(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166324
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
A47J27/00 109L
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157293
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2022121902の分割
【原出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】平田 由美子
(72)【発明者】
【氏名】廣田 起子
(72)【発明者】
【氏名】光武 伸一郎
(57)【要約】
【課題】圧力調理等の加熱調理による食材の出来栄えを向上させること。
【解決手段】加熱調理器は、食材を収納する容器と、容器を収納する本体部と、容器の上方に配置され開閉可能な蓋と、容器を加熱する加熱部と、温度を検知する温度検知部と、温度検知部の検知温度に基づいて加熱部を制御する制御部と、ユーザが調理メニューを設定して操作するための操作部と、を備え、制御部は、操作部で設定された第1調理メニューの開始時において、検知温度が第1所定温度以上である場合は、検知温度が第2所定温度以下となるまで、加熱部への通電を停止する待機時間を設け、その後、加熱部への通電を開始して第1調理メニューに応じた所定の設定温度に加熱する加熱調理工程を実行する。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収納する容器と、
前記容器を収納する本体部と、
前記容器の上方に配置され開閉可能な蓋と、
前記容器を加熱する加熱部と、
温度を検知する温度検知部と、
前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部と、
ユーザが調理メニューを設定して操作するための操作部と、を備え、
前記制御部は、前記操作部で設定された第1調理メニューの開始時における前記加熱部への通電を停止した状態の前記検知温度が第1所定温度以上である場合は、前記検知温度が第2所定温度以下となるまで、前記加熱部への通電を停止する待機時間を設け、その後、前記加熱部への通電を開始して前記第1調理メニューに応じた所定の設定温度に加熱する加熱調理工程を実行する、加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1調理メニューの開始時における前記検知温度が前記第1所定温度よりも低い場合は、前記待機時間を省略して前記加熱調理工程を実行する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記蓋で密閉した前記容器の内部を大気圧よりも高い加圧状態とする圧力調理機能を有し、
前記第1調理メニューは、前記圧力調理機能を用いた圧力調理メニューを含む、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1調理メニューとは異なる第2調理メニューを実行する際は、開始時における前記検知温度にかかわらず、前記待機時間を省略して前記加熱調理工程を実行する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記第2調理メニューは、前記食材を低温調理するための低温調理メニュー、前記食材を蒸し調理するための蒸し調理メニュー、前記食材を炒めるための炒め調理メニュー、前記食材を煮詰めるための煮詰め調理メニューのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記加熱調理工程は、前記検知温度を前記設定温度まで昇温させる昇温工程と、前記設定温度で維持する温調工程とを含む、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項7】
ユーザに報知するための報知部を備え、
前記制御部は、前記待機時間を付帯した前記第1調理メニューを実行する場合に、前記報知部に報知を実行させる、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記制御部は、前記待機時間を付帯した前記第1調理メニューを実行する場合であっても、所定条件を満たす場合は前記報知を省略する、請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記所定条件は、前記第1調理メニューが予約調理であるという条件を含む、請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記温度検知部は、前記本体部に設けられ前記容器の温度を検知する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記第2所定温度は、前記設定温度よりも低い、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記第2所定温度は、前記第1所定温度と同じ温度である、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記第2所定温度は、前記第1所定温度よりも低い、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記容器に収納された前記食材を攪拌する撹拌体をさらに備え、
前記制御部は、前記待機時間の間に、前記攪拌体を動作させる攪拌工程を実行する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記制御部は、前記待機時間の間に、前記攪拌工程と、前記攪拌工程の後に前記攪拌体を停止させる非攪拌工程を実行する、請求項14に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食材を容器に収納して加熱調理する加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の加熱調理器は、食材を収納する容器の温度を温度センサで検知し、その検知温度に基づいてヒータ等の駆動を制御して、食材を加熱調理する加熱調理工程を実行する。加熱調理工程では、調理メニューに応じて設定される設定温度に向けて昇温させる昇温工程と、設定温度に到達した検知温度を設定温度付近で維持するようにヒータをON/OFF制御する温調工程を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前回の調理メニューが終了して間もないときに次の調理メニューを実行する場合には、食材の温度は低いにもかかわらず、容器の温度は高温である。そのような状態で調理メニューを実行すると、温度センサの検知温度が高いために昇温工程が早く終わり、加熱調理工程の大半が温調工程となる場合がある。このような場合、ヒータに継続的に通電する昇温工程が短くなることで、食材を十分に加熱することができず、食材の出来栄えが悪くなる可能性がある。
