(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166379
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】空気弁撤去方法
(51)【国際特許分類】
F16K 43/00 20060101AFI20241121BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16K43/00
F16L55/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161600
(22)【出願日】2024-09-19
(62)【分割の表示】P 2020155770の分割
【原出願日】2020-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】亀井 輝男
(57)【要約】
【課題】既設の空気弁を簡便に撤去することができる空気弁撤去方法を提供する。
【解決手段】流体管2の本管部2aから分岐された分岐部2bに直接に接続され、分岐部2b内に収容されたフロート弁33により開閉する遊動弁体34が設けられた既設の空気弁3を、不断流状態で撤去する空気弁撤去方法であって、流体管2の分岐部2bに取付けられた筐体50,60,70により空気弁3を取り囲む工程と、筐体50,60,70内に密封状に挿入された挿入治具75により空気弁3を分岐部2bから撤去する工程と、を少なくとも有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管の本管部から分岐された分岐部に直接に接続され、前記分岐部内に収容されたフロート弁により開閉する遊動弁体が設けられた既設の空気弁を、不断流状態で撤去する空気弁撤去方法であって、
前記流体管の前記分岐部に取付けられた筐体により前記空気弁を取り囲む工程と、
前記筐体内に密封状に挿入された挿入治具により前記空気弁を前記分岐部から撤去する工程と、を少なくとも有することを特徴とする空気弁撤去方法。
【請求項2】
前記空気弁は、前記分岐部内に配置された有底の外筒と、下端が開放されて前記外筒に挿嵌され、該外筒とともに前記フロート弁を収容する内筒と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の空気弁撤去方法。
【請求項3】
前記外筒は、前記分岐部よりも長寸に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の空気弁撤去方法。
【請求項4】
前記流体管の前記本管部に、前記筐体を支持するための支持部材を取付ける工程を更に有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の空気弁撤去方法。
【請求項5】
前記流体管の前記分岐部を管軸方向に挟む前記本管部のそれぞれに、前記支持部材を別個に取付けることを特徴とする請求項4に記載の空気弁撤去方法。
【請求項6】
前記支持部材は前記本管部の径方向に分割された分割構造を有し、締結部材によって前記本管部に取り付けられることを特徴とする請求項4または5に記載の空気弁撤去方法。
【請求項7】
前記挿入治具は、前記遊動弁体を密封状に被覆して前記空気弁に接続されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の空気弁撤去方法。
【請求項8】
前記空気弁を前記分岐部から撤去した後に、新たな空気弁を前記分岐部に接続することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の空気弁撤去方法。
【請求項9】
前記挿入治具により前記新たな空気弁を前記分岐部に接続することを特徴とする請求項8に記載の空気弁撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設流体管に連結された空気弁を不断流状態で撤去する空気弁撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管等の既設流体管には、その管路の適所に空気弁が設けられており、管内の余剰空気を外部に排出できるようになっている。