプロセッサ1203は、ADC1201の出力コード及びADC1202の出力コードのいずれかがそれぞれの設定されたコードよりも大きければ、他負荷スイッチ902と接続した制御線905への出力をHighレベルとし、それ以外の条件では制御線905への出力をLowレベルとする。
【0102】
以上のとおり、第2の実施形態に係る電源供給システム(電源供給システム200)の電源切替器(電源切替器302A)では、第1の実施形態における3つのスイッチ回路に設けられた判定制御回路(図5図8のコンパレータ、OR回路等)が、一つの制御器(制御器907~907B)にまとめられている。そのため、本実施形態に係る電源供給システムでは、電源切替器を構成する各スイッチ回路の構成を簡素化できる。
【0103】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る電源供給システムの構成について図13を参照して説明する。
【0104】
[電源供給システムの構成]
図13は、第3の実施形態に係る電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。第1及び第2の実施形態に係る電源供給システム200(図2)は、4個のECU203~206を用いたリング型アーキテクチャであったが、本実施形態に係る電源供給システム1300は、4個のECU1303~1306を用いたスター型アーキテクチャである。ここでは、4個のECUを備えた例を示しているが、ECUの数が増えても基本的な接続の仕方は変わらない。このアーキテクチャでは、中心となるECU(ECU1303)と他のECU(ECU1304~1306)とが通信線で接続されている。スター型アーキテクチャは、通信線を減らすことができる点が利点である。
【0105】
電源供給システム1300は、電源201、電源202、ECU1303、ECU1304、ECU1305、ECU1306、電源ハーネス207~208、電源ハーネス211~212、実線で示した通信線1311~1313、及び、破線で示した通信線1314~1316で構成される。実線で示した通信線1311~1313は電源重畳用の通信線である。また、破線で示した通信線1314~1316は通信用の通信線である。ただし、通信線1314~1316に、通信線1311~1313と同じ電源重畳用の通信線を用いてもよい。
【0106】
電源201は、電源ハーネス207を介してECU1303に、電源ハーネス208を介してECU1305に電力を供給する。また、電源202は、電源ハーネス211を介してECU1304に、電源ハーネス212を介してECU1306に電力を供給する。
【0107】
ECU1303とECU1304は、通信線1311を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU1304から通信線1311を介してECU1303に供給される。逆に、電源202が故障した際には、電源201の電力がECU1303から通信線1311を介してECU1304に供給される。
【0108】
また、ECU1303とECU1306間での電力伝送も同様であり、ECU1303とECU1306は、通信線1313を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU1306から通信線1313を介してECU1303に供給される。逆に、電源202が故障した際には、電源201の電力がECU1303から通信線1313を介してECU1306に供給される。
ECU1303とECU1305間での電力伝送については、ECU1303とECU1305は、通信線1312を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU1303から通信線1312を介してECU1305に供給される。
【0109】
ECU1303は、通信線1311と通信線1314を介してECU1304と冗長化された通信を行い、通信線1312と通信線1315を介してECU1305と冗長化された通信を行い、通信線1313と通信線1316を介してECU1306と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1303は、センサ231に対し電源線241を介して電源供給を行うとともに、通信線242を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1303は、アクチュエータ232に対し電源線243を介して電源供給を行うとともに、通信線244を介して制御及びデータの授受を行う。
【0110】
ECU1304は、通信線1311と通信線1314を介してECU1303と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1304は、センサ233に対し電源線245を介して電源供給を行うとともに通信線246を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1304は、アクチュエータ234に対し電源線247を介して電源供給を行うとともに通信線248を介して制御及びデータの授受を行う。
【0111】
