(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166366
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】絶縁ゲート型半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241121BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L29/78 652C
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161176
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2023108009の分割
【原出願日】2017-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】奥村 啓樹
(57)【要約】
【課題】絶縁ゲート型半導体装置の更なる改善を図ることができる絶縁ゲート型半導体装置を提供する。
【解決手段】第1側壁面と第2側壁面で両側壁を定義したトレンチ10a,10bの内側に配置された絶縁ゲート型電極構造(5a,6a),(5b,6b)と、トレンチ10a,10bの第1側壁面に接した第1導電型の主電極領域4a,4cと、主電極領域4a,4cの下面と第1側壁面に接した第2導電型のベース領域3a,3bと、ベース領域3a,3bの下面と第1側壁面に接した第1導電型のドリフト層1と、トレンチ10a,10bの第2側壁面及び底面に接した第2導電型のゲート保護領域2b,2cと、主電極領域4a,4cと接した主電極8を有する単位セルを複数備え、隣接する単位セルの間に位置するドリフト層1と主電極8により構成されるショットキーバリアダイオードD1を内蔵する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ構造の基準面に対し第1の傾斜角をなす第1側壁面と、該第1側壁面に対向し前記基準面に対し前記第1の傾斜角とは異なる第2の傾斜角をなす第2側壁面で両側壁を定義したトレンチの内側に配置された絶縁ゲート型電極構造と、
前記トレンチの第1側壁面に接した第1導電型の主電極領域と、
該主電極領域の下面と前記第1側壁面に接した第2導電型のベース領域と、
該ベース領域の下面と前記第1側壁面に接した前記主電極領域より低不純物密度で第1導電型のドリフト層と、
前記トレンチの前記第2側壁面及び底面に接し、前記ベース領域よりも高不純物密度で第2導電型のゲート保護領域と、
前記主電極領域と接した主電極とを有する単位セルを複数備え、
隣接する前記単位セルの間に位置する前記ドリフト層と前記主電極により構成されるショットキーバリアダイオードを内蔵することを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項2】
前記主電極領域の上面と同一の水平レベルに位置する前記ドリフト層の上面と前記主電極により前記ショットキーバリアダイオードのショットキー接合が構成されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項3】
前記主電極が、前記ドリフト層に前記トレンチの底面と同一の深さまで埋め込まれた凸部を有し、
前記凸部の底面と前記ドリフト層とにより前記ショットキーバリアダイオードのショットキー接合が構成されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項4】
前記主電極が、前記ドリフト層に前記トレンチの底面と同一の深さまで埋め込まれた凸部を有し、
前記凸部の側面と前記ドリフト層とにより前記ショットキーバリアダイオードのショットキー接合が構成されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【請求項5】
前記主電極が前記ドリフト層に前記トレンチの底面と同一の深さまで埋め込まれた凸部を有し、
前記主電極領域の上面と同一の水平レベルに位置する前記主電極の下面、前記凸部の側面及び底面と、前記ドリフト層とにより前記ショットキーバリアダイオードのショットキー接合が構成されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチ内に絶縁ゲート型電極構造を有する絶縁ゲート型半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲート型のMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)は、プレーナゲート型に対してセルピッチの縮小によるオン抵抗の低減が期待できる。炭化珪素(SiC)等のワイドバンドギャップ半導体を材料とするトレンチゲート型のMOSFETでは、トレンチの側壁面にa面(11-20)を使用した構造が提案されている(特許文献1~3参照)。特許文献1~3では、トレンチの一方の側壁面側にn型のソース領域及びp型のベース領域を設け、その側壁面側を電流経路として使用する。
【0003】
ワイドバンドギャップ半導体を材料とするトレンチゲート型のMOSFET等の絶縁ゲート型半導体装置においては、その構造や製法について更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0077251号明細書
【特許文献2】特許第6105032号明細書
【特許文献3】特開2016-163047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、絶縁ゲート型半導体装置の更なる改善を図ることができる絶縁ゲート型半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、チップ構造の基準面に対し第1の傾斜角をなす第1側壁面と、その第1側壁面に対向し基準面に対し第1の傾斜角とは異なる第2の傾斜角をなす第2側壁面で両側壁を定義した複数のトレンチをチップ構造に配列した絶縁ゲート型半導体装置であって、(a)複数のトレンチに含まれる第1のトレンチに絶縁ゲート型電極構造を設けた第1の単位セルであって、第1のトレンチの第1側壁面に接した第1導電型の主電極領域、その主電極領域の下面と第1側壁面に接した第2導電型のベース領域、そのベース領域の下面と第1側壁面に接した主電極領域より低不純物密度で第1導電型のドリフト層、第1のトレンチの第2側壁面及び底面に接し、ベース領域よりも高不純物密度で第2導電型のゲート保護領域を有する第1の単位セルと、(b)複数のトレンチに含まれる第2のトレンチに絶縁ゲート型電極構造を設けた第2の単位セルであって、ドリフト層の上部に埋め込まれ、第2のトレンチの第1側壁面及び第2側壁面に接した第2導電型で、ベース領域よりも高不純物密度の動作抑制領域を有する第2の単位セルとを備え、第2の単位セルが、複数のトレンチの配列の一端に位置する第2のトレンチを含むように配置される絶縁ゲート型半導体装置であることを要旨とする。
【0007】
本発明の他の態様は、(a)チップ構造の基準面に対し第1の傾斜角をなす第1側壁面と、その第1側壁面に対向し基準面に対し第1の傾斜角とは異なる第2の傾斜角をなす第2側壁面で両側壁を定義したトレンチの内側に配置された絶縁ゲート型電極構造と、(b)トレンチの第1側壁面に接した第1導電型の主電極領域と、(c)主電極領域の下面と第1側壁面に接した第2導電型のベース領域と、(d)ベース領域の下面と第1側壁面に接した主電極領域より低不純物密度で第1導電型のドリフト層と、(e)トレンチの第2側壁面及び底面に接し、ベース領域よりも高不純物密度で第2導電型のゲート保護領域と、(f)主電極領域と接した主電極を有する単位セルを複数備え、隣接する単位セルの間に位置するドリフト層と主電極により構成されるショットキーバリアダイオードを内蔵する絶縁ゲート型半導体装置であることを要旨とする。
【0008】
