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特開2024-166420組み換え型タンパク質の効率的な選択性
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166420
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】組み換え型タンパク質の効率的な選択性
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241121BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20241121BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241121BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241121BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/54
C12P21/08
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024163845
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2023061971の分割
【原出願日】2015-08-19
(31)【優先権主張番号】62/039,416
(32)【優先日】2014-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ディパリ デシュパンデ
(72)【発明者】
【氏名】ダリャ ブラコフ
(72)【発明者】
【氏名】ガン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ファンデル
(57)【要約】
【課題】哺乳類細胞内の組み換え型タンパク質の発現を一貫した効率的な様式で提供する。
【解決手段】本発明は、哺乳類選択マーカーを採用することによる哺乳類細胞内のタンパク質の改善された発現のための方法および組成物を含む。本発明は、哺乳類細胞内の組み換え型タンパク質の選択性および強化した発現コピーだけでなくタンパク質収量を増強する方法、ならびにかかる発現系を使用する方法を含む。本発明は、調節可能な選択マーカーとして哺乳類Tn耐性遺伝子、GPTを利用する哺乳類細胞系内の組み換え型タンパク質の生成のための改善した方法を提供し、また、組み換え型タンパク質のグリコシル化のための改善された方法、すなわち所望のタンパク質の一貫した質の収量を提供するために哺乳類細胞系内で糖タンパク質を作製するための方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞培養における選択マーカーとしてツニカマイシン(Tn)を採用する方法であって、
(a)哺乳類宿主細胞集団を提供するステップと、
(b)ステップ(a)の前記細胞集団にトランスフェクションにより核酸を導入するステップであって、ここで、前記核酸は、(i)配列番号:3のアミノ酸配列に少なくとも93%の同一性を有するタンパク質をコードする哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子、および(ii)第1の目的タンパク質(POI)をコードする第1の目的遺伝子(GOI)を含むステップ
(c)Tnの存在下でステップ(b)の前記細胞集団を培養し、それにより、各々が前記核酸を含む細胞トランスフェクタントの集団るステップと、
(d)前記得られた細胞トランスフェクタントの集団において前記第1のGOIから前記第1のPOIを発現させ、前記細胞培養から前記第1のPOIを単離するステップ
を含み、前記第1のPOIがN-グリコシル化タンパク質である、方法。
【請求項2】
哺乳類細胞培養における選択マーカーとしてツニカマイシン(Tn)を採用する方法であって、
(a)哺乳類宿主細胞集団を提供するステップと、
(b)ステップ(a)の前記細胞集団にトランスフェクションにより核酸を導入するステップであって、ここで、前記核酸は、(i)配列番号:3のアミノ酸配列に少なくとも93%の同一性を有するタンパク質をコードする哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子、および(ii)第1の目的タンパク質(POI)をコードする第1の目的遺伝子(GOI)を含むステップと、
(c)第1の濃度のTnの存在下でステップ(b)の前記細胞集団を培養し、それにより、各々が前記核酸を含む細胞トランスフェクタントの第1の集団を得るステップと、
(d)得られた前記第1の集団を、前記第1の濃度より高い第2の濃度のTnの存在下で培養し、それにより、各々が前記核酸を含む細胞トランスフェクタントの第2の集団を得るステップと、
(e)細胞トランスフェクタントの前記第2の集団において前記第1のGOIから前記第1のPOIを発現させ、前記細胞培養から前記第1のPOIを単離するステップと
を含み、前記第1のPOIがN-グリコシル化タンパク質である、方法。
【請求項3】
ステップ(c)における前記培養が、1μg/mLのTnの第1の濃度で培養することを含み、Tnの前記第2の濃度が2.5μg/mLまたは5μg/mLである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記Tn耐性遺伝子が、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、および配列番号:10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記Tn耐性遺伝子が、配列番号:2、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記糖タンパク質が、抗体軽鎖もしくはその抗原結合断片、抗体重鎖もしくはその抗原結合断片、Fc融合タンパク質もしくはその断片、リガンド、および、受容体もしくはそのリガンド結合断片から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳類宿主細胞がCHO細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照による組み込み)
本出願は、2015年8月3日に作成されたファイル「8700WO_ST25.txt」(75,769バイト)としてコンピュータ可読形式で提出される配列表を参照により組み込む。
【0002】
本発明は、哺乳類細胞内の組み換え型タンパク質の発現を一貫した効率的な様式で提供する。特に、本発明は、哺乳類選択マーカーを採用することによる哺乳類細胞内のタンパク質の改善された発現のための方法および組成物を含む。本発明は、哺乳類細胞内の組み換え型タンパク質の選択性および強化した発現コピーだけでなくタンパク質収量を増強する方法、ならびにかかる発現系を使用する方法を含む。
【背景技術】
【0003】
細胞発現系の開発は、研究用途および治療用途のために、所与のタンパク質の信頼性がありかつ効率的な供給源を提供するための重要な目標である。哺乳類細胞内での組み換え型タンパク質発現は、例えば、哺乳類発現系は組み換え型タンパク質を翻訳後に適切に修飾できる能力のため、治療用タンパク質を製造するためには好ましいことが多い。
【0004】
哺乳類の宿主内での発現のために様々なベクターが利用可能であり、各々が細胞培養の間に組み換え型タンパク質を発現する細胞の容易な単離を可能にする選択マーカーを含有する。選択マーカー遺伝子(SMG)は目的タンパク質を発現する細胞に選択的な利点を与えるので、かかる系ではSMGが利用されるが、SMGは、数ある理由の中でも、その表現型の中立性、効率、および多用途性のために最適化される必要がある。
【0005】
SMGの宿主となる多数のベクターおよび発現系の可用性にもかかわらず、哺乳類系内で達成される組み換え型タンパク質の発現は、数量、もしくは質、またはこれらの両方のいずれかの面でしばしば満足のいかないものである。分子の生物学的な「フィンガープリント」、例えば、グリコシル化のような翻訳後の修飾は、組み換え型タンパク質治療の開発では分子の有用性および有効性を画定するうえで特に重要である(Cumming、D.A.,1990,Glycobiology,1(2):115-130)。発現された目的タンパク質の生物学的特性に悪影響を及ぼさないSMGは特に有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cumming、D.A.,1990,Glycobiology,1(2):115-130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大部分のSMGは細菌起源であり、また哺乳類系での使用に対して、細菌性抗生物質耐性遺伝子の環境細菌への水平伝播のリスクに対する懸念が高まることによる他の不利点がもたらされる(Breyer,D.et al.,2014,Critical Reviews in Plant Sciences 33:286-330)。細菌性抗生物質耐性遺伝子の使用を除去することは、消費者受容に良い影響を有し、かつかかる知覚リスクを軽減する可能性がある。
【0008】
遺伝子操作した自己細胞は急速に臨床的な成功を収めてきている(例えば、Kershaw,M.H.et al.,2013,Nature Reviews:Cancer
13:525-541を参照のこと)。特に非ヒト構成要素のヒト自己細胞への望ましくない導入は患者の安全性に対する深刻な結果を有する可能性があるので、ヒト自己細胞産物での遺伝子修飾のためのベクターの選択および設計は重要である。(Eaker,et al.,2013,Stem cells Trans.Med. 2:871-883;first published online in SCTM EXPRESS October 7,2013)。細菌性ではなく、哺乳類起源の構成要素のみを有するベクター系は、養子免疫療法のための患者に特異的なT細胞での使用に対して有用であることになる。
【0009】
したがって、哺乳類の目的タンパク質の生成のために、哺乳類選択性遺伝子、特に形質転換した細胞に表現型の利点または代謝的な利点を与えるものを発現系内に導入することが望ましい。さらに、十分に高いレベルの治療用タンパク質を確実に発現し、また翻訳後に治療用タンパク質を適切かつ一貫して修飾する細胞株がたいへん望ましい。したがって、当該技術分野において、改善された哺乳類発現系に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
哺乳類発現系内での哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子の選択マーカーとしての使用は、効率およびトランスフェクタントのコピー数を増加することができる。目的遺伝子に操作可能にリンクしたTn耐性遺伝子の使用が哺乳類細胞の集団上に選択圧力を作り出し、これによってトランスフェクタント(すなわち、目的遺伝子)のランダム組み込みが増加することが観察された。選択マーカー系が所望のトランスフェクタントの選択を育成する場合があることが理解されるが、しかしながら本発明の方法は、効率および目的遺伝子のランダム組み込みの両方の予想外の増加だけでなく、望ましいタンパク質の信頼性のある生物学的質を付与する。したがって、本発明の組成物および方法は発現されたタンパク質に対する質的に好ましい翻訳後の修飾の有用な選択を可能にする。
【0011】
一態様では、本発明は、配列番号:3のアミノ酸配列に少なくとも93%の同一性を有するタンパク質をコードする哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子を含み、目的遺伝子(GOI)および少なくとも1つの調節要素に操作可能にリンクした、単離細胞を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、組み換え型の目的タンパク質(POI)を生成する方法を提供し、この方法は、(i)哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子および(ii)POIをコードする遺伝子を含む核酸分子をコードする哺乳類宿主細胞を提供することと、第1の濃度のTnの存在下で細胞を培養することと、Tn耐性遺伝子の少なくとも1つのコピーを発現する細胞集団を単離することと、Tnの増加する濃度の存在下で細胞集団を培養することであって、Tnの増加する濃度がPOIの生成を増加することと、POIを細胞培養から単離することとを含む。
【0013】
また別の態様では、本発明は、N-グリカンタンパク性基質をグリコシル化する方法を提供し、この方法は、グリコシル化を必要としてタンパク性基質をコードする遺伝子に操作可能にリンクした哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子を含む核酸分子をコードする哺乳類宿主細胞を提供することと、第1の濃度のTnの存在下で細胞を培養することと、Tn耐性遺伝子の少なくとも1つのコピーを発現する細胞集団を単離することと、Tnの増加する濃度の存在下で細胞集団を培養することであって、Tnの増加する濃度がPOIの生成を増加する、ことと、タンパク性基質を細胞培養から単離することとを含む。
【0014】
この方法の一部の実施形態では、Tn耐性遺伝子は、POIをコードする遺伝子に操作可能にリンクし、またPOIをコードする遺伝子は少なくとも1つの調節要素に操作可能にリンクする。
【0015】
一部の実施形態では、Tn耐性遺伝子は細胞に外因的に添加される。他の実施形態では、Tn耐性遺伝子は、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも93%の同一性を有するタンパク質をコードする。他の実施形態では、Tn耐性遺伝子は、配列番号:3のアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を有するタンパク質をコードする。一部の実施形態では、Tn耐性遺伝子は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも93%の同一性を有するタンパク質をコードする。さらに他の実施形態では、Tn耐性遺伝子は、配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも94%の同一性を有するタンパク質をコードする。
【0016】
一部の実施形態では、哺乳類Tn耐性遺伝子は、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)Tn耐性遺伝子を含む。他の実施形態では、哺乳類Tn耐性遺伝子はヒトTn耐性遺伝子を含む。
【0017】
Tn耐性遺伝子は、配列番号:2、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17から成る群から選択される核酸配列も含んでもよい。
【0018】
前述の発明の一定の実施形態では、哺乳類Tn耐性遺伝子は、配列番号:2の核酸配列と少なくとも92%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施形態では、哺乳類Tn耐性遺伝子は、配列番号:12の核酸配列と少なくとも92%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0019】
Tn耐性遺伝子に操作可能にリンクした少なくとも1つの調節要素が本発明の単離細胞の中に提供され、調節要素は、プロモーター、リボソーム結合部位、およびエンハンサーを含むが、これに限定されない。さらに別の実施形態では、GOIはプロモーターに操作可能にリンクする。別の実施形態では、GOIはIRESなどのリボソーム結合部位に操作可能にリンクする。
【0020】
