(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166312
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】眼内レンズ材料及び部材
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61L27/16
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024156656
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2022166165の分割
【原出願日】2016-06-10
(31)【優先権主張番号】62/173,877
(32)【優先日】2015-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/321,704
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(72)【発明者】
【氏名】シャラド・ハジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴマー・アブデルサデク
(72)【発明者】
【氏名】ショーン・ハレンベック
(57)【要約】
【課題】眼内レンズ材料及び部材に関して、ポリマー材料中への流体の膨潤が最小化される、又は更には阻止されるようにポリマー及び/又は流体を適合させること、バルクポリマー材料の屈折率と可能な限り近い屈折率を有する流体を提供すること。
【解決手段】眼内レンズ用のポリマー材料、眼内レンズ用の流体、及び眼内レンズ用の接着剤を含む、眼内レンズの材料及び眼内レンズを製造する方法。眼内レンズは、流体連通している光学部及び周辺領域を含んでいてもよい。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズの支持部及び光学部の少なくとも一方を製造する方法であって、
複数のモノマーを、ヒドロキシル部分を含む追加のモノマーと化合させて、プレポリマーを作成することであって、前記複数のモノマーは、ブチルアクリラート、トリフルオロエチルメタクリラート、及びフェニルエチルアクリラートを含む、プレポリマーを作成することと、
前記ヒドロキシル部分を架橋可能なメタクリラートに転化させて、前記プレポリマーから架橋性ポリマーを作成することと、
前記眼内レンズの前記支持部及び前記光学部の少なくとも一方を形成するために、前記架橋性ポリマーを硬化させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーはヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーはヒドロキシエチルアクリラート(HEA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーはヒドロキシブチルアクリラート(HBA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーは、水に起因するヘイズ又はグリスニングを低減するために添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
硬化は、光開始剤の存在下でのUV硬化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
眼内レンズを製造する方法であって、
前記眼内レンズの第1の本体及び第2の本体を形成することと、
前記第1の本体と前記第2の本体の間に接着剤を塗布することであって、前記接着剤は、
55%から80%の間の量で前記接着剤中に存在する第1の主成分であって、前記第1の主成分は、
トリフルオロエチルメタクリラートと、
ブチルアクリラート及びn-ブチルメタクリラートの少なくとも1つと、
フェニルエチルアクリラート及びフェニルエチルメタクリラートの少なくとも1つと、を含む、第1の主成分、及び
反応性アクリル系モノマー希釈剤である第2の主成分、を含む、塗布することと、
前記接着剤を硬化させることによって前記第1の本体を前記第2の本体に接着することであって、前記接着剤は、硬化時に前記第1の本体及び前記第2の本体内に反応性アクリル系モノマー希釈剤の相互貫入網目構造を作成する、接着することと、
を含む、方法。
【請求項8】
接着剤を塗布することは、前記眼内レンズの後部要素の円形の隆起した周囲に沿って前記接着剤を塗布することをさらに含み、前記接着剤は、前記後部要素を前記眼内レンズの前部要素に接着するために使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の主成分は、まだ架橋されていない架橋性ポリマーであり、前記架橋性ポリマーは、嵩高いので前記第1の本体又は前記第2の本体のいずれにも移動できない、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記反応性アクリル系モノマー希釈剤は、1-アダマンチルメタクリラート(ADMA)である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の主成分は接着剤中に18%から43%の間の量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記接着剤はさらに光開始剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記光開始剤は、接着剤配合物の約2%の量で前記接着剤中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接着剤はUV光を使用して硬化される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書に参照により組み込まれる2015年6月10日出願の米国仮出願第62/173,877号の利益を主張する。本出願はまた、本明細書に参照により組み込まれる2016年4月12日出願の米国仮出願第62/321,704号の利益も主張する。
【0002】
本出願は以下の出願及び特許:2004年12月2日発行の米国特許第8,900,298号;2013年5月23日公開の米国特許公開番号第2013/0131794号;2012年4月17日発行の米国特許第8,158,712号に関し、それらの各々を本明細書に参照により組み込む。
文献の援用
【0003】
本明細書に記載されるすべての刊行物及び特許出願は、あたかも各々の個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個々に示されるのと同等に、本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
老眼は、眼が近くの物体に焦点を合わせる能力を失う状態である。これは加齢と共に自然と起こることの一部であり、多くの場合は40歳代半ばの人において目立つようになり、この状態は約65歳まで悪化し続けることがある。眼が近くの物体をはっきりと見るためには、近くの物体に対する焦点合わせを改善させるように、眼用レンズの屈折率を高くする必要がある、又はその形状をより凸状にする必要がある。
【0005】
白内障は、世界中の失明の主な原因であり、最もよく見られる眼疾患であるが、この視覚障害によって、1年で800万件を超える診察が行われている。白内障による障害が日常生活における個人の活動に影響を与えたりそれを変化させたりする場合、眼内レンズ(IOL)移植を伴う水晶体除去手術が、関連する視覚的な制限を治療する好ましい方法である。米国では、約250万件の白内障外科手術が毎年行われ、65歳を超えるアメリカ人にとって最も一般的な手術となっている。毎年、白内障手術患者の約97パーセントが眼内レンズ移植を受けるため、米国における白内障手術及び関連するケアの年間コストは40億ドルを超える。
【0006】
白内障は、局所的な濁りであれ又は拡散した全体的な透明度の低下であれ、患者の水晶体の濁りと定義される。しかし、臨床的意義を有するには、視力の大幅な低下又は機能性障害が、白内障によって引き起こされねばならない。白内障は、加齢の結果として、又は遺伝要因、外傷、炎症、代謝異常若しくは栄養異常、又は放射線に続発して生じる。加齢に関連した白内障疾患が最も一般的である。
【0007】
白内障の治療では、外科医は水晶体嚢から水晶体マトリックスを除去し、眼内レンズ(「IOL」)移植物でそれを置き換える。典型的なIOLは、患者がかなり良好な遠見視力を有することを可能にする選択された焦点距離を実現する。しかし、白内障手術後、患者は典型的には読書用メガネを必要とする。このことはいくつかの光学的界面によって促進される、ヒトの眼の結像特性によって説明される。
【0008】
加齢に関連した調節力の低下の他に、そのような低下は白内障の治療のためのIOLにも影響を与えてきた。調節型IOLを対象とする研究はある程度の成果をもたらしたが、今まで開発された方法及び装置の相対的な複雑さ及び限られた有効性がそのようなデバイスの幅広い商業化を妨げてきた。
【0009】
一部の眼内レンズは光学部を含み、その1つ又は複数の部材はポリマーである。ポリマーは、眼内レンズが眼内に移植できる送達形状に変形し、尚且つ眼内に移植した後に移植前の形状まで戻ることができるような特性を有することが望ましい場合がある。更に、ポリマー組成物が十分に高い屈折率を有することが望ましい場合もある。
【0010】
本明細書における一部の眼内レンズは、シリコーン流体等の流体をその内部に含む。例えば、一部の調節型IOLは、IOL内の流体移動、又はIOL内の流体圧力の変化を使用して、調節の際に屈折力変化を生じさせる。シリコーンオイル等の流体を眼内レンズ内で使用する場合、流体は時間と共に、眼内レンズのバルクポリマー材料中に膨潤する傾向がある。このことはIOL中の屈折力変化を推進するのに利用可能なシリコーンオイルの量を減少させることがある。したがってバルク材料中への膨潤の量を最小限にすることが望ましい。調節型IOLの応答時間を短くさせないシリコーンオイルを提供することも重要である。ポリマー材料中への流体の膨潤が最小化される、又は更には阻止されるようにポリマー及び/又は流体を適合させることが望ましいことになる。
【0011】
異なる種類の材料(例えば、硬化ポリマー及びシリコーンオイル)を含むIOLにおいて、異なる種類の材料を実質的に屈折率整合させる(すなわち同じ又は実質的に同じ屈折率を有する)ことが望まれる場合がある。したがって、バルクポリマー材料の屈折率と可能な限り近い屈折率を有する流体を提供することも有益である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,276,619号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様は、2%~20%の量で存在するブチルアクリラートと、10%~35%の量で存在するトリフルオロエチルメタクリラートと、50%~80%の量で存在するフェニルエチルアクリラートとを含むポリマー材料を含む、眼内レンズである。
【0014】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料の屈折率は1.48~1.53である。いくつかの実施形態において、ポリマー材料の屈折率は1.50~1.53である。
【0015】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は流体チャネルを画定し、眼内レンズは流体チャネル中にシリコーンオイルを更に含む。いくつかの実施形態において、シリコーンオイルはポリマー材料と屈折率整合されている。いくつかの実施形態において、シリコーンオイルの多分散性は1.2未満である。
