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特開2024-166321画像トリミング装置、及び、画像トリミング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166321
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像トリミング装置、及び、画像トリミング方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   G06T 3/00 20240101ALI20241121BHJP
   G06T 3/18 20240101ALI20241121BHJP
【FI】
G06T1/00 330A
G06T3/00 775
G06T3/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024156971
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2021167308の分割
【原出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500316168
【氏名又は名称】近津 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】杉森 純子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋二
(72)【発明者】
【氏名】山本 遼平
(72)【発明者】
【氏名】当銀 久雄
(72)【発明者】
【氏名】近津 博文
(57)【要約】
【課題】品質のブレを抑制可能な画像トリミング装置、及び、画像トリミング方法を提供する。
【解決手段】画像処理装置1は、車両SCに設置されたカメラ110による撮像で得られた画像の処理を行う処理部10を備える。処理部10は、カメラ110が車両SCの走行する路面を撮像することで得られる斜め画像と当該斜め画像に対応する鉛直画像との間の射影変換係数を算出する算出処理と、カメラ110から処理対象の対象斜め画像を取得する取得処理と、射影変換係数に基づいて、車両SCの進行方向であるy方向における鉛直画像の上端及び下端に対応する対象斜め画像の一対のy座標に挟まれる対象斜め画像の範囲をトリミング範囲Rtとし、対象斜め画像から当該トリミング範囲Rtを切り出すトリミング処理と、を実行する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されたカメラによる撮像で得られた画像の処理を行う処理部を備え、
前記処理部は、
前記カメラが前記車両の走行する路面を撮像することで得られる前記路面の像を含む斜め画像と当該斜め画像に対応する前記路面の鉛直画像との間の射影変換係数を算出する算出処理と、
前記カメラから処理対象の前記斜め画像である対象斜め画像を取得する取得処理と、
前記算出処理及び前記取得処理の後に、前記射影変換係数に基づいて、前記車両の進行方向であるy方向における前記鉛直画像の上端及び下端に対応する前記対象斜め画像の一対のy座標に挟まれる前記対象斜め画像の範囲をトリミング範囲とし、前記対象斜め画像から前記トリミング範囲を切り出すトリミング処理と、を実行する、
画像トリミング装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記算出処理において、前記斜め画像に対して、A点、B点、C点、及び、D点の4点のキーポイントを設定すると共に、前記4点のキーポイントに基づいて前記射影変換係数を算出し、
前記処理部は、前記車両の車幅方向をx方向としたとき、前記4点のキーポイントのうちの前記A点と前記B点とを、前記x方向を規定するx軸に平行な第1直線上に設定すると共に、前記4点のキーポイントのうちの前記C点と前記D点とを、前記x軸に平行であると共に前記第1直線と異なる第2直線上に設定する、
請求項1に記載の画像トリミング装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記算出処理において、
前記C点を、前記y方向における前記斜め画像の下端であって、透視投影における消失点と前記A点とを結ぶ消失線上に設定し、
前記D点を、前記斜め画像における前記x方向の端部に設定し、
前記B点を、透視投影における消失点と前記D点とを結ぶ消失線上に設定する、
請求項2に記載の画像トリミング装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記対象斜め画像が前記カメラにより夜間に撮像された夜間画像を含む場合に、前記トリミング処理の後に、前記トリミング範囲が前記夜間画像における相対的に明るい明所部に対応するように、前記トリミング範囲を調整する調整処理をさらに実行する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の画像トリミング装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記調整処理の前において、前記夜間画像を、最も明るい前記明所部と、最も暗い暗所部と、前記明所部と前記暗所部との間の明るさの薄明部と、に3値化された3値化画像を生成する3値化処理を実行する、
請求項4に記載の画像トリミング装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記調整処理において、
前記3値化画像のラベリング処理により複数の画素群を規定するラベリング処理と、