一部の実施形態では、本発明の単離細胞および方法は第2の目的遺伝子(GOI)をさらに含み、一方でGOIは目的タンパク質(POI)をコードする。一実施形態では、目的遺伝子(GOI)は外因的に添加されたGOIである。別の実施形態では、外因的に添加されたGOIは、ヒトの遺伝子である。また別の実施形態では、調節要素は外因的に添加された調節要素である。
【0021】
他の実施形態では、POIをコードする第1のGOIおよび/または第2のGOIは、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗原結合断片、および/またはFc融合タンパク質を含むがこれに限定されない。
【0022】
別の実施形態では、第1のGOIおよび第2のGOIは、抗体軽鎖またはその抗原特異的な断片、抗体重鎖またはその抗原特異的な断片、Fc融合タンパク質またはその断片、および受容体またはそのリガンド特異的な断片をコードする遺伝子、から成る群から独立して選択される。一実施形態では、リコンビナーゼ認識部位は、第1のGOIと第2のGOIとの間に存在する。他の実施形態では、本発明は、第1のGOIに対するリコンビナーゼ認識部位5’と、前記第2のGOIに対するリコンビナーゼ認識部位3’と、をさらに含む。
【0023】
さらに別の実施形態では、GOIは、抗体軽鎖またはその抗原結合断片、抗体重鎖またはその抗原結合断片、Fc融合タンパク質またはその断片、リガンド、および受容体またはそのリガンド結合断片から選択される糖タンパク質をコードする。
【0024】
本発明の単離した自然発生的でない細胞は、真核細胞に由来する場合がある。一実施形態では、細胞は哺乳類細胞である。一部の実施形態では、単離細胞はエクスビボヒト細胞である。他の実施形態では、細胞は、CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、リンパ球、幹細胞、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、Jurkat、Daudi、A431(表皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞に由来する細胞株から成る群から選択される。ある一定の実施形態では、本発明の単離細胞はCHO-K1細胞、リンパ球、網膜細胞、または幹細胞である。
【0025】
一実施形態では、Tnの第1の濃度は1μg/mLである。別の実施形態では、Tnの増加する濃度は、Tnの第2の濃度および第3の濃度である。
【0026】
一部の実施形態では、Tnの第2の濃度は第1の濃度より大きく、またTnの第3の濃度は第2の濃度より大きい。ある一定の実施形態では、Tnの第2の濃度は2.5μg/mLであり、また第3の濃度は5μg/mLである。
【0027】
さらに他の実施形態では、Tnの増加する濃度はTnの第2の濃度を含み、Tnの第2の濃度は2.5μg/mLまたは5μg/mLである。
【0028】
別の方法で特定されない限り、または文脈から明らかでない限り、本発明の態様および実施形態のいずれかを、本発明の任意の他の態様または実施形態と併せて使用することができる。
【0029】
他の目的および利点は、次の発明を実施するための形態の検討から明らかになるであろう。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
配列番号:3の前記アミノ酸配列に少なくとも93%の同一性を有するタンパク質をコードする哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子を含み、目的遺伝子(GOI)および少なくとも1つの調節要素に操作可能にリンクした、単離細胞。
(項目2)
前記細胞に前記Tn耐性遺伝子が外因的に添加された、項目1に記載の単離細胞。
(項目3)
前記Tn耐性遺伝子が、配列番号:3の前記アミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する前記タンパク質をコードする、項目1または2に記載の単離細胞。
(項目4)
前記Tn耐性遺伝子が配列番号:3の前記アミノ酸配列と少なくとも98%の同一性を有する前記タンパク質をコードする、項目1~3のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目5)
前記Tn耐性遺伝子が、配列番号:2、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17から成る群から選択される核酸配列を含む、項目1または2に記載の単離細胞。
(項目6)
前記Tn耐性遺伝子が、配列番号:12を含む前記核酸配列を含む、項目1または2に記載の単離細胞。
(項目7)
前記少なくとも1つの調節要素が、プロモーター、リボソーム結合部位、およびエンハンサーから成る群から選択される、項目1~6のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目8)
第2の目的遺伝子(GOI)をさらに含む、項目1~7のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目9)
前記目的遺伝子(GOI)が外因的に添加されたGOIである、項目1~8のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目10)
前記外因的に添加されたGOIがヒトの遺伝子である、項目1~9のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目11)
前記調節要素が外因的に添加された調節要素である、項目1~10のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目12)
前記第1のおよび/または第2のGOIが、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗原結合断片、およびFc融合タンパク質から成る群から選択される、項目1~11のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目13)
前記第1のGOIおよび前記第2のGOIが、抗体軽鎖またはその抗原特異的な断片、抗体重鎖またはその抗原特異的な断片、Fc融合タンパク質またはその断片、および受容体またはそのリガンド特異的な断片をコードする遺伝子、から成る群から独立して選択される、項目1~12のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目14)
前記GOIがプロモーターに操作可能にリンクした、項目1~113のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目15)
前記GOIは、抗体軽鎖またはその抗原結合断片、抗体重鎖またはその抗原結合断片、Fc融合タンパク質またはその断片、リガンド、および受容体またはそのリガンド結合断片から選択される糖タンパク質をコードする、項目1~14のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目16)
リコンビナーゼ認識部位が前記第1のGOIと前記第2のGOIとの間に存在する、項目8~15のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目17)
前記第1のGOIに対するリコンビナーゼ認識部位5’と、前記第2のGOIに対するリコンビナーゼ認識部位3’と、をさらに含む、項目8に記載の単離細胞。
(項目18)
前記細胞が真核細胞である、項目1~17のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目19)
前記細胞が哺乳類細胞である、項目1~18のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目20)
前記細胞が、CHO-K1、COS-7、HEK293、腫瘍細胞、リンパ球、網膜細胞、および幹細胞から成る群から選択される、項目1~18のいずれか一項に記載の単離細胞。
(項目21)
前記細胞がCHO-K1細胞である、項目1~20のいずれか一項に記載の単離細胞。(項目22)
組み換え型の目的タンパク質(POI)を生成する方法であって、
a. (i)哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子および(ii)前記POIをコードする遺伝子を含む核酸分子をコードする哺乳類宿主細胞を提供することと、
b. 前記Tnの第1の濃度の存在下で前記細胞を培養することと、
c. 前記Tn耐性遺伝子の少なくとも1つのコピーを発現する細胞集団を単離することと、
d. 前記Tnの増加する濃度の存在下で前記細胞集団を培養することであって、前記Tnの増加する濃度が前記POIの生成を増加することと、
e. 前記POIを前記細胞培養から単離することとを含む、方法。
(項目23)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が配列番号:2の前記核酸配列と少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が配列番号:2の前記核酸配列と少なくとも98%の同一性を有する核酸配列を含む、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)Tn耐性遺伝子を含む、項目22~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子がヒトTn耐性遺伝子を含む、項目22に記載の方法。
(項目27)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が、配列番号:2、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17から成る群から選択される核酸配列を含む、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記Tn耐性遺伝子が、前記POIをコードする前記遺伝子に操作可能にリンクする、項目22~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記POIをコードする前記遺伝子が、少なくとも1つの調節要素に操作可能にリンクする、項目22~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記少なくとも1つの調節要素が、プロモーター、リボソーム結合部位、およびエンハンサーから成る群から選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記POIをコードする第2の遺伝子をさらに含む、項目22~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記遺伝子が外因的に添加された目的遺伝子(GOI)である、項目22~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記外因的に添加されたGOIがヒトの遺伝子である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記調節要素が外因的に添加された調節要素である、項目29または30に記載の方法。
(項目35)
前記POIが、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗原結合断片、およびFc融合タンパク質から成る群から選択される、項目22~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記Tnの第1の濃度が、1μg/mLである、項目22~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
Tnの前記増加する濃度が、Tnの第2の濃度およびTnの第3の濃度を含む、項目22~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記Tnの第2の濃度が前記Tnの第1の濃度より大きく、かつ前記Tnの第3の濃度が前記Tnの第2の濃度より大きい、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記Tnの第2の濃度が2.5μg/mLであり、また前記Tnの第3の濃度が5μg/mLである、項目37または38に記載の方法。
(項目40)
前記Tnの増加する濃度がTnの第2の濃度を含み、前記Tnの第2の濃度が2.5μg/mLまたは5μg/mLである、項目22~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
N-グリカンタンパク性基質をグリコシル化する方法であって、
a. グリコシル化を必要として前記タンパク性基質をコードする遺伝子に操作可能にリンクした哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子を含む核酸分子をコードする哺乳類宿主細胞を提供することと、
b. 前記Tnの第1の濃度の存在下で前記細胞を培養することと、
c. 前記Tn耐性遺伝子の少なくとも1つのコピーを発現する細胞集団を単離することと、
d. 前記Tnの増加する濃度の存在下で前記細胞集団を培養することであって、前記Tnの増加する濃度が前記POIの生成を増加することと、
e. 前記タンパク性基質を前記細胞培養から単離することとを含む、方法。
(項目42)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が配列番号:2の前記核酸配列と少なくとも93%の同一性を有する核酸配列を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が配列番号:2の前記核酸配列と少なくとも98%の同一性を有する核酸配列を含む、項目39に記載の方法。
(項目44)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)Tn耐性遺伝子を含む、項目41~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子がヒトTn耐性遺伝子を含む、項目41に記載の方法。
(項目46)
前記哺乳類Tn耐性遺伝子が、配列番号:2、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、および配列番号:17から成る群から選択される核酸配列を含む、項目41に記載の方法。
(項目47)
前記Tn耐性遺伝子が、前記POIをコードする前記遺伝子に操作可能にリンクする、項目41~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記POIをコードする前記遺伝子が、少なくとも1つの調節要素に操作可能にリンクする、項目41~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記少なくとも1つの調節要素が、プロモーター、リボソーム結合部位、およびエンハンサーから成る群から選択される、項目48に記載の方法。
(項目50)
第2の目的遺伝子(GOI)をさらに含む、項目41~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記目的遺伝子(GOI)が外因的に添加されたGOIである、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記外因的に添加されたGOIがヒトの遺伝子である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記調節要素が外因的に添加された調節要素である、項目48または49に記載の方法。
(項目54)