本発明の他の態様は、(a)チップ構造の基準面に対し第1の傾斜角をなす第1側壁面と、その第1側壁面に対向し基準面に対し第1の傾斜角とは異なる第2の傾斜角をなす第2側壁面で両側壁を定義したトレンチの内側に配置された絶縁ゲート型電極構造と、(b)トレンチの第1側壁面に接した高不純物密度で第1導電型の主電極領域と、(c)主電極領域の下面と第1側壁面に接した第2導電型のベース領域と、(d)ベース領域の下面と第1側壁面に接した主電極領域より低不純物密度で第1導電型のドリフト層と、(e)トレンチの第2側壁面及び底面に接し、ベース領域よりも高不純物密度で第2導電型のゲート保護領域と、(f)トレンチから離間してゲート保護領域に接し、ベース領域よりも高不純物密度で第2導電型のベースコンタクト領域とを備える絶縁ゲート型半導体装置であることを要旨とする。
【0009】
本発明の他の態様は、(a)第1導電型のドリフト層と、(b)ドリフト層上に設けられた第2導電型のベース領域と、(c)ベース領域の上部に設けられ、ドリフト層よりも高不純物密度で第1導電型の主電極領域と、(d)主電極領域及びベース領域に一方の側壁面が接するように、ストライプ状のトレンチの内側に設けられた絶縁ゲート型電極構造と、(e)トレンチの底面及び他方の側壁面に接するようにドリフト層上にストライプ状に設けられ、ベース領域よりも高不純物密度で第2導電型のゲート保護領域とを備えるストライプ状の単位セルが複数配列され、隣接する単位セルのトレンチ間に共通のベース領域を挟む構造と、隣接する単位セルのトレンチ間に共通のゲート保護領域を挟む構造とを交互に繰り返し、ゲート保護領域がトレンチの長手方向に沿って間欠的に配列されている絶縁ゲート型半導体装置であることを要旨とする。
【0010】
本発明の他の態様は、(a)第1導電型のドリフト層上に第2導電型のベース領域を形成する工程と、(b)ベース領域の上部に、ドリフト層よりも高不純物密度で第1導電型の主電極領域を形成する工程と、(c)主電極領域が形成されたチップ構造の基準面に対し第1の傾斜角をなす第1側壁面と、その第1側壁面に対向し基準面に対し第1の傾斜角とは異なる第2の傾斜角をなす第2側壁面で両側壁を定義したトレンチをドリフト層に到達するまで形成し、主電極領域及びベース領域を第1側壁面に露出させる工程と、(d)トレンチの底面及び第1側壁面に斜めにイオン注入することにより、トレンチの底面及び第1側壁面に接した第2導電型のゲート保護領域を形成する工程と、(e)トレンチの内側に絶縁ゲート型電極構造を形成する工程とを含む絶縁ゲート型半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁ゲート型半導体装置の更なる改善を図ることができる絶縁ゲート型半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1のA-A方向から見た第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の垂直方向の断面図である。
【
図3】
図1のB-B方向から見た第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の垂直方向の断面図である。
【
図4】トレンチの側壁面の面方位を説明するための概略図である。
【
図5】トレンチの側壁面の面方位を説明するための概略図である。
【
図6】トレンチの側壁面の面方位とゲート電圧及び移動度の関係を表すグラフである。
【
図7】第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の一例を示す要部断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図13】第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の一例を示す要部断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
【
図16】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図15に引き続く工程断面図である。
【
図17】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図16に引き続く工程断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図17に引き続く工程断面図である。
【
図19】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図18に引き続く工程断面図である。
【
図20】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図19に引き続く工程断面図である。
【
図21】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図20に引き続く工程断面図である。
【
図22】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図21に引き続く工程断面図である。
【
図23】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の一例を説明するための
図22に引き続く工程断面図である。
【
図24】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図25】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図26】第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の一例を示す要部断面図である。
【
図27】第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の一例を示す要部断面図である。
【
図28】
図27のA-A方向から見た第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の水平方向の断面図である。
【
図29】
図28のC-C方向から見た第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の垂直方向の断面図である。
【
図30】
図27のA-A方向から見た比較例に係る絶縁ゲート型半導体装置の水平方向の他の断面図である。
【
図31】
図27のA-A方向から見た第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の水平方向の他の断面図である。
【
図32】
図27のA-A方向から見た第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の水平方向の他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の第1~第4実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0014】
本明細書において、「第1主電極領域」とは、電界効果トランジスタ(FET)や静電誘導トランジスタ(SIT)においてソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)においてはエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。又、静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)やゲートターンオフサイリスタ(GTO)においてはアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。「第2主電極領域」とは、FETやSITにおいては上記第1主電極領域とはならないソース領域又はドレイン領域のいずれか一方となる半導体領域を意味する。IGBTにおいては上記第1主電極領域とはならないエミッタ領域又はコレクタ領域のいずれか一方となる領域を意味する。SIサイリスタやGTOにおいては上記第1主電極領域とはならないアノード領域又はカソード領域のいずれか一方となる領域を意味する。このように、「第1主電極領域」がソース領域であれば、「第2主電極領域」はドレイン領域を意味する。「第1主電極領域」がエミッタ領域であれば、「第2主電極領域」はコレクタ領域を意味する。「第1主電極領域」がアノード領域であれば、「第2主電極領域」はカソード領域を意味する。バイアス関係を交換すれば、FET等では、「第1主電極領域」の機能と「第2主電極領域」の機能を交換可能である。更に、本明細書において単に「主電極領域」と記載する場合は、第1主電極領域又は第2主電極領域のいずれか一方を包括的に意味する。