前記ラベリング処理の後に、前記複数の画素群のうちの前記明所部の候補画素群から、前記夜間画像の中心を含み、且つラベル面積が最大である候補画素群を抽出する抽出処理と、
前記抽出処理で抽出された前記候補画素群と前記トリミング範囲との論理積を取ることにより、少なくとも前記y方向について前記トリミング範囲が前記明所部に対応するように前記トリミング範囲を調整する論理積処理と、
を実行する、
請求項5に記載の画像トリミング装置。
【請求項7】
車両に設置されたカメラによる撮像で得られた画像に対してトリミング処理を行う画像トリミング方法であって、
前記カメラが前記車両の走行する路面を撮像することで得られる前記路面の像を含む斜め画像と当該斜め画像に対応する前記路面の鉛直画像との間の射影変換係数を算出する算出工程と、
前記カメラから処理対象の前記斜め画像である対象斜め画像を取得する取得工程と、
前記算出工程及び前記取得工程の後に、前記射影変換係数に基づいて、前記車両の進行方向であるy方向における前記鉛直画像の上端及び下端に対応する前記対象斜め画像の一対のy座標に挟まれる前記対象斜め画像の範囲をトリミング範囲とし、前記対象斜め画像から前記トリミング範囲を切り出すトリミング工程と、
を備える画像トリミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像トリミング装置、及び、画像トリミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載カメラによって路面を撮影した撮影画像のデータ、撮影画像を撮影したカメラの位置情報(位置データ)、車載カメラの向き、車載カメラの路面からの高さ、車載カメラ機種等の情報、及び解析作業を行なう解析作業者の情報等の入力を受け、出力情報として、撮像された画像に舗装のひび割れの形状を示す画像が入った舗装ひび割れ入り画像等を出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-107683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述したように、車載カメラによって路面を撮影して得られる画像に基づいて、路面状況を把握することが、道路の維持管理や車両の自動運転を実現する等の目的のために重要となっている。ところで、車載カメラから撮影される画像は透視投影画像であり、車両の進行方向の遠方は小さく投影されると共に、撮影点から遠のくほどレンズ歪の影響が大きくなる。したがって、車載カメラから撮影される画像のうち、写真測量の観点からはレンズ歪の少ない画像中央付近から下部にかけての利用が望ましいが、使用される車種やカメラの傾きに応じて車体(ボンネット部分)の写り込みを避ける必要もある。
【0005】
したがって、車載カメラから撮影される画像の有効活用のためには、当該画像から適切な範囲をトリミングすることが望ましい。特許文献1にあっても、撮影画像として、車載カメラによって撮影された元画像に対して所定の範囲でトリミングされた画像としてもよい旨の言及がされている。しかしながら、特許文献1では、車載カメラ画像のトリミングに関する具体的な手法等が開示されておらず不明である。したがって、現状では、車載カメラ画像のトリミングは作業者の手作業で行うことが考えられるが、その場合、作業者の経験値や能力に応じて成果品の品質にブレが生じている。
【0006】
そこで、本開示は、品質のブレを抑制可能な画像トリミング装置、及び、画像トリミング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る画像トリミング装置は、車両に設置されたカメラによる撮像で得られた画像の処理を行う処理部を備え、処理部は、カメラが車両の走行する路面を撮像することで得られる路面の像を含む斜め画像と当該斜め画像に対応する路面の鉛直画像との間の射影変換係数を算出する算出処理と、カメラから処理対象の斜め画像である対象斜め画像を取得する取得処理と、算出処理及び取得処理の後に、射影変換係数に基づいて、車両の進行方向であるy方向における鉛直画像の上端及び下端に対応する対象斜め画像の一対のy座標に挟まれる対象斜め画像の範囲をトリミング範囲とし、対象斜め画像からトリミング範囲を切り出すトリミング処理と、を実行する。
【0008】
本開示に係る画像トリミング方法は、車両に設置されたカメラによる撮像で得られた画像に対してトリミング処理を行う画像トリミング方法であって、カメラが車両の走行する路面を撮像することで得られる路面の像を含む斜め画像と当該斜め画像に対応する路面の鉛直画像との間の射影変換係数を算出する算出工程と、カメラから処理対象の斜め画像である対象斜め画像を取得する取得工程と、算出工程及び取得工程の後に、射影変換係数に基づいて、車両の進行方向であるy方向における鉛直画像の上端及び下端に対応する対象斜め画像の一対のy座標に挟まれる対象斜め画像の範囲をトリミング範囲とし、対象斜め画像からトリミング範囲を切り出すトリミング工程と、を備える。
【0009】
本発明者らの知見によれば、斜め画像と射影変換の関係にある鉛直画像のy方向(車両進行方向)の上端と下端との間の範囲に対応する斜め画像における範囲は、画像中央付近で歪みが少なく、且つ、車体が映り込みにくい領域である。したがって、本開示に係る装置及び方法では、まず、車載カメラが路面を撮像することで得られる斜め画像と、当該斜め画像に対応する鉛直画像との間の射影変換係数が算出される。そして、算出した射影変換係数に基づいて、実際にトリミングの対象となる斜め画像である対象斜め画像に対して、y方向における鉛直画像の上端及び下端に対応する一対のy座標に挟まれる範囲がトリミング範囲とされ、切り出される。これにより、トリミングにより得られる成果品の品質が高品質となる。また、数値計算により定量的にトリミングを行うことにより、成果品の品質に対して作業者の経験や能力が介在する余地がなく、成果品の品質が高品質で安定化されて品質のブレが抑制される。なお、射影変換係数の算出に用いられる斜め画像と、トリミングの対象となる対象斜め画像とは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0010】