前記POIが、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗原結合断片、およびFc融合タンパク質から成る群から選択される、項目41~53のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記Tnの第1の濃度が、1μg/mLである、項目41~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
Tnの前記増加する濃度が、Tnの第2の濃度およびTnの第3の濃度を含む、項目41~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記Tnの第2の濃度が前記Tnの第1の濃度より大きく、かつ前記Tnの第3の濃度が前記Tnの第2の濃度より大きい、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記Tnの第2の濃度が2.5μg/mLであり、また前記Tnの第3の濃度が5μg/mLである、項目56または57に記載の方法。
(項目59)
前記Tnの増加する濃度がTnの第2の濃度を含み、前記Tnの第2の濃度が2.5μg/mLまたは5μg/mLである、項目41~55のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】目的遺伝子をコードする核酸配列の導入、例えばeGFPの細胞ゲノム内への導入、のために使用されるクローニングベクター構築体内の操作的な発現カセットの概略的な略図を図示する。SV40プロモーター:シミアンウイルス40プロモーター;GPT:GlcNAc-1-Pトランスフェラーゼ(例えば、CHO-GPT、配列番号:2;またはhGPT、配列番号:12);IRES:内部リボソーム侵入部位;eGFP:強化型緑色蛍光タンパク質;SV40polyA:シミアンウイルス40 polyA。
図2A図2A図2Cは、チャイニーズハムスター(GPT_CRIGR;UniProtKB Accn.No.P24140;配列番号:3)GPTアミノ酸配列と比較した哺乳類GPTアミノ酸配列、すなわちヒト(GPT_HUMAN;UniProtKB Accn.No.Q9H3H5;配列番号:4)、アカゲザル(GPT_MACMU;UniProtKB Accn.No.F6TXM3;配列番号:5)、チンパンジー(GPT_PANTR;UniProtKB Accn.No.H2R346;配列番号:6)、イヌ(GPT_CANFA;UniProtKB Accn.No.E2RQ47;配列番号:7)、モルモット(GPT_CAVPO;UniProtKB Accn.No.E2RQ47;配列番号:8)、ラット(GPT_RAT;UniProtKB Accn.No.Q6P4Z8;配列番号:9)、およびマウス(GPT_MOUSE;UniProtKB Accn.No.P42867;配列番号:10)のアラインメントを代表する。
図2B図2A図2Cは、チャイニーズハムスター(GPT_CRIGR;UniProtKB Accn.No.P24140;配列番号:3)GPTアミノ酸配列と比較した哺乳類GPTアミノ酸配列、すなわちヒト(GPT_HUMAN;UniProtKB Accn.No.Q9H3H5;配列番号:4)、アカゲザル(GPT_MACMU;UniProtKB Accn.No.F6TXM3;配列番号:5)、チンパンジー(GPT_PANTR;UniProtKB Accn.No.H2R346;配列番号:6)、イヌ(GPT_CANFA;UniProtKB Accn.No.E2RQ47;配列番号:7)、モルモット(GPT_CAVPO;UniProtKB Accn.No.E2RQ47;配列番号:8)、ラット(GPT_RAT;UniProtKB Accn.No.Q6P4Z8;配列番号:9)、およびマウス(GPT_MOUSE;UniProtKB Accn.No.P42867;配列番号:10)のアラインメントを代表する。
図2C図2A図2Cは、チャイニーズハムスター(GPT_CRIGR;UniProtKB Accn.No.P24140;配列番号:3)GPTアミノ酸配列と比較した哺乳類GPTアミノ酸配列、すなわちヒト(GPT_HUMAN;UniProtKB Accn.No.Q9H3H5;配列番号:4)、アカゲザル(GPT_MACMU;UniProtKB Accn.No.F6TXM3;配列番号:5)、チンパンジー(GPT_PANTR;UniProtKB Accn.No.H2R346;配列番号:6)、イヌ(GPT_CANFA;UniProtKB Accn.No.E2RQ47;配列番号:7)、モルモット(GPT_CAVPO;UniProtKB Accn.No.E2RQ47;配列番号:8)、ラット(GPT_RAT;UniProtKB Accn.No.Q6P4Z8;配列番号:9)、およびマウス(GPT_MOUSE;UniProtKB Accn.No.P42867;配列番号:10)のアラインメントを代表する。
図3A図3Aおよび図3Bは、本発明の方法および組成物を使用してどのようにタンパク質最適化を達成することができるかを例示する。図3Aは、ポジティブな細胞トランスフェクタントを1μg/mLツニカマイシン(Tn)を用いて培養した第1の細胞プールから選択する方法を示す。これに続いて、第2の細胞培養は、ツニカマイシンの濃度を、例えば、2.5μg/mLまたは5μg/mLに増加してタンパク質発現を強化した。図3Bは、ポジティブ細胞トランスフェクタントを、1μg/mLツニカマイシン(Tn)を用いて培養した第1の細胞プールから選択し、次いでタンパク質発現を最適化するためにそれに続く細胞培養内でTnの濃度を連続的に増加する方法を示す。
図3B図3Aおよび図3Bは、本発明の方法および組成物を使用してどのようにタンパク質最適化を達成することができるかを例示する。図3Aは、ポジティブな細胞トランスフェクタントを1μg/mLツニカマイシン(Tn)を用いて培養した第1の細胞プールから選択する方法を示す。これに続いて、第2の細胞培養は、ツニカマイシンの濃度を、例えば、2.5μg/mLまたは5μg/mLに増加してタンパク質発現を強化した。図3Bは、ポジティブ細胞トランスフェクタントを、1μg/mLツニカマイシン(Tn)を用いて培養した第1の細胞プールから選択し、次いでタンパク質発現を最適化するためにそれに続く細胞培養内でTnの濃度を連続的に増加する方法を示す。
図4A図4A図4Bはハイグロマイシン選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図4A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むhpt発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にハイグロマイシンなしで培養される。図4B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むhpt発現ベクターを用いて、400μg/mLのハイグロマイシンの存在下で形質移入される。
図4B図4A図4Bはハイグロマイシン選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図4A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むhpt発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にハイグロマイシンなしで培養される。図4B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むhpt発現ベクターを用いて、400μg/mLのハイグロマイシンの存在下で形質移入される。
図5A図5A図5Fは、ツニカマイシン(Tn)選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図5A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5C:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5D:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5E:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5F:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。
図5B図5A図5Fは、ツニカマイシン(Tn)選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図5A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5C:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5D:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5E:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5F:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。
図5C図5A図5Fは、ツニカマイシン(Tn)選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図5A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5C:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5D:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5E:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5F:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。
図5D図5A図5Fは、ツニカマイシン(Tn)選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図5A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5C:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5D:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5E:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5F:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。
図5E図5A図5Fは、ツニカマイシン(Tn)選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図5A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5C:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5D:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5E:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5F:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。
図5F図5A図5Fは、ツニカマイシン(Tn)選択性の様々なパラメータを代表するFACS散布図を示す。修飾されたCHO細胞はlox部位に隣接するYFP遺伝子を含む。lox部位に隣接する選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子およびeGFP)は、YFP部位においてCreリコンビナーゼ組み込み、かつ標的化された組み込みを介してYFPをCreリコンビナーゼを用いて置き換える。ランダム組み込み体はYFPおよびeGFPの両方を発現する。図5A:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5B:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5C:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むCHO-GPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5D:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて形質移入されるが、培養内にツニカマイシンなしで培養される。図5E:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、1μg/mLのTnの存在下で形質移入される。図5F:細胞は、CreリコンビナーゼベクターおよびeGFPを含むヒトGPT発現ベクターを用いて、2.5μg/mLのTnの存在下で形質移入される。
図6A図6Aおよび図6Bは、操作可能にリンクしたeGFPなどのGOIの発現を強化する相対的な能力で、GPTを発現する細胞プールを、GPTを発現しないプールと比較して示す。図6A:細胞プールについてPCRによって測定されたCHO-GPTの遺伝子コピーの相対的な数を以下のように例示する。プール-49細胞(外因性GPTの添加なし)、Tn選択を含まない;プール-49細胞(外因性GPTなし)、5μgのTn選択を含む;プール-1細胞、GPTのより高い量を自然に発現し(データ非表示)、かつTn選択を含まずに試験された;プール-78細胞(外因性GPTなし)、Tn選択を含まない;CHO細胞、外因的に添加されたhptおよび400μg/mLハイグロマイシン選択を発現する;CHO細胞、1μg/mLのTn選択条件下で外因性GPTを発現する;CHO細胞、1μg/mL Tn選択プールから選択される外因性GPTを発現し、1μg/mL Tn内でさらに培養した;CHO細胞、1μg/mLTn選択プールから選択される外因性GPTを発現し、2.5μg/mL Tn内でさらに培養した;CHO細胞、1μg/mL Tn選択プールから選択される外因性GPTを発現する、5μg/mL Tn中でさらに培養した。図6B:qPCRによって測定された目的遺伝子、eGFPの遺伝子コピーの(図6Aと)同一の細胞プールに対する相対的な数を例示する。
図6B図6Aおよび図6Bは、操作可能にリンクしたeGFPなどのGOIの発現を強化する相対的な能力で、GPTを発現する細胞プールを、GPTを発現しないプールと比較して示す。図6A:細胞プールについてPCRによって測定されたCHO-GPTの遺伝子コピーの相対的な数を以下のように例示する。プール-49細胞(外因性GPTの添加なし)、Tn選択を含まない;プール-49細胞(外因性GPTなし)、5μgのTn選択を含む;プール-1細胞、GPTのより高い量を自然に発現し(データ非表示)、かつTn選択を含まずに試験された;プール-78細胞(外因性GPTなし)、Tn選択を含まない;CHO細胞、外因的に添加されたhptおよび400μg/mLハイグロマイシン選択を発現する;CHO細胞、1μg/mLのTn選択条件下で外因性GPTを発現する;CHO細胞、1μg/mL Tn選択プールから選択される外因性GPTを発現し、1μg/mL Tn内でさらに培養した;CHO細胞、1μg/mLTn選択プールから選択される外因性GPTを発現し、2.5μg/mL Tn内でさらに培養した;CHO細胞、1μg/mL Tn選択プールから選択される外因性GPTを発現する、5μg/mL Tn中でさらに培養した。図6B:qPCRによって測定された目的遺伝子、eGFPの遺伝子コピーの(図6Aと)同一の細胞プールに対する相対的な数を例示する。
