(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016633
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/10 20060101AFI20240131BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B08B3/10 Z
B08B3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118899
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉章
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB03
3B201AB44
3B201BB02
3B201BB12
3B201BB82
3B201BB83
3B201BB92
3B201CA01
3B201CB12
3B201CD11
(57)【要約】
【課題】濯ぎにおいて洗浄対象に異物が付着することを抑制すること。
【解決手段】洗浄装置1は、処理空間を有し、処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められる処理槽2と、処理空間を減圧する減圧装置8と、濯ぎ水Cbから洗浄対象Sに蒸気Ccが供給されるように、濯ぎ水Cbを減圧沸騰させる加熱装置7と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間を有し、前記処理空間の底部に濯ぎ水が貯められる処理槽と、
前記処理空間を減圧する減圧装置と、
前記濯ぎ水から洗浄対象に蒸気が供給されるように、前記濯ぎ水を減圧沸騰させる加熱装置と、を備える、
洗浄装置。
【請求項2】
前記処理空間において前記洗浄対象が前記濯ぎ水の表面よりも上方に配置されるように前記洗浄対象を支持する支持部材を備える、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記処理空間において前記洗浄対象がプレ濯ぎ水に浸けられた状態で前記プレ濯ぎ水が減圧沸騰され、前記プレ濯ぎ水が前記処理槽から排出された後、前記処理槽に供給された前記濯ぎ水が減圧沸騰される、
請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記処理空間において前記洗浄対象が洗浄水に浸けられ、前記洗浄水が前記処理槽から排出された後、前記処理槽に供給された前記濯ぎ水が減圧沸騰される、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記処理空間において前記洗浄対象が前記洗浄水に浸けられた状態で前記処理空間が減圧され、
前記洗浄水に超音波を与える超音波発生装置を備える、
請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記処理空間において前記洗浄対象が前記洗浄水に浸けられた状態で前記洗浄水が減圧沸騰され、
前記洗浄水に超音波を与える超音波発生装置を備える、
請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項7】
処理槽の処理空間の底部に貯められた濯ぎ水を減圧沸騰して、前記減圧沸騰により前記濯ぎ水から発生した蒸気を前記処理空間に配置されている洗浄対象に供給すること、を含む、
洗浄方法。
【請求項8】
前記処理空間において前記洗浄対象が前記濯ぎ水の表面よりも上方に配置される、
請求項7に記載の洗浄方法。
【請求項9】
前記処理空間において前記洗浄対象がプレ濯ぎ水に浸けられた状態で前記プレ濯ぎ水を減圧沸騰することと、
前記プレ濯ぎ水を前記処理槽から排出することと、を含み、
前記プレ濯ぎ水が前記処理槽から排出された後、前記処理槽に供給された前記濯ぎ水が減圧沸騰される、
請求項7に記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記処理空間において前記洗浄対象を洗浄水に浸けることと、
前記洗浄水を前記処理槽から排出することと、を含み、
前記洗浄水が前記処理槽から排出された後、前記処理槽に供給された前記濯ぎ水が減圧沸騰される、
請求項7に記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記処理空間において前記洗浄対象が前記洗浄水に浸けられた状態で前記処理空間を減圧することと、