ECU1305は、通信線1312と通信線1315を介してECU1303と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1305は、センサ235に対し電源線249を介して電源供給を行うとともに通信線250を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1305は、アクチュエータ236に対し電源線251を介して電源供給を行うとともに通信線252を介して制御及びデータの授受を行う。
【0112】
ECU1306は、通信線1313と通信線1316を介してECU1303と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1306は、センサ237に対し電源線253を介して電源供給を行うとともに通信線254を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1306は、アクチュエータ238に対し電源線255を介して電源供給を行うとともに通信線256を介して制御及びデータの授受を行う。
【0113】
[電子制御装置の構成]
次に、電源供給システム1300が備える電子制御装置(ECU)の構成について図14を参照して説明する。
【0114】
図14は、電源供給システム1300が備える電子制御装置(ECU1303)の構成例を示すブロック図である。ECU1304、ECU1305、及びECU1306の構成は、通信線が減るだけでECU1303とほぼ同様である。なお、注目ECUと通信線で接続されている他のECUの台数に応じて、注目ECUの電源重畳フィルタの数を削減してもよい。例えば、ECU1304、ECU1305、及びECU1306の各々において、電源重畳フィルタを1個としてもよい。
【0115】
ECU1303は、ECUコア部1401、電源切替器1402、送受信機1403、電源重畳フィルタ1404、電源重畳フィルタ1405、及び電源重畳フィルタ1406で構成される。各々の処理ブロックの基本的な機能は、図3に示したECUコア部301、電源切替器302、送受信機303、及び電源重畳フィルタ304と同様である。
【0116】
電源重畳フィルタ1404は、通信線1311を介してECU1304と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1404は、電源線1411を介して電源切替器1402と接続し、通信線1421を介して送受信機1403と接続している。また、電源重畳フィルタ1404は、電源線1411を介して、電源重畳フィルタ1405と電源重畳フィルタ1406に接続している。電源重畳フィルタ1404において、通信線1311と電源線1411の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線1311と通信線1421の間は、高周波の通信信号のみ通過する。
【0117】
電源重畳フィルタ1405は、通信線1312を介してECU1305と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1405は、電源線1411を介して電源切替器1402と接続し、通信線1422を介して送受信機1403と接続している。また、電源重畳フィルタ1405は、電源線1411を介して、電源重畳フィルタ1404と電源重畳フィルタ1406に接続している。電源重畳フィルタ1405において、通信線1312と電源線1411の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線1312と通信線1422の間は、高周波の通信信号のみ通過する。
【0118】
電源重畳フィルタ1406は、通信線1313を介してECU1306と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1406は、電源線1411を介して電源切替器1402と接続し、通信線1423を介して送受信機1403と接続している。また、電源重畳フィルタ1406は、電源線1411を介して、電源重畳フィルタ1404と電源重畳フィルタ1405に接続している。電源重畳フィルタ1406において、通信線1313と電源線1411の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線1313と通信線1423の間は、高周波の通信信号のみ通過する。
【0119】
電源切替器1402は、電源ハーネス207を介して供給される電源201の電力と、電源線1411を介して供給される電源202の電力とが入力される。そして、電源切替器1402は内部で、電源ハーネス207を通った電圧と、電源線1411を通った電圧とをモニタして、どちらの電圧を出力につなぐかを判断して切り替える。それにより、電源切替器1402は、電源線1413を介してECUコア部1401に、電源線1412を介して送受信機1403に、電源線241を介してセンサ231に、電源線243を介してアクチュエータ232にそれぞれ電力を供給する。
【0120】
