(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166352
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】皮下埋込型ポート
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61M37/00 560
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024160818
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2021533058の分割
【原出願日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019129867
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太
(57)【要約】
【課題】カテーテルの接続ポートに対する接続状態を安定して維持できる、新規な構造の皮下埋込型ポートを提供すること。
【解決手段】弾性蓋体18で塞がれた薬液貯留用の内腔24を備えており、内腔24に連通されてカテーテル74に挿入接続される接続ポート20が設けられたハウジング16を有する皮下埋込型ポート10であって、カテーテル74に外挿されてカテーテル74の接続側端部を接続ポート20との間で径方向に挟むスリーブ状の接続キャップ14を有しており、接続キャップ14はハウジング16と係止可能な係止部90を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性蓋体で塞がれた薬液貯留用の内腔を備えており、該内腔に連通されてカテーテルに挿入接続される接続ポートが設けられたハウジングを有する皮下埋込型ポートであって、
前記カテーテルに外挿されて該カテーテルの接続側端部を前記接続ポートとの間で径方向に挟むスリーブ状の接続キャップを有しており、
該接続キャップは前記ハウジングと係止可能な係止部を有する皮下埋込型ポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野において患者の皮膚下に埋め込まれて用いられ、体内への薬液などの注入に際して利用される皮下埋込型ポートであって、カテーテルの抜けを防止できる皮下埋込型ポートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液などを長期間に亘って繰り返し体内へ注入する治療を行うに際しては、人体への繰り返しの穿刺による負担を軽減するために薬液注入用のポートを患者の皮下に埋設しておくことが検討される。
【0003】
このような薬液注入用の皮下埋込型ポートは、例えば特開2012-070986号公報(特許文献1)に示された皮下埋込ポートのように、ハウジングの開口部が弾性蓋体で塞がれて薬液貯留用の内腔が形成された構造を有している。そして、皮膚を貫通して弾性蓋体に穿刺したニードルにより内腔に注入された薬液が、ハウジングの外周部分に設けられた薬液流出用の流路を構成する接続ポートから、カテーテルを通じて、血管などの体内管腔へ導かれて注入されるようになっている。
【0004】
ところで、従来構造の皮下埋込型ポートでは、カテーテルが接続ポートに外挿状態で嵌合されて接続される。カテーテルは、例えば、医師が患者の体格などに合わせて適当な長さにカットしてから接続ポートに取り付けられる。その際に、接続ポートから取り外されたカテーテルが、再度長さを調節された後で接続ポートに取り付けられる場合もある。それ故、カテーテルは、接続ポートに対して、接着などされずに取外し可能に取り付けられることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮下埋込型ポートは、長期で留置される器具である。長期に亘る留置の結果、カテーテルの先端部や中間部が生体に固着してしまう場合があり、この状態で皮下埋込型ポートが埋め込まれた部位を激しく動かすと、皮下埋込型ポートからカテーテルが抜けてしまうおそれがある。
【0007】
本発明の解決課題は、カテーテルの接続ポートに対する接続状態を安定して維持することができる、新規な構造の皮下埋込型ポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、弾性蓋体で塞がれた薬液貯留用の内腔を備えており、該内腔に連通されてカテーテルに挿入接続される接続ポートが設けられたハウジングを有する皮下埋込型ポートであって、前記カテーテルに外挿されて該カテーテルの接続側端部を前記接続ポートとの間で径方向に挟むスリーブ状の接続キャップを有しており、該接続キャップは前記ハウジングと係止可能な係止部を有するものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、接続キャップの係止部がハウジングに係止されることにより、接続キャップが接続ポートに対して抜出方向で位置決めされる。これにより、カテーテルが接続キャップと接続ポートの間で挟み込まれて抜けを防止されたロック状態に保持されて、カテーテルが接続ポートに対して安定して接続状態とされる。このため、長期留置時に意図せずカテーテルが引抜方向に引っ張られた際に、皮下埋込型ポートからカテーテルが抜けてしまうという事態を低減できる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記ハウジングの周方向で前記接続ポートを挟んだ両側に一対の係止用突部が設けられている一方、前記接続キャップの基端側開口部における該ハウジングの周方向両側の内面にはそれぞれ基端側に向かって拡がる一対の案内面が設けられており、該一対の案内面に沿って該一対の係止用突部が該接続キャップ内へ差し入れられて、該一対の案内面の奥方に設けられた一対の係止部に対して該一対の係止用突部が抜出方向に係止されるようになっているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、接続キャップを接続ポートに対して押し込むことにより、一対の係止用突部が一対の案内面によって一対の係止部との係止位置まで案内される。それ故、接続キャップを接続ポートに対して簡単に位置決めして、接続キャップによるカテーテルの抜け防止を簡単に実現することができる。
【0013】