【0016】
本開示の一態様は、3%~20%の量で存在するアルキルアクリラートと;10%~35%の量で存在するフルオロアクリラートと;50%~80%の量で存在するフェニルアクリラートとを含む、眼科デバイス用のポリマー材料である。
【0017】
本開示の一態様は、光を網膜上へ屈折させるように適合された、ポリマー材料を含む光学部と;光学部内に配置された、多分散指数が約1.2未満であるシリコーンオイルとを含む、調節型眼内レンズである。
【0018】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルの平均分子量は4500~6500である。
【0019】
いくつかの実施形態において、粘度は2400cP以下である。
【0020】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルはジフェニルシロキサン単位を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルは2つのジメチルシロキサン単位対1つのジフェニルシロキサン単位の比を含むシクロトリシロキサンからできている。
【0022】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルの屈折率は1.47~1.53、場合により1.50~1.53である。
【0023】
本開示の一態様は、調節型眼内レンズ用の接着剤であって、調節型眼内レンズの第1の物体のポリマー材料と同じである又は実質的に類似した特性を有する第1の成分を含む、接着剤である。
【0024】
いくつかの実施形態において、接着剤は、眼内レンズの第1の物体のポリマー材料と同じである第1の成分を含む。いくつかの実施形態において、接着剤は、ポリマー材料中に存在するモノマーを含む第1の成分を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、接着剤は、反応性アクリル系希釈剤である第2の主成分を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、接着剤は、調節型眼内レンズの第1の物体のポリマー材
料と同じではないが実質的に類似した第1の成分を含む。
【0027】
本開示の一態様は、調節型眼内レンズを製造する方法であって、調節型眼内レンズの第1及び第2の部材を硬化させる工程と;第1及び第2の部材の少なくとも1つと同じであるか、実質的に同じであるか、又は実質的に類似した特性を有する第1の成分を含み、反応性アクリル系希釈剤である第2の主成分を更に含む接着剤を、第1の部材と第2の部材との間に塗布する工程とを含む、方法である。
【0028】
本開示の一態様は、複数のモノマーを含む眼内レンズのポリマー成分を製造する方法であって、複数のモノマーを含む、ポリマーのプレポリマーを形成する工程と;プレポリマーを硬化してポリマー成分を形成する工程とを含む、方法である。
【0029】
いくつかの実施形態において、プレポリマーを形成する工程は、複数のモノマーとヒドロキシ部分を含むモノマーとを化合させる工程を含む。本方法は、プレポリマーから架橋性ポリマーを作る工程を更に含んでいてもよく、架橋性ポリマーを作る工程はヒドロキシル部分をメタクリラート部分へ変化させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】例示的な調節型眼内レンズを示す図である。
【
図1B】例示的な調節型眼内レンズを示す図である。
【
図1D】調節型眼内レンズの例示的な後部要素の上面図である。
【
図1E】調節型眼内レンズの例示的な光学部の断面組立図である。
【
図2A】例示的な力に応答する例示的な支持部の変形を示す図である。
【
図2B】例示的な力に応答する例示的な支持部の変形を示す図である。
【
図6】架橋ポリマーの形成及び例示的な接着剤の設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は一般に眼内レンズ、場合により調節型眼内レンズに関し、例示的な材料及び眼内レンズの所望の特性を与えるためのそれらの特性に関する。本明細書における眼内レンズは単に、本明細書における材料のいずれかを含んでいてもよい眼内レンズの例であり、本開示は決して本明細書における例示的な眼内レンズに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態において、眼内レンズは、天然レンズが除去された天然水晶体嚢の中に配置されるように適合されている調節型眼内レンズである。いくつかの実施形態において、周辺の非光学部(すなわち、網膜上に光の焦点を合わせるように特に適合されていない部分)は、毛様体筋の弛緩と収縮に起因する水晶体嚢の変形に応答するように適合させることができる。応答は、非光学部及び光学部の中に配置された流体が周辺部分と光学部との間で移動して眼内レンズの光学パラメーター(例えば屈折力)を変化させることを引き起こす、周辺部分の変形である。これらの実施形態は、本明細書における材料のいずれかを含む又は本明細書における任意の方法を使用して製造される、場合により調節型の、眼内レンズの単なる例である。
【0033】
図1Aは、光学部12と、この実施形態では光学部12に結合し光学部12から周辺に延びる第1及び第2の支持部14を含む周辺部分とを含む、単に例示的な調節型眼内レンズ10を示す上面図である。光学部12は、眼に入る光を網膜上へ屈折させるように適合されている。支持部14は、水晶体嚢に係合するように構成されており、毛様体筋に関連する水晶体嚢の変形に応答して変形するように適合されている。
図1Bは、光学部12及び光学部12に結合した支持部14を示す、眼内レンズ10の斜視図である。
【0034】
支持部は光学部と流体連通している。各支持部は、光学部の中の光学部チャンバーと流体連通している流体チャンバーを有する。支持部は、変形可能な材料で形成されており、水晶体嚢に係合し毛様体筋に関連する水晶体嚢の変形に応答して変形するように適合されている。支持部が変形すると支持部流体チャンバーの体積が変化し、支持部流体チャンバー及び光学部流体チャンバー中に配置された流体が支持部流体チャンバーから光学部流体チャンバー中へ移動するか、又は光学部流体チャンバーから支持部流体チャンバー中へ移動することを引き起こす。支持部流体チャンバーの体積が減少すると、流体は光学部流体チャンバー中へ移動する。支持部流体チャンバーの体積が増加すると、流体は光学部流体チャンバーから支持部流体チャンバー中へ移動する。光学部流体チャンバーに出入りする流体の流れは光学部の構成及び眼内レンズの屈折力を変化させる。
【0035】
図1Cは、
図1Aに示される断面A-Aによる側断面図である。光学部12は、変形可能な後部要素20に固定された変形可能な前部要素18を含む。各支持部14は、光学部12の光学部流体チャンバー24と流体連通している流体チャンバー22を含む。図の左側の支持部14と光学部12との間の結合のみを
図1Cの断面図に示す(ただし不明瞭である)。後部要素20に形成されている2つの開口部26によって光学部流体チャンバー24と流体連通している、図の左側の支持部流体チャンバー22を示す。
図1Cの右側の支持部14は、図示される開口部から実質的に180度のところでやはり後部要素に形成されている2つの更なる開口部(図示せず)によって、光学部チャンバー24と流体連通している。
【0036】
図1Dは、後部要素20の上面図である(前部要素18及び支持部14は図示せず)。後部要素20は、内部にチャネル32が形成されているバットレス部分29を含む。チャネル32は、光学部12と支持部14との間の流体連通を実現する。開口部26はチャネル32の一方の端に配置されている。したがって光学部流体チャンバー24は2つの流体チャネルによって1つの支持部と流体連通している。バットレス部分29は、以下に説明するように、支持部流体チャンバーの一方の端を画定する支持部14に形成された開口の中に配置されるような構成及びサイズである。バットレス部分29の各々はその内部に形成された2つのチャネルを含む。第1のバットレスの第1のチャネルは、第2のバットレスの第1のチャネルと一直線になっている。第1のバットレスの第2のチャネルは、第2のバットレスの第2のチャネルと一直線になっている。
【0037】
図1Eは、前部要素18及び後部要素20(明確にするために支持部は図示せず)を含む光学部12の断面A-Aの、側面から見た組立図である。流体チャネル32が後部要素20に含まれることにより、後部要素20はチャネル32を形成することができる十分な構造を有することが必要である。バットレス部分29は内部にチャネル32を形成することができる構造を実現する。その最外周部分において、後部要素20は前部から後部へ向かう方向で前部要素18よりも高い。代替的実施形態において、チャネルは後部要素20よりむしろ前部要素18で形成されてもよい。前部要素は、内部にチャネルを形成することができる構造を実現するように、バットレス部分29又は他の同様の構造を含むことになる。これらの代替的実施形態において、後部要素は前部要素18と同様に形成することができる。
【0038】
図1Eに示すように、後部要素20は周縁表面28で前部要素18に固定されており、周縁表面28は後部要素20の周縁付近にわたっており平坦な表面である。要素18及び要素20は、既知の生体適合性接着剤、又は本明細書の他の部分で説明される接着剤を使用して、及び既知の方法又は本明細書における第1及び第2の部材を接着させる方法のいずれかを使用して、互いに固定することができる。前部要素18及び後部要素20は、2つの要素を互いに固定する必要性を取り除くために1つの材料から形成することもできる。いくつかの実施形態において、前部要素18及び後部要素20が互いに固定される領域の直径は、約5.4mm~約6mmの直径である。
【0039】
支持部(又は別個の部材である場合は他のタイプの周辺部分で)は、本明細書における接着剤のいずれか又は本明細書に記載の第1及び第2の部材を互いに接着させる方法のいずれかを使用して、光学部に接着させることができる。
【0040】
図2A及び
図2Bは、眼内への調節型眼内レンズ(
図1A~
図1Eに示される)の配置を単に示しており、それが毛様体筋の動きにどのように応答し得るのかを示す。眼内レンズの少なくとも一部の変形、及びその内部の流体の応答性は、AIOL用に選択された材料によって影響を受け、
図2A及び
図2Bに示される。弾性の水晶体嚢「CB」は毛様小体「Z」につながっており、毛様小体「Z」は毛様体筋「CM」につながっている。
図2Aに示すように、毛様体筋が弛緩すると、毛様小体が伸びる。この伸びは、水晶体嚢と毛様小体との間の接続位置が全体として赤道様式であることによる径方向外向きの力「R」に起因して、水晶体嚢を略径方向外向きの方向へ引っ張る。毛様小体の伸びにより、水晶体嚢の全体的な伸びが生じ、水晶体嚢が薄くなる。天然の水晶体が水晶体嚢の中にまだ存在する場合は、天然の水晶体はより平坦になり(前部から後部への方向で)、半径方向に高くなり、これによって水晶体の屈折力が小さくなる。
図2Aに示すように、毛様体筋の弛緩は、遠見視力をもたらす。しかし、眼が近くの物体に焦点を合わせようと試みる場合に起きるように、毛様体筋が収縮すると、筋肉の径方向内側部分が径方向内向きに動き、毛様小体の緩みを生じさせる。これを
図2Bに示す。毛様小体の緩みによって、前部表面が調節していない形状よりも高い曲率を有する、全体的により曲線状の形状に向かって水晶体嚢が動き、このことは高い屈折力を実現させ眼が近くの物体に焦点を合わせることを可能にする。これは一般に「調節」と呼ばれ、レンズは「調節している」形状であると言われる。
【0041】
