(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166323
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】領域登録方法及び領域登録システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303K
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157211
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2021012745の分割
【原出願日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2020026687
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】白藤 大貴
(57)【要約】
【課題】一度設定された枕地領域などの大きさを任意の広さに変更することによって、作業者が希望する作業領域や枕地領域を再度設定する、つまり登録領域を設定し見直すことができる領域登録方法及び領域登録システムを提供する。
【解決手段】走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定することと、前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定することと、前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定することと、前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更することと、を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定することと、
前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定することと、
前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定することと、
前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更することと、
を実行する領域登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行作業車両が走行しながら作業する作業経路などを生成して設定する際に、オペレータ或いはユーザなどが、希望する枕地領域などを適宜に設定し直して変更・登録することができる領域登録方法及び領域登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自律走行作業車両が走行する作業経路を生成するためには、走行領域として180度の方向転換などを行うために設ける枕地領域と、この枕地領域の内側に配される作業領域などと、を予め区分けして登録しておく必要がある。このような走行経路の生成方法に関しては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この特許文献1には、作業車両の車両情報などから作業行程数を決定することで枕地領域を設定し、枕地領域の大きさに応じて作業領域が設定される方法が記載されている。ここでの枕地領域の設定方法においては、車両情報から枕地領域を設定されるが、作業車両の安全性が確保される幅と作業車両の旋回可能な幅とを確保することができる範囲を最小範囲とする、枕地領域が自動的に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように枕地領域の大きさが自動的に決定されると、必然的に作業領域の大きさも自動的に決定されてしまい、オペレータ或いはユーザなど(以下、これらをまとめて「作業者」と呼ぶことにする。)の思い通りに枕地領域と作業領域を設定することはできていなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、一度設定された枕地領域などの大きさを任意の広さに変更することによって、作業者が希望する作業領域や枕地領域を再度設定する、つまり登録領域の設定を見直すことができる領域登録方法及び領域登録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る領域登録方法は、走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定することと、前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定することと、前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定することと、前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更することと、を実行する方法である。
【0008】
本発明に係る領域登録システムは、走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定する車両情報設定部と、前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定する作業領域設定部と、前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定する枕地領域設定部と、前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更する変更部と、を備えるシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自律走行作業車両とGPS衛星と基準局を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る自律走行作業車両とGPS衛星と基準局を示す制御ブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る遠隔操作装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る自律走行作業車両の基準となる各部位の長さなどの諸元を示す説明図である。
【
図5】
図5は、圃場データを取得するための行程を示す説明図である。
【
図6】
図6は、基準経路の走行可能な方向を示す説明図である。
【
図7】
図7は、圃場における作業範囲と枕地と走行経路を示す説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る自律走行作業車両が作業開始位置へ近づくときの状態を示す説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る変更部での枕地幅などの変更作業の際の操作画面を示す説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る変更部での枕地幅などの変更作業の際の操作例を示す第1実施例のフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、従来の自動枕地幅の設定に伴う設定走行経路の不適格性を示す説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る変更部での枕地幅などの変更作業の際の操作例を示す第1の別の実施例のフローチャートである。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る変更部での枕地幅などの変更作業の際の操作例を示す第1の別の実施例(設定値が小さすぎる場合)のフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る変更部での枕地幅などの変更作業の際の操作例を示す第1の別の実施例(設定値が大きすぎる場合)のフローチャートである。
【
図15】
図15は、本発明の第1の別の実施形態に係る変更部での変更作業の際の操作画面を示す説明図である。
【
図16】
図16は、本発明の第1の別の実施形態での作業エリアの設定方法を示す説明図であり、(a)は自律走行作業車両の走行軌跡を示し、(b)は設定された作業エリアを示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の第1の別の実施形態において設定された作業エリアでの自律走行作業車両の走行経路を示す説明図である。
【
図18】
図18は、本発明の第2の実施形態に係る変更部での作業領域の変更作業の際の操作画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