【0006】
特許文献1の加熱調理器を含めて、圧力調理等の加熱調理による食材の出来栄えを向上させることに関して改善の余地がある。
【0007】
従って、本開示の目的は、前記問題を解決することにあって、食材の出来栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本開示の加熱調理器は、食材を収納する容器と、前記容器を収納する本体部と、前記容器の上方に配置され開閉可能な蓋と、前記容器を加熱する加熱部と、温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部と、ユーザが調理メニューを設定して操作するための操作部と、を備え、前記制御部は、前記操作部で設定された第1調理メニューの開始時において、前記検知温度が第1所定温度以上である場合は、前記検知温度が第2所定温度以下となるまで、前記加熱部への通電を停止する待機時間を設け、その後、前記加熱部への通電を開始して前記第1調理メニューに応じた所定の設定温度に加熱する加熱調理工程を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、食材の出来栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の加熱調理器の斜視図(蓋が閉じた状態)
【
図2】実施形態の加熱調理器の斜視図(蓋が閉じた状態)
【
図3】実施形態の加熱調理器の斜視図(蓋が開いた状態)
【
図5】実施形態の加熱調理器の縦断面図(
図1のA-A矢視図)
【
図6A】圧力調理メニューが常温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(比較例/実施例)
【
図6B】圧力調理メニューが高温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(比較例)
【
図6C】圧力調理メニューが高温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(実施例・手動調理)
【
図6D】圧力調理メニューが高温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(実施例・オート調理)
【
図7A】実施形態の加熱調理器における調理時間が長くなる可能性があることを示唆する報知例を示す図
【
図7B】実施形態の加熱調理器におけるカウントダウンの表示例を示す図
【
図8A】煮込み調理メニューが常温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(比較例/実施例)
【
図8B】煮込み調理メニューが高温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(比較例)
【
図8C】煮込み調理メニューが高温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(実施例・手動調理)
【
図8D】煮込み調理メニューが高温スタートするときの温度推移等を示すグラフ(実施例・オート調理)
【
図9】実施形態の加熱調理器が待機時間の間に攪拌工程を実行する場合の制御例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1態様によれば、食材を収納する容器と、前記容器を収納する本体部と、前記容器の上方に配置され開閉可能な蓋と、前記容器を加熱する加熱部と、温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱部を制御する制御部と、ユーザが調理メニューを設定して操作するための操作部と、を備え、前記制御部は、前記操作部で設定された第1調理メニューの開始時において、前記検知温度が第1所定温度以上である場合は、前記検知温度が第2所定温度以下となるまで、前記加熱部への通電を停止する待機時間を設け、その後、前記加熱部への通電を開始して前記第1調理メニューに応じた所定の設定温度に加熱する加熱調理工程を実行する、加熱調理器を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記制御部は、前記第1調理メニューの開始時における前記検知温度が前記第1所定温度よりも低い場合は、前記待機時間を省略して前記加熱調理工程を実行する、第1態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記蓋で密閉した前記容器の内部を大気圧よりも高い加圧状態とする圧力調理機能を有し、前記第1調理メニューは、前記圧力調理機能を用いた圧力調理メニューを含む、第1態様又は第2態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記制御部は、前記第1調理メニューとは異なる第2調理メニューを実行する際は、開始時における前記検知温度にかかわらず、前記待機時間を省略して前記加熱調理工程を実行する、第1態様から第3態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記第2調理メニューは、前記食材を低温調理するための低温調理メニュー、前記食材を蒸し調理するための蒸し調理メニュー、前記食材を炒めるための炒め調理メニュー、前記食材を煮詰めるための煮詰め調理メニューのうちの少なくとも1つを含む、第4態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、前記加熱調理工程は、前記検知温度を前記設定温度まで昇温させる昇温工程と、前記設定温度で維持する温調工程とを含む、第1態様から第5態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、ユーザに報知するための報知部を備え、前記制御部は、前記待機時間を付帯した前記第1調理メニューを実行する場合に、前記報知部に報知を実行させる、第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、前記制御部は、前記待機時間を付帯した前記第1調理メニューを実行する場合であっても、所定条件を満たす場合は前記報知を省略する、第7態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0019】