このような空気弁は、管路から上方に分岐した分岐部に補修弁を介して接続されたものがあり、当該空気弁が耐久年数に至って管内空気を排出する能力が低下して交換が必要となった場合、流体管の不断流状態で補修弁を閉塞して当該空気弁を補修弁から撤去する撤去工事が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-101703号公報(第7頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、先ず空気弁と流体管との間に補修弁が介設されているため、この補修弁を閉塞すれば容易に空気弁を取り外すことができるが、このような補修弁が介在せずに流体管の分岐部に直接接続されるタイプの空気弁が存在し、このような空気弁の不断流状態での撤去工程には手間が生じるという問題がある。
【0005】
流体管の分岐部に対し直接に接続されたタイプの空気弁は、分岐部内に収容された浮き球体を抑える弁体を位置決めするために配設されたノックボルトとも呼ばれる位置決め部材が外方に向け立設されたものがあり、このようなタイプの空気弁の撤去に際しては、空気弁の周囲を密封状に取り囲む筐体内での撤去作業を要するところ、当該位置決め部材が干渉して工事の妨げとなる虞が生じていた。また、撤去作業の際に位置決め部材が不測に動作する場合があり、これに伴い遊動弁体が動いて分岐部内の残留空気が筐体内に放出され、圧力変動によって当該空気の体積が膨張する結果、筐体の密封性に影響を与える虞が生じていた。また、漏洩により撤去作業に影響を及ぼす虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、位置決め部材を備えたタイプの空気弁を簡便且つ密封性を維持した状態で撤去することができる空気弁撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の空気弁撤去方法は、
流体管の本管部から分岐された分岐部に直接に接続され、前記分岐部内に収容されたフロート弁により開閉する遊動弁体を位置決めする位置決め部材が設けられた既設の空気弁を、不断流状態で撤去する空気弁撤去方法であって、
前記位置決め部材を前記空気弁から撤去若しくは前記空気弁に固定する工程と、
前記流体管の前記分岐部との間が密封された筐体により前記空気弁を取り囲む工程と、
前記筐体内に密封状に挿入された挿入治具により前記空気弁を前記分岐部から撤去する工程と、を少なくとも有することを特徴としている。
この特徴によれば、空気弁が備える位置決め部材を撤去若しくは固定することで、この空気弁を密封状に取り囲む筐体内で干渉することなく簡便且つ密封性を維持した状態で、当該空気弁を撤去することができる。特に位置決め部材を撤去する場合、筐体を極小化できるため、筐体及びその内部流体の重量を低減することができる。
【0008】
前記流体管の前記本管部に、前記筐体を支持するための支持部材を取付ける工程を更に有することを特徴としている。
この特徴によれば、流体管の周囲の掘削地盤等の支持力を頼ったり、筐体を流体管に固定したり、筐体を重機で吊ったままで作業する等の必要がなく、流体管の本管部を利用して取り付けた支持部材により、筐体及びその内部流体の荷重を支持することができる。
【0009】
前記流体管の前記分岐部を管軸方向に挟む前記本管部のそれぞれに、前記支持部材を別個に取付けることを特徴としている。
この特徴によれば、分岐部を管軸方向に挟んで本管部のそれぞれに支持部材が取り付けられていることで、管軸方向に対し僅かな傾斜が生じた場合でも筐体を水平状態に調整できるため、この筐体及びその内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0010】
前記支持部材は前記本管部の径方向に分割された分割構造を有し、締結部材によって前記本管部に取り付けられることを特徴としている。
この特徴によれば、分割構造を有する支持部材を締結部材によって本管部に強固に取り付けることができ、本管部の周方向に対しても調整ができ、筐体の水平状態を確実に維持できる。
【0011】
前記挿入治具は、前記遊動弁体を密封状に被覆して前記空気弁に接続されることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体内の流体が空気弁の排気孔から進入することを防止できるため、分岐部内のフロート弁を不測に挙動させる虞がない。また、万が一排気孔から流体が漏れても密封できる。
【0012】