【0015】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。また「n」や「p」に付す「+」や「-」は、「+」及び「-」が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物密度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じ「n」と「n」とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物密度が厳密に同じであることを意味するものではない。更に、以下の説明で「第1導電型」及び「第2導電型」の限定を加えた部材や領域は、特に明示の限定がなくても半導体材料からなる部材や領域を意味していることは、技術的にも論理的にも自明である。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、「-」はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に「-」を付けることで負の指数を表している。
【0016】
第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置(MISFET)は、
図1に示すように、同一形状の複数のトレンチ10a~10c,…,10d~10fをそれぞれ有する複数の単位セルC1~C3,…,C4~C6の配列を含むチップ構造を有する。なお、第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置において、トレンチの本数及び単位セルの個数は特に限定されない。第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、この単位セルを更に複数配列してマルチチャネル構造をなすことにより大電流を流す電力用半導体装置(パワーデバイス)とすることが可能である。
【0017】
図1ではトレンチ10a~10c,…,10d~10fの平面パターンを破線で模式的に示している。トレンチ10a~10c,…,10d~10fはストライプ状をなし、互いに平行に延伸する。トレンチ10a~10c,…,10d~10fの長手方向に直交する方向(トレンチ10a~10c,…,10d~10fの並列方向)において、単位セルC1~C3は配列構造の左側の周辺部に位置し、単位セルC1が配列構造の一端に位置する。また、単位セルC4~C6は配列構造の右側の周辺部に位置し、単位セルC6が配列構造の他端に位置する。
【0018】
図1に示した左側の周辺部の単位セルC1~C3をA-A方向から見た垂直方向の断面図が
図2に対応する。第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、
図2に示すように、第1導電型(n型)のドリフト層1と、ドリフト層1上に配置された第2導電型(p型)のベース領域3a,3bを備える。ドリフト層1及びベース領域3a,3bは、SiCからなるエピタキシャル成長層でそれぞれ構成されている。
【0019】
ベース領域3a,3bの上部には、ドリフト層1よりも高不純物密度のn+型の第1主電極領域(ソース領域)4a~4dが選択的に設けられている。ソース領域4a,4cはベース領域3a,3bにそれぞれ接する。なお、ソース領域4b,4dは電流経路として使用しないため、設けなくても構わない。ドリフト層1上には、ベース領域3a,3bよりも高不純物密度のp+型のゲート保護領域2a,2bが選択的に設けられている。ゲート保護領域2a,2bの上面は、ソース領域4a~4dの上面と同一の水平レベルに位置する。ゲート保護領域2aは、ソース領域4b,4c及びベース領域3bに接する。
【0020】
ソース領域4a~4dの上面からドリフト層1に達するようにトレンチ10a~10cが設けられている。
図2では、トレンチ10a~10cの両方の側壁面が垂直方向に平行である場合を例示するが、これに限定されない。例えば、トレンチ10a~10cの両方の側壁面が下方に向かうにつれて先細りするように傾斜していてもよい。また、トレンチ10a~10cの底面が平面の場合を例示するが、曲面であってもよく、底面の角部が曲率を有していてもよい。
【0021】
トレンチ10bの一方の側壁面(後述する第1側壁面)はソース領域4a及びベース領域3aに接し、他方の側壁面(後述する第2側壁面)はソース領域4b及びゲート保護領域2bに接する。トレンチ10dの一方の側壁面はソース領域4c及びベース領域3bに接し、他方の側壁面はソース領域4d及びゲート保護領域2bに接する。トレンチ10b,10dの底面は、ドリフト層1及びゲート保護領域2a,2bにそれぞれ接する場合を例示するが、トレンチ10b,10dの底面のすべてがゲート保護領域2a,2bでそれぞれ被覆されていてもよい。一方、トレンチ10aの両側壁面及び底面は、p+型の動作抑制領域2xで被覆されている。動作抑制領域2xは、ソース領域4a及びベース領域3aに接する。動作抑制領域2xは、ゲート保護領域2a,2bと同じ深さで設けられている。
【0022】
トレンチ10a~10cの底面及び側壁面にはゲート絶縁膜5a~5cが設けられている。ゲート絶縁膜5a~5cとしては、シリコン酸化膜(SiO2膜)の他、シリコン酸窒化(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、シリコン窒化物(Si3N4)膜、アルミニウム酸化物(Al2O3)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y2O3)膜、ハフニウム酸化物(HfO2)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO2)膜、タンタル酸化物(Ta2O5)膜、ビスマス酸化物(Bi2O3)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。
【0023】
トレンチ10a~10cの内側にはゲート絶縁膜5a~5cを介してゲート電極6a~6cが埋め込まれ、絶縁ゲート型電極構造(5a,6a),(5b,6b),(5c,6c)を構成している。ゲート電極6a~6cの材料としては、例えば燐(P)等の不純物を高不純物密度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)が使用可能である。
【0024】
ゲート電極6a~6c上には層間絶縁膜7を介して第1主電極(ソース電極)8が配置されている。層間絶縁膜7としては、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜(SiO2膜)が採用可能である。しかし、層間絶縁膜7としては、燐を添加したシリコン酸化膜(PSG)、硼素を添加したシリコン酸化膜(BSG)、硼素及び燐を添加したシリコン酸化膜(BPSG)、シリコン窒化膜(Si3N4)等でもよい。ソース電極8は、ソース領域4a,4c及びゲート保護領域2a,2bに電気的に接続されている。ソース電極8は、紙面の奥に位置するゲート表面電極(図示省略)と分離して配置されている。
【0025】
例えば、ソース電極8はアルミニウム(Al)膜で構成できる。ゲート表面電極は、ソース電極8と同様の材料が使用可能である。図示を省略するが、ソース電極8の下には、下地金属となるソースコンタクト層及びバリアメタル層が配置されていてもよい。例えば、ソースコンタクト層がニッケルシリサイド(NiSix)膜、バリアメタル層が窒化チタン(TiN)膜で構成できる。
【0026】
ドリフト層1の下面には、ドリフト層1に接するようにn+型の第2主電極領域(ドレイン領域)9が配置されている。ドレイン領域9はSiCからなる半導体基板(SiC基板)で構成されている。ドレイン領域9の下面には、第2主電極(ドレイン電極)11が配置されている。ドレイン電極11としては、例えば金(Au)からなる単層膜や、Al、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜やニッケル(Ni)とチタン(Ti)を堆積させてSiCと反応させた合金層を積層してもよい。
