(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016638
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】マリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体およびマリンホースの流体漏れ検知システム
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20240131BHJP
F16L 11/133 20060101ALI20240131BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240131BHJP
F17D 5/06 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F16L11/12 H
F16L11/133
F16L55/00 D
F17D5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118905
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 裕輔
【テーマコード(参考)】
3H111
3J071
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA01
3H111BA11
3H111BA15
3H111CA16
3H111CB07
3H111CB11
3H111CB14
3H111CB24
3H111CC11
3H111DA17
3H111DA24
3H111DB08
3H111DB10
3J071AA12
3J071AA13
3J071AA23
3J071CC17
3J071DD30
3J071EE06
3J071EE08
3J071EE22
3J071EE24
(57)【要約】
【課題】検知器の耐久性を向上させ、検知器と物体との接触による双方の損傷リスクを低減させ、検知器との良好な無線通信状態を確保できるケーシングとキャップの組立体およびこの組立体を備えたマリンホースの流体漏れ検知システムを提供する。
【解決手段】基部18aと電波透過部18bとで形成された保圧室18cに圧力センサ部15とICタグ12が収容されるケーシング18では、平面視で電波透過部18bの外周側位置に周方向に間隔をあけて3本以上の金属製の突起部19を電波透過部18bよりも上方に基部18aから突出させ、突起部19の上端部どうしは離間させ、各突起部19の上端部を平面視で周方向に連続して被覆する樹脂またはゴム製の環状キャップ20をケーシング18に固定した状態では、各突起部19に対する内周側領域と外周側領域とが周方向に隣り合う突起部19の下端部どうしのすき間を通じて連通する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マリンホースの表面に設置されて、前記マリンホースに形成されている流体滞留層に連通可能に接続される流体漏れ検知器用のケーシングと、前記ケーシングに固定されるキャップとの組立体であって、
前記ケーシングは、金属製の筒状の基部と、この基部の上端部側を水密に遮断する電波透過部と、この電波透過部よりも上方に前記基部から突出する3本以上の金属製の突起部とを有し、前記基部と前記電波透過部とに囲まれて保圧室が形成されていて、平面視で、それぞれの前記突起部が前記電波透過部の外周側位置に周方向に間隔をあけて配置されているとともに、それぞれの前記突起部の上端部どうしが離間していて、前記保圧室には圧力センサ部および前記圧力センサ部に接続されたパッシブ型のICタグが収容される構成であり、
前記キャップは、それぞれの前記突起部の上端部を平面視で周方向に連続して被覆する樹脂またはゴム製の環状体であり、それぞれの前記突起部の上端部と係合する係合部が形成されていて、
前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置されて前記ケーシングに固定された状態では、それぞれの前記突起部よりも内周側領域とそれぞれの前記突起部よりも外周側領域とが、周方向に隣り合う前記突起部の下端部どうしの周方向のすき間を通じて連通するマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
【請求項2】
前記キャップには半径方向に延在する挿入孔が周方向に間隔をあけた複数箇所に形成されていて、
複数の前記突起部の外周面にはビス孔が形成されていて、
それぞれの前記挿入孔に対して前記キャップの外周側から内周側に向かって半径方向に挿入されるビスを有し、
前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置された状態で、複数箇所のそれぞれの前記挿入孔に対して挿入されたそれぞれの前記ビスが、それぞれの前記挿入孔に対向配置されている前記ビス孔に螺合することにより前記キャップが前記ケーシングに固定される請求項1に記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
【請求項3】
前記キャップには周方向に延在するキャップネジ部が形成されていて、
それぞれの前記突起部の外周面には周方向に延在する突起ネジ部が形成されていて、
前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部で周方向に回転されることにより、前記キャップネジ部とそれぞれの前記突起ネジ部とが螺合して、前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置された状態で、前記ケーシングに固定される請求項1に記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
【請求項4】
前記キャップにはキャップ嵌合部が形成されていて、
複数の前記突起部の外周面には突起嵌合部が形成されていて、
