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  • 特開-眼科組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166367
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】眼科組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20241121BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20241121BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K31/196
A61K31/4402
A61K31/436
A61K9/08
A61P27/02
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161198
(22)【出願日】2024-09-18
(62)【分割の表示】P 2022138442の分割
【原出願日】2018-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017041165
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】林 紗衣子
(72)【発明者】
【氏名】三ツ口 陽子
(72)【発明者】
【氏名】辻 和宏
(57)【要約】
【課題】新規な眼科組成物を提供する。
【解決手段】眼科組成物を、(A)トラニラスト及びその塩からなる群より選択される1種以上、(B)クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに(C)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される1種以上で構成する。このような組成物において、成分(A)100質量部に対する、成分(B)の割合は、1~8質量部、成分(C)の割合は5~25質量部であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トラニラスト及びその塩からなる群より選択される1種以上、
(B)クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
(C)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有し、
成分(A)100質量部に対する、成分(B)の割合が1~8質量部、成分(C)の割合が5~25質量部である、眼科組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科組成物(又は眼科用剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼剤などの眼科組成物には、その目的に応じて種々の成分が含有されている。
一方、トラニラストは、アレルギーに起因する疾患治療などに有効であることが知られており、眼科組成物における使用例も報告されている。そして、このようなトラニラストを含む眼科組成物において、効能の改善や新たな機能の探索などを目的として、トラニラストと他の成分とを組み合わせる技術も開発されつつある。
例えば、特開2014-234368号公報(特許文献1)には、トラニラストと、特定の成分(抗炎症剤、水溶性ビタミン、清涼化剤)とを含む点眼剤が、角膜上皮バリア機能の亢進に有効であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-234368号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規な眼科組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記のように、点眼剤にトラニラストを含有させる技術自体は知られている。一方、点眼剤に含有させる成分として、トラニラスト以外にも、種々の成分が知られており、マレイン酸クロルフェニラミンやプラノプロフェンもそのような成分の1つである。
しかし、これらの成分については、単独又は特定の他の成分と組み合わされて使用できる例が報告されているだけで、これらの成分を具体的に組み合わせた例についての報告はない。
【0006】
このような中、本発明者らは、トラニラスト、マレイン酸クロルフェニラミン、プラノプロフェンのそれぞれについての処方の検討を進めていたところ、これらが単独で使用される場合や2種組み合わされて使用される場合でも、従来知られていない課題が存在することを見出した。例えば、検討の中で、これらは単独では保存効力が十分でなかったり、プラノプロフェンの光安定性が十分でなく、マレイン酸クロルフェニラミンと組み合わせても光安定性が改善しないことなどが確認された。
【0007】
このような知見を受けて、本発明者らは、さらに検討を進めたところ、トラニラスト、マレイン酸クロルフェニラミン、プラノプロフェンという単独や2種の組み合わせとしては知られていても、組み合わせとして具体的な報告がない特定の3種を選択することで、意外にも、上記のような保存効力や光安定性において十分な組成物が得られることなどを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の発明を提供する。
[1]
(A)トラニラスト及びその塩からなる群より選択される1種以上、
(B)クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
(C)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有し、
成分(A)100質量部に対する、成分(B)の割合が1~8質量部、成分(C)の割合が5~25質量部である、眼科組成物。
[2]
(A)トラニラスト及びその塩からなる群より選択される1種以上、
(B)クロルフェニラミン及びその塩からなる群より選択される1種以上、並びに
(C)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される1種以上を含有する組成物であって、
(A)成分を0.3~0.7w/v%、(B)成分を0.007~0.04w/v%、(C)成分を0.03~0.15w/v%の割合で含有する、眼科組成物。
[3]
(A)成分と(B)成分と(C)成分との割合が、下記のいずれかを充足する[1]又は[2]記載の眼科組成物。
(A)成分/(B)成分/(C)成分(質量比)=100/5~7/8~12
(A)成分/(B)成分/(C)成分(質量比)=100/5~7/18~22
(A)成分/(B)成分/(C)成分(質量比)=100/1~3/8~12
(A)成分/(B)成分/(C)成分(質量比)=100/1~3/18~22
[4]
(A)~(C)成分の割合が、下記のいずれかを充足する[1]~[3]のいずれかに記載の眼科組成物。
成分(A)が0.4~0.6w/v%、成分(B)が0.02~0.04w/v%、成分(C)が0.04~0.06w/v%である割合
成分(A)が0.4~0.6w/v%、成分(B)が0.02~0.04w/v%、成分(C)が0.08~0.12w/v%である割合
成分(A)が0.4~0.6w/v%、成分(B)が0.013~0.017w/v%、成分(C)が0.04~0.06w/v%である割合
成分(A)が0.4~0.6w/v%、成分(B)が0.013~0.017w/v%、成分(C)が0.08~0.12w/v%である割合
成分(A)が0.4~0.6w/v%、成分(B)が0.008~0.012w/v%、成分(C)が0.04~0.06w/v%である割合
成分(A)が0.4~0.6w/v%、成分(B)が0.008~0.012w/v%、成分(C)が0.08~0.12w/v%である割合
[5]
ポリビニルピロリドン、モノエタノールアミン及びトロメタモールから選択される少なくとも1種以上を含む[1]~[4]のいずれかに記載の眼科組成物。
[6]
モノエタノールアミン及びトロメタモールから選択される少なくとも1種以上を含む[1]~[5]のいずれかに記載の眼科組成物。
[7]
ナトリウムイオン濃度が250mM以下であるか又はナトリウムイオンの割合が(A)成分1モルに対して25モル以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の眼科組成物。
[8]
ナトリウムイオン濃度が20mM以下であるか又はナトリウムイオンの割合が(A)成分1モルに対して20モル以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の眼科組成物。
[9]
アレルギー症状の緩和、改善、抑制、及び/又は治療用である[1]~[8]のいずれかに記載の眼科組成物。
[10]
目の痒み、充血、涙目、異物感及び目やにから選択された少なくとも1種の症状の緩和、改善、抑制、及び/又は治療用である[1]~[9]のいずれかに記載の眼科組成物。
[11]
[1]に記載の(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物に、残りの1又は2成分を含有させ、前記眼科組成物における、(1)保存効力、(2)光安定性及び(3)酸素ストレス耐性から選択された少なくとも1つを、向上、改善、付与及び/又は発現する方法。
[12]
[1]に記載の(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物における、(1)保存効力、(2)光安定性及び(3)酸素ストレス耐性から選択された少なくとも1つを、向上、改善、付与及び/又は発現するための剤であって、残りの1又は2成分を含む剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、新規な眼科組成物を提供できる。
このような眼科組成物は、特定の成分(A)、(B)及び(C)を含んでおり、例えば、これらの成分が単独で又は2種組み合わせられた場合に比べて、特定の機能(例えば、保存効力、安定性など)を向上又は改善するなどの効果を奏することもできる。
例えば、本発明の他の態様では、酸素ストレス(低酸化ストレス)耐性を有する(又は低酸素ストレス耐性を損なわない)眼科組成物を得ることもできる。酸素ストレスは、細胞障害や種々の疾患・症状(ドライアイ、白内障など)との関連性が指摘されており、低酸素ストレス耐性を有する又は損なわない眼科組成物を提供できることは有用である。
【0010】
本発明の眼科組成物の他の態様では、特定の成分を組み合わせて含んでいても、それぞれの機能・薬効を有効に発揮させることができ、場合によってはより高い機能を有することもできる。
【0011】
本発明の他の態様の眼科組成物では、析出を抑制することができる。特に、このような析出抑制効果は、低温(例えば、10℃以下、好ましくは5℃以下)において優れている場合が多く、0℃以下であっても析出を抑えることができる。そのため、本発明の眼科組成物は、冷蔵庫程度の低温で保存する場合などの他、より低温に晒される環境(寒冷地での保存や、温度変化が激しい場合など)下においても、溶解安定性を実現できる。
【0012】
このように、本発明の組成物は、極めて実用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、試験例8の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。また、本明細書において、特に記載のない限り、略号「POE」はポリオキシエチレンを意味し、略号「POP」はポリオキシプロピレンを意味する。
【0015】
〔1.眼科組成物〕
本発明の眼科組成物は、(A)トラニラスト及び/又はその塩、(B)クロルフェニラミン及び/又はその塩、並びに(C)プラノプロフェン及び/又はその塩からなる群より選択される1種以上を少なくとも含有する。
【0016】
(A)トラニラスト及び/又はその塩((A)成分)
トラニラストの塩としては、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩]等が挙げられる。
【0017】
なお、トラニラストのナトリウム塩は、後述のナトリウムイオンに含まれる。そのため、(A)成分がナトリウム塩を含む場合には、組成物全体においてナトリウムイオン濃度が後述の範囲となるように、ナトリウム塩を使用してもよい。
【0018】
好ましいトラニラスト及び/又はその塩には、トラニラスト及びトラニラストの非ナトリウム塩が含まれる。より好ましいトラニラスト及び/又はその塩は、トラニラスト及びトラニラストの非金属塩が含まれ、特にトラニラストが好ましい。
【0019】
トラニラスト及び/又はその塩は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0020】
組成物中の(A)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%以上、好ましくは0.01~10w/v%、より好ましくは0.05~5w/v%、さらに好ましくは0.07~2w/v%、さらにより好ましくは0.1~1w/v%、特に好ましくは0.2~1w/v%、最も好ましくは0.25~0.8w/v%程度であってもよい。中でも、0.3~0.7w/v%(例えば、0.4~0.6w/v%)が好ましく、0.45~0.55w/v%(0.5w/v%など)が特に好ましい。
【0021】
(B)クロルフェニラミン及び/又はその塩((B)成分)