本開示に係る画像トリミング装置では、処理部は、算出処理において、斜め画像に対して、A点、B点、C点、及び、D点の4点のキーポイントを設定すると共に、4点のキーポイントに基づいて射影変換係数を算出し、処理部は、車両の車幅方向をx方向としたとき、4点のキーポイントのうちのA点とB点とを、x方向を規定するx軸に平行な第1直線上に設定すると共に、4点のキーポイントのうちのC点とD点とを、x軸に平行であると共に第1直線と異なる第2直線上に設定してもよい。この場合、A点とB点、及び、C点とD点のy座標が同一となるので、射影変換係数の算出に係る処理負荷が低減される。
【0011】
本開示に係る画像トリミング装置では、処理部は、算出処理において、C点を、y方向における斜め画像の下端であって、透視投影における消失点と前記A点とを結ぶ消失線上に設定し、D点を、C点とx軸に平行な同一直線上であって、斜め画像におけるx方向の端部に設定し、B点を、透視投影における消失点とD点とを結ぶ消失線上に設定してもよい。この場合、射影変換係数の算出に係る処理負荷がより低減される。
【0012】
ところで、近年、高感度および広いダイナミックレンジを実現した高感度カメラにより夜間撮影や4K動画撮影においても高画質撮影が可能になった。特に、夜間でも4K・8Kなど高解像度カメラによる動画撮影が可能となったことは、日照の影響や人・車の混雑を避けての撮影が可能となるため、車載カメラによる路面状況取得作業の効率化が期待される。一方で、夜間撮影における光源の1つは車のヘッドライトであり、ヘッドライトの照射により斜め画像に明るさの分布が発生する。したがって、車載カメラ画像のさらなる有効利用のためには、夜間の斜め画像の明るさの分布を考慮したトリミングが望ましい。
【0013】
そこで、本開示に係る画像トリミング装置では、処理部は、対象斜め画像がカメラにより夜間に撮像された夜間画像を含む場合に、トリミング処理の後に、トリミング範囲が夜間画像における相対的に明るい明所部に対応するように、トリミング範囲を調整する調整処理をさらに実行してもよい。この場合、夜間に撮像された斜め画像において、その明所部に対応するようにトリミング範囲が調整される。よって、夜間における品質低下が抑制される。
【0014】
本開示に係る画像トリミング装置では、処理部は、調整処理の前において、夜間画像を、最も明るい明所部と、最も暗い暗所部と、明所部と暗所部との間の明るさの薄明部と、に3値化された3値化画像を生成する3値化処理を実行してもよい。この場合、3値化処理によって明所部を適切に抽出したうえで、当該明所部に対応するようにトリミング範囲を調整可能である。よって、夜間における品質低下を好適に抑制可能である。
【0015】
本開示に係る画像トリミング装置では、処理部は、調整処理において、3値化画像のラベリング処理により複数の画素群を規定するラベリング処理と、ラベリング処理の後に、複数の画素群のうちの明所部の候補画素群から、夜間画像の中心を含み、且つラベル面積が最大である候補画素群を抽出する抽出処理と、抽出処理で抽出された候補画素群とトリミング範囲との論理積を取ることにより、少なくともy方向についてトリミング範囲が明所部に対応するようにトリミング範囲を調整する論理積処理と、を実行してもよい。この場合、トリミング範囲を容易且つ確実に調整可能である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、品質のブレを抑制可能な画像トリミング装置、及び、画像トリミング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る画像トリミング装置の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係る画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示されたトリミング工程の具体的な工程を示すフローチャートである。
図4図4は、斜め画像と鉛直画像との関係を示す模式図である。
図5図5は、キーポイントを設定する様子を説明するための図である。
図6図6は、キーポイントの座標を算出する様子を説明するための図である。
図7図7は、対象斜め画像(夜間画像)にトリミング範囲を図示した例を示す。
図8図8は、キャリブレーションを考慮しない場合のトリミング範囲における焦点距離(広角:f=24mm、標準:f=50mm)と俯角の関係を示したものである。
図9図9は、各処理段階における夜間画像を示す図である。
図10図10は、各処理段階における夜間画像を示す図である。
図11図11は、夜間画像にトリミング範囲を表示した状態を示す図である。
図12図12は、路面オルソ画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る画像トリミング装置の一例を示す図である。図1に示されるように、画像処理装置(画像トリミング装置)1は、処理部10を備えている。処理部10は、車両SCに設置されたカメラ110による撮像で得られた画像の処理を行う。車両SCには、車載装置100が設置されている。車載装置100は、カメラ110に加えて、MMS(Mobile Mapping System)に用いられ得る種々の装置を含むことができる。一例として、車載装置100は、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、DMI(Distance Measurement Indicator:走行距離計)、及び、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等を含むことができる。