【0027】
一方、
図1に示した右側の周辺部に位置する単位セルC4~C6をB-B方向から見た垂直方向の断面図が
図3に対応する。
図3に示すように、n型のドリフト層1上にはp型のベース領域3c~3eが配置されている。ベース領域3c~3eの上部には、n
+型のソース領域4e~4jが選択的に設けられている。ソース領域4e,4g,4hはベース領域3c~3eにそれぞれ接する。なお、ソース領域4f,4h,4jは電流経路として使用しないため、設けなくても構わない。ドリフト層1上にはp
+型のゲート保護領域2c~2eが選択的に設けられている。ゲート保護領域2c~2eの上面は、ソース領域4e~4jの上面と同一の水平レベルに位置する。ゲート保護領域2cは、ソース領域4g及びベース領域3dに接する。ゲート保護領域2dは、ソース領域4i及びベース領域3eに接する。
【0028】
ソース領域4e~4jの上面からドリフト層1に達するようにトレンチ10d~10fが設けられている。トレンチ10dの一方の側壁面はソース領域4e及びベース領域3cに接し、他方の側壁面はソース領域4f及びゲート保護領域2cに接する。トレンチ10eの一方の側壁面はソース領域4g及びベース領域3dに接し、他方の側壁面はソース領域4h及びゲート保護領域2dに接する。トレンチ10fの一方の側壁面はソース領域4i及びベース領域3eに接し、他方の側壁面はソース領域4j及びゲート保護領域2eに接する。トレンチ10d~10fの底面は、ドリフト層1及びゲート保護領域2c~2eにそれぞれ接する場合を例示するが、トレンチ10d~10fの底面のすべてがゲート保護領域2c~2eでそれぞれ被覆されていてもよい。
【0029】
トレンチ10d~10fの内側にはゲート絶縁膜5d~5fを介してゲート電極6d~6fが埋め込まれ、絶縁ゲート型電極構造(5d,6d),(5e,6e),(5f,6f)を構成している。ゲート電極6d~6f上には層間絶縁膜7を介してソース電極8が配置されている。ソース電極8は、ソース領域4e,4g,4h及びゲート保護領域2c~2eに電気的に接続されている。ドリフト層1の下面には、ドリフト層1に接するようにn+型のドレイン領域9が配置されている。ドレイン領域9の下面にはドレイン電極11が配置されている。
【0030】
ここで、
図4~
図6を参照して、
図1~
図3に示したトレンチ10a~10c,…,10d~10fの側壁面に使用する面方位について説明する。
図1~
図3に示したトレンチ10a~10c,…,10d~10fが形成されるチップ構造は、
図4に示すように、例えば、<0001>(c軸)方向に対して<11-20>方向に4°~8°程度のオフ角θ1を有する。オフ角θ1は、(0001)面(Si面)又は(000-1)面(C面)であるc軸と垂直な面(基底面)と、チップ構造の基準面とがなす角度である。チップ構造の側面に複数の実線で示す直線L1はSi面を模式的に示している。このチップ構造に、トレンチT1と、トレンチT1と直交するトレンチT2を設けることを考える。トレンチT1の側壁面S1,S2は、(0001)面に垂直な(1-100)面であるm面を使用する。トレンチT1の側壁面S1,S2は実際にはテーパ状に形成されるため、トレンチT1の側壁面S1,S2はいずれも、Si面側に9°程度傾斜したm面となる。
【0031】
図5はチップ構造にトレンチT2を設けた場合を示す。
図5に示すように、トレンチT2の対向する側壁面S3,S4はいずれも(11-20)面であるa面を使用している。
図5において、a面に平行な破線L2,L3を模式的に示す。この場合、半導体ウェハがオフ角θ1を有するため、トレンチT2の一方の側壁面S3のa面に対する傾斜角θ2と、他方の側壁面S4のa面に対する傾斜角θ3が異なる。例えばオフ角θ1が4°の場合、トレンチT2の側壁面S3は、a面に対するSi面側の傾斜角θ2が5°となり、トレンチT2の側壁面S4は、a面に対するSi面側の傾斜角θ4が13°となる。
図6は、Si面側に9°傾斜したm面、Si面側に5°傾斜したa面、Si面側に13°傾斜したa面についてのゲート電圧及び電子の移動度の関係を示す。
図6から、Si面側に5°傾斜したa面、Si面側に9°傾斜したm面、Si面側に13°傾斜したa面の順で電子の移動度が高い。
【0032】
第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、
図1~
図3に示したトレンチ10b~10c,…,10d~10fの、ソース領域4a,4c,4e,4g,4i及びベース領域3a~3eに接する側の側壁面として、相対的にSi面側に傾斜角θ2が小さく、電子の移動度が高いa面を使用し、電流経路として活用する。このa面を、チップ構造の基準面(a面)に対し第1の傾斜角θ2をなす「第1側壁面」と定義する。
【0033】
一方、
図1~
図3に示したトレンチ10b~10c,…,10d~10fの、ソース領域4b,4d,4f,4h,4j及びゲート保護領域2a~2eに接する側の側壁面として、相対的にSi面側に傾斜角θ3が大きく、電子の移動度が低いa面を使用する。このa面を、第1側壁面に対向し、基準面(a面)に対し第1の傾斜角θ2とは異なる第2の傾斜角θ3をなし、電子の移動度が第1側壁面よりも低い「第2側壁面」と定義する。このように、トレンチ10b~10c,…,10d~10fの両側壁が、「第1側壁面」及び「第2側壁面」で定義される。
【0034】
第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の動作時は、ドレイン電極11に正電圧を印加し、ゲート電極6a~6fに閾値以上の正電圧を印加する。これにより、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の一端に位置する単位セルC1を除く単位セルC2~C6においては、ベース領域3a~3eのゲート電極6b~6f側に反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、ドレイン電極11からドレイン領域9、ドリフト層1、ベース領域3a~3eの反転層及びソース領域4a,4c,4e,4g,4iを経由してソース電極8へ電流が流れる。一方、ゲート電極6a~6fに印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域3a~3eに反転層が形成されないため、オフ状態となり、ドレイン電極11からソース電極8へ電流が流れない。一方、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の一端に位置する単位セルC1においては、トレンチ10aの両側壁面及び底面が動作抑制領域2xで被覆されている。このため、第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の動作時には単位セルC1の動作は抑制される。
【0035】
単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の端部に位置する単位セルC1では、トレンチ10aのパターンが比較的崩れ易い。これに対して、第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置によれば、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の端部に位置する単位セルC1において、トレンチ10aの底部及び両側壁面をp+型の動作抑制領域2xで被覆する。これにより、トレンチ10aのパターンが崩れた場合でも、単位セルC1の動作が抑制されるため、信頼性を向上させることができる。
【0036】
また、
図7に示すように、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の他端に位置する単位セルC6においても、トレンチ10fの底部及び両側壁面をp