クロルフェニラミンの塩としては、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、有機酸塩(例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩など)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩など)、金属塩などの(A)成分の項で例示の塩などが挙げられる。
【0022】
なお、ナトリウム塩は、後述のナトリウムイオンに含まれる。そのため、(B)成分がナトリウム塩を含む場合には、組成物全体においてナトリウムイオン濃度が後述の範囲となるように、ナトリウム塩を使用してもよい。
【0023】
好ましいクロルフェニラミン及び/又はその塩は、クロルフェニラミン及びその非金属塩(非ナトリウム塩など)などであり、特にマレイン酸クロルフェニラミンが好ましい。
【0024】
クロルフェニラミン及び/又はその塩は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0025】
組成物中の(B)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001w/v%以上、好ましくは0.001~10w/v%、より好ましくは0.003~5w/v%、さらに好ましくは0.005~1w/v%、さらにより好ましくは0.01~0.5w/v%、特に好ましくは0.015~0.3w/v%(例えば、0.02~0.1w/v%)、最も好ましくは0.025~0.05w/v%(例えば、0.028~0.045w/v%)程度であってもよく、中でも0.007~0.04w/v%(例えば、0.008~0.035w/v%、特に0.01~0.03w/v%)が好ましく、具体的には、0.008~0.012w/v%(特に0.01w/v%)、0.013~0.017w/v%(特に0.015w/v%)、0.02~0.04w/v%(特に0.03w/v%)などであってもよい。
【0026】
(C)プラノプロフェン及び/又はその塩((C)成分)
プラノプロフェンの塩としては、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩などの前記(A)成分の項で例示の塩などが挙げられ、例えば、硫酸塩、乳酸塩、塩酸塩、塩化物塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
好ましいプラノプロフェン及び/又はその塩は、プラノプロフェン及びその非金属塩(非ナトリウム塩など)であり、特にプラノプロフェンが好ましい。
【0027】
プラノプロフェン及び/又はその塩は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0028】
組成物中の(C)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001w/v%以上、好ましくは0.001~10w/v%、より好ましくは0.002~5w/v%、さらに好ましくは0.003~1w/v%、さらにより好ましくは0.005~0.5w/v%、特に好ましくは0.01~0.3w/v%(例えば、0.015~0.25w/v%)、最も好ましくは0.02~0.2w/v%(例えば、0.025~0.18w/v%)程度であってもよく、中でも0.03~0.15w/v%(例えば、0.04~0.12w/v%、特に0.05~0.1w/v%)が好ましく、具体的には、0.04~0.06w/v%(特に0.05w/v%)、0.08~0.12w/v%(特に0.1w/v%)などであってもよい。
【0029】
(A)~(C)成分間の割合
(B)成分の割合は、(A)成分100質量部に対して、例えば、0.1~500質量部(例えば、0.3~100質量部)、好ましくは0.4~50質量部(例えば、0.5~30質量部)、さらに好ましくは0.7~20質量部(例えば、0.8~10質量部)、特に好ましくは1~8質量部(例えば、1.2~7.5質量部)であってもよく、中でも1.5~7質量部(例えば、2~6質量部)が好ましく、具体的には、1~3質量部(例えば、1.5~2.5質量部、特に2質量部)、2~4質量部(例えば、2.5~3.5質量部、特に3質量部)、5~7質量部(例えば、5.5~6.5質量部、特に6質量部)などであってもよい。
【0030】
(C)成分の割合は、(A)成分100質量部に対して、例えば、0.1~500質量部(例えば、0.5~100質量部)、好ましくは1~50質量部(例えば、2~40質量部)、さらに好ましくは3~35質量部(例えば、4~30質量部)、特に好ましくは5~25質量部(例えば、6~23質量部)であってもよく、中でも8~22質量部(例えば、10~20質量部)が好ましく、具体的には、8~12質量部(例えば、9~11質量部、特に10質量部)、18~22質量部(例えば、19~21質量部、特に20質量部)などであってもよい。
【0031】
(B)成分の割合は、(C)成分100質量部に対して、例えば、0.1~300質量部(例えば、0.5~150質量部)、好ましくは1~100質量部、さらに好ましくは2~90質量部(例えば、3~80質量部)、特に好ましくは5~75質量部(例えば、10~70質量部)であってもよく、中でも15~65質量部(例えば、20~60質量部)が好ましく、具体的には、15~25質量部(例えば、18~22質量部、特に20質量部)、25~35質量部(例えば、28~32質量部、特に30質量部)、55~65質量部(例えば、58~62質量部、特に60質量部)などであってもよい。
【0032】
(B)成分及び(C)成分の総量の割合は、(A)成分100質量部に対して、例えば、0.1~300質量部(例えば、0.5~100質量部)、好ましくは1~80質量部、さらに好ましくは2~60質量部(例えば、3~50質量部)、特に好ましくは5~45質量部(例えば、8~40質量部)であってもよく、中でも10~35質量部(例えば、16~30質量部)が好ましく、具体的には、12~20質量部(例えば、14~18質量部、特に16質量部)、22~30質量部(例えば、24~28質量部、特に26質量部)、26~34質量部(例えば、28~32質量部、特に30質量部)などであってもよい。
【0033】
(A)成分と(B)成分と(C)成分との割合は、例えば、(A)成分/(B)成分/(C)成分(質量比)=100/0.1~100/0.5~200(例えば、100/0.2~50/1~100)、好ましくは100/0.3~30/2~80、さらに好ましくは100/0.5~20/3~50、特に好ましくは100/0.8~10/4~30であってもよく、中でも100/1~8/5~25(例えば、100/2~6/10~20)が好ましく、具体的には、100/5~7/8~12(例えば、100/5.5~6.5/9~11、特に100/6/10)、100/5~7/18~22(例えば、100/5.5~6.5/19~21、特に100/6/20)、100/2~4/8~12(例えば、100/2.5~3.5/9~11、特に100/3/10)、100/2~4/18~22(例えば、100/2.5~3.5/19~21、特に100/3/20)、100/1~3/8~12(例えば、100/1.5~2.5/9~11、特に100/2/10)、100/1~3/18~22(例えば、100/1.5~2.5/19~21、特に100/2/20)などであってもよい。
【0034】
[その他の成分]
本発明の組成物は、(A)~(C)成分の他に、さらに他の成分を含有していてもよい。本発明では、他の成分を含有させても、本発明の効果を担保できる場合が多い。また、他の成分を含有することで、さらに本発明の効果をより有効に実現できる場合もある。
【0035】
(D)溶解補助剤((D)成分)
(A)成分は、通常、水に難溶性である。そのため、本発明の組成物は、(A)成分の溶解を促進又は補助するための成分((D)成分)を含んでいてもよい。このような成分(D)は、溶解補助剤や可溶化剤ということもできる。
【0036】
(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシアルキルアミン類(又はアミノアルカノール類又はアルカノールアミン類、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモールなど)、アルコール類(例えば、プロピレングリコールなどのポリオール類)、カフェインなどが挙げられる。
【0037】
なお、ポリビニルピロリドン(PVP)は、ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン)を重合成分とする高分子である。
【0038】
このようなポリビニルピロリドンの分子量は、特に限定されないが、例えば、1000以上(例えば、1500~3000000)、好ましくは2000以上(例えば、2500~2000000)、さらに好ましくは3000以上(例えば、4000~1000000)、特に好ましくは5000以上(例えば、6000~300000)程度であってもよく、200000以下(例えば、2500~100000、好ましくは5000~80000、さらに好ましくは10000~50000、特に好ましくは15000~40000、最も好ましくは20000~30000)程度であってもよい。
【0039】
代表的なポリビニルピロリドンには、ポリビニルピロリドンK25、K30、K90などが含まれる。
【0040】
(D)成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0041】
これらのうち、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルアミン類(例えば、モノエタノールアミン、トロメタモール)などが好ましく、特に、ポリビニルピロリドン及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0042】
そのため、(D)成分(又は本発明の組成物)は、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシアルキルアミン類(例えば、モノエタノールアミン及び/又はトロメタモール)から選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0043】
組成物中の(D)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%以上、好ましくは0.005~20w/v%、より好ましくは0.01~10w/v%、さらに好ましくは0.03~5w/v%、さらにより好ましくは0.05~5w/v%程度であってもよく、0.1~10w/v%(例えば、0.2~7w/v%、好ましくは0.3~5w/v%、さらに好ましくは0.5~4.5w/v%、特に好ましくは1.0~3w/v%)であってもよい。
【0044】
特に、組成物がポリビニルピロリドンを含む場合、組成物中のポリビニルピロリドンの含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%以上(例えば、0.005~20w/v%)、好ましくは0.01~10w/v%(例えば、0.05~5w/v%)、さらに好ましくは0.07~10w/v%(例えば、0.1~5w/v%)、より好ましくは0.3~7w/v%(例えば、0.5~5w/v%)、特に好ましくは0.7~4w/v%(例えば、1~3w/v%)程度であってもよい。
【0045】
(D)成分の割合は、例えば、(A)成分1質量部に対して、0.001~30質量部、好ましくは0.005~20質量部、さらに好ましくは0.01~15質量部、特に好ましくは0.02~10質量部、より特に好ましくは0.05~8質量部であってもよく、0.1~15質量部(例えば、0.2~12質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部、最も好ましくは2~6質量部)程度であってもよい。
【0046】
ポリビニルピロリドンとヒドロキシアルキルアミン類(例えば、モノエタノールアミン及びトロメタモールから選択された少なくとも1種)とを組み合わせる場合、ポリビニルピロリドン100質量部に対するヒドロキシアルキルアミン類の割合は、0.01~1000質量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.1~500質量部(例えば、0.2~300質量部)、好ましくは0.3~250質量部(例えば、0.4~220質量部)、さらに好ましくは0.5~200質量部(例えば、1~180質量部)、特に好ましくは2~150質量部(例えば、2.5~120質量部)程度であってもよく、3~100質量部程度であってもよい。
【0047】
(E)アミノ酸類
本発明の組成物は、アミノ酸類((E)成分などということがある)を含んでいてもよい。
アミノ酸としては、例えば、アミノ酸又はその塩、及びアミノ酸類似体を包含し、分子内にアミノ基とカルボキシル基又はスルホン基を有する化合物又はその誘導体などが含まれる。
【0048】
具体的にはアミノ酸又はその塩、ムコ多糖又はその塩が例示される。アミノ酸類のうち、アミノ酸またはその塩としては、例えば、グリシン、アラニン、アミノ酪酸、アミノ吉草酸、アミノカプロン酸等のモノアミノモノカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸又はそれらの塩;アルギニン、リジン等のジアミノモノカルボン酸又はそれらの塩;アミノエチルスルホン酸(タウリン)等の誘導体又はそれらの塩が挙げられる。