前記空気弁を前記分岐部から撤去した後に、新たな空気弁を前記分岐部に接続することを特徴としている。
この特徴によれば、空気弁の撤去後に分岐部を密封状に取り囲む筐体を利用して、新たな空気弁を取付けることで、空気弁の交換作業を行うことができる。
【0013】
前記挿入治具により前記新たな空気弁を前記分岐部に接続することを特徴としている。
この特徴によれば、空気弁の撤去のために筐体内に挿入した挿入治具を利用して、新たな空気弁を取付けることで、空気弁の交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1における撤去対象となる空気弁及び受け台を示す一部断面正面図である。
【
図2】(a)は空気弁からカバー等を取り外す状況を示す一部断面正面図であり、(b)は取り外した後の平面図である。
【
図3】(a)は空気弁に弁吊り金具を取り付けた状態示す一部断面正面図であり、(b)は同じく平面図であり、(c)は(b)のA-A断面図である。
【
図4】ジャッキ及びケース体を取付けた状態を示す一部断面正面図である。
【
図5】(a)は
図4と同じく一部断面平面図であり、(b)は同じく側面断面図である。
【
図6】作業弁及び水圧ポンプ等を取付けた状態を示す一部断面正面図である。
【
図7】円筒及び挿入ロッドを取付けた状態を示す一部断面正面図である。
【
図8】空気弁を取り外した状況を示す一部断面正面図である。
【
図9】置きコマ挿入機を取付けた状態を示す一部断面正面図である。
【
図10】置きコマにより分岐部を密封した状況を示す一部断面正面図である。
【
図11】新型空気弁を円筒内に配設した状況を示す一部断面正面図である。
【
図12】新型空気弁を分岐部に取り付けた状況を示す一部断面正面図である。
【
図13】新型空気弁から弁吊り金具を取り外す状況を示す一部断面正面図である。
【
図15】弁吊り金具の変形例を示す一部断面正面図である。
【
図16】実施例2における新規空気弁用の固定プレートを取り付ける状況を示す一部断面正面図である。
【
図17】置きコマを残してケース体等を取り外した状態を示す一部断面正面図である。
【
図18】置きコマ用治具等を取り付けた状況を示す一部断面正面図である。
【
図19】補修弁を分岐部に取り付けた状況を示す一部断面正面図である。
【
図20】新規空気弁を補修弁に取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る空気弁撤去方法及びその装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例1に係る空気弁撤去方法及びその装置につき、
図1から
図15を参照して説明する。
図1に示すように、本実施例において、既設の流体管(以下、単に流体管と称する)2に、この流体管2内の余剰空気を排出可能な既設で旧型の空気弁(以下、単に空気弁と称する)3が連結されている。この空気弁3は、流体管2の分岐部2bとの間に補修弁等を介して接続されるタイプの空気弁23(
図20参照)とは異なり、流体管2の分岐部2bに直接に接続されるタイプの空気弁である。
【0017】
本実施例の流体管2は、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、断面視略円形状に形成され、内周面がモルタル層で被覆されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール、ポリエチレン若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、本実施例では流体管内の流体は上水であるが、本実施例の上水に限らず、例えば工業用水や農業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0018】
図1に示されるように、空気弁3は、流体管2の主たる管路を構成する本管部2aから連通状態で上方に向け分岐した分岐部2bのフランジ2cに接続されている。より詳しくは空気弁3は、分岐部2b内に挿嵌されて本実施例では六角のボルト・ナット39でフランジ2cに密封状に接続された有底の外筒31と、この外筒31内に密封状に挿嵌され下端が開放された内筒32と、この内筒32内に収容された略真球形状の浮き球からなるフロート弁33と、この内筒32の上端に密封状に挿嵌されフロート弁33を上方から抑える遊動弁体34と、この遊動弁体34の上端に固定された上蓋36に螺合され、遊動弁体34を上下方向に位置決めする位置決め部材としてのノックボルト35と、から主として構成されている。また、外筒31のフランジ31b、遊動弁体34、上蓋36及びノックボルト35を上方から被覆するカバー37が、カバー固定部材37aによって内筒32に締結されている。