接続キャップの基端側開口部の内面に一対の案内面が設けられていることにより、接続キャップを接続ポートに対して押し込む際に、接続キャップが接続ポートに対して適切な位置に案内される。それ故、接続キャップを簡単に正しく装着することができて、一対の係止用突部と一対の係止部が有効に係止される。
【0014】
第3の態様は、第2の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記係止用突部には、基端側に位置して断面積が小さくされた撓み許容部が設けられているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、接続キャップの装着に際して、一対の係止用突部が撓み許容部において相互に接近するように撓み変形する。これにより、接続キャップを接続ポートに対して押し込む際に、一対の係止用突部を一対の係止部に係止させるために必要な力が低減されて、接続キャップを装着し易くなる。
【0016】
第4の態様は、第2又は第3の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記ハウジングが、前記内腔の底壁部を構成するベースハウジング部材と、前記弾性蓋体の外周部分を該ベースハウジング部材との間で挟圧するアウタハウジング部材とを含んで構成されており、該ベースハウジング部材と該アウタハウジング部材との一方に前記接続ポートが設けられていると共に、該ベースハウジング部材と該アウタハウジング部材との他方に前記一対の係止用突部が設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、接続ポートと一対の係止用突部が、ハウジングを構成するベースハウジング部材とアウタハウジング部材との各一方に設けられている。それ故、接続ポートと一対の係止用突部の形状などの設計自由度が大きくなると共に、ハウジングの製造が容易になる。
【0018】
第5の態様は、第1~第4の何れか1つの態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記接続キャップが長さの異なる直交2軸を有する扁平外面形状を有しているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、接続キャップが扁平外面形状とされた部分を備えることによって、接続キャップの扁平部分を短軸方向で抓んで持ち易い。それ故、接続キャップを接続ポートに対して押し込む際に、接続キャップに力を加え易く、接続キャップの装着作業がより簡単になる。
【0020】
第6の態様は、第1~第5の何れか1つの態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記接続キャップの基端側が先端側よりも大径とされて、該接続キャップの外周面に段差状部が設けられているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、段差状部を押すことによって、接続キャップを接続ポートに対して押し込んで装着し易くなる。
【0022】
第7の態様は、第1~第6の何れか1つの態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記接続キャップは、前記接続ポートとの間で前記カテーテルの接続側端部を径方向に挟む基端側部分が、該接続ポートよりも先端側へ延び出して該カテーテルに外挿される先端側部分よりも硬い材質で形成されているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、カテーテルの接続側端部が、比較的に硬い材質とされた接続キャップの基端側部分と、接続ポートとの間で径方向に挟まれることにより、カテーテルの接続ポートからの抜けが効果的に防止される。また、接続ポートよりも先端側へ延び出す先端側部分が、比較的に柔らかい材質で形成されることにより、接続キャップから突出するカテーテルのキンクが防止される。従って、本態様に係る接続キャップによれば、基端側部分に求められる形状安定性と、先端側部分に求められる柔軟性とを、両立して実現することができる。
【0024】
第8の態様は、第7の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、互いに材質の異ならされた前記基端側部分と前記先端側部分とが、機械的に係合されたアンカー部をもって相互に固定されているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた皮下埋込型ポートによれば、基端側部分と先端側部分の分離が、アンカー部における機械的な係合によって、より有利に防止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、皮下埋込型ポートにおいて、カテーテルの接続ポートに対する接続状態が安定して維持される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての皮下埋込型ポートを示す斜視図
【
図8】
図1に示す皮下埋込型ポートを構成するポート本体の斜視図
【
図11】
図8に示すポート本体を構成するハウジングの分解斜視図
【
図12】
図1に示す皮下埋込型ポートを構成する接続キャップの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1~7には、本発明の第1の実施形態としての皮下埋込型ポート10が示されている。皮下埋込型ポート10は、ポート本体12に接続キャップ14が取り付けられた構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは
図2中の上下方向を言う。
【0030】
ポート本体12は、
図8~10に示すように、ハウジング16に弾性蓋体18とポート部材20が取り付けられた構造を有している。そして、ハウジング16に設けられた凹所22の開口部が弾性蓋体18によって塞がれることにより、ハウジング16と弾性蓋体18によって壁部を構成された薬液貯留用の内腔24が形成されており、ポート部材20が内腔24に連通されている。
【0031】
ハウジング16は、硬質の合成樹脂や金属によって形成されており、
図11に示すように、ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28とを有する分割構造体とされている。ベースハウジング部材26は、周壁部30と底壁部32とを備える略有底筒状とされており、上方に向かって開口する凹所22が中央部分に形成されている。凹所22の開口部分は、周壁部30の内周角部が切欠状に拡径されて環状段差部34が設けられている。