【0020】
カメラ110は、車両SCの上部に設置され、車両SCの走行する路面を撮像するように斜め下方に向けられている。したがって、カメラ110の撮像により得られる画像は、車両SCの走行する路面の像を含む斜め画像となる。このようなカメラ110によって撮像された画像は、車載装置100の各装置により位置座標が付与された画像とされる。なお、カメラ110は、4K・8K等の高解像度による動画を撮像可能なものとすることができる。この場合、カメラ110により撮像された動画から任意に静止画像を取得することができる。
【0021】
画像処理装置1は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、データ送受信デバイスである通信モジュール、タッチパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ等の出力装置、及び、入力キー、タッチセンサ等の入力デバイスである入力装置等を含むコンピュータシステム(情報処理プロセッサ)として構成されている。画像処理装置1の処理部10及び処理部10の機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に、所定のプログラムを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで、通信モジュール、出力装置、及び入力装置を動作させるとともに、RAM等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0022】
引き続いて、本実施形態に係る画像処理方法について説明する。図2は、本実施形態に係る画像処理方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る画像処理方法は、本実施形態に係る画像トリミング方法を包含する。換言すれば、本実施形態に係る画像トリミング方法は、以下に説明する画像処理方法の一部の工程からなる。
【0023】
図2に示されるように、この画像処理方法では、まず、車両SCに対してカメラ110を設置する(工程S101)。工程S101では、カメラ110の設置に際して、カメラ110の内部標定データが取得され、処理部10に提供される。処理部10は、カメラ110の焦点距離fや、カメラ110の画像サイズ及びセンササイズ等のカメラ諸元等に関するデータを取得することができる。
【0024】
続いて、路面の撮影を行う(工程S102)。より具体的には、車両SCを走行させながらカメラ110により撮影を行うことにより、車両SCの走行する路面を含む走行時撮影動画を取得する。この工程S102では、外部標定データが取得され、処理部10に提供される。処理部10は、カメラ110による撮影点の高さ、カメラ110のおおよその傾きω等に関するデータを取得することができる。
【0025】
続いて、工程S102で得られた走行時撮影動画から画像を取得する(工程S103)。より具体的には、走行時撮影動画から所望のタイミング(フレーム)で静止画像を抽出することにより、位置情報付きの画像を取得する。上述したように、カメラ110は、車両SCの上部に設置されており、路面に向けて斜め下方に向けられている。したがって、ここで取得される画像は、カメラ110が車両SCの走行する路面を撮像することで得られる路面の像を含む斜め画像である。得られた斜め画像は、処理部10に提供される。なお、カメラ110を含む車載装置100で得られたデータを処理部10に提供する際には、無線通信や有線通信を利用してもよし、所定の記録媒体を介してもよい。
【0026】
続く工程では、工程S103で取得された斜め画像に対してトリミング等の画像処理を行う。したがって、工程S103で取得された斜め画像は、画像処理の対象となる対象斜め画像でもある。換言すれば、工程S103では、画像処理装置1の処理部10が、カメラ110から処理対象の斜め画像である対象斜め画像を取得する取得処理を実行することとなる(取得工程が実施される)。そして、続く工程では、画像処理装置1の処理部10が、工程S103で得られた対象斜め画像のトリミング処理を行う(工程S104:トリミング工程)。この点について、より詳細に説明する。
【0027】
図3は、図2に示されたトリミング工程の具体的な工程を示すフローチャートである。図3に示されるトリミング工程は、本実施形態に係る画像トリミング方法の一例である。この画像トリミング方法では、斜め画像から鉛直画像に対応する範囲をトリミング範囲とする。したがって、まず、この点について説明する。
【0028】
図4は、斜め画像と鉛直画像との関係を示す模式図である。図4には、路面RL及び区画線CLが図示されている。図4に示されるように、車両SCに搭載されたカメラ110から撮影される透視投影画像(斜め画像)は、鉛直画像のカメラ中心Oから路面RL上の点Pまでの距離Lを一定に保ち、カメラ110をX軸回りに角度ωだけ回転させてカメラ中心Oの位置で撮影された斜め画像とする。なお、X軸は、車両SCの車幅方向であるX方向を規定する。
【0029】
図4において、Y方向における斜め画像の両端の位置を上端位置O及び下端位置Oとし、Y方向(車両SCの進行方向)における鉛直画像の両端を上端位置V及び下端位置Vとすると、鉛直画像の撮影範囲は斜め画像の中央付近の相対的に狭い範囲となること、及び、後述するように画像中の明所部が画像中央付近であることから、図4に示される環境下における斜め画像の有効利用範囲は、鉛直画像の撮影範囲相当と想定される。