前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置されることにより、前記キャップ嵌合部とそれぞれの前記突起嵌合部とが嵌合して、前記キャップが前記ケーシングに固定される請求項1に記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体と、前記保圧室に収容された前記圧力センサ部および前記ICタグとを有する検知器と、前記マリンホースの表面に延在して前記流体滞留層と前記検知器とを連通可能に接続する連通管と、前記連通管側から前記保圧室側への流れのみを許容する逆止弁と、前記マリンホースの外側に配置される電波発信部および電波受信部とを備え、
前記電波発信部から送信された発信電波に応じて前記ICタグから返信電波が送信され、前記返信電波によって前記圧力センサ部による検知圧力データが送られて前記電波受信部により受信される構成にしたマリンホースの流体漏れ検知システム。
【請求項6】
前記電波発信部および前記電波受信部とカメラ装置とが搭載されたドローンと、前記電波受信部により受信された前記検知圧力データおよび前記カメラ装置により取得された画像データが入力される演算装置とを備えた請求項5に記載のマリンホースの流体漏れ検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体およびマリンホースの流体漏れ検知システムに関し、さらに詳しくは、検知器の耐久性を向上させ、検知器と物体との接触による双方の損傷リスクを低減させるとともに、検知器との良好な無線通信状態を確保できるケーシングとキャップの組立体およびこの組立体を備えたマリンホースの流体漏れ検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マリンホースでは、補強層の間に流体滞留層を設けることで、漏出した流体を一時的に流体滞留層に貯留できるようにしてホース外部への漏出を防止するようにしている。流体滞留層に流体が漏出したことを検知するために、流体漏れ検知システムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている流体漏れ検知システムは、流体滞留層が連通管を介して検知器と連通可能になっている。流体滞留層に流体が流入すると、連通管を通じて検知器のケーシング内部に形成されている保圧室の圧力が高くなる。この圧力変化は圧力センサ部による検知圧力データとして、パッシブ型のICタグからの返信電波を用いて通信機によって取得できるので、流体漏れの確認作業を容易にしつつ、流体漏れを確実に検知するには有益である。
【0004】
保圧室には圧力センサ部およびICタグが収容されるので、ケーシングでは保圧室の上側を電波透過部により覆っている。電波透過部は、通信機との電波通信を良好にするために、マリンホースの表面に突出した状態で露出して配置されている。そのため、マリンホースを海に設置する際や船に回収する際、或いは、海でマリンホースを使用中に、電波透過部が何らかの物体から外力を受けて損傷するリスクが高くなる。一方で、電波透過部の上方周辺に金属製カバーなどを単純に設置して保護すると電波通信の良好さが損なわれる。また、金属製カバーに接触した物体が損傷するリスクもある。そのため、検知器の耐久性を向上させ、検知器と物体との接触による双方の損傷リスクを低減させるとともに、検知器との良好な無線通信状態を確保するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、検知器の耐久性を向上させ、検知器と物体との接触による双方の損傷リスクを低減させるとともに、検知器との良好な無線通信状態を確保できるケーシングとキャップの組立体およびこの組立体を備えたマリンホースの流体漏れ検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体は、マリンホースの表面に設置されて、前記マリンホースに形成されている流体滞留層に連通可能に接続される流体漏れ検知器用のケーシングと、前記ケーシングに固定されるキャップとの組立体であって、前記ケーシングは、金属製の筒状の基部と、この基部の上端部側を水密に遮断する電波透過部と、この電波透過部よりも上方に前記基部から突出する3本以上の金属製の突起部とを有し、前記基部と前記電波透過部とに囲まれて保圧室が形成されていて、平面視で、それぞれの前記突起部が前記電波透過部の外周側位置に周方向に間隔をあけて配置されているとともに、それぞれの前記突起部の上端部どうしが離間していて、前記保圧室には圧力センサ部および前記圧力センサ部に接続されたパッシブ型のICタグが収容される構成であり、前記キャップは、それぞれの前記突起部の上端部を平面視で周方向に連続して被覆する樹脂またはゴム製の環状体であり、それぞれの前記突起部の上端部と係合する係合部が形成されていて、前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置されて前記ケーシングに固定された状態では、それぞれの前記突起部よりも内周側領域とそれぞれの前記突起部よりも外周側領域とが、周方向に隣り合う前記突起部の下端部どうしの周方向のすき間を通じて連通することを特徴とする。
【0008】
本発明のマリンホースの流体漏れ検知システムは、上記のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体と、前記保圧室に収容された前記圧力センサ部および前記ICタグとを有する検知器と、前記マリンホースの表面に延在して前記流体滞留層と前記検知器とを連通可能に接続する連通管と、前記連通管側から前記保圧室側への流れのみを許容する逆止弁と、前記マリンホースの外側に配置される電波発信部および電波受信部とを備え、前記電波発信部から送信された発信電波に応じて前記ICタグから返信電波が送信され、前記返信電波によって前記圧力センサ部による検知圧力データが送られて前記電波受信部により受信される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組立体によれば、電波透過部よりも上方に突出する3本以上の金属製の突起部が、平面視で電波透過部の外周側位置に周方向に間隔をあけて配置されているので、これら突起部によって電波透過部の上面は保護される。そのため、電波透過部の損傷リスクが低減して検知器の耐久性を向上させるには有利になる。さらに、それぞれの突起部は周方向に間隔をあけて配置されるとともに、平面視で、それぞれの突起部の上端部どうしが離間しているので、これら突起部によって、検知器との電波通信の良好さが損なわれるデメリットが回避される。
【0010】