前記処理空間が減圧された状態で前記洗浄水に超音波を与えることと、を含む、
請求項10に記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記処理空間において前記洗浄対象が前記洗浄水に浸けられた状態で前記洗浄水を減圧沸騰することと、
前記洗浄水が減圧沸騰している状態で前記洗浄水に超音波を与えることと、を含む、
請求項10に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄装置に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような洗浄装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗浄装置において、洗浄対象は、洗浄水により洗浄された後、濯ぎ水により濯がれる。濯ぎにおいて濯ぎ水に含まれる異物が洗浄対象に付着する可能性がある。
【0005】
本開示は、濯ぎにおいて洗浄対象に異物が付着することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、処理空間を有し、処理空間の底部に濯ぎ水が貯められる処理槽と、処理空間を減圧する減圧装置と、濯ぎ水から洗浄対象に蒸気が供給されるように、濯ぎ水を減圧沸騰させる加熱装置と、を備える、洗浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、濯ぎにおいて洗浄対象に異物が付着することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る洗浄装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る洗浄対象を濯ぐ洗浄装置を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[洗浄装置]
図1は、実施形態に係る洗浄装置1を模式的に示す図である。洗浄装置1は、洗浄水Caを用いて洗浄対象Sを洗浄する。実施形態において、洗浄装置1は、減圧沸騰式洗浄装置である。洗浄装置1の洗浄対象Sとして、医療器具が例示される。医療器具として、メス、鉗子、及びチューブが例示される。
【0011】
洗浄装置1は、処理槽2と、支持部材3と、給水装置4と、薬剤供給装置5と、排液装置6と、加熱装置7と、減圧装置8と、液相給気装置9と、気相給気装置10と、圧力センサ11と、温度センサ12と、超音波発生装置31と、制御装置13とを備える。
【0012】
処理槽2は、洗浄水Caが貯留される処理空間を有する。処理空間は、処理槽2の内部空間である。処理槽2の上端部に開口部が設けられる。洗浄対象Sは、処理槽2の開口部を介して処理槽2の処理空間に搬入される。洗浄対象Sは、処理槽2の開口部を介して処理槽2の処理空間から搬出される。処理槽2の開口部は、蓋14で閉鎖される。処理槽2の開口部が蓋14で閉鎖されることにより、処理槽2の処理空間が密閉される。
【0013】
支持部材3は、処理槽2の処理空間において洗浄対象Sを支持する。支持部材3は、処理槽2の処理空間に配置されれる。洗浄対象Sは、処理槽2の処理空間において支持部材3よりも上方に配置される。支持部材3は、網状の部材である。洗浄水Caは、支持部材3を通過することができる。洗浄対象Sは、支持部材3に直接支持されてもよい。洗浄対象Sが網状のバスケットに収容され、バスケットが支持部材3に支持されてもよい。
【0014】
給水装置4は、処理槽2の処理空間に真水を供給する。給水装置4は、処理槽2に接続される給水ライン15と、給水ライン15に配置される給水ポンプ16とを有する。給水ポンプ16の作動により、給水源(不図示)からの真水が給水ライン15を介して処理槽2の処理空間に供給される。
【0015】
薬剤供給装置5は、処理槽2の処理空間に薬剤を供給する。薬剤として、アルカリ性洗剤、酵素配合洗剤、乾燥促進剤、及び潤滑防錆剤が例示される。薬剤供給装置5は、処理槽2に接続される薬剤供給ライン17を有する。薬剤が薬剤供給ライン17を介して処理槽2の処理空間に供給される。処理槽2の処理空間に供給された真水に薬剤が供給されることにより、処理槽2の処理空間において洗浄水Caが生成される。
【0016】