本発明の第9態様によれば、前記所定条件は、前記第1調理メニューが予約調理であるという条件を含む、第8態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0020】
本発明の第10態様によれば、前記温度検知部は、前記本体部に設けられ前記容器の温度を検知する、第1態様から第9態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0021】
本発明の第11態様によれば、前記第2所定温度は、前記設定温度よりも低い、第1態様から第10態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0022】
本発明の第12態様によれば、前記第2所定温度は、前記第1所定温度と同じ温度である、第1態様から第11態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0023】
本発明の第13態様によれば、前記第2所定温度は、前記第1所定温度よりも低い、第1態様から第11態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0024】
本発明の第14態様によれば、前記容器に収納された前記食材を攪拌する撹拌体をさらに備え、前記制御部は、前記待機時間の間に、前記攪拌体を動作させる攪拌工程を実行する、第1態様から第13態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0025】
本発明の第15態様によれば、前記制御部は、前記待機時間の間に、前記攪拌工程と、前記攪拌工程の後に前記攪拌体を停止させる非攪拌工程を実行する、第14態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0026】
以下、本開示に係る加熱調理器の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0027】
(実施形態)
まず
図1~
図5を参照して、本開示の一実施形態に係る加熱調理器について説明する。
【0028】
図1~
図3はそれぞれ、実施形態に係る加熱調理器2の斜視図であり、
図4Aは、蓋10の内側を示す平面図であり、
図4Bは、本体部8の内側を示す平面図であり、
図5は、
図1のA-A矢視図である。
図1、
図2は、蓋10が閉じた状態を示し、
図3は、蓋10が開いた状態を示す。
【0029】
図1~
図5に示す加熱調理器2は、被加熱物としての食材(図示せず)を加熱調理するための調理器具である。本実施形態の加熱調理器2は、調理メニューごとに動作シーケンスが予めプログラムされた自動調理器として使用可能であり、このような調理器を「オートクッカー」、「マルチクッカー」、「スロークッカー」とも称する。なお、本実施形態の加熱調理器2は、予めプログラムされた動作シーケンスを使用せず、手動調理を行うことも可能である。
【0030】
ユーザが自動調理器として加熱調理器2を使用する際は、
図3に示す容器4の調理空間S1に食材(図示せず)を配置するとともに、
図1、
図2に示す操作表示部6を操作して調理メニューを選択し、加熱調理の実行を決定する。加熱調理器2は、選択された調理メニューの料理(シチュー、カレー、煮物等)に応じて、予め定められたプログラムに従って調理物を加熱調理する加熱調理工程を実行する。
【0031】
以下、本実施形態では加熱調理器2を自動調理器として使用する場合について説明する。
【0032】
本実施形態の加熱調理器2は、調理空間S1を大気圧よりも高い圧力とした加圧状態で食材を調理する「圧力調理機能」を有する。圧力調理機能を実行するために、
図2に示す操作表示部6において、圧力調理を行う圧力調理メニューが選択可能である。操作表示部6は、調理メニューを選択するための調理メニュー選択部として機能する。圧力調理機能に加えて、調理空間S1を大気圧よりも低い圧力とした減圧状態で食材を調理する「減圧調理機能」が選択可能であってもよい。
【0033】
図1~
図5に示す加熱調理器2は、容器4(
図3、
図5)と、容器4を収納する本体部8と、蓋10とを備える。
【0034】
容器4は、上面が開口した底部を有する筒状の容器である。容器4は、調理空間S1を形成し、調理空間S1には攪拌羽根5が設けられる。攪拌羽根5は、容器4に収納された食材を攪拌するための攪拌体の一例である。
【0035】
本体部8は、上面が開口した底部を有する筒状の部材である。本体部8には加熱調理器2を動作させるための各種部品が内蔵されている。例えば、
図4Bに示すように、本体部8の上端部には、蓋10の開閉検知を行うための蓋開閉検知手段150としてのマグネット152が内蔵されている。また
図5に示すように、本体部8の底部側には、容器4を加熱するための加熱部としてのヒータ9と、容器4の温度を検知するための温度検知部としての温度センサ7が内蔵される。
図5に示す温度センサ7は、容器4の底部の温度を検知するように本体部8の中央上部に設けられている。
図5では温度センサ7を簡略化して図示する。
【0036】
図1、
図3に示すように、本体部8は、蓋10を略水平位置から略垂直位置まで回転可能(矢印R1)に軸支する。これにより、蓋10は、上下方向および奥行方向に回動可能である。
【0037】
蓋10は、本体部8および容器4を開閉するための部材である。蓋10には、加熱調理器2を動作させるための各種部品が内蔵されており、例えば
図5に示すように、制御部11が内蔵されている。
図5では制御部11を簡略化して図示する。
【0038】
図3、
図4Aに示すように、蓋10には、蓋10の開閉状態を検知するための蓋開閉検知手段150としての基板154が設けられている。本実施形態の基板154は、磁力を検出可能なホール素子を実装した基板であり、
図4Bに示した本体部8に内蔵されるマグネット152の磁力を検知可能である。基板154は、ホール素子による磁力の検出結果を制御部11に送信し、制御部11は蓋10の開閉状態を判別する。
【0039】
蓋10は、外蓋12と、内蓋14とを備える。外蓋12は、本体部8の上面開口部を開閉するための蓋であり、内蓋14は、容器4の上面開口部を密閉するための蓋である。内蓋14は、外蓋12の内側(下面側)に着脱可能に取り付けられる。
図3では、外蓋12から内蓋14が外れた状態を示し、