それぞれの突起部の上端部は、平面視で周方向に連続する樹脂製の環状体であるキャップによって被覆されるので、金属製のそれぞれの突起部の上端部が何らかの物体に接触しても、検知器とその物体の双方の損傷リスクを低減するには有利になる。しかも、キャップがケーシングに固定された状態では、それぞれの突起部よりも内周側領域とそれぞれの突起部よりも外周側領域とが、周方向に隣り合う突起部の下端部どうしの周方向のすき間を通じて連通しているので、キャップが波から受ける力が低減されて、キャップをケーシングに長期間安定して固定するには有利になる。また、キャップは環状体なので、電波透過部の上面が全体的にキャップによって覆われることがなく、検知器との電波通信の良好さが損なわれることを回避できる。
【0011】
本発明の流体漏れ検知システムによれば、マリンホースの外側に配置される電波発信部および電波受信部と、検知器(ICタグ)との間の電波通信を長期に渡って良好に維持できる。そのため、流体漏れの確認の容易性および検知の確実性を長期間確保できる。また、検知器に物体が接触しても、検知器とその物体の双方の損傷リスクを長期間低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明が適用されるマリンホースを例示する説明図である。
【
図2】マリンホースの一部を拡大した縦断面視で、流体漏れ検知システムの実施形態を例示する説明図である。
【
図3】
図2の検知器を側面視で例示する説明図である。
【
図4】
図3の検知器を上面視で例示する説明図である。
【
図5】
図4のA-A断面視(縦断面視)で検知器を例示する説明図である。
【
図6】
図5の保圧室の内部を上面視で例示する説明図である。
【
図7】
図4のキャップを外した検知器を上面視で例示する説明図である。
【
図8】
図7のケーシングを側面視で例示する説明図である。
【
図9】
図4のキャップを底面視で例示する説明図である。
【
図10】
図5の検知器を分解した状態を例示する説明図である。
【
図11】
図5のケーシングにキャップを取り付ける状態を例示する説明図である。
【
図12】通信機と通信している検知器を縦断面視で例示する説明図である。
【
図13】組立体の変形例を縦断面視で示す説明図である。
【
図14】
図13のケーシングとキャップとを分離した状態を例示する説明図である。
【
図15】
図14のケーシングを上面視で例示する説明図である。
【
図17】組立体の別の変形例を縦断面視で示す説明図である。
【
図18】
図17のケーシングとキャップとを分離した状態を例示する説明図である。
【
図19】
図17のケーシングを上面視で例示する説明図である。
【
図21】ケーシングの変形例を側面視で例示する説明図である。
【
図22】
図21のケーシングを上面視で例示する説明図である。
【
図23】
図21のケーシングとキャップとの組立体を用いた検知器を側面視で例示する説明図である。
【
図25】ドローンを用いた流体漏れ検知システムの実施形態を、マリンホースの一部を拡大した縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体(以下、組立体21という)およびマリンホースの流体漏れ検知システム(以下、検知システムという)を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0014】
組立体21および検知システムは、
図1に例示するフローティングタイプのマリンホース1の流路1aからの流体Lの漏れの有無を検知するために使用される。マリンホース1は、その長手方向両端に、別のマリンホース1を連結するための連結端部2を備えている。連結端部2は、マリンホース1の長手方向に延在するニップル2bと、ニップル2bの長手方向一端に接合されたフランジ2aとを有している。一般的には、8本~10本程度のマリンホース1が連結されて使用される。
【0015】
マリンホース1の長手方向両端のニップル2bの間には、
図2に例示するように、流路1aの外周側でマリンホース1の内周側から外周側に向かって、内面層3、内周側補強層4、本体ワイヤ層5、流体滞留層7、外周側補強層6、浮力層8、外面層9が順に積層されている。内面層3の内周側が流体Lの流路1aになる。流体Lとしては、原油、重油、ガソリン、LPG、水、海水、薬品(ガソリンから精製されたアルコール類)等を例示できる。
【0016】
浮力層8は、スポンジゴムや発泡ポリウレタン等のマリンホース1を海上に浮上させる浮力を発揮する材料で構成されている。外面層9は、ゴム等の非透水性材料で構成されていて、かつ、その表面には視認性に優れたライン模様等が付される。
【0017】
内面層3は流体Lの種類によって適切な材質が選択され、流体Lが原油等の場合は、耐油性に優れたニトリルゴム等で構成される。内周側補強層4、外周側補強層6はそれぞれ、補強コードをゴムで被覆した複数の補強コード層を積層して構成されている。本体ワイヤ層5は、内周側補強層4の外周ゴムに金属ワイヤが所定間隔をあけて螺旋状に巻付けられて構成されている。内周側補強層4、本体ワイヤ層5、外周側補強層6は、それぞれの一端部のニップルワイヤ4a、5a、6aと、ニップル2bの外周面に突設された固定リング2c等を用いて、ニップル2bに固定されている。内周側補強層4と外周側補強層6との間に形成されている流体滞留層7は、流路1aから漏出した流体Lを貯留する空間になっている。
【0018】
図2に例示する検知システムは、検知器11と、マリンホース1の表面(ニップル2bの外周面)に延在して流体滞留層7と検知器11とを連通可能に接続する連通管10と、逆止弁17と、マリンホース1の外側に配置される電波発信部24aおよび電波受信部24bとを備えている。電波発信部24aから検知器11に対して発信電波R1が送信され、検知器11からは電波受信部24bに対して返信電波R2が送信される。
【0019】
電波発信部24aおよび電波受信部24bは、マリンホース1とは分離してマリンホース1の外側に配置される。この実施形態では、電波発信部24aと電波受信部24bと演算装置25とが一体化された通信機24が用いられているが、それぞれを分離独立した構成にすることもできる。演算装置25としては公知のコンピュータが用いられ、通信機24には例えばモニタなどが付設される。
【0020】
図3~
図11に例示するように、検知器11は、ケーシング18とキャップ20とで構成される組立体21と、ケーシング18の内部の保圧室18cに収容される圧力センサ部15およびパッシブ型のICタグ12とを有している。