径方向外側部分42は、毛様小体につながっている水晶体嚢の部分に直接係合する、単に例示的な支持部の部分である。支持部の外側部分42は、毛様小体が弛緩し伸びた場合に略径方向に加えられる水晶体嚢の変形力「R」に応答するように適合されている。このことは支持部が毛様体筋に関連する力(すなわち、水晶体嚢の収縮及び弛緩)に応答して変形することを可能にし、その結果、毛様体筋の弛緩と収縮に応答して流体が支持部と光学部との間で流動することになる。これを
図2Bに示す。毛様体筋が収縮すると(
図2B)、弾性の水晶体嚢の周辺領域が変形し、支持部14の径方向外側部分42に対して径方向内向きの力「R」を加える。径方向外側部分42はこの水晶体嚢の変形に応答して変形するように適合している。変形は流体チャネル22の体積を減少させ、流体を支持部チャンバー22から光学部チャンバー24へ押し通す。これは光学部チャンバー42の中の流体圧力を増加させる。流体圧力の増加は可撓性の前部要素18及び可撓性の後部要素20の変形、曲率の増加を生じさせ、そのため眼内レンズの屈折力が高くなる。
【0042】
本明細書における調節型眼内レンズはまた、天然水晶体嚢の外側に配置されるように適合させてもよい。例えば、調節型眼内レンズは、天然レンズが除去された後又は天然レンズがまだ水晶体嚢の中にある間に、水晶体嚢の前、又は水晶体嚢の前部に配置されるように適合させてもよく、ここでレンズの周辺部分は水晶体嚢の変形に依存するよりもむしろ毛様体筋に直接応答するように適合している。
【0043】
図1A~
図1Eに記載される調節型眼内レンズ等の、本明細書に記載の眼内レンズは、ポリマーである1つ又は複数の部材を有していてもよい。例えば、
図1A~
図1Eの例において、前部及び後部の部材はポリマー材料であってもよい。周辺部分(例えば支持部)もポリマーであってもよい。
【0044】
ポリマー材料は流体の拡散に対する改善された耐性、比較的高い屈折率を有し、人体内に移植する間に変形された後に初期の形状をとるように適合されている。ポリマー材料は多様な用途で使用することができるが、ポリマーは眼内レンズ(「IOL」)等の眼科デバイスでのそれらの使用において本明細書に記載されている。ポリマーの1つの使用法は流体駆動型、調節型IOLにおけるものであるが、ポリマーは非調節型又は非流体駆動型IOLで使用できる。IOLに加えて、本発明のポリマー組成物は、他の眼科デバイス、例えば限定はされないが、コンタクトレンズ、人口角膜、水晶体嚢拡張リング、角膜インレー、角膜リング、又は他の眼科デバイス等においても使用できる。例示的な別の使用法は、内部の材料が漏れるのを防ぐための外側シェル様材料としてポリマーを使用できるような、豊胸手術の分野におけるものである。
【0045】
本明細書に記載のポリマー組成物は、2002年12月12日出願の米国特許出願第60/433,046号、2003年12月12日出願の米国特許出願第10/734,514号、2004年10月22日出願の米国特許出願第10/971,598号、2005年7月1日出願の米国特許出願第11/173,961号、2005年10月17日出願の米国特許出願第11/252,916号、2006年12月19日出願の米国特許出願第11/642,388号、及び2006年12月27日出願の米国特許出願第11/646,913号に記載の流体駆動型IOLのいずれか等の、IOLにおいて使用してもよく、その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかし組成物は、非流体駆動型IOL又は非調節型IOLにおいても使用してもよい。
【0046】
眼内に移植されたデバイスは眼内で流体にさらされるようになる。眼内の流体は、時間と共にデバイスを通って拡散しデバイスの物理特性に意図しない及び/又は望ましくない効果を与える可能性がある。例えば、眼内に移植されたポリマーIOLは、IOLのポリマー材料中に眼の流体が拡散するという問題を抱えることがある。そのような拡散を防ぐためのバリア層で眼科デバイスを被覆する試みがなされてきたが、これらの方法は高価で時間のかかるものである場合がある。更に、眼科デバイスが流体の入ったチャンバー又はチャネルをデバイス内に含む場合、その流体がその流体チャンバーから出てポリマー材料中に拡散し得るリスクがある。このことはIOLが利用できる流体の量を減少させるだけでなく、場合によってポリマー材料の物理特性を変化させる。したがって、本明細書に記載の本発明のバルクポリマーは、デバイスの中への又はデバイスからの流体の拡散に耐えるために眼科デバイスで使用してもよい。
【0047】
強膜の切り口を通して移植しなければならない埋め込み型デバイスについては、一般にデバイスを損傷せずに変形させることがやはりなお可能でありながら強膜の切り口が可能な限り小さいことが望ましい。デバイスは送達後にその初期の形状に変形することも可能でなければならない。したがって本明細書に記載の本発明のポリマーは、切り口を通して送達するために変形させる必要があるが眼内に移植させるとすぐにその初期の形状に戻ることになる、眼科デバイスにおいて使用できる。
【0048】
同様に、眼科デバイスの屈折率(「RI」)を増加させてその屈折力を高めることが望ましい場合がある。バルクポリマーのRIの増加はデバイスをより薄くすることを可能にし得るが、所望の屈折力を維持する。これは、移植する間の眼の切り口のサイズを小さくするために送達時の外形がより小さいデバイスを提供することもできる。
【0049】
本明細書に記載のポリマーの改善された特性としては、限定はされないが、弾性係数、屈折率、流体の拡散に対する耐性、組成物の応答性、機械的強度、剛性、濡れ性、及び光学的透明度が挙げられる。これらの特性は必ずしも相互排他的ではなく、リストは網羅的であることを意図していない。
【0050】
本開示のいくつかの実施形態は、眼科デバイス用のポリマー材料を含む。ポリマーは第1の成分、第2の成分、及び第3又は更なる成分を含む。好ましい実施形態において、組成物は、ブチルアクリラート、トリフルオロエチルメタクリラート、フェニルエチルアクリラート、及び架橋剤、例えばエチレングリコールジメタクリラート等を含む。これらのモノマーは限定的なものであることを意図しておらず、例として示される。
【0051】
上記のポリマーの所望の特性を得るために、特定のモノマー若しくは他の成分を選択して特定の特性を得ること、又は特定のモノマー及び他の成分を組み合わせて選択して特定の特性を得ることが考えられる。
【0052】
例えば、ゴム性材料であるブチルアクリラートは、一般にポリマー材料の応答性を高める。ブチルアクリラートの代替としては、アルキルアクリラート、及び適切な応答特性を有する他のモノマーが挙げられる。応答特性を示すことができるブチルアクリラートの代替としては、限定はされないが、オクチルアクリラート、ドデシルメタクリラート、n-ヘキシルアクリラート、n-オクチルメタクリラート、n-ブチルメタクリラート、n-ヘキシルメタクリラート、n-オクチルメタクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、2-エチルヘキシルメタクリラート、2,2-ジメチルプロピルアクリラート、2,2-ジメチルプロピルメタクリラート、トリメチルシクロヘキシルアクリラート、トリメチルシクロヘキシルメタクリラート、イソブチルアクリラート、イソブチルメタクリラート、イソペンチルアクリラート、イソペンチルメタクリラート、及びそれらの混合物が挙げられる。更に、ブチルアクリラートの代替としては、分岐鎖アルキルエステル、例えば2-エチルヘキシルアクリラート、2-エチルヘキシルメタクリラート、2,2-ジメチルプロピルアクリラート、2,2-ジメチルプロピルメタクリラート、トリメチルシクロヘキシルアクリラート、トリメチルシクロヘキシルメタクリラート、イソブチルアクリラート、イソブチルメタクリラート、イソペンチルアクリラート、イソペンチルメタクリラート、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、ブチルアクリラートは約10体積%~約80体積%の範囲で存在し、いくつかの実施形態において約20体積%~約70体積%の範囲で存在する。好ましい実施形態において、ブチルアクリラートは約35体積%~約65体積%の範囲で、更に好ましい実施形態では約45体積%~約65体積%の範囲で存在する。本明細書において列挙されるすべてのパーセンテージは、特に別段の記載がない限り「体積による」と考えられる。
【0054】
いくつかの実施形態において、ポリマーは約0.1~約0.6Mpaの範囲の弾性係数を有する。いくつかの実施形態において、弾性係数は約0.1~約0.3Mpaである。
【0055】
本明細書に記載の流体の拡散に対するポリマーの耐性を高めるために、トリフルオロエチルメタクリラート、又は適切な代替をポリマー材料へ加えてもよい。一般に、より多くのフッ素原子を有するモノマーを使用すると、流体の拡散に対するポリマーの耐性を高めることになる。
【0056】
トリフルオロエチルのエチル基は場合により5個までのフッ素原子を結合することができるが、多数のフッ素原子はポリマーの屈折率を低下させることがある。したがって、いくつかの実施形態において、トリフルオロエチルメタクリラートは拡散に対するポリマーの耐性とポリマーの屈折率との望ましいバランスを実現することになる。
【0057】
フルオロカーボンモノマーは流体の拡散に対するポリマーの耐性を高めることができ、一部はトリフルオロエチルメタクリラートの代替物として使用できる。トリフルオロエチルメタクリラートの代替としては、フルオロアクリラート、及び拡散特性に対する適切な耐性を有するポリマーを提供する他のモノマーが挙げられる。トリフルオロエチルメタクリラートの代替としては、限定はされないが、ヘプタデカフルオロデシルアクリラート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリラート、ヘキサフルオロブチルアクリラート、ヘキサフルオロブチルメタクリラート、テトラフルオロプロピルメタクリラート、オクタフルオロペンチルアクリラート、オクタフルオロペンチルメタクリラート、ドデカフルオロヘプチルメタクリラート、ヘプタフルオロブチルアクリラート、トリフルオロエチルアクリラート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリラート、ペンタフルオロフェニルアクリラート、及びペンタフルオロフェニルメタクリラートが挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、トリフルオロエチルメタクリラートは約5%~約70%の範囲で存在し、いくつかの実施形態においてこれは約10%~約50%の範囲で存在する。好ましい実施形態において、これは約15%~約30%の範囲で存在し、更に好ましい実施形態においてこれは約18%~約22%の範囲で存在する。
【0059】
フェニルエチルアクリラート、又は適切な代替は、ポリマーの屈折率を高めるためにポリマー組成物中に含まれてもよい。フェニル基は一般にポリマーの屈折率を高めることができる。フェニルエチルアクリラートの代替としては、フェニルアクリラート、及び適切に高い屈折率を有するポリマーを提供する他のモノマーが挙げられる。
【0060】
ポリマーの屈折率を高めるために使用できる他の基としては、限定はされないが、ベンジル(ベンゾイル)、カルバゾール-9-イル、トリブロモフェニル、クロロフェニル、及びペンタブロモフェニルが挙げられる。フェニルエチルアクリラートの代替として使用できる例示的なモノマーとしては、限定はされないが、トリブロモフェニルアクリラート、2-(9H-カルバゾール(Carazole)-9-イル)エチルメタクリラート、3-クロロスチレン、4-クロロフェニルアクリラート、ベンジルアクリラート、ベンジルメタクリラート、ベンジルメタクリルアミド、n-ビニル-2-ピロリドン、n-ビニルカルバゾール、ペンタブロモフェニルアクリラート、及びペンタブロモフェニルメタクリラート、フェニルエチルメタクリラート、2-フェニルプロピルアクリラート、又は2-フェニルプロピルメタクリラートが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、フェニルエチルアクリラートは約5%~約60%の範囲で存在するが、いくつかの実施形態において、これは約10%~約50%の範囲で存在する。好ましい実施形態において、これは約20%~約40%の範囲で存在し、更に好ましい実施形態において、これは約26%~約34%の範囲で存在する。