電源201が正常の場合、電源切替器1402は、電源ハーネス207からの電力を、ECUコア部1401、送受信機1403、センサ231、及びアクチュエータ232に供給する。一方、電源201が故障し電源202が正常の場合は、電源切替器1402は、電源線1411を通って伝送されてきた電力を、ECUコア部1401、送受信機1403、センサ231、及びアクチュエータ232に供給する。また、電源切替器1402は、電源201についての電源故障情報を得られるため、電源故障情報を通信線1424を介してECUコア部1401に送って、他のECUと電源故障情報を共有することもできる。
【0121】
送受信機1403は、通信線1421及び電源重畳フィルタ1404を経由した通信線1311と、通信線1314とを介して、ECU1304と通信を行う。また、送受信機1403は、通信線1422及び電源重畳フィルタ1405を経由した通信線1312と、通信線1315とを介して、ECU1305と通信を行う。また、送受信機1403は、通信線1423及び電源重畳フィルタ1406を経由した通信線1313と、通信線1316とを介して、ECU1306と通信を行う。そして、送受信機1403は、通信線1425を介して、他のECUに対する送信信号及び受信信号をECUコア部1401とやり取りする。
【0122】
ECUコア部1401は、通信線1425を通じて送受信機1403を制御し、送受信機1403を介して、ECU1304、ECU1305、及びECU1306(図13)とデータを授受する。また、ECUコア部1401は、センサ231及びアクチュエータ232に対して制御及びデータの授受を行い、データの処理を行う。
【0123】
以上のとおり、第3の実施形態に係る電源供給システム(電源供給システム1300)によれば、第1の実施形態と同様の作用効果に加えて、スター型ネットワークであることから第1の実施形態よりも通信線を減らすことができる。
【0124】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係る電源供給システムの構成について図15を参照して説明する。
【0125】
[電源供給システムの構成]
図15は、第4の実施形態に係る電源供給システムの電源冗長化の例を示すシステム構成図である。図15に示す電源供給システム1500は、第1の実施形態に係る電源供給システム200(図2)と同様にリング型のネットワークアーキテクチャを用い、第1の実施形態よりも電源ハーネスを削減して、電源の正常時にも電源重畳により対象のECUに電力供給を行う方式としている。
【0126】
電源201は、電源ハーネス207を介してECU1503に電力を供給する。また、電源202は、電源ハーネス211を介してECU1504に電力を供給する。すなわち、電源201とECU1505との間、及び、電源202とECU1506との間に電源ハーネスが存在しない。
【0127】
ECU1503とECU1504は、通信線216を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU1504から通信線216を介してECU1503に供給される。逆に、電源202が故障した際には、電源201の電力がECU1503から通信線216を介してECU1504に供給される。
【0128】
ECU1505の電源は、電源201の電力をECU1503経由で電源重畳により通信線215を通って供給される。同様に、ECU1506の電源は、電源202の電力をECU1504経由で電源重畳により通信線218を介して供給される。
【0129】
ECU1505とECU1506は、通信線217を介して電源重畳によりお互いに電力供給を可能としている。もし、電源201が故障した場合には、電源202の電力がECU1504とECU1506経由で、通信線217を介してECU1505に供給される。逆に、電源202が故障した際には、電源201の電力がECU1503とECU1505経由で、通信線217を介してECU1506に供給される。
【0130】
ECU1503は、通信線216と通信線220を介してECU1504と冗長化された通信を行い、通信線215と通信線219を介してECU1505と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1503は、センサ231に対し電源線241を介して電源供給を行うとともに、通信線242を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1503は、アクチュエータ232に対し電源線243を介して電源供給を行うとともに、通信線244を介して制御及びデータの授受を行う。
【0131】
ECU1504は、通信線216と通信線220を介してECU1503と冗長化された通信を行い、通信線218と通信線222を介してECU1506と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1504は、センサ233に対し電源線245を介して電源供給を行うとともに、通信線246を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1504は、アクチュエータ234に対し電源線247を介して電源供給を行うとともに、通信線248を介して制御及びデータの授受を行う。
【0132】