【0019】
外筒31には径方向に貫通する貫通孔31aが形成されている。また、内筒32にも径方向に貫通する貫通孔32aが形成され、この貫通孔32aは外筒31の貫通孔31aと周方向に位置合わせされているため、管内の流体(水及び余剰空気)が外筒31及び内筒32の内部に導入可能に構成されている。
【0020】
空気弁3の空気排出について説明すると、遊動弁体34の中央にはフロート弁33の中心と略同芯の排気孔としての小孔34aを備えた凸部が下方に突出形成されており、常時は当該凸部が内筒32内で浮力により上方に付勢されるフロート弁33の頂部に接することで、小孔34aは閉塞されている。流体管2の本管部2a内を上水とともに流れる余剰空気が分岐部2b内に進入し、更に内筒32内に進入すると、この余剰空気によってフロート弁33を一時的に押し下げる。そうすると小孔34aが開放されて余剰空気は外部に排出される。内筒32内の余剰空気が排出されると、フロート弁33は再び上昇して小孔34aを閉塞するように構成されている。
【0021】
また外筒31の下端には副弁38が設けられている。副弁38を構成する小球フロート弁38aは、フロート弁33よりも小径の球体であって、常時は外筒31下端面に形成された小孔31eを浮力によって閉塞しているが、本管部2a内の水位が低下した場合には小球フロート弁38aが下降して小孔31eを開放して、外筒31内の水を下方に排出するように構成されている。
【0022】
次に、上記した空気弁3の撤去方法について順に説明する。
【0023】
先ず
図1に示されるように、流体管2の分岐部2bを管軸方向に挟む本管部2aの外面を清掃し、後述する筐体としてのケース体50、作業弁60及び円筒70を支持するための受け台4,4をそれぞれ固定する。受け台4は、本実施例では上下方向に2分割されたバンド状で略半円筒の第1分割部材41、第2分割部材42からなり、本管部2aの外面に周方向に沿って外嵌され、締結部材44によって固定される。受け台4の上側を構成する第1分割部材41の上部には、支持脚43で支持され略水平方向に位置決めされた平坦な載置面45aを有する支持板45が設置されており、後述するように受け台4はジャッキ46が受ける荷重を支持するように構成されている。なお、受け台4の分割数は3以上であってもよい。
【0024】
このように、流体管2の本管部2aに、受け台4,4を取付けることで、流体管2の周囲の掘削地盤等の支持力を頼ったり、ケース体50、作業弁60及び円筒70を流体管2に固定したり、ケース体50、作業弁60及び円筒70を重機で吊ったままで作業する等の必要がなく、流体管2の本管部2aを利用して取り付けた受け台4,4により、ケース体50、作業弁60及び円筒70及びその内部流体の荷重を支持することができる。
【0025】
また、第1分割部材41、第2分割部材42からなる分割構造を有する受け台4を、締結部材44によって本管部2aに強固に取り付けることができ、本管部2aの周方向に対しても調整ができ、ケース体50、作業弁60及び円筒70の水平状態を維持できる。
【0026】
なお、受け台4を構成する第1分割部材41、第2分割部材42の内周面は、図示しない樹脂材等を介設し若しくは凹凸部を形成する等により摩擦抵抗を高くすると好ましく、このようにすることで、本管部2aの外面に対し滑りを生じることなく安定状態で取り付けることができる。
【0027】
次に、
図2に示されるように、カバー固定部材37aの締結を解除して、カバー37を取り外す。更にボルト・ナット39を一本ずつ取り外し、これに替えて長尺のガイドボルト21を下方から挿入するとともに、このガイドボルト21に高ナット22を締結する。
【0028】