【0032】
ベースハウジング部材26における周壁部30の周方向の一部には、ポート部36が設けられている。ポート部36は、略直方体状とされており、周壁部30が部分的に外方へ厚肉とされることで設けられて、周壁部30の外周面上に突出している。周壁部30には、ポート部36を貫通する連通孔38が形成されている。
【0033】
ベースハウジング部材26の下端部分には、外周側へ突出するフランジ状の環状突部40が形成されている。環状突部40において、ポート部36を挟んだ周方向の両側には、外周側へより大きく突出する一対の嵌合板部42,42が形成されている。
【0034】
アウタハウジング部材28は、上下方向に延びる略円筒状とされている。アウタハウジング部材28の上部は、下方に向かって軸直角方向の内法寸法及び外法寸法が次第に大きくなるテーパ形状とされている。アウタハウジング部材28の下部は、内周面が略全周に亘って略一定の内法寸法を有していると共に、下方に向かって外法寸法が次第に大きくなるフレア形状の外周面を有している。
【0035】
アウタハウジング部材28は、周方向の一部が上下方向に広がる平坦な外周面を有する竪壁部44とされている。竪壁部44は、ハウジング16においてベースハウジング部材26のポート部36と対応する位置に設けられており、ポート部36を外周へ露出させる開口窓46を備えている。
【0036】
アウタハウジング部材28は、一対の係止用突部48,48を備えている。一対の係止用突部48,48は、略矩形ブロック状とされている。一対の係止用突部48,48は、開口窓46の幅方向両側において竪壁部44から竪壁部44に対する略直交方向へ突出している。
【0037】
一対の係止用突部48,48は、アウタハウジング部材28の周方向である竪壁部44の幅方向において、相互に離隔して対向配置されている。一対の係止用突部48,48の対向間距離は、開口窓46の開口幅寸法よりも小さくされており、一対の係止用突部48,48が、開口窓46の外周側の開口上に幅方向両側から突出して、開口窓46を部分的に覆っている。一対の係止用突部48,48が開口窓46上に突出していることによって、竪壁部44につながる各係止用突部48の基端は、幅方向寸法が係止用突部48の他の部分よりも小さくされている。これにより、係止用突部48の基端には、係止用突部48の突出方向と直交する方向の断面積が部分的に小さくされた撓み許容部50が設けられている。
【0038】
一対の係止用突部48,48は、突出先端部分に幅方向の外側へ向かって突出する係合突起52がそれぞれ設けられている。係合突起52は、略半円形断面で上下方向に延びる突条であって、係止用突部48の上下方向の全体に亘って連続して設けられている。
【0039】
アウタハウジング部材28の上端の開口部分には、内周に向かって突出する環状押え部54が設けられている。環状押え部54の内周端部には、先細断面形状で下方に向かって突出する係止爪56が、全周にわたって形成されている。
【0040】
アウタハウジング部材28の底面には、
図4に示すように、ベースハウジング部材26の嵌合板部42,42に対応する嵌合凹部58が形成されている。アウタハウジング部材28における嵌合凹部58の外周側に隣接する部分には、上下方向に貫通するサービスホール60が形成されている。サービスホール60は、例えば、製造や施術に際して位置決めに利用したり、ベースハウジング部材26又はポート部材20に嵌合ピンを設けてアウタハウジング部材28とベースハウジング部材26又はポート部材20を固定するなど、適宜に用いることができる。
【0041】
図9,10に示すように、アウタハウジング部材28が、ベースハウジング部材26に対して上方から被せられて、ベースハウジング部材26の周壁部30に対して外挿状態で固定されることにより、ハウジング16が構成されている。ベースハウジング部材26のポート部36は、アウタハウジング部材28の開口窓46に差し入れられている。ベースハウジング部材26の嵌合板部42,42は、アウタハウジング部材28の嵌合凹部58,58に差し入れられている。これらによって、ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28が周方向で位置決めされている。なお、ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28は、例えば、必要に応じて超音波溶着等によって相互に固着される。アウタハウジング部材28の開口窓46に差し入れられるベースハウジング部材26のポート部36に対して、開口窓46の内周面に重ね合わされる上面等に突出する溶着用のリブを設けてもよい。なお、溶着用リブの形成位置はポート部36に限定されず、ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28の重ね合わせ面に溶着用リブを適宜に設けることが可能であり、例えば溶着用リブをアウタハウジング部材28側に設けることもできる。
【0042】
ベースハウジング部材26のポート部36がアウタハウジング部材28の開口窓46に差し入れられると共に、ベースハウジング部材26の一対の嵌合板部42,42がアウタハウジング部材28の一対の嵌合凹部58,58に嵌め入れられる。
【0043】
ハウジング16には、弾性蓋体18が取り付けられている。弾性蓋体18は、エラストマーやゴムなどの弾性材とされている。弾性蓋体18は、全体として上下方向を中心軸方向とする略円板形状とされている。
【0044】
そして、弾性蓋体18は、アウタハウジング部材28の内周へ差し入れられており、外周部分がベースハウジング部材26の周壁部30とアウタハウジング部材28の環状押え部54との上下対向間に挟み込まれて、外周部分が上下方向に圧縮されている。これにより、弾性蓋体18は、外周部分が全周に亘ってハウジング16に流体密に支持された状態で、ハウジング16に取り付けられている。
【0045】
ベースハウジング部材26の周壁部30の上端外周部分には、
図10に示すように、チタンやステンレス、アルミニウム、或いはそれらの合金などで形成された造影リング62が外嵌されている。なお、造影リング62の外周面をレーザー光の照射によって加熱して、酸化作用などによるマーキングを造影リング62の外周面に施すことにより、例えば、製造者名や製造年月日、ロットナンバーなどを表示することができる。この場合には、造影リング62の外周面を覆うアウタハウジング部材28が可視光線を透過する無色透明又は有色透明とされて、造影リング62の表示(マーキング)が外部から視認可能とされる。尤も、造影リング62は必須ではなく、例えば、造影リング62を設けずにハウジング16に直接にマーキングしても良い。