図4Aでは、外蓋12に内蓋14が取り付けられた状態を示す。
【0040】
図1、
図2に示すように、外蓋12は、通気口16と、ハンドル201とを備える。
【0041】
通気口16は、容器4の調理空間S1を外部に通気するための開口部である。通気口16は、後述する減圧弁26によって、調理空間S1に連通する連通状態と、連通しない非連通状態が切り替えられる。連通状態では、調理空間S1の圧力は大気圧となり、非連通状態では、調理空間S1は内蓋14によって密閉され、大気圧とは独立した圧力となる。
【0042】
ハンドル201は、蓋10のロック状態/ロック解除状態を切り替えるようにユーザが回転操作するための部材である。ハンドル201は、蓋10の厚み方向に延びる回転軸Axを中心に回転操作される(矢印R2)。蓋10の厚み方向は、蓋10が閉じられた状態(
図1、
図2)では鉛直方向に概ね一致し、蓋10が開いた状態(
図3)では水平方向に概ね一致する。
【0043】
図3、
図4Aに示すように、内蓋14は、内蓋本体部20と、パッキン22とを有する。
【0044】
内蓋本体部20は、内蓋14の本体部に相当する部分であり、大略円板状の形状を有する。内蓋本体部20の外周部にはパッキン22が取り付けられている。パッキン22は、内蓋本体部20の外周部に取り付けられた大略円環状の部材であり、ゴムなどの弾性材料で構成される。蓋10を閉じると、パッキン22が容器4の上端部4Aに当接して調理空間S1を密閉する。
【0045】
内蓋本体部20には、安全弁24と、減圧弁26とが設けられている。
【0046】
安全弁24および減圧弁26はいずれも、内蓋本体部20に取り付けられた弁であり、調理空間S1に露出するように配置される。
図5に示すように、内蓋本体部20の上面側には、通気口16に連通する通気空間S2が設けられている。安全弁24および減圧弁26はそれぞれ、調理空間S1と通気空間S2の連通状態/非連通状態を切り替えるように動作する。
【0047】
安全弁24は、調理空間S1の圧力上昇に応じて自発的に動作する弁である。安全弁24は、調理空間S1を封止する位置に配置されており、調理空間S1の圧力が所定圧力以上に上昇することに応じて封止位置から開放位置に移動する。安全弁24は、調理空間S1が過圧状態となることを防止する。
【0048】
減圧弁26は、主に制御部11の制御によって動作する弁である。減圧弁26は、調理空間S1を封止する封止位置と、大気圧に開放する開放位置との間を移動可能であり、制御部11によって位置制御される。減圧弁26の上方には弁駆動部40が設けられており、制御部11が弁駆動部40を駆動することで、減圧弁26の位置を制御する。減圧弁26は、「圧力開放弁」、「圧力解除弁」と称してもよい。
【0049】
上記構成を有する加熱調理器2は、操作表示部6で設定された調理メニューに応じて、所定の加熱調理工程を実行する。加熱調理器2は、加熱調理工程を実行する際に、温度センサ7の検知温度に基づいて、各調理メニューに応じた設定温度を目標温度としてヒータ9等の駆動を制御する。
【0050】
本実施形態の加熱調理器2が実行する加熱調理工程について、
図6A~
図6Dを用いて説明する。
【0051】
図6A~
図6Dはそれぞれ、比較例や実施例による加熱調理工程での温度推移等を示すグラフである。
図6A~
図6Dでは、横軸に時間を表し、縦軸に温度(左側)とヒータ9の出力(右側)を表す。
図6A~
図6Dにおいて、温度センサ7の検知温度を実線で示し、食材の推定温度を点線で示し、ヒータ9への通電状態を棒グラフで示す。
【0052】
図6Aは、調理メニュー開始時の検知温度が常温である場合の加熱調理工程(比較例/実施例)のグラフである。
【0053】
図6Aに示すように、調理メニュー開始時における検知温度が常温付近の温度T1(例えば20度)である場合、制御部11は、選択された調理メニューに応じて所定の設定温度TS1(例えば118度)を設定した上で、温度センサ7の検知温度を設定温度TS1に向けて上昇させるようにヒータ9へ継続的に通電する昇温工程を実行する。昇温工程では、容器4が強く加熱されるとともに、容器4に収納されている食材も容器4からの伝熱に加えてヒータ9からの輻射熱を受けることで強く加熱される。このため、昇温工程では、温度センサ7の検知温度(実線)と食材の温度(点線)がともに上昇していく。
【0054】
検知温度が設定温度TS1に到達すると、制御部11は、検知温度を設定温度TS1で維持するようにヒータ9のON/OFFを制御する温調工程を実行する。温調工程を開始した後、調理メニューに応じて設定される所定の設定時間に到達すると、温調工程を終了する。これにより、昇温工程と温調工程を含む加熱調理工程が実行される。温調工程の継続時間(設定時間)を手動で設定可能な手動調理の場合、昇温工程から温調工程に移行するタイミングでカウントダウンが開始され、カウントダウンを開始してから設定時間が経過したときに加熱調理工程が終了する。
【0055】
図6Aに示す例では、調理メニュー開始時における検知温度(温度T1)が低いため、ヒータ9に継続的に通電する昇温工程が長くなり、容器4に収納された食材は伝熱・輻射熱によって強く加熱される。
【0056】
図6Bは、調理メニュー開始時の検知温度が高温である場合の加熱調理工程(比較例)のグラフである。例えば、前回の調理メニューを実行してから間もないタイミングで次の調理メニューを実行する場合には、食材の温度は低いにもかかわらず、食材を収容する容器4の温度や温度センサ7の検知温度は相対的に高い場合がある。
【0057】
図6Bに示すように、調理メニュー開始時における検知温度が常温よりも高い温度T2(例えば100度)である場合、昇温工程を実行してヒータ9に通電すると、検知温度はすぐに設定温度T2(例えば120度)に到達する。このため、昇温工程の継続時間は短いまま温調工程に移行し、その後、所定の設定時間だけ温調工程を実行すると、加熱調理工程が終了する。
【0058】
このように昇温工程が早く終わると食材は十分に加熱されず、食材の出来栄えが悪くなる可能性がある。
【0059】
そこで、本実施形態の加熱調理器2では、調理メニュー開始時における温度センサ7の検知温度が予め定めた所定温度よりも高い場合には、加熱調理工程を実行する前にヒータ9への通電を停止する「待機時間」を設けるように制御する。これにより、調理メニュー開始時の検知温度が高い場合でも、待機時間を設けることで加熱調理工程の初期段階における検知温度を低くすることができ、昇温工程の時間を長くとることができる。これにより、食材を輻射熱・伝熱により強く加熱して、食材の出来栄えを向上させることができる。
【0060】