【0030】
また、斜め画像を、鉛直画像を射影変換して得られる画像とすると、斜め画像に対するトリミング範囲は、鉛直画像の上端位置V及び下端位置Vに対応する射影変換後の各y座標で挟まれる斜め画像の範囲となる。一枚の画像の範囲では、画像中央付近が最も歪みが少ない。このため、この画像トリミング方法では、鉛直画像の範囲である上端位置V-下端位置Vを「精度的に信用できる範囲」として、斜め画像におけるトリミング範囲として指定する。
【0031】
以上の理由から、この画像トリミング方法では、斜め画像と鉛直画像との間の射影変換係数を算出する。そのために、まず、キーポイントの設定を行う(工程S201)。より具体的には、計算の簡便性を考慮して、図5の(a)に示されるように、斜め画像において、A点、B点、C点、及び、D点の4点のキーポイントを設定し、写真測量の理論に基づいて定量的なトリミングを可能とする。図5において、y軸方向は車両SCの進行方向であり、車両SCは2車線(車線幅は3m程度)の左側車線を走行するものとする。なお、画像サイズは2S×2Sとする。
【0032】
写真測量では、図5の(b)に示されるように、一般に、撮影点Oの地上座標を(X,Y,Z)とし、点Pに対する地上座標を(X,Y,Z)とし、点Pの像点pに対する写真座標を(x,y)とすると、像点pの写真座標は、焦点距離fを用いて下記式(1)に示す共線条件式より導出される。
【数1】
【0033】
ここで、a11=cosφ・cоsκ、a12=-cosφ・sinκ、a13=sinφ、a21=cosω・sinκ+sinω・sinφ・cоsκ、a22=cosω・cоsκ-sinω・sinφ・sinκ、a23=-sinω・cоsφ、a31=sinω・sinκ-cоsω・sinφ・cоsκ、a32=sinω・cоsκ+cоsω・sinφ・sinκ、a33=cosω・cоsφである。
【0034】
なお、カメラキャリブレーションが予め行われていれば、上記式(1)中のaij、X、Y、Z、及び、焦点距離fは既知量となるが、カメラキャリブレーションが行われていない場合でも、カメラ諸元(焦点距離f、画像サイズ、及び、センササイズ)と、カメラ110のおおよその傾き(角度ω)と、撮影点の高さ(Z)が想定できれば、他のパラメータは0としても本処理は実行可能である。
【0035】
次に、上記の各キーポイントの選定方法、及び、各キーポイントの座標算出方法について具体的に説明する。なお、以下では、各キーポイントに対するZ座標は等しく0とする。
[A点]
【0036】
A点のユークリッド座標における位置は、カメラ位置よりTXだけ左側にあるものとして、この点のX座標XをX-TXとする。次に、A点及びB点をx軸に平行な同一線(第1直線)上に採れば、A点及びB点のy座標はそれぞれ等しい値となる。また、その値をyとすれば、A点に対するY座標は、上記式(1)の第2式から誘導される下記式(2)より算出されれる。さらに、このYを用いれば、A点に対するx座標は、共線条件式を用いて下記式(3)より導出される。
【数2】

【数3】
【0037】
なお、TXは撮影空間内に収まるような概略値であれば良く、厳密な値である必要はない。一方、A点及びB点の位置、すなわち、これらの点のy座標も任意の値であり、例えばx軸上に選んだ場合はy(=y)=0.0mmとするが(yはB点のy座標)、光軸と画面中心とのズレの影響で結果はこの値により若干の影響を受ける。
[C点]
【0038】
一方、C点は、透視投影の特徴から消失点とA点とを結ぶ消失線上にあるものとすると、点CのX座標はA点のX座標に等しく、下記式(4)の関係が成立する。
【数4】
【0039】
さらに、C点を画像下端にとればy=-Sとなり(yはC点のy座標)、C点のY座標は上記式(2)のyの代わりに-Sを用いて下記式(5)より算出される。
【数5】
【0040】
また、C点のx座標はA点のx座標と同様に、上記式(5)で算出されるYを用いれば、共線条件式を用いて下記式(6)により算出される。
【数6】

[D点]
【0041】
次に、D点の位置を画像下端右隅に採れば、D点の写真座標(x,y)は、(S,-S)となる。また、C点及びD点は、x軸に平行な同一線(第1直線と異なる第2直線)上(画像下端)にあるので、そのY座標は、下記式(7)の関係を満たしている。
【数7】
【0042】
さらに、D点に対するX座標は、共線条件式で写真座標(x,y)を与えて、Z=0として下記式(8)より算出される。
【数8】

[B点]
【0043】
そして、B点について、A点及びB点は、x軸に平行な同一直線上に採ってあるので、A点及びB点のy座標及びY座標はそれぞれ等しく、下記式(9)の関係となる。
【数9】
【0044】
また、B点はC点と同じく、透視投影の特徴から消失点と点Dとを結ぶ消失線上にあるものとすると、B点のX座標は、下記式(10)のとおりとなる。
【数10】
【0045】
さらに、B点のx座標は上記にて得られたX及びYを用いて、Z=0のもと共線条件式を用いて下記式(11)より算出される。
【数11】
【0046】
以上により、A点、B点、C点、及び、D点の地上座標及び写真座標が算出される。このように、この画像トリミング方法では、工程S201において、処理部10が、A点及びB点を、x方向を規定するx軸に平行な同一直線上に設定し、C点を、y方向における斜め画像の下端であって、透視投影における消失点とA点とを結ぶ消失線上に設定し、D点を、C点とx軸に平行な同一直線上であって、斜め画像におけるx方向の端部(右隅)に設定し、且つ、B点を、透視投影における消失点とD点とを結ぶ消失線上にさらに設定する。
【0047】