本実施形態の領域登録システムを採用した自律走行作業車両では、無人で自動走行可能な自律走行作業車両1にトラクタを使用し、この自律走行作業車両1(以下、「トラクタ1」と呼ぶことがある)に作業機24としてロータリ耕耘装置が装着されている構成のもので説明する。但し、本発明では、作業車両はトラクタ1に限定するものではなく、コンバイン等でもよく、また、作業機はロータリ耕耘装置に限定するものではなく、畝立て機や草刈機やレーキや播種機や施肥機やワゴン等であってもよい。
【0012】
初めに、
図1、
図2において、トラクタ1の全体構成について説明する。このトラクタ1は、ボンネット2内にエンジン3が内設され、ボンネット2の後部のキャビン11内にダッシュボード14が設けられ、ダッシュボード14上に操向操作手段となるステアリングハンドル4が設けられている。ステアリングハンドル4の回動により操舵装置を介して前輪9の向きが回動される。
【0013】
トラクタ1の操舵方向は、操向センサ20により検知される。操向センサ20は、角度センサからなり、前輪9の回動基部に配置される。操向センサ20により得られた検出値は制御装置30に入力される。
【0014】
前記ステアリングハンドル4の後方に運転席5が配設され、運転席5下方にミッションケース6が配置されている。ミッションケース6の左右両側にリアアクスルケース8が連設され、リアアクスルケース8には車軸を介して後輪10が支承されている。変速手段44は、制御装置30と接続されている。後輪10の回転数は、車速センサ27により検知され、走行速度として制御装置30に入力される。
【0015】
ミッションケース6内には、PTOクラッチやPTO変速装置が収納されている。PTOクラッチは、PTO入切手段45により入り切りされるようになっているとともに、PTO入切手段45は、制御装置30と接続されており、PTO軸への動力の断接を制御可能としている。
【0016】
前記エンジン3を支持するフロントフレーム13には、フロントアクスルケース7が支持されているとともに、フロントアクスルケース7の両側に前輪9が支承されており、ミッションケース6からの動力が前輪9に伝達可能に構成されている。前輪9は、操舵輪となっており、ステアリングハンドル4の回動操作により回動可能となっている。この前輪9は、操舵駆動手段となるパワステシリンダからなる操舵アクチュエータ40により左右操舵回動可能となっている。操舵アクチュエータ40は、制御装置30と接続され、自動走行制御されて駆動される。
【0017】
制御装置30には、エンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ60が接続され、エンジンコントローラ60には、エンジン回転数センサ61や水温センサや油圧センサ等が接続され、エンジンの状態を検知できるようにしている。エンジンコントローラ60では、設定回転数と実回転数から負荷を検出し、過負荷とならないように制御するとともに、後述する遠隔操作装置100にエンジン3の状態を送信して表示手段となるディスプレイ102で表示できるようにしている。
【0018】
トラクタ1のダッシュボードに設ける表示手段49には、燃料の残量を表示する燃料計などが設けられ、制御装置30と接続されている。そして、制御装置30から遠隔操作装置100に燃料残量に関する情報が送信され、遠隔操作装置100のディスプレイ102に燃料残量と作業可能時間が表示される。また、ダッシュボード14上には、エンジンの回転計や燃料計や油圧等や異常を示すモニタや設定値等を表示する表示手段49が配置されている。
【0019】
また、トラクタ1の機体後方に、作業機として、作業機装着装置23を介してロータリ耕耘装置24が昇降自在に装設させて耕耘作業を行うように構成している。前記ミッションケース6上には昇降シリンダ26が設けられ、昇降シリンダ26を伸縮させることにより、作業機装着装置23を構成する昇降アームを回動させてロータリ耕耘装置24を昇降できるようになっている。昇降シリンダ26は、昇降アクチュエータ25の作動により伸縮され、昇降アクチュエータ25は、制御装置30と接続されている。
【0020】
制御装置30には、衛星測位システムを構成する移動受信機33が接続されている。移動受信機33には、移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38が接続されている。一方、移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38は、キャビン11上に設けられる。移動受信機33には、位置算出手段を備えており、測位した緯度と経度を制御装置30に送信し、現在位置を把握できるようにしている。
【0021】
トラクタ1は、機体の姿勢変化情報を得るためにジャイロセンサ31、および進行方向を検知するために方位センサ32を具備しており、制御装置30と接続されている。但し、GPSの位置計測から進行方向を算出できるので、方位センサ32を省くことができる。
【0022】
ジャイロセンサ31は、トラクタ1の機体前後方向の傾斜(ピッチ)の角速度、機体左右方向の傾斜(ロール)の角速度、および旋回(ヨー)の角速度、を検出するものである。このジャイロセンサ31は、制御装置30に接続され、上記三つの角速度に係る情報を制御装置30に入力する。
【0023】
方位センサ32は、トラクタ1の向き(進行方向)を検出するものである。この方位センサ32は制御装置30に接続されており、機体の向きに係る情報を制御装置30に入力する。
【0024】
このようにして制御装置30は、上記ジャイロセンサ31、方位センサ32から取得した信号を姿勢・方位演算手段により演算し、トラクタ1の姿勢(即ち、向き、機体前後方向及び機体左右方向の傾斜、旋回方向)を求める。
【0025】
(位置情報の取得方法)
次に、トラクタ1の位置情報を、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いて取得する方法について簡単に説明する。
【0026】
GPSを用いた測位方法としては、種々の方法が可能であるが、本実施形態では測定精度の高いRTK-GPS測位方式を採用する。
【0027】
本実施形態においては、トラクタ1に、移動局となる移動受信機33と移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38が配置され、基準局となる固定受信機35と固定GPSアンテナ36とデータ送信アンテナ39が圃場の作業の邪魔にならない所定位置に配設される。
【0028】
トラクタ1に配置された移動GPSアンテナ34は、GPS衛星37・37・・・からの信号を受信する。この信号は移動受信機33に送信され測位される。そして、同時に基準局となる固定GPSアンテナ36でGPS衛星37・37・・・からの信号を受信し、固定受信機35で測位し、移動受信機33に送信し、移動局の位置を決定する。こうして得られた位置情報は制御装置30に送信される。
【0029】
トラクタ1における制御装置30は、GPS衛星37・37・・・から送信される電波を受信して移動受信機33において設定時間間隔で機体の位置情報を求めるとともに、ジャイロセンサ31及び方位センサ32から機体(作業車両1)の変位情報および方位情報を求め、これら位置情報と変位情報と方位情報に基づいて、機体が予め設定した走行経路Rに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、変速手段44等を制御する。
【0030】
また、トラクタ1には、障害物センサ41が配置されて制御装置30と接続されており、障害物に接触しないようにしている。例えば、本実施形態の障害物センサ41は、制御装置30と接続し、障害物が設定距離以内に近づくと走行を停止させるように制御している。
【0031】
また、トラクタ1には、機体周囲を撮影するカメラ42が搭載され、制御装置30と接続されている。カメラ42で撮影された映像は、作業者が携帯する遠隔操作装置100のディスプレイ102に表示されるようになっている。
【0032】
カメラ映像はディスプレイ102で常時または選択的に表示したり、トラクタ1に設けた表示手段49で表示したりすることが可能である。
【0033】
遠隔操作装置100は、詳細は後述するが、トラクタ1の走行経路Rを登録・設定したり、トラクタ1を遠隔操作したり、トラクタ1の走行状態や作業機24の作動状態を監視したり、作業データを記憶したりするものである。
【0034】
さらに、遠隔操作装置100とトラクタ1は、無線で相互に通信可能に構成しており、これらトラクタ1と遠隔操作装置100には、通信するための送受信機110及び送受信部104がそれぞれ設けられている。送受信部104は、遠隔操作装置100に一体的に構成されている。通信手段は、例えばWiFi等の無線LANで相互に通信可能に構成されている。トラクタ1と遠隔操作装置100との間で通信を行うときには、通信妨害(ウイルスの感染等も含む)や混信等を避けるための方策がなされる。例えば、独自のプロトコルや言語等を用いることができる。
【0035】
(遠隔操作装置)
遠隔操作装置100は、