図7A図7A図7Dは、以下のような細胞培養から生成されたFc融合タンパク質1(FcFP1)の糖型特性を例示する。図7A:標準プロトコル(Lot B10002M410)を使用するGPTを発現しないCHO細胞、これに対して、図7B:CHO-GPTを発現し、かつTn選択のないCHO細胞(Lot 110728)。図7C:CHO-GPTを発現し、かつ1μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-01)、これに対して、図7D:CHO-GPTを発現し、かつ5μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-02)。各クロマトグラムは、以下のようなシアル化された残基を含有する断片を示す。0SA=シアル酸残基が0個;1SA=シアル酸残基が1個;2SA=シアル酸残基が2個;3SA=シアル酸残基が3個;4SA=シアル酸残基が4個。
図7B図7A図7Dは、以下のような細胞培養から生成されたFc融合タンパク質1(FcFP1)の糖型特性を例示する。図7A:標準プロトコル(Lot B10002M410)を使用するGPTを発現しないCHO細胞、これに対して、図7B:CHO-GPTを発現し、かつTn選択のないCHO細胞(Lot 110728)。図7C:CHO-GPTを発現し、かつ1μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-01)、これに対して、図7D:CHO-GPTを発現し、かつ5μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-02)。各クロマトグラムは、以下のようなシアル化された残基を含有する断片を示す。0SA=シアル酸残基が0個;1SA=シアル酸残基が1個;2SA=シアル酸残基が2個;3SA=シアル酸残基が3個;4SA=シアル酸残基が4個。
図7C図7A図7Dは、以下のような細胞培養から生成されたFc融合タンパク質1(FcFP1)の糖型特性を例示する。図7A:標準プロトコル(Lot B10002M410)を使用するGPTを発現しないCHO細胞、これに対して、図7B:CHO-GPTを発現し、かつTn選択のないCHO細胞(Lot 110728)。図7C:CHO-GPTを発現し、かつ1μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-01)、これに対して、図7D:CHO-GPTを発現し、かつ5μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-02)。各クロマトグラムは、以下のようなシアル化された残基を含有する断片を示す。0SA=シアル酸残基が0個;1SA=シアル酸残基が1個;2SA=シアル酸残基が2個;3SA=シアル酸残基が3個;4SA=シアル酸残基が4個。
図7D図7A図7Dは、以下のような細胞培養から生成されたFc融合タンパク質1(FcFP1)の糖型特性を例示する。図7A:標準プロトコル(Lot B10002M410)を使用するGPTを発現しないCHO細胞、これに対して、図7B:CHO-GPTを発現し、かつTn選択のないCHO細胞(Lot 110728)。図7C:CHO-GPTを発現し、かつ1μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-01)、これに対して、図7D:CHO-GPTを発現し、かつ5μg/mLのTnを選択したCHO細胞(Lot 110728-02)。各クロマトグラムは、以下のようなシアル化された残基を含有する断片を示す。0SA=シアル酸残基が0個;1SA=シアル酸残基が1個;2SA=シアル酸残基が2個;3SA=シアル酸残基が3個;4SA=シアル酸残基が4個。
図8】(A)Lot B10002M410、(B)Lot 110728、(C)Lot 110728-01、および(D)Lot 110728-02からサンプリングされたFc融合タンパク質1(FcFP1)の重複グリコシル化プロファイルを例示する。GPTロットから生成された各タンパク質の糖プロファイルは参照標準タンパク質と両立し、また主な糖型の種が一貫して生成される。糖型の参照標準タンパク質と比較して新しくかつ特有の種がGPTロット内に生成されないことが明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本方法について記述する前に、本発明が本明細書に記述された特定の方法および実験条件に限定されず、それはこのような方法および条件が変化する場合があるからであることが理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって制限されるので、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記述する目的で使用されており、制限することを意図しないことも理解されるべきである。
【0032】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈がこれに反すると明らかに述べていない限り、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は複数の言及を含む。したがって例えば、「1つの方法」への言及は1つ以上の方法、および/または本明細書に記述され、かつ/もしくは当業者には本開示を読むと明らかになるタイプの工程、を含む。
【0033】
別途定義されない限り、または別途特定されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0034】
本明細書に記述したものと類似または同等な任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、特定の方法および材料をこれから記述する。本明細書に述べたすべての出版物はその全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0035】
当該技術分野において周知の様々な遺伝子は、培養中の哺乳類細胞に選択可能な表現型を与える場合がある。一般に、選択マーカー遺伝子は、細胞培養中の様々な抗生物質に耐性を与えるタンパク質、通常は酵素を発現する。一部の選択的な条件では、蛍光タンパク質マーカーを発現する細胞は見えるようになり、したがって選択可能になる。当該技術分野における例としては、ベータラクタマーゼ(bla;ベータラクタム抗生物質耐性遺伝子またはampR;アンピシリン耐性遺伝子)、bls(ブラストサイジン耐性アセチルトランスフェラーゼ遺伝子)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt;ハイグロマイシン耐性遺伝子)、およびその他が挙げられる。
【0036】
本明細書に記述される方法はツニカマイシンおよびツニカマイシンが細胞培養中で成長することに細胞が抵抗することができるようにする酵素(マーカー)の使用に依存する。ツニカマイシン(Tn)は、N-アセチルグルコサミン脂質中間体の形成および新たに合成された糖タンパク質グリコシル化を妨げる、細菌性および真核生物N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼの阻害剤として作用する抗生物質の混合物である。(King,I.A.,and Tabiowo,A.,1981,Effect of tunicamycin on epidermal glycoprotein and glycosaminoglycan synthesis in vitro.Biochem.J.,198(2):331-338)。Tnは、UDP-N-アセチルグルコサミン:ドリコールリン酸N-アセチルグルコサミン-1-Pトランスフェラーゼ(GPT)、ドリコールにリンクしたオリゴ糖の生合成の初期工程に触媒作用を及ぼす酵素、を特異的に阻害するので、細胞毒性である。ツニカマイシンの存在下で、小胞体(ER)内に作製されたアスパラギンにリンクした糖タンパク質はN-リンクしたグリシンによってグリコシル化されず、したがってER内で正しく折り畳まれない場合があり、ひいては分解の標的とされる場合がある(Koizumi,et al.,1999,Plant Physiol.121(2):353-362)。それ故、Tnは、細菌性細胞および真核細胞内にアポトーシスをもたらす注目に値する変性タンパク質応答(UPR)の誘導物質である。
【0037】
ウリジン二リン酸GPT遺伝子(GlcNAc-1-Pトランスフェラーゼとしても知られる)は、ある一定の細胞条件下でTnに耐性を与えるために過剰発現されるとして識別される(Criscuolo and Krag,1982,J Biol Chem,263(36):19796-19803;Koizumi,et al.,1999,Plant Physiology,Vol.121,pp.353-361)。GenBank Accn.No.M36899(配列番号:2)にも記述されているGPTをコードする遺伝子は、Tn耐性チャイニーズハムスターの卵巣細胞株から単離され、かつ408アミノ酸タンパク質(配列番号:3)をコードする(Scocca and Krag, 1990, J Biol Chem 265(33):20621-20626; Lehrman, M. et al., 1988, J Biol Chem 263(36):19796-803)。ハムスターGPTは酵母細胞内で過剰発現され(S.pombe)、かつこれらの細胞内でTn耐性を与えられ;またGPT酵素の精製のために都合のよい供給源も提供する(Scocca JR,et al.,1995,Glycobiology,5(1):129-36)。ハイブリドーマ細胞内でGPTの転写レベルが解析され(IgGを発現するB細胞対休止B細胞)、一方でIgGを生成する細胞がGPT転写または活性のレベルの増加を呈しないことが観察されたが、それでも休止から活性B細胞への転移中にGPTの小さな増加は見られた。結論として、GPTレベルはB細胞内のLPS(抗原)刺激への増殖の応答の早期の開発に対応する場合がある(Crick,D.C.et al.,1994,J Biol Chem 269(14):10559-65)。
【0038】
さらに、細胞発現系内にTnの存在があるかないかでGPTの発現が変化するかどうかは以前は未知であり、タンパク質産物のグリコシル化、したがって産物の質に影響を及ぼすことになる。治療用糖タンパク質の生成のうえで、最適かつ一貫したグリコシル化が重要なタンパク質特質であることが理解される。
【0039】
本発明は、調節可能な選択マーカーとして哺乳類Tn耐性遺伝子、GPTを利用する哺乳類細胞系内の組み換え型タンパク質の生成のための改善した方法を提供し、一方でGPTに操作可能にリンクした目的遺伝子のコピー数の増加は、GPT発現カセットの細胞内へのランダム組み込みの増加と相関する。
【0040】
当該技術は、治療用タンパク質(特に糖タンパク質)の製造が、かかるタンパク質の天然のグリコシル化を模倣する哺乳類タイプの発現系に依存することが識別される。(検討のために、Bork,K.et al,2009,J Pharm Sci.98(10):3499-3508を参照のこと。)例えば、N-リンクした複合体グリカンなどのある一定の糖タンパク質の末端単糖類は、典型的にはシアル酸によって占有される。シアル化は、糖タンパク質の薬物動態特性(吸収、血清半減期、およびクリアランスなどの)、または糖タンパク質の他の物理化学特性若しくは免疫原性特性に影響を与える場合がある。過剰発現組み換え型糖タンパク質は、しばしば不完全または一貫性のないグリコシル化を有する。プロセスの一貫性および哺乳類細胞株内で生成された治療用糖タンパク質の質のためには、信頼性のある方法が重要である。
【0041】
本発明は、組み換え型タンパク質のグリコシル化のための改善された方法、すなわち所望のタンパク質の一貫した質の収量を提供するために哺乳類細胞系内で糖タンパク質を作製するための方法も提供する。
【0042】
(用語の定義)
相互に機能的に関係しているとき、DNA領域は操作可能にリンクされる。例えば、プロモーターが配列の転写に参画する能力を有す場合、プロモーターはコード配列に操作可能にリンクし;リボソーム結合部位は、翻訳を許容するように位置する場合、コード配列に操作可能にリンクする。一般的に、操作可能にリンクしているとは、連続性を含むことができるが、連続性を必要としない。分泌リーダーなどの配列の場合には、連続性およびリーディングフレーム内での適正な配置は典型的な特徴である。プロモーターなどの生成強化配列は、目的遺伝子(GOI)と機能的に関係している場合、例えば、その存在が結果としてGOIの発現の増加をもたらす場合、GOIに操作可能にリンクしている。
【0043】
このように、「操作可能にリンクした」という句は、DNA発現ベクター構築の文脈の中などでは、例えば、プロモーター、オペレーター、またはマーカーなどの制御配列がコード配列と相対的な位置に適切に定置され、これによって制御配列がコード配列によってコードされた目的のポリペプチド/タンパク質の生成を指示または許容する。例えば、ある一定の培養条件で細胞が生存するために選択マーカーが必要とされる場合、操作可能な選択マーカータンパク質の存在なしには発現は生じないため、目的遺伝子は選択マーカー遺伝子に操作可能にリンクする。
【0044】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」は、操作可能にリンクした、すなわち適切な信号が存在するときに目的遺伝子および/または選択マーカー遺伝子の転写を許容するようなやり方でリンクしたDNA配列の転写を指示するのに十分なDNA配列を示す。遺伝子の発現は、当該技術分野で既知の任意のプロモーターまたはエンハンサー要素の制御下で定置される場合がある。
【0045】
本発明の状況では、「発現ベクター」は、染色体ベクター、非染色体ベクター、および合成核酸ベクター(好適な一連の発現制御要素を含む核酸配列)を含む任意の好適なベクターであってもよい。かかるベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌性プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合せに由来するベクター、およびウイルス性核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態では、Fc融合タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子は、例えば、線形発現要素(例えば、Sykes and Johnston,1997,Nat Biotech 12,355-59に記述されるように)、圧縮した核酸ベクター(例えば、米国特許第6,077,835号および/または国際特許出願第00/70087号に記述される)、またはプラスミドベクター(pBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119などの)を含む、裸のDNAまたはRNAベクター内に含まれる。かかる核酸ベクターおよびその使用法は当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,589,466号および米国特許第5,973,972号を参照のこと)。
【0046】
本明細書で使用される場合「オペレーター」は、抑制タンパク質のオペレーターへの結合によって遺伝子が調整される場合があり、そしてその結果、GOI、すなわち、ポリペプチドまたは目的タンパク質をコードするヌクレオチドの転写を防止または可能にするようなやり方で遺伝子内または遺伝子付近で導入されたDNA配列を示す。
【0047】
リボソーム結合部位は、「内部リボソーム侵入部位」(IRES)を含み、または5’キャップを含んでもよい。数多くのIRES配列が当該技術分野において周知である。IRESは翻訳制御配列を代表し、IRES部位は典型的には目的遺伝子の5’を位置付け、かつキャップと無関係な様式でRNAの翻訳を可能にする。翻訳のためにmRNAの開始コドンの場所がリボソーム内で適正に配向されるように、転写されたIRESはリボソームサブユニットを直接結合する場合がある。IRES配列は典型的にはmRNAの5’UTR内に位置付けられる(開始コドンのすぐ上流)。IRESは真核生物翻訳機構と相互作用する様々なタンパク質因子に対する必要性を機能的に置き換える。