図6Cは、調理メニュー開始時の検知温度が高温である場合の加熱調理工程(実施例・手動調理)のグラフである。
【0061】
図6Cに示すように、調理メニュー開始時における検知温度が常温よりも高い温度T3(例えば100度)であり、温度T3が予め定めた所定温度TP1(第1所定温度、例えば80度)よりも高い場合、本実施形態の制御部11は、ヒータ9への通電を停止する待機時間を設ける。待機時間の間はヒータ9への通電を停止するため、容器4の温度、すなわち温度センサ7の検知温度は下降する。一方で、食材の温度は容器4よりも低温(例えば約20度)であるため、容器4からの伝熱によって緩やかに上昇する。
【0062】
その後、制御部11は、検知温度が予め定めた所定温度TP2(第2所定温度、例えば75度)よりも低い温度となるまで、待機時間を継続する。
図6Cに示す例では、所定温度TP2は所定温度TP1よりも低い温度である場合を例示するが、このような場合に限らず、同じ温度(例えば80度)であってもよい。制御部11は、検知温度が所定温度TP2よりも低くなることに応じて、待機時間を終了し、昇温工程と温調工程を含む加熱調理工程を実行する。
【0063】
調理メニュー開始時の検知温度が所定温度TP1よりも高い場合は、ヒータ9に通電しない待機時間を設けて検知温度を所定温度TP2以下まで下げることで、その後の昇温工程を長くとることができ、食材を強く加熱しやすくなる。これにより、食材の出来栄えを向上させることができる。また、所定温度TP2を設定温度TS3よりも低い温度に設定することで、昇温工程をより確実に実行することができ、食材を強く加熱しやすくなる。
【0064】
図6Dは、調理メニュー開始時の検知温度が高温である場合の加熱調理工程(実施例・オート調理)のグラフである。オート調理の場合、種々の条件に応じて、昇温工程と温調工程を含む加熱調理工程の継続時間(「所定の加熱時間」)を制御部11が自動で決定する。
【0065】
図6Dに示すように、調理メニュー開始時における検知温度が常温よりも高い温度T4(例えば100度)であり、温度T4が予め定めた所定温度TP3(例えば80度)よりも高い場合、制御部11は、ヒータ9への通電を停止する待機時間を設ける。制御部11は、検知温度が予め定めた所定温度TP4(例えば75度)よりも低い温度になることに応じて、待機時間を終了し、昇温工程と温調工程を含む加熱調理工程を実行する。オート調理では、加熱調理工程の開始から所定の加熱時間が経過したタイミングで、加熱調理工程を終了する。
【0066】
図6Dに示すオート料理では、調理メニュー開始時の検知温度が所定温度TP3よりも高い場合はヒータ9に通電しない待機時間を設けることで、
図6Cに示す手動調理の場合と同様の効果を奏することができる。
【0067】
待機時間を付帯した加熱調理工程の場合、待機時間を付帯しない加熱調理工程に比べて、調理終了までの時間が延びるため、本実施形態の制御部11は、操作表示部6において調理時間が長くなる可能性があることを示唆する内容を表示させる。その表示例を
図7Aに示す。
【0068】
図7Aは、待機時間を付帯した加熱調理工程を実行する場合に操作表示部6に表示される表示例を示す概略図である。
図7Aに示す表示例では、操作表示部6の表示画面に、「本体が高温のため、調理時間が長くなることがあります。」というメッセージを表示する。これにより、調理時間が長くなる可能性があることをユーザに事前に知らせることができ、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
図7Aに示すメッセージを操作表示部6に表示するタイミングは例えば、操作表示部6で調理メニューが選択され、待機時間を付帯した加熱調理工程を実行することが決定された時点(すなわち待機時間の開始時点)である。
【0069】
操作表示部6に表示する内容は、
図7Aに示すメッセージに限らず、調理時間が長くなる可能性があることを示唆するものであれば、任意の内容であってもよい。また、操作表示部6の表示画面にメッセージを表示する場合に限らず、音声で通知する等、任意の方法で報知してもよい。
【0070】
図7Bは、操作表示部6にカウントダウンに関する表示を行う場合の表示例を示す概略図である。
図7Bに示す例では、「圧力調理」の表示と、「加圧中」の表示と、調理終了までの残り時間である「30分」の表示が含まれる。
図7Bに示すようなカウントダウンの表示は、各調理メニューでカウントダウンが開始される時点(例えば、操作表示部6でスタートボタンを押したときや、昇温後に検知温度が所定温度に到達したとき)に表示を開始すればよい。
【0071】
図7A、
図7Bに示す表示内容は一例であり、
図7Aの表示と
図7Bの表示を組み合わせてもよく、他の情報をさらに表示してもよい。
【0072】
図6A~
図6Dに示した制御は、例えば、圧力調理機能を利用する圧力調理メニューに適用される。圧力調理メニューの場合、温調工程に入ると、蒸気の発生量を制限するために、ヒータ9の加熱量を低く抑えるように制御する。圧力調理の場合は、調理空間S1の密閉により熱が逃げにくいので、容器4を所定温度に維持するためには、
図6A~
図6Dに示したように、温調工程に到達後は1回あたりのヒータ9への通電時間を短くするという特有の制御を行なっており、それにより、ヒータ9の加熱量を低く抑えている。ヒータ9の加熱量を低く抑える制御を行うため、昇温工程の時間の長短による食材の加熱度合いへの影響が大きくなる。このため、圧力調理メニューの開始時における検知温度が高い場合は待機時間を付帯した加熱調理工程を実行することで、昇温工程を長くすることによる出来栄え向上効果も大きくなる。
【0073】
なお、
図6A~
図6Dに示す例では、ヒータ9の出力を一定(火力一定)として、1回あたりのヒータ9への通電時間を短くしたが、ヒータ9の通電周期を短くしてもよい。これにより、調理空間S1の圧力を更に上げて、調理時間の短縮を図ることができる。
【0074】
圧力調理を利用する例としては、例えばビーフシチューを作る場合が挙げられる。ビーフシチューを作る場合、例えば以下の手順1~5が実行される。
手順1:容器4を加熱し、高温で肉の表面に焼色をつける。
手順2:人参、玉ねぎなどを追加する(追加後に炒める場合も炒めない場合もあり)。
手順3:他の材料や煮込み用ブイヨンを加える。
手順4:圧力調理の場合は、蓋10を閉めて加圧する。(圧力調理スタート)
手順5:加圧後、ヒータ9の火力を下げて圧力を維持しながら所定時間加熱を続ける。
【0075】
上記手順によれば、手順4において圧力調理が開始されるところ、手順1~3で既に容器4が加熱されているため、容器4の温度が食材の温度に対して相対的に高くなっている。このような状況下で、