【0049】
また、アミノ酸類のうち、ムコ多糖またはその誘導体またはそれらの塩としては、例えば、酸性ムコ多糖として、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸等の誘導体又はそれらの塩が挙げられる。
【0050】
具体的なアミノ酸及びムコ多糖としては、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、イプシロンアミノカプロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸又はそれらの塩などが挙げられる。
【0051】
なお、コンドロイチン硫酸は、D-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンが反復する糖鎖の水酸基の全部または一部に硫酸がエステル結合したものである。硫酸の結合位置や数は多様であり、また、コンドロイチン硫酸には、誘導体(例えば、N-アセチルグルコサミンの全部または一部がイズロン酸に置換されたものなど)も存在する。
このようなコンドロイチン硫酸は、どのような構造を有するものであってもよい。例えば、コンドロイチン4硫酸(コンドロイチン硫酸A)、コンドロイチン6硫酸(コンドロイチン硫酸C)、N-アセチルグルコサミンの4位及び6位が硫酸化されたコンドロイチン硫酸Eなどが挙げられる。また、コンドロイチン硫酸は、動物から抽出されたものであってもよい。
【0052】
アミノ酸の塩又はムコ多糖の塩は、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される塩を含む。そのような塩としては、有機酸との塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が例示でき、化合物によって適宜選択される。
【0053】
具体的な塩には、アスパラギン酸の塩(アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物など)、グルタミン酸の塩(グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウムなど)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0054】
なお、ナトリウム塩は、後述のナトリウムイオンに含まれる。そのため、(E)成分がナトリウム塩を含む場合には、組成物全体においてナトリウムイオン濃度が後述の範囲となるように、ナトリウム塩を使用してもよい。
【0055】
アミノ酸類は、D体、L体、DL体のいずれでもよい。
【0056】
好ましいアミノ酸類には、アミノエチルスルホン酸(タウリン)又はその塩、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アスパラギン酸塩(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム)、イプシロンアミノカプロン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩(ヒアルロン酸ナトリウムなど)などが含まれ、これらの中でも、アミノエチルスルホン酸(タウリン)及び/又はその塩とコンドロイチン硫酸ナトリウムが好ましく、アミノエチルスルホン酸(タウリン)が最も好ましい。
【0057】
そのため、アミノ酸類は、特に、アミノエチルスルホン酸及びその塩からなる群より選択される1種以上(特に、アミノエチルスルホン酸)を少なくとも含んでいてもよい。
このようなアミノ酸類(タウリンなど)を使用することでダメージを受けた角膜上皮細胞の治癒促進作用などが期待できる。
【0058】
なお、このような場合、アミノ酸類全体に対するアミノエチルスルホン酸及びその塩からなる群より選択される1種以上(特に、アミノエチルスルホン酸)の割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であってもよい。
【0059】
アミノ酸類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0060】
組成物が(E)成分を含む場合、組成物中の(E)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%以上、好ましくは0.01~20w/v%、より好ましくは0.03~15w/v%、さらに好ましくは0.05~10w/v%、さらにより好ましくは0.1~8w/v%、特に好ましくは0.15~7w/v%程度であってもよく、通常0.1~15w/v%[例えば、0.2~10w/v%、好ましくは0.3~8w/v%、さらに好ましくは0.5~7w/v%、特に0.6~6w/v%(例えば、0.7~5w/v%)]であってもよい。
【0061】
(F)清涼化剤((F)成分)
本発明の組成物は、清涼化剤(以下、(F)清涼化剤、(F)成分などということがある)を含んでいてもよい。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を組み合わせることで、使用感が低下する又は損なわれる場合があるが、清涼化剤によりこのような使用感を向上又は改善しうる。例えば、(A)成分(トラニラスト)の溶解等の観点で組成物のpHを高めることが有利な場合がある一方で、組成物のpHが高いほど、不快感が強くなり、使用感が損なわれることがあるが、清涼化剤の使用により、このような不快感を和らげ、使用感を効率良く向上しうる。
【0062】
清涼化剤としては、特に限定されないが、例えば、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等のテルペノイドが挙げられる。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。また、ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等の精油も挙げられる。
【0063】
中でも、テルペノイドが好ましく、中でも、メントール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リュウノウが好ましく、メントール、カンフル、ボルネオールがより好ましく、メントール、ボルネオールがさらに好ましい。
また、本発明の効果をより顕著に奏する観点等から、ユーカリ油も好ましい。
【0064】
清涼化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。特に、清涼化剤は、メントール、ボルネオール及びユーカリ油からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましく、2種以上組み合わせる場合も少なくともこれらを組み合わせる(例えば、メントール、ボルネオール及びユーカリ油を組み合わせる)のが好ましい。
【0065】
(F)成分の割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.00001w/v%以上、0.00005w/v%以上、0.0001w/v%以上、0.0003w/v%以上、0.0005w/v%以上、0.0007w/v%以上、0.0008w/v%以上、0.0009w/v%以上、0.001w/v%以上であってもよい。
【0066】
また、(F)成分の割合は、組成物の全量に対して、5w/v%以下、3w/v%以下、2w/v%以下、1.5w/v%以下、1.2w/v%以下、1w/v%以下、0.9w/v%以下、0.8w/v%以下、0.7w/v%以下、0.6w/v%以下であってもよい。
【0067】
特に、本発明の組成物がメントールを含む場合、メントールの割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.00001w/v%以上(例えば、0.00005~2w/v%)、好ましくは0.0001~0.2w/v%(例えば、0.0003~0.1w/v%)、さらに好ましくは0.0005~0.05w/v%(例えば、0.001~0.02w/v%)程度であってもよい。
メントールの割合は、(A)成分1質量部に対して、0.0001質量部以上(例えば、0.0003~0.5質量部)、好ましくは0.0005~0.1質量部(例えば、0.0007~0.08質量部)、さらに好ましくは0.001~0.05質量部(例えば、0.002~0.04質量部)程度であってもよい。
メントールの割合は、(C)成分1質量部に対して、0.0001質量部以上(例えば、0.0005~2質量部)、好ましくは0.001~1質量部(例えば、0.003~0.7質量部)、さらに好ましくは0.005~0.5質量部(例えば、0.01~0.4質量部)程度であってもよい。
【0068】
特に、本発明の組成物がボルネオールを含む場合、ボルネオールの割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.00001w/v%以上(例えば、0.00005~3w/v%)、好ましくは0.0001~2w/v%(例えば、0.0003~1w/v%)、さらに好ましくは0.0005~0.8w/v%(例えば、0.001~0.5w/v%)程度であってもよい。
ボルネオールの割合は、(A)成分1質量部に対して、0.0001質量部以上(例えば、0.0003~3質量部)、好ましくは0.0005~2質量部(例えば、0.0007~1.5質量部)、さらに好ましくは0.001~1.2質量部(例えば、0.002~1質量部)程度であってもよい。
ボルネオールの割合は、(C)成分1質量部に対して、0.0001質量部以上(例えば、0.0005~30質量部)、好ましくは0.001~20質量部(例えば、0.003~15質量部)、さらに好ましくは0.005~12質量部(例えば、0.01~10質量部)程度であってもよい。
【0069】
特に、本発明の組成物がユーカリ油を含む場合、ユーカリ油の割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.00001w/v%以上(例えば、0.00005~1w/v%)、好ましくは0.0001~0.1w/v%(例えば、0.0003~0.05w/v%)、さらに好ましくは0.0005~0.02w/v%(例えば、0.001~0.01w/v%)程度であってもよい。
ユーカリ油の割合は、(A)成分1質量部に対して、0.0001質量部以上(例えば、0.0003~0.3質量部)、好ましくは0.0005~0.05質量部(例えば、0.0007~0.04質量部)、さらに好ましくは0.001~0.03質量部(例えば、0.002~0.02質量部)程度であってもよい。
ユーカリ油の割合は、(C)成分1質量部に対して、0.0001質量部以上(例えば、0.0005~1質量部)、好ましくは0.001~0.5質量部(例えば、0.003~0.3質量部)、さらに好ましくは0.005~0.3質量部(例えば、0.01~0.2質量部)程度であってもよい。
【0070】
(G)脂溶性抗酸化剤((G)成分)
本発明の組成物は、脂溶性抗酸化剤(以下、(G)脂溶性抗酸化剤、(G)成分などということがある)を含んでいてもよい。
【0071】
脂溶性抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)のようなブチル基含有フェノール;ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA);アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、アスコルビン酸リン酸アミノプロピル、アスコルビン酸リン酸トコフェロール、アスコルビン酸トリリン酸、アスコルビン酸リン酸パルミテートのようなアスコルビン酸エステル;没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシルのような没食子酸エステル;プロピルガラート;3-ブチル-4-ヒドロキシキノリン-2オン;ルテイン、アスタキサンチンのようなカロテノイド類;アントシアニン類、カテキン、タンニン、クルクミンなどのポリフェノール類;CoQ10などが挙げられる。
【0072】
これらのうち、ジブチルヒドロキシトルエンが好ましい。一方、本発明の組成物は、BHTを含んでいなくてもよい。
【0073】
脂溶性抗酸化剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0074】
組成物中の(G)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001~0.1w/v%、好ましくは0.0005~0.01w/v%、より好ましくは0.0007~0.009w/v%、さらに好ましくは0.001~0.008w/v%、さらにより好ましくは0.003~0.007w/v%、最も好ましくは0.0045~0.006w/v%程度であってもよい。
【0075】
(H)抗アレルギー剤((H)成分)
本発明の組成物は、抗アレルギー剤(以下、(H)抗アレルギー剤、(H)成分などということがある)を含んでいてもよい。
【0076】
抗アレルギー剤(トラニラスト及び/又はその塩以外の抗アレルギー剤)としては、例えば、クロモグリク酸、イブジラスト、アシタザノラスト、タザノラスト、スプラタスト、ペミロラスト、レボカバスチン、オロパタジン、ケトチフェン、アンレキサノクス、オキサトミド及びそれらの塩などが挙げられる。
【0077】