排液装置6は、処理槽2の処理空間から洗浄水Caを排出する。排液装置6は、処理槽2に接続される排液ライン18と、排液ライン18に配置される排液ポンプ19とを有する。排液ポンプ19の作動により、洗浄水Caが排液ライン18を介して処理槽2の処理空間から排出される。
【0017】
加熱装置7は、処理槽2に貯留されている洗浄水Caを加熱する。加熱装置7は、処理槽2の処理空間に配置されるヒータ20を含む。ヒータ20は、処理槽2の処理空間において洗浄水Caに浸けられる。ヒータ20は、支持部材3よりも下方に配置される。
【0018】
減圧装置8は、処理槽2の処理空間を減圧する。減圧装置8は、処理槽2の処理空間から気体を排出することにより、処理槽2の処理空間を減圧する。減圧装置8は、処理槽2に接続される排気ライン21と、排気ライン21に配置される真空ポンプ22とを有する。真空ポンプ22の作動により、処理槽2の処理空間から気体が排出され、処理槽2の処理空間が減圧される。
【0019】
液相給気装置9は、処理槽2に貯留されている洗浄水Caに空気を供給する。液相給気装置9は、処理槽2の処理空間に配置される給気ノズル23と、給気ノズル23に接続される液相給気ライン24と、液相給気ライン24に配置されるフィルタ25と、フィルタ25と処理槽2と間の液相給気ライン24に配置される液相給気弁26とを有する。給気ノズル23は、処理槽2の処理空間において洗浄水Caに浸けられる。給気ノズル23は、支持部材3よりも下方に配置される。処理槽2の処理空間が減圧された状態で液相給気弁26が開くと、処理槽2の処理空間と外部空間との差圧により、処理槽2の外部空間の空気がフィルタ25及び液相給気ライン24を介して給気ノズル23に供給される。フィルタ25は、空気から異物を回収する。給気ノズル23は、複数の給気口27を有する。液相給気ライン24を介して給気ノズル23に供給された空気は、給気口27から洗浄水Caに供給される。
【0020】
気相給気装置10は、処理槽2の処理空間の気体空間に空気を供給する。気相給気装置10は、処理槽2に接続される気相給気ライン28と、気相給気ライン28に配置されるフィルタ29と、フィルタ29と処理槽2との間の気相給気ライン28に配置される気相給気弁30とを有する。処理槽2の処理空間が減圧された状態で気相給気弁30が開くと、処理槽2の処理空間と外部空間との差圧により、処理槽2の外部空間の空気がフィルタ29及び気相給気ライン28を介して処理槽2の処理空間に供給される。
【0021】
圧力センサ11は、処理槽2の処理空間の圧力を検出する。温度センサ12は、処理槽2に貯留されている洗浄水Caの温度を検出する。
【0022】
超音波発生装置31は、洗浄水Caに超音波を与える。超音波発生装置31が洗浄水Caに浸けられた状態で作動することにより、洗浄対象Sは、超音波洗浄される。
【0023】
制御装置13は、コンピュータシステムを含む。制御装置13は、洗浄装置1を制御する。
【0024】
[濯ぎ]
図2は、実施形態に係る洗浄対象Sを濯ぐ洗浄装置1を模式的に示す図である。洗浄装置1は、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sを濯ぐことができる。洗浄対象Sの濯ぎにおいて、処理槽2の処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められる。実施形態において、濯ぎ水Cbは、真水である。真水は、給水装置4から処理槽2に供給される。なお、濯ぎ水Cbは、薬剤が添加された真水でもよい。給水装置4から処理槽2に真水が供給され、薬剤供給装置5から処理槽2に薬剤が供給されることにより、薬剤を含む濯ぎ水Cbが処理槽2において生成される。濯ぎ水Cbに含まれる薬剤として、乾燥促進剤又は潤滑防錆剤が例示される。
【0025】
濯ぎ水Cbは、濯ぎ水Cbの表面が支持部材3よりも下方に配置されるように、処理空間の底部に貯められる。支持部材3は、処理空間において洗浄対象Sが濯ぎ水Cbの表面よりも上方に配置されるように洗浄対象Sを支持する。ヒータ20は、支持部材3よりも下方において濯ぎ水Cbに浸けられる。
【0026】
処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められた状態で、減圧装置8は、処理空間を減圧し、加熱装置7は、濯ぎ水Cbを加熱する。処理空間が減圧された状態で濯ぎ水Cbが加熱されることにより、濯ぎ水Cbが減圧沸騰する。実施形態においては、濯ぎ水Cbが例えば90℃で沸騰するように処理空間が減圧される。
【0027】