図6C、
図6Dに示した待機時間を付帯した加熱調理工程を実行することで、ある程度の長さの昇温工程の時間を確保して、食材をより強く加熱することができ、食材の出来栄えを向上させることができる。
【0076】
本実施形態の加熱調理器2は、圧力調理メニューに限らず、他の種類の調理メニューについても、待機時間を付帯した加熱調理工程を同様に適用する場合がある。その適用例について、
図8A~
図8Dを用いて説明する。
【0077】
図8A~
図8Dはそれぞれ、食材を煮込むための煮込み調理(stewing cook)の加熱調理工程における温度推移等を示すグラフである。「煮込み調理」とは、食材を高温(例えば100度)で加熱調理して煮込むための調理であり、カレーや肉じゃが等の調理のために利用される。
【0078】
図8A~
図8Dはそれぞれ、
図6A~
図6Dに対応しており、
図8Aは、調理メニュー開始時の検知温度が常温である場合の加熱調理工程(比較例/実施例)に対応し、
図8Bは、調理メニュー開始時の検知温度が高温である場合の加熱調理工程(比較例)を示し、
図8Cは、調理メニュー開始時の検知温度が高温である場合の加熱調理工程(実施例・手動調理)を示し、
図8Dは、調理メニュー開始時の検知温度が高温である場合の加熱調理工程(実施例・オート調理)を示す。
【0079】
図8Aに示すように、調理メニュー開始時の検知温度が常温付近の温度T5(例えば20度)である場合、制御部11は、所定の設定温度TS5(例えば100度)に向けて昇温させる昇温工程を実行した後、温調工程を実行する。
図8Aに示す例では、圧力調理とは異なり、調理メニューの開始時に加熱調理工程の継続時間に関するカウントダウンを開始し、カウントダウンの開始から所定の設定時間が経過すると、加熱調理工程を終了する。このような場合に限らず、圧力調理のように、所定の温度に到達して温調工程に移行するタイミングでカウントダウンを開始してもよい。
【0080】
図8Bに示す比較例では、調理メニュー開始時の検知温度が常温よりも高い温度T6(例えば105度)である場合、制御部は、昇温工程を実行することなく、温調工程を実行する。
図8Bに示す例では、調理メニュー開始時の温度T6が設定温度TS6(例えば100度)よりも高い場合を例示する。
【0081】
図8Bに示す例は、調理メニューの開始から温調工程に移行しており、ヒータ9への通電時間の合計はそれほど長くならない。
【0082】
図8Cに示す実施例(手動調理)では、調理メニュー開始時の検知温度が常温よりも高い温度T7(例えば120度)であり、温度T7が予め定めた所定温度TP5(第1所定温度、例えば95度)よりも高い場合、制御部11は、ヒータ9への通電を停止する待機時間を設ける。制御部11は、検知温度が予め定めた所定温度TP6(第2所定温度、例えば95度)よりも低い温度となるまで、待機時間を継続する。
図8Cに示す例では、所定温度TP5、TP6が同じ温度である場合を例示するが、異なる温度であってもよい。制御部11は、検知温度が所定温度TP6よりも低くなることに応じて、待機時間を終了し、昇温工程と温調工程を含む加熱調理工程を実行する。
【0083】
図8Dに示す実施例(オート調理)では、調理メニュー開始時の検知温度が常温よりも高い温度T8(例えば120度)であり、温度T8が予め定めた所定温度TP7(第1所定温度、例えば95度)よりも高い場合、制御部11は、ヒータ9への通電を停止する待機時間を設ける。制御部11は、検知温度が所定温度TP8(第2所定温度、例えば95度)よりも低い温度となるまで、待機時間を継続する。
図8Dに示す例では、所定温度TP7、TP8が同じ温度である場合を例示するが、異なる温度であってもよい。制御部11は、検知温度が所定温度TP8よりも低くなることに応じて、待機時間を終了し、昇温工程と温調工程を含む加熱調理工程を実行する。
【0084】
図8Dに示す例はオート調理であるため、
図8A~
図8Cに示す例とは異なり、加熱調理工程の開始時点から、制御部11が自動で定めた所定の加熱時間に到達したときに、加熱調理工程を終了する。
【0085】
図8C、
図8Dに示すように、ヒータ9に通電しない待機時間を設けることで、
図8Bに示すように待機時間を付帯しない場合とは異なり、昇温工程によって食材を強く加熱しやすくなり、食材の出来栄えを向上させることができる。また、所定温度TP6、TP8をそれぞれ設定温度TS7、TS8よりも低い温度に設定することで、ある程度の長さの昇温工程を確保することができ、食材をより強く加熱しやすくなる。
【0086】
図8Cに示す例では、調理メニュー開始時にカウントダウンを開始するため、待機時間を設けない場合と比べて、トータルの調理時間は長くならない。このため、
図7に示した調理時間が延びることを示唆する内容の報知を行わない。
図8Dに示す例では、加熱調理工程の開始から所定の加熱時間を経過したときに調理終了となるため、待機時間を設けない場合に比べてトータルの調理時間は長くなる。よって、制御部11は、
図7に示した調理時間が延びる可能性があることを示唆する内容を操作表示部6に表示させる。
【0087】
本実施形態の加熱調理器2は、上述した圧力調理メニューや煮込み調理メニューとは異なる調理メニューにおいては、調理メニュー開始時の検知温度が高温であっても、待機時間を付帯しない加熱調理工程を実行する。ここで、加熱調理器2における調理メニューに応じた加熱調理工程の分類について、以下の表1を用いて説明する。
【0088】
【0089】
表1は、調理メニューに応じた加熱調理工程の分類を示す表である。
【0090】
表1では、調理メニューを2つのパターン「A群」、「B群」に分類している。
【0091】
A群に該当する調理メニューは、例えば、圧力系調理メニュー(「圧力調理」/「圧力蒸し」等)と、「煮込み調理」が挙げられる。「圧力蒸し」とは、容器4の内部を加圧状態としながら水蒸気で食材を蒸して調理するメニューである。
【0092】
B群に該当する調理メニューは、「蒸し調理」、「煮詰め調理」、「炒め調理」が挙げられる。「蒸し調理」とは、容器4の内部を加熱して蒸発させた水蒸気により食材を調理するメニューである。「煮詰め調理」とは、食材を煮詰めて(boil down)調理するためのメニューであり、主に別の加熱調理メニューを実行した後の仕上げ調理のために用いられる。「炒め調理」とは、食材を高温(例えば180度)で炒めて(fry)調理するためのメニューである。
【0093】