そして、この画像トリミング方法では、工程S201に続いて、処理部10が、上記のとおり各キーポイントの座標を算出する(工程S202)。
【0048】
続く工程では、工程S202で算出した座標に基づいて、処理部10が、斜め画像と当該斜め画像に対応する前記路面の鉛直画像との間の射影変換係数を算出する算出処理を実行する(工程S203、算出工程)。この点について、より具体的に説明する。
【0049】
図6に示されるように、鉛直画像から斜め画像への変換を遂行するためには、鉛直画像上のC’点及びD’点の画像座標を取得する必要がある。C’点のx座標であるx’及びD’点のx座標であるx’については、図6に示されるように下記式(12)の関係が得られる。
【数12】
【0050】
一方、C’点及びD’点のy座標であるy’(=y’)は、A点とB点との間の実長をLとし、画像上の長さをlとし、同様にC点とD点の実長をLとし、画像上の長さをlとすると、下記式(13)のとおりとなるので、下記式(13)により算出されるlyを用いて下記式(14)により算出される。
【数13】

【数14】
【0051】
ここで、射影変換前の4点(A点、B点、C’点、D’点)と射影変換後の4点(A点、B点、C点、D点)の各画像座標を用いて、下記式(15)に示される2次の射影変換式により、射影変換係数(a~a)を求める。
【数15】
【0052】
本実施形態におけるトリミング範囲は、射影変換前の画像(鉛直画像)における上端位置V(y=S)、及び、下端位置V(y=-S)に対応する射影変換後(斜め画像)のそれぞれのy座標で挟まれる斜め画像の範囲であり、それらの座標は、上記式(15)の第2式においてy座標をそれぞれS及び-Sとして算出される。
【0053】
なお、φ=κ=0とすれば、a11=1、a12=a13=0、a21=0、a22=cоsω、a23=sinω、a31=0、a32=sinω、a33=cоsωとなり、さらに、結果はX、Yに影響されないのでX=Y=0とすると、Yは上記式(5)より下記式(16)となる。
【数16】
【0054】
ここで、Zはカメラの位置(高さ)であり、2S×2Sは画像サイズであり、fは焦点距離であり、ωはカメラの傾き(俯角)である。また、A点に対する地上座標Yは、上記式(16)において、S=y=0とすれば、下記式(17)となる。
【数17】
【0055】
一方、A点及びB点に対する地上座標は上記式(8)より下記式(18)となり、さらに、下記式(18)において、ya=yb=0として、上記式(16)~下記式(18)を用いて上記式(13)を整理すると下記式(19)が得られる。
【数18】

【数19】
【0056】
上記式(19)より、C点の鉛直画像上での位置(y’=l)は、撮影高(カメラ110の高さ)には影響されず、俯角である角度ωと焦点距離fとの関数であることが理解される。
【0057】
以上のように、工程S203では、斜め画像と鉛直画像との間の射影変換係数が算出される。続く工程では、処理部10によって、実際の処理対象である任意の斜め画像(対象斜め画像)が取得される(工程S204)。換言すれば、工程S201~S203の各処理は、実際の処理対象の斜め画像でなくてもよく、予め取得されている斜め画像に基づいて予め算出しておくこともできる。なお、本実施形態では、工程S103で対象斜め画像が取得されているため、工程S201~S203の各処理を、実際の処理対象である対象斜め画像を用いて行うこととなる。その場合、この工程S204は工程S201に先立って行われていることとなる。
【0058】
続いて、処理部10が、対象斜め画像におけるトリミング範囲を決定する(工程S205:トリミング処理、トリミング工程)。より具体的には、工程S205では、処理部10が、工程S201~S203により算出された射影変換係数に基づいて、車両SCの進行方向であるy方向における鉛直画像の上端位置V(y=S)、及び、下端位置V(y=-S)に対応する対象斜め画像の一対のy座標に挟まれる対象斜め画像の範囲をトリミング範囲とする。
【0059】
これと共に、処理部10が、夜間画像の調整を行う(工程S206:調整処理)。より具体的には、この工程S206では、処理部10が、対象斜め画像がカメラ110により夜間に撮像された夜間画像である場合に、工程S205で決定されたトリミング範囲が夜間画像における相対的に明るい明所部に対応するように、トリミング範囲を調整する。明所部は、車両SCのヘッドライトにより照明された部分を含む。
【0060】
図7は、対象斜め画像(夜間画像)にトリミング範囲を図示した例を示す。図7の(a)は、カメラキャリブレーション有りの場合を示し、図7の(b)は、カメラキャリブレーションなしの場合を示す。図7においては、薄いグレーの帯状の領域としてトリミング範囲Rtが図示されている。トリミング範囲Rtの決定において初期入力されるのは、A点とB点とを結ぶ線分に対するy座標(y)とA点に対するTX値であり、TX値は概略値であれば良く、さらにその値は結果に影響を及ぼさないのに対して、トリミング範囲Rtはy方向における光軸と画面中心とのズレに影響される。
【0061】
そこで、本実施形態では、対象斜め画像(夜間画像)3値化画像に対して、A点に対するy座標の入力値を画像中央から徐々に(例えば0.5mmずつ)変動させ、取得されるトリミング範囲Rt内における明所部に対応する画素数が最大値となるときのy座標を採用するものとする(この点については後に詳述する)。図7では、以上のトリミング処理によるy=-2.0mmにおけるトリミング範囲Rtが示されている。図7によれば、対象斜め画像における明所部がトリミングされていることが理解される。
【0062】