+型の動作抑制領域2yで被覆してもよい。動作抑制領域2yは、単位セルC6に隣接する単位セルC5のトレンチ10eの底部及び側壁面に接する。動作抑制領域2yは、単位セルC5のゲート保護領域と共通の半導体領域であり、単位セルC5のゲート保護領域としても機能する。
図7に示した構造によれば、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の両端に位置する単位セルC1,C6のトレンチ10a,10fのパターンが崩れた場合でも単位セルC1,C6の動作が抑制されるため、信頼性を向上させることができる。
【0037】
また、
図8に示すように、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の端部に位置する2つの単位セルC1,C2において、トレンチ10a,10bの底部及び両側壁面をp
+型の動作抑制領域2xで被覆してもよい。これにより、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の端部に位置する2つの単位セルC1,C2のトレンチ10a,10bのパターンが崩れた場合でも単位セルC1,C2の動作が抑制されるため、信頼性を向上させることができる。
【0038】
更に、
図9に示すように、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の他端に位置する2つの単位セルC5,C6においても、トレンチ10e,10fの底部及び両側壁面をp
+型の動作抑制領域2yで被覆してもよい。動作抑制領域2yは、単位セルC5に隣接する単位セルC4のトレンチ10dの底部及び側壁面に接する。動作抑制領域2yは、単位セルC4のゲート保護領域と共通の半導体領域であり、単位セルC4のゲート保護領域としても機能する。
図8及び
図9に示した構造によれば、単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の両端に位置する単位セルC1,C2及び単位セルC5,C6において、トレンチ10a,10b及びトレンチ10e,10fのパターンが崩れた場合でも単位セルC1,C2及び単位セルC5,C6の動作が抑制されるため、信頼性を向上させることができる。
【0039】
なお、
図1に示した単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の一端の1つの単位セルC0のトレンチ10aがp
+型の動作抑制領域2xで被覆された構造と、
図9に示した単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の他端の2つの単位セルC5,C6のトレンチ10e,10fがp
+型の動作抑制領域2yで被覆された構造とを組み合わせてもよい。更に、
図8に示した単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の一端の2つの単位セルC0のトレンチ10a,10bがp
+型の動作抑制領域2xで被覆された構造と、
図7に示した単位セルC1~C3,…C4~6の配列構造の他端の1つの単位セルC6のトレンチ10fがp
+型の動作抑制領域2yで被覆された構造とを組み合わせてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、
図10に示すように、第1導電型(n型)のドリフト層1と、ドリフト層1上に選択的に設けられ、第2導電型(p
+型)のベース領域3a,3bを備える。ベース領域3a,3bの上部には、ドリフト層1よりも高不純物密度で第1導電型の主電極領域(ソース領域)4a~4dが設けられている。なお、4b,4dは電流経路として使用しないため、設けられていなくてもよい。
【0041】
ソース領域4a~4dを貫通するようにトレンチ10a,10bが設けられている。トレンチ10aの一方の側壁面はソース領域4a及びベース領域3aに接し、他方の側壁面はソース領域4bに接する。トレンチ10bの一方の側壁面はソース領域4c及びベース領域3bに接し、他方の側壁面はソース領域4dに接する。
【0042】
第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、トレンチ10a,10bのソース領域4a,4c及びベース領域3a,3b側の側壁面として、相対的に電子の移動度の高いa面を使用する。一方、トレンチ10a,10bのソース領域4b,4d側の側壁面として、相対的に電子の移動度の低いa面を使用する。即ち、トレンチ10a,10bのソース領域4a,4c及びベース領域3a,3b側の側壁面が第1側壁面となり、トレンチ10a,10bのソース領域4b,4d側の側壁面が第2側壁面となる。
【0043】
トレンチ10a,10bの内側には、ゲート絶縁膜5a,5b及びゲート電極6a,6bからなる絶縁ゲート型電極構造(5a,6a),(5b,6b)が設けられている。ドリフト層1上には、ベース領域3a,3bよりも高不純物密度で第2導電型(p+型)のゲート保護領域2a~2cが選択的に設けられている。ゲート保護領域2aは、ソース領域4a及びベース領域3aに接する。ゲート保護領域2bは、トレンチ10aの底面及び側壁面に接し、且つソース領域4bに接する。ゲート保護領域2cは、トレンチ10bの底面及び側壁面に接し、且つソース領域4dに接する。
【0044】
ゲート電極6a,6b上には層間絶縁膜7を介して第1主電極(ソース電極)8が配置されている。ソース電極8はソース領域4a,4c及びゲート保護領域2a~2cに接する。ドリフト層1の下面には、ドリフト層1に接するようにn+型の第2主電極領域(ドレイン領域)9が配置されている。ドレイン領域9の下面には、第2主電極(ドレイン電極)11が配置されている。
【0045】
第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、トレンチ10a,10bをそれぞれ含む単位セルの間に、ドリフト層1とソース電極8により構成されるショットキーバリアダイオードD1(
図10に回路記号で模式的に図示)を内蔵する。ショットキーバリアダイオードD1は還流ダイオード(FWD)として機能する。
図10に示した構造においては、ソース領域4a~4dの上面と同一の水平レベルに位置するドリフト層1の上面とソース電極8により、ショットキーバリアダイオードD1のショットキー接合が形成されている。第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の構成及び基本的な動作は、第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0046】
第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置によれば、ショットキーバリアダイオードD1を内蔵することで、外付けのFWDが不要となり、部品点数を削減することができる。
【0047】
また、
図11に示す第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例は、ショットキーバリアダイオードD2の構成が、
図10に示した第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と異なる。ドリフト層1上にはp
+型のゲート保護領域2a~2c及びp
+型のベースコンタクト領域2fが選択的に設けられている。ソース電極8は、ゲート保護領域2b及びベースコンタクト領域2fに挟まれるように、トレンチ10a,10bの底面と同一の深さまで埋め込まれた凸部8aを有する。ソース電極8の凸部8aの底面とドリフト層1によりショットキー接合が形成され、ショットキーバリアダイオードD2が構成される。
【0048】
また、
図12に示す第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例は、ショットキーバリアダイオードD3の構成が、
図10に示した第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と異なる。ドリフト層1上にはp
+型のゲート保護領域2a~2cが選択的に設けられている。ソース電極8は、ゲート保護領域2b及びベース領域3bに挟まれるように、トレンチ10a,10bの底面と同一の深さまで埋め込まれた凸部8aを有する。ソース電極8の凸部8aの側面とドリフト層1によりショットキー接合が形成され、ショットキーバリアダイオードD3が構成される。