ECU1505は、通信線215と通信線219を介してECU1503と冗長化された通信を行い、通信線217と通信線221を介してECU1506と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1505は、センサ235に対し電源線249を介して電源供給を行うとともに、通信線250を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1505は、アクチュエータ236に対し電源線251を介して電源供給を行うとともに、通信線252を介して制御及びデータの授受を行う。
【0133】
ECU1506は、通信線218と通信線222を介してECU1504と冗長化された通信を行い、通信線217と通信線221を介してECU1505と冗長化された通信を行い、データを授受する。また、ECU1506は、センサ237に対し電源線253を介して電源供給を行うとともに、通信線254を介して制御及びデータの授受を行う。さらに、ECU1506は、アクチュエータ238に対し電源線255を介して電源供給を行うとともに、通信線256を介して制御及びデータの授受を行う。
【0134】
[電子制御装置の構成]
次に、電源供給システム1500が備える電子制御装置(ECU)の構成について図16を参照して説明する。
【0135】
図16は、電源供給システム1500が備える電子制御装置(ECU1503)の構成例を示すブロック図である。ECU1504も、ECU1503と同様の構成である。
【0136】
ECU1503は、ECUコア部1601、電源切替器1602、送受信機1603、電源重畳フィルタ1604、及び電源重畳フィルタ1605で構成される。各々の処理ブロックの基本的な機能は、図3に示したECUコア部301、電源切替器302、送受信機303、及び電源重畳フィルタ304と同様である。
【0137】
電源重畳フィルタ1604は、通信線216を介してECU1504と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1604は、電源線1611を介して電源切替器1602と接続し、通信線1621を介して送受信機1603と接続している。また、電源重畳フィルタ1604は、電源線1611を介して、電源重畳フィルタ1605と接続している。電源重畳フィルタ1604において、通信線216と電源線1611の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線216と通信線1621の間は、高周波の通信信号のみ通過する。
【0138】
電源重畳フィルタ1605は、通信線215を介してECU1505と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1605は、電源線1611を介して電源切替器1602と接続し、通信線1622を介して送受信機1603と接続している。また、電源重畳フィルタ1605は、電源線1611を介して、電源重畳フィルタ1604と接続している。電源重畳フィルタ1605において、通信線215と電源線1611の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線215と通信線1622の間は、高周波の通信信号のみ通過する。
【0139】
電源切替器1602は、電源ハーネス207を介して供給される電源201の電力と、電源線1611を介して供給される電源202の電力とが入力される。電源切替器1602は内部で、電源ハーネス207を通った電圧と、電源線1611を通った電圧とをモニタして、どちらの電圧を出力につなぐかを判断して切り替える。それにより、電源切替器1602は、電源線1613を介してECUコア部1601に、電源線1612を介して送受信機1603に、電源線241を介してセンサ231に、電源線243を介してアクチュエータ232にそれぞれ電力を供給する。
【0140】
電源201が正常の場合、電源切替器1602は、電源ハーネス207からの電力を、ECUコア部1601、送受信機1603、センサ231、及びアクチュエータ232に供給する。一方、電源201が故障し電源202が正常の場合は、電源切替器1602は、電源線1611を通って伝送されてきた電力を、ECUコア部1601、送受信機1603、センサ231、及びアクチュエータ232に供給する。また、電源切替器1602は、電源201についての電源故障情報を得られるため、電源故障情報を通信線1624を介してECUコア部1601に送って、他のECUと電源故障情報を共有することもできる。
【0141】
送受信機1603は、通信線1621及び電源重畳フィルタ1604を経由した通信線216と、通信線220とを介して、ECU1504と通信を行う。また、送受信機1603は、通信線1622及び電源重畳フィルタ1605を経由した通信線215と、通信線219とを介して、ECU1505と通信を行う。そして、送受信機1603は、通信線1625を介して、他のECUに対する送信信号及び受信信号をECUコア部1601とやり取りする。
【0142】
ECUコア部1601は、通信線1625を通じて送受信機1603を制御し、送受信機1603を介して、ECU1504、ECU1505、及びECU1506(図15)とデータを授受する。また、ECUコア部1601は、センサ231及びアクチュエータ232に対して制御及びデータの授受を行い、データの処理を行う。
【0143】