【0046】
弾性蓋体18がハウジング16に組み付けられることにより、弾性蓋体18とハウジング16を壁部とする薬液貯留用の内腔24が、外部空間に対して流体密に画成されている。内腔24は、ベースハウジング部材26の凹所22の開口部が、弾性蓋体18によって流体密に塞がれることで形成されている。
【0047】
内腔24は、ベースハウジング部材26のポート部36に設けられた連通孔38を通じて、外部に開放されている。ベースハウジング部材26の連通孔38には、ポート部材20が取り付けられている。ポート部材20は、
図9,10に示すように、中心孔64を備える略円筒管状とされている。ポート部材20は、基端筒部66と先端筒部68を備えており、基端筒部66の外径寸法が先端筒部68の外径寸法よりも大きくされている。ポート部材20の基端筒部66には、外周面に突出するフランジ状の嵌合突部70が設けられている。ポート部材20の先端筒部68の外周面は、基端側(
図6,9中の上側)に向かって大径となる返し状の凸部72が、長さ方向で複数並んで設けられている。
【0048】
そして、ポート部材20は、基端筒部66がベースハウジング部材26の連通孔38に差し入れられて、ベースハウジング部材26に取り付けられている。これにより、ポート部材20の中心孔64がベースハウジング部材26の連通孔38を通じて薬液貯留用の内腔24に連通されている。また、ポート部材20の先端筒部68は、ベースハウジング部材26の連通孔38から突出しており、ポート部材20の先端筒部68によって本実施形態の接続ポートが構成されている。
【0049】
また、ポート部材20が取り付けられた状態のベースハウジング部材26に対して、アウタハウジング部材28が上方から組み付けられる。ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28は、ポート部材20の先端筒部68を一対の係止用突部48,48間のスペースへ差し入れるようにして、上下方向で相互に組み合わされる。
【0050】
ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28が組み付けられることにより、ポート部材20の基端筒部66(嵌合突部70)が、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48に対して、ポート部材20のベースハウジング部材26からの抜出方向で当接して係止される(
図9参照)。このように、ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28を組み付けることにより、ポート部材20の基端筒部66がベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28の間で挟まれて、ポート部材20のハウジング16からの脱落が防止される。要するに、本実施形態では、ポート部材20のハウジング16からの抜けを防止する構造が、ハウジング16に設けられた一対の係止用突部48,48を利用して構成されている。
【0051】
さらに、アウタハウジング部材28にベースハウジング部材26のポート部36を収容する領域が設けられていることによって、一対の係止用突部48,48において基端の幅寸法a(
図6参照)が他の部分の幅寸法よりも小さくされて、各撓み許容部50が形成されている。このように、本実施形態の撓み許容部50は、係止用突部48の高さ寸法を維持しながら、幅寸法を小さくすることによって設けられている。なお、ベースハウジング部材26のポート部36が、一対の係止用突部48,48の幅方向の内側部分に基端側から重ね合わされているが、ポート部36と一対の係止用突部48,48の間には隙間が設けられており、この隙間によって撓み許容部50の変形が許容される。尤も、この隙間はなくても良く、例えば、ポート部36と一対の係止用突部48,48の間に弾性体が介装されて、弾性体の変形によって撓み許容部50の変形が許容されても良いし、ポート部36と一対の係止用突部48,48の僅かな変形によって撓み許容部50の変形を許容することもできる。
【0052】
アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48は、ベースハウジング部材26から突出したポート部材20の先端筒部68に対して、幅方向の両側に離れて配置されている。換言すれば、ベースハウジング部材26とアウタハウジング部材28が組み合わされた状態において、ポート部材20の先端筒部68が一対の係止用突部48,48の対向間に配置されている。
【0053】
ポート部材20の先端筒部68は、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48の対向間を通じて一対の係止用突部48,48の先端よりも外側まで突出している。特に、ポート部材20の先端筒部68において凸部72が設けられた部分は、一対の係止用突部48,48よりも外側に位置している。
【0054】
ポート部材20には、
図6,7に示すように、カテーテル74が取り付けられる。カテーテル74は軟質のチューブであって、ポート部材20の先端筒部68がカテーテル74の接続側端部に挿入接続される。これにより、カテーテル74は、皮下埋込型ポート10の薬液貯留用の内腔24に対して、ポート部材20を介して連通される。ポート部材20の先端筒部68は、外周面に複数の凸部72が設けられていることから、外挿状態で嵌着されるカテーテル74が抜け難い。カテーテル74は、一方の端部がポート部材20に装着されて皮下埋込型ポート10に接続されると共に、他方の端部が血管などの体内管腔に接続される。
【0055】
ポート部材20とカテーテル74の接続部分には、接続キャップ14が取り付けられる。接続キャップ14は、
図12~14に示すように、全体としてスリーブ状(筒状)とされており、互いに材質の異なる基端側部分76と先端側部分78とを備えている。
【0056】
基端側部分76は、先端側部分78よりも硬い材質とされており、例えば、合成樹脂や金属などによって形成されている。基端側部分76は、有底筒状の接続部80と、接続部80から先端側(