処理空間の底部に貯められた濯ぎ水Cbが減圧沸騰されることにより、濯ぎ水Cbから処理空間に配置されている洗浄対象Sに蒸気Ccが供給される。支持部材3は網状の部材である。濯ぎ水Cbから発生した蒸気Ccは、支持部材3を通過することができる。濯ぎ水Cbから発生した蒸気Ccは、支持部材3を介して洗浄対象Sに供給される。濯ぎ水Cbに異物が含まれていても、蒸気Ccに含まれる異物は少ない又は存在しない。
【0028】
蒸気Ccは、洗浄対象Sの表面に接触することにより凝縮される。洗浄対象Sの表面において蒸気Ccの凝縮水Cdが生成される。洗浄対象Sの表面において生成された凝縮水Cdは、重力の作用により洗浄対象Sから落下する。凝縮水Cdは、洗浄対象Sの表面に残留している洗浄水Ca又は洗浄対象Sの表面に付着している異物とともに落下する。これにより、洗浄対象Sが凝縮水Cdで濯がれる。
【0029】
濯ぎにおいて、洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられないので、濯ぎ水Cbに含まれる異物が洗浄対象Sに付着することが抑制される。洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられる場合、例えば洗浄対象Sから剥離した異物が濯ぎ水Cbに混入し、濯ぎ水Cbに混入した異物が洗浄対象Sに再付着する可能性がある。実施形態においては、濯ぎにおいて、洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられないので、濯ぎ水Cbに含まれる異物が洗浄対象Sに付着することが抑制される。また、上述のように、蒸気Ccに含まれる異物は少ない又は存在しない。そのため、凝縮水Cdに含まれる異物も少ない又は存在しない。凝縮水Cdにより洗浄対象Sが濯がれることにより、洗浄対象Sの表面に異物が残留することが抑制される。
【0030】
また、洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられないので、濯ぎ後において洗浄対象Sの表面にウォーターマークが生成されることが抑制される。また、実施形態によれば、濯ぎ後の洗浄対象Sの乾燥時間が短くなる。
【0031】
また、濯ぎ水Cbは、濯ぎ水Cbの表面が支持部材3よりも下方に配置されるように、処理空間の底部に貯められる。これにより、濯ぎ水Cbの使用量が削減される。濯ぎ水Cbの使用量が少なくて済むので、濯ぎ水Cbを処理空間の底部に貯めるときの給水時間及び濯ぎ水Cbを加熱するときの加熱時間が短くなる。
【0032】
また、濯ぎ水Cbの使用量が少なくて済むので、真水に薬剤を添加することによって濯ぎ水Cbが生成される場合、真水の使用量のみならず薬剤の使用量も削減される。したがって、洗浄装置1のランニングコストが低減される。
【0033】
また、濯ぎにおいて減圧装置8により処理空間が減圧される。実施形態においては、濯ぎにおいて減圧装置8により処理空間から空気が排除される。処理空間が蒸気Ccで満たされるので、濯ぎムラの発生が抑制される。
【0034】
[洗浄装置の動作]
図2から
図7のそれぞれは、実施形態に係る洗浄装置1の動作を示すフローチャートである。実施形態において、洗浄装置1は、
図3に示すような第1洗浄処理を実行する。第1洗浄処理を実行した後、洗浄装置1は、
図4に示すような第2洗浄処理を実行する。第2洗浄処理を実行した後、洗浄装置1は、
図5に示すような第3洗浄処理を実行する。第3洗浄処理を実行した後、洗浄装置1は、
図6に示すような第4洗浄処理を実行する。第4洗浄処理を実行した後、
図7に示すような仕上げ処理を実行する。第1洗浄処理と第2洗浄処理と第3洗浄処理と第4洗浄処理と仕上げ処理とは、連続的に実施される。
【0035】
<第1洗浄処理>
図3を参照しながら第1洗浄処理について説明する。第1洗浄処理において、制御装置13は、洗浄水Caを用いて洗浄対象Sを脱気洗浄する(ステップS11)。
【0036】
脱気洗浄においては、
図1を参照して説明したように、処理槽2の処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられる。制御装置13は、処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられた状態で、処理空間が減圧されるように、減圧装置8を制御する。処理空間は、減圧装置8により脱気される。処理空間は、大気圧よりも低い設定圧力まで減圧される。また、制御装置13は、洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられ、処理空間が減圧された状態で、洗浄水Caに超音波を与えられるように、超音波発生装置31を制御する。処理空間が減圧されることにより、超音波洗浄が効果的に実施される。なお、脱気洗浄において、洗浄水Caは、常温(20℃程度)でもよいし、加熱装置7により所定温度に加熱されてもよい。