【0021】
図5に例示するように、この実施形態では、検知器11は金属製の筒状のアダプタ部23を介して連通管10に接続されている。詳述すると、連通管10の端部にある筒状の管端接続部10aとアダプタ部23とが螺合して接続されている。このアダプタ部23とケーシング18の基部18aが接続されていて、両者の間は円環状のシール材18s(Oリング)によって水密性が確保されている。アダプタ部23の内部は水密性を有する導入室23aになっている。アダプタ部23を使用しない場合は、基部18aと管端接続部10aとが接続される。
【0022】
ケーシング18は、金属製の筒状の基部18aと、基部18aの上端部側を水密に遮断する電波透過部18bと、電波透過部18bよりも上方に突出する3本以上の金属製の突起部19とを有している。この実施形態では、ケーシング18はさらに環状の固定部18dを有している。基部18aと突起部19とは基本的に一体物である。基部18a、固定部18dおよび突起部19は例えばステンレス鋼などで形成される。
【0023】
図5、
図10に例示するように基部18aは内部に、電波透過部18bが配置される大径の窪みと、この大径の窪みの下方に連接する小径の窪みとを有している。この小径の窪みの底面に、基部18aの下端部に取り付けられた逆止弁17の上端が露出している。基部18aの内部(大径の窪みの底面部分)および基部18aの下面には円環状のシール材18s(Oリング)が配置されている。尚、シール材18sは必要な位置に適宜配置される。
【0024】
電波透過部18bは、この実施形態では円盤状に形成されていて、その下面に窪みを有している。電波透過部18bの下面の窪みと、基部18aの内部の小径の窪みが上下に対向するように設定されている。電波透過部18bはその下面を、基部18aの内部の大径の窪みの底面部分に当接させて基部18aに設置されている。
【0025】
この電波透過部18bの下面と、基部18aの内部の大径の窪みの底面部分との間にシール材18sが介在しているので、この電波透過部18bによって基部18aの上端部側が水密に遮断されている。そして、基部18aと電波透過部18bとにより囲まれて保圧室18cが形成されている。即ち、基部18aの内部の小径の窪みと、電波透過部18bの下面の窪みとによって水密な保圧室18cが形成されている。
【0026】
電波透過部18bは上面の外縁に平面視で円形状の切欠き部を有している。この切欠き部に円環状の固定部18dが配置されている。固定部18dの外周面は、基部18aの上端開口の内周面に螺合して基部18aに対して着脱自在である。この電波透過部18bは、基部18aの上端開口の内周面に螺合した固定部18dによって外周縁部を上方から押え込まれた状態で基部18aに固定されている。このようにして、電波透過部18bの外縁部に係合する環状の固定部18dを介して、電波透過部18bは基部18aに対して固定されている。
【0027】
電波透過部18bの比誘電率は、発信電波R1および返信電波R2を透過させ易くするために5.0以下に設定され、例えば2.0以上5.0以下、より好ましくは2.5以上3.0以下に設定される。電波透過部18bは、耐久性や耐衝撃性等を考慮して、その材質として例えばポリカーボネート、ポリアミド、エポキシ樹脂などが採用される。
【0028】
尚、電波透過部18bおよび基部18aは、電波透過部18bと基部18aとを用いて保圧室18cが形成できる仕様であればよい。また、固定部18dに代わって別の部品を使用して、或いは、固定部18dに加えて別の部品を使用して電波透過部18bを基部18aに固定することもできる。
【0029】
それぞれの突起部19は、平面視で、電波透過部18bの外周側位置に周方向に間隔をあけて配置されている。それぞれの突起部19は、電波透過部18bの周方向に等間隔で配置されることが好ましく、例えば、3本~8本の突起部19が配置される。
【0030】
この実施形態では、真直ぐに上方に延在する突起部19が採用されているが、この形状に限定されない。ただし、それぞれの突起部19の上端部どうしが接触している(接合されている)と、ICタグ12と通信機24との間の電波通信の良好さを確保できない。そのため、それぞれの突起部19の上端部どうしは離間している。
【0031】
逆止弁17は、保圧室18cと導入室23aとの間に設置されている。逆止弁17は、流体Lおよび気体の導入室23a側から保圧室18c側への流れのみを許容し、保圧室18c側から導入室23a側への流れを規制(遮断)する。即ち、連通管10と保圧室18cとの間に介在する逆止弁17は、連通管10側から保圧室18c側への流れのみを許容して、保圧室18c側から連通管10側への流れを規制する。そのため、保圧室18cの圧力Pが上昇するとその圧力状態が保持される。逆止弁17は公知のものを使用することができる。
【0032】
ICタグ12は、ICチップ13と、ICチップ13に接続されたアンテナ部14とを有している。圧力センサ部15はICタグ12(ICチップ13)に接続されている。ICチップ13のサイズは非常に小さく、例えば、縦寸法および横寸法がそれぞれ30mm以下(外径相当で30mm以下)、厚みが5mm以下である。アンテナ部14のサイズも非常に小さく、例えば、縦寸法および横寸法がそれぞれ50mm以下(外径相当で50mm以下)、厚みが10mm以下である。この実施形態ではアンテナ部14としてセラミックアンテナが採用されているので非常にコンパクトになっている。
【0033】
アンテナ部14の下方面には、板状の金属製のグラウンド部16が接触して配置されている。
図5、
図6に例示するようにこの実施形態では、電波透過部18bの下面の窪みに形成された円環状溝に着脱自在に嵌合するC型リング18fにグラウンド部16が載置され、アンテナ部14の上面には円環状のスペーサ18eが配置された状態で、ICタグ12および圧力センサ部15が保圧室18cに設置されている。C型リング18fを使用することなく、ICタグ12および圧力センサ部15を保圧室18cに設置する構造にしてもよい。スペーサ18eは任意で設けることができる。セラミックアンテナを採用したアンテナ部14と高圧(例えば7~8MPa)に耐え得る小型の逆止弁17とグラウンド部16とを組み合わせることで、検知器11をコンパクトにするには大きく寄与する。
【0034】