図3に示すように、指などで画面に触れることで操作可能なタッチパネル式の操作画面(以下、「タッチパネル」と呼ぶことがある)101と、この操作画面101の各種スイッチなどを液晶画面で表示する液晶表示部(ディスプレイ、或いはLCDという場合もある。)102と、登録情報などを格納・保存する記憶部(メモリ)103と、トラクタ1との送受信を行う送受信部104と、これらの制御を行う制御部(CPU)105と、作業領域WA内に走行経路(或いは、作業経路R)を設定する経路生成部105Aと、報知部106と、図示外のバッテリやカメラ等を備える。
【0036】
操作画面101には、作業領域WAとして登録するために必要となる車両(トラクタ1など)に関する各種データを入力して設定する車両情報設定部101Aと、作業しようとする圃場H(走行領域)の作業領域WAとして登録するために必要となる各種データを入力して設定する作業領域設定部101Bと、作業領域WAの外側に配され、走行領域内の作業領域WAを除いた枕地領域をトラクタ1の情報に基づいて設定する枕地領域設定部101Cと、トラクタ1が作業を開始するべき位置を設定する作業開始位置設定部101Eと、作業領域などとして登録するために入力した各種データについてそのデータ変更を行うことが可能となる変更部101Dと、を備えている。枕地領域は、旋回を含む第1枕地領域と、旋回を含まない第2枕地領域とによって構成されている。
【0037】
なお、枕地領域設定部101Cとしては、第1枕地領域と第2枕地領域との何れか一方のみの領域を設定する場合も含むものとする。
【0038】
また、ディスプレイ102には、トラクタ1側のカメラ42で撮影した周囲の画像やトラクタ1の状態、作業の状態やGPSに関する情報(測位情報)、遠隔操作装置100とトラクタ1との通信状況(例えば、良好・不良の表示、または、電波強度や通信速度)、トラクタ1との位置関係等を表示できるように構成しており、作業者が監視できるようにしている。
【0039】
経路生成部105Aは、制御部105で演算したデータによって、作業領域WA内での走行経路Rを設定するものであり、その走行経路Rは、例えば
図11や
図17に示すように、ディスプレイ102の画面上に直線状のラインで表示される(但し、トラクタ1による旋回部分などでは略U字などに表示される)。
【0040】
報知部106は、入力された枕地領域幅(枕地幅)の値、作業行程数などについて、経路生成部105Aが作業領域WA内に作業経路や走行経路Rを設定することができない場合には、作業者が恣意的に入力した値若しくは作業行程数を受け付けないことを、作業者にブザー音やランプの点灯、メッセージの表示で知らせるようになっている。また、報知部106は、入力された枕地領域幅(枕地幅)の値若しくは作業行程数に応じた大きさの枕地領域においてトラクタ1が旋回できない場合に、前記枕地領域幅の値若しくは作業行程数を受け付けないことを作業者に報知する。従って、これを知った作業者は、その後、再度、変更部101Dにより該当するデータを変更して登録し直させることができるように構成されている。
【0041】
なお、このトラクタ1での作業に関するデータとしては、作業経路(即ち、目標経路または走行経路R)、現在位置、作業行程から計算される枕地領域までの距離、残りの作業経路、作業行程数等であり、作業経路(或いは走行経路R)などもディスプレイ102に表示できるようにしている。
【0042】
GPSに関する情報(測位情報)は、トラクタ1の実位置となる経度や緯度、衛星の補足数や電波受信強度等である。
【0043】
遠隔操作装置100のディスプレイ102には、カメラ42で撮影した周囲の画像の他、トラクタ1の状態や予め設定された作業経路(或いは走行経路R)等も表示することが可能である。
【0044】
また、トラクタ1は、遠隔操作装置100により遠隔操作可能としている。即ち、ディスプレイ102には、詳細は後述するが、各種のスイッチ等を表示して、それを指でタッチすることで、トラクタ1の緊急停止、一時停止、或いは再発進等を操作できるようにしている。つまり、遠隔操作装置100から送受信部104、送受信機110、制御装置30を介して、エンジンコントローラやアクセルアクチュエータや変速手段44やPTO入切手段45等を制御し、作業者が容易にトラクタ1を遠隔操作できるものである。
【0045】
前述したように、本実施形態のトラクタ1には、概略構成として、(トラクタ1の位置を測位する)位置算出手段を備える移動受信機33と、操舵装置を作動させる操舵アクチュエータ40と、変速手段44と、エンジン3の回転制御手段となるエンジンコントローラ(ECU)60と、これらを制御する制御装置30とを備えており、このトラクタ1を、制御装置30に記憶させた走行経路R(
図7及び
図8参照)に沿って自律走行させる。
【0046】
一方、本発明に係る自律走行作業車両が採用する領域登録システムについては、本実施形態のトラクタ1を所望の圃場Hにおいて自律走行を行わせるために必要となる各種データの登録を、トラクタ1自体に備える図示外の入力装置で、或いは遠隔操作装置100のタッチパネル101を用いて行うものである。この遠隔操作装置100としては、前述したように、本実施形態では、可搬可能な携帯・携行用として使用可能なタブレットタイプのものが用いられている。
【0047】
なお、トラクタ1にトラブルが生じたりした場合には、トラクタ1の近傍または良く見える位置で遠隔操作装置100を作業者が操作したり確認したりでき、トラブル等の処置も容易に行うことができる。
【0048】
また、遠隔操作装置100には、ディスプレイ(LCD)102を有するタッチパネル式のタブレットで構成している。また、この遠隔操作装置100のディスプレイ102には、トラクタ1の走行状態やエンジン3の状態、作業機24の状態、トラクタ1との位置関係を表示するので、作業者は視覚により容易にトラクタ1の状態を把握でき、トラクタ1に異常が発生しても迅速に対応することができる。
【0049】
また、ディスプレイ102に設けたインターフェースを構成するタッチパネル101には、トラクタ1についての各種情報を設定する車両情報設定部101Aと、作業領域を設定する作業領域設定部101Bと、枕地領域設定部101Cと、作業開始位置設定部101Eと、これらの設定情報を変更可能とする変更部101Dとが設けられている。また、さらに、このディスプレイ102には、トラクタ1の後述する目標走行経路(設定された走行経路R)、現在位置、枕地領域までの距離、作業時間、完了までの作業時間、及び作業経路などをディスプレイ102に表示可能に構成されており、作業時における走行状態や作業経過等が容易に認識でき、作業計画も立て易くなる。
【0050】
また、前記ディスプレイ102には、GPS情報(測位情報)を表示する構成となっており、衛星からの受信状態を把握でき、GPS衛星からの信号が途絶えた場合等での対処が容易にできる。
【0051】
また、前記トラクタ1には、前述のように機体周囲を撮影するカメラ42が備えられており、カメラ42で撮影した映像をディスプレイ102にて表示可能としたので、離れた位置でトラクタ1の周囲の様子を容易に認識でき、障害物があったとき等において容易に対処できる。
【0052】
(所望圃場での目標走行経路Rの作成方法)
次に、トラクタ1の目標走行経路Rの作成について説明する。なお、目標走行経路が作成された後は、設定登録された走行経路Rとする。なお、制御装置30は、トラクタ1の走行・作業制御、記憶装置30aに記憶するように構成されている。
【0053】
目標走行経路は、作業形態に合わせて生成される。作業形態としては、例えば、トラクタ1のみの単独走行作業、自律走行収穫作業車(コンバイン)と随伴搬送車両等とによる複合収穫作業等、各種あるが、本実施形態では作業機であるロータリ耕耘装置24を備えたトラクタ1での走行経路の生成方法について説明する。
【0054】
以下、トラクタ1により自律走行しながら各種の耕耘作業などを行う、自動作業システムの走行経路の生成方法について、説明する。また、生成方法に沿った経路生成作業や設定操作は、遠隔操作装置100の経路生成部105Aで行うようにしているが、トラクタ1の表示手段49で行うことも可能とする。
【0055】
なお、遠隔操作装置100のディスプレイ102上での設定値の入力や選択は、原則的には、以下に示すように、ディスプレイ102に順次設定画面が表示され、記憶部103のROM等に格納されている手順に沿いながら、間違いや設定忘れが生じないように行う構成であるので、作業者にとっても簡単に操作でき、確実かつ漏れのない設定や入力ができるように構成されている。
【0056】
1.圃場外形登録
最初に、例えば
図5乃至
図8に示すように、圃場Hの位置と作業範囲及び作業を行う走行経路Rを設定するために、圃場Hの四隅(A、B、C、D、または、変曲点)にトラクタ1を位置させて、測位する行程を行う。
【0057】
トラクタ1を出入口Eから圃場内に入り進行させ、入口に最も近い一つの隅(角)Aに移動する。そして、自律走行作業車両1を圃場外形における短辺または長辺と平行となるように位置させて測位し、第一隅部データ(緯度と経度)として記憶する。
【0058】
次に、トラクタ1を次の隅Bに移動させて、圃場外形と平行となるように約90度方向転換して測位し、第二隅部データとして記憶する。そして、同様に、次の隅Cに移動して第三隅部データを取得して記憶し、次の隅Dに移動して第四隅部データを取得して記憶する。