塩としては、例えば、前記(A)成分~(C)成分の項で例示の塩などが挙げられ、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(クロモグリク酸ナトリウム、クロモグリク酸カリウム、クロモグリク酸マグネシウム、クロモグリク酸カルシウムなど)、無機酸塩(例えば、オロパタジン塩酸塩など)、有機酸塩[例えば、トシル酸塩、フマル酸塩(フマル酸ケトチフェンなど)など]などが挙げられる。
【0078】
これらのうち、クロモグリク酸及びその塩が好ましく、クロモグリク酸ナトリウムがより好ましい。
【0079】
抗アレルギー剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0080】
組成物中の(H)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.1~10w/v%、好ましくは0.2~8w/v%、より好ましくは0.3~5w/v%、さらにより好ましくは0.5~3w/v%、特に好ましくは0.7~2w/v%、さらに特に好ましくは0.8~1.5w/v%、最も好ましくは0.9~1.2w/v%程度であってもよい。
【0081】
(I)抗ヒスタミン剤
本発明の組成物は、抗ヒスタミン剤(以下、(I)抗ヒスタミン剤、(I)成分などということがある)を含んでいてもよい。
抗ヒスタミン剤(クロルフェニラミン及び/又はその塩以外の抗ヒスタミン剤)としては、抗ヒスタミン作用を有する物質であれば、特に制限されず、例えば、ジフェンヒドラミン、エピナスチン、ケトチフェン、オロパタジン、レボカバスチン、イプロヘプチン及びそれらの塩が挙げられる。
【0082】
塩としては、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、有機酸塩(例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩など)、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩など)、金属塩などの(A)成分の項で例示の塩などが挙げられる。
【0083】
具体的な塩としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチンなどが挙げられる。
【0084】
抗ヒスタミン剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0085】
組成物が(I)成分を含む場合、組成物中の(I)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001w/v%以上、好ましくは0.001~10w/v%、より好ましくは0.003~5w/v%、さらに好ましくは0.005~1w/v%、さらにより好ましくは0.01~0.5w/v%、特に好ましくは0.015~0.3w/v%(例えば、0.02~0.1w/v%)、最も好ましくは0.025~0.05w/v%(例えば、0.03w/v%)程度であってもよく、通常0.01~0.05w/v%程度であってもよい。
【0086】
(J)抗炎症剤
本発明の組成物は、抗炎症剤(以下、(J)抗炎症剤、(J)成分などということがある)を含んでいてもよい。
抗炎症剤(プラノプロフェン及び/又はその塩以外の抗炎症剤)としては、抗炎症作用を有する物質であれば、特に制限されず、例えば、インドメタシン、アラントイン、ベルベリン、アズレンスルホン酸、ジクロフェナク、ブロムフェナク、グリチルリチン酸、亜鉛、銀、トラネキサム酸、リゾチーム及びそれらの塩などが挙げられる。
【0087】
塩としては、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩などの前記(A)成分の項で例示の塩などが挙げられ、例えば、硫酸塩、乳酸塩、塩酸塩、塩化物塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0088】
具体的な塩としては、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、グリチルリチン酸二カリウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、硝酸銀、塩化リゾチームなどが挙げられる。
【0089】
抗炎症剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明の眼科組成物は、グリチルリチン酸及びその塩を実質的に含んでいなくてもよい。
【0090】
組成物が(J)成分を含む場合、組成物中の(J)成分の含有量は、組成物の全量に対して、例えば、0.0001w/v%以上、好ましくは0.001~10w/v%、より好ましくは0.003~5w/v%、さらに好ましくは0.005~1w/v%、さらにより好ましくは0.01~0.5w/v%、特に好ましくは0.015~0.3w/v%(例えば、0.02~0.1w/v%)、最も好ましくは0.025~0.07w/v%(例えば、0.05w/v%)程度であってもよい。
【0091】
本発明の組成物は、各種成分(例えば、前記(A)成分~(J)成分の範疇に属さない成分)を含んでいてもよい。このような成分(添加剤)としては、例えば、界面活性剤、防腐剤、緩衝剤、pH調節剤、等張化剤、増粘剤又は粘稠化剤、安定化剤、油分、糖類、高分子化合物、多価アルコール、無機塩類、非脂溶性抗酸化剤(又は水溶性抗酸化剤)などが挙げられる。
【0092】
添加剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、各添加剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0093】
添加剤の具体例を以下に例示する。
【0094】
界面活性剤
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えば、非オン界面活性剤などが挙げられる。
【0095】
非イオン界面活性剤としては、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のポリソルベート類(POEソルビタン脂肪酸エステル類);ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油80等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.、ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記例示した化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0096】
中でも、POEソルビタン脂肪酸エステル類;POE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、ポリソルベート80、ポロクサマー407、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油60、POEヒマシ油3、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、ステアリン酸ポリオキシル40がより好ましく、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油60がさらに好ましく、ポリソルベート80が特に好ましい。
【0097】
界面活性剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明の組成物は、POE硬化ヒマシ油又はPOEヒマシ油を実質的に含んでいなくてもよい。
【0098】
本発明の組成物に非イオン界面活性剤を配合する場合、非イオン界面活性剤の割合は、組成物の全量に対して、例えば、0.001w/v%以上、好ましくは0.005w/v%以上、さらに好ましくは0.01w/v%以上、特に好ましくは0.05w/v%以上であってもよい。
【0099】
また、非イオン界面活性剤の割合は、組成物の全量に対して、例えば、5w/v%以下、好ましくは1w/v%以下であってもよい。
【0100】
防腐剤
本発明の組成物は、防腐剤を含んでいてもよい。
防腐剤としては、例えば、塩化ポリドロニウム、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなど)、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(例えば、塩酸ポリヘキサニドなど)、及びグローキル(ローディア社製)などが挙げられる。
【0101】
中でも、アルキルポリアミノエチルグリシン類(例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)、安息香酸ナトリウム、エタノール、第四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、ビグアニド化合物が好ましく、第四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ビグアニド化合物がより好ましく、塩化ベンザルコニウム、塩酸ポリヘキサニドがさらに好ましい。
【0102】
一方、本発明の組成物は、ソルビン酸及びその塩(ソルビン酸カリウムなど)を含んでいなくてもよい。
【0103】
本発明の組成物に防腐剤を配合する場合、その配合量の一例として、組成物の全量に対して、防腐剤の総量で、0.000001w/v%以上、中でも0.00001w/v%以上、中でも0.00005w/v%以上、中でも0.001w/v%以上、中でも0.005w/v%以上が挙げられる。また、組成物の全量に対して、防腐剤の総量で、1w/v%以下、中でも0.1w/v%以下、中でも0.05w/v%以下、中でも0.03w/v%以下、中でも0.025w/v%以下が挙げられる。
【0104】
緩衝剤
本発明の組成物は、緩衝剤を含んでいてもよい。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤等が挙げられる。
【0105】
ホウ酸緩衝剤の成分としては、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂など)などが挙げられる。ホウ酸塩は水和物であってもよい。
【0106】
リン酸緩衝剤の成分としては、リン酸、リン酸塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムなど)などが挙げられる。リン酸塩は水和物であってもよい。
【0107】
炭酸緩衝剤の成分としては、炭酸、炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウムなど)などが挙げられる。炭酸塩は水和物であってもよい。
【0108】
クエン酸緩衝剤の成分としては、クエン酸、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなど)などが挙げられる。クエン酸塩は水和物であってもよい。
【0109】
酢酸緩衝剤の成分としては、酢酸、酢酸塩(酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムなど)などが挙げられる。酢酸塩は水和物であってもよい。
【0110】
中でも、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤がより好ましい。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸とその塩との組合せが好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩との組合せがより好ましく、ホウ酸とホウ酸のアルカリ金属塩との組合せが更に好ましく、ホウ酸とホウ砂との組合せが更により好ましい。
【0111】
本発明の組成物に緩衝剤を配合する場合、緩衝剤の配合量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類や量等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、組成物の全量に対して、緩衝剤の総量で、0.001w/v%以上、中でも0.01w/v%以上、中でも0.05w/v%以上、中でも0.1w/v%以上が挙げられる。また、組成物の全量に対して、緩衝剤の総量で、10w/v%以下、中でも5w/v%以下、中でも3w/v%以下、中でも2.5w/v%以下、中でも2w/v%以下が挙げられる。
【0112】
特に、ホウ酸緩衝剤を使用する場合、組成物中の緩衝剤の割合は、組成物全体に対して、0.1~10w/v%、好ましくは0.2~5w/v%、より好ましくは0.5~4w/v%、さらに好ましくは1~3w/v%程度であってもよい。
【0113】
pH調節剤
pH調節剤としては、例えば、塩酸、硫酸、ポリリン酸、有機酸(プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸など)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
pH調整剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0114】
等張化剤
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、及びプロピレングリコールなどが挙げられる。