ところで、図7の(a)は、カメラキャリブレーションの結果(f=24.558mm、Z=2.370m、ω=12°28’19”)を使用したものであるが、図7の(b)は、カメラキャリブレーション無しとして焦点距離は公称値およびカメラ110の高さと傾きは簡易計測の結果(f=24.mm、Z=2.4m、ω=13°)を使用した場合である。図7より、トリミング範囲Rtはカメラキャリブレーションの影響をほとんど受けないことが理解される。言い換えれば、カメラキャリブレーションが行われていない場合でも、カメラ諸元(焦点距離、画像サイズ、センサーサイズ)およびカメラ110のおおよその傾き(角度ω)が想定できれば上記の手法は実行可能である。
【0063】
一方、上述したように、トリミング範囲Rtは焦点距離fおよび俯角の影響を受け、広角レンズに対するトリミング範囲Rtは画角に比例して大きくなる。また、俯角が小さいほどカメラ110は地面に対して水平に近くなるため、トリミング範囲Rtは狭くなる。
【0064】
図8は、キャリブレーションを考慮しない場合のトリミング範囲における焦点距離(広角:f=24mm、標準:f=50mm)と俯角の関係を示したものである。各俯角における上端と下端の挟む範囲がトリミング範囲であり、図中の色付け部分は図7のトリミング範囲Rtに対応させたものである。図8に示されるように、俯角が大きくなるに従いトリミング範囲Rtが広くなることが理解されるが、画像中央部の明所部に着目する場合には俯角10°~15°が適当であると判断される。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る処理により、カメラキャリブレーションの有無にかかわらず定量的トリミングの自動化が可能となるが、その特徴の1つとしては、A点、B点、C点、及び、D点をそれぞれx軸に平行な同一線上に採り、さらにC点及びD点を画面上特徴的に配置することにより、写真測量の理論から各キーポイントの地上座標値および画像座標の算出を可能とした点が挙げられる。また、他の特徴の1つとしては、透視投影画像における幾何学的特徴の利用である。すなわち、C点は消失点とA点とを結ぶ消失線上に存在し、そのX座標はA点に対するX座標と同値になることに注目した点が挙げられる。B点のX座標も同様である。
【0066】
特に透視投影画像における幾何学的特徴の利用によりテクスチャーや特徴点の無い単調な画像に対しても射影変換により斜め画像と鉛直画像の対応付けが可能となり、鉛直画像の上端位置V・下端位置Vに対応する斜め画像におけるそれらのy座標を算出することで、斜め画像におけるトリミングが可能となる。一方、3値化画像においてトリミング範囲Rt内の明所部の占める割合からトリミング範囲Rtが自動的に算出されるため、定量的な決定が可能となる。
【0067】
ここで、工程S206に係る処理部10の調整処理についてより具体的に説明する。図9は、各処理段階における夜間画像を示す図である。図9の(a)は、カメラ110(車載装置100)から入力を受けた夜間画像(夜間照明走行画像)を示す。工程S206では、処理部10は、まず、夜間画像Qlを、最も明るい明所部BPと、最も暗い暗所部DPと、明所部BPと暗所部DPとの間の明るさの薄明部MPと、に3値化された3値化画像Qtを生成する3値化処理を実行する(図9の(b)参照)。このときの3値化としては、例えば大津の多値化法を利用することができる。
【0068】
続いて、図9の(c)に示されるように、処理部10が、3値化画像Qtのラベリング処理により、複数の画素群を規定するラベリング処理を実行する。これと共に、処理部10が、複数の画素群のうちの明所部の候補画素群から、夜間画像Qlの中心を含み、且つラベル面積が最大である候補画素群CUを抽出する抽出処理を実行する。図9の(c)では、明所部の候補画素群CUが薄いグレーで図示された夜間画像QLが図示されている。
【0069】
そして、図10の(a),(b)に示されるように、処理部10が、抽出処理で抽出された候補画素群CUとトリミング範囲Rtとの論理積を取ることにより、少なくともy方向についてトリミング範囲Rtが明所部BPに対応するようにトリミング範囲Rtを調整する論理積処理を実行する。これにより、調整後のトリミング範囲が得られる。図10の(b)では、元の夜間画像Qlに対して、調整前のトリミング範囲Rtと調整後の明所部を考慮したトリミング範囲Rvとが図示されている。
【0070】
図11は、夜間画像にトリミング範囲を表示した状態を示す図である。図11の(a)は、作業者によるトリミング範囲Rmが示されており、図11の(b)は、本実施形態に係る画像トリミング方法により自動的に生成されたトリミング範囲Rvを示されている。図11に示されるように、トリミング範囲Rmでは、フレーム間の縞模様を抑える形状であり、且つ、明るさを確保するための最大限の範囲が設定されている。これに対して、トリミング範囲Rvでは、明るさを確保するための十分な範囲が設定され、トリミング範囲Rmと遜色がないことが理解される。
【0071】
その後、処理部10が、対象斜め画像(ここでは夜間画像Ql)からトリミング範囲Rvを切り出すことによりトリミング処理が完了する。なお、対象斜め画像が夜間画像でない場合、工程S206が省略され、対象斜め画像からトリミング範囲Rtを切り出すこととなる。
【0072】
以上により、本実施形態に係る画像トリミング方法が終了する。本実施形態に係る画像処理方法では、引き続いて、処理部10が画像の射影変換を行う(工程S105)。ここでは、工程S104ですでに対象斜め画像からトリミング範囲Rv(又はトリミング範囲Rt、以下同様)が切り出されていることから、射影変換の対象はトリミング範囲Rv(トリミング済み画像)のみとなる。したがって、対象斜め画像の全体を射影変換する場合と比較して処理負荷が低減される。その後、処理部10が、複数の射影変換後のトリミング済み画像を互いに接合することにより、路面に沿ったオルソ画像(路面オルソ画像)を作成する(工程S106)。