図12に示した第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例によれば、ソース電極8の凸部8aの側面とドリフト層1によりショットキー接合を形成する。したがって、ショットキーバリアダイオードD3の面積を維持しつつ、ゲート保護領域2bの幅W1を縮小でき、チップサイズを縮小可能である。
【0049】
また、
図13に示す第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例は、ショットキーバリアダイオードD3の構成が、
図10に示した第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と異なる。ドリフト層1上にはp
+型のゲート保護領域2a~2c及びp
+型のベースコンタクト領域2fが選択的に設けられている。ソース電極8は、ドリフト層1及びベースコンタクト領域2fに挟まれるように、ドリフト層1にトレンチ10a,10bの底面と同一の深さまで埋め込まれた凸部8aを有する。凸部8aの底面はドリフト層1及びベースコンタクト領域2fに接する。ソース電極8の下面から、ソース電極8の凸部8aの側面及び底面までの領域と、ドリフト層1とにより階段状にショットキー接合が形成されている。
図13に示した第2実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例によれば、ショットキーバリアダイオードD4の面積を広くとることができ、順方向電圧を低減可能となる。
【0050】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、
図14に示すように、第1導電型(n型)のドリフト層1と、ドリフト層1上に選択的に設けられ、第2導電型(p型)のベース領域3a,3bを備える。ベース領域3a,3bの上部には、ドリフト層1よりも高不純物密度で第1導電型(n
+型)の主電極領域(ソース領域)4a~4cが設けられている。なお、ソース領域4bは電流経路として使用しないため、設けられていなくてもよい。ソース領域4a~4cの上面から、ソース領域4a,4bを貫通してドリフト層1に達するトレンチ10が設けられている。トレンチ10の一方の側壁面はソース領域4a及びベース領域3aに接し、他方の側壁面はソース領域4bに接する。
【0051】
第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、トレンチ10のソース領域4a及びベース領域3a側の側壁面として、相対的に電子の移動度の高いa面を使用する。即ち、トレンチ10のソース領域4a及びベース領域3a側の側壁面が第1側壁面となり、トレンチ10のソース領域4b側の側壁面が第2側壁面となる。
【0052】
トレンチ10の内側には絶縁ゲート型電極構造(5,6)が設けられている。ゲート電
極6上には層間絶縁膜7を介して第1主電極(ソース電極)8が配置されている。ソース電極8はソース領域4a,4cに接する。ドリフト層1の下面には、ドリフト層1に接するようにn+型の第2主電極領域(ドレイン領域)9が配置されている。ドレイン領域9の下面には、第2主電極(ドレイン電極)11が配置されている。
【0053】
ドリフト層1上には、ベース領域3a,3bよりも高不純物密度で第2導電型(p+型)のゲート保護領域2が選択的に設けられている。ゲート保護領域2は、第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造時に、トレンチ10の側壁面及び底面にp型不純物を斜めにイオン注入することにより自己整合的に形成された領域である。ゲート保護領域2は、L字型の断面パターンを有し、トレンチ10の底面及び側壁面に接する。
【0054】
ドリフト層1上には、ベース領域3a,3bよりも高不純物密度で第2導電型(p+型)のベースコンタクト領域2h,2iが選択的に設けられている。ベースコンタクト領域2hは、ソース領域4a及びベース領域3aに接している。ベースコンタクト領域2iは、ソース領域4b,4c、ベース領域3b及びゲート保護領域2に接している。例えば、ゲート保護領域2の不純物密度は、ベースコンタクト領域2h,2iの不純物密度よりも高くてもよく、ベースコンタクト領域2h,2iの不純物密度と同一であってもよい。第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の構成及び基本的な動作は、第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0055】
第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置によれば、トレンチ10の底面及び側壁面に接するようにゲート保護領域2を設けることにより、トレンチ10の底部の電界集中を抑制でき、トレンチ10の底部のゲート絶縁膜5を保護することができる。
【0056】
次に、
図15~
図23を参照しながら、第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を、トレンチゲート型MISFETの場合を一例として説明する。なお、以下に述べるトレンチゲート型MISFETの製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0057】
まず、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn
+型の半導体基板(SiC基板)を用意する。例えばSiC基板は4H-SiC基板であり、4°のオフ角を有する。このn
+型SiC基板をドレイン領域9として、
図15に示すように、ドレイン領域9の上面に、n型のドリフト層1及びp型のベース領域3を順次エピタキシャル成長させる。
【0058】
次に、ベース領域3の上面にフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いて、N等のn型不純物イオンを多段イオン注入する。イオン注入用マスクを除去した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、ベース領域3上に新たにフォトレジスト膜を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜をイオン注入用マスクとして用いて、Al等のp型不純物イオンを多段イオン注入する。イオン注入用マスクを除去した後、熱処理を行うことにより注入されたn型不純物イオン及びp型不純物イオンを活性化させる。この結果、
図16に示すように、ベース領域3a,3bの上面に露出するように、ドリフト層1の上部にp
+型のベースコンタクト領域2h,2iが選択的に形成される。また、ベース領域3a,3bの上部にn
+型のソース領域4,4cが選択的に形成される。
【0059】
次に、ソース領域4,4c及びベースコンタクト領域2h,2iの上面にフォトレジスト膜31を塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてフォトレジスト膜31をパターニングする。パターニングされたフォトレジスト膜31をエッチング用マスクとして用いて、
反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング等により、ソース領域4、ベース領域3a、ベースコンタクト領域2i及びドリフト層1の一部を選択的に除去する。この結果、
図17に示すように、トレンチ10がドリフト層1の上部に達するように選択的に形成される。トレンチ10の一方の側壁面は第1側壁面であり、ソース領域4a及びベース領域3aを露出する。トレンチ10の他方の側壁面は第2側壁面であり、ベースコンタクト領域2iを露出する。トレンチ10の底面は、ドリフト層1及びベースコンタクト領域2iを露出する。
【0060】
次に、
図18に示すように、フォトレジスト膜31をイオン注入用マスクとして用いて、トレンチ10のベースコンタクト領域2i側の側壁面及び底面にp型不純物を斜めにイオン注入する。イオン注入用マスクとしてのフォトレジスト膜31を除去した後、熱処理を行うことにより注入されたp型不純物イオンを活性化させる。この結果、