更に必要に応じてノックボルト35を一旦螺挿して内部のフロート弁33を下方に押圧することで、分岐部2b内の残留空気を外部に逃がして、内部圧力を開放してもよいが、先ずはノックボルト35を取り外す。このようにすることで、空気弁3の構成部品の全体高さを低く抑えることができる。なお、ノックボルト35は必ずしも取り外すものに限られず、取付けた状態のまま図示しないナット若しくは溶接により固定してもよい。あるいは、既設のノックボルト35が一部腐食して回動不能、すなわち自然に固定になっている場合があり、このような場合は、当該ノックボルト35の頭部等の一部は切削してもよい。このようにすることで、空気弁の撤去作業の際にノックボルト35が不測に回転してしまい、遊動弁体34の誤作動を招いて流体漏洩する等の虞を回避できる。
【0029】
次に、
図3に示されるように、空気弁3の上部に弁吊り金具25を取り付ける。弁吊り金具25は、遊動弁体34及び上蓋36を上方から被覆する被覆部25aと、その上端中央に弁吊り用の挿通孔25bとを備え、上方から挿通したボルト24をカバー固定部材37a用のタップ孔に螺合することで取付けられる。なお、上記で取り外したカバー固定部材37aが使用できる場合、再使用してもよい。
【0030】
次に、
図4に示されるように、各受け台4,4の載置面45a,45aに上下方向に伸縮可能なジャッキ46,46を設置し、本実施例では周方向に2分割構造のケース体50を各ジャッキ46,46に荷重を預けながら設置する。ジャッキ46は、受け台4の載置面45aに載置される脚部47と、脚部47上部に設けられて上下に伸縮自在に延出し、上端にケース体50が載置する載置部49を備えた支持部48とから構成されている。なお、ケース体50は、3以上の分割数でもよい。
【0031】
図5に示されるように、ケース体50は、このケース体50を構成する周方向に分割された分割体50a,50b同士の接合端部に設けられた突出片を対向させ、図示しないボルト・ナットにより締結させることで、略円筒形状となる。ケース体50下部の内周面には、フランジ2cの外周面に沿って密封状に当接するシール材51が設けられている。
【0032】
またケース体50の周方向に沿って複数の固定ボルト52が径方向に密封状に螺合されており、その先端がフランジ31bの上面に当接可能に構成されている。更にケース体50の下端にて内径方向に突出した鍔部50cには、複数の支持ボルト53が上下方向に螺合されており、その上端がフランジ2cの下面を支持するように構成されている。また、ケース体50の側部には、作業者が外部より治具等を挿通可能な挿通部54と、ケース体50内部を目視確認可能な窓部55が設けられている。
【0033】
図4,5に示されるように、このケース体50は、各受け台4,4に配置されたジャッキ46,46により上下位置を調整しながら、固定ボルト52と支持ボルト53とを螺挿しフランジ31b及びフランジ2cを上下に挟持するようにして密封状に取付けられる。また鍔部50cの適所には、ガイドボルト21の下端を支持する受けボルト59が上下に調整可能に螺合されている。
【0034】
このように、分岐部2bを管軸方向に挟んで本管部2aのそれぞれに受け台4,4が別個に流体管2の本管部2aの周方向に可動なように取り付けられていることで、管軸方向に対し僅かな傾斜が生じた場合でもケース体50等を水平状態に調整できるため、このケース体50、後述する作業弁60、円筒70及びその内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0035】
次に
図6に示されるように、ケース体50の上端に作業弁60を接続ボルト61により密封状に取り付ける。作業弁60は、ケース体50と上下方向に連通する連通部62と、この連通部62を開閉可能に略水平方向にスライドする作業弁体63と、この作業弁体63の開放時に収容する内部を備えた収容部64とから主として構成され、収容部64の端部に作業弁体63をスライド操作するための操作部65が設けられている。次いで、この作業弁体63を閉塞させて、収容部64を介してケース体50内に水圧ポンプ66により流体を充填して、圧力計67を用いて流体管2内と略同圧にして流体圧試験を実施する。なお、このときケース体50の挿通部54には透光性を有する窓部56を密封状に取付けておく。流体圧試験の終了後は、一旦流体をケース体50の外部に排出しておく。
【0036】
次に、
図7に示されるように、作業弁60の上端に円筒70を密封状に取り付ける。これらケース体50、作業弁60及び円筒70が本発明の筐体を構成している。円筒70は、その上端に上蓋71を密封状に接続されており、この上蓋71の中央に形成された貫通孔を通じて挿入ロッド75のロッド部76が挿入されている。挿入ロッド75は、上下方向に延設されたロッド部76と、円筒70の外部に位置するロッド部76に上端に接続され略水平方向に延設された操作部77と、円筒70の内部に位置するロッド部76下端に設けられた接続部78と、から主として構成されている。