【0048】
タンパク質発現を記述するために使用されるとき、「強化された」または「改善された」という用語は、本発明の発現系または方法によって生成されたタンパク質(すなわち、遺伝子産物)の数量および/または質の一貫性の増加を含む。このように、これは少なくとも約1.5倍~少なくとも約3倍の発現の強化を含み、その上で、例えば、別の選択マーカー構築体を使用する組み込み体のプールと比較してゲノムの中へのランダム組み込みによって典型的には観察される。このように、目的タンパク質に対して観察された発現強化の倍率を、GPT遺伝子を含む発現カセットまたは本発明の細胞の無い状態で、または異なる選択マーカーを含む発現カセットまたは細胞の存在下で、実質的に同一の条件下で測定された同一の遺伝子の発現レベルと比較した。発現強化は、結果として得られるランダム組み込みイベントの数によっても測定される場合がある。強化された組み換え効率は遺伝子座の組み換え能力の強化を含む(例えば、リコンビナーゼ認識部位を採用する)。強化とはランダム組み換え上の測定可能な効率を指し、これは典型的には0.1%である。ある
一定の条件では、強化された組み換え効率はランダムの約10倍であり、または約1%である。特定されない限り、特許請求される発明は特定の組み換え効率に限定されない。発現強化は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応法(qPCR)、または他の周知の技法によって測定された結果として得られる遺伝子コピーの数によっても測定されうる。
【0049】
強化または改善された産物は、より一貫した質、例えば、本発明のGPT発現系で観察される翻訳後の修飾をも指す。一貫した質は、例えば、複製生成ライン後の望ましいグリコシル化プロファイルを有することを含む。質に対する一貫性とは、均質性および標準化の程度を指し、一方で複製生成バッチは本質的に変化がない。一貫性を測定するためのZ番号の計算が本明細書に教示される。一貫性を測定するための他の統計的測定は、当該技術分野で既知である。
【0050】
「選択圧力」という句は、生きている生命体(例えば、細胞)または系(例えば、発現系としての)に適用される力または刺激であって、所与の環境内で生きている生命体または系の挙動および生存(生存する能力などの)を変化させる力または刺激である。
【0051】
「遺伝子増幅」という句は、遺伝子配列の同一のコピーの数の増加を意味する。ある一定の細胞プロセスは、遺伝子が細胞上に与える表現型(例えば、抗生物質耐性)を増幅する特定の遺伝子(複数可)の複数のコピーの生成によって特徴付けられる。
【0052】
発現カセットを参照して「外因的に添加された遺伝子」または「外因的に添加されたGOI」という句が採用される場合、この句は細胞ゲノム内に天然で見出されるようには存在しない任意の遺伝子、またはゲノム(の中の異なる遺伝子座)の中に組み込まれた追加的な遺伝子コピーを指す。例えば、CHOゲノム内の「外因的に添加された遺伝子」(例えば、選択マーカー遺伝子)は、天然では特定のCHO遺伝子座内には見出されないハムスター遺伝子(すなわち、ハムスターゲノム内の別の遺伝子座由来のハムスター遺伝子)、任意の他の種(例えば、ヒトの遺伝子)由来の遺伝子、キメラ遺伝子(例えば、ヒト/マウス)、もしくはCHOゲノムの中には天然で見出されないハムスター遺伝子(すなわち、ハムスターゲノム内の別の遺伝子座由来の遺伝子と99.9%未満の同一性を有するハムスター遺伝子)とすることができ、またはCHO天然ゲノムの中に存在することが天然では見出されない任意の他の遺伝子とすることができる。
【0053】
ランダム組み込みイベントは標的とされる組み込みイベントとは異なり、一方で細胞のゲノムの中への遺伝子の挿入はランダム組み込みイベント中では部位特異的ではない。標的とされる組み込みの実施例は相同的組み換えである。ランダム(非相同)組み込みは、結果として得られる組み込み体の場所(遺伝子座)が既知であるまたは特定されていることを意味する。ランダム組み込みは非相同末端結合(NHEJ)によって生じると考えられるが、しかしながらこの方法に限定されない。
【0054】
選択効率とは、選択マーカーおよび、適用可能な場合、選択マーカーの制御下の目的タンパク質を発現する生存細胞の個体数のパーセントを意味する。
【0055】
Tn耐性タンパク質を記述するとき、同一性のパーセントは、連続相同物の領域に沿って示された同一性を表示する相同性配列を含むことを意味するが、同一性のパーセントを計算するうえで比較された配列内に相同物を有しないギャップ、欠失、または挿入の存在は考慮されない。この状況で「同一性のパーセント」の使用を説明するうえで、以下のアミノ酸配列比較を参照する。
【0056】
【化1】
【0057】
本明細書で使用される場合、ハムスターホモログはアラインメントで比較する相同体配列を有しないので、上方の「GPT_CRIG」配列(チャイニーズハムスターGPTに対する)とマウスホモログ(「GPT_MOUSE」)との間の「同一性のパーセント」の判定は、ハムスターアミノ酸10と11との比較は含まないことになる(すなわち、場合によってはマウスGPTはその時点で挿入を有し、またはハムスターホモログはギャップもしくは欠失を有する)。したがって、上記の比較では、同一性のパーセントの比較は5’端部における「MWA」から3’端部における「ESQ」へと延びることになる。その場合、マウスホモログはその中でハムスターGPT位置51において「R」を有することのみが異なる。比較は60塩基対区間中の58連続塩基に及ぶので、1つのアミノ酸の違い(ギャップ、欠失、または挿入ではない)のみでは、2つの配列(ハムスターおよびマウス)の間にはハムスターGPT位置1からハムスターGPT位置58までの間に98%を超える同一性がある(「同一性のパーセント」はギャップ、欠失、および挿入に対するペナルティを含まないので)。上記の実施例はアミノ酸配列に基づくが、核酸配列の同一性のパーセントは同一の様式で計算されることになることが理解される。
【0058】
「細胞」という用語は、組み換え型核酸配列の発現のために好適な任意の細胞を含む。細胞としては、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)の細胞、細菌細胞(例えば、大腸菌、バチルス属、ストレプトマイセス属などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、出芽酵母、分裂酵母、ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、イラクサギンウワバなど)、非ヒト動物細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞、または、例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合が挙げられる。ある一定の実施形態では、細胞は,ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。他の実施形態では、細胞は真核性であり以下の細胞から選択される。CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293
EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞に由来する細胞株。一部の実施形態では、細胞は1つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(登録商標)細胞)を含む。
【0059】
「細胞密度積分値」、または「ICD」という句は、ある期間にわたり積分したものとして取られた培地内の細胞の密度を意味し、細胞-日/mLとして表現される。一部の実施形態では、ICDは、細胞の培養での21日目の周辺で測定される。
【0060】
「グリコシル化」または「タンパク質をグリコシル化する」という句は糖タンパク質の形成を含むが、一方でオリゴ糖は、アスパラギン(Asn)残基(すなわち、N-リンクした)の側鎖、またはタンパク質のセリン(Ser)/スレオニン(Thr)残基(すなわち、O-リンクした)のいずれかに付着される。グリカンは、単糖類残基のホモポリマーまたはヘテロポリマーとすることができ、これは直鎖または分枝鎖とすることができる。N-リンクしたグリコシル化は、主に小胞体内で開始することが周知であり、一方でO-リンクしたグリコシル化はERまたはGolgi装置のいずれかの中で開始することが示される。
【0061】
「N-グリカンタンパク質」または「N-グリカンタンパク性基質」は、N-リンクしたオリゴ糖を含有または受容することができるタンパク質を含む。N-グリカンは、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、マンノース(Man)、フコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)、ノイラミン酸(NANA)、および他の単糖類ので構成することができるが、しかしながらN-グリカンは、3個のマンノースと2個のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)糖を含む一般的なコア五糖類構造を通常有する。連続したアミノ酸配列(すなわち、シークオン)Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr(ここでプロリン以外のXは任意のアミノ酸)を有するタンパク質は、N-グリカンのために付着部位を提供することができる。
【0062】
(概要)
本発明は、ある一定の条件下で組み換え型タンパク質が細胞内に生成されうるという発見に少なくとも部分的に基づき、タンパク質をコードする遺伝子は、Tn耐性遺伝子、GPTに操作可能にリンクし、また細胞ゲノム内でランダム組み込みイベントを増加し、したがって目的遺伝子のコピー数、および最終的にタンパク質生成を増加するためにタンパク質を生成する細胞の選択物の形式を整える。
【0063】
本発明は、タンパク質を生成する細胞は、一貫していて、かつ信頼性のある翻訳後の修飾を用いてタンパク質を発現するように最適化されうるという所見にも少なくとも部分的に基づく。GPT発現カセットを、発現構築体内でのように、発現ベクターを介して当該技術分野で既知の様々な遺伝子編集技法を使用するなどにより、細胞ゲノム内に組み込むこともできる。GPTを含む発現ベクターを、特定の組み換え部位を識別する相同的組み換えまたはリコンビナーゼによって媒介された組み換えなどのランダム組み換えまたは標的化組み換え(例えば、Cre-lox-媒介された組み換え)によってゲノムの中に組み込むことができる。
【0064】
染色体のDNA内の組み込み部位に切断を導入することによって真核細胞内での相同的組み換えを容易にすることができる。モデル系は、染色体の標的配列の中へと二本鎖の切断が導入された場合、遺伝子標的化の間の相同的組み換えの頻度が増加することを実証した。これは、ある一定の核を組み込みの特定の部位へと標的化することによって遂行されてもよい。標的の遺伝子座においてDNA配列を識別するDNA結合したタンパク質は当該技術分野で既知である。遺伝子標的化ベクターは、相同的組み換えを容易にするためにも採用される。修復を対象とする相同性のための遺伝子標的化ベクターが無い状態で、細胞は非相同末端結合(NHEJ)によって二本鎖切断を頻繁に閉じ、これは開裂部位において多重ヌクレオチドの欠失または挿入をもたらす場合がある。遺伝子標的化ベクター構築およびヌクレアーゼ選択は、本発明が関連する当該技術分野の当業者の技能の範疇内である。
【0065】
一部の実施例では、モジュラー構造を有し、かつ個別のジンクフィンガードメインを含有するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、標的配列内の特定の3-ヌクレオチド配列を識別する(例えば、標的とされる組み込みの部位)。一部の実施形態は、多重標的配列を標的化する個別のジンクフィンガードメインの組み合せを用いてZFNを利用することができる。
【0066】
転写活性化物質様(TAL)エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、部位特異的なゲノム編集にも採用されてもよい。TALエフェクタータンパク質DNA結合ドメインは、典型的にはFokIなどの制限ヌクレアーゼの非特定的な開裂ドメインと組み合せて利用される。一部の実施形態では、TALエフェクタータンパク質DNA結合したドメインおよび制限ヌクレアーゼ開裂ドメインを含む融合タンパク質は、本発明の遺伝子座内の標的配列においてDNAを識別および分割するために採用される(Boch J et al.,2009 Science 326:1509-1512)。
【0067】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)は、細菌性適応性免疫機構から開発されたプログラム可能なゲノムエンジニアリングツールである。この系、すなわちクラスター化された規則的な配置の短い回文の繰返し(CRISPR)/CRISPRに関連付けられた(Cas)免疫応答では、2つのRNAで複合化されたときタンパク質Cas9は、配列特異的なエンドヌクレアーゼを形成し、そのうちの1つは標的選択を誘導する。RGENは構成要素(Cas9およびtracrRNA)および標的に特異的なCRISPRRNA(crRNA)から成る。DNA標的開裂の効率と開裂部位の場所との両方とも、標的認識のための追加要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の位置に基づいて変化する(Chen,H.et al.,J.Biol.Chem.2014年3月14日にオンラインで出版、マニュスクリプトとしてはM113.539726)。
【0068】
当業者には、厳密にDNA結合した特異性を用いたBuDに由来するヌクレアーゼ(BuDNs)などの相同的組み換えのさらに他の方法が利用可能である(Stella,S.et al.,Acta Cryst.2014,D70,2042-2052)。ゲノム内で特有の標的配列と両立する利用可能なツールに基づいて厳密なゲノム修飾方法が選ばれ、これにより細胞表現型の妨害が回避される。
【0069】
核酸配列(目的遺伝子)を哺乳類細胞の中へと安定して組み込むために細胞および方法が提供され、GPT配列を用いて組み込まれたおかげで核酸配列は強化した発現の能力を有する。発現構築体(例えば、発現ベクター)と併せてGPTを使用するため、および外因性GPTを対象となる哺乳類細胞の中へと追加するための組成物および方法も提供される。一貫していて、しかも頑強な糖タンパク質、特に治療用糖タンパク質を作製する方法での使用のために細胞および方法が提供される。
【0070】
GPT選択マーカーカセットの構築
操作的なGPT発現カセットを含む発現ベクターが本明細書に提供される。発現カセットは、哺乳類GPTおよび所望の遺伝子産物の転写および翻訳を許容および駆動するために必要な調節要素を含む。
【0071】
本明細書に記述される遺伝子および調節配列の様々な組み合せも開発することができる。開発することができる本明細書に記述される適切な配列の他の組み合せの実施例としては、本明細書に開示されるGPT遺伝子の多重コピーを含む配列、または調節要素の最適な組み合せを達成するために開示されたGPTを他のヌクレオチド配列と組み合わせることによって誘導される配列が挙げられる。目的遺伝子および調節要素に配向されたGPTの最適な間隔を提供するために、かかる組み合せを連続的にリンクまたは配列することができる。
【0072】