図6,13中の下側)へ突出する連結部82とを、一体的に備えている。なお、基端側部分76は、全体が単一の材質で形成されていても良いし、例えば合成樹脂と金属を組み合わせて形成されていても良い。
【0057】
接続部80は、
図12に示すように、ハウジング16の高さ方向での高さ寸法Hに比して、ハウジング16の周方向での幅寸法Wが大きくされており、相互に長さの異なる直交2軸(長軸と短軸)を有する扁平外面形状を有している。本実施形態の接続部80は、外面形状が長円形断面とされている。接続部80の基端側開口部83は、略矩形断面とされており、幅寸法wが高さ寸法hよりも大きくされている。
【0058】
接続部80の内周面には、接続部80の長軸方向である幅方向の両側において突出する一対の突出部84,84が設けられている。一対の突出部84,84は、幅方向において互いに向き合う位置に設けられており、一対の突出部84,84が設けられた部分において接続部80の内周面の幅寸法が小さくなっている。一対の突出部84,84の突出先端面は、それぞれ接続部80の基端側開口部83において基端側に向かって拡がる、換言すれば基端側開口部83の基端側から奥方に向かって幅方向内側へ傾斜する案内面86とされている。これにより、一対の突出部84,84が設けられた部分において、接続部80の内周面の幅寸法が開口に向かって次第に大きくなっている。
【0059】
接続部80の周壁における一対の突出部84,84よりも奥方には、それぞれ上下方向に延びる溝状部88が設けられている。そして、一対の溝状部88,88の内面であり、一対の突出部84,84の奥方の側面でもある段差状の面によって、本実施形態の一対の係止部90,90が構成されている。このように、一対の係止部90,90は、接続キャップ14の基端側部分76に設けられている。
【0060】
連結部82は、
図13,14に示すように、略矩形ブロック状とされており、上下方向に貫通する一対のアンカー孔92,92が幅方向(
図13中の左右方向)の両側部分に形成されている。
【0061】
基端側部分76の幅方向の中央部分には、上下方向及び幅方向と直交する方向に延びる円形断面の第1挿通孔94が形成されている。本実施形態の第1挿通孔94は、基端側の端部が基端側へ向けて
図13中の左右方向に広がるテーパ形状とされているが、第1挿通孔94の基端側の端部は、他の部分と略同じ断面形状とされていてもよい。
【0062】
先端側部分78は、基端側部分76よりも柔らかい材質とされており、例えば、合成樹脂エラストマーやゴムなどの弾性材によって形成されている。先端側部分78の外面形状は、
図12~14に示すように、基端から先端に向かって扁平な長円形状から円形状に滑らかに変化している。先端側部分78の基端側には、基端側部分76の連結部82と対応する形状の連結凹所96が形成されている。連結凹所96には、連結部82の一対のアンカー孔92,92に対応する一対の挿入部98,98が上下方向に延びており、連結凹所96の上下両内面に連続している。先端側部分78の中央部分には、第2挿通孔100が形成されている。第2挿通孔100は、第1挿通孔94と対応する円形孔であって、先端側部分78の基端から先端まで貫通して形成されている。
【0063】
基端側部分76と先端側部分78は、直列的に配置されて、相互に連結されている。基端側部分76の連結部82が先端側部分78の連結凹所96に嵌め入れられた状態で固着されている。更に、基端側部分76のアンカー孔92,92に対して先端側部分78の挿入部98,98が挿通状態で設けられており、基端側部分76と先端側部分78の分離を防ぐ一対のアンカー部102,102が構成されている。基端側部分76と先端側部分78は、成形後に溶着などの手段で相互に固着されていても良いが、本実施形態の基端側部分76と先端側部分78は、インサート成形、二色成形や段階的な成形などにより、相互に固着された状態で成形される。これにより、先端側部分78の挿入部98,98が、基端側部分76のアンカー孔92,92に挿通された状態で形成される。
【0064】
接続キャップ14は、
図1~7に示すように、ハウジング16から突出したポート部材20の先端筒部68に被せ付けられる。そして、
図6,7に示すように、カテーテル74が外装状態で取り付けられたポート部材20に対して、接続キャップ14が被せ付けられることにより、カテーテル74のポート部材20からの抜けが防止される。即ち、カテーテル74のポート部材20への接続側端部が、ポート部材20の外周面と接続キャップ14の硬質な基端側部分76との間で挟み込まれることによって、カテーテル74がポート部材20により強固に取り付けられる。
【0065】
カテーテル74は、例えば以下のようにしてポート部材20と接続キャップ14の径方向間に挟み込まれる。即ち、カテーテル74は、先ず、ポート部材20に対して先端筒部68の先端から凸部72に至る位置又は凸部72を超えた位置まで被せ付けられるように外挿される。カテーテル74は、好適には、ハウジング16の係止用突部48,48の先端面より奥側(基端側)まで挿入されて、係止用突部48,48の間に挿し込まれる。カテーテル74が、接続キャップ14だけでなく、ハウジング16に設けられた係止用突部48,48の対向間にまで嵌め入れられることによって、カテーテル74とポート部材20の接続状態をより確実に且つ安定して実現することができる。また、カテーテル74がポート部材20と係止用突部48,48の間で挟まれることにより、接続キャップ14のハウジング16への装着前において、カテーテル74のポート部材20からの抜けがより生じ難い。次に、カテーテル74が外装されたポート部材20に接続キャップ14が外装される際に、先端筒部68とポート部材20の間で挟まれたカテーテル74が、接続キャップ14と共に先端筒部68の基端側へ移動して、より基端側まで外挿され、例えば、一対の係止用突部48,48の間まで差し入れられる。なお、好適には、ポート部材20の先端筒部68に被せ付けられたカテーテル74の外径寸法が、接続キャップ14の内径寸法よりも大きくされることにより、カテーテル74を接続キャップ14と共に効率的に基端側へ移動させることができる。
【0066】
接続キャップ14は、