図19に示すように、トレンチ10の側壁面及び底面に露出するようにL字型の断面パターンを有するゲート保護領域2が自己整合的に形成される。
【0061】
次に、
図20に示すように、熱酸化法又は化学気相成長(CVD)法等により、トレンチ10の底面及び側壁面とソース領域4a~4c及びベースコンタクト領域2h,2iの上面に、SiO
2膜等のゲート絶縁膜5を形成する。次に、CVD法等により、トレンチ10を埋めるように、燐(P)等の不純物を高不純物密度で添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)を堆積する。その後、エッチバック又は化学的機械研磨(CMP)等により、ソース領域4a~4c及びベースコンタクト領域2h,2iの上面のポリシリコン層及びゲート絶縁膜5を除去する。この結果、
図21に示すように、ポリシリコン層からなるゲート電極6がトレンチ10に埋め込まれ、絶縁ゲート型電極構造(5,6)が形成される。
【0062】
次に、CVD法等により、絶縁ゲート型電極構造(5,6)の上面に層間絶縁膜7を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、
図22に示すように、層間絶縁膜7の一部を選択的に除去する。この結果、層間絶縁膜7にソースコンタクトホールが開孔される。図示を省略しているが、ソースコンタクトホールとは異なる箇所において、ゲート電極6に接続されたゲート表面電極の一部が露出するように、ゲートコンタクトホールも層間絶縁膜7に開孔される。
【0063】
次に、スパッタリング法等によりAl膜等の金属層を堆積する。フォトリソグラフィ技術とRIE等を用いてAl膜等の金属層をパターニングして、
図23に示すように、ソース電極8及びゲート表面電極(図示省略)のパターンを形成する。この結果、ソース電極8とゲート表面電極のパターンは分離される。次に、
図14に示すように、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域9の下面の全面にAu等からなるドレイン電極11を形成する。このようにして、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置が完成する。
【0064】
第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法によれば、トレンチ10を形成後、p型不純物を斜めにイオン注入することにより、トレンチ10の底面及び側壁面に接するゲート保護領域2を自己整合的に形成することができる。したがって、
図14に示した絶縁ゲート型半導体装置を容易に実現可能となる。
【0065】
また、
図24に示す第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例は、ゲート保護領域2のトレンチ10の底面に接する端部の側面が、垂直方向に対して傾斜している点が、
図14に示した第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と異なる。ゲート保護領域2のトレンチ10の底面に接する端部は、トレンチ10の上端の位置P1と、ゲート保護領域2のトレンチ10の底面に接する端部の位置P2を結ぶ直線に平行に傾斜する。
【0066】
図24に示した第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例の製造方法としては、例えば、ベースコンタクト領域2iから離間して、ドリフト層1を側壁面及び底面に露出するようにトレンチ10を形成する。その後、ゲート保護領域2の端部が形成される領域がベースコンタクト領域2iと重複しないように、トレンチ10の側壁面及び底面に斜めにイオン注入する。これにより、トレンチ10の底面に接する端部の側面が傾斜したゲート保護領域2を自己整合的に形成可能である。
【0067】
また、
図25に示す第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例は、ゲート保護領域2の底面が、ベースコンタクト領域2iの底面よりも浅い点が、
図14に示した絶縁ゲート型半導体装置と異なる。
図25に示した第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例の製造方法としては、例えば、ベースコンタクト領域2iから離間して、ドリフト層1を側壁面及び底面に露出するようにトレンチ10を形成する。その後、トレンチ10の側壁面及び底面に斜めにイオン注入することにより、ベースコンタクト領域2iの底面よりも浅い位置にゲート保護領域2を自己整合的に形成可能である。
【0068】
また、
図26は、第3実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の変形例を示す。
図26に示す絶縁ゲート型半導体装置は、ベースコンタクト領域2h,2i及びベース領域3aの下面にn
+型の電流拡散層(CSL)12a,12bを設けた点が、
図14に示した絶縁ゲート型半導体装置と異なる。電流拡散層12a,12bを設けることで、オン抵抗を低減することができる。電流拡散層12a,12bは、ドリフト層1に窒素(N)等のn型不純物をイオン注入することで形成可能である。なお、ベースコンタクト領域2h,2iの下面のみに電流拡散層を設けてもよい。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、
図27に示すように、4本のストライプ状のトレンチ10a~10dをそれぞれ有する複数のストライプ状の単位セルC1~C4の配列構造を有する。第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、第1導電型(n型)のドリフト層1と、ドリフト層1上に配置された第2導電型(p型)のベース領域3a,3bを備える。ベース領域3a,3bの上部には、ドリフト層1よりも高不純物密度で第1導電型(n
+型)の主電極領域(ソース領域)41,43が設けられている。
【0070】
ソース領域41,43の上面からドリフト層1に達するようにトレンチ10a~10dが設けられている。トレンチ10a,10bは、ソース領域41及びベース領域3aを挟んで、ソース領域41及びベース領域3aの両端にそれぞれ接する。トレンチ10c,10dは、ソース領域43及びベース領域3bを挟んで、ソース領域43及びベース領域3bの両端にそれぞれ接する。
【0071】
トレンチ10a~10dの内側には、ゲート絶縁膜5a~5d及びゲート電極6a~6dからなる絶縁ゲート型電極構造(5a,6a),(5b,6b),(5c,6c),(5d,6d)が設けられている。ゲート電極6a~6d上には層間絶縁膜7を介して第1主電極(ソース電極)8が配置されている。ドリフト層1の下面には、ドリフト層1に接するようにn+型の第2主電極領域(ドレイン領域)9が配置されている。ドレイン領域9の下面には、第2主電極(ドレイン電極)11が配置されている。
【0072】
ドリフト層1上には、ベース領域3a,3bよりも高不純物密度で第2導電型(p+型)のゲート保護領域21,22a,23が選択的に設けられている。ゲート保護領域21は、トレンチ10aの底面及び側壁面に接する。ゲート保護領域22aは、トレンチ10bの底面及び側壁面に接すると共に、トレンチ10cの底面及び側壁面に接する。ゲート保護領域23は、トレンチ10dの底面及び側壁面に接する。
【0073】
第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、トレンチ10a~10dの両側壁面としてa面を使用する。例えば、トレンチ10aのゲート保護領域21側の側壁面、トレンチ10bのソース領域41及びベース領域3a側の側壁面、トレンチ10cのゲート保護領域22a側の側壁面、トレンチ10dのソース領域42及びベース領域3b側の側壁面として、相対的に電子の移動度の高いa面を使用し、第1側壁面とする。一方、トレンチ10aのソース領域41及びベース領域3a側の側壁面、トレンチ10bのゲート保護領域22a側の側壁面、トレンチ10cのソース領域42及びベース領域3b側の側壁面、トレンチ10dのゲート保護領域23側の側壁面として、相対的に電子の移動度の低いa面を使用し、第2側壁面とする。或いは、トレンチ10a~10dの両側壁面として第1側壁面及び第2側壁面を上記と逆にしてもよい。