【0059】
このようにして、一つの隅Aから順番に一筆書きのように直線で隅(B、C、D)を結ぶことにより、圃場の形状を確定し、圃場データとして取得する。但し、圃場の形状が変形(異形)圃場である場合には、四隅以外の隅位置や変曲点位置のデータを取得して、圃場データを確定する。例えば、三角形であれば三つの隅を、五角形であれば五つの隅の位置データを取得し記憶する。
【0060】
なお、データの取得については、一例として、例えば次のような手順及び条件(プロトコル)で実行・取得することができる。
【0061】
i)圃場Hの隅部は下位概念で、変曲点は上位概念であるため、変曲点を順次測位して位置データを取得し一周することで、圃場データを取得することができる。
ii)また、最外周を走行して得られた圃場外周データの内側の領域でのみ、走行経路Rを作成することができ、はみ出すと、エラーとして走行経路Rの作成はできないようにしている。
iii)また、隅部データを直線で結んだ際に、直線が交差した場合は圃場データとして認識しないようにしている。これは、隅または変曲点が抜けている可能性が高いからである。
iv)また、圃場データの作成において、インターネットや地図メーカ等が公開している地図データから圃場データを取得することを禁止しており、前述の現地で測位した位置データのみ採用を許可するものとしている。
【0062】
このようにして、実際の作業で走行させたときに、誤差により圃場外に出てしまうことを防止している。
【0063】
更に、圃場の周囲には、例えば取水口や排水口が設けられていたり、境界を示す杭や石等が配設されていたり、樹木が入り込んで生えていたりする場合がある。これらは直線状に走行した場合に邪魔となる。そこで、これらは障害物を避けて圃場外形の登録を行うようにしている。
【0064】
2.作業開始位置及び終了位置の設定
また、圃場データに、作業開始位置および終了位置を設定または選択できるようにしている。
【0065】
すなわち、遠隔操作装置100が備えた作業開始位置設定部101Eにより、作業開始位置や作業終了位置は、作業者の好みの位置に設定することができる。
【0066】
3.基準走行開始方向の選択
基準走行開始方向を選択する工程となる。
【0067】
基準走行開始方向は、回り作業や往復作業の作業開始位置Xから作業終了位置までの進行方向や、作業終了位置から出口までの経路(作業エリアHAの外側の作業方向)を選択する。具体的には、
図6に示すように、基準走行開始方向は、右回りRで作業を開始して終了するか、或いは、左回りLで作業を開始して終了するかを設定する。この設定は、ディスプレイ102上で矢印や目印等を表示させてそれをタッチする等して、簡単に選択できるようにしている。
【0068】
4.枕地領域幅と作業領域の設定
次に、枕地領域幅と作業領域を設定する工程となる。
【0069】
図7に示すように、第1枕地領域HBの幅Wb(以下、「第1枕地領域幅Wb」)は、例えば作業機をロータリ耕耘装置24とした場合、耕耘幅W1(
図4参照)などから求められる。具体的には、例えば耕耘幅W1+チェーンケース24aの幅W2(=作業幅W)を入力し、作業幅Wに周回行程数nを乗じた値によって設定される。但し、第1枕地領域幅Wbは、作業エリアHAにおけるトラクタ1が作業する進行方向(長手方向)と平行な方向の長さとする。なお、
図7に示す第1枕地領域幅Wbは、例えば、ハンドルを前後方向に切り返しせずに旋回させるなどとするような場合に、マージンを持たせて旋回させる必要があるため、最小旋回半径よりも大きくしなければならない。
【0070】
そこで、作業機(本実施形態ではロータリ耕耘装置24)を装着した状態の自律走行作業車両(トラクタ1)の最小旋回半径は、予め記憶装置30aに記憶させておくことで、この最小旋回半径よりも小さな値は、設定時において入力できないようにしている。
【0071】
第1枕地領域幅Wbが決定すれば、作業領域の大きさも自動的に設定されるように構成されている。こうして、
図7に示すように、圃場データから得られる作業エリアHAは、略四角形となるようにしており、この作業エリアHAが遠隔操作装置100のディスプレイ102に表示される。この作業エリアHAにおいて、更にトラクタ1が進行する作業方向の前後両側に第1枕地領域HBを設定する。
【0072】
なお、その他の作業機を装着した場合においては、作業機の全長や条の幅等が考慮されるので、第1枕地領域幅Wbは任意の長さを数値で入力することも可能としている。枕地領域を往復して作業を行う場合や、枕地領域を含む作業範囲の周囲を螺旋状に周回して作業を終了する場合もあるので、第1枕地領域HBにおける旋回方向も設定できるようにしている。
【0073】
他の実施形態として、枕地領域の大きさ(幅)は、作業領域が設定された後に設定されてもよい。例えば、作業領域設定部101Bは、作業者がトラクタ1を走行させた走行軌跡に基づいて作業領域を設定し、枕地領域設定部101Cは、設定された作業領域に基づいて枕地領域を設定する。この実施形態の詳細については、後述の<第1の別の実施形態>欄において説明する。
【0074】
5.目標走行経路Rの設定
上記の数値や選択肢を遠隔操作装置100に備えたインターフェースを構成するタッチパネル101の各種ボタンなどで入力して設定する。すると、遠隔操作装置100に備えた経路生成部105A(トラクタ1側の制御装置30で行ってもよい)が、自律走行可能なトラクタ1が作業エリアHAで順次往復直進作業を行うとともに第1枕地領域HBで反転する旋回を行うことができるように、自動的に走行経路Rを生成していく。
【0075】
6.作業条件を設定
走行経路Rの生成工程を経ると、次に、作業条件を設定する工程となるが、ここではその詳細説明は省略する。
【0076】
7.作業者がトラクタ1を運転し作業開始位置Xに移動
最後に、上記設定が終了し、走行経路Rおよびこの走行経路Rに沿った作業工程が生成されると、作業を開始するために、作業者が実際にトラクタ1を運転して作業開始位置Xに移動させる。そして、作業者が遠隔操作装置100を操作して作業を開始する。
【0077】
なお、作業を開始するには、トラクタ1の開始条件が整うことが条件となっている。この作業開始条件は、トラクタ1の制御装置30に記憶され、遠隔操作装置100の図示外の作業開始手段をオンすると、制御装置30は所定の作業開始条件を満たしているか判断する。本実施形態の作業開始手段は、遠隔操作装置100の開始ボタンや開始スイッチ等で構成しているが、この開始ボタンや開始スイッチ等はトラクタ1に設けてもよい。
【0078】
なお、上述した所望の圃場での走行経路Rの設定登録作業については、後述する本発明の領域登録システムによる領域の登録を完了させた後に、圃場Hの一端(作業開始位置X)から他端(作業終了位置)にかけてトラクタ1を走行させ、圃場面での具体的な走行経路Rの登録作業を行うようにしてもよい。
【0079】
(領域登録方法)
次に、本実施形態に係る領域登録システムについて、
図9乃至
図13を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、遠隔操作装置100が領域登録処理の一部又は全部を実行する領域登録方法の発明、又は、当該領域登録方法の一部又は全部を遠隔操作装置100に実行させるための領域登録プログラムの発明であってもよい。また、コンピュータ(例えば一又は複数のプロセッサー)が前記領域登録処理を実行してもよい。例えば、本発明の領域登録方法は、コンピュータが、走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定することと、前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定することと、前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定することと、前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更することと、を実行する方法である。
【0080】
[第1実施例]
図9に示す本発明の領域登録システム(以下、これを「第1実施例」と呼ぶことがある)では、遠隔操作装置100(
図1乃至
図3参照)のディスプレイ102の、領域登録のためのメニューを表示した(インターフェースである)操作画面101が、タッチパネルで構成されている。
【0081】
この操作画面(以下、これをタッチパネル101と呼ぶことがある。)には、左半分領域に所望の圃場Hの領域が一部表示されているとともに、右半分領域には、指などでのタッチ操作で作動する選択スイッチS1~S4が表示・形成されている。また、この操作画面101の下部領域には、作業行程数入力(行程数入力モード)と枕地幅指定入力(数値入力モード)とのいずれかを選択し、どちらのモードでデータ入力を行うかを切替操作するための切替えボタンB1,B2が表示・形成されているとともに、その右側には、メニューのページを前後頁に移行させるために、前進タブT1及び後進タブT2が表示・形成されている。