A群の調理メニューについては、「概要」欄に、「所定温度に下がるのを待ってから通電開始する。」と記載するように、待機時間を付帯した加熱調理工程(表1では「高温シーケンス」と称する。)を実行する。「高温シーケンス」とは、調理開始時に所定温度よりも高い温度だった場合に、所定温度以下だった場合とは異なるシーケンス制御を行なう際の、「高温時特有のシーケンス」を指し、複数のパターンを有する。具体的には、待機時間を付帯した加熱調理工程を有し、第1所定温度よりも高い温度で調理開始した場合には、第2所定温度に下がるのを待ってからヒータ9への通電を開始するというものである。
【0094】
「高温シーケンスの閾値温度」の欄には、高温シーケンスに関する閾値温度を示しており、表1では、待機時間を設けるか否かを判断するための第1所定温度と、待機時間を終了するか否かの第2所定温度をあわせて記載する(すなわち、第1所定温度と第2所定温度が同じ温度である場合を例示)。圧力系調理メニューについては、高温シーケンスの閾値温度は所定温度TP10(例えば80度)であり、煮込み調理メニューについては、高温シーケンスの閾値温度は所定温度TP11(例えば95度)である。
【0095】
A群の調理メニューでは、待機時間を設けることに伴って調理時間が延びる場合(例えば圧力系調理メニュー)と、延びない場合(例えば煮込み調理メニュー)がある。調理時間が延びる場合は、
図7に示した調理時間の延長を示唆する内容を報知すればよく、調理時間が延びない場合は、延長報知を行わなくてもよい。
【0096】
B群の調理メニューについては、高温シーケンスは存在せず、調理メニュー開始時の検知温度にかかわらず、待機時間を付帯しない加熱調理工程を実行する。B群に含まれる「蒸し調理」、「煮詰め調理」、「炒め調理」は、加熱調理工程における昇温工程が短いことによる影響の少ない調理メニューである。これらの調理は、温調の利用により(容器4を狙いの温度に維持することで)調理するというよりも、温調におけるヒータ9のOFF時間を少なくして積極的に通電しながら加熱するという調理であるため、昇温工程の影響が少ない。このため、加熱調理工程に待機時間を付帯しないことにより、調理時間の無用な長期化を防止しつつ、所望の食材の出来栄えを達成できる。
【0097】
なお、B群の調理メニューでは、調理開始時の検知温度が非常に高温の場合は、調理開始を受け付けない場合(例えば「蒸し調理」)と、調理開始時の検知温度が高温か否かに関わらず、調理開始を受け付ける場合(例えば「煮詰め調理」、「炒め調理」)がある。
【0098】
表1に示すような調理メニューの分類方法によれば、調理メニューの目的や仕様に応じて、待機時間を付帯する加熱調理工程(高温シーケンスあり:A群)を実行するか、待機時間を付帯しない加熱調理工程(高温シーケンスなし:B群)を実行するかを分けることで、各調理メニューに適した加熱調理を行うことができる。これにより、所望の食材の出来栄えを達成することができる。
【0099】
ここで、ユーザが選択する調理メニューが、食材の仕上がり時間を指定できる予約調理の場合は、異なる制御を実行してもよい。具体的には、操作表示部6で調理メニューが選択された時点の検知温度が予め設定した所定温度より高い場合であっても、加熱調理工程の開始までに十分な時間があると判断できる場合(所定条件を満たす場合)には、ある程度の長さの昇温工程の時間を確保できるため、待機時間を付帯しない加熱調理工程を実行する。または、待機工程を付帯しても加熱調理の完了が予定時間よりも延びることはないため、調理時間が延びる旨を表示しない。予約調理において待機時間を付帯するか否かは、調理メニューが選択された時点から仕上がり時間までの時間、加熱調理工程における加熱時間、検知温度や設定温度といった温度情報等、任意のパラメータを考慮して決定してもよい。
【0100】
ここで、待機時間においては、ヒータ9に通電しなければ他の構成要素を動作させてもよい。例えば、待機時間の間に、攪拌羽根5を動作させて食材を攪拌させる「攪拌工程」を実行してもよい。攪拌工程を実行する例について、
図9を用いて説明する。
【0101】
図9は、待機時間の間に攪拌工程を実行する場合の制御例を示す概略図である。
【0102】
図9に示す例では、制御部11は、待機時間の間に、攪拌工程と、非攪拌工程を実行する。攪拌工程では、攪拌羽根5を動作させて食材を攪拌させる。非攪拌工程では、攪拌羽根5を動作させずに、食材を攪拌しない(待機のみ)。
【0103】
このような制御によれば、攪拌工程で食材を撹拌することで、食材と容器4の温度差を早くに均一化することができる。これにより、ヒータ9や温度センサ7の位置に依存せずに、温度センサ7が検知する温度の正確性を向上させることができ、待機時間の短縮にもつながる。例えば、食材が硬い状態であっても、攪拌工程で食材をほぐすことで、非加熱状態で調味液を調理物全体になじませることが可能となり、煮崩れの抑制等にも効果がある。また、攪拌工程の後に非攪拌工程を設けて所定時間待機することで、容器4の温度が安定するまで待って、温度センサ9の検知温度の正確性をさらに高めることができる。
【0104】
図9に示す攪拌工程では、攪拌羽根5を連続的に動作させる場合や間欠的に動作させる場合等、任意の態様で動作させてもよく、攪拌羽根5の回転速度や回転方向等も任意に設定してもよい。攪拌工程を実行するタイミングは、待機時間の開始時点に限らず、待機時間における任意のタイミングで実行してもよい。攪拌工程と非攪拌工程は一度ずつ実行する場合に限らず、それぞれ複数回実行してもよい。
【0105】
(作用・効果)
上述したように、本実施形態の加熱調理器2は、食材を収納する容器4と、容器4を収納する本体部8と、容器4の上方に配置され開閉可能な蓋10と、容器4を加熱するヒータ9(加熱部)と、温度を検知する温度センサ7(温度検知部)と、温度センサ7の検知温度に基づいてヒータ9を制御する制御部11と、ユーザが調理メニューを設定して操作するための操作表示部6と、を備え、制御部11は、操作表示部6で設定された第1調理メニュー(A群、B群の調理メニュー)の開始時において、温度センサ7の検知温度が第1所定温度(TP10、TP11)以上である場合は、検知温度が第2所定温度(TP10、TP11)以下となるまで、ヒータ9への通電を停止する待機時間を設け、その後、ヒータ9への通電を開始して第1調理メニューに応じた所定の設定温度に加熱する加熱調理工程を実行する。
【0106】
このような加熱調理器2によれば、第1調理メニューの開始時に高温である場合は、ヒータ9への通電を停止する待機時間を設けて、容器4の温度を所定温度以下に下げてから加熱調理工程を開始することで、加熱調理工程においてヒータ9を連続的に通電する昇温工程を長くとることができる。これにより、食材の加熱を促進することができ、第1調理メニューによる食材の出来栄えを向上させることができる。