グラウンド部16を金属製の基部18aに接触させた仕様にすることもできる。この仕様にすると、基部18aおよび突起部19を積極的にアンテナとして機能させることができるので、ICタグ12と通信機24との間の電波通信の良好さ確保し易くなる。
【0035】
圧力センサ部15は、保圧室18cの圧力Pを検知する。圧力センサ部15のサイズはICチップ13と同等程度である。尚、図面ではICチップ13および圧力センサ部15は吊り下げられた状態になっているが、アンテナ部14のように平置きされた状態にすることもできる。
【0036】
電波透過部18bの上面の露出面積は大きい程、ICタグ12と通信機24との間の電波通信を良好に維持するには有利になるが、電波透過部18bの耐圧性を確保するには不利になる。そこで、
図7に例示するように電波透過部18bの上面を円形とした場合に直径Daは例えば40mm以上70mm以下にする。即ち、電波透過部18bの上面は直径Daが40mm以上70mm以下に相当する露出面積にするとよい。平面視で対向するそれぞれの突起部19どうしのすき間Dbは、直径Daの100%以上にする。また、
図10に例示するように電波透過部18bの上面の厚さCは大きい程、耐圧性を確保するには有利になるが、ICタグ12と通信機24との間の電波通信を良好に維持するには不利になる。そこで、電波透過部18bの上面の厚さCは例えば5mm以上15mm以下にする。
【0037】
突起部19の仕様、数、位置は、電波透過部18bを保護することができ、かつ、ICタグ12と通信機24との間の電波通信を良好に維持できるようにすることが前提である。突起部19によって電波透過部18bを保護するには、突起部19の高さH、厚さはある程度大きいほうが好ましいが、検知器11をマリンホース1の表面に設置した状態で、突起部19の上端をフランジ2aよりも上方に突出させない高さHにすることが必須条件である。また、突起部19の高さH、厚さが過大であると占有スペースが大きくなるので、突起部19の高さHは例えば15mm以上40mm以下の範囲、厚さは例えば3mm以上8mm以下の範囲で決定される。突起部19の高さHは、電波透過部18bの上面の直径Daの35%以上45%以下にするとよい。突起部19の幅は、周方向の隣り合うどうしの間隔Wが例えば10mm以上、より好ましくは15mm以上になるように決定される。
【0038】
キャップ20は、それぞれの突起部19の上端部を平面視で周方向に連続して被覆する環状体(筒状体)であり、公知の樹脂またはゴムにより形成されている。キャップ20の内径は例えば10mm以上70mm以下、外径は70mm以上110mm以下である。キャップ20の比誘電率は1.0以上8.0以下である。
【0039】
キャップ20を形成する樹脂としては、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、エポキシなどを例示できる。キャップ20は、耐候性に優れていることが好ましいので、耐候性に優れた樹脂やゴムにより形成する、または、使用する樹脂やゴムに対して耐候性を向上させる老化防止剤などを配合する、或いは、キャップ20の表面に耐候性に優れた塗料を塗布する。例えば、アクリルシリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系などの塗料が使用される。使用する樹脂やゴムには、耐久性を向上させるために、補強繊維(短繊維)を混合することもできる。補強繊維としては、公知の炭素繊維、ガラス繊維などを用いることができる。
【0040】
図9に例示するようにキャップ20には、それぞれの突起部19の上端部と係合する複数の係合部20dが形成されている。
図5に例示するように、係合部20dが対応する突起部19の上端部と係合してキャップ20がそれぞれの突起部19の上端部に配置される。この実施形態では、係合部20dとして、キャップ20の周方向に間隔をあけて配置されてキャップ20の底面に開口する複数の穴が採用されている。この係合部20dとなる穴は、それぞれの突起部19に対応する数、配置でキャップ20に形成されている。
【0041】
キャップ20は、海洋で目立つ色(オレンジ色など)にするとよい。キャップ20の表面を目立つ色の塗料を塗布することもできるが、目立つ色に着色した材料によってキャップ20を製造することで、その色をより長期間維持するには有利になる。
【0042】
図3~
図5に例示するように、キャップ20がそれぞれの突起部19の上端部に配置されてケーシング18に固定された状態では、それぞれの突起部19よりも内周側領域とそれぞれの突起部19よりも外周側領域とが、周方向に隣り合う突起部19の下端部どうしの周方向のすき間を通じて連通する。即ち、キャップ20はそれぞれの突起部19の上端部を覆うが高さ方向全長を覆うことはない。このキャップ20の下端とそれぞれの突起部19の下端(電波透過部18bの上面)との高さ方向のすき間は10mm以上であり、例えば10mm以上30mm以下である。
【0043】
キャップ20をケーシング18に固定するには種々の仕様があるが、この実施形態ではビス22が使用されている。そこで、キャップ20には半径方向に延在する挿入孔20aが周方向に間隔をあけた複数箇所に形成されている。詳述すると、
図4、
図9に例示するように、それぞれの係合部20dに連通するようにキャップ20の外周面に挿入孔20aが形成されている。
【0044】
図7、
図8に例示するように、複数の突起部19の外周面にはビス孔19aが形成されている。この実施形態では、ビス孔19aがすべての突起部19に形成されているが、複数の突起部19に形成されていればよく、3本以上の突起部19にビス孔19aを形成されていることがより好ましい。また、ビス孔22は突起部19を半径方向に貫通していなくても、突起部19の外周面から内周面までの途中まで延在した仕様でもよい。
【0045】
キャップ20をケーシング18に固定する際には、
図11に例示するように、キャップ20をそれぞれの突起部19の上方から下方に移動させて、それぞれの突起部19の上端部をキャップ20に形成されている係合部20dに挿入して、それぞれの突起部19の上端部に配置する。次いで、
図3~