【0082】
選択スイッチS1は、これに触れるなどの操作で選択させることができる(これを「第1モード」とする)。この第1モードが選択されたときに設定される登録内容は、まず、第1枕地領域と第2枕地領域の枕地幅を最小値に指定することで、枕地領域が設定されるとともに、圃場内の枕地領域を除く領域が作業領域として設定され登録される。
【0083】
このとき、予め登録させてある作業車両1及び作業機(本実施形態ではロータリ耕耘装置24)の機種での情報に基づき、耕耘幅W1(
図4参照)が一義的に決定され、かつ、登録された作業領域WAの広さから、作業車両1で耕耘する作業領域WAでの作業行程数も、自動的に算出されて設定・登録される。
【0084】
選択スイッチS2も、これに指で触れるなどの操作で選択させることができる(これを「第2モード」とする)。この第2モードが選択されたときに設定される登録内容は、第1枕地領域と第2枕地領域の枕地幅を作業幅Wの倍数に設定させるように指定することである。ここで作業機であるロータリ耕耘作業装置24にはサイドドライブ式のものを使用しており、このときの作業幅Wを、耕耘幅W1とチェーンケース24aの幅W2との合算で定義してある。また、圃場内の枕地領域を除く領域が作業領域WAとして設定され登録される。
【0085】
なお、ここで圃場Hが横長矩形の形状とすると、縦方向に作業車両1が往復移動しながら耕耘作業を行うようになる。ところで、このときの枕地幅は、圃場の形状に依存するが、一般的に、左右両端側のサイドマージンである枕地での幅(つまり、枕地幅)と、上下両端側の第1枕地領域での幅(つまり、第1枕地幅Wb)とが異なる場合が多いが、どちらの幅も、後述する耕耘幅の倍数であり、これら2種の枕地幅を、この第2モードでの枕地幅としてそれぞれ登録する。
【0086】
なお、また選択スイッチS1の場合と同様に、予め登録させてある作業車両1及び作業機(本実施形態ではロータリ耕耘装置24)の機種での情報に基づき、耕耘幅W1(
図4参照)が一義的に決定されるので、登録された作業領域WAの幅及び作業幅Wから、作業車両1で耕耘する作業領域WAでの往復作業行程数も、自動的に算出されて設定・登録される。
【0087】
選択スイッチS3も、これに指で触れるなどの操作で、選択させることができる(これを「第3モード」とする)。この第3モードが選択されたときに設定される登録内容は、第2モードの場合と同様、第1枕地領域と第2枕地領域が作業幅Wの倍数の幅で設定されるとともに、圃場内の第2枕地領域(HC)及び第1枕地領域(HB)を除く領域が、作業領域WAとして設定され登録される。
【0088】
また、ここでも、圃場Hが横長矩形の形状とすると、縦方向に作業車両1が往復移動しながら耕耘作業を行うようになるが、このときの枕地幅は、圃場の形状に依存するが、一般的に、左右両端側のサイドマージンである第2枕地領域での枕地幅と、上下両端側の第1枕地領域での枕地幅Wbとが異なる場合もあるので(どちらも、後述する耕耘幅の倍数である)、これら2種の枕地幅の最小公倍数(LCM)を、この第3モードでの設定幅として登録する。
【0089】
なお、この第3モードでも、第1、第2モードの場合と同様に、予め登録させてある作業車両のトラクタ1及び作業機(本実施形態ではロータリ耕耘装置24)の機種での情報に基づき、耕耘幅W1(
図4参照)が一義的に決定されるので、登録された作業領域WAの広さから、作業車両1で耕耘する作業領域WAでの往復作業行程数も、自動的に算出されて設定・登録される。
【0090】
選択スイッチS4も、これに指で触れるなどの操作で、領域幅を自由に設定登録させることができる(これを「第4モード」とする)ものであり、
図3に示す変更部101Dの操作部(インターフェース)として機能するようになっている。このように、第4モードが選択されたときに設定される登録内容は、第1乃至第3モードの場合とは異なり、第1枕地領域と第2枕地領域の枕地幅や作業行程数などを作業者などが任意に、つまり恣意的に数値入力して設定登録させることが可能である。但し、第1枕地領域と第2枕地領域の枕地幅の広さには、一定の制限があり無制限に狭くは設定できない。同じく、作業行程数についても、例えば、最大50行程という制約もある。
【0091】
具体的には、第1枕地領域と第2枕地領域のそれぞれの幅(枕地幅)を作業者が任意に設定登録することが可能となる。また、枕地幅の設定においては、作業行程数の入力若しくは幅の数値を入力することで設定できる。さらに、入力作業行程数の値を枕地幅の数値として演算することができ、その逆として、枕地幅の数値を入力作業行程数の値に演算することもできる。
【0092】
(領域設定登録の具体的な手順)
次に、主に、
図9乃至
図11を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る領域登録システムについて説明する。但し、既に所望圃場での目標走行経路Rの作成方法で説明してあるように、予め次の項目は既に登録済みであるものとする。なお、説明の便宜上、作業行程数の入力と枕地幅の数値の入力が前後関係にあるように記載するが、作業行程数の入力若しくは枕地幅の数値の入力のいずれによっても設定することは可能である。また、
図9にある切替ボタンB1およびB2に触れることによって、作業行程数および枕地幅の数値のそれぞれによって設定された値を確認することが可能となる。
(1)本実施形態では、耕耘対象となる圃場Hに関する情報(例えば、広さ・形状など)については、遠隔操作装置100の作業領域設定部101Bで、トラクタ1の実走などにより、既に登録されているものとする。
(2)また、作業車両としてトラクタ1は、作業機にロータリ耕耘装置24を使用しているものであり、これらのトラクタ1及びロータリ耕耘装置24に関する諸元から、耕耘幅W1及びチェーンケース24aの幅W2(
図4参照)が一義的に決定されている。従って、作業幅W(=W1+W2)についても、既に決定されている。
そのため、タブレットタイプの遠隔操作装置100の車両情報設定部101Aでは、これらの情報(作業幅Wやトラクタ1の最小旋回半径など)が制御部105を介して記憶部103に既に格納(登録)されているものとする。
(3)また、遠隔操作装置100の作業開始位置設定部101Eにより、走行経路Rの作業開始位置X(
図8参照)についても、既に決定されて記憶部103に格納・保存されているものとする。なお、この作業開始位置Xについても、変更部101Dを介した作業開始位置設定部101Eによる操作により、制御部105を介して(一定の領域的な制約はあるが)恣意的に変更可能である。
【0093】
目標走行経路Rは、作業領域内に生成されるが、作業領域は枕地領域の大きさによって決定される。従来、枕地領域の大きさは、前述の第1モードから第3モードの選択によって、作業幅と作業行程数の最小値により自動的に決定されていた。このように、作業領域は枕地領域の大きさによって自動的に決定され、作業領域の大きさを変更することができない制約が生じるため、作業開始位置(
図8参照)や終了位置を変更することは可能であるが、より柔軟に作業者が所望する作業開始位置を設定することができなかった。そこで、枕地領域の大きさを作業者が任意に設定することができるようにすることによって、作業者が所望する作業開始位置を設定することを実現する。
【0094】
図10は、第1の実施形態に係る変更部101Dでの枕地幅などの変更作業の際の操作例を示す第1実施例のフローチャートである。初めに、枕地幅を指定させるメニューの頁、即ち、
図9に示すように、ディスプレイ102において、入力用のボタンやスイッチなどが表示されているタッチパネルの画面を表示させる(第1ステップSA1)。
【0095】
そして、この画面上で、作業者が選択スイッチS4を選択するか否かを判断する(第2ステップSA2)。
【0096】
そして、作業者がこの選択スイッチS4を選択する場合には、この選択スイッチS4を操作し、第4モードに設定させる。即ち、作業者は選択スイッチS4を指などでタッチするとともに、例えば切替えボタンB1をタッチして選択する。これにより、画面上の第1枕地領域及び第2枕地領域における行程数がそれぞれ入力可能な状態になる(第3ステップSA3)。
【0097】
次に、作業者は第2枕地領域と第1枕地領域に対する希望の作業行程数若しくは枕地幅の数値を数字入力する。例えばここでは、作業者は第1枕地領域での作業行程数が2、第2枕地領域での作業行程数が4と、指定して入力する。こうして、第1枕地領域と第2枕地領域の値の設定の後、
図9の前進タブT1を操作することで、作業時の車速や旋回時における車速を設定する作業設定画面へと遷移する。その後、設定項目の最終確認の後、目標走行経路Rが生成される(第4ステップSA4)。
【0098】
なお、この作業行程数の入力メニューのところで、作業者は例えば切替えボタンB2に触れることによって、枕地幅の数値(m)の入力メニューに切り替えることができ、数値による設定・変更も行うことができる。また、例えば作業幅Wが2mの場合に、第1枕地領域幅を4.5mとすると、作業行程数は、4.5(m)/2(m)=2.25(行程)となることから整数とならない。このような場合、切り上げて3行程となるので、枕地領域での作業行程数が3と表示される。なお、ここまでの演算作業は、遠隔操作装置100の制御部105が、記憶部103の各種データに基づき演算し、演算により得られた数値を画面上に表示される。