図6に示すように、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48に接続されている。即ち、接続キャップ14のアウタハウジング部材28への取付けに際して、ポート部材20の先端筒部68とカテーテル74が、接続キャップ14の第1挿通孔94及び第2挿通孔100に挿通された状態で、アウタハウジング部材28に接近させられる。そして、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48が、一対の案内面86,86の間を通じて、接続キャップ14の基端側部分76の内周へ差し入れられる。一対の係止用突部48,48に設けられた一対の係合突起52,52が、接続キャップ14の一対の案内面86,86に沿って接した状態で摺動することにより、一対の突出部84,84を乗り越えて、一対の溝状部88,88に入り込む。このように、一対の案内面86,86が設けられていることで、一対の係合突起52,52が一対の溝状部88,88まで入り込み易くなっている。一対の係合突起52,52が一対の溝状部88,88に入り込むことにより、一対の係合突起52,52が一対の突出部84,84に対して軸方向の投影において所定の幅xで重なり合って、一対の係合突起52,52が接続キャップ14の一対の係止部90,90に対して抜出方向で係止される。以上により、接続キャップ14は、アウタハウジング部材28に対して、抜けを防止された状態で接続される。要するに、接続キャップ14は、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48に対して、スナップフィットによって接続される。
【0067】
このように、接続キャップ14をアウタハウジング部材28に接近させて、一対の係止用突部48,48を接続キャップ14に嵌め入れることによって、ポート部材20とカテーテル74の接続部分に接続キャップ14を簡単に取り付けることができる。しかも、一対の係合突起52,52が一対の突出部84,84を乗り越えて一対の溝状部88,88に入り込む際の手応えによって、接続キャップ14とアウタハウジング部材28の固定を把握することができる。
【0068】
接続キャップ14は、基端側が扁平な形状とされており、特に硬質の基端側部分76が扁平な形状とされていることから、一対の係止用突部48,48を接続キャップ14に押し込む際に、接続キャップ14に力を加え易い。しかも、本実施形態では、先端側部分78の基端側が扁平外面形状を有していると共に、先端側部分78の先端側が円形外面を有しており、基端側が長軸方向において先端側よりも大径とされている。これにより、先端側部分78の中間部分の外周面には、なだらかな段差状部104が長軸方向の両側にそれぞれ形成されている。使用者が段差状部104,104に手指を当てて力を加えることにより、接続キャップ14をアウタハウジング部材28への接近方向へ押し込み易くなっている。なお、段差状部104に加えられる力は、柔らかい先端側部分78を介して硬い基端側部分76の先端面に及ぼされる。段差状部104は、接続キャップ14の軸方向と交差して広がっていれば良く、例えば、接続キャップ14の軸方向と略直交する平面で構成することもできる。
【0069】
さらに、一対の突出部84,84が接続キャップ14の長軸方向(幅方向)の両側に設けられている。それ故、接続キャップ14の幅方向の両側部分に押し込む方向の力を加えることによって、一対の係合突起52,52が一対の突出部84,84を乗り越える際の抵抗力が作用する部位に力を直接的に作用させることができる。
【0070】
なお、接続キャップ14の一対の係止部90,90と、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48は、常時接触して係止されていても良い。また、例えば、
図6に示すように、一対の係止部90,90と一対の係止用突部48,48が相互に離れており、接続キャップ14がアウタハウジング部材28から抜ける方向へ変位することで、一対の係止部90,90と一対の係止用突部48,48が接触して係止されるようにもできる。
【0071】
一対の係止用突部48,48は、ポート部材20の先端筒部68に対して、幅方向の外側に離れて配置されている。それ故、一対の係合突起52,52が一対の突出部84,84を乗り越える際に、一対の係止用突部48,48がポート部材20の先端筒部68に接近する方向の弾性的な撓み変形を許容される。特に、一対の係止用突部48,48の基端側には、断面積を小さくされた撓み許容部50がそれぞれ設けられており、一対の係止用突部48,48の撓み変形が各撓み許容部50において有利に許容される。
【0072】
接続キャップ14における接続部80の底内面が、一対の係止用突部48,48の先端面に当接する位置まで、一対の係止用突部48,48が接続キャップ14に差し入れられることにより、接続キャップ14が所定の位置に装着される。これにより、ポート部材20の先端筒部68が接続キャップ14内に収容されて、ポート部材20の先端筒部68に外挿されたカテーテル74が、ポート部材20と接続キャップ14の間で径方向に圧縮される。その結果、カテーテル74の抜けが、接続キャップ14の装着によって防止される。なお、接続キャップ14の先端側部分78が軟質とされていることから、先端側部分78の内周面は、先端筒部68に装着されたカテーテル74の外周面に沿って拡径変形する。接続キャップ14の内周面は、突起のない滑らかな形状であることが望ましく、それによって接続キャップ14に挿入されたカテーテル74の損傷が回避される。
【0073】
また、カテーテル74に抜出方向の引張力が作用すると、接続キャップ14の一対の係止部90,90と、アウタハウジング部材28の一対の係止用突部48,48の一対の係合突起52,52とが係止される。これにより、接続キャップ14の一対の係止用突部48,48からの抜けが防止される。それ故、接続キャップ14がカテーテル74とともにポート部材20から外れることがなく、カテーテル74とポート部材20の接続状態が、接続キャップ14によって安定して維持される。
【0074】
ポート部材20の先端筒部68よりも先端側へ延び出してカテーテル74に外挿される接続キャップ14の先端側部分78は、一対の案内面86,86や一対の係止部90,90を有する基端側部分76に比して、柔らかい材質で形成されている。それ故、接続キャップ14の先端において、カテーテル74のキンクが生じ難い。また、軟質とされた先端側部分78が、円形から長円形に断面形状が変化しており、基端側が扁平な形状とされて、硬質な基端側部分76の先端側を覆っている。それ故、接続キャップ14を一対の係止用突部48,48に嵌め付ける際に、柔軟な先端側部分78を介して硬質の基端側部分76に力を及ぼすことができて、接続キャップ14に力を加え易くなる。
【0075】