【0037】
次いで円筒70の内部にて、作業弁体63を開放状態とし、挿入ロッド75と弁吊り金具25とを接続する。本実施例の弁吊り金具25は、空気弁3の上部を被覆する被覆部25aと、この被覆部25aに挿通されて空気弁3に締結される締結ボルト24とを備える。より詳しくは、ロッド部76の接続部78に形成された挿通孔と、空気弁3に接続した弁吊り金具25の被覆部25a上端に形成された挿通孔25bとを位置合わせして、両挿通孔に固定ピン26を挿通することで、挿入ロッド75と弁吊り金具25とが接続される。
【0038】
なお、ケース体50の挿通部54を介してケース体50内部での接続作業が可能となる。次に、同様に挿通部54を介してケース体50の内部にてガイドボルト21から高ナット22を取り外す。次に、円筒70及びケース体50内に流体を再び充填して、流体管2内と略同圧にしておく。
【0039】
次に
図5に示した固定ボルト52を緩めて径方向外側に退避させ、
図8に示されるように、挿入ロッド75を上方に引き上げ、弁吊り金具25とともに空気弁3を円筒70の内部まで移動させる。ついで、作業弁60の作業弁体63を密封状に閉塞して、円筒70から上蓋71及び挿入ロッド75を取り外し、既設の空気弁3を回収する。
【0040】
なお、上記した既設の空気弁3は旧型でノックボルト35が上方に立設されており、更に副弁38がその設置時において本管部2aの流路内に配置される必要があることから、この副弁38を下端に設けた外筒31は分岐部2bの上下寸法よりも長寸に形成されている。したがって、作業弁体63の上方の円筒70は空気弁3を回収するための上下方向のスペースを要する。ここで、上記したように空気弁3から予めノックボルト35を取り外しているため、当該空気弁3を収容する円筒70の上下寸法を極力抑えることができる。なお、本実施例の円筒70の上下寸法は、ノックボルト35を取り外した空気弁3よりも僅かに長寸であって、ノックボルト35を取り付けた状態の空気弁3よりも短寸である。
【0041】
次に、
図9に示されるように、円筒70の上部に置きコマ挿入機85を設置する。置きコマ挿入機85は、円筒70の上端開口に連通して接続された収容部73と、この収容部73内に配置される置きコマ80と、収容部73の内外を密封状に貫通して上下方向に延設され、下端に置きコマ80が連結された連結ロッド86と、連結ロッド86の上端に接続され水平方向に延びる操作部87と、から主として構成される。更に置きコマ80は、円環状の弾性部材81と、この弾性部材81を上下に挟持する挟持部材82,83とを備えている。
【0042】
続いて、円筒70と、作業弁体63によって閉塞されたケース体50との間を同圧用ホース68で連結し、ケース体50から円筒70内に管内流体を導入して内部の圧力を略同圧にする。この管内流体の導入に際し、円筒70内の空気は、収容部73の上部に設けられた排出バルブ74を開放して外部に排出する。ここで、上記したようにケース体50の下方にジャッキ46が設けられていることで、ケース体50、作業弁60、円筒70及びこれらの内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0043】
次に、
図10に示されるように、作業弁体63を全開にしてケース体50及び円筒70の内部を連通状態とし、置きコマ挿入機85の操作部87を操作して置きコマ80を分岐部2bの内部に挿入し、この分岐部2b内を密封する。
【0044】
置きコマ80による分岐部2bの密封について詳しくは、連結ロッドの上端の回動部86aを回転操作すると、連結ロッド86内の図示しない連結軸が回動し、当該連結軸に接続された挟持部材82,83が互いに近づくように移動することで、その間の弾性部材81が上下に挟圧され、外径方向に膨出する。このように膨出した弾性部材81が分岐部2bの内周面に押圧されることで、分岐部2bを密封するようになっている。
【0045】
続いて、排出バルブ74をわずかに開放する等で、置きコマ80による分岐部2bの密封状態を確認した後、窓部56を取り外し、挿通部54を介して分岐部2bのフランジ2cに残置された既設のパッキン2dを撤去する。更に必要に応じてフランジ2cの上面を清掃する。このようにして、空気弁3の撤去が終了する。