【0073】
図12は、路面オルソ画像を示す図である。図12の(a)は、図11の(a)に示されるトリミング範囲Rmを接合することで生成された路面オルソ画像IAを示し、図12の(b)は、本実施形態に係る画像トリミング方法により自動的に生成されたトリミング範囲Rvを接合することで生成された路面オルソ画像IBを示している。路面オルソ画像IAと路面オルソ画像IBとを比較すると、路面オルソ画像IBではフレーム間の境界が直線的になり、違和感が生じにくくなっている。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置(画像トリミング装置)1、及び画像処理装置1が実施する画像トリミング方法では、まず、車載のカメラ110が路面を撮像することで得られる斜め画像と、当該斜め画像に対応する鉛直画像との間の射影変換係数が算出される。そして、算出した射影変換係数に基づいて、実際にトリミングの対象となる斜め画像である対象斜め画像に対して、y方向における鉛直画像の上端位置V及び下端位置Vに対応する一対のy座標に挟まれる範囲がトリミング範囲Rtとされ、切り出される。これにより、トリミングにより得られる成果品の品質が高品質となる。また、数値計算により定量的にトリミングを行うことにより、成果品の品質に対して作業者の経験や能力が介在する余地がなく、成果品の品質が高品質で安定化されて品質のブレが抑制される。なお、射影変換係数の算出に用いられる斜め画像と、トリミングの対象となる対象斜め画像とは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0075】
また、本実施形態に係る画像処理装置1では、処理部10は、算出処理において、斜め画像に対して、A点、B点、C点、及び、D点の4点のキーポイントを設定すると共に、4点のキーポイントに基づいて射影変換係数を算出する。特に、処理部10は、車両SCの車幅方向をx方向としたとき、4点のキーポイントのうちのA点とB点とを、x方向を規定するx軸に平行な第1直線上に設定すると共に、4点のキーポイントのうちのC点とD点とを、x軸に平行であると共に第1直線と異なる第2直線上に設定する。このため、、A点とB点、及び、C点とD点のy座標が同一となるので、射影変換係数の算出に係る処理負荷が低減される。
【0076】
また、本実施形態に係る画像処理装置1では、処理部10は、算出処理において、C点を、y方向における斜め画像の下端であって、透視投影における消失点とA点とを結ぶ消失線上に設定し、D点を、斜め画像におけるx方向の端部に設定し、B点を、透視投影における消失点とD点とを結ぶ消失線上に設定する。この場合、射影変換係数の算出に係る処理負荷がより低減される。
【0077】
また、本実施形態に係る画像処理装置1では、処理部10は、対象斜め画像がカメラ110により夜間に撮像された夜間画像を含む場合に、トリミング処理の後に、トリミング範囲Rtが夜間画像における相対的に明るい明所部に対応するように、トリミング範囲Rtを調整する調整処理をさらに実行する。このため、夜間に撮像された斜め画像において、その明所部BPに対応するようにトリミング範囲Rtが調整される。よって、夜間における品質低下が抑制される。
【0078】
また、本実施形態に係る画像処理装置1では、処理部10は、調整処理の前において、夜間画像Qlを、最も明るい明所部BPと、最も暗い暗所部DPと、明所部BPと暗所部DPとの間の明るさの薄明部MPと、に3値化された3値化画像Qtを生成する3値化処理を実行する。このため、3値化処理によって明所部BPを適切に抽出したうえで、当該明所部BPに対応するようにトリミング範囲Rtを調整可能である。よって、夜間における品質低下を好適に抑制可能である。
【0079】
さらに、本実施形態に係る画像処理装置1では、処理部10は、調整処理において、3値化画像Qtのラベリング処理により複数の画素群を規定するラベリング処理と、ラベリング処理の後に、複数の画素群のうちの明所部の候補画素群から、夜間画像Qlの中心を含み、且つラベル面積が最大である候補画素群CUを抽出する抽出処理と、抽出処理で抽出された候補画素群CUとトリミング範囲Rtとの論理積を取ることにより、少なくともy方向についてトリミング範囲Rtが明所部に対応するようにトリミング範囲Rtを調整する論理積処理と、を実行する。このため、トリミング範囲Rtを容易且つ確実に調整可能である。
【0080】
以上の実施形態は、本開示に係る画像トリミング装置及び画像トリミング方法の一形態を説明したものである。したがって、本開示に係る画像トリミング装置及び画像トリミング方法は変形され得る。
【0081】
例えば、上記実施形態では、処理部10が、工程S201において、A点、B点、C点、D点の4つの特徴的なキーポイントを設定することにより、射影変換係数の算出に係る処理負荷の低減を図っていた。しかし、キーポイントの選定方法については、上記実施形態に限定されずに任意である。
【0082】
さらに、上記実施形態では、処理部10が、工程S206において、トリミング範囲Rtを明所部BPに応じて調整したが、対象斜め画像が夜間画像でない場合には、工程S206を省略することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…画像処理装置(画像トリミング装置)、10…処理部、110…カメラ、BP…明所部、DP…暗所部、MP…薄明部、CU…候補画素群、Rt…トリミング範囲、Rv…トリミング範囲、Ql…夜間画像、Qt…3値化画像。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図12