【0062】
いくつかの実施形態において、ポリマーの屈折率は約1.44~約1.52である。いくつかの実施形態において、屈折率は約1.47~約1.52である。いくつかの実施形態において、屈折率は約1.47~約1.5である。
【0063】
いくつかの実施形態において、組成物はエチレングリコールジメタクリラート等の架橋剤も含む。適切な架橋剤の例としては、限定はされないが、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ヘキサン-1,6-ジオール、及びチオ-ジエチレングリコールの、ジアクリラート及びジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、N,N'-ジヒドロキシエチレンビスアクリルアミド、ジアリルフタラート、トリアリルシアヌラート、ジビニルベンゼン;エチレングリコールジビニルエーテル、N,N'-メチレン-ビス-(メタ)アクリルアミド、スルホン化ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、エチレングリコールジアクリラート、1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,6ヘキサンジオールジアクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、三官能性アクリラート、三官能性メタクリラート、四官能性アクリラート、四官能性メタクリラート、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0064】
架橋剤は約10%未満、約5%未満、約2%未満、又は約1%未満の量で存在していてもよい。架橋剤によってポリマーが三次元空間内で織り交ざることが可能であり、非架橋組成物を上回る改善された弾性記憶、又は応答性を有する、コンパクトな分子構造を実現する。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリマー組成物は1つ又は複数の紫外線(UV)光吸収物質、例えばアクリラート又はメタクリラート官能化ベンゾトリアゾール又はベンゾフェノン等も、約5%未満の量で含む。いくつかの実施形態において、紫外線吸収物質は約0.05%~約2%の範囲で存在する。本発明での使用に適した紫外線吸収剤としては、限定はされないが、β-(4-ベンゾトリアゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリラート、4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2'-メタクリロイルオキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[3'-tert-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-(3''-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-[3'-tert-ブチル-5'-(3''-ジメチルビニルシリルプロポキシ)-2'-ヒドロキシフェニル]-5-m-エトキシベンゾトリアゾール、2-(3'-アリル-2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[3'-tert-ブチル-2'-ヒドロキシ-5-(3''-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、及び2-[3'-tert-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-(3''-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]-5-クロロ-ベンゾトリアゾールが挙げられる。当業者は、紫外線吸収剤の様々な他の化学物質を選択してもよいことを認識することになる。
【0066】
1つ又は複数の適切なフリーラジカル熱重合開始剤を、本明細書に記載のポリマー組成物に加えてもよい。そのような開始剤の例としては、限定はされないが、有機過酸化物、例えば過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、過酸化ステアロイル、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルペルオキシピバラート、ペルオキシジカルボナート等が挙げられる。そのような開始剤を全ポリマー混合物の約0.01%~約1%の範囲で加えてもよい。
【0067】
代替的なUV開始剤としては、この分野で知られているもの、例えば限定はされないが、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、Darocur(登録商標)1173、1164、2273、1116、2959、3331(EM Industries社)、並びにIrgacur(登録商標)651及び184(Ciba-Geigy社、Basel、スイス)等が挙げられる。
【0068】
本明細書に記載される本発明のポリマーの耐拡散性は、眼科デバイスの外表面上にバリア層を設けることによって更に高めてもよい。更に、デバイスがデバイス内に配置された流体チャンバー(流体駆動型調節型IOL内に配置された流体チャンバー等)を含む場合、デバイスは流体チャンバーからの拡散に対する耐性を高めるために流体チャンバーの内表面上にバリア層も有していてもよい。バリア層はフルオロカーボン材料又はポリマーの薄層であってもよく、その例としては、ヘキサフルオロエタン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロパン、オクタフルオロプロパン、ポリテトラフルオロエチレン、及び1H、1H、2H-ペルフルオロ-1-ドデセンが挙げられる。バリア層は、個々に又は様々な製造プロセスによって組合せで、眼科デバイスの固体表面上に付着又は共有結合していてもよい。1つの一般的な製造プロセスはプラズマ蒸着である。
【0069】
プラズマ蒸着によって形成される層は一般に非常に薄く、例えば約20~約100ナノメートルとなる。フルオロカーボンポリマーは一般に屈折率が低いので、厚さが可視光の波長の4分の1未満であるバリア層は肉眼で見えないことになる。
【0070】
上記のように、本明細書に記載される本発明のポリマーは、内部に、例えば流体チャンバー等の中に流体が配置されているIOLにおいて使用してもよい。一般に、流体の粘度は流体の拡散特性に関連する。低粘度の流体はより容易にポリマーを通って拡散することができる。
【0071】
眼科デバイスはシリコーンオイルを含有していてもよい。ポリマーを通って拡散するシリコーンオイルの量は、分子量分布が狭い、特に低分子量シリコーンオイル分子を除去したシリコーンオイルを選択することによって、低減することができる。一連のストリッピング法はシリコーンオイル中の低分子量成分を除去するのに一般的に使用される。一般に、低分子量成分は高分子量の成分よりも速く拡散することになる。しかし、高分子量成分は、流体をIOL全体に送り出すのにより大きい力を必要とする、粘度の増加に寄与する。したがって、分子量分布が狭いシリコーンオイルが好ましい。眼科デバイス内に配置された流体はシリコーンオイルに限定されず、例えば生理食塩水であってもよい。
【0072】
しかし、いくつかの実施形態において、IOLの表面の1つのたわみが調節の際の屈折力のいかなる変化にも大きく寄与するように、IOL部材は実質的に屈折率整合される。例えば、バルクポリマーはIOL内のいかなる流体にも実質的に屈折率整合されることになる。実質的に屈折率整合された状態は、その表現が本明細書において使用される場合、IOLの部材間の屈折率のわずかな差を含む。例えば、接着剤がIOLの製造において使用される場合、それらの接着剤は異なる屈折率を有していてもよいが、その差は調節型IOLの全体の屈折力の変化を考慮した場合に無視できるものとなる。
【0073】
いくつかの実施形態において、ポリマーのTGは約-20℃であり、長さの約4倍まで破断せずに伸びることが可能である。
【0074】
光学部及び支持部は同じポリマー組成物で構成されていてもよく、又は異なる組成物で構成されていてもよい。光学部及び支持部の組成は部材の各々でどの特性が望まれているかによって決めてもよい。例えば、支持部は一般に光の焦点合わせに寄与しないので、支持部で高屈折率を実現する必要がない場合があり、そのため支持部に使用されるポリマーは高い屈折率を必要としなくてもよい。同様に、例えば、支持部が静的光学部とは異なる応答性を有することが望ましいことがある。
【0075】
以下の非限定的な例は本発明の特定の態様を説明する。
〔実施例1〕
【0076】
以下の配合を互いに足し合わせ、良く混合する。
【0077】
【0078】
配合物を金型へ注ぎ、UV又は熱硬化のいずれかによりポリマーを硬化させることによって、ポリマーを製造することができる。得られるポリマーはシリコーンオイル中の膨潤率が0、屈折率が1.477、弾性係数が0.163Mpaであった。
〔実施例2〕
【0079】
以下の配合物を互いに足し合わせ、良く混合し、実施例1の配合物と同じ加工を行うことができる。
【0080】
【0081】
得られるポリマーの膨潤率は0.019、屈折率は1.473、及び弾性係数は0.27Mpaであった。
【0082】
上記の実施形態は例示的なポリマー配合物を示したが、上記のものよりも高い屈折率を有する更なる例示的な配合物を以下に示す。屈折率を高めることは眼内レンズの基本的な屈折力を高めるために望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、眼内レンズのポリマー材料の屈折率はおよそ1.48~およそ1.53、場合により1.50~1.53である。バルクポリマーの屈折率はポリマーの重量パーセントとしてのフェニルエチルアクリラートの濃度を増加させることによって高めてもよい。他の成分は、フェニル基を含むモノマーの濃度の増加を相殺するために修正してもよい。以下のTable1(表3)は眼科デバイス及びそれらの部材に使用するための更なる例示的なポリマー配合物を示し、ここで屈折率は上記のいくつかの実施形態よりも高い。最初の3つの配合物は、532nm及び35℃で1.5180に非常に近い屈折率値を有し、これは1.50~1.53のRIの一例である。4つ目の配合物は上記のいくつかの例と類似している。Table1(表3)の4つのすべての配合物はBA、PEA、及びTFEMAを含む。
【0083】
Table1(表3)の例示的な配合物の、典型的で重要な利点は(比較的高い屈折率を含める)、参照により本明細書に組み込まれるもの等の、一部の流体駆動型調節型眼内レンズで一般に使用されるシリコーン流体にさらされると、それらの配合物が膨潤する傾向が劇的に低いことである。データは膨潤の低減を裏付けており、膨潤の低減は、著しく改善された屈折力の安定性、及び一部の流体駆動型調節型眼内レンズで見られる膨潤に起因する屈折力の低下を伴わずに加速エージング試験を行うことができる潜在的可能性として現れる。
【0084】
【0085】