図5に例示するように、突起部19の先端部が収容されて係合しているそれぞれの係合部20dに連通する挿入孔20aに対して、キャップ20の外周側から内周側に向かって半径方向にビス22を挿入する。これらのビス22が、それぞれの挿入孔20aに対向配置されているビス孔19aに螺合することにより、キャップ20がケーシング18に強固に固定されている。この実施形態ではすべての突起部19のビス孔19aにビス22が螺合しているが、例えば、周方向に1つおきの突起部19のビス孔19aにビス22を螺合してキャップ20をケーシング18に固定してもよい。また、ビス22の頭部は、キャップ20の外周面から外周側に突出させずに挿入孔20aに埋入された状態にする。
【0046】
以下、この検知システムを使用して流路1aから流体Lの漏れが生じているか否かを判断する検知の手順の一例を説明する。
【0047】
作業者は、流体Lの漏れ確認作業のために定期的に、或いは、必要な時期に作業船などに乗ってマリンホース1に近づく。そして、通信機24を作動させて、
図2に例示するように、電波発信部24aから検知器11に向かって発信電波R1を送信し、この発信電波R1を利用してICタグ12に電力を生じさせる。ICタグ12はこの電力によって返信電波R2を送信し、この返信電波R2を電波受信部24bが受信する。この時、返信電波R2によって圧力センサ部15による検知圧力データが送られて、電波受信部24bが受信した検知圧力データは演算装置25に入力される。
【0048】
即ち、ICタグ12と通信機24とが、RFID(Radio Frequency IDentification)システムを構成している。交信する電波R1、R2の周波数や出力は適宜、設定されるが、パッシブ型のICタグ12を使用するので、ICタグ12と通信機24との間の電波R1、R2の交信距離は例えば数十cm~数m程度になる。ICタグ12と通信機24との間での無線通信に使用される電波(R1、R2)の周波数は主にUHF帯(国によって異なるが860MHz以上930MHz以下の範囲、日本では915MHz以上930MHz)であり、HF帯(13.56MHz)が用いられることもある。
【0049】
演算装置25には、流路1aから流体Lの漏れが生じているか否かを判断するための保圧室18cの圧力Pの基準値Pcが記憶されている。誤検知を防止するために、基準値Pcはマリンホース1の仕様や使用条件等を考慮して、実験やシミュレーションを行って予め適正範囲を把握しておき、この適正範囲内で設定して演算装置25に記憶しておく。
【0050】
演算装置25は、入力された検知圧力データの圧力値と基準値Pcとを比較する。流体Lが流体滞留層7内に流入していない場合は、保圧室18cの圧力Pに特別に大きな変動はないので、検知圧力データの圧力値は基準値Pcよりも小さくなっている。それ故、演算装置25は、流体Lが流路1aから漏れていないと判断し、その結果をモニタ表示や音声で知らせる。
【0051】
一方、内面層3や内周側補強層4等が破損して、流体Lが流路1aから流体滞留層7に流入すると、これに伴い、
図12に例示するように、連通管10、導入室23aおよび逆止弁17を通じて保圧室18cにおける圧力Pが高くなる。この高くなった圧力Pは逆止弁17によって保持されるとともに圧力センサ部15により検知される。そのため、流体Lの漏れ確認作業時に電波発信部24aから検知器11に向かって発信電波R1を送信すると、圧力センサ部15による検知圧力データとして、今までの最高の圧力Pの圧力値が電波受信部24bに受信されて演算装置25に入力される。
【0052】
演算装置25は、入力された検知圧力データの圧力値と基準値Pcとを比較する。その結果、検知圧力データの圧力値が基準値Pc以上であれば、流体Lが流路1aから漏れていると判断し、その結果をモニタ表示や音声で知らせる。
【0053】
この検知システムはパッシブ型のICタグ12を用いるので、バッテリの消耗具合を監視する作業が不要になる。また、逆止弁17を利用して保圧室18cの圧力を保持して、電波受信部24bにより受信された圧力センサ部15による検知圧力データを指標にすることで、流路1aからの流体Lの漏れの有無をより確実に判断することが可能になる。
【0054】
この実施形態では、流路1aからの流体Lの漏出の有無を演算装置25によって自動的に判断されている。その他に例えば、予め設定された基準値Pcと電波受信部24bにより受信された検知圧力データの圧力値とを、作業者が比較することによって、流体Lの漏出の有無を判断することもできる。
【0055】
ICチップ13には、その他の情報を記憶させておき、返信電波R2によって送信することもできる。例えば、そのマリンホース1の仕様情報、製造情報、そのICタグ12のマリンホース1への設置時期などの情報をICチップ13に記憶させておき、これらの情報を電波受信部24bに送信することもできる。
【0056】
この検知器11を用いると、上述した突起部19によって電波透過部18bの上面が保護される。そのため、電波透過部18bの損傷リスクが低減して検知器11の耐久性を向上させるには有利になっている。それぞれの突起部19は周方向に間隔をあけて配置されるとともに、平面視で、それぞれの突起部19の上端部どうしが離間しているので、これら突起部19によって、ICタグ12と通信機24との間の電波通信の良好さが損なわれるデメリットが回避される。そのため、電波透過部18bの上面を保護しつつ、流体漏れの確認の容易性および検知の確実性を確保できる。
【0057】
また、それぞれの突起部19の上端部は、上述したキャップ20によって被覆されるので、金属製のそれぞれの突起部19の上端部が何らかの物体に接触しても、検知器11とその物体の双方の損傷リスクを低減するには有利になる。例えば、検知器11の周囲に存在している他のマリンホースやロープなどが接触しても、検知器11およびそのマリンホースやロープの損傷を軽減することが可能になる。また、キャップ20はケーシング18に強固に固定されているので、物体が接触しても容易にケーシング18から外れることがない。
【0058】
キャップ20がケーシング18に固定された状態では、それぞれの突起部19よりも内周側領域とそれぞれの突起部19よりも外周側領域とが、周方向に隣り合う突起部19の下端部どうしの周方向のすき間を通じて連通しているので、このすき間を海水が流通する。それ故、キャップ20が波から受ける力が低減されて、キャップ20が波力によってケーシング18から外れることが防止されるので、キャップ20をケーシング18に対して長期間安定して固定するには有利になる。
【0059】