【0074】
なお、第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、トレンチ10a~10dの両側壁面として(1-100)面であるm面を使用してもよい。m面を使用する場合には、トレンチ10a~10dの両側壁面の基準面(m面)に対する傾斜角が同一となるため、トレンチ10a~10dの両側壁面の電子の移動度は同一となる。
【0075】
第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、隣接する単位セルC1,C2のトレンチ10a,10b間、及び隣接する単位セルC3,C4のトレンチ10c,10d間に共通のベース領域3a及びソース領域41,43を挟む構造と、隣接する単位セルC2,C3のトレンチ10b,10c間に共通のゲート保護領域22aを挟む構造とを交互に繰り返す。第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の他の構成は、第1実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置と同様であるので、重複した説明を省略する。
【0076】
第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の動作時は、ドレイン電極11に正電圧を印加し、ゲート電極6a~6dに閾値以上の正電圧を印加する。これにより、ベース領域3a,3bの両側面側に反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、ドレイン電極11からドレイン領域9、ドリフト層1、ベース領域3a,3bの両側面側の反転層及びソース領域41,43を経由してソース電極8へ電流が流れる。一方、ゲート電極6a~6dに印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域3a,3bの両側面側に反転層が形成されないため、オフ状態となり、ドレイン電極11からソース電極8へ電流が流れない。
【0077】
図27のソース領域41,43を水平に切るA-A方向から見た平面レイアウトを
図28に示す。
図28のB-B方向から見た断面図が
図27に対応する。
図28に示すように、ソース領域41,43及びゲート電極6a~6dの平面パターンはそれぞれストライプ状をなし、互いに平行に延伸する。また、ゲート保護領域22a,22bは、ソース領域41,43及びゲート電極6a~6dの長手方向に沿って所定の間隔で間欠的に設けられている。ゲート保護領域22a,22bの間には、ソース領域42a,42bが設けられている。ゲート保護領域22a,22bの間隔W3は、
図27に示したゲート保護領域21,22aで挟まれた接合電界効果トランジスタ(JFET)領域の間隔(JFT幅)W2以下(同じ又は狭い)であることが好ましい。
図28のC-C方向から見た断面図が
図29に対応する。
図29に示すように、ソース領域42aの下面にはベース領域3cが設けられている。
【0078】
ここで、比較例に係る絶縁ゲート型半導体装置を説明する。比較例に係る絶縁ゲート型半導体装置では、
図30に示すように、ゲート保護領域22が、トレンチ10a~10dの長手方向に沿って延伸する平面パターンをなす。これに対して、第4実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置によれば、ゲート保護領域22a,22bを間欠的に設けることで、ゲート保護領域22a,22bの間をソース領域42a,42bとして使用できる。したがって、チャネルを増大させることができ、オン抵抗を低減することができる。
【0079】
なお、
図29に示した構造において、ソース領域42aの下面のベース領域3cを設けずに、ソース領域42aの平面パターンの領域で、ソース領域42aとソース電極8によりショットキーバリアダイオードを構成してもよい。即ち、ゲート保護領域22a,22bの間のそれぞれの領域にショットキーバリアダイオードを設けることができる。
【0080】
また、
図31に示すように、トレンチ10a,10b(
図27参照。)に挟まれたゲート保護領域21a,21bが、トレンチ10a,10bの長手方向に沿って間欠的に設けられていてもよい。ゲート保護領域21a,21bは、ソース領域41a,41bと交互に設けられている。更に、トレンチ10c,10d(
図27参照。)に挟まれたゲート保護領域23a,23bが、トレンチ10c,10dの長手方向に沿って間欠的に設けられていてもよい。ゲート保護領域23a,23bは、ソース領域43a,43bと交互に設けられている。
【0081】
また、
図31に示すように、ゲート保護領域21a,21bの配列、ゲート保護領域22a,22bの配列、ゲート保護領域23a,23bの配列が、トレンチ10a~10d(
図27参照。)の長手方向に直交する方向(トレンチ10a~10dの並列方向)において同じ位置に設けられていてもよい。トレンチ10a~10dの並列方向において、ゲート保護領域21a,22a,23a及びゲート保護領域21a,22a,23aが同じ位置に配置されている。また、トレンチ10a~10dの並列方向において、ソース領域41a,42a,43a及びソース領域41b,42b,43bが同じ位置に配置されている。
【0082】
また、
図32に示すように、ゲート保護領域21a,21bの配列、ゲート保護領域22a,22bの配列、ゲート保護領域23a,23bの配列が、トレンチ10a~10dの並列方向においてずれて配置されていてもよい。トレンチ10a~10dの並列方向において、ゲート保護領域21a,22a,23a及びゲート保護領域21b,22b,23bがずれて配置されている。また、トレンチ10a~10dの並列方向において、ソース領域41a,42a,43a及びソース領域41b,42b,43bがずれて配置されている。
【0083】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0084】
本発明の第1~第4実施形態においては、トレンチ内に絶縁ゲート型電極構造を有するMISFETを例示したが、これに限定されず、トレンチ内に絶縁ゲート型電極構造を有するIGBT等の種々の絶縁ゲート型電極構造を有する絶縁ゲート型半導体装置に適用可能である。トレンチゲート型IGBTとしては、
図2及び
図3に示したMISFETのn
+型のソース領域4a~4jをエミッタ領域とし、n
+型のドレイン領域9の代わりにドリフト層1の下面側にp
+型のコレクタ領域を設けた構造とすればよい。
【0085】
また、本発明の実施形態においては、SiCを用いた絶縁ゲート型半導体装置を例示したが、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(GaN)、窒化インジウム(InN)等の六方晶系を有する、Siよりも禁制帯幅の広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を用いた絶縁ゲート型半導体装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…ドリフト層
2,2a,2b,2c,2d,2e,21,21a,21b,22a,22b,23,23a,23b…ゲート保護領域
2g,2h,2i…ベースコンタクト領域
2x,2y…動作抑制領域
3,3a,3b,3c,3d,3e…ベース領域
4,4a,4b,4c,4d,4e,4f,4g,4h,4i,4j,41,41a,41b,42a,42b,43,43a,43b…ソース領域
5,5a,5b,5c,5d,5e,5f…ゲート絶縁膜
6,6a,6b,6c,6d,6e,6f…ゲート電極
7…層間絶縁膜
8…ソース電極
8a…凸部
9…ドレイン領域
10a,10b,10c,10d,10e,10f…トレンチ
11…ドレイン電極
12a,12b…電流拡散層
31…フォトレジスト膜