Table1(表3)の配合物1~3は、例えば調節型眼内レンズ(「AIOL」)の光学部(調節型眼内レンズは流体駆動型である)、又はAIOLの周辺部分で使用できる。
【0086】
本明細書に示される特定のモノマーは単に例として示され、本開示の範囲はそのように限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、BAのパーセンテージは2~20%、例えば3~17%等である。いくつかの実施形態において、PEAのパーセンテージは50~80%、例えば60~75%等である。いくつかの実施形態において、TFEMAのパーセンテージは10~35%、例えば15~30%等である。
【0087】
Table3(表5)の最初の3つの配合物は、3%~20%の量で存在するアルキルアクリラート、10%~35%の量で存在するフルオロアクリラート、及び50%~80%の量で存在するフェニルアクリラートを含むポリマー材料の例でもある。
【0088】
硬化を含め、様々な製造工程を使用してポリマー材料を製造することができる。
図3は、3種のモノマー(すなわち、BA、PEA、及びTFEMA)、UVブロック剤、及び架橋剤、例えばEGDMA等を硬化させ、3種のモノマーを含む硬化ポリマー材料を得る、例示的な方法を示す。ポリマー材料のいずれかをこの方法で製造することができる。
【0089】
図4は別の製造プロセスを示し、ここでは複数のモノマー(この例ではそれらは
図3におけるものと同じであるが、同じである必要はない)でプレポリマーが最初に作られ、
図4に示すように、プレポリマーはまだ架橋していない(まだ完全に硬化してない)。モノマーを最初にヒドロキシル部分を含むモノマーと化合させ、これをその後、架橋性メタクリラートに転化させ、これにより架橋性ポリマーが完全に硬化することが可能となる。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル部分を含むモノマーは、メタクリラート(例えば、ヒドロキシエチルメタクリラート(「HEMA」))又はアクリラート(例えば、ヒドロキシエチルアクリラート(「HEA」)、ヒドロキシブチルアクリラート(「HBA」))である。例示的な
図4ではHEMAを使用する。
図6Aは、プレポリマー(
図4のプレポリマー等)から架橋性ポリマーを作る例示的な方法を示し、ここではヒドロキシル部分はメタクリラート(
図6Aの右下)に転化され、次いでこれを架橋させて硬化ポリマー材料を形成することができ、これは本明細書における任意の例示的なIOLの部材のいずれかを作るのに使用できる。
【0090】
接着剤についての考察(本開示のこの節に完全に組み込まれる)に関してより詳細に記載されるように、上記のもの等の架橋性ポリマーは、親水性反応性希釈剤と組み合わせることができる。親水性モノマー(例えばHEMA、HBA)を反応性希釈剤として架橋性ポリマーに使用すると、硬化によって、親水性ホモポリマーを第2の相として含むポリマーマトリックス中の相互貫入網目構造が得られることになる。長鎖ホモポリマー「ブロック」は、ランダムコポリマー中の親水性成分に関連する官能基の有効性を高めることができる。いくつかの実施形態において、約25~35%(例えば、30%)のHEMA又はHBAを反応性希釈剤として架橋性ポリマーに使用することによってポリマーが開発される。いくつかの例示的な製造方法において、硬化による相分離は生じず、硬化ポリマー材料は透明であった。支持部及び光学部又は本明細書に記載される若しくは参照により本明細書に組み込まれる調節型眼内レンズのいずれか等において、これらの架橋性ポリマーに基づく配合物は直接成形される部品の高精度(非常に収縮が少ない)の製造に非常に適している。
【0091】
1つ又は複数の親水性モノマー(例えば、HEMA、HBA)を反応性希釈剤としてポリマー材料中に組み込むことの更に典型的な利点は、水に起因するヘイズ又はグリスニング(すなわち、材料中の水胞)を低減できることである。
【0092】
図5A及び5Bは例示的な親水性材料の重合を示し、HEMAは
図5Aに示され、
図5BはHBAを示す。
【0093】
接着剤
【0094】
本開示の一態様は、第1及び第2のポリマー、場合により眼内レンズの第1及び第2のポリマーを互いに接着させるのに使用できる接着剤を記載する。本開示は眼科用途において使用するための接着剤及びポリマーを記載しているが、そのように限定されることを意図していない。本明細書に記載の材料は他の適切な用途に使用できる。上記の例示的なポリマー材料(例えば、実施例1、実施例2、及びTable1(表3))は、互いに接着される第1及び第2の部材のためのポリマーの配合物の単なる例である。本明細書に記載の接着剤は、本明細書に記載のポリマーに関連して記載されることになるが、本明細書におけるコンセプトは他のポリマー材料及び他の接着剤に適用できる。本明細書に示される実施例は単に例示的なものであり、本開示は本明細書における特定の接着剤又は特定のポリマーに限定されることを意図していない。
【0095】
一部の眼科デバイスを製造する間、2つ以上のポリマー性物体は互いに接着、又はのりづけされる。接着は2つ以上の物体が使用中及び移植手術中に互いに接着したままであるように十分に強いものであるべきである。例えば、デバイスが眼内に装着及び/又は送達される際に再構成又は変形する必要があるとしても、接着が維持される必要がある。更に、接着剤の存在は、デバイスの光学的透明度が接着剤において又は接着剤付近等で許容不可能なレベルまで低下することを引き起こすべきではない。本明細書における接着剤とポリマーの組合せは、許容可能なレベルの光学的透明度を維持するだけでなく、接着剤/ポリマーの接着の機械的完全性を改善又は維持する。
【0096】
本開示の一態様は、互いに接着されている第1及び第2のポリマー性物体と同じ若しくは実質的に同じ材料である、又は実質的に同様の特性を有する、第1の成分を有する接着剤である。第1及び第2の物体は代わりに異なる配合物を有していてもよい。本明細書で使用する場合、接着剤は「第1の物体」を「第2の物体」へ接着させるのに使用される。
【0097】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の物体を最初に硬化させ、次いで本明細書における接着技術を使用して互いに接着させる。
【0098】
いくつかの実施形態において、接着剤は第1及び第2の主成分並びに硬化性添加剤(例えば光開始剤)を含む。例示的な製造方法を含む純粋に例示的な実施形態において、第1の主成分(例えば、約50~75%)は、第1及び第2の物体と同じ若しくは類似した組成を有する、又は実質的に同様の特性を有する、架橋性ポリマーである(「CLP」;架橋性ポリマーについての上記考察は本開示のこの態様に組み込まれる)。CLPはまだ架橋していないので、熱硬化性材料よりもむしろ、流動性、溶解性、熱可塑性プラスチック材料として振る舞う。次いでCLPは第2の主成分である反応性アクリル系モノマー希釈剤(例えば
図16に示す、ADMA等、例えば、約20~50%)と化合し、残りの構成成分は接着剤を硬化させるための約2%の光開始剤である。第1の物体と第2の物体の間の接合ラインでは、CLPは非常に大きい/嵩高いのでいずれの物体中にも移動することができず、一方反応性アクリル系モノマー希釈剤及び光開始剤は接合ラインを越えて両方の硬化ポリマー性物体の中に移動/拡散できる。時間、温度、及び接合ラインの厚さに応じて、反応性アクリル系モノマー希釈剤及び開始剤は一定程度(制御可能)に拡散し、その後硬化し(例えば紫外線により)、第1及び第2の物体中の反応性アクリル系モノマー希釈剤(例えば、ADMA)の相互貫入網目構造、並びに浸透した反応性アクリル系モノマー希釈剤の網目構造をやはり含む既に架橋したポリマー(第1及び第2の物体と同じ若しくは類似している、又は類似した特性を有する)が作られる。反応性アクリル系モノマー希釈剤の濃度が接合ラインを越えて及び接合ラインの内部で本質的に同じであるような、拡散の程度である場合、材料の特性は領域をまたがって実質的に同じとなる。
【0099】
いくつかの実施形態において、第1の主成分(場合により第1及び/又は第2の物体と同じ又は類似した組成を有する)は接着剤の約55%~約80%(約55%~約75%等)である。いくつかの実施形態において、第2の主成分(反応性アクリル系モノマー希釈剤)は接着剤の約18%~約43%(約23%~約43%等)である。
【0100】
本明細書における接着剤はいくつかの機械的な利点をもたらす。一般に、結合強度は時間と共に良好になり、これはデバイスの耐用年数を長くする。実質的に同じ材料、又は実質的に類似した特性を有する材料を使用する場合、ポリマーと接着剤の間で材料の相互貫入網目構造が形成され、ここで得られる接着材料は全体にわたって実質的に同じである。更に、材料の機械的及び熱的特性も実質的に同じとなり得る。例えば、ポリマー及び接着剤の弾性係数は同じ又は実質的に同じであるように設計することができる。更に、表面エネルギーは実質的に同じとすることができ、これは接着剤からの周囲水を保持するのを助け、水がデバイス内に移動し水滴を形成するのを防ぐことができる。
【0101】
更に、第1の物体の材料と同じ又は実質的に同じである、接着剤の第1の成分を使用する場合、製造中に架橋をより良好に制御することが可能であり、このことは接着剤が硬化したときにより少ない収縮につながる。モノマーが硬化すると収縮が常に生じるが(大部分のアクリル系モノマーでは典型的には約10体積%)、CLPの架橋はほとんど収縮を伴わずに行われ、なぜならこれは本質的にすべての予備硬化材料の最後の約1%と考えることができ、そのため接着剤配合物中で使用されるCLPが多いほど、硬化時に配合物が示すことになる収縮は少ないからである。更に、例えばADMAが、接着したアクリルの中に拡散すると付随する膨潤が続いて起こり、これは硬化に起因する収縮の一部又はすべてを相殺することがある。
【0102】
本開示の一態様において、「実質的に同じ」という用語は、ほとんど同じ量の同じ成分、又は類似した成分、若しくは実質的に同じである特性を有する組成物を含むことを意図している。いくつかの実施形態において、実質的に同じという用語は、同じ成分を含み、重量又は体積のいずれかで各成分のパーセンテージが比較される組成物の成分の1~50%の範囲内である組成物を指すことができる。他の実施形態において、実質的に同じとは、実質的に同じ物理特性(例えば粘度、屈折率、構造等)を有する組成物を指すのに使用してもよい。
【0103】
更に、ポリマー性物体材料と同じ又は実質的に同じである第1の成分を含む接着剤材料の使用において、光学的な利点がある。上記に示したように、表面エネルギーは実質的に同じであってもよく、実質的に疎水性部位がない。実質的に同じ表面エネルギーは、水滴が形成されるのを防ぎ、これは光学的透明度が低下するのを防ぐ。更に、実質的に同じ材料を使用することによって、接着剤及び接着したポリマーの屈折率を実質的に同じにすることができる。接着剤とポリマーとの屈折率の差は顕著な光学的な乱れを生じさせないが、実質的に同じ屈折率を有する材料を作ると、そのような乱れの可能性を低減することができる。
【0104】
接着剤の架橋性ポリマーは、互いに接着される第1及び/又は第2のポリマー性物体のポリマー配合物と同じ配合(同じモノマー及び同じパーセンテージ)を有する必要はなく、又は同じモノマーを有する必要さえない。架橋性ポリマー配合物が上記で記載される第1及び/又は第2のポリマー性物体の配合物と類似した特性を有することは有利であるが、他の実施形態ではそれらは非常に異なっている。単に例として、表の配合物#4は接着剤配合物中の架橋性ポリマーとして使用されており、Table1(表3)の配合物#1~#3のいずれかに示されるような配合を有するポリマー性物体を接着させるのに使用されている。この例において、接着剤の架橋性ポリマーと第1及び第2の物体のポリマー配合物は共に、同じである3種のモノマーを含むが、パーセンテージが異なる。これは実質的に同じである又は実質的に類似した特性を有することの一例である。この例における結合強度は非常に強かった。いくつかの実施形態において、接着剤の架橋性ポリマーと第1及び第2の物体のポリマー配合物が同じであってもよい。