等張化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0115】
増粘剤又は粘稠化剤
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、増粘剤ないしは粘稠化剤を含むことができる。
【0116】
増粘剤又は粘稠化剤としては、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、セルロース系高分子化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、寒天、アルギン酸、α-シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、ムコ多糖類(例えば、ヘパリン類似物質、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(ナトリウム塩など)など)、デンプン、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、カラギーナン、ソルビトール、ポリビニル系高分子化合物(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなど)、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、ポリアクリル酸のアミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、エラスチン、セラミド、流動パラフィン、グリセリン、ポリエチレングリコール、マクロゴール、ポリエチレンイミンアルギン酸塩(ナトリウム塩など)、アルギン酸エステル(プロピレングリコールエステルなど)、トラガント末、並びにトリイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
増粘剤又は粘稠化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0117】
安定化剤
安定化剤としては、例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、及びモノステアリン酸グリセリンなどが挙げられる。
安定化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0118】
油分
油分としては、スクワラン、精製ラノリンのような動物油、流動パラフィン、白色ワセリンのような鉱物油、ヒマシ油、ゴマ油のような植物油などが挙げられる。
油分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明の眼科組成物は、ワセリン(白色ワセリンなど)を実質的に含んでいなくてもよい。
また、本発明の眼科組成物は、ヒマシ油、ゴマ油などを実質的に含有しなくてもよい。
例えば、本発明の眼科組成物は、(1)ポリオキシエチレンヒマシ油及びゴマ油を組み合わせて含む組成物を除外した組成物であってもよく、(2)ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びゴマ油を組み合せて含む組成物を除外した組成物であってもよい。
【0119】
糖類
糖類としては、単糖類、二糖類、具体的には、グルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなどが挙げられる。
糖類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0120】
多価アルコール
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、キシリトール、ジエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
多価アルコールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0121】
無機塩類
無機塩類としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム(乾燥炭酸ナトリウムを含む)、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
中でも、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム(乾燥炭酸ナトリウムを含む)、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムがより好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがさらに好ましい。
無機塩類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0122】
水溶性抗酸化剤
水溶性の抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(アスコルビン酸-2-硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウムなど)、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸又はその塩(エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウムなど)などが挙げられる。
水溶性抗酸化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0123】
本発明の組成物には、さらに薬理活性又は生理活性を有する成分を配合することができる。
【0124】
薬理活性成分又は生理活性成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0125】
このような薬理活性成分や生理活性成分として、一般用医薬品製造販売承認基準2012年版(一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会監修)に記載された各種医薬における有効成分を例示できる。例えば、充血除去剤、眼筋調節剤、収斂剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌剤又は殺菌剤、局所麻酔薬成分、無痛化剤、サルファ剤などが挙げられる。これらの薬剤の具体例を以下に例示する。
【0126】
充血除去剤(血管収縮剤)
充血除去剤としては、例えば、α-アドレナリン作動薬、具体的にはオキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、又はそれらの塩酸塩、硝酸塩などの塩等のイミダゾリン系充血除去剤、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリンなどが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0127】
イミダゾリン系血管収縮剤について詳述すると、イミダゾリン系血管収縮剤の塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、例えば、マレイン酸塩、フマル酸塩などの有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;金属塩などの塩が挙げられる。塩の中では、無機酸塩が好ましく、塩酸塩、又は硝酸塩がより好ましく、塩酸塩(塩酸テトラヒドロゾリン等)が特に好ましい。
【0128】
充血除去剤(血管収縮剤)の中でも、イミダゾリン系血管収縮剤が好ましく、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、又はそれらの塩がより好ましく、テトラヒドロゾリン、又はその塩がより好ましい。
【0129】
眼筋調節剤
眼筋調節剤としては、例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、及び硫酸アトロピンなどが挙げられる。
【0130】
ビタミン類
ビタミン類としては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド又はその塩(例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、コバラミン又はその塩(例えば、シアノコバラミン、メチルコバラミン)、レチノール、その塩又はその誘導体(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)、ピリドキシン又はその塩(例えば、塩酸ピリドキシン)、パンテノール、パントテン酸又はその塩(例えば、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カリウム、パントテン酸カルシウム、パントテン酸マグネシウム)、トコフェロール、その塩又はその誘導体(例えば、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール)、ピリドキサール又はその塩(例えば、リン酸ピリドキサール)、アスコルビン酸又はその塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム)などが挙げられる。
【0131】
中でも、フラビンアデニンジヌクレオチド又はその塩(特に、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)、コバラミン又はその塩(特に、シアノコバラミン)、レチノール、その塩又はその誘導体(特に、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール)、ピリドキシン又はその塩(特に、塩酸ピリドキシン)、パンテノール、パントテン酸又はその塩(特に、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム)、トコフェロール、その塩又はその誘導体(特に、酢酸トコフェロール)が好ましく、塩酸ピリドキシン、酢酸トコフェロールがより好ましい。
なお、本発明の組成物は、ピリドキシン及びその塩を含んでいなくてもよい。
【0132】
抗菌剤又は殺菌剤
抗菌剤又は殺菌剤としては、例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムのようなサルファ剤、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、及び塩酸ロメフロキサシンなどが挙げられる。
【0133】
局所麻酔薬成分
局所麻酔薬成分としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカインなどが挙げられる。
【0134】
無痛化剤
無痛化剤としては、例えば、塩酸プロカインなどが挙げられる。
【0135】
サルファ剤
サルファ剤としては、例えば、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等が挙げられる。
【0136】
基剤又は担体
本発明の組成物は、基剤又は担体を含んでいてもよい。
このような基剤又は担体を含む組成物は、例えば、上記各成分を、薬学的に許容される基剤又は担体と混合することにより、例えば、第17改正日本薬局方解説書に記載の慣用の方法で調製できる。
【0137】
基剤又は担体として、例えば、水、エタノールのような極性溶媒(特に水溶性溶媒)、油性基剤などが挙げられる。基剤又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0138】
特に、本発明の組成物は、水性組成物(例えば、水や、水と水溶性溶媒との混合溶媒を含む組成物)であってもよい。
【0139】
性状
本発明の組成物の性状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、又は半固形状などの何れの性状であってもよい。また、用時調製により、液体状、流動状、ゲル状、又は半固形状になったものも含まれる。半固形状は、例えば、軟膏剤のように、力を加えることにより変形させ得る塑性を有する性状をいう。
【0140】
また、組成物は、前記のように、水性組成物(基剤又は担体として水性ないしは親水性のものを主に含む)であってもよく、油性組成物(基剤又は担体として油性ないしは疎水性のものを主に含む)であってもよく、特に水性組成物であってもよい。
【0141】
水性組成物の場合の水の含有量は、組成物(又は製剤)の全量に対して、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらにより好ましい。また、基剤又は担体が水のみからなっていてもよい。
【0142】
油性組成物の場合の水の含有量は、組成物(又は製剤)の全量に対して、50質量%未満が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらにより好ましい。
【0143】
ナトリウムイオン量
本発明の組成物は、ナトリウムイオン(又はナトリウム)量が特定の範囲にあってもよい。このようなナトリウムイオン量と、前記特定の成分とを組み合わせることで、析出抑制効果や溶解安定性などの点でより有利にできる場合がある。
【0144】