【0099】
また、作業経路Rが生成されると、作業者は、その作業開始位置Xや作業終了位置に問題(不都合)がないかを確認するため、適宜の操作により、例えば前進タブT1に触れて画面を切り替えることで、作業経路Rを遠隔操作装置(タブレット)100のディスプレイ102に表示させる。そして、その表示された作業経路Rの作業開始位置Xなどに問題がないかを作業者が判断する(第5ステップSA5)。例えば、
図11Aのようにトラクタ1と作業経路Rとを重畳して表示させることによって作業者自身が作業開始位置X1や作業終了位置に問題が無いか確認することができる。
【0100】
そして、作業開始位置Xや作業終了位置などに問題がないと判断した場合には、これで作業経路Rの生成作業が終了したとして、ここまでの一連の作業を終了する。
【0101】
一方、作業者は、作業開始位置Xなどに何らかの問題があると判断した場合には、第2ステップSA2へ戻り、再度、これまでの作業をやり直す。そこで、作業者は、例えばメニュー画面上の選択スイッチS4をタッチすることで、枕地領域幅の設定画面を表示させ、枕地領域幅について作業行程数や数値を入れ直すことで、再度の設定登録が行える。
図11Bには、再設定後の作業経路R及び作業開始位置X2を示している。このように、再度上述の作業を行うことにより、作業者自身が所望する作業開始位置に変更することが可能になる。
【0102】
なお、第2ステップSA2で、第4モードを選択しない場合には、後述するその他のモードを選択し、そのモードでの作業を行う(第6ステップSA6)。
【0103】
[第2実施例]
次に、本発明の他の領域登録システム(以下、これを「第2実施例」と呼ぶことがある)について、
図12などを参照しながら具体的に説明する。
【0104】
なお、この第2実施例では、第1実施例とは異なり、
図9に示した第1モードから第3モードのいずれかによって自動的に設定された枕地幅の値について、再度、作業者によって任意の数値に変更するケースについて説明する。
【0105】
なお、第2実施例でも、第1実施例と同様、予め次の項目、即ち作業幅W、トラクタ1の最小旋回半径など、圃場に関する情報(例えば、広さ・形状など)、走行経路Rの作業開始位置X(
図8参照)などについては、既に記憶部103に格納・登録されているものとする。
【0106】
初めに、枕地幅を指定させるメニューの頁、即ち、
図9に示すようなディスプレイ102の画面を表示させて(第1ステップSB1)、第1モードから第3モードの中から第1モードが選択された場合(第2ステップSB2)、第3ステップSB3へ移行する。
【0107】
例えば、第1モードから第3モードの中から作業者が第1枕地領域と第2枕地領域を最小値に設定する第1モードを選択した場合、それぞれの枕地領域の値が自動的に入力される(第3ステップSB3)。なお、この場合、
図11Aにあるように、旋回を含む第1枕地領域の幅は、作業車両が旋回することができる旋回幅と安全マージン(1m程度)によって決定される。また、旋回を含まない第2枕地領域の幅は、作業車両の走行に必要な幅と安全マージン(1m程度)によって決定される。
【0108】
次に、自動的に入力された第1枕地領域の幅と第2枕地領域の幅によって目標走行経路Rを生成する(第4ステップSB4)。次に、目標走行経路Rにおいて、作業開始位置Xが作業者の所望する位置に設定されているか否かを判断する(第5ステップSB5)。
【0109】
そして作業開始位置Xが作業者の所望する位置に設定されている場合には、ここで作業経路の作成作業を終了することができるが、作業開始位置Xなどが所望の位置に設定されていない場合、第2ステップSB2へ戻る。そして、作業者は、第1モードから第3モードのいずれかを選択した場合、
図9の画面にて第1枕地領域と第2枕地領域の幅を変更することができる。
【0110】
作業者は、第1枕地領域と第2枕地領域の幅の値を設定すると、実施例1と同様に、
図9の前進タブT1を操作することで、作業時の車速や旋回時における車速を設定する作業設定画面へと遷移する。その後、設定項目の最終確認の後、目標走行経路Rが生成される。
【0111】
一方、第2ステップSB2でNOと判断した場合、つまり、第1モードから第3モードの何れも選択を希望せず、第4モードによって作業者が枕地領域の幅設定を行いたい場合には第6ステップSB6へ移行する。この場合においては、作業者が任意に第1枕地領域と第2枕地領域の幅の値を入力することができる。例えばここでは、作業者は、第2枕地領域での作業行程数が2、第1枕地領域での作業行程数が4と、指定して入力する。そして、作業者は第4モードを選択したい場合には、選択スイッチS4をタッチする(第7ステップSB7)。
【0112】
ここで、第1実施例の場合と同様の操作を行うことができる。一方、第6ステップSB6で、第1モードと第4モード以外、すなわち第2モード若しくは第3モードを選択した場合には、その他のモードでの処理作業へ移行する(第8ステップSB8)。
【0113】
[第3実施例]
次に、本発明の他の領域登録システム(以下、これを「第3実施例」とする)について、
図13および
図14などを参照しながら、具体的に説明する。
【0114】
なお、この第3実施例では、第1、第2実施例とは異なり、遠隔操作装置100の制御部105では、作業者が設定登録した枕地幅に対する作業行程数若しくは幅の数値が、予め設定されている数値に達していない場合と越えている場合とについて説明する。
【0115】
なお、第3実施例でも、第1、第2実施例と同様、予め次の項目、即ち作業幅W、トラクタ1の最小旋回半径など、圃場に関する情報(例えば、広さ・形状など)、走行経路Rの作業開始位置X(
図8参照)などについては、既に記憶部103に格納・登録されているものとする。
【0116】
ここでは、指定した値が予め設定されている数値に達していない場合について
図13を用いながら説明する。初めに、作業行程数を希望の数値に入力させるメニューの頁、即ち、ディスプレイ102に
図9に示すような画面表示がされる(第1ステップSC1)。そこで、第4モードに設定させるか否かを判断する(第2ステップSC2)。このために、作業者は選択スイッチS4を指などでタッチする。これにより、画面上の第1枕地領域及び第2枕地領域での作業行程数若しくは枕地幅の数値入力が可能な状態になる。
【0117】
次に、作業者は、第2枕地領域と第1枕地領域に対する希望の作業行程数若しくは枕地幅の数値を、数字で入力する(第3ステップSC3)。
【0118】
例えば、作業幅が2mであって、第1枕地領域には2行程が入力され、第2枕地領域には4行程が入力されたとする。
【0119】
ここで、遠隔操作装置100(タブレット)の経路生成部105A及び制御部105がその設定した作業行程数(或いは値)が小さすぎないか(制限値を下回ったか否か)を判断する(第4ステップSC4)。そして、その作業行程数が制限値以上のときには、第5ステップSC5へ移行する。
【0120】
そして、設定した作業行程数によって、作業経路Rが生成される(第5ステップSC5)。
【0121】
そして、作業者は、生成された作業経路Rにおける、作業開始位置Xに問題がないか否かを判断する(第6ステップSC6)。ここで、作業開始位置Xなどについて、問題ないと判断した場合には、領域登録作業を終了する。
【0122】
一方、SC6において、問題ありと判断した場合(NOの場合)、即ち、作業者が、第1枕地領域と第2枕地領域の設定値の変更を希望する場合には、第2ステップSC2へ戻る。これにより、再度第4モードが設定されると、作業者は、作業行程数若しくは枕地幅の数値を入力することができる。他方、作業者が設定値の変更を希望しない場合には、第1実施例と同様に、作業設定画面と設定項目の確認を経て、目標走行経路Rが生成される。
【0123】
なお、第2ステップSC2において、第4モードを設定希望しない場合には、第7ステップSC7へ移行する。そして、この第7ステップSC7では、その他のモードでの処理作業を作業処理完了まで行う。
【0124】
また、第4ステップSC4において、枕地幅の値が設定した値(例えば作業行程数)が制限値を下回った場合には、第1枕地領域及び第2枕地領域における最小幅が自動的に入力・設定される(第8ステップSC8)。即ち、第1枕地領域について、3行程以上でないと走行できないような場合においては、最小値である3行程(枕地幅の値では、6m)が設定される。すなわち、作業者が指定した入力値と異なる値が設定されることになる。
【0125】
この場合、作業者の指定した値に設定されなかったことを通知する画面が表示される(第9ステップSC9)。
【0126】
次の第10ステップSC10では、前述した第1、第2実施例と同様に作業経路が生成される(第10ステップSC10)。
【0127】
その作業経路が生成された後は、第6ステップSC6へ移行し、同様の作業が繰り返される。
【0128】