【0105】
互いに接着される第1及び第2の部材を含む任意の眼内レンズは、本明細書のコンセプトを使用して互いに接着させることができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記の
図16に示される方法に従って接着剤を形成し、架橋性ポリマーを形成する。すなわち、反応性希釈剤(例えばADMA)と混合すると第1及び第2の物体と共に硬化させることができる、架橋性ポリマー作るために、プレポリマーを使用して架橋ポリマーを形成する。
【0107】
本明細書における開示は、眼内レンズで使用できる例示的な流体も記載している。いくつかの実施形態において、流体はシリコーンオイルであり、いくつかの実施形態において、眼内レンズは調節型眼内レンズである。
【0108】
眼科デバイスは1つ又は複数のシリコーンオイルを含有していてもよい。シリコーンオイルは、流体移動を使用してIOLの屈折力変化を行う調節型眼内レンズにおいて使用してもよい。シリコーンオイルは非調節型眼内レンズにおいても使用してもよい。ポリマー材料等のバルク材料を含む調節型IOLにおいてシリコーンオイルを使用する場合、オイル成分の一部はバルク材料中に通過することができ、バルク材料の膨潤を引き起こす。したがって選択されたシリコーンオイル又はオイルはバルクポリマーの望ましくない膨潤を防ぐ。IOLのバルク材料に使用できる例示的なポリマー材料は本明細書で見出すことができる。
【0109】
ポリマーを通って拡散するシリコーンオイルの量は、分子量分布が狭い、特に低分子量シリコーンオイル分子を除去したシリコーンオイルを選択することによって、低減することができる。一連のストリッピング法を使用してシリコーンオイル中の低分子量成分を除去することができる。一般に、低分子量成分は高分子量成分よりも速く拡散することになる。しかし、高分子量成分は、流体をIOL全体に送り出すのにより大きい力を必要とする、粘度の増加に寄与する。したがって、分子量分布が狭いシリコーンオイルが好ましい。眼科デバイス内に配置された流体はシリコーンオイルに限定されず、例えば生理食塩水であってもよい。
【0110】
十分な応答を確実にするのを助け、望ましくない膨潤を防ぐシリコーンオイルの1つの特性は、IOLに使用しようとするシリコーンオイルの多分散指数(「PDI」)である。PDIは一般に所与の試料の分子量の分布の指標である。比較的低いPDIは比較的狭い範囲の分子量を示す。本明細書に記載のシリコーンオイルはPDIが約1.5未満、より具体的には約1.3以下である。他の例において、シリコーンオイルのPDIは約1.2未満である。
【0111】
十分な応答を確実にするのを助け、望ましくない膨潤を防ぐシリコーンオイルの第2の特性は、シリコーンオイルの平均分子量である。高濃度の比較的低分子量の成分がシリコーンオイル中に存在する場合、より多くの低分子量成分がIOLのバルク材料中に通過して入り、バルク材料の膨潤を引き起こす。望ましくない膨潤を防ぐために、比較的低分子量の成分の濃度を最小限にするべきである。比較的低分子量の成分の濃度を低下させ高濃度の比較的高分子量の成分を維持することによって、より少ない低分子量成分しかバルクポリマー材料中に通過して入らないことになり、バルク材料中で生じる膨潤の量を低減させる。
【0112】
シリコーンオイルのPDI及びオイルの平均分子量は関連している。シリコーンオイルのPDIを低下させ、一方で高濃度の比較的高分子量の成分及び低濃度の低分子量成分を含むシリコーンオイルを提供することによって、IOLの応答が維持され(適切な粘度を有するシリコーンオイルを提供することにより)、望ましくない膨潤が回避される。更に、低PDI及び非常に低濃度の低分子量成分を有するシリコーンオイルを提供することは、シリコーンオイルがポリマーの膨潤を防ぐのに最低限必要な大きさの分子量を有することを意味する。
【0113】
いくつかの実施形態において、平均分子量が約4500~約6500ダルトンである、又は平均分子量が約5000~約6500ダルトンであるシリコーンオイルが提供される。分子量がこの範囲内にあるシリコーンオイルは、バルクポリマー材料の膨潤を実質的に防ぐのに十分な大きさである。これは、本質的に低分子量成分がより少ない、より高分子量のシリコーンオイルを使用する代替の方法よりも好ましく、なぜならこれを構成するほとんどすべての分子が大きいからである。したがって高分子量シリコーンオイルは高粘度を有することが可能であり、このことは調節型IOLの応答時間を短縮することができる。
【0114】
本明細書に記載のシリコーンオイルは非常に低濃度の比較的低分子量の成分を有する。非常に低分子量の成分は、各成分の約200ppm未満、いくつかの実施形態では約100ppm未満の量で存在する。いくつかの特定の実施形態において、非常に低分子量の成分は約50ppm未満の量で存在する。
【0115】
比較的低分子量の成分としては、約1000ダルトン以下のものが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、約1000ダルトン以下の成分の濃度は約50ppm以下である。
【0116】
1つの特定の実施形態において、全シリコーンの20%以下が約4000ダルトン未満の成分で構成され;重量で全ポリマー流体の10%以下が3000ダルトン未満の成分で構成され;50ppm以下が1000ダルトン未満の任意の成分で構成されているシリコーンオイルが提供される。
【0117】
本明細書に記載される見積もりの分子量及び多分散性は、ポリスチレン分子量標準物質に対するものである。
【0118】
シリコーンオイルは一般に、一部のIOLにおける、周囲のバルクIOL材料との有害な相互作用、例えば膨潤、フォギング、溶解、又は材料(例えば、ポリアクリラート)との反応等を防ぐような方法で設計される必要がある。バルク材料中のシリコーンオイルの溶解度は、シリコーンオイルの化学構造及び分子量分布によって決まる。この相互作用に影響を与える他のパラメーターは、バルク材料の組成及び特性、例えば均質性、化学構造、疎水性、弾性率、及び架橋密度等である。
【0119】
一般にシリコーンオイルの粘度が規定され最小化されることも必要であり、なぜなら流体駆動型調節型IOLが動的に作動する実施形態では、IOLは適切な応答時間を有する必要があるからである。いくつかの実施形態において、シリコーンオイルの粘度は2400cP以下である。
【0120】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルは2つのジメチルシロキサン単位対1つのジフェニルシロキサン単位の比を含むシクロトリシロキサンから作られる。いくつかの実施形態において、オイルは2つのジメチルシロキサン単位対1つのジフェニルシロキサン単位の比を含む、少なくとも95%(例えば、100%)の単一のシクロトリシロキサンである。
【0121】
いくつかの実施形態において、オイルは約20%ジフェニルシロキサン及び約80%ジメチルシロキサンを含む、ジフェニルシロキサンとジメチルシロキサンのコポリマーである。
【0122】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルはジフェニルシロキサン(例えばおよそ100%)の単一の成分であってもよい。他の実施形態において、ジフェニルシロキサンのパーセンテージはおよそ95%以上である。これらの実施形態において、シリコーンオイルの屈折率は約1.5180であり、これは1.50~1.53の一例である。いくつかの実施形態において、およそ100%ジフェニルシロキサンであるシリコーンオイルを、上記の表の#1~#3等の配合物を有する調節型眼内レンズで使用できる。これらの実施形態において、流体及びポリマーを約1.518に屈折率整合させた。
【0123】
いくつかの実施形態において、ジフェニルシロキサンポリマー化合物の平均分子量はおよそ4500~およそ6500ダルトンである。
【0124】
一部のIOLでは、IOLのバルク材料とIOL内のシリコーンオイルとの間に光学的界面を作ることを避けるのが望ましい場合がある。これは、シリコーンオイルをIOLのバルク材料(いくつかの実施形態において、ポリマー材料である)に屈折率整合させることによって行うことができる。本明細書で使用する「屈折率整合」とは、第1及び第2の媒体間の光学的界面を最小化することを指す。例えば、シリコーンオイルとポリマー材料を屈折率整合させることは、それらの間の光学的界面を排除しようと試みることを指し、「実質的に同じ」とは、それらがわずかに異なっているとしても、屈折率の差を最小化するように可能な限り近づけることを意図した屈折率を指す。
【0125】
シリコーンオイルがバルクポリマー材料に屈折率整合されている、いくつかの実施形態において、シリコーンオイルの屈折率は約1.47~約1.55であり、いくつかの実施形態では約1.50~約1.53である。
【0126】
いくつかの実施形態において、シリコーンオイルは約0.7ミクロンのフィルターを通過してろ過されることが可能である必要がある。いくつかの実施形態において、揮発性物質のパーセントは約0.2%未満である。いくつかの実施形態において、シリコーンオイルは400nm~750nmの可視範囲内で35℃において、波長分散が約0.035以下の屈折率単位を有する。いくつかの実施形態において、シリコーンオイル成分は互いに完全に混和性であり相分離の兆候(すなわち曇り又は懸濁)はない。いくつかの実施形態において、シリコーンオイルは400nm~1100nmの範囲内で約1cmの厚さの流体試料について透過率が85%を上回る。
【0127】
更に、シリコーンオイルは透明、無色で、重金属及び他の不溶性無機不純物が約10ppm未満で、シラノールを実質的に含まないべきである。
【0128】
シリコーンオイルの合成
【0129】
シリコーンオイルの分子量、多分散性、及び場合よって屈折率は、シリコーンオイルを合成及び精製する方法によって制御できる。オイルの粘度はオイルの分子量、オイルの多分散性、及びバルクポリマーの構造に関連し、それらのすべてがポリマーの合成及び精製によって影響を受ける。しかし目標粘度は、シリコーンオイルの目標分子量、多分散性、組成物、構造とは無関係に、任意に選択することはできない。「リビング重合反応」として知られる一般的なクラスのポリマー合成反応は、シリコーンオイルの設計要件のいくつかを満たすのを支援するのに必要な制御の度合いを提供することができる。
【0130】
「リビング重合」という用語は、多くの数の連鎖停止又は連鎖移動副反応が起きない重合反応を意味する。副反応がないことによって、他の方法では調製が難しい様々な材料を合成するのにリビング重合を使用することが可能になる。このクラスの重合反応は、様々な1)構造-直鎖、「星型」、及び「櫛型」ポリマーを含める;2)組成-ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフトコポリマー;並びに3)官能化ポリマー-一末端及び二末端官能性ポリマー、並びに側鎖官能性ポリマーを有するポリマーを調製するのに使用できる。このクラスの重合反応は、多くの場合に狭い分子量分布を有するポリマーを様々な分子量で調製するのに使用できる。その結果として、リビング重合は多くの場合、特定の構造及び組成を有するポリマーが必要とされる場合に採用される。例えば、広い分子量分布を有するポリマーは多数の化合物の混合物と考えることができ、材料の特性はその分布の何らかの関数である。しかし、リビング重合から得ることができるような、狭い分子量分布を有するポリマーは、より良く規定された特性を有する「純粋な」試料と考えることができる。