GPTをコードする遺伝子の相同体配列は、他の哺乳類種(例えば、ヒト、図2を参照のこと)からの細胞内だけでなく、他の哺乳類組織タイプに由来する細胞株内に存在することが既知であり、また当該技術分野において周知の技法によって単離することができる。哺乳類GPTアミノ酸配列の例示的なリストが図2に提供される。配列番号:3~10に示される対応するGPTタンパク質の最適な発現を許容するために、配列番号:2および配列番号:11~17に示されるヌクレオチド配列に対してコドン最適化などのヌクレオチド配列を変更させることができる。さらに、GPTをコードするヌクレオチド配列を変更することによって配列番号:3~10に示されるアミノ酸配列を変更させることができる。部位特異的またはランダムな突然変異生成技法を含むがこれに限定されない、かかる技法は当該技術分野で周知である。
【0073】
次いで、本明細書に記述されるように、結果として得られるGPT変異型をGPT活性について試験することができ、例えば、ツニカマイシンに対する耐性について試験することができる。アミノ酸配列がGPT活性を有する、配列番号:3と少なくとも約93%同一、または少なくとも約95%同一、または少なくとも約96%同一、または少なくとも約97%同一、または少なくとも約98%同一であるGPTタンパク質は、規定通りの実験によって単離可能であり、また配列番号:3に対するものと同一のTnに対する耐性、選択性効率および翻訳後の恩恵を呈することが予期される。したがって、GPTの哺乳類ホモログおよびGPTの変異型も本発明の実施形態によって包含される。図2A図2Cは、様々な哺乳類GPTアミノ酸配列(すなわち、配列番号:3~10)のアラインメントを示す。哺乳類GPT配列(核酸およびアミノ酸)、中でもハムスター、ヒト、マウス、およびラットのゲノムが保存される。表1は、例示的な哺乳類GPTタンパク質およびその相同性の程度を識別する。
【表1A】
【表1B】
【0074】
本明細書に提供されるGPT/ツニカマイシン法を使用して、目的タンパク質の強化し
たレベルを発現する細胞集団を開発することができる。発現の絶対的なレベルは、細胞によってどれぐらい効率的にタンパク質が処理されるかに依存して、特定のタンパク質によって変化することになる。
【0075】
したがって、本発明は、配列番号:2および配列番号:11~17から成る群から選択されるGPTを発現するヌクレオチド配列も含む。本発明は、配列番号:2および配列番号:11~17から成る群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも92%同一、少なくとも93%同一、少なくとも94%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一である、GPTを発現するヌクレオチド配列も包含する。
【0076】
本発明は、配列番号:1、配列番号:2、または配列番号:12を含むベクターを含む。哺乳類GPT遺伝子および随意による調節要素を含むベクターとしては、一時的なトランスフェクションベクターまたは安定したトランスフェクションベクターが挙げられる。
【0077】
一実施形態では、図1に例示されるように、GPT遺伝子はGOIの発現を強化するために採用される。図1は、IRES配列およびGPT選択マーカーに操作可能にリンクしたGOIを示す。GPTカセットは、プロモーター配列(例えば、SV40プロモーター)、およびポリアデニル化(poly(A))配列(例えば、SV40 poly(A))をさらに含む。
【0078】
(GPTおよび上流プロモーターを含む)発現強化カセットは、細胞ゲノム内に最適に組み込まれる。本発明の方法を使用して、Tnの濃度の増加に基づく培養条件の下でGPT発現カセットの中にGOIが発現される(図3Aまたは図3B)。図5B図5C図5E、および図5Fに示すようなFACS読み出しは、安定して形質移入された細胞の集団内の発現の分布を例示し、特に哺乳類Tn耐性選択マーカー、CHO-GPT、およびhGPTを使用する選択効率の劇的な増加を例示する。哺乳類GPT発現は、目的遺伝子産物の発現、例えば蛍光タンパク質、eGFPの生成をさらに強化する。増加するTnの濃度の連続する培養は、図6Bに例示するもののように、Tnの濃度に基づく培養条件の下でGPTを使用して発現系で発現されたGOIと比較して、約2倍の強化された発現を結果としてもたらす。
【0079】
本発明は、かかるGPT遺伝子を含む哺乳類細胞を含み、GPT遺伝子は外因性であり、また本発明の方法によって細胞ゲノムに組み込まれる。少なくとも1つの外因的に添加された目的遺伝子(GOI)を有するかかるGPT遺伝子を含む細胞は、GPT遺伝子の上流または下流である。
【0080】
様々な実施形態で、GOIを哺乳類選択マーカーGPTの制御下に置くことによってGOIの発現を強化することができる。他の実施形態では、GOIを哺乳類選択マーカーGPTの制御下に置き、また0.5μg/mLより大きいTn濃度から成る細胞培養条件を提供することによってGOIのランダム組み込みイベントを強化することができる。一部の実施形態では、細胞培養条件は、1μg/mLより大きいTn濃度から成る。調節要素は、GOIに操作可能にリンクしてもよく、GOIの発現(GOIおよびGPTから選択された距離における(5’または3’方向で))は、例えば、典型的にはランダム組み込みイベントに起因して観察される発現にわたるGOIの発現を強化する能力を保持する。様々な実施形態では、強化は少なくとも約1.5倍~約2倍、またはそれ以上である。ランダム組み込み、またはランダム発現と比較した発現の強化は、約1.5倍~約2倍、またはそれ以上である。
【0081】
別の実施形態では、本発明の方法および組成物を使用して均質にグリコシル化されたタンパク質を達成することができる。表4に示すように、Tnを用いて処置されたGPT/GOI組み換え型タンパク質バッチは、同等なグリコシル化プロファイルを有するバッチを複製することができる。このように、一貫したグリコシル化プロファイルなどの強化したタンパク質発現は、本明細書に教示するように、Z番号を計算することによって直接比較することができる。Z番号の式は、シアル酸(SA)部分を代表するクロマトグラム上のピークの相対的な数だけでなく各ピークの相対的な形状および強度を考慮に入れ考慮する。Z番号は、各ピークによって占有される面積に基づき、また複合化された糖タンパク質に対する一貫性の測定単位として使用されてもよい(例えば、図7A~7D、図8、および本明細書に記述される実施例3を参照のこと)。
【0082】
例えば、発現カセットの配向またはコドン最適化を含む、各GOIに対するタンパク質発現の最適化も達成することができる。タンパク質最適化も、細胞培養方法での異なる漸増Tn濃度によって達成される場合がある。
【0083】
組み換え型発現ベクターは、哺乳類、ウイルス性、または昆虫遺伝子に由来する好適な転写的および/または翻訳的調節要素に操作可能にリンクしたタンパク質をコードする合成またはcDNA由来DNA断片を含むことができる。本明細書に詳細に記述されるように、かかる調節要素としては、転写プロモーター、エンハンサー、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の停止を制御する配列が挙げられる。哺乳類発現ベクターは、複製の起源、他の5’または3’に隣接する非転写配列、およびスプライスドナーおよびアクセプター部位などの5’または3’非翻訳配列などの非転写要素も含むことができる。トランスフェクタントの認識を容易にするさらなる選択マーカー遺伝子(蛍光マーカーなどの)も組み込まれてもよい。
【0084】
別の実施形態では、ベクターは記述される核酸分子(遺伝子)を含む発現ベクターを含む目的タンパク質をコードする核酸分子(または目的遺伝子)を含み、核酸分子(遺伝子)は発現制御配列に操作可能にリンクされる。
【0085】
目的遺伝子(GOI)を含むベクターが提供され、GOIは哺乳類宿主細胞内での発現のために好適な発現制御配列に操作可能にリンクされる。
【0086】
本発明で使用されてもよい有用なプロモーターとしては、SV40前期プロモーター領域、Rous肉腫ウイルスの3’の長い末端反復内に含まれるプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列、マウスまたはヒトサイトメガロウイルスIEプロモーター(Gossen et al.,(1995)Proc.Nat.Acad.Sci.USA
89:5547-5551)、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター、および光合成酵素リブロース2リン酸カルボキシラーゼのプロモーター、酵母または他の菌類(Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホノグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および以下の動物転写対照領域など)からのプロモーター要素であって、動物転写対照領域は組織特異的を呈し、かつトランスジェニック動物内で利用されるもの(エラスターゼI;インシュリン;免疫グロブリン;マウス乳腺腫瘍ウイルス;アルブミン;α-フェトプロテイン;α1-アンチトリプシン;β-グロビン;およびミオシン軽鎖-2)が挙げられるがこれに限定されない。
【0087】
本発明の核酸分子は、効果的なpoly(A)終結配列(例えば、SV40 poly(A))、大腸菌内でのプラスミド産物に対する複製の起源、および/または都合のよいクローニング部位(例えば、ポリリンカー)にも操作可能にリンクしてもよい。核酸は、CMV IEなどの構造性のプロモーターとは対照的に調節可能な誘導性プロモーター(誘導性、再現性、開発的に調節された)も含んでもよい(かかる用語は実際にはある一定の条件下での遺伝子発現の程度の記述子であることを当業者は認識するであろう)。
【0088】
本発明は、目的タンパク質を生成するための方法を提供する一方で、目的遺伝子(GOI)を含む発現ベクターが提供される。かかる発現ベクターは、任意の目的タンパク質の組み換え型生成のために使用されてもよい。脊椎動物細胞を形質移入するために有用である発現ベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列は、ウイルス性供給源によって提供されてもよい。例えば、一般に使用されるプロモーターおよびエンハンサーは、ポリオーマ、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)などのウイルスに由来する。ウイルス性ゲノムプロモーター、制御配列、および/またはシグナル配列は、発現を駆動するために利用されてもよく、提供されたかかる制御配列は、選ばれた宿主細胞と両立する。組み換え型タンパク質が発現される細胞タイプに依存して、非ウイルス性細胞プロモーター(例えば、β-グロビンおよびEF-1αプロモーター)も使用することができる。
【0089】
異種DNA配列の発現のために有用な他の遺伝子要素を提供するために、SV40ウイルス性ゲノムに由来するDNA配列、例えば、SV40起源、前期プロモーターおよび後期プロモーター、エンハンサー、スプライス、およびポリアデニル化部位を使用されてもよい。前期プロモーターおよび後期プロモーターは、両者ともSV40ウイルスから断片として簡単に得られ、これらも複製のSV40ウイルス起源を含むので、特に有用である(Fiers et al.,Nature 273:113,1978)。より小さいSV40断片またはより大きいSV40断片も使用されてもよい。典型的には、Hind
III部位から複製のSV40起源に位置付けられたBglI部位に向かって延在するほぼ250bpの配列が含まれる。
【0090】
多重転写の発現のために使用される2シストロン性の発現ベクターは、以前に記述され(Kim S.K.and Wold B.J.,Cell 42:129,1985;Kaufman et al.,1991,supra)、またGPT発現系と組み合せて使用することができる。発現ベクターの他のタイプも有用であり、例えば、米国特許第4,634,665号(Axelら、)および米国特許第4,656,134号(Ringoldら)に記述されるものがある。
【0091】
組み込み部位、例えば、POIをコードする遺伝子配列への5’または3’にリコンビナーゼ認識部位を定置することができる。好適な組み込み部位の一実施例は、lox p部位である。好適な組み込み部位の別の実施例は、例えば、lox p部位、lox、およびlox 5511部位から成る群から選択される2つのリコンビナーゼ認識部位である。
【0092】
遺伝子増幅カセットおよびその発現ベクター
以前記述されたまたは当該技術分野で既知の有用な調節要素を、哺乳類細胞をトランスフェクトするために使用される核酸構築体内に含むこともできる。図1は、プロモーター配列、IRES配列、目的遺伝子、およびpoly(A)配列をさらに含むGPTベクター内の操作的なカセットを例示する。
【0093】
本発明の状況での発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(発現制御要素の好適な組を含む核酸配列)を含む任意の好適なベクターであってもよい。かかるベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌性プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合せに由来するベクター、およびウイルス性核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態では、抗体をコードする核酸分子は、例えば、線形発現要素(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記述されるように)、圧縮した核酸ベクター(例えば、米国特許第6,077,835号および/または国際特許出願第00/70087号に記述されるように)、またはプラスミドベクター(pBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119などの)を含む、裸のDNAまたはRNAベクター内に含まれる。かかる核酸ベクターおよびその使用法は当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,589,466号および米国特許第5,973,972号を参照のこと)。
【0094】
発現ベクターは代替的に酵母系内での発現のために好適なベクターであってもよい。酵母系内での発現のために好適な任意のベクターが採用されてもよい。好適なベクターとしては、例えば、酵母アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHなどの構造性のプロモーターまたは誘発性のプロモーターを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley
InterScience New York(1987)、およびGrant et
al.,Methods in Enzymol 153,516-544(1987)で検討されている)。
【0095】
ある一定の実施形態では、ベクターは記述される核酸分子(遺伝子)を含む発現ベクターを含む目的タンパク質をコードする核酸分子(または目的遺伝子)を含み、核酸分子(遺伝子)は宿主細胞内での発現のために好適な発現制御配列に操作可能にリンクされる。
【0096】
発現制御配列は、目的遺伝子の転写およびそれに続くタンパク質の様々な細胞系内での発現を制御および駆動するために改変される。プラスミドは、発現可能な目的遺伝子を、例えば、プロモーター、エンハンサー、選択マーカー、オペレーター等などの望ましい調節要素を含む発現制御配列(すなわち、発現カセット)と組み合せる。本発明の発現ベクターでは、GPTおよび目的タンパク質(抗体をコードする核酸分子などの)は、任意の好適なプロモーター、エンハンサー、オペレーター、リプレッサータンパク質、poly(A)終結配列、および他の発現促進要素を含んでもよく、またはこれと関連付けられてもよい。
【0097】