【0037】
脱気洗浄が終了した後、制御装置13は、処理槽2から洗浄水Caが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS12)。
【0038】
処理槽2から洗浄水Caが排出された後、制御装置13は、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sを濯ぐ(ステップS13)。
【0039】
濯ぎにおいては、
図2を参照して説明したように、処理槽2の処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められる。洗浄対象Sは、濯ぎ水Cbに浸けられない。制御装置13は、処理空間が減圧されるように、減圧装置8を制御する。また、制御装置13は、濯ぎ水Cbから洗浄対象Sに蒸気Ccが供給されるように、加熱装置7を制御する。すなわち、制御装置13は、処理空間が減圧された状態で、濯ぎ水Cbが減圧沸騰するように、加熱装置7を制御する。処理空間が減圧された状態で、加熱装置7により濯ぎ水Cbが加熱されることにより、濯ぎ水Cbが減圧沸騰する。濯ぎ水Cbが減圧沸騰され、濯ぎ水Cbから洗浄対象Sに蒸気Ccが供給されることにより、洗浄対象Sの表面において凝縮水Cdが生成される。洗浄対象Sは、凝縮水Cdにより濯がれる。
【0040】
濯ぎが終了した後、制御装置13は、処理槽2から濯ぎ水Cbが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS14)。
【0041】
以上により、第1洗浄処理が終了する。なお、第1洗浄処理において、処理槽2から洗浄水Caが排出された後、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sが濯がれる前に、プレ濯ぎ水による濯ぎが実施されてもよい。プレ濯ぎ水により洗浄対象Sを濯ぐ場合、処理空間において洗浄対象Sがプレ濯ぎ水に浸けられた状態で、プレ濯ぎ水が減圧沸騰される。プレ濯ぎ水による濯ぎにおいて、制御装置13は、ステップS12とステップS13との間において、洗浄対象Sがプレ濯ぎ水に浸けられた状態で、処理空間が減圧されるように減圧装置8を制御し、処理空間が減圧された状態でプレ濯ぎ水が減圧沸騰するように加熱装置7を制御する。処理空間が減圧された状態で、加熱装置7によりプレ濯ぎ水が加熱されることにより、プレ濯ぎ水が減圧沸騰する。プレ濯ぎ水による濯ぎが終了し、プレ濯ぎ水が処理槽2から排出された後、ステップS13で説明したように、処理槽2に供給された濯ぎ水Cbが減圧沸騰される。
【0042】
<第2洗浄処理>
次に、
図4を参照しながら第2洗浄処理について説明する。第2洗浄処理において、制御装置13は、洗浄水Caを用いて洗浄対象Sを脱気洗浄する(ステップS21)。
【0043】
第2洗浄処理における脱気洗浄は、第1洗浄処理における脱気洗浄と同様である。処理槽2の処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられ、減圧装置8により処理空間が減圧された状態で、超音波発生装置31により洗浄水Caに超音波が与えられる。
【0044】
脱気洗浄が終了した後、制御装置13は、洗浄水Caを用いて洗浄対象Sを減圧沸騰洗浄する(ステップS22)。
【0045】
減圧沸騰洗浄においては、脱気洗浄で使用された洗浄水Caが使用される。すなわち、脱気洗浄が終了した後、洗浄水Caが処理槽2から排出されること無く、脱気洗浄から減圧沸騰洗浄に移行する。
【0046】
減圧沸騰洗浄において、制御装置13は、処理槽2の処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられた状態で、処理空間が減圧されるように、減圧装置8を制御する。また、制御装置13は、処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられ、処理空間が減圧された状態で、洗浄水Caが減圧沸騰するように、加熱装置7を制御する。処理空間が減圧された状態で、加熱装置7により濯ぎ水Cbが加熱されることにより、濯ぎ水Cbが減圧沸騰する。また、制御装置13は、処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられ、洗浄水Caが減圧沸騰している状態で、洗浄水Caに超音波が与えられるように、超音波発生装置31を制御する。