【0046】
次に、本実施例1では、上記した旧型の空気弁3に換えて、これと同種で補修弁を要さずに分岐弁に直接接続されるタイプの新型の空気弁(以下、新型空気弁と称する)13を設置する方法及びその装置につき、
図11~14を参照して説明する。
【0047】
先ず、
図10で既設のパッキン2dの撤去後、再び挿通部54に窓部56を密封状に取付け、置きコマ80の弾性部材81を元の状態に縮径させることで密封状態を解除し、置きコマ80を上方の収容部73内に移動させ、作業弁体63を閉塞する(
図9参照)。次に円筒70から置きコマ挿入機85を取り外し、
図11に示されるように、これに換えて、新型空気弁13を下端に接続した挿入ロッド75及び上蓋71を円筒70に取付ける。新型空気弁13と挿入ロッド75のロッド部76との間には弁吊り金具27を介設する。ロッド部76の接続部78に形成された挿通孔と、新型空気弁13に接続した弁吊り金具27の挿通孔とを位置合わせして固定ピン26を挿通することで、挿入ロッド75と弁吊り金具27とが接続されている。また、この新型空気弁13を構成する外筒131のフランジ131bの下端面には、パッキン140を仮接着しておく。
【0048】
続いて、同圧用ホース68を用いてケース体50から円筒70内に管内流体を導入して内部の圧力を略同圧にする。この管内流体の導入に際し、円筒70内の空気は、図示しない排出孔を開放して外部に排出する。ここで、上記したようにケース体50の下方にジャッキ46が設けられていることで、ケース体50、作業弁60、円筒70及びこれらの内部流体の荷重を安定的に支持することができる。
【0049】
次に、作業弁体63を全開にしてケース体50及び円筒70の内部を連通状態とし、挿入ロッド75の操作部77を操作して新型空気弁13を分岐部2bのフランジ2cに設置する。新型空気弁13の設置の際には、分岐部2bのフランジ2cの挿通孔に上方に向け配設されたガイドボルト21が新型空気弁13の外筒131のフランジ131bに形成された挿通孔に挿通されることで、新型空気弁13は挿入ロッド75により降下するにつれ所定の設置位置に向けガイドされる。また、新型空気弁13の設置時には、外筒131のフランジ131bの下面に仮接着されたパッキン140が、当該フランジ131bと分岐部2bのフランジ2cとの間に狭圧され、密封状態が維持される。
【0050】
次に、ケース体50に設けられた固定ボルト52(
図5参照)を内径方向に螺挿し、外筒131のフランジ131bをフランジ2cに向けて押し付けて新型空気弁13を分岐部2bに固定する。続いて、図示しない排出孔をわずかに開放する等で、新型空気弁13と分岐部2bとの密封状態を確認した後、窓部56を取り外し、挿通部54を介してガイドボルト21の上部に高ナット22を螺合させる。ついで、挿入ロッド75と弁吊り金具27とを接続していた固定ピン26を取り外す。
【0051】
このように、空気弁3の撤去後にケース体50、作業弁60及び円筒70内に挿入した挿入ロッド75を利用して、新型空気弁13を取付けることで、空気弁3及び新型空気弁13の交換作業を行うことができる。
【0052】
次に、
図12に示されるように、上蓋71、挿入ロッド75、円筒70及び作業弁60をケース体50から取り外し、固定ボルト52を外径方向に螺挿して緩める。なお言うまでもないが、上記したように高ナット22がガイドボルト21に螺合しているため、新型空気弁13の密封状態は維持されている。
【0053】
次に、
図13に示されるように、ケース体50を分岐部2bから取り外すとともに、ジャッキ46,46を撤去し、複数組設けられたガイドボルト21及び高ナット22を一組ずつ取り外し、これに換えて六角のボルト・ナット139に交換する。続いて弁吊り金具27を新型空気弁13から取り外し、受け台4,4を撤去する。このようにして、新型空気弁13の設置が終了する。
【0054】
このように、空気弁3が備えるノックボルト35を撤去することで、この空気弁3を密封状に取り囲むケース体50、作業弁60及び円筒70内で干渉することなく簡便且つ密封性を維持した状態で、この空気弁3を撤去することができる。特にノックボルト35を撤去する場合、ケース体50、作業弁60及び円筒70を極小化できるため、これらケース体50、作業弁60、70筐体及びその内部流体の重量を低減することができる。