例えば、本発明の組成物のナトリウムイオン濃度は、300mM以下、250mM以下(例えば、240mM以下)、さらに好ましくは230mM以下、特に好ましくは200mM以下、最も好ましくは150mM以下としてもよい。
【0145】
本発明の組成物のナトリウムイオン濃度は、比較的低濃度であってもよく、例えば、100mM以下(例えば、90mM以下)、好ましくは80mM以下(例えば、70mM以下)、さらに好ましくは60mM以下(例えば、50mM以下)、最も好ましくは40mM以下(例えば、30mM以下)であってもよく、さらに低濃度(例えば、35mM以下、30mM以下、25mM以下、20mM以下、15mM以下、好ましくは10mM以下、5mM以下、実質的に0mM又は検出限界)であってもよい。
【0146】
ナトリウムイオン量は、(A)成分に対する割合として規定することもできる。例えば、本発明の組成物において、ナトリウムイオンの割合は、(A)成分1モルに対して、30モル以下程度の範囲から選択でき、25モル以下、好ましくは20モル以下、さらに好ましくは15モル以下、特に好ましくは12モル以下、最も好ましくは10モル以下(例えば、9.5モル以下)であってもよく、比較的低割合[例えば、9モル以下(例えば、8モル以下)、好ましくは7モル以下(例えば、6モル以下)、さらに好ましくは5モル以下、特に好ましくは4モル以下、最も好ましくは3モル以下]であってもよく、さらに低割合(例えば、3.5モル以下、3モル以下、2.5モル以下、2モル以下、1.5モル以下、好ましくは1モル以下、さらに好ましくは0.5モル以下、特に好ましくは0.1モル以下、実質的に0モル又は検出限界)であってもよい。
【0147】
なお、ナトリウムイオンは、組成物において遊離のイオンとなりうるものであればよく、塩を形成していてもよい。例えば、組成物中において、トラニラストがナトリウムとの塩を形成し、ナトリウムイオンが遊離の状態にない場合でも、このような塩由来のナトリウム(イオン)も、ナトリウムイオンに含まれる。
また、ナトリウム(イオン)量又は濃度は、組成物における量又は濃度を測定(直接的に測定)して得てもよく、組成物を構成する成分(原料)中のナトリウム(イオン)量又は濃度から組成物における量又は濃度を算出(間接的に測定)することにより得てもよい。なお、組成物又は原料中のナトリウム(イオン)量又は濃度は、慣用の方法又は装置(例えば、イオンクロマトグラフィー法など)で測定してもよい。
【0148】
また、ナトリウムイオンには、前記のように、各成分由来のナトリウムが含まれるため、各成分が塩などとしてナトリウムを含む場合、上記ナトリウムイオン濃度となるように、調整する必要がある。このような観点から、本発明の組成物のナトリウム量を小さくする場合には、点眼剤用途等において汎用される塩化ナトリウム、ホウ砂、エデト酸ナトリウム等を、少ない配合量で含むか又は含まないことが望ましい。
【0149】
このような観点から、特に、本発明の組成物を構成する各成分(例えば、(A)~(C)成分、その他の成分など)として、ナトリウムを含有しない成分[例えば、塩である場合には、ナトリウム塩でない塩(非ナトリウム塩)]を好適に使用してもよい。
【0150】
pH
本発明の組成物のpHは、3以上(例えば、4以上)が好ましく、5以上(例えば、5.5以上)がより好ましく、6以上がさらに好ましい。また、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8.5以下がさらにより好ましい。
【0151】
本発明の組成物のpHは、例えば、4~10、好ましくは5~9、さらに好ましくは5.5~8.5(例えば、6.0~8.3)であってもよく、6.5~8.5(例えば、7~8、7.2~7.7など)であってもよい。
本発明では、上記のようなpHにおいても、本発明の効果を効率よく実現できる。
【0152】
浸透圧
本発明の組成物の浸透圧比は、例えば、0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がさらにより好ましい。また、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらにより好ましい。
【0153】
浸透圧比は、第17改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とする。浸透圧は第17改正日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従い測定する。
【0154】
剤型
本発明の組成物の剤型(剤形、形状、構造)は特に限定されず、例えば、点眼剤(点眼液又は点眼薬ともいう。また、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む)、洗眼剤、眼軟膏(水溶性眼軟膏、油溶性眼軟膏)、コンタクトレンズ装着液、眼内注射剤(例えば、硝子体内注射剤)、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション、パッケージソリューション)、移植用の角膜等の摘出眼組織の保存剤、手術時潅流液などが挙げられる。点眼剤、洗眼剤、眼軟膏には、コンタクトレンズ装着時に使用するものも含まれる。
【0155】
なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0156】
本発明の組成物の剤型として、好ましくは、点眼剤、洗眼剤、眼軟膏(水溶性眼軟膏、油溶性眼軟膏)、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション、パッケージソリューション)などが挙げられ、さらに好ましくは点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用液(洗浄液、保存液、消毒液、マルチパーパスソリューション)などが挙げられ、さらにより好ましくは点眼剤、洗眼剤が挙げられ、特に好ましくは点眼剤が挙げられる。
【0157】
このような本発明の組成物は、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、中でもシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ)装用時(装着時)又は装用中(装着時)に使用又は適用する眼科組成物(特に、点眼剤、洗眼剤、又は眼軟膏)を除くものとすることができる。
【0158】
本発明の組成物は、使い切りのユニットドーズでも繰り返し使用できるマルチドーズでもよく、マルチドーズの形態で収容して使用してもよい。
【0159】
容器
本発明の組成物は、容器に収容(充填、注入、封入)されていてもよい。
容器は、組成物(製剤)と接触する部分(面)を有する包装体であればよく、例えば、組成物(例えば、液状の組成物)を収容する容器本体部分、容器の抽出口を含む部分(ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップなどで構成されていてもよい。
【0160】
容器を構成する材質は、広い範囲から選択でき、例えば、少なくとも組成物との接触部分の一部又は全部が、プラスチック[例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素樹脂、塩素系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性ポリフェニレンエーテルなど)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースアセテートなど)、ハロゲン原子で置換されていてよい炭化水素系樹脂など]、金属(アルミニウムなど)などが挙げられる。
【0161】
容器は、単独又は2種以上の材質で構成されていてもよい。
【0162】
オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂[例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどを含む)、エチレン-プロピレン共重合体など]、プロピレン系樹脂[例えば、ポリプロピレン(PP)(アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどを含む)、プロピレン-エチレン共重合体など]、メチルペンテン系樹脂(例えば、ポリメチルペンテンなど)などが挙げられる。
【0163】
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル含有スチレン系樹脂(例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)など)などが挙げられる。
【0164】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシルのようなメタクリル酸エステルなどを重合成分とする樹脂などが挙げられる。
【0165】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂[例えば、アルキレンテレフタレート単位を有する樹脂(アルキレンテレフタレート系樹脂:例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など)、アルキレンナフタレート単位を有する樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレートなど)など]が挙げられる。
【0166】
フッ素樹脂としては、フッ素置換ポリエチレン(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど)、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレンコポリマー、エチレン・四フッ化エチレンコポリマー、エチレン・クロロトリフルオロエチレンコポリマーなどが挙げられる。
【0167】
ポリアセタール系樹脂としては、オキシメチレン単位のみからなるものの他、一部にオキシエチレン単位を含むものが挙げられる。
【0168】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。
【0169】
ポリアリレートとしては、非晶質ポリアリレートなどが挙げられる。
【0170】
ポリイミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド、例えばピロメリット酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとを重合させたものが挙げられる。
【0171】
セルロースアセテートとしては、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどが挙げられる。
【0172】
容器の材質としては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などのプラスチック(すなわち、プラスチック製容器)が好ましく、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、アルキレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレンがより好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンがさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートがさらにより好ましい。
【0173】
なお、容器は、容器材質が前記ポリマー以外のポリマーとのポリマーブレンドでもよい。本発明の眼科組成物を収容する容器の容器材質が前記ポリマーとのブレンドポリマーある場合、前記ポリマーと、前記ポリマー以外のポリマーとの混合比は本発明の効果を奏すれば特に限定されないが、構成材質全体の総量に対し、前記ポリマーの合計重量が30w/w%以上であることが好ましく、50w/w%以上であることがさらに好ましく、65w/w%以上であることがさらにより好ましく、80w/w%以上であることが特に好ましい。
【0174】
容器は、本発明の組成物と接触する面の少なくとも一部が上記材料で構成されていてもよい。例えば、容器内面に上記材料で構成された層又はフィルムが形成されていてもよく、容器自体が上記材料で成型されていてもよい。本発明の効果を顕著に奏する観点から、容器自体が上記材料で成型されていることが好ましい。
【0175】
また、容器を構成する部分(容器本体部分、容器の抽出口を含む部分(ノズル、中栓)、吸い上げチューブ、キャップなど)が上記材料で構成されていてもよく、容器の全部分が上記材料で構成されていてもよい。特に、本発明の効果を顕著に奏する観点から、容器本体部分が上記材料で構成されているのが好ましく、容器本体部分の全てが上記材料で構成されていること(容器本体を構成する一部の層が上記材料で構成されているのではない状態)がより好ましい。
【0176】
対象疾患(用途)
本発明の組成物の対象疾患(用途)は、眼科用である限り、特に限定されるものではないが、例えば、アレルギー症状、目の痒み、充血、異物感(コロコロする感じ等)、角膜ダメージ、角膜損傷、涙目(流涙症)、眼瞼結膜の濾胞、眼脂(目やに)などの緩和、改善、抑制、又は治療や、角膜バリア機能の亢進、正常化、角膜保護などに有用である。
【0177】
なお、涙目は、涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管に至る涙の排出路が目やに等で閉塞状態になったり、刺激により涙が過剰に作られたりした場合に起きる症状である。