【0131】
アニオン性及びカチオン性リビング重合は当技術分野において記載されている。より最近では、ラジカルリビング重合が開発されている。アニオン性合成経路の一例では、シクロトリシロキサンの開環重合におけるアルキルリチウム化合物の使用は「リビング」重合であると思われ、上記のシリコーンオイルを作るのに必要な制御の度合いを可能にする。メチルのみを含有するシクロトリシロキサンに対するフェニル含有シクロトリシロキサンの比を変化させることによって(すなわち、ランダムブロックコポリマーの調製)、シリコーンオイルの屈折率を両方の純粋なホモポリマーのみの屈折率の間で変化させることができる(すなわち、純粋なジフェニルポリシロキサンと純粋なジメチルポリシロキサンの間)。
【0132】
別の例として、シリコーンオイル組成物の屈折率は、テトラメチル-ジフェニル-シクロトリシロキサン対ヘキサメチルシクロトリシロキサンの比を変化させることによって、変化させることができる。この比を変化させると、約1.47~1.49の屈折率を含めた、約1.40~約1.54の様々な屈折率を実現できる。
【0133】
上記のように、リビング重合は目標分子量のポリマー生成物を調製することが可能であるという利点も提供する。これは、重合反応の間のモノマー対開始剤の比、特定の式量のシリコーンオイルの調製に適用することができる応用を変化させることによって、実現できる。
【0134】
狭い範囲の分子量の生成物の特徴もシリコーンオイルの調製において実現できる利点であり、なぜなら重合反応の間に、より少量の低分子量オリゴマーしか作られないからである。調製される低分子量物質がより少量であると、より高い分子量の生成物から低分子量物質を除去するために後で行う必要がある精製の量が最小化される。例えば、重合反応の間に少量の低分子量オリゴマーしか作られない場合、超臨界CO2抽出(下記で説明される)を使用して合成シリコーンオイルを精製する際に低分子量物質を抽出するのがより容易であり、より高収率の所望の生成物が得られる。
【0135】
ポリマーの粘度はポリマーを調製する方法に直接は関係しないが、リビング重合は生成物ポリマーのこの特徴を間接的に改変するのにも使用できる。リビング重合は、他の合成法を使用すると実現するのが困難であるポリマー構造を作るのに使用できる。例えば、「櫛型」ポリマー、「星型」ポリマー、及び他の分岐構造を調製することができ、これらは、「直鎖」ポリマーと非常に類似した化学組成を有するとしても、それらの構造が有する異なる物理的形状に起因して異なる物理特性(例えば、粘度)を有する可能性がある。高度分岐シリコーンオイルの調製は、分子量が同じであるが直鎖構造であるシリコーンオイルよりも大幅に低い粘度を有する生成物を生じることが可能である。
【0136】
シリコーンオイルは、シクロトリシロキサンの塩基触媒開環、及びジアルキルジクロロシランと水の縮合等の、他の合成法を使用して調製することもできる。これらの合成法も上記の特性の多くを有するシリコーンオイルを調製できるが、精製により多くの労力を要することがある。
【0137】
シリコーンオイルの精製
【0138】
シリコーンオイルは様々な方法で精製できる。上で考察したような重合反応後に得られるシリコーンオイルは、様々な分子量を有するシリコーンオイルポリマー変形物を含有することがある。低分子量シリコーンオイルはバルクポリマー材料の望ましくない膨潤を引き起こすことがあり、最小限にするべきである。高沸点を有する低分子量化合物を除去するのにワイパー式薄膜蒸発(wiped film evaporation)を使用できる。しかしシリコーンオイル生成物は、ワイパー式薄膜蒸発を使用する際に過度の加熱によって変色することがある。
【0139】
超臨界CO2抽出は、分子量に基づいて、及び化学的親和性に基づいてシリコーンオイルの画分を選択的に除去するのに使用できる1つの例示的な精製法である。シリコーンオイルを精製してシリコーン網膜硝子体タンポナーデを製造するための超臨界CO2抽出が、米国特許第7,276,619号に記載され、その全体の開示は参照により本明細書に組み込まれる。これらのオイルはIOLには使用されず、特に流体駆動型調節型IOLにおいては使用されない。圧力、温度、抽出速度条件、例えばアセトン等の共溶出する溶媒の使用は、狭い分子量分布(すなわち低PDI)を有する画分を得るように変化させることができる。非常に低分子量及び非常に高分子量の画分を試料から除去して所望の分子量を得るような方法で、混合物を分離することができる。化学的親和性に基づく分離が得られるように超臨界抽出条件を変化させることができるので、この精製法も所望の屈折率を得るのに使用できる。したがって超臨界CO2抽出は、例えば、眼内レンズで(例えば流体駆動型調節型眼内レンズで)使用しようとするバルクポリマーと実質的に同じ屈折率を有するシリコーンオイルを製造するのに使用できる。
【0140】
Table2(表4)~Table4(表6)は試料シリコーンオイルの例示的な超臨界CO2抽出によるデータを示す。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
同様に、調製スケールのサイズ排除クロマトグラフィーは、ポリマー試料を分子量成分に分画するための代替の方法である。シリコーンオイルの分別沈殿も生成物ポリマーの成分を分離するのに使用してもよい。
【0145】
時間と共に(例えば保存中)バルクIOL材料中に溶解するシリコーンオイル成分の除去は、バルク量のIOL材料、又はその目的のために選択された他の材料にシリコーンオイルをさらすことによって実現してもよい。適切な材料と共に保存すると、バルクIOLポリマー材料中に溶解するシリコーンオイルの成分は、それらの材料が十分に低いレベルしかオイル中に残留しないようにシリコーンオイル対ポリマー吸着剤の比を調整することによって除去することができる。
【0146】
本明細書における分画オイルの重要な態様は、他の既知の重合法で得ることができなかった非常に低い多分散性(「PDI」)(例えば、1.5未満、1.3未満、又は更には1.2未満)である。過去に達成できなかった所望の特性を得るための1つの方法は、合成後にオイルを分画して非常に低分子量の部分(及び場合により非常に高分子量の部分も)を除去することである。非常に低いPDIは、材料の特性を機能特性;特に高分子量(したがって低膨潤及び屈折力安定性)及び低粘度(したがって調節及び非調節の速い応答時間)に適合させるという利点をもたらす。ブレンドした高屈折率及び低屈折率オイル成分、例えば以下のTable5(表7)及びTable6(表8)等(例えば、ブレンドしたジメチルシロキサン対ジフェニルシロキサン)を含む、本明細書におけるいくつかの実施形態の更なる利益は、分画オイルが高分子量を有するにもかかわらず、ブレンドした屈折率整合系(レンズのポリマー材料と屈折率整合されている)は実際には、成分の含量(例えば、オイル成分はジメチルシロキサン及びジフェニルシロキサン)の関数としての固有粘度変化と連動するブレンド比の変化に起因して、粘度を大幅に増加させないという点である。
【0147】
Table6(表8)及びTable7(表9)はそれぞれ、例示的なシリコーンオイルの未分画及び分画後のブレンド(高RI及び低RIの)の例を示す。Table5(表7)及びTable6(表8)の例示的なブレンドオイルは1000cPs未満の粘度、及び1.47~1.50のブレンドされた屈折率を有する。
【0148】
【0149】
【0150】
非常に低いPDIを有するオイルを作る1つの例示的な方法は、堅実、高信頼性、再現可能、スケールアップ可能、高精度等の分画法を使用することによる。分画法は、他の方法では達成できないレンズ用アクリル系材料へのシリコーン流体の特性適合を可能にし、それにより膨潤に起因する屈折力のシフトを最小化し、一方で許容可能な速い応答時間を可能にする望ましい低粘度流体を維持することができ、両方が本明細書に記載されている。
【0151】
例示的な方法は高温イソプロピルアルコール/水分画である。使用される唯一の試薬はイソプロピルアルコール及び水であり、これらはオイルから蒸発させて除くことができる。
【0152】
例示的な実施形態において、オイルはブレンドしたジメチルシロキサン及びジフェニルシロキサンを含み、その例は表等において本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、オイルはジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンのコポリマーを含み、いくつかの実施形態において、2つの比は1:1から3:1まで変動してもよい。
【0153】
Table7(表9)は例示的なシリコーンオイルを記載し、平均分子量、多分散性、及び予測される拡散が含まれる。これらの例の多分散性はすべて1.3未満であり、これは1.5未満の例である。
【0154】
【0155】
Table8(表10)は例示的なシリコーンオイルを記載し、平均分子量、多分散性、及び屈折力の変化が含まれる。これらの例の多分散性はすべて1.3未満であり、これは1.5未満の例である。
【0156】
【0157】
いくつかの実施形態において、オイルの平均分子量は約4500Da~約6500Daであり、いくつかの実施形態において、5000Da~6000Da、例えば約5200Da~5800Da等である。いくつかの実施形態において、粘度は2400cPs未満である。
【0158】
調節型IOLで使用されるシリコーンオイルが主に本明細書に記載されているが、非調節型IOLでシリコーンオイルのいずれかを使用することが可能である。例えば、非調節型IOLはシリコーンオイルコアを取り囲む比較的堅い外側ポリマーシェルを有していてもよい。バルクポリマー材料の膨潤はやはり考慮に入れる必要があり、したがって本明細書に記載の所望のシリコーンオイルの製造方法を利用できる。
【0159】
米国特許公開第2013/0131794号のいくつかの実施形態において、調節型眼内レンズは、光学部流体チャンバーを画定する前部レンズ要素及び後部レンズ要素を含む、光学部を含む。いくつかの実施形態において、流体を前部及び後部要素の材料と実質的に屈折率整合させることができるが(本質的に1つのレンズのように振る舞う光学部を作る)、いくつかの実施形態において流体は前部レンズ要素及び後部レンズ要素の一方又は両方とは異なる屈折率を有する。異なる屈折率を有する光学部チャンバーに流体を入れることにより、2つの更なる光学的界面を光学部内部に作ることができる(前部レンズ要素/流体界面、及び流体/後部レンズ要素界面)。更なる光学的界面を設けることによって、調節のプロセス全体を通してIOLの屈折力に対して更に制御することが可能である。
なお、本願発明の実施形態として以下のものが挙げられる。
[実施形態1]
2%~20%の量で存在するブチルアクリラートと、10%~35%の量で存在するトリフルオロエチルメタクリラートと、50%~80%の量で存在するフェニルエチルアクリラートとを含むポリマー材料を含む、眼内レンズ。
[実施形態2]
ポリマー材料の屈折率が1.48~1.53である、実施形態1に記載の眼内レンズ。
[実施形態3]
ポリマー材料の屈折率が1.50~1.53である、実施形態2に記載の眼内レンズ。
[実施形態4]
ポリマー材料が流体チャネルを画定し、眼内レンズが流体チャネル中にシリコーンオイルを更に含む、実施形態1に記載の眼内レンズ。
[実施形態5]
シリコーンオイルがポリマー材料と屈折率整合されている、実施形態4に記載の眼内レンズ。
[実施形態6]
シリコーンオイルの多分散性が1.2未満である、実施形態4に記載の眼内レンズ。
[実施形態7]
3%~20%の量で存在するアルキルアクリラートと;
10%~35%の量で存在するフルオロアクリラートと;
50%~80%の量で存在するフェニルアクリラートと
を含む、眼科デバイス用のポリマー材料。