【0047】
なお、制御装置13は、洗浄水Caが減圧沸騰している状態で、液相給気装置9から洗浄水Caに少量の空気を供給させてもよい。洗浄水Caが減圧沸騰している状態で給気ノズル23の給気口27から洗浄水Caに空気が供給されることにより、供給された空気が沸騰の核となって、洗浄水Caが爆発的に沸騰(突沸)する。突沸により生じた洗浄水Caの激しい流れで、洗浄対象Sの表面が効果的に洗浄される。
【0048】
減圧沸騰洗浄が終了した後、制御装置13は、処理槽2から洗浄水Caが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS23)。
【0049】
次に、制御装置13は、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sを濯ぐ(ステップS24)。
【0050】
第2洗浄処理における濯ぎは、第1洗浄処理における濯ぎと同様である。処理槽2の処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められ、減圧装置8により処理空間が減圧された状態で、濯ぎ水Cbが減圧沸騰するように、加熱装置7により濯ぎ水Cbが加熱される。
【0051】
濯ぎが終了した後、制御装置13は、処理槽2から濯ぎ水Cbが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS25)。
【0052】
以上により、第2洗浄処理が終了する。なお、第2洗浄処理のステップS23とステップS24との間において、上述のような、プレ濯ぎ水による濯ぎが実施されてもよい。
【0053】
<第3洗浄処理>
次に、
図5を参照しながら第3洗浄処理について説明する。第3洗浄処理において、制御装置13は、
図3を参照して説明した第1洗浄処理を実施する(ステップS31)。
【0054】
第1洗浄処理が終了した後、制御装置13は、
図4を参照して説明した第2洗浄処理を実施する(ステップS32)。
【0055】
第2洗浄処理が終了した後、制御装置13は、洗浄水Caを用いて洗浄対象Sを加温洗浄する(ステップS33)。
【0056】
加温洗浄において、制御装置13は、処理槽2の処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられた状態で、洗浄水Caが加温されるように、加熱装置7を制御する。また、制御装置13は、処理槽2に接続されている循環ポンプ(不図示)を作動して、処理槽2及び循環ポンプを含む循環経路において加温された洗浄水Ca循環させる。
【0057】
加温洗浄が終了した後、制御装置13は、処理槽2から洗浄水Caが排出されるように、排液装置6を制御する。
【0058】
次に、制御装置13は、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sを濯ぐ(ステップS34)。
【0059】
第3洗浄処理における濯ぎは、第1洗浄処理及び第2洗浄処理における濯ぎと同様である。処理槽2の処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められ、減圧装置8により処理空間が減圧された状態で、濯ぎ水Cbが減圧沸騰するように、加熱装置7により濯ぎ水Cbが加熱される。
【0060】
濯ぎが終了した後、制御装置13は、処理槽2から濯ぎ水Cbが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS35)。
【0061】
以上により、第3洗浄処理が終了する。なお、第3洗浄処理においても、濯ぎ水Cbによる濯ぎの直前に、プレ濯ぎ水による濯ぎが実施されてもよい。
【0062】
<第4洗浄処理>
次に、
図6を参照しながら第4洗浄処理について説明する。第4洗浄処理において、制御装置13は、
図3を参照して説明した第1洗浄処理(ステップS41)。
【0063】
第1洗浄処理が終了した後、制御装置13は、
図4を参照して説明した第2洗浄処理を実施する(ステップS42)。
【0064】