また、上記した手順処理の流れと同様の作業を行う際に、上記第4ステップSC4において、設定値が小さすぎるのではなく、大きすぎるケースの場合について(予め設定されている上限値を越えているか否かの判断について)、
図14を参照しながら説明する。なお、このケースでは、第1ステップSD1から第3ステップSD3までは、
図13に示す第3実施例における第1ステップSC1から第3ステップSC3までと実質的に内容に違いが無いので、ここまでの説明を省略し、第4ステップSD4から説明する。
【0129】
第4ステップSD4では、指定した値が予め設定された閾値を超えているか否かについて判断する(第4ステップSD4)。そして、予め設定されている閾値を上回ることがなければ、
図13に示す第5、第6ステップSC5、SC6と同様の処理が行われ、所定の作業経路などが設定登録される。
【0130】
一方、第4ステップSD4において、設定した値が大きすぎる場合(閾値を超える場合)には、第8ステップSD8へ移行する。そして、遠隔操作装置(タブレット)100は、設定値が大きすぎるとして、その旨のメッセージが表示される。即ち、例えば、作業幅が2mであって、第1枕地領域と第2枕地領域の作業行程数がそれぞれ50行程と入力されたとする。そして、当該作業行程数によって、作業領域が小さくなり走行経路を生成することができないような場合には、画面上にエラーの表示が行われる。この表示は、例えば画面上にポップアップなどで注意喚起してもよい。
【0131】
なお、この場合には、第2モードSD2へ移行するので、作業者は、そこで第4モードを選択設定すれば、再度数値を入力し直すことができる。
【0132】
また、第2モードSD2において、第4モードを選択したくない場合には、第7ステップSD7へ移行し、その他の希望するモードを設定してそこでの処理を終了するまで行うことができる。
【0133】
その後、作業者が第1枕地領域と第2枕地領域の幅の設定値の変更を行うことによって、実施例1と同様に、作業設定画面と設定項目の確認を経て、目標走行経路Rが生成される。
【0134】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、一度設定された(或いは作業者自身が指定した)枕地領域を、作業者が選択スイッチS4を介して変更部101Dにアクセスし(変更部101Dを操作することにより)、枕地領域(間接的に、作業領域)を所望する値に変更登録することができる。別言すれば、作業者は、選択スイッチS4の操作によって、変更部101Dにより、枕地領域と作業領域の大きさを見直して、設定変更する(或いは設定し直す)ことが可能となる。
【0135】
即ち、従来の走行経路設定画面では、制御部での制御によって、第1枕地幅と第2枕地幅とがそれぞれ自動的に最小の作業行程数となる設定だけしかできなかった。一方、本構成では、例えば設定されていた枕地領域や作業領域などを、作業者が、インターフェースを構成する選択スイッチS4などの操作により、枕地領域設定部101Cを介して、変更部101Dにより所望する値を入力することで、これら領域の広さを自由に変更できるようになる。その結果、作業者が所望する作業開始位置に合わせた走行経路を生成することができる。これにより、作業領域のみならず枕地領域における作業行程数も考慮した走行経路に変更設定することが可能となる。
【0136】
<第1の別の実施形態>
次に、第1の別の実施形態に係る領域登録システムについて、
図15乃至
図17を参照しながら詳細に説明する。
【0137】
前記第1の実施形態では、枕地領域の幅や作業行程数を設定するによって作業領域を設定しているが、第1の別の実施形態では、枕地領域の大きさを設定する前に作業領域を設定する。
図15に示す本発明の領域登録システムでは、遠隔操作装置100´(
図1乃至
図3参照)のディスプレイ102の、領域登録のためのメニューを表示した操作画面101´において、選択スイッチS1~S4の他に、作業領域設定用の選択スイッチS5が設けられている。
【0138】
この選択スイッチS5は、遠隔操作装置100´の作業領域設定部101Bと接続されており、制御部105での作業エリアHAの自動による設定の他に、この選択スイッチS5での操作によりこの作業領域設定部101Bを介して作業領域WAを設定したり、見直して変更してもよい。
【0139】
即ち、枕地幅の設定及び変更に先立ち(或いは枕地幅の設定や変更を行わずに)、作業者が作業車両であるトラクタ1で、設定登録を希望する所望のエリアを走行させ、これらの走行軌跡に関するデータを、無線通信を介して遠隔操作装置100´の作業領域設定部101Bに送り込むことで、作業領域HAを自由に設定させることが可能となっている。なお、この作業領域の設定・変更により、枕地幅も変更されることとなる。
【0140】
なお、これらの作業領域WAの設定・登録作業に当たっては、具体的には、例えば自走するトラクタ1に対して、自動走行の直線モードを用い走行軌跡を作業領域WAとして登録してもよい。或いは手動走行で所望の作業領域WAの境界を走行しながら(
図16の(a)参照)、希望する耕耘エリアとなる作業領域WAの境界部を構成する領域の各地点(例えば、
図16の(b)において、四角形では四隅A´B´C´D´、また5角形、その他の多角形となるときには、各頂点)などを地点登録する。これにより、これらの地点間を直線でつなぐことで、希望する作業領域を形成して、設定登録することができる。
【0141】
即ち、このときの作業領域WAの形成作業にあたっては、トラクタ1の実走(
図16の(a)参照)により得られる、ディスプレイ102の表示画面であるタッチパネル101上に表示された(例えば
図16の(b)に示す圃場の内部領域Sに表示される)各地点A´~D´を、目で確認しながら、図示しないタッチペンなどでこれらの点の間をなぞっていくことで、作業領域の外郭S´を幾何学的に形成できる。これにより、
図17に示すような略四角形(正確にはやや台形に近い)の作業領域WAが簡単に設定できる。従って、この作業領域WAを遠隔操作装置100の作業領域設定部101Bを介して記憶部103に「作業エリアHA」として登録してもよい。
【0142】
また、これ以外に、実際にトラクタ1を走行させずに、例えば選択スイッチS5を操作して選択的に設定した作業領域入力モードにしておいて、希望する作業領域WAを、作業者が画面上で、自由に幾何学的に入力して登録することも可能になる。
【0143】
作業領域WAの登録後、
図17に示すように、実際にトラクタ1を作業領域WAの外周を走行させることによって安全に走行することができるかどうかの確認を行う。これにより、走行の安全性が確認されれば、この作業領域WAを作業エリアHAとして設定登録する。また、ここで、経路生成部105Aにより、
図17に実線で示すような作業経路(又は走行経路R)がディスプレイ102の画面上に表示可能となる。
【0144】
このようにして、枕地幅の設定や変更を行わずに、作業領域HAを設定することが可能となる。これにより、作業領域HAを設定する上での工程数が削減され、効率良く作業を行うことができる。
【0145】
<第2の実施形態>
次に、
図18を参照しながら第2の実施形態について説明する。
【0146】
前記第1の別の実施形態では、作業領域となるエリアの外形を走行することによって作業領域を設定しているが、第2の実施形態では、直線走行した走行軌跡から作業領域を設定する。第2の実施形態での領域登録システムでは、遠隔操作装置100´´(
図1乃至
図3参照)のディスプレイ102のタッチパネル101には、作業領域設定用に選択スイッチS1~S4の他に、選択スイッチS6が追加して設けられている。
【0147】
この選択スイッチS6は、指などで触れることで、作業領域設定部101Bを介して作業領域登録のためのメニューを表示した
図18に示す操作画面101´´が表示される。そこでは、予め自動で作業領域WAを形成してある。
【0148】
また、第2の実施形態でも、例えば先にトラクタ1を実走させ、その走行した直線状の走行軌跡に基づき、作業幅及び作業行程数についてのデータから作業領域WAを形成し登録できるように構成されている。しかし、第1の別の実施形態と異なる点は、第1の別の実施形態は、作業領域WAの外形に沿ってトラクタ1を走行させていたが、第2の実施形態では、直線の走行軌跡のみから作業領域WAを登録する点である。すなわち、直線の走行軌跡と、事前に設定登録された作業幅と、作業行程数とによって作業領域WAを登録することができる。
【0149】
これにより、圃場領域内に2つの作業領域WAを設定登録することが可能となる。例えば、広大な圃場内において異なる農作物をそれぞれの作業領域WAにおいて、生育させることができるようになり、実用上便宜となる。
【0150】
[発明の付記]
本発明の第1の特徴構成は、走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定する車両情報設定部と、前記作業車両が作業を行うための作業領域を設定する作業領域設定部と、前記作業領域の外側に配され、前記走行領域内の作業領域を除いた、旋回を含む枕地領域及び/又は旋回を含まない枕地領域からなる枕地領域を、前記作業車両の情報に基づいて設定する枕地領域設定部と、前記枕地領域設定部で設定された前記枕地領域のうち、前記旋回を含む枕地領域と旋回を含まない枕地領域との双方又はいずれか一方について、これらの大きさを設定変更することができる変更部と、を備えることである。