抗体をコードするヌクレオチド配列などの目的遺伝子の発現は、当該技術分野で既知の任意のプロモーターまたはエンハンサー要素の制御下で定置される場合がある。かかる要素の実施例としては、強い発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーまたはCMV主要IE(CMV-MIE)プロモーター、ならびにRSV、SV40後期プロモーター、SL3-3、MMTV、ユビキチン(Ubi)、ユビキチンC(UbC)、およびHIV LTRプロモーター)が挙げられる。
【0098】
一部の実施形態では、ベクターは、SV40、CMV、CMV-IE、CMV-MIE、RSV、SL3-3、MMTV、Ubi、UbCおよびHIV LTRから成る群から選択されるプロモーターを含む。
【0099】
本発明の核酸分子は、効果的なpoly(A)終結配列、大腸菌内でのプラスミド産物に対する複製の起源、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、および/または都合のよいクローニング部位(例えば、ポリリンカー)にも操作可能にリンクしてもよい。核酸は、CMV IEなどの構造性のプロモーターとは対照的に調節可能な誘導性プロモーター(誘導性、再現性、開発的に調節された)も含んでもよい(かかる用語は実際にはある一定の条件下での遺伝子発現の程度の記述子であることを当業者は認識するであろう)。
【0100】
選択マーカーは、当該技術分野において周知の要素である。一部の状況では、GPTに加えて追加的な選択マーカーを採用してもよく、かかるマーカーは細胞を見えるようにする。ポジティブまたはネガティブ選択を使用してもよい。
【0101】
一部の実施形態では、ベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、強化シアン蛍光タンパク質(eCFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、または強化黄色蛍光タンパク質(eYFP)をコードする1つ以上の選択マーカー遺伝子を含む。
【0102】
本発明の目的のために、真核細胞内での遺伝子発現は、オペレーターによって制御される強いプロモーターを使用して厳しく調整され、これは次いで調整融合タンパク質(RFP)によって調整される。RFPは、本質的に転写ブロッキングドメインおよびその活性を調整するリガンド結合ドメインから構成される。かかる発現系の実施例は米国特許第US20090162901A1号に記述され、この特許は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0103】
原核生物細胞およびバクテリオファージ内の多数のオペレーターが良好に特徴付けられている(Neidhardt,ed.Escherichia coli and Salmonella;Cellular and Molecular Biology 2d.Vol 2 ASM Press,Washington D.C.1996)。これらは、LexAペプチドを結合する大腸菌のLexA遺伝子のオペレーター領域、ならびに大腸菌のLacIおよびtrpR遺伝子によってコードされるリプレッサータンパク質を結合するラクトースおよびトリプトファンオペレーターを含むがこれに限定されない。これらは、ラムダcIおよびP22arcによってコードされたリプレッサータンパク質を結合するラムダPおよびファージP22 ant/mnt遺伝子からのバクテリオファージオペレーターも含む。一部の実施形態では、リプレッサータンパク質の転写ブロッキングドメインが、NotIなどの制限酵素であるとき、オペレーターはその酵素のための認識配列である。オペレーターがプロモーターに隣接する、またはプロモーターに対して3’に位置付けられる必要があり、これによりプロモーターによって転写を制御する能力を有することを当業者は認識するであろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,972,650号は、tetO配列がTATA boxから特定の距離以内であることを特定する。特定の実施形態では、オペレーターはプロモーターのすぐ下流に定置されることが好ましい。他の実施形態では、オペレーターはプロモーターの10塩基対内に定置される。
【0104】
ある一定の実施形態では、オペレーターは、tetオペレーター(tetO)、NotI認識配列、LexAオペレーター、ラクトースオペレーター、トリプトファンオペレーター、およびArcオペレーター(AO)から成る群から選択される。一部の実施形態では、リプレッサータンパク質は、TetR、LexA、LacI、TrpR、Arc、ラムダC1、およびGAL4から成る群から選択される。他の実施形態では、転写ブロッキングドメインは、真核性リプレッサータンパク質(例えば、GAL4に由来するリプレッサードメイン)に由来する。
【0105】
例示的な細胞発現系では、細胞はテトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)を発現するために改変され、また目的タンパク質はプロモーターの転写制御下に置かれ、その活性はTetRによって調整される。2つのタンデムTetRオペレーター(tetO)は、ベクター内でCMV-MIEプロモーター/エンハンサーのすぐ下流に置かれる。かかるベクター内のCMV-MIEプロモーターによって向けられた目的タンパク質をコードする遺伝子の転写は、テトラサイクリンまたは一部の他の好適な誘導物質(例えば、ドキシサイクリン)が無い状態でTetRによってブロックされる場合がある。誘導物質の存在下で、TetRタンパク質はtetOを結合する能力を有さず、それ故目的タンパク質の転写次いで翻訳(発現)を生じる。(例えば、米国特許第7,435,553号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0106】
別の例示的な細胞発現系は、TetR-ERLBDT2融合タンパク質などの調節性融合タンパク質を含み、この中で融合タンパク質の転写ブロッキングドメインはTetRであり、またリガンド結合したドメインはT2突然変異を含むエストロゲン受容体リガンド結合ドメイン(ERLBD)である(ERLBDT2;Feil et al.(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.237:752-757)。tetO配列が強いCMV-MIEプロモーターの下流および近位に置かれたとき、CMV-MIE/tetOプロモーターからの対象となるヌクレオチド配列の転写は、タモキシフェンの存在下でブロックされ、またタモキシフェンの除去によってブロックされなくなる。別の実施例では、融合タンパク質Arc2-ERLBDT2、15アミノ酸リンカーおよびERLBDT2(supra)によって接続された2つのArcタンパク質から成る一本鎖二量体から成る融合タンパク質の使用は、Arcオペレーター(AO)、より具体的にはCMV-MIEプロモーター/エンハンサーのすぐ下流の2つのタンデムアークオペレーターに関与する。細胞株はArc2-ERLBDT2によって調整されてもよく、目的タンパク質を発現する細胞は、CMV-MIE/ArcO2プロモーターによって駆動され、またタモキシフェンの除去により誘発性である。(例えば、米国特許第20090162901A1号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0107】
一部の実施形態では、本発明のベクターは、CMV-MIE/TetOまたはCMV-MIE/AO2ハイブリッドプロモーターを含む。
【0108】
本発明のベクターは、目的遺伝子の複製を容易にするために組み換え技術用のCre-loxツールも採用してもよい。Cre-loxストラテジは少なくとも2つの構成要素を要する。1)Creリコンビナーゼ、2つのloxP部位の間の組み換えに触媒作用を及ぼす酵素、および2)loxP部位(例えば、組み換えが行われる場合、特異的な34-塩基対bp配列から成る8-bpコア配列、および2つの隣接する13-bpの逆転した繰返し)または突然変異体lox部位。(例えば、これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる、Araki et al.PNAS 92:160-4(1995);Nagy,A.et al.Genesis 26:99-109(2000);Araki et al.Nuc Acids Res 30(19):e103(2002);および米国特許第US20100291626A1号を参照のこと)。別の組み換えストラテジでは、酵母に由来するFLPリコンビナーゼが共通配列FRTとともに利用されてもよい(例えばDymecki,S.PNAS 93(12):6191-6196(1996)も参照のこと)。
【0109】
別の態様では、遺伝子(すなわち、本発明の組み換え型ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列)は、発現カセットのGPT遺伝子の上流または下流に挿入され、また随意によりプロモーターに操作可能にリンクし、プロモーターにリンクした遺伝子は第1のリコンビナーゼ認識部位によって5’に隣接し、かつ第2のリコンビナーゼ認識部位によって3’に隣接する。かかるリコンビナーゼ認識部位は、発現系の宿主細胞内でCreが媒介する組み換えを可能にする。一部の事例では、第2のプロモーターにリンクした遺伝子は、第1の遺伝子の下流(3’)であり、また第2のリコンビナーゼ認識部位によって3’に隣接する。さらに他の事例では、第2のプロモーターにリンクした遺伝子は、第2のリコンビナーゼ部位によって5’に隣接し、かつ第3のリコンビナーゼ認識部位によって3’に隣接する。一部の実施形態では、リコンビナーゼ認識部位は、loxP部位、lox511部位、lox2272部位、およびFRT部位から選択される。他の実施形態では、リコンビナーゼ認識部位は異なる。さらなる実施形態では、宿主細胞は、Creリコンビナーゼを発現する能力を有する遺伝子を含む。
【0110】
一実施形態では、ベクターは、本発明の抗体の軽鎖または抗体の重鎖をコードする第1の遺伝子と、本発明の抗体の軽鎖または抗体の重鎖をコードする第2の遺伝子と、を含む。
【0111】
一部の実施形態では、ベクターは、小胞体(ER)内のタンパク質フォールディングに関与する遺伝子の発現の制御を通してタンパク質生成/タンパク質分泌をさらに強化する能力を有すX-ボックス結合タンパク質1(mXBP1)遺伝子をさらに含む。(例えば、Ron D,and Walter P.Nat Rev Mol Cell Biol.8:519-529(2007)を参照のこと)。
【0112】
本発明の組み換え型核酸配列を発現するためにはあらゆる細胞が好適である。本発明で使用される細胞としては、非ヒト細胞、ヒト細胞、または細胞融合(例えば、ハイブリドーマまたはクアドローマなどの)などの哺乳類細胞が挙げられる。ある一定の実施形態では、細胞は,ヒト、サル、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。他の実施形態では、細胞は真核性であり以下の細胞から選択される。CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、Jurkat、Daudi、A431(表皮性)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞に由来する細胞株。一部の実施形態では、細胞は1つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)を含む。
【0113】
またさらなる態様では、本発明は、抗体または二重特異性分子などの免疫グロブリンを生成するトランスフェクトーマなどの組み換え型哺乳類宿主細胞に関する。かかる宿主細胞の実施例としては、CHO細胞またはHEK細胞などの遺伝子操作された哺乳類細胞が挙げられる。例えば、一実施形態では、本発明は、本発明の組み換え型ポリペプチドを含む抗体の発現のための配列コード化を含む細胞ゲノムの中へと安定して組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明の組み換え型ポリペプチドを含む抗体の発現のための配列コード化を含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線形発現要素などの組み込まれていない(すなわち、エピソーム性)核酸を含む細胞を提供する。他の実施形態では、本発明は、本発明の発現ベクターを含むプラスミドを用いて宿主細胞を安定してトランスフェクトすることによって生成された細胞株を提供する。
【0114】
したがって、一態様では、本発明は、(a)外因的に添加された哺乳類GPT遺伝子をコードする組み換え型ポリヌクレオチド、および(b)マルチサブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する細胞を提供する。一部の実施形態では、外因的に添加されたGPT遺伝子は、配列番号:2の核酸配列と90%同一であり、その非限定的実施例が配列番号:11~17に提供され、またマルチサブユニットタンパク質が抗体である。他の実施形態では、細胞は外因的に添加されたGPT遺伝子および調節要素も含有する。一実施形態では、細胞は、バイオ医薬品の製造で使用されるCHO細胞などの哺乳類細胞である。
【0115】
別の態様では、本発明は以前の態様に記述される細胞に由来する細胞株を提供する。「に由来する」ことによって意味されることは、個別の細胞から細胞の個体数がクローン的に子孫に伝わり、また活性タンパク質を所与の力価で生成する能力、または特定の密度まで増殖する能力などの一部の選択品質を有することである。一部の実施形態では、哺乳類GPT遺伝子をコードする組み換え型ポリヌクレオチド、およびマルチサブユニットタンパク質をコードするポリヌクレオチドを寄生する細胞に由来する細胞株は、マルチサブユニットタンパク質を少なくとも培地1リットルあたり3グラム(g/L)、少なくとも5g/L、または少なくとも8g/Lの力価で生成する能力を有する。一部の実施形態では、細胞株は、本質的に同一の細胞であるがGPTをコードする組み換え型ポリヌクレオチドを含まないものに由来する細胞株によって達成可能な細胞密度積分値より少なくとも30%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも60%大きい、または少なくとも90%大きい細胞密度積分値(ICD)を達成することができる。
【0116】
GOIを増幅するための方法が提供される。例示する方法は、ツニカマイシンの濃度の増加を真核性GPT発現系に適用し、ひいては外因的に添加された哺乳類GPT遺伝子に操作可能にリンクしたGOIの遺伝子コピーを増幅する。
【0117】
目的タンパク質
目的タンパク質をコードする核酸配列を、Tn耐性マーカー遺伝子およびIRESを含む細胞内に都合よく組み込み、また随意によりリコンビナーゼ認識部位と隣接することができる。哺乳類細胞内での発現のために好適な任意の目的タンパク質を使用することができるが、特に糖タンパク質は本発明の方法からの恩恵を受ける。例えば、目的タンパク質は、抗体もしくはその抗原結合断片、二重特異性抗体もしくはその断片、キメラ型抗体もしくはその断片、ScFvもしくはその断片、Fcタグ付きタンパク質(例えば、Trapタンパク質)もしくはその断片、成長因子もしくはその断片、サイトカインもしくはその断片、または細胞表面受容体の細胞外ドメインもしくはその断片とすることができる。
【0118】
アスパラギンとリンクした(N-リンクした)グリカンを有する糖タンパク質は真核細胞内に遍在する。これらのグリカンの生合成およびこれらのポリペプチドへの移動は、小胞体(ER)内で行われる。N-グリカン構造は、ERおよびゴルジ複合体内のグリコシダーゼおよびグリコシル-トランスフェラーゼの数によってさらに修飾される。本発明を使用するタンパク質生成は、免疫原性エピトープ(「グリコトープ」)を除去するためのネイティブのN-グリカン構造の一貫性を目的とする。