【0107】
また、本実施形態の加熱調理器2では、制御部11は、第1調理メニューの開始時における検知温度が第1所定温度(TP10、TP11)よりも低い場合は、待機時間を省略して加熱調理工程を実行する。このような加熱調理器2によれば、第1調理メニューの開始時に低温である場合は、加熱調理工程において昇温工程を自然に長くとれるため、待機時間を省略することで、調理時間の無用な長期化を防止しながら、良好な出来栄えを実現できる。
【0108】
また、本実施形態の加熱調理器2では、蓋10で密閉した容器4の内部を大気圧よりも高い加圧状態とする圧力調理機能を有し、第1調理メニューは、圧力調理機能を用いた圧力調理メニュー(A群の調理メニュー)を含む。このような加熱調理器2によれば、調理メニュー開始時に高温である場合の影響が大きい圧力調理メニューを第1調理メニューに含めることで、食材の出来栄えを効果的に向上させることができる。
【0109】
また、本実施形態の加熱調理器2では、制御部11は、第1調理メニューとは異なる第2調理メニュー(C群、D群の調理メニュー)を実行する際は、調理メニュー開始時における検知温度にかかわらず、待機時間を省略して加熱調理工程を実行する。このような加熱調理器2によれば、調理メニュー開始時に高温である場合の影響が少ないメニューについては、待機時間を設けずに加熱調理工程を実行することが可能となる。
【0110】
また、本実施形態の加熱調理器2では、第2調理メニューは、食材を低温調理するための低温調理メニュー、食材を蒸し調理するための蒸し調理メニュー、食材を炒めるための炒め調理メニュー、食材を煮詰めるための煮詰め調理メニューを含む。このような加熱調理器2によれば、調理メニュー開始時に高温である場合の影響が少ないメニューを第2調理メニューに含めることができる。なお、第2調理メニューは、低温調理メニュー、蒸し調理メニュー、炒め調理メニューおよび煮詰め調理メニューの全てを含む場合に限らず、少なくとも1つを含んでいればよい。
【0111】
また、本実施形態の加熱調理器2では、加熱調理工程は、温度センサ7の検知温度を設定温度まで昇温させる昇温工程と、検知温度を設定温度で維持する温調工程とを含む。このような加熱調理器2によれば、第1調理メニューの際に待機時間を設けることで、加熱調理工程における昇温工程の時間を長くとることができる。
【0112】
また、本実施形態の加熱調理器2では、ユーザに報知するための操作表示部6(報知部)を備え、制御部11は、待機時間を付帯した第1調理メニューを実行する場合に、調理時間の延長を示唆する内容等の報知を操作表示部6に実行させる。このような加熱調理器2によれば、調理時間が長くなることをユーザに知らせる等、加熱調理器2の使い勝手を向上させることができる。なお、調理時間の延長を示唆する内容に限らず、待機時間を付帯することに伴う内容であれば任意の内容を表示してもよい。例えば、「冷却中」、「待機中」、「温度降下待ち」等、任意の内容を操作表示部6に表示して報知してもよい。また本実施形態の操作表示部6は操作部と報知部を兼ねたものであるが、このような場合に限らず、操作部と報知部を別々に設ける場合であってもよい。
【0113】
また、本実施形態の加熱調理器2では、制御部11は、待機時間を付帯した第1調理メニューを実行する場合であっても、所定条件を満たす場合(B群の調理メニューの場合、あるいは予約調理の場合)は報知を省略する。このような加熱調理器2によれば、所定条件を満たすか否かに応じて、調理時間の延長を示唆する報知の実行/省略を制御することで、適切な場面で報知を実行することが可能となる。
【0114】
また、本実施形態の加熱調理器2では、所定条件は、第1調理メニューが予約調理であるという条件を含む。このような加熱調理器2によれば、予約調理である場合に調理時間の延長を示唆する報知を省略する制御が可能となる。
【0115】
また、本実施形態の加熱調理器2では、温度センサ7は、本体部8に設けられ、容器4の温度を検知する。このような加熱調理器2によれば、容器4の温度を検知することで、容器4に収納した食材の温度を精度良く推定することができる。
【0116】
また、本実施形態の加熱調理器2では、第2所定温度は、設定温度よりも低い。このような加熱調理器2によれば、昇温工程をより確実に実行することができ、食材を強く加熱しやすくなる。
【0117】
また、本実施形態の加熱調理器2では、第2所定温度は、第1所定温度と同じ温度である(
図8C、
図8D)。このような加熱調理器2によれば、簡単な制御プログラムを実装することができる。
【0118】
また、本実施形態の加熱調理器2では、第2所定温度は、第1所定温度よりも低い(
図6C、
図6D)。このような加熱調理器2によれば、待機時間を経た場合に検知温度をより低い温度まで下げることができ、昇温工程をより長くとることができる。
【0119】
また、本実施形態の加熱調理器2は、容器4に収納された食材を攪拌する攪拌羽根5(撹拌体)をさらに備え、制御部11は、待機時間の間に、攪拌羽根5を動作させる攪拌工程を実行する。このような加熱調理器2によれば、待機時間の間に食材を攪拌することで、食材と容器4の温度差を少なくして、温度センサ7の検知温度の正確性を向上させることができ、待機時間の短縮にもつながる。
【0120】
また、本実施形態の加熱調理器2は、制御部11は、待機時間の間に、攪拌工程と、攪拌工程の後に攪拌羽根5(攪拌体)を停止させる非攪拌工程を実行する。このような加熱調理器2によれば、容器4の温度が安定するまで待って、温度センサ9の検知温度の正確性をさらに高めることができる。
【0121】
上記実施形態では、加熱調理器2が冷却手段を備えておらず、待機時間において容器4を自然冷却する場合について説明したが、このような場合に限らない。加熱調理器2が冷却手段(ファンやペルチェ素子等)を備える構成とし、待機時間の間に冷却手段を動作させることで容器4を外側から強制冷却してもよい。これにより、調理時間の短縮を図ることができる。
【0122】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0123】
前記実施形態の様々な変形例のうち、任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示は、食品を加熱調理する加熱調理器であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
2 加熱調理器
4 容器
6 操作表示部
7 温度センサ
8 本体部
9 ヒータ
10 蓋
11 制御部