また、キャップ20は環状体なので、電波透過部18bの上面が全体的にキャップ20によって覆われることがない。それ故、ICタグ12と通信機24との間の電波通信の良好さが損なわれることを回避できる。誘電体には電波が通る穴を大きく見せる効果(空気中に比して電波の波長が短くなる)があるので、この効果が一因になって、キャップ20をケーシング18に固定することで電波通信の具合が若干向上する場合もある。
【0060】
図13~
図16に例示する組立体21では、突起ネジ部19bとキャップネジ部20bとを用いてキャップ20がケーシング18に強固に固定されている。キャップ20には周方向に延在するキャップネジ部20bが形成されている。詳述すると、係合部20dとして、キャップ20の周方向に連続してキャップ20の底面に開口する環状溝が採用されている。この係合部20dとなる環状溝の外周面に周方向に延在するキャップネジ部20bが形成されている。それぞれの突起部19の外周面には周方向に延在する突起ネジ部19bが形成されている。
【0061】
キャップ20がそれぞれの突起部19の上端部で、キャップ20(それぞれの突起部19)の平面視の中心軸まわりに、周方向に回転されることにより、キャップネジ部20bとそれぞれの突起ネジ部19bとが螺合する。キャップ20が回転されることに伴い、係合部20dがそれぞれの突起部19の上端部と係合してキャップ20が徐々に下方移動し、それぞれの突起部19の上端部に配置された状態でケーシング18に固定される。
【0062】
図17~
図20に例示する組立体21では、突起嵌合部19cとキャップ嵌合部20cとを用いてキャップ20がケーシング18に強固に固定されている。キャップ20にはキャップ嵌合部20cが形成されている。詳述すると、係合部20dとして、キャップ20の周方向に間隔をあけて配置されてキャップ20の底面に開口する複数の穴が採用されている。この係合部20dとなる複数の穴の外周面には、半径方向内側に突出するキャップ嵌合部20cが形成されている。
【0063】
複数の突起部19の外周面には、半径方向内側に窪んだ突起嵌合部19cが形成されている。キャップ20が下方に押圧されて、それぞれの係合部20dが対応する突起部19の上端部と係合してキャップ20がそれぞれの突起部19の上端部に配置されることにより、キャップ嵌合部20cとそれぞれの突起嵌合部19cとが嵌合して、キャップ20がケーシング18に固定される。
【0064】
半径方向外側に窪むキャップ嵌合部20cを採用するとともに、半径方向外側に突出する突起嵌合部19cを採用することもできる。また、係合部20dとして、周方向に間隔をあけて配置された複数の穴に代えて、キャップ20の周方向に連続してキャップ20の底面に開口する環状溝を採用することもできる。
【0065】
キャップ20をケーシング18に固定するには、接着剤を併用することもできる。即ち、キャップ20を上述したそれぞれの方法を用いてケーシング18に固定する際に、キャップ20とそれぞれの突起部19の先端部とを、公知の接着剤を使用して固定することもできる。
【0066】
また、ビス22を用いてキャップ20をケーシング18に固定する上述した方法と、突起ネジ部19bとキャップネジ部20bを螺合してキャップ20をケーシング18に固定する上述した方法とを併用することもできる。また、ビス22を用いてキャップ20をケーシング18に固定する上述した方法と、突起嵌合部19cとキャップ嵌合部20cを嵌合してキャップ20をケーシング18に固定する上述した方法とを併用することもできる。
【0067】
突起部19の形状は基本的には上方に真直ぐに延在する形状がよいが、電波透過部18bに対する保護効果を向上させるために別の形状を採用することもできる。
図21、22に例示するように、それぞれの突起部19を、上下方向中途の位置で屈曲して平面視で電波透過部18bの中心側に延在する形状にすることもできる。
【0068】
ただし、それぞれの突起部19の下端は電波透過部18bの上面の外周縁よりも外周側に配置して、途中で屈曲させる高さ位置は電波透過部18bの上面から8mm以上の位置にする。また、平面視で、それぞれの突起部19の屈曲させた上端の対向するどうしのすき間Dbは、電波透過部18bの上面の直径Daの50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは100%以上にする。また、平面視で、それぞれの突起部19の屈曲させた上端の周方向に隣り合うどうしのすき間Wは、好ましくは3mm以上、より好しくは5mm以上にする。
【0069】
図21、
図22のケーシング18を使用する場合も、上述した種々のキャップ20と同様にして、キャップ20をケーシング18に固定できる。即ち、このケーシング18とキャップ20とにより、
図23、
図24に例示する組立体21を構成することができる。
【0070】
本発明の検知システムでは、流体漏れの確認作業は、作業者がハンディタイプの通信機24を持って行うだけでなく、
図25に例示するように通信機24をドローン27に搭載して行うこともできる。
図25に例示する検知システムは、上述した実施形態とは異なり、通信機24(電波発信部24aおよび電波受信部24b)とカメラ装置26とが搭載されたドローン27と、電波受信部24bにより受信された検知圧力データおよびカメラ装置26により取得された画像データが入力される演算装置25とを備えている。演算装置25は例えば、船上や遠隔地の管理事務所などに配置される。
【0071】
カメラ装置26はマリンホース1の上方空域からマリンホース1の画像データを取得する。カメラ装置26としては、静止画または動画の画像データMrを取得する公知の種々のデジタルカメラなどを採用することができる。
【0072】
ドローン27には、GNSS受信機28が設置されていて、ドローン27の位置座標がGNSS受信機28によってリアルタイムで把握される。逐次取得した画像データMrに基づいて、操縦者がドローン27を検知器11(ICタグ12)の上方近傍空域に移動させることも、検知器11の位置座標をドローン27の制御部に入力することで、自動制御運転によってドローン27を検知器11(ICタグ12)の上方近傍空域に移動させることもできる。
【0073】
この検知システムでは流体漏れの確認作業を行なう際には、陸上や船上などの測定基地からドローン27を飛行させてマリンホース1の表面に配置されている検知器11(ICタグ12)の上方近傍空域に移動させた状態にする。この状態で、ICタグ12と通信機24との間で無線通信を行なって、圧力センサ部15による検知圧力データおよびカメラ装置26により取得された画像データMrが演算装置25に入力される。