接続キャップ14における硬質の基端側部分76と軟質の先端側部分78は、先端側部分78の一対の挿入部98,98が基端側部分76の一対のアンカー孔92,92に挿通された一対のアンカー部102,102によって、相互に固定されている。これにより、材質の異なる基端側部分76と先端側部分78が機械的に連結されて分離不能とされており、カテーテル74から及ぼされる引張力などの外力の作用による接続キャップ14の分解などの損傷が回避される。
【0076】
なお、一対の係止用突部48,48の一対の係合突起52,52と一対の係止部90,90との幅方向のラップ代xは、特に限定されないが、好適には、例えば、0.1mm~0.25mm程度とされる。これによれば、接続キャップ14の一対の係止用突部48,48への装着に必要な力を抑えつつ、接続キャップ14の一対の係止用突部48,48からの抜けを有効に防ぐことができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、接続キャップは、全体が単一の材質で形成されていても良いし、材質の異なる3つ以上の部分で構成されていても良い。
【0078】
前記実施形態の接続キャップ14は、基端側が扁平な外面形状を有していたが、全体が円筒形状などの扁平でない形状とされていても良いし、全体が楕円筒形状などの扁平な形状とされていても良いし、先端側や中間部分が扁平な形状とされていても良い。また、少なくとも一部が扁平な外面形状とされた接続キャップ14において、長軸方向は皮下埋込型ポート10の高さ方向とされ得る。
【0079】
前記実施形態の接続キャップ14は、基端側部分76の接続部80において、一対の係止用突部48,48が挿入される穴と、ポート部材20の先端筒部68が挿入される穴が、仕切られることなくつながって設けられていた。しかし、例えば、接続部80の内周に仕切りが設けられたり、接続部80が二重筒状とされることによって、一対の係止用突部48,48が挿入される穴と、ポート部材20の先端筒部68及びカテーテル74が挿入される穴が、相互に独立していても良い。
【0080】
接続キャップ14は、例えば抜出方向に強く引くなどすることによって、アウタハウジング部材28から取外し可能であることが望ましい。接続キャップ14は、アウタハウジング部材28に対して取外し不能に固定されるようにもできる。
【0081】
接続キャップ14とハウジング16は、前記実施形態の如き接続キャップ14の突出部84,84(係止部90,90)とハウジング16の係合突起52,52との係止による取付構造に代えて、或いは加えて、ねじ山とねじ溝による係止、即ち螺合構造を採用することも可能である。
【0082】
もっとも、接続キャップ14とハウジング16は、好適には、前記実施形態の如き突起による係止によって連結される。即ち、接続キャップ14とハウジング16をねじ構造(螺合)によって連結すると、締付け操作による固定端を感知することが難しいことから、締付けのばらつきや不足が生じやすく、確実な接続状態が安定して発現され難い。それに対して、実施例の如き凹凸係止構造であれば、目的とする固定状態を安定して得ることが可能になる。また、ねじによる固定部分は、全周にわたってねじ山やねじ溝を形成する必要があり、断面が比較的に大きな円形となるために、例えば実施例のように幅寸法に比して高さ寸法が小さい接続キャップとハウジングとの連結構造を実現し難くなる。それ故、ハウジングから接続キャップが上下方向に突出することとなり、全体的に大型化し易く、また、両部材間に段差が発生することに伴って隙間も発生し易くなって、カテーテルの流体密な接続性能にも支障の出るおそれがある。特に前記実施形態では、高さ方向に比して幅方向(周方向)に大きい扁平形状の接続キャップを採用し、幅方向両側に係止構造を設けたことによって、高さ方向のサイズを小さく抑えつつ、接続部材の中心から係止構造までの距離を大きく設定することができる。それ故、係止構造による連結状態において、凹凸係止のがたつきに起因して発生する接続キャップのハウジングに対するがたつきを小さく抑えることも可能とされている。
【0083】
案内面86は、必ずしも突出部84の先端面の略全体によって構成されるものに限定されず、例えば、接続部80の基端側開口部83において突出部84の基端側の角部にC面取りやR面が設けられたものでも良い。
【0084】
一対の係止用突部48,48は、ベースハウジング部材26に設けられていても良い。また、ハウジング16は、アウタハウジング部材28とベースハウジング部材26を有する分割構造に限定されるものではなく、単一構造体であっても良いし、3つ以上の分割体によって構成されていても良い。
【0085】
一対の係止用突部に設けられる撓み許容部は、必ずしも一対の係止用突部の基端に位置していなくても良く、例えば、一対の係止用突部の中間部分に設けられ得る。
【0086】
前記実施形態では、一対の係止用突部48,48の側面に設けられた一対の係合突起52,52が、一対の案内面86,86の奥方に設けられた一対の溝状部88,88に入り込んで、一対の係止部90,90に係止されるようになっていた。しかし、例えば、一対の係止用突部の側面に係止用の穴が設けられていると共に、一対の案内面の奥方に該係止用の穴に差し入れられて抜出方向で係止される係止用の突起が設けられていても良い。
【0087】
ポート部材20の先端筒部68に外挿状態で取り付けられるカテーテル74は、基端側の端部が一対の係止用突部48,48の間に差し入れられて、端面がポート部材20の基端筒部66に当接していても良い。尤も、カテーテル74の基端側の端部は、一対の係止用突部48,48の突出方向の中間に位置していても良いし、一対の係止用突部48,48の間までは至らずに配置されていても良い。
【0088】
カテーテル74は、ポート部材20に対して接着や溶着などの手段で固着しても良い。カテーテル74を接続キャップ14によってポート部材20の外周面に押し付けることで、カテーテル74をポート部材20に対して固着することもできる。
【符号の説明】
【0089】
10 皮下埋込型ポート
12 ポート本体
14 接続キャップ
16 ハウジング
18 弾性蓋体
20 ポート部材
22 凹所
24 内腔
26 ベースハウジング部材
28 アウタハウジング部材
30 周壁部
32 底壁部
34 環状段差部
36 ポート部
38 連通孔
40 環状突部
42 嵌合板部
44 竪壁部
46 開口窓
48 係止用突部
50 撓み許容部
52 係合突起
54 環状押え部
56 係止爪
58 嵌合凹部
60 サービスホール
62 造影リング
64 中心孔