【0178】
本明細書において、「緩和」は、症状の軽快、症状の進行抑制を包含し、「改善」、「抑制」、及び「治療」は、症状の軽快、症状の進行抑制、治癒ないしは完快を包含する。
【0179】
特に、本発明の組成物は、アレルギー症状(目のアレルギー症状)の緩和、改善、抑制、又は治療用として好適である。
【0180】
アレルギー症状のアレルゲンとしては、特に限定されないが、花粉(スギ花粉、ヒノキ花粉など)、ハウスダスト(室内塵)などであってもよい。
【0181】
また、別の態様では、本発明の組成物は、目の痒み、充血、涙目、異物感、眼脂(目やに)などの症状の緩和、改善、抑制、又は治療用として好適である。これらの症状はアレルギー症状に由来するものであってもよく、由来しないものであってもよい。
【0182】
使用方法
本発明の組成物の使用方法(使用態様)は、その性状などに応じて適宜選択できる。
【0183】
例えば、本発明の組成物が、点眼剤、洗眼剤、眼軟膏などの眼に適用する製剤である場合、その用法は、対象とする症状によって異なるが、例えば、1日1回以上、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、又は6回以上とすることができる。また、1日9回以下、8回以下、7回以下、6回以下、5回以下、又は4回以下とすることができる。1日4回投与することが特に好ましい。
【0184】
本発明の組成物が点眼剤である場合、例えば、1回当たり、1~3滴点眼すればよく、1~2滴、2~3滴であってもよい。好ましくは1~2滴点眼すればよい。1滴とすることもできる。また、点眼一滴量は、好ましくは30~50μLであってもよい。
【0185】
本発明の組成物が洗眼剤である場合、例えば、1回当たり、1~30mL用いて洗眼すればよく、好ましくは1~20mL、さらに好ましくは4~6mL用いて洗眼すればよい。
【0186】
本発明の組成物が眼軟膏である場合、例えば、1回当たり、眼に0.001~5g塗布すればよい。
【0187】
本発明の組成物がコンタクトレンズ装着液である場合は、コンタクトレンズの装着時、脱着時に、例えば、1回当たり、1~3滴、好ましくは1~2滴を、コンタクトレンズの片面及び/又は両面に滴下して濡らした後に装用すればよく、好ましくはコンタクトレンズの両面を濡らした後に装用することが好ましい。
【0188】
〔2.保存効力〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、保存効力(保存安定性)を向上又は改善できる(又は付与できる、発現できる)という効果を奏する。
したがって、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物に、残りの1又は2成分を含有させる(例えば、(A)成分を含有する眼科組成物に、(B)成分及び(C)成分を含有させる)ことを含む、眼科組成物における保存効力(保存安定性)を向上又は改善する方法(付与又は発現する方法)が提供される。
また、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物における保存効力を向上又は改善(付与又は発現)するための剤(防腐剤)であって、残りの1又は2成分を含む剤が提供される。
なお、これらの方法及び剤において、保存効力を発揮する微生物、菌、カビなどは、特に限定されず、例えば、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダ菌、アスペルギルスなどが挙げられる。
【0189】
〔3.安定性〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、安定性(例えば、熱安定性及び/又は光安定性、特に、少なくとも光安定性)を向上又は改善(付与又は発現)できるという効果を奏する。
したがって、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物に、残りの1又は2成分を含有させる(例えば、(A)成分を含有する眼科組成物に、(B)成分及び(C)成分を含有させる)ことを含む、眼科組成物における安定性を向上又は改善(付与又は発現)する方法が提供される。
また、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物における安定性を向上又は改善(付与又は発現)するための剤(光安定剤、熱安定剤、熱及び光安定剤)であって、残りの1又は2成分を含む剤が提供される。
【0190】
〔4.酸素ストレス耐性〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、酸素(低酸素)ストレス耐性を向上又は改善(付与又は発現)できるという効果を奏する。
したがって、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物に、残りの1又は2成分を含有させる(例えば、(A)成分を含有する眼科組成物に、(B)成分及び(C)成分を含有させる)ことを含む、眼科組成物における酸素(低酸素)ストレス耐性を向上又は改善(付与又は発現)する方法が提供される。
また、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物における酸素(低酸素)ストレス耐性を向上又は改善(付与又は発現)するための剤(酸素ストレス耐性向上剤)であって、残りの1又は2成分を含む剤が提供される。
【0191】
〔5.析出・白濁の抑制〕
本実施形態に係る眼科組成物は、眼科組成物における、析出(白濁)を抑制できる(又は溶解安定性を向上又は改善できる)という効果を奏する。
したがって、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物に、残りの1又は2成分を含有させる(例えば、(A)成分を含有する眼科組成物に、(B)成分及び(C)成分を含有させる)ことを含む、眼科組成物における析出(白濁)を抑制する方法(溶解安定性を改善又は向上させる方法)が提供される。
この方法では、さらに、眼科組成物のナトリウムイオン濃度を前記濃度(例えば、250mM以下)としたり、溶解補助剤(例えば、ポリビニルピロリドン)を含有させてもよい。
また、本発明の一実施形態として、(A)成分、(B)成分及び(C)成分から選択された1又は2成分を含む眼科組成物における析出(白濁)を抑制するための剤(又は溶解安定性を向上又は改善するための剤)であって、残りの1又は2成分を含む剤が提供される。この剤は、さらに、溶解補助剤(ポリビニルピロリドンなど)を含んでいてもよい。
なお、これらの方法及び剤において、析出抑制(溶解安定性の向上又は改善)効果を奏する温度は、特に限定されないが、特に、比較的低温における効果であってもよい。そのため、前記方法及び剤は、低温(例えば、10℃以下、好ましくは5℃以下、0℃以下など)において、析出を抑制(溶解安定性を向上又は改善)する方法及び剤であってもよい。
【0192】
なお、上記各実施形態における、(A)~(C)成分の種類及び含有量等、その他の成分の種類及び含有量等、眼科組成物の製剤形態及び用途等については、〔1.眼科組成物〕で説明したとおりである。
【実施例0193】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0194】
なお、以下の試験例及び処方例において、ナトリウム(イオン)量及び濃度は、原料中のナトリウム(イオン)量に基づいて算出した。下記表に、ナトリウム(イオン)を含む成分とそのナトリウム量又は濃度の算出例を示す。
【0195】
【表1】
【0196】
ナトリウムイオン濃度(mM)=
配合量(w/v%)/分子量×ナトリウム数(分子量あたり)×10000
【0197】
なお、多糖については、ナトリウムが結合している糖部分の分子量に基づいて算出した。例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウムはN-アセチル-D-ガラクトサミンとD-グルクロン酸の二糖を反復構造単位とするポリマーであり、Na濃度の計算は、2糖単位あたりの分子量を503.3として計算を行っている。
【0198】
試験例1(保存効力)
下記表2に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、次のようにして、保存効力を評価した。
【0199】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(ATCC6538))を、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト斜面培地の表面に接種して、33℃で、24時間培養した。培養菌体を白金耳で無菌的に採取し、適量の滅菌生理食塩水に浮遊させて、約1×10CFU/mLの生菌を含む細菌浮遊液を調製した。なお、浮遊液の生菌数は、別途培養して計測した。次に、15mL容量CORNINGコニカルチューブ(PET)に、ろ過滅菌した各水性眼科組成物を10mLずつ充填した。この水性眼科組成物に、生菌数(最終濃度)が約10CFU/mLとなるよう、Staphylococcus aureus浮遊液を接種し、よく攪拌して試料とした。
試料を5日間、遮光下23℃で保存した。5日後に菌を含む試料を計数に適切な濃度となるよう調製し、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地(SCD寒天培地)上に播種し、33℃にて一晩培養後、観察されたコロニー数をカウントする事により、生菌数を求めた。
求めた生菌数から、以下の値(Log Reduction Value LRV、対数減少値)を算出し、保存効力の指標とした。
対数減少値=log(浮遊液の生菌数/100)-log(5日後の生菌数)
【0200】
なお、下記表2の水性眼科組成物において、各成分の単位は(w/v%)である(以下同じ)。
【0201】
【表2】
【0202】
上記表2の結果から明らかなように、トラニラスト、マレイン酸クロルフェニラミン、プラノプロフェンを組み合わせることで、これらの3成分のうち、トラニラストやマレイン酸クロルフェニラミンを単独で使用した場合やマレイン酸クロルフェニラミンとプラノプロフェンとを組み合わせた場合に比べて、黄色ブドウ球菌に対する高い保存効力を示した。
【0203】
試験例2(保存効力)
下記表3に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、試験例1において、保存期間を5日から1週間に代えたこと以外は、試験例1と同様にして保存効力を評価した。
【0204】
【表3】
【0205】
上記表3の結果から明らかなように、保存期間を1週間に延ばしても、また、3成分の割合を変更しても、同様の保存効力が得られた。
【0206】
試験例3(保存効力)
下記表4に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、試験例2(保存期間1週間)において、保存前に加熱処理(熱エージング)したこと以外は、試験例2と同様にして保存効力を評価した。
なお、加熱処理は、調製した水性眼科組成物を13mL容量PET容器に13mL充填してプラスチックフィルム包装を行い、遮光条件で60℃、7日間保管することで行った。
【0207】
【表4】
【0208】
上記表4の結果から明らかなように、保存前に熱処理した場合でも、保存効力を維持できた。
【0209】
試験例4(保存効力)
下記表5に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、試験例2(保存期間1週間)と同様にして対数減少値Aを得た。
一方、同じ組成の水性眼科組成物を用い、試験例2(保存期間1週間)において、保存前に、試験例3と同様の加熱処理をしたこと以外は、試験例2と同様にして対数減少値Bを得た。
これらの結果から、対数減少値の差(A-B)を算出し、熱エージングによる保存効力の低下の程度を評価した。
【0210】
【表5】
【0211】
上記表5の結果から明らかなように、3成分を組み合わせることで、熱処理による保存効力の低下を抑えることができた。
【0212】
試験例5(保存効力)
下記表6に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、試験例2(保存期間1週間)において、保存前に曝光したこと以外は、試験例2と同様にして保存効力を評価した。
なお、曝光は、調製した水性眼科組成物を13mL容量PET容器に13mL充填した後、光安定性試験装置(「LT-120A-WCD型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、白色ランプを光原として、室温の下、4500lx/hrの光を時間連続照射し、水性眼科組成物に対して積算照射量10万lx・hrとなるまで行った。
【0213】
【表6】
【0214】
上記表6の結果から明らかなように、曝光しても、保存効力を維持できた。
【0215】
試験例6(保存効力)
下記表7に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、試験例2(保存期間1週間)において、黄色ブドウ球菌にかえて大腸菌(Escherichia coli(ATCC 8739))を使用したこと以外は、試験例2と同様にして保存効力を評価した。
【0216】
【表7】
【0217】
上記表7の結果から明らかなように、菌の種類を変更しても、トラニラスト、マレイン酸クロルフェニラミン、プラノプロフェンを組み合わせることで、保存効力を示すことがわかった。