【0119】
本発明の方法を使用して、組み換え型タンパク質ロットは好ましい特性を示す。本明細書の図7図8に例示するように、複製タンパク質生成バッチのHPLC(蛍光検出付き)は、糖タンパク質が均質な発現およびグリコシル化パターンを有することを実証した。N-グリカンタンパク性基質をグリコシル化する方法が提供され、一方でグリコシル化を必要としてタンパク性基質をコードする遺伝子に操作可能にリンクした哺乳類ツニカマイシン(Tn)耐性遺伝子を含む核酸分子をコードする哺乳類宿主細胞が提供され、第1の濃度のTnの存在下で細胞が培養され、Tn耐性遺伝子の少なくとも1つのコピーを発現する細胞集団が単離され、Tnの増加する濃度の存在下で細胞集団が培養され、そしてN-グリカンタンパク性基質が細胞培養から単離される。タンパク性基質のN-グリカン含有量は、当該技術分野で既知の任意の方法によって単糖類およびオリゴ糖の存在のために評価されてもよい。
【0120】
グリカンにリンクしたタンパク質の詳細な構造解析は、タンパク質の機能的特徴と相関する場合がある。タンパク質のグリコシル化を特徴付けるかかる解析は、典型的にはいくつかの工程を含む。i)付着したグリカンの酵素的または化学的放出;ii)芳香族アミンもしくは脂肪族アミンを用いた還元的なアミノ化または完全メチル化を介した放出されたグリカンの誘導体化;iii)グリカンの解析。グリコシル化を解析するパターンの数多くの変形が当業者には既知である。糖タンパク質には、様々な部位を特異的な量で占有するいくつかのタイプの糖型がある場合があり、したがってある一定の生成方法での再生をこれらの複合性が困難にしている場合がある。糖型のタイプおよび数量の一貫性は測定可能であり、また治療用タンパク質生成のために望ましい転帰を表す。
【0121】
宿主細胞およびトランスフェクション
本発明の方法で使用される哺乳類宿主細胞は、真核性宿主細胞、通常哺乳類細胞であり、例えば、CHO細胞およびマウス細胞が含まれる。一実施形態では、本発明は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター)(配列番号:3で示される)に由来するTn耐性マーカータンパク質またはそのホモログまたはその変異型をコードする核酸配列を含む細胞を提供する。一部の実施形態では、細胞はTn耐性マーカー遺伝子の多重遺伝子コピーを含む。他の実施形態では、本発明は、ヒト(配列番号:4)、アカゲザル(配列番号:5)、チンパンジー(配列番号:6)、イヌ(配列番号:7)、モルモット(配列番号:8)、ラット(配列番号:9)、またはマウス(配列番号:10)に由来するTn耐性マーカータンパク質をコードする核酸配列を提供する。
【0122】
本発明は、本発明の発現ベクターで形質移入された哺乳類宿主細胞を含む。形質移入された宿主細胞は、目的タンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクターで形質移入された細胞を含む。発現されたタンパク質は、典型的には選択された核酸配列に依存して培地の中へと分泌されるが、細胞内に保持されてもよく、または細胞膜内に沈着されてもよい。組み換え型タンパク質を発現するために様々な哺乳類細胞培養系を採用することができる。好適な哺乳類宿主細胞株の実施例としては、サル腎臓の細胞COS-7株(Gluzman(1981)Cell 23:175に記述される)、および適切なベクターを発現する能力を有する他の細胞株(例えば、CV-1/EBNA(ATCC CRL 10478)、L細胞、C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株を含む)が挙げられる。特定の選択スキームまたは増幅スキームのために開発された他の細胞株も、本明細書に提供される方法および組成物で有用であることになる。本発明の一実施形態では、細胞はK1と指名されたCHO細胞株(すなわち、CHO K1細胞)である。組み換え型タンパク質の大量生産の目標を達成するために、宿主細胞株は適切な事例でバイオリアクター媒体に予め適合するべきである。
【0123】
いくつかのトランスフェクションプロトコルが当該技術分野で既知であり、またKaufman(1988)Meth.Enzymology 185:537で検討されている。選ばれたトランスフェクションプロトコルは、宿主細胞タイプおよびGOIの性質に依存することになり、そしてこれを規定通りの実験に基づいて選ぶことができる。任意のかかるプロトコルの基本的な要件は、まず目的タンパク質をコードするDNAを好適な宿主細胞の中へと導入すること、そして次いで異種DNAを相対的な安定した発現的な様式で組み込んだ宿主細胞を識別および単離することである。
【0124】
哺乳類細胞の中へ異種DNAを導入するために有用なある一定の試薬としては、Lipofectin(商標)ReagentおよびLipofectamine(商標)Reagent(Gibco BRL、米国メリーランド州Gaithersburg)が挙げられる。これらの試薬は両方とも脂質-核酸複合体(またはリポソーム)を形成するために使用される市販されている試薬であり、培養した細胞に適用されたとき、細胞内への核酸の摂取を容易にする。
【0125】
選ばれたトランスフェクションプロトコルおよびその中で使用するために選択された要素は、使用される宿主細胞のタイプに依存することになる。当業者は多数の異なるプロトコルおよび宿主細胞を承知しており、そして使用される細胞培養系の要件に基づいて所望のタンパク質の発現のために適切な系を選択することができる。さらなる態様では、本発明は、抗体、二重特異性抗体、キメラ型抗体、ScFv、抗原結合タンパク質、またはFc融合タンパク質を含むがこれに限定されないポリペプチドをコードする発現ベクターに関する。かかる発現ベクターは、本発明の方法および組成物を使用するポリペプチドの組み換え型生成のために使用されてもよい。
【0126】
本発明の他の特徴は、本発明の例示のために与えられ、かつその限定を意図しない例示的な実施形態の以下の記述の過程で明らかになるであろう。
【実施例0127】
以下の実施例は、本明細書に記述される方法および組成物をどのように作製し使用するかを当業者に提供するために提示されており、発明者がその発明として見なすものの範囲を制限することを意図していない。使用した数字(例えば、量、温度等)に対する正確さを確保するために努力がなされたが、一部の実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。別途示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は大気圧でまたは大気圧付近での℃(摂氏)である。
【0128】
(実施例1)
トランスフェクタント細胞発現GPTの選択効率
修飾したCHO K1細胞を、CHO-GPT(配列番号:2)、ヒトGPT(配列番号:12)を含有するプラスミドベクター、またはハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(Hpt、ハイグロマイシン耐性遺伝子)を含有するプラスミドベクターを用いて形質移入し、例えば、選択マーカー遺伝子(CHO-GPTまたはhpt)をIRES配列を介してそれらのそれぞれのベクター内で下流eGFP遺伝子に転写的にリンクした。例えば、5’~3’方向に以下の遺伝子配列を含有するように各プラスミドを構築した。Lox部位、SV40後期プロモーター、CHO-GPT(またはHpt)のいずれか、IRES、強化した緑色蛍光タンパク質(eGFP)、および第2のLox部位。精製した組み換え型プラスミドをCreリコンビナーゼを発現するプラスミドと一緒に修飾したCHO宿主細胞株へと形質移入し、この細胞株は、転写的に活性の遺伝子座において、5’~3’に、lox部位、YFP、および第2のlox部位を含有した。その結果として、フローサイトメトリーによって宿主CHO細胞を緑色陽性細胞または黄色陰性細胞として単離することができる。eGFP(GPTまたはhpt遺伝子によって転写的に調整された)を発現する組み換え型プラスミドが、Creリコンビナーゼを発現するプラスミドと一緒に形質移入されたとき、Creリコンビナーゼによって媒介された組み換えは結果として、lox部位の置き換えを含有する染色体の遺伝子座において、GPT/eGFPカセットの部位特異的な組み込みをもたらし、YFP遺伝子を生じる(すなわち緑色陽性細胞)。eGFPがランダムに組み込む場合、緑色陽性および黄色陽性細胞の両方がもたらされることになる。
【0129】
細胞集団は、表2に概要を示すように、0、1μg/mL、2.5μg/mL、もしくは5μg/mLのツニカマイシン(Tn)で、または400μgハイグロマイシン(Hyg)でのいずれかでインキュベートされる。観察された組み換え型集団(ORP)は蛍光活性化細胞選別(FACS)解析によって測定された。細胞の各集団を定量するために細胞が選別され、またGFPのみを発現し、YFPを発現しない細胞に対して選択効率が計算された(図4または図5)。
【0130】
選択効率(GFPを発現する生存している細胞の集団のパーセント)がTnまたはHygのいずれかに対して耐性を示す細胞プールの間で比較された(表2)。
【表2】
【0131】
ツニカマイシン選択がハイグロマイシン選択と同じぐらい効率的であることが観察された。CHO-GPTとヒトGPTとの両方は、1μg/mLまたは2.5μg/mLのツニカマイシンの存在下で組み込み体の選択において効率的であった。
【0132】
(実施例2)
遺伝子産物の増幅
ツニカマイシンのGPT発現系に対する濃度の増加を適用することによって漸増選択が行われた。CHO K1細胞は、上記のようにCHO-GPT遺伝子(配列番号:2)を含有するプラスミドベクターを用いて形質移入された。プラスミドは、5’~3’方向に、第1のLox部位、SV40後期プロモーター、CHO-GPT遺伝子、IRES、eGFP、および第2のLox部位を含有する。CRE-lox部位は、目的遺伝子のゲノムへの組み込みを指示し、結果として細胞当たり少なくとも1つのGPT挿入を有する細胞の安定したトランスフェクタントプールが得られる。(上に示したように、ランダム組み込みに起因してより多くの組み込み体が生じうる)。CHO細胞は当初1μg/mLのツニカマイシン(Tn)の存在下で培養された。次いで、トランスフェクタントは安定したプール(細胞プール2と名付けられる)から選択され、これに続いて1μg/mL、2.5μg/mL、または5μg/mLのTnの存在下で拡張された。eGFPの強化した発現の能力(多重コピー)を有する細胞集団を識別するために選択ラウンドが実施された。ランダム組み込みイベントは2.5μg/mLまたは5μg/mLのTnの存在下で大幅に増加した。
【0133】
標準的なqPCR方法を使用してCHO GPT、eGFP、またはmGapdh(正規化対照)のいずれかの遺伝子産物のコピー数を測定した。2.5μg/mLのTnでさらにインキュベートした1μg/mL Tn耐性プールからの細胞中のeGFPのコピー数は、1μg/mLのTnでさらにインキュベートした1μg/mL Tn耐性プールからの細胞中のeGFPのコピー数の少なくとも2倍である。1μg/mLのTn処置したプールが5μg/mLのTnでさらにインキュベートされたとき、遺伝子コピー数はさらに増加する。eGFPに対する遺伝子コピー数の増加はCHO-GPTの遺伝子コピーの増加に相関する。(図6Aおよび図6Bを参照のこと。)
【0134】
遺伝子コピー数の増加が、タンパク質発現の増加につながるかどうかを判定するために、Tnの選択の複数のラウンド、すなわち、1、2.5、または5μgのTnで処置された、GPTおよびeGFPを発現する同一の細胞プールについて、FACSによって平均蛍光強度(MFI)を測定した(例えば、図6Bのサンプル7、8、および9を参照のこと)。これらの細胞プールに対するeGFP発現の比較が表3に表される。
【0135】
5μgのTnでの選択の第2ラウンドを受けたGPTを発現する細胞プールは、結果としてeGFP生成について、1μgのTn処置と比較して生産性出力がまさに2.5倍より大きく、また2.5μgのTn処置と比較して生産性出力が1.5倍より大きい(表3)。
【表3】
【0136】
いかなる一つの理論にも束縛されるものではないが、Tnの濃度の漸増的な増加は細胞に対する選択的な圧力を制御された様式で増幅し、ひいては生産的な出力を増加する。
【0137】
以下に記述されるさらなる実験でも、グリコシル化パターン上でのTn選択の効果を試験するためにTn耐性発現ベクターが採用される。
【0138】
(実施例3)
例示的な二量体タンパク質の発現およびグリコシル化プロファイル
「トラップ」タンパク質(Fc融合タンパク質-1、以下FcFP1と記載する)を発現するCHO細胞はGPTを含有する発現ベクターで形質移入される。プラスミドは、5’~3’方向に、Lox部位、SV40後期プロモーター、Tn耐性遺伝子(CHO-GPT)、IRES eGFP、SV40 polyA、および第2のLox部位を有する。GPT選択マーカーの選択のために1μg/mL Tnまたは5μg/mL Tnが使用された。選択されたプール細胞は、血清を含まない生成媒体中の懸濁液培養内で拡張される。GPTトランスフェクションはFACS解析によるeGFPの発現によって確認される。選択されたプールから回収されたペレットはGPT発現に対するコピー数解析のために送られ、また異なる濃度のツニカマイシンを用いて選択されたプール内でのFcFP1の発現レベルを判定するために12日間生産性アッセイが設定された。
【0139】
FcFP1は、豊富なグリコシル化部位を有する、その複雑なグリコシル化パターンのために選択された。グリコシル化プロファイルを判定するために、FcF1タンパク質を発現する細胞は、細胞培養物内で、標準プロトコル(Tnなし)下、または表4に表すTnの処置条件の下で拡張され、次いでタンパク質は単離および精製された。
【表4】
【0140】
糖タンパク質の各ロットに対してTnがグリコシル化プロファイルに悪影響を有するかどうかを判定するために、HPLCおよび蛍光アントラニル酸(AA)タグ(Anumula,and Dhume,Glycobiology,8(7):685-694,1998)についての周知の方法に基づくクロマトグラフィーを使用して詳細なグリカン解析が実施された。生産ロットは、タンパク質の治療的な許容できるバッチを代表する参照標準とも比較された。代表的なグリカン解析を図7A図7Dに示す。参照ロットと比較すると、各ロットは同一の数のピーク、相対的な形状、および相対的な強度を一貫して生成する。各クロマトグラムの重ね合わせ(図8)は、特有のまたは異常なピークが明らかにされることがなかったことを示している。
【0141】
FcFP1タンパク質のためのオリゴ糖プロファイリングが、周知のHPLC方法によって参照標準ロットに対して行われた。FcFP1トラップタンパク質ロットに対してシアル化のレベルが測定され、かつ各ロットに対してZ番号が計算された(3回の反復)。Z番号はロット間の変化の測定を代表する。Z番号は、ピークの相対的な数だけでなく、各ピークの相対的な形状および強度を考慮に入れる。例えば、図7A図7Dの0SA、1SA、2SA、3SA、および4SAの各々のピークの面積は表5に示すように定量される。
【表5】
【数1】
【0142】
各ロットのために計算されたZ番号は参照ロットと比較して許容できる範囲内であり、したがって各タンパク質ロットは治療用分子と同一の材料を達成していると理解される。Tnの存在はN-リンクした糖タンパク質グリコシル化に悪影響を有することが既知であるため、Tnによる選択圧力の増加の条件を仮定するとタンパク質生成が信頼性があり、かつ一貫しているだけでなく、生産性が高いものになることは予想外であった。
【0143】
本発明は、趣旨またはその本質から逸脱することなく他の特定の実施形態で具現化されてもよい。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
【配列表】
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