第2洗浄処理が終了した後、制御装置13は、
図5を参照して説明した第3洗浄処理を実施する(ステップS43)。
【0065】
第3洗浄処理が終了した後、制御装置13は、真水を用いて洗浄対象Sを減圧沸騰洗浄する(ステップS44)。
【0066】
減圧沸騰洗浄において、制御装置13は、処理槽2の処理空間において洗浄対象Sが真水に浸けられた状態で、処理空間が減圧されるように、減圧装置8を制御する。また、制御装置13は、処理空間において洗浄対象Sが真水に浸けられ、処理空間が減圧された状態で、真水が減圧沸騰するように、加熱装置7を制御する。処理空間が減圧された状態で、加熱装置7により真水が加熱されることにより、真水が減圧沸騰する。また、制御装置13は、処理空間において洗浄対象Sが真水に浸けられ、真水が減圧沸騰している状態で、洗浄水Caに超音波が与えられるように、超音波発生装置31を制御する。
【0067】
なお、制御装置13は、真水が減圧沸騰している状態で、液相給気装置9から真水に少量の空気を供給させてもよい。
【0068】
減圧沸騰洗浄が終了した後、制御装置13は、処理槽2から真水が排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS45)。
【0069】
次に、制御装置13は、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sを濯ぐ(ステップS46)。
【0070】
第4洗浄処理における濯ぎは、第1洗浄処理、第2洗浄処理、及び第3洗浄処理における濯ぎと同様である。処理槽2の処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められ、減圧装置8により処理空間が減圧された状態で、濯ぎ水Cbが減圧沸騰するように、加熱装置7により濯ぎ水Cbが加熱される。
【0071】
濯ぎが終了した後、制御装置13は、処理槽2から濯ぎ水Cbが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS47)。
【0072】
以上により、第4洗浄処理が終了する。なお、第4洗浄処理においても、濯ぎ水Cbによる濯ぎの直前に、プレ濯ぎ水による濯ぎが実施されてもよい。
【0073】
<仕上げ処理>
次に、
図7を参照しながら仕上げ処理について説明する。仕上げ処理において、制御装置13は、処理槽2の処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられた状態で、洗浄水Caが加温されるように、加熱装置7を制御する。また、制御装置13は、処理槽2に接続されている循環ポンプ(不図示)を作動して、処理槽2及び循環ポンプを含む循環経路において加温された洗浄水Ca循環させる(ステップS61)。
【0074】
加温された洗浄水Caを所定時間循環させた後、制御装置13は、濯ぎ水Cbを用いて洗浄対象Sを濯ぐ(ステップS62)。
【0075】
仕上げ処理における濯ぎは、第1洗浄処理、第2洗浄処理、第3洗浄処理、及び第4洗浄処理における濯ぎと同様である。処理槽2の処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められ、減圧装置8により処理空間が減圧された状態で、濯ぎ水Cbが減圧沸騰するように、加熱装置7により濯ぎ水Cbが加熱される。
【0076】
濯ぎが終了した後、制御装置13は、処理槽2から濯ぎ水Cbが排出されるように、排液装置6を制御する(ステップS63)。
【0077】
以上により、仕上げ処理が終了する。なお、仕上げ処理においても、濯ぎ水Cbによる濯ぎの直前に、プレ濯ぎ水による濯ぎが実施されてもよい。
【0078】
[効果]
以上説明したように、実施形態において、洗浄装置1は、処理空間を有し、処理空間の底部に濯ぎ水Cbが貯められる処理槽2と、処理空間を減圧する減圧装置8と、濯ぎ水Cbから洗浄対象Sに蒸気Ccが供給されるように、濯ぎ水Cbを減圧沸騰させる加熱装置7と、を備える。
【0079】
実施形態によれば、処理空間の底部に貯められた濯ぎ水Cbが減圧沸騰されることにより、濯ぎ水Cbから処理空間に配置されている洗浄対象Sに蒸気Ccが供給される。濯ぎ水Cbに異物が含まれていても、蒸気Ccに含まれる異物は少ない又は存在しない。蒸気Ccは、洗浄対象Sの表面に接触することにより凝縮される。洗浄対象Sの表面において蒸気Ccの凝縮水Cdが生成される。洗浄対象Sの表面において生成された凝縮水Cdは、重力の作用により洗浄対象Sから落下する。凝縮水Cdは、洗浄対象Sの表面に残留している洗浄水Ca又は洗浄対象Sの表面に付着している異物とともに落下する。これにより、洗浄対象Sが凝縮水Cdで濯がれる。