[他の電子制御装置の構成]
次に、電源供給システム1500が備える他の電子制御装置(ECU)の構成について図17を参照して説明する。
【0144】
図17は、電源供給システム1500が備える他の電子制御装置(ECU1505)の構成例を示すブロック図である。ECU1506も、ECU1505と同様の構成である。
【0145】
ECU1505は、ECUコア部1701、電源切替器1702、送受信機1703、電源重畳フィルタ1704、及び電源重畳フィルタ1705で構成される。各々の処理ブロックの基本的な機能は、図3に示したECUコア部301、電源切替器302、送受信機303、及び電源重畳フィルタ304と同様である。ECU1505は、電源ハーネスが接続されていない分だけECU1503と結線が少し異なる。
【0146】
電源重畳フィルタ1704は、通信線217を介してECU1506と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1704は、電源線1711を介して電源切替器1702と接続し、通信線1721を介して送受信機1703と接続している。電源重畳フィルタ1704において、通信線217と電源線1711の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線217と通信線1721の間は、高周波の通信信号のみ通過する。
【0147】
電源重畳フィルタ1705は、通信線215を介してECU1503と接続しており、通信信号又は電力が重畳された通信信号をやり取りする。また、電源重畳フィルタ1705は、電源線1712を介して電源切替器1702と接続し、通信線1722を介して送受信機1703と接続している。電源重畳フィルタ1705において、通信線215と電源線1712の間は、DC電力及びDC近辺の周波数を持つ電力のみ通過し、通信線215と通信線1722の間は高周波の通信信号のみ通過する。
【0148】
電源切替器1702は、電源線1712を介して供給される電源201の電力と、電源線1711を介して供給される電源202の電力とが入力される。電源切替器1702は内部で、電源線1712を通った電圧と、電源線1711を通った電圧とをモニタして、どちらの電圧を出力につなぐかを判断して切り替える。それにより、電源切替器1702は、電源線1714を介してECUコア部1701に、電源線1713を介して送受信機1703に、電源線249を介してセンサ235に、電源線251を介してアクチュエータ236にそれぞれ電力を供給する。
【0149】
電源201が正常の場合、電源切替器1702は、電源線1712からの電力を、ECUコア部1701、送受信機1703、センサ235、及びアクチュエータ236に供給する。一方、電源201が故障し電源202が正常の場合は、電源切替器1702は、電源線1711を通って伝送されてきた電力を、ECUコア部1701、送受信機1703、センサ235、及びアクチュエータ236に供給する。また、電源切替器1702は、電源201についての電源故障情報を得られるため、電源故障情報を通信線1724を介してECUコア部1701に送って、他のECUと電源故障情報を共有することもできる。
【0150】
送受信機1703は、通信線1721及び電源重畳フィルタ1604を経由した通信線217と、通信線221とを介して、ECU1506と通信を行う。また、送受信機1703は、通信線1722及び電源重畳フィルタ1705を経由した通信線215と、通信線219とを介して、ECU1503と通信を行う。そして、送受信機1703は、通信線1725を介して、他のECUに対する送信信号及び受信信号をECUコア部1701とやり取りする。
【0151】
ECUコア部1701は、通信線1725を通じて送受信機1703を制御し、送受信機1703を介して、ECU1503、ECU1504、及びECU1506(図16)とデータを授受する。また、ECUコア部1701は、センサ235及びアクチュエータ236に対して制御及びデータの授受を行い、データの処理を行う。
【0152】
なお、電源201及び電源202から電源供給を受けることが可能であって、複数のECUを統合的に制御する統合ECUを備えたアーキテクチャにも、本発明を適用することが可能である。
【0153】
さらに、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにその構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
【0154】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。
【0155】
また、上述した実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0156】
200…電源供給システム、 201,202…電源、 203~206…ECU、 207,208,211,212…電源ハーネス、 301…ECUコア部、 302…電源切替部、 303…送受信機、 304…電源重畳フィルタ、 401…自電源スイッチ、 402…他負荷スイッチ、 403…他電源スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17