【0218】
試験例7-1(光安定性)
下記表8に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を常法により調製し、次のようにして、光安定性を評価した。
調製した水性眼科組成物を13mL容量PET容器に13mL充填した。光安定性試験装置(「LT-120A-WCD型」、ナガノ科学株式会社製)を用いて、白色ランプを光原として、室温の下、4500lx/hrの光を時間連続照射し、水性眼科組成物に対して積算照射量90万lx・hrの光を曝光した。曝光後、ヘーズメーター(「NDH-300A」、日本電色社製)を用いて水性眼科組成物における濁度を測定した。
【0219】
【表8】
【0220】
上記表8の結果から明らかなように、3成分を組み合わせることで、優れた光安定性を実現できることがわかった。特に、3成分のうち、マレイン酸クロルフェニラミンそのものは光安定性が高く、プラノプロフェンは光安定性が低いようであるが、これらを単に組み合わせるだけでは、プラノプロフェンの光安定性を改善できるどころか極端に低下させるのに対して、3成分を組み合わせることでマレイン酸クロルフェニラミン同様の光安定性が得られたという知見は、極めて意外なものであった。
【0221】
試験例7-2(光安定性)
試験例7-1において、濁度に大きな差が見られた組成7Aと7Dにつき、積算照射量90万lx・hr曝光後におけるマレイン酸クロルフェニラミンの量(残存量)をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて測定した。
【0222】
そして、得られた曝光後のマレイン酸クロルフェニラミンの量と、曝露前のマレイン酸クロルフェニラミンの量から、マレイン酸クロルフェニラミンの分解率(%)[100-残存率(%)]を、組成7A及び7Dのそれぞれについて求め、下記式より算出される分解比及び分解抑制率を算出したところ、それぞれ、「0.529」及び「47.08%」であった。
【0223】
分解比=組成7Aの分解率(%)/組成7Dの分解率(%)
分解抑制率(%)=[1-組成7Aの分解率(%)/組成7Dの分解率(%)]×100
【0224】
この結果から、3成分を組み合わせることで、光によるマレイン酸クロルフェニラミンの分解を効率よく抑制できることがわかった。
【0225】
試験例8(低酸素ストレス耐性)
下記表9に示す組成の組成物を培養培地(DMEM/F12、Gibco社)に溶解し調製した。なお、トラニラストはジメチルスルホキシド(和光純薬株式会社)に溶解した後、培養培地に溶解した。また、トラニラストを含有しない組成物にはトラニラスト溶解時と同量のジメチルスルホキシドを添加した。
【0226】
【表9】
【0227】
そして、得られた組成物の低酸素ストレス耐性を、以下のようにして評価した。
ヒト不死化角膜上皮細胞(HCE-T)を、6 well plate(コーニング社)に1.6×10細胞/ウェルで播種し、37度、5%CO、湿度90%の条件で72時間培養した。
表9の組成に従い、マレイン酸クロルフェニラミン単独又はプラノプロフェンとマレイン酸クロルフェニラミンの組み合わせ、並びにプラノプロフェンとマレイン酸クロルフェニラミンとトラニラストの各成分を組み合わせた薬剤を細胞に添加した後、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学株式会社)を使用し、嫌気条件で、37度、18時間培養した。そして、抗酸化遺伝子として知られるhGPX1のmRNA発現量を、Quant Sutudio 7 Real-Time PCR System(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、定量的リアルタイムPCR法により定量した。
【0228】
試験結果を図1に示す。
図1の結果から明らかなように、プラノプロフェンとマレイン酸クロルフェニラミンとトラニラストの3種の組み合わせ(試験例8C)では、マレイン酸クロルフェニラミン単独(試験例8A)及びプラノプロフェンとマレイン酸クロルフェニラミンの2種の組み合わせ(試験例8B)よりも、hGPX1の有意な発現増加を示した(*p<0.05、t検定による)。また、3成分の割合を変更しても、同様のhGPX1の発現効果を示した(試験例8D)。3成分の組み合わせによる処方が、1種及び2種の組み合わせの処方と比較し、抗酸化遺伝子の発現増強に対し格別に顕著な効果を有することが明らかとなった。
【0229】
試験例9(ヒト官能試験)
下記表10に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製し、次のようにして、官能試験を行った。
【0230】
【表10】
【0231】
花粉症を有し、目の症状を発症している5名を対象とした。試験開始日から、1日4回の割合で左目に9A、右目に9Bの点眼剤を点眼し、点眼期間中、痒み及び充血について、1日目、2日目及び5日目の夜に1日を通じた特定の項目につき自覚症状アンケートを行った。
自覚症状アンケートは100点満点とし、値が大きい方が自覚症状が強いとした。また、値は5人の平均値である。
【0232】
結果を以下の表に示す。
【表11】
【0233】
試験例9Bは、痒み及び充血において、試験例9Aと同様か、又はより少ないものとなった。
【0234】
なお、試験例9Aは、クロモグリク酸ナトリウムを含んでおり、元来、痒みなどの改善効果を有することが知られている処方である。そのため、試験例9Bの値が、試験例9Aと同等か又はそれよりも小さい値を示したことは、トラニラストとマレイン酸クロルフェニラミンとプラノプロフェンとを組み合わせても、痒みや充血の改善効果等の点で遜色がないか又はそれよりも優れることを意味する。
【0235】
試験例10(析出試験)
下記表12に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製し、次のようにして、析出を評価した。
【0236】
調製した組成物を、スクリューバイアル(マルエム社製、No.3L)に充填し、4℃及び-2℃の各温度でそれぞれ2日間保管した。析出確認後にスクリューバイアルを、ボルテックスミキサー(アズワン社製、ボルテックスジェニー2)を用いて、最大撹拌スピードで10秒間撹拌し、ヘーズメーター(「NDH-300A」、日本電色社製)を用いて水性眼科組成物における濁度を測定した。
【0237】
結果を下記表12に示す。
なお、下記表において、析出改善率は、下記式で表される値である。
【0238】
析出改善率(%)=
(試験例10Aの濁度-各試験例の濁度)/試験例10Aの濁度×100
【0239】
【表12】
【0240】
上記表12の結果から明らかなように、トラニラストにポリビニルピロリドン(さらにはモノエタノールアミン)を添加した場合(さらにはナトリウムイオン濃度を0とした場合)においても、析出を生じることがわかった。一方、この析出は、塩酸ジフェンヒドラミンを添加した場合には増大するのに対して、マレイン酸クロルフェニラミンやプラノプロフェンを共存させることにより、抑制でき、特に3成分を組み合わせた場合に抑制できることがわかった。
特に、上記の試験例では、マレイン酸クロルフェニラミンやプラノプロフェンといった成分も含んでいるが、このような成分を含んでいても、析出や濁りといった製剤の安定性が損なわれることはなく、むしろ3成分を組み合わせることで析出や濁りを抑制することができた。
【0241】
また、上記処方ではポリビニルピロリドンとモノエタノールアミンを併用しているが、ポリビニルピロリドンを使用しない場合、ポリビニルピロリドン及び/又はモノエタノールアミンに代えてトロメタモールを使用した場合でも、同様の析出改善効果が見られた。
【0242】
さらに、本発明者らの検討によれば、トラニラストとモノエタノールアミン等とを組み合わせると、乾燥後に析出が生じる場合があったが、上記試験例の処方では、これらを組み合わせても乾燥後の析出は生じなかった。
【0243】
試験例11(析出試験)
下記表13に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製し、次のようにして、析出を評価した。
【0244】
調製した組成物を、スクリューバイアル(マルエム社製、No.3L)に充填し、4℃で2日間保管した。析出確認後、スクリューバイアルを、ボルテックスミキサー(アズワン社製、ボルテックスジェニー2)を用いて最大撹拌スピードで10秒間撹拌し、撹拌後の組成物1.5mLを1.5mLのサンプルチューブ(Eppendorf社製、Neutral micro test tube with cap type)に充填した。
サンプルチューブを1000rpmで10分間遠心分離処理し、蓄積した析出物の高さ(mm)を測定し、下記式で表される析出改善率を算出した。
【0245】
析出改善率(%)=(Y-X)/Y×100
[式中、Xは各試験例における析出物の高さ、Yは各試験例においてマレイン酸クロルフェニラミン及びプラノプロフェンを添加することなく、各成分濃度を同じにした試験例(ブランク)における析出物の高さを示す。]
【0246】
【表13】
【0247】
上記表13の結果から明らかなように、他のナトリウムイオン濃度(85mM、115mM)においても、特に3成分を組み合わせた場合に析出を効率よく抑制できることがわかった。
【0248】
試験例12(析出試験)
下記表14に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製し、試験例11と同様にして析出を評価した。
【0249】
【表14】
【0250】
上記表14の結果から明らかなように、ナトリウムイオン濃度をさらに135mMにまで増やしても、析出を効率よく抑制できることがわかった。
【0251】
試験例13(臨床試験)
下記表15に示す組成の水性眼科組成物(点眼剤)を調製し、次のようにして、臨床試験を行った。
【0252】
【表15】
【0253】
なお、表15に示す処方の点眼剤は、上記の他の試験例の処方と同様に、析出等の問題を生じることはなかった。
【0254】
軽症又は中等症のアレルギー性結膜炎(花粉症を含む)患者のうち、アレルギー検査によってI型アレルギーの関与が明らかであり、かつ眼掻痒感の自覚症状が認められた患者を対象に、試験製剤を1回1~2滴、1日4回、14日間点眼した際の有効性及び安全性を確認した。
【0255】
評価項目として他覚所見(眼瞼結膜の濾胞)のスコアを設定しその変化量を測定した。治験責任医師又は治験分担医師は細隙灯顕微鏡検査を実施し、下記に従って重症度を判定した。判定にあたっては、+++:3点、++:2点、+:1点、-:0点として計算した。
3(高度) :20個以上
2(中等度):10~19個
1(軽度) :1~9個
0(なし) :所見なし
【0256】
他覚所見のスコアから下記表16に従って症状別改善度を5段階(著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、悪化)で判定した。また、他覚所見スコアの変化量について記述統計量を算出した。
【0257】
【表16】
【0258】
試験の結果、試験開始から試験終了までに眼瞼結膜の濾胞の所見が見られた被験者のうち、その所見が中等度改善以上に改善した被験者の割合は66.0%であった。また、眼瞼結膜の濾胞のスコアの変化量の平均は-0.7であった。
これに対し、トラニラストを5mg/mLの濃度で含む水性点眼液、クロモグリク酸ナトリウムを20mg/Lの濃度で含む水性点眼液についての中等度改善以上の改善率について、それぞれ、「25.7%」「12.5%」であったとする報告がある(臨床医薬9巻3号(3月)1993年、669~683頁)。また、塩酸レボガバスチンを0.25mg/mLの濃度で含む点眼液についての中等度改善以上の改善率は投与2週間で「13%」又は「15.9%」であったとする報告がある(あたらしい眼科12(2):317~332、333~350、1995)。さらに、0.05%エピナスチン塩酸塩を含む水性点眼液についての眼瞼結膜の濾胞のスコアの変化量の平均は投与2週間「-0.2程度」であったとする報告がある(あたらしい眼科31(1)97~104、2014)。
【0259】
また、投与開始時点で眼瞼結膜の濾胞が軽度以上だった被験者の中等度改善以上の改善率は82.5%、中等度又は高度だった被験者が著明改善した割合は100%であった。
【0260】
これらのことから、上記処方による眼瞼結膜の濾胞の改善効果が顕著に優れていることがわかった。
【0261】
さらに、被験者の自覚症状の改善についても検討した。自覚症状(なみだ目、異物感、眼脂(目やに))スコアを下記表17のように設定しその変化量を測定した。診察時の過去3日間(診察日を含まず)の点数を算出した。
【0262】
【表17】
【0263】
自覚症状のスコアの平均値から前記表16に従って症状別改善度を5段階(著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、悪化)で判定した。
【0264】
結果、各自覚症状について中等度改善以上の改善が見られたのは表18のとおりであった。なお、投与開始時に眼瞼結膜の濾胞の所見があった被験者においては特にこれらの自覚症状の改善効果が高かった。
【0265】
【表18】
【0266】
[製剤例]
以下の表に記載の処方に従い、眼科組成物を調製した。なお、下記の表において、各成分の単位は(w/v%)である。
【0267】
【表19】
【0268】
【表20】
【産業上の利用可能性】
【0269】
本発明では、点眼剤などとして有用な眼科組成物を提供できる。
図1