66 基端筒部
68 先端筒部(接続ポート)
70 嵌合突部
72 凸部
74 カテーテル
76 基端側部分
78 先端側部分
80 接続部
82 連結部
83 基端側開口部
84 突出部
86 案内面
88 溝状部
90 係止部
92 アンカー孔
94 第1挿通孔
96 連結凹所
98 挿入部
100 第2挿通孔
102 アンカー部
104 段差状部
【手続補正書】
【提出日】2024-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性蓋体で塞がれた薬液貯留用の内腔を備えており、該内腔に連通されてカテーテルに挿入接続される接続ポートが設けられたハウジングを有する皮下埋込型ポートであって、
前記ハウジングには、前記接続ポートを挟んで上下方向で対向する部分を外れた周方向両側に一対の係止用突部が設けられており、
該一対の係止用突部には、突出方向の基端部分において先端側よりも薄肉の撓み許容部が形成されており、
前記カテーテルに外挿されて該カテーテルの接続側端部を前記接続ポートとの間で径方向に挟むスリーブ状の接続キャップを有しており、
該接続キャップは前記一対の係止用突部と係止可能な係止部を有している皮下埋込型ポート。
【請求項2】
前記撓み許容部は前記係止用突部の高さ寸法を維持して設けられている請求項1に記載の皮下埋込型ポート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の第1の態様は、弾性蓋体で塞がれた薬液貯留用の内腔を備えており、該内腔に連通されてカテーテルに挿入接続される接続ポートが設けられたハウジングを有する皮下埋込型ポートであって、前記ハウジングには、前記接続ポートを挟んで上下方向で対向する部分を外れた周方向両側に一対の係止用突部が設けられており、該一対の係止用突部には、突出方向の基端部分において先端側よりも薄肉の撓み許容部が形成されており、前記カテーテルに外挿されて該カテーテルの接続側端部を前記接続ポートとの間で径方向に挟むスリーブ状の接続キャップを有しており、該接続キャップは前記一対の係止用突部と係止可能な係止部を有しているものである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記撓み許容部は前記係止用突部の高さ寸法を維持して設けられているものである。
原出願に係る発明の第1の態様は、弾性蓋体で塞がれた薬液貯留用の内腔を備えており、該内腔に連通されてカテーテルに挿入接続される接続ポートが設けられたハウジングを有する皮下埋込型ポートであって、前記カテーテルに外挿されて該カテーテルの接続側端部を前記接続ポートとの間で径方向に挟むスリーブ状の接続キャップを有しており、該接続キャップは前記ハウジングと係止可能な係止部を有するものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
原出願に係る発明の第2の態様は、原出願に係る発明の第1の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記ハウジングの周方向で前記接続ポートを挟んだ両側に一対の係止用突部が設けられている一方、前記接続キャップの基端側開口部における該ハウジングの周方向両側の内面にはそれぞれ基端側に向かって拡がる一対の案内面が設けられており、該一対の案内面に沿って該一対の係止用突部が該接続キャップ内へ差し入れられて、該一対の案内面の奥方に設けられた一対の係止部に対して該一対の係止用突部が抜出方向に係止されるようになっているものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
原出願に係る発明の第3の態様は、原出願に係る発明の第2の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記係止用突部には、基端側に位置して断面積が小さくされた撓み許容部が設けられているものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
原出願に係る発明の第4の態様は、原出願に係る発明の第2又は第3の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記ハウジングが、前記内腔の底壁部を構成するベースハウジング部材と、前記弾性蓋体の外周部分を該ベースハウジング部材との間で挟圧するアウタハウジング部材とを含んで構成されており、該ベースハウジング部材と該アウタハウジング部材との一方に前記接続ポートが設けられていると共に、該ベースハウジング部材と該アウタハウジング部材との他方に前記一対の係止用突部が設けられているものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
原出願に係る発明の第5の態様は、原出願に係る発明の第1~第4の何れか1つの態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記接続キャップが長さの異なる直交2軸を有する扁平外面形状を有しているものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
原出願に係る発明の第6の態様は、原出願に係る発明の第1~第5の何れか1つの態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記接続キャップの基端側が先端側よりも大径とされて、該接続キャップの外周面に段差状部が設けられているものである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
原出願に係る発明の第7の態様は、原出願に係る発明の第1~第6の何れか1つの態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、前記接続キャップは、前記接続ポートとの間で前記カテーテルの接続側端部を径方向に挟む基端側部分が、該接続ポートよりも先端側へ延び出して該カテーテルに外挿される先端側部分よりも硬い材質で形成されているものである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
原出願に係る発明の第8の態様は、原出願に係る発明の第7の態様に記載された皮下埋込型ポートにおいて、互いに材質の異ならされた前記基端側部分と前記先端側部分とが、機械的に係合されたアンカー部をもって相互に固定されているものである。