[実施形態8]
光を網膜上へ屈折させるように適合された、ポリマー材料を含む光学部と;
光学部内に配置された、多分散指数が約1.2未満であるシリコーンオイルと
を含む、調節型眼内レンズ。
[実施形態9]
シリコーンオイルの平均分子量が4500~6500である、実施形態8に記載の調節型眼内レンズ。
[実施形態10]
粘度が2400cP以下である、実施形態8に記載の調節型眼内レンズ。
[実施形態11]
シリコーンオイルがジフェニルシロキサン単位を含む、実施形態8に記載の調節型眼内レンズ。
[実施形態12]
シリコーンオイルが、2つのジメチルシロキサン単位対1つのジフェニルシロキサン単位の比を含むシクロトリシロキサンからできている、実施形態8に記載の調節型眼内レンズ。
[実施形態13]
シリコーンオイルの屈折率が1.47~1.53、場合により1.50~1.53である、実施形態8に記載の調節型眼内レンズ。
[実施形態14]
調節型眼内レンズ用の接着剤であって、調節型眼内レンズの第1の物体のポリマー材料と同じである又は実質的に類似した特性を有する第1の成分を含む、接着剤。
[実施形態15]
眼内レンズの第1の物体のポリマー材料と同じである第1の成分を含む、実施形態14に記載の接着剤。
[実施形態16]
ポリマー材料中に存在するモノマーを含む第1の成分を含む、実施形態15に記載の接着剤。
[実施形態17]
反応性アクリル系希釈剤である第2の主成分を含む、実施形態14に記載の接着剤。
[実施形態18]
調節型眼内レンズの第1の物体のポリマー材料と同じではないが実質的に類似した第1の成分を含む、実施形態14に記載の接着剤。
[実施形態19]
調節型眼内レンズを製造する方法であって、
調節型眼内レンズの第1及び第2の部材を硬化させる工程と;
第1及び第2の部材の少なくとも1つと同じであるか、実質的に同じであるか、又は実質的に類似した特性を有する第1の成分を含み、反応性アクリル系希釈剤である第2の主成分を更に含む接着剤を、第1の部材と第2の部材との間に塗布する工程と
を含む、方法。
[実施形態20]
複数のモノマーを含む眼内レンズのポリマー成分を製造する方法であって、
複数のモノマーを含む、ポリマーのプレポリマーを形成する工程と;
プレポリマーを硬化してポリマー成分を形成する工程と
を含む、方法。
[実施形態21]
プレポリマーを形成する工程が、複数のモノマーとヒドロキシ部分を含むモノマーとを化合させる工程を含む、実施形態20に記載の方法。
[実施形態22]
プレポリマーから架橋性ポリマーを作る工程を更に含み、架橋性ポリマーを作る工程がヒドロキシル部分をメタクリラート部分へ変化させる工程を含む、実施形態21に記載の方法。
また、本開示の態様として以下のものも含まれる。
〔態様1〕
眼内レンズの支持部及び光学部の少なくとも一方を製造する方法であって、
複数のモノマーを、ヒドロキシル部分を含む追加のモノマーと組み合わせることであって、前記複数のモノマーは、ブチルアクリラート、トリフルオロエチルメタクリラート、及びフェニルエチルアクリラートを含む、組み合わせることと、
前記眼内レンズの前記支持部及び前記光学部の少なくとも一方を形成するために、前記複数のモノマー及び前記追加のモノマーを硬化させることであって、ヒドロキシル部分を架橋可能なメタクリラートに変換する、硬化させることと、
を含む、方法。
〔態様2〕
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーはヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)である、態様1に記載の方法。
〔態様3〕
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーはヒドロキシエチルアクリラート(HEA)である、態様1に記載の方法。
〔態様4〕
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーはヒドロキシブチルアクリラート(HBA)である、態様1に記載の方法。
〔態様5〕
前記ヒドロキシル部分を含む前記追加のモノマーは、水に起因するヘイズ又はグリスニングを低減するために添加される、態様1に記載の方法。
〔態様6〕
硬化は、光開始剤の存在下でのUV硬化を含む、態様1に記載の方法。
〔態様7〕
眼内レンズを製造する方法であって、
前記眼内レンズの第1の本体及び第2の本体を形成することと、
前記第1本体と前記第2本体の間に接着剤を塗布することであって、前記接着剤は、
前記第1の本体又は前記第2の本体を構成するポリマー材料と同じ、実質的に同じ、又は実質的に同様の特性を有する第1の主成分であって、前記第1の主成分が55%から80%の間の量で前記接着剤中に存在する、第1の主成分、及び
第2の主成分、を含む、塗布することと、
前記接着剤を硬化させることによって前記第1の本体を前記第2の本体に接着することであって、前記接着剤は、硬化時に前記第1の本体及び前記第2の本体内に反応性アクリル希釈剤の相互貫入網目構造を作成する、接着することと、
を含む、方法。
〔態様8〕
接着剤を塗布することは、前記眼内レンズの後部要素の円形の隆起した周囲に沿って前記接着剤を塗布することをさらに含み、前記接着剤は、前記後部要素を前記眼内レンズの前部要素に接着するために使用される、態様7に記載の方法。
〔態様9〕
前記第1の主成分は、
トリフルオロエチルメタクリラートと、
ブチルアクリラート及びn-ブチルメタクリラートの少なくとも1つと、
フェニルエチルアクリラート及びフェニルエチルメタクリラートの少なくとも1つと、を含む、態様7に記載の方法。
〔態様10〕
前記第1の主成分は、まだ架橋されていない架橋性ポリマーであり、前記架橋性ポリマーは、嵩高いので前記第1の本体又は前記第2の本体のいずれにも移動できない、態様9に記載の方法。
〔態様11〕
前記第2の主成分は反応性アクリル系モノマー希釈剤である、態様7に記載の方法。
〔態様12〕
前記反応性アクリル系モノマー希釈剤は、1-アダマンチルメタクリラート(ADMA)である、態様11に記載の方法。
〔態様13〕
前記第2の主成分は接着剤中に18%から43%の間の量で存在する、態様7に記載の方法。
〔態様14〕
前記接着剤はさらに光開始剤を含む、態様7に記載の方法。
〔態様15〕
前記光開始剤は、接着剤配合物の約2%の量で前記接着剤中に存在する、態様14に記載の方法。
〔態様16〕
前記接着剤はUV光を使用して硬化される、態様7に記載の方法。
〔態様17〕
調節性眼内レンズに使用するシリコーンオイルの精製方法であって、該方法は、
加熱したイソプロピルアルコール及び水を試薬として含む分画プロセスを使用してシリコーンオイルを分画することと、
前記シリコーンオイルからイソプロピルアルコール及び水を蒸発させることと、を含む、方法。
〔態様18〕
分画プロセスから得られる分画されたシリコーンオイルは、1.2未満の多分散性指数(PDI)を有する、態様17に記載の方法。
〔態様19〕
前記シリコーンオイルの平均分子量は4500から6500の間である、態様17に記載の方法。
〔態様20〕
前記シリコーンオイルはジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンを含み、ジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとの比率は1:1から3:1の間である、態様17に記載の方法。
【符号の説明】
【0160】
10 調節型眼内レンズ
12 光学部
14 支持部
18 前部要素
20 後部要素
22 支持部流体チャンバー
24 光学部流体チャンバー
26 開口部
28 周縁表面
29 バットレス部分
32 流路
42 支持部の外側部分
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節型眼内レンズに使用するシリコーンオイルを精製する方法であって、
試薬として高温イソプロピルアルコールと水を含む分画法を使用してシリコーンオイルを分画することと、
前記シリコーンオイルからイソプロピルアルコールと水を蒸発させることと、を含む方法。
【請求項2】
未分画のシリコーンオイルは、多分散指数(PDI)が1.5より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未分画のシリコーンオイルは、多分散指数(PDI)が1.4~1.5である。請求項1に記載の方法。
【請求項4】
未分画のシリコーンオイルは、多分散指数(PDI)が1.3~1.4である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
未分画のシリコーンオイルは、多分散指数(PDI)が1.2~1.3である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
分画法から得られる分画シリコーンオイルは、PDIが1.2未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
分画法から得られる分画シリコーンオイルは、PDIが1.1~1.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記シリコーンオイルは、ジメチルシロキサン80%およびジフェニルシロキサン20%を含み、前記シリコーンオイルの平均分子量は4500~6500である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコーンオイルは、前記調節型眼内レンズの製造に使用されるポリマー材料と屈折率が一致している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
接着剤配合物であって、
モノマーを含む第1の成分と、
反応性アクリル系モノマー希釈剤を含む第2の成分とを含み、前記第2の成分は前記接着剤配合物の23%~43%を構成する、接着剤配合物。
【請求項11】
前記第1の成分は架橋性ポリマーである、請求項10に記載の接着剤配合物。
【請求項12】
前記モノマーはブチルアクリレートまたはn-ブチルメタクリレートを含み、ブチルアクリレートまたはn-ブチルメタクリレートは第1の成分の35%~45%である、請求項10に記載の接着剤配合物。
【請求項13】
前記モノマーはフェニルエチルアクリレートまたはフェニルエチルメタクリレートを含み、フェニルエチルアクリレートまたはフェニルエチルメタクリレートは前記第1の成分の20%~40%である、請求項10に記載の接着剤配合物。
【請求項14】
前記モノマーはトリフルオロエチルメタクリレートを含み、トリフルオロエチルメタクリレートは第1の成分の15%~30%である、請求項10に記載の接着剤配合物。
【請求項15】
前記第1の成分は接着剤配合物の55%~75%を構成する、請求項10に記載の接着剤配合物。
【請求項16】
接着剤配合物であって、
トリフルオロエチルメタクリラートと、
ブチルアクリラート及びn-ブチルメタクリラートのうちの少なくとも1つと、
フェニルエチルアクリラート及びフェニルエチルメタクリラートのうちの少なくとも1つと、
反応性アクリル系モノマー希釈剤と、を含み、
前記反応性アクリル系モノマー希釈剤は前記接着剤配合物の23%~43%であり、
前記反応性アクリル系モノマー希釈剤は1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)である、接着剤配合物。
【請求項17】
UVブロック剤をさらに含む、請求項16に記載の接着剤配合物。
【請求項18】
光開始剤をさらに含む、請求項16に記載の接着剤配合物。
【請求項19】
前記光開始剤は前記接着剤配合物の2%である、請求項18に記載の接着剤配合物。
【請求項20】
前記接着剤配合物は、UV光によって硬化するように構成される、請求項16に記載の接着剤配合物。