【0080】
濯ぎにおいて、洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられないので、濯ぎ水Cbに含まれる異物が洗浄対象Sに付着することが抑制される。また、蒸気Ccに含まれる異物は少ない又は存在しない。そのため、凝縮水Cdに含まれる異物も少ない又は存在しない。凝縮水Cdにより洗浄対象Sが濯がれることにより、洗浄対象Sの表面に異物が残留することが抑制される。
【0081】
また、洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられないので、濯ぎ後において洗浄対象Sの表面にウォーターマークが生成されることが抑制される。また、実施形態によれば、濯ぎ後の洗浄対象Sの乾燥時間が短くなる。
【0082】
また、濯ぎ水Cbの使用量が少なくて済むので、真水に薬剤を添加することによって濯ぎ水Cbが生成される場合、真水の使用量のみならず薬剤の使用量も削減される。したがって、洗浄装置1のランニングコストが低減される。
【0083】
また、濯ぎにおいて減圧装置8により処理空間が減圧される。実施形態においては、濯ぎにおいて減圧装置8により処理空間から空気が排除される。処理空間が蒸気Ccで満たされるので、濯ぎムラの発生が抑制される。
【0084】
洗浄装置1は、処理空間において洗浄対象Sが濯ぎ水Cbの表面よりも上方に配置されるように洗浄対象Sを支持する支持部材3を備える。支持部材3により、洗浄対象Sが濯ぎ水Cbに浸けられることが抑制される。支持部材3は網状の部材である。濯ぎ水Cbから発生した蒸気Ccは、支持部材3を通過することができる。濯ぎ水Cbから発生した蒸気Ccは、支持部材3を介して洗浄対象Sに供給される。
【0085】
また、濯ぎ水Cbは、濯ぎ水Cbの表面が支持部材3よりも下方に配置されるように、処理空間の底部に貯められる。これにより、濯ぎ水Cbの使用量が削減される。濯ぎ水Cbの使用量が少なくて済むので、濯ぎ水Cbを処理空間の底部に貯めるときの給水時間及び濯ぎ水Cbを加熱するときの加熱時間が短くなる。
【0086】
処理空間において洗浄対象Sがプレ濯ぎ水に浸けられた状態でプレ濯ぎ水が減圧沸騰され、プレ濯ぎ水が処理槽2から排出された後、処理槽2に供給された濯ぎ水Cbが減圧沸騰される。濯ぎ水Cbによる濯ぎの直前に、プレ濯ぎ水による濯ぎが実施されることにより、洗浄対象Sは効果的に濯がれる。
【0087】
処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられ、洗浄水Caが処理槽2から排出された後、処理槽2に供給された濯ぎ水Cbが減圧沸騰される。洗浄水Caが処理槽2から排出されることにより、洗浄水Caを用いる洗浄において洗浄対象Sから剥離された異物が、洗浄水Caと一緒に処理槽2から排出される。洗浄水Caが処理槽2から排出された後、濯ぎ水Cbが処理槽2に供給されることにより、濯ぎ水Cbに混入される異物の量が軽減される。
【0088】
処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられた状態で処理空間が減圧される。超音波発生装置31は、処理空間が減圧された状態で、洗浄水Caに超音波を与える。これにより、超音波洗浄が効果的に実施される。
【0089】
処理空間において洗浄対象Sが洗浄水Caに浸けられた状態で洗浄水Caが減圧沸騰される。超音波発生装置31は、洗浄水Caが減圧沸騰された状態で、洗浄水Caに超音波を与える。これにより、超音波洗浄が効果的に実施される。
【符号の説明】
【0090】
1…洗浄装置、2…処理槽、3…支持部材、4…給水装置、5…薬剤供給装置、6…排液装置、7…加熱装置、8…減圧装置、9…液相給気装置、10…気相給気装置、11…圧力センサ、12…温度センサ、13…制御装置、14…蓋、15…給水ライン、16…給水ポンプ、17…薬剤供給ライン、18…排液ライン、19…排液ポンプ、20…ヒータ、21…排気ライン、22…真空ポンプ、23…給気ノズル、24…液相給気ライン、25…フィルタ、26…液相給気弁、27…給気口、28…気相給気ライン、29…フィルタ、30…気相給気弁、31…超音波発生装置、Ca…洗浄水、Cb…濯ぎ水、Cc…蒸気、Cd…凝縮水、S…洗浄対象。