【0151】
本構成によれば、一度設定された枕地領域や作業領域を、作業者が変更部により所望する値に変更することができる。別言すれば、枕地領域と作業領域の大きさを見直して、設定変更する(或いは設定し直す)ことが可能となる。
【0152】
即ち、従来の走行経路設定画面では、枕地の幅(枕地幅)と枕地旋回の幅(旋回枕地幅)とがそれぞれ最小の行程数となる設定だけしかできなかったが、本構成では、例えば設定されていた枕地領域などを、作業者が変更部により所望する値を入力することで、これら領域の広さを自由に変更できるようになる。その結果、作業者が所望する作業開始位置に合わせた走行経路を生成することができる。これにより、作業領域のみならず枕地領域における作業行程数も考慮した走行経路に変更し、設定することが可能となる。
【0153】
本発明の第2の特徴構成は、前記変更部は、入力される前記枕地領域幅の値若しくは作業行程数に応じて、前記枕地領域の大きさを作業者が変更できるように構成したことである。
【0154】
本構成によれば、第2の特徴構成の場合と同様、枕地領域の大きさ(延いては作業領域の大きさ)を、作業者が所望する値に設定変更することができる。
【0155】
本発明の第3の特徴構成は、入力された前記枕地領域幅の値若しくは作業行程数について、前記作業車両が前記枕地領域において旋回することができない場合には、前記枕地領域幅の値若しくは行程数を受け付けないことを報知する報知部を備えることである。
【0156】
本構成によれば、例えば枕地領域幅が狭すぎると、作業者が入力した値を受け付けないとして、この状況を作業者に報知できるようになる。これによって、作業者はこの状況を看過することなく確実に知ることができる。その結果、例えば再度の設定変更を行うことで、安全な枕地領域に設定変更させることができるようになる。このようにして、トラクタなどの作業車両を、安全な広さに設定し直された枕地領域で、枕地領域から逸脱させることなく安全に自律走行させることが可能となる。
【0157】
本発明の第4特徴構成は、前記作業領域内に走行経路を設定する経路生成部と、入力された前記枕地領域幅の値若しくは作業行程数について、前記経路生成部が前記作業領域内に走行経路を設定することができない場合には、前記枕地領域幅の値若しくは行程数を受け付けないことを報知する報知部を備えることである。
【0158】
本構成によれば、第3の特徴構成と同様にして、作業者の要望により作業領域での領域設定を見直し設定変更させる際に、例えば効率的で安全な走行経路が設定されていない場合には、この状況を作業者に報知することができるようになる。これにより、作業者はこの状況を看過することなく確実に知ることが可能となり、安全かつ効率的な走行経路を設定し直すことができる、といった効果が得られる。
【0159】
本発明の第5特徴構成は、前記作業車両が作業を開始する位置を設定する作業開始位置設定部を備え、前記変更部によって前記枕地領域の大きさが変更された場合、設定された前記作業開始位置を作業者が変更することができるように構成したことである。
【0160】
本構成によれば、枕地領域の大きさを変更することによって、作業者が所望する作業開始位置とすることが可能となる。
【0161】
本発明の第6特徴構成は、前記枕地領域は、自動で設定可能であるとともに、前記すでに自動的に設定されたデータについては、作業者が所定値を入力することによって修正可能であるように構成したことである。
【0162】
本構成によれば、作業者が入力したときのデータだけでなく、自動で入力したデータであっても、作業者が修正できるので、便宜である。
【0163】
なお、本発明の領域登録システムは、自律走行作業車両1及び遠隔操作装置100を含むシステムにより構成されてもよいし、遠隔操作装置100単体により構成されてもよい。すなわち、遠隔操作装置100は、本発明の領域登録システムの一例である。
【0164】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。
【0165】
また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0166】
[発明の付記]
<付記1>
走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定することと、
前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定することと、
前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定することと、
前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更することと、
を実行する領域登録方法。
【0167】
<付記2>
前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の幅若しくは作業行程数を入力する操作を受け付けた場合に、前記枕地領域の大きさを、前記入力された前記枕地領域の幅若しくは作業行程数に応じて変更し、かつ、前記作業領域の大きさを、変更後の前記枕地領域の大きさに応じて変更する、
付記1に記載の領域登録方法。
【0168】
<付記3>
前記入力された前記枕地領域の幅若しくは作業行程数に応じて大きさが変更された前記枕地領域において前記作業車両が旋回することができない場合に、前記入力された前記枕地領域の幅若しくは作業行程数を受け付けないことを報知する、
付記2に記載の領域登録方法。
【0169】
<付記4>
前記作業領域内に走行経路を設定すること、をさらに実行し、
前記入力された前記枕地領域の幅若しくは作業行程数に応じて大きさが変更された前記作業領域内に前記走行経路を設定することができない場合に、前記入力された前記枕地領域の幅若しくは作業行程数を受け付けないことを報知する、
付記2に記載の領域登録方法。
【0170】
<付記5>
前記作業車両が前記作業領域内で作業を開始する位置である作業開始位置を設定すること、をさらに実行し、
前記作業開始位置が設定された後に前記作業領域及び前記枕地領域の大きさが変更された場合に、前記設定された前記作業開始位置を変更する、
付記1乃至4のいずれか1項に記載の領域登録方法。
【0171】
<付記6>
所定条件に基づいて前記枕地領域を自動で設定可能であるとともに、
自動で設定された前記枕地領域について、前記枕地領域の幅若しくは作業行程数が入力されることによって変更可能とする、
付記1乃至5のいずれか1項に記載の領域登録方法。
【0172】
<付記7>
前記作業車両の情報に基づいて前記枕地領域を設定し、
設定された前記枕地領域の設定情報に基づいて前記作業領域を設定する、
付記1乃至6のいずれか1項に記載の領域登録方法。
【0173】
<付記8>
前記枕地領域は、旋回を含む第1枕地領域と旋回を含まない第2枕地領域を含み、
前記入力された前記設定情報に基づいて、前記第1枕地領域及び前記第2枕地領域の少なくともいずれかの大きさを変更する、
付記1乃至7のいずれか1項に記載の領域登録方法。
【0174】
<付記9>
走行領域内を自律走行する作業車両の情報を設定する車両情報設定部と、
前記走行領域に含まれ、前記作業車両が作業を行う作業領域を設定する作業領域設定部と、
前記走行領域に含まれ、前記作業領域の外側に配される枕地領域を設定する枕地領域設定部と、
前記作業領域及び前記枕地領域が設定された後に前記枕地領域の設定情報を入力する操作を受け付けた場合に、入力された当該設定情報に基づいて前記作業領域及び前記枕地領域の大きさを変更する変更部と、
を備える領域登録システム。
【符号の説明】
【0175】
1 自律走行作業車両(トラクタ)
24 作業機(ロータリ耕耘装置)
24a チェーンケース
30 制御装置
30a 記憶装置
42 カメラ
49 トラクタ側での表示手段
100、100´、100´´ 遠隔操作装置(タブレット)
101,101´、101´´ 操作画面(タッチパネル)
101A 車両情報設定部
101B 作業領域設定部
101C 枕地領域設定部
101D 変更部
101E 作業開始位置設定部
102 液晶表示部(ディスプレイ)
103 記憶部(メモリ)
104 送受信部
105 制御部(CPU)
105A 経路生成部
106 報知部
A、B、C、D 圃場の四隅
B1~B3 切替えボタン
E 出入口
H 圃場(走行領域)
HA 作業エリア(登録された作業領域)
HB 第1枕地領域(枕地領域)
HC 第2枕地領域(枕地領域)
R 走行経路
S1~S6 選択スイッチ
T1 前進タブ
T2 後進タブ
W 作業幅(=耕耘幅W1+チェーンケース24aの幅W2)
W1 耕耘幅
W2 チェーンケース幅
WA 作業領域
Wb 旋回枕地幅
X 作業開始地点
Y1、Y2 残余した枕地幅