【0074】
演算装置25によって、検知圧力データに基づいて流体漏れの有無が判断され、また、画像データMrに基づいてマリンホース1の外部の異常の有無が判断される。ドローン27を用いると、漏れ確認作業の際に作業者がマリンホース1に近づく必要がなくなり、作業負担を一段と軽減できる。また、キャップ20をオレンジ色などの目立つ色にしておくと、カメラ装置26の画像データMrによって検知器11の位置を確認し易くなるので、通信機24を検知器11(ICタグ12)の上方近傍空域に移動させることがより容易になる。
【0075】
本開示は、以下の発明を包含する。
[発明1]:マリンホースの表面に設置されて、前記マリンホースに形成されている流体滞留層に連通可能に接続される流体漏れ検知器用のケーシングと、前記ケーシングに固定されるキャップとの組立体であって、
前記ケーシングは、金属製の筒状の基部と、この基部の上端部側を水密に遮断する電波透過部と、この電波透過部よりも上方に前記基部から突出する3本以上の金属製の突起部とを有し、前記基部と前記電波透過部とに囲まれて保圧室が形成されていて、平面視で、それぞれの前記突起部が前記電波透過部の外周側位置に周方向に間隔をあけて配置されているとともに、それぞれの前記突起部の上端部どうしが離間していて、前記保圧室には圧力センサ部および前記圧力センサ部に接続されたパッシブ型のICタグが収容される構成であり、
前記キャップは、それぞれの前記突起部の上端部を平面視で周方向に連続して被覆する樹脂またはゴム製の環状体であり、それぞれの前記突起部の上端部と係合する係合部が形成されていて、
前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置されて前記ケーシングに固定された状態では、それぞれの前記突起部よりも内周側領域とそれぞれの前記突起部よりも外周側領域とが、周方向に隣り合う前記突起部の下端部どうしの周方向のすき間を通じて連通するマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
[発明2]:前記キャップには半径方向に延在する挿入孔が周方向に間隔をあけた複数箇所に形成されていて、
複数の前記突起部の外周面にはビス孔が形成されていて、
それぞれの前記挿入孔に対して前記キャップの外周側から内周側に向かって半径方向に挿入されるビスを有し、
前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置された状態で、複数箇所のそれぞれの前記挿入孔に対して挿入されたそれぞれの前記ビスが、それぞれの前記挿入孔に対向配置されている前記ビス孔に螺合することにより前記キャップが前記ケーシングに固定される[発明1]に記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
[発明3]:前記キャップには周方向に延在するキャップネジ部が形成されていて、
それぞれの前記突起部の外周面には周方向に延在する突起ネジ部が形成されていて、
前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部で周方向に回転されることにより、前記キャップネジ部とそれぞれの前記突起ネジ部とが螺合して、前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置された状態で、前記ケーシングに固定される[発明1]または[発明2]に記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
[発明4]:前記キャップにはキャップ嵌合部が形成されていて、
複数の前記突起部の外周面には突起嵌合部が形成されていて、
前記係合部がそれぞれの前記突起部の上端部と係合して前記キャップがそれぞれの前記突起部の上端部に配置されることにより、前記キャップ嵌合部とそれぞれの前記突起嵌合部とが嵌合して、前記キャップが前記ケーシングに固定される[発明1]または[発明2]に記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体。
[発明5]:[発明1]~[発明4]のいずれかに記載のマリンホースの流体漏れ検知器用のケーシングとキャップの組立体と、前記保圧室に収容された前記圧力センサ部および前記ICタグとを有する検知器と、前記マリンホースの表面に延在して前記流体滞留層と前記検知器とを連通可能に接続する連通管と、前記連通管側から前記保圧室側への流れのみを許容する逆止弁と、前記マリンホースの外側に配置される電波発信部および電波受信部とを備え、
前記電波発信部から送信された発信電波に応じて前記ICタグから返信電波が送信され、前記返信電波によって前記圧力センサ部による検知圧力データが送られて前記電波受信部により受信される構成にしたマリンホースの流体漏れ検知システム。
[発明6]:前記電波発信部および前記電波受信部とカメラ装置とが搭載されたドローンと、前記電波受信部により受信された前記検知圧力データおよび前記カメラ装置により取得された画像データが入力される演算装置とを備えた[発明5]に記載のマリンホースの流体漏れ検知システム。
【符号の説明】
【0076】
1 マリンホース
1a 流路
2 連結端部
2a フランジ
2b ニップル
2c 固定リング
3 内面層
4 内周側補強層
4a ニップルワイヤ
5 本体ワイヤ層
5a ニップルワイヤ
6 外周側補強層
6a ニップルワイヤ
7 流体滞留層
8 浮力層
9 外面層
10 連通管
10a 管端接続部
11 検知器
12 ICタグ
13 ICチップ
14 アンテナ部
15 圧力センサ部
16 グラウンド部
17 逆止弁
18 ケーシング
18a 基部
18b 電波透過部
18c 保圧室
18d 固定部
18e スペーサ
18f C型リング
18s シール材
19 突起部
19a ビス孔
19b 突起ネジ部
19c 突起嵌合部
20 キャップ
20a 挿入孔
20b キャップネジ部
20c キャップ嵌合部
20d 係合部
21 組立体
22 ビス
23 アダプタ部
23a 導入室
24 通信機
24a 電波発信部
24b 電波受信部
25 演算装置
26 カメラ装置
27 ドローン
28 GNSS受信機