【0055】
また、空気弁3の撤去のために分岐部2bを密封状に取り囲むケース体50、作業弁60及び円筒70を利用して、新型空気弁13を取付けることで、空気弁3及び新型空気弁13の交換作業を容易に行うことができる。
【0056】
ここで
図14に示されるように、新型空気弁13は、流体管2の主たる管路を構成する本管部2aから連通状態で上方に向け分岐した分岐部2bのフランジ2cに直接に接続されている。より詳しくは新型空気弁13は、分岐部2b内に挿嵌されてフランジ2cに密封状に本実施例では六角のボルト・ナット139で接続され底部が開口した外筒131と、この外筒131内に密封状に挿嵌され側部が開口した内筒132と、この内筒132内に収容された略真球形状の浮き球からなるフロート弁133と、この内筒132の上端に密封状に挿嵌されフロート弁133を上方から抑える遊動弁体134と、から主として構成されている。また、外筒131のフランジ131b、遊動弁体134、上蓋136を上方から被覆するカバー137が、カバー固定部材137aによって内筒132に締結されている。またカバー137の内部には保温材138が介設されている。この新型空気弁13は、上記した旧型の空気弁3が備えるノックボルト35及び副弁38を有しておらず、上蓋136の部分を回転して螺挿することで内筒132が外筒131の底部開口131aを閉塞して密封することから、旧型の空気弁3よりも上下方向が短寸に形成されている。
【0057】
次に弁吊り金具の変形例について、
図15を参照して説明する。変形例に係る弁吊り金具125は、空気弁3の少なくとも遊動弁体34を被覆する被覆部125aと、この被覆部125aに挿通されて空気弁3に締結される締結ボルト124とを備える。更に、空気弁3の外筒31のフランジ31bに接する被覆部125aの下端にシールパッキン126が設けられるとともに、締結ボルト124の頭部と被覆部125aの上面との間にシールパッキン127が介設されている。
【0058】
このように、挿入ロッド75に接続される弁吊り金具125が、遊動弁体34を密封状に被覆して空気弁3に接続されることで、ケース体50、作業弁60及び円筒70内の流体が空気弁3の小孔34aから進入することを防止できるため、分岐部2b内のフロート弁33を不測に挙動させる虞がない。また、万が一遊動弁体34の小孔34aから流体が漏れても弁吊り金具125内で密封できる。
【0059】
また、上記した実施例に係る弁吊り金具25若しくは変形例に係る弁吊り金具125と、空気弁3のフランジ31bとを溶接若しくはボルト止めで固定してもよく、このようにすることで、空気弁3の内筒32の不測の回転を防止することができる。
固定プレート29は、その中央に置きコマ挿入機85の連結ロッド86よりも大径で、且つ置きコマ80上部にて外径方向に張り出した張り出し部86bよりも小径の貫通孔29aを有している。よって、分岐部2b内の置きコマ80の張り出し部86bが、上記したように分岐部2bのフランジ2cに固定された固定プレート29に係止することで、置きコマ80の分岐部2bからの抜け出しが防止されるようになっている。
先ず連結ロッド86に、補修弁28及びその上端に接続した収容ケース95を密封状に貫通させる。なお、補修弁28の図示しない内部弁体は開放状態であることから、この補修弁28に連結ロッド86を貫通させることができる。
続いて、連結ロッド86の上端部に挿入板93を貫通させ、蓋部94を取り付ける。次に、固定プレート29を撤去する。なお、固定プレート29を取り外しても、上記した長尺ネジ92,92及びナット96,96で支持された挿入板93が連結ロッド86を介して置きコマ80の抜け出しを防止するように機能している。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、空気弁3を流体管2の分岐部2bから撤去した後に、この空気弁3に換えて新型空気弁13若しくは新規空気弁23を取付けていたが、これに限らず例えば、空気弁3を撤去した分岐部2bのフランジ2cに閉塞板を密封状に取り付けてもよいし、消火栓などの流体管用機器を取り付けてもよい。
また例えば、前記実施例では、ノックボルト35を有する空気弁3を流体管2の分岐部2bから撤去したが、これに限らず例えば、新型空気弁13のような空気弁を撤去する際に、同様な方法を用いてもよい。