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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016647
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】衝突回避支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118931
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】軍司 健太
(72)【発明者】
【氏名】松田 聡
(72)【発明者】
【氏名】深澤 至貴
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 真也
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】自車両に対して直交する車線(自車両と交差する道路)を走行する物体に対する衝突回避支援において、制動の過剰作動や急作動を抑止することで、機能性やユーザビリティを向上することができる衝突回避支援装置を提供する。
【解決手段】所定の減速度または制動力により自車両を減速したときに、自車両が衝突予測地点に到達するまでの予測時間である衝突予測地点到達時間を演算し、物体が、物体の予測進路(物標予測進路)と自車両の予測進路(自車予測進路)との交差領域(予測交差領域)の通過に要する予想時間である予測通過時間と、衝突予測地点到達時間とに基づいて、制動作動判定閾値を変更(大きく、または、小さく)する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の予測進路と、前記自車両と交差する道路に存在する物体の予測進路を演算し、
前記自車両の予測進路と、前記物体の予測進路から、前記自車両と前記物体との衝突余裕時間および衝突予測地点を演算し、
前記衝突余裕時間、または前記衝突余裕時間で前記自車両が走行する距離が制動作動判定閾値以下の場合、前記物体との衝突を回避するために所定の減速度または制動力により前記自車両を減速する衝突回避支援装置であって、
前記衝突回避支援装置は、
前記所定の減速度または制動力により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である衝突予測地点到達時間を演算し、
前記物体が、前記物体の予測進路と前記自車両の予測進路との交差領域の通過に要する予想時間である予測通過時間と、前記衝突予測地点到達時間とに基づいて、前記制動作動判定閾値を変更することを特徴とする衝突回避支援装置。
【請求項2】
前記衝突回避支援装置は、
第1減速度または第1制動力により前記自車両を減速する第1減速制御部と、前記第1減速度または第1制動力よりも小さい第2減速度または第2制動力により前記自車両を減速する第2減速制御部と、を備え、
前記第1減速制御部により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である第1減速時衝突予測地点到達時間を演算し、
前記予測通過時間が、前記第1減速時衝突予測地点到達時間より小さい場合、前記制動作動判定閾値を小さくすることを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項3】
前記衝突回避支援装置は、
第1減速度または第1制動力により前記自車両を減速する第1減速制御部と、前記第1減速度または第1制動力よりも小さい第2減速度または第2制動力により前記自車両を減速する第2減速制御部と、を備え、
前記第2減速制御部により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である第2減速時衝突予測地点到達時間を演算し、
前記予測通過時間が、前記第2減速時衝突予測地点到達時間より小さい場合、前記制動作動判定閾値を大きくすることを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項4】
前記衝突回避支援装置は、前記自車両の車速が、所定の自車速閾値より大きい場合、前記制動作動判定閾値の変更を許可することを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項5】
前記衝突回避支援装置は、前記物体の車速が、所定の物体車速閾値より大きい場合、前記制動作動判定閾値の変更を許可することを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項6】
前記衝突回避支援装置は、
前記自車両の予測進路と、前記物体の予測進路に基づいて、前記衝突予測地点での前記自車両と前記物体の重なりの比率である予測ラップ率を演算し、前記予測ラップ率に基づいて前記予測通過時間を算出することを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項7】
前記衝突回避支援装置は、前記物体の速度または前記物体と前記自車両との距離の少なくとも一つに基づいて、前記予測通過時間に加算する時間を演算することを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【請求項8】
前記衝突回避支援装置は、前記自車両を減速しているときに、前記物体の車速に応じて、前記自車両の減速度または制動力を大きくすることを特徴とする、請求項1に記載の衝突回避支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周辺の対象物との衝突を回避または衝突の被害を軽減するために車両の運転操作を支援する衝突回避支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点における衝突回避支援装置の一例として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の衝突回避支援装置では、自車両と衝突することが予測される物体(対象物)と衝突するまでの時間である衝突余裕時間を基に、自車両が交差点に進入することなく停車できるような位置で制動を作動することで当該物体との衝突の回避を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-179729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の衝突回避支援装置のように衝突余裕時間を基に自車両が交差点に進入することなく停車できるような位置で制動を作動する場合には、自車速度が速くなるにつれて停車するまでに要する距離が長くなるため、自車両が衝突することが予測される物体から離れた位置で制動を作動する。
【0005】
しかしながら、自車両から前記物体までの距離が長くなるにつれて、センサにおける前記物体の認識精度と、自車両と前記物体の進路の予測精度が低下し、自車両と物体が衝突するかどうかの予測精度が低下する。そのため、過剰に急制動が作動する場合があり、運転手に煩わしさや負担を与えるため、機能性やユーザビリティに課題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、自車両に対して直交する車線(自車両と交差する道路)を走行する物体に対する衝突回避支援において、制動の過剰作動や急作動を抑止することで、機能性やユーザビリティを向上することができる衝突回避支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。すなわち、自車両の予測進路と、前記自車両と交差する道路に存在する物体の予測進路を演算し、前記自車両の予測進路と、前記物体の予測進路から、前記自車両と前記物体との衝突余裕時間および衝突予測地点を演算し、前記衝突余裕時間、または前記衝突余裕時間で前記自車両が走行する距離が制動作動判定閾値以下の場合、前記物体との衝突を回避するために所定の減速度または制動力により前記自車両を減速する衝突回避支援装置であって、前記衝突回避支援装置は、前記所定の減速度または制動力により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である衝突予測地点到達時間を演算し、前記物体が、前記物体の予測進路と前記自車両の予測進路との交差領域の通過に要する予想時間である予測通過時間と、前記衝突予測地点到達時間とに基づいて、前記制動作動判定閾値を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車両に対して直交する車線(自車両と交差する道路)を走行する物体に対する衝突回避支援において、制動の過剰作動や急作動を抑止することで、機能性やユーザビリティを向上することができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明が適用された衝突回避支援装置の一実施形態を搭載した車両の概略構成図の一例。
図2】本発明が適用された衝突回避支援装置の一実施形態の機能ブロック図の一例。
図3】制動の作動有無を判定するために用いる閾値を短くした場合の警報制動作動判定部のフローチャート。
図4】予測ラップ率を基にした予測通過時間の算出の一例。
図5】制動の作動有無を判定するために用いる閾値を短くした場合に時間経過における衝突余裕時間と物標横位置と物標縦位置の変化量の一例。
図6】制動の作動有無を判定するために用いる閾値を長くした場合の警報制動作動判定部のフローチャート。
図7】制動の作動有無を判定するために用いる閾値を長くした場合に時間経過における衝突余裕時間と物標横位置と物標縦位置と自車両の減速度の変化量の一例。
図8】制動の作動有無を判定するために用いる閾値(制動作動判定閾値ないし衝突余裕時間走行距離閾値)と、衝突余裕時間で自車両が走行する距離との関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返し説明は省略する場合がある。
【0012】
図1は、本発明に係る衝突回避支援装置の一実施形態を搭載した車両を概略的に示したものである。衝突回避支援装置11は、車両(自車両)10に搭載され、車両10の運転操作を支援(本例では、自車両に対して直交する車線(自車両と交差する道路)を走行する物体に対する衝突回避支援)する。
【0013】
図示実施形態の車両10は、車両前方に搭載された前方カメラ2F(以下、単にカメラ2と記載する場合がある)、レーダー3、右前車輪4FRの車輪速を検知する右前車輪速センサ5FR、右後車輪4RRの車輪速を検知する右後車輪速センサ5RR、左後車輪4RLの車輪速を検知する左後車輪速センサ5RL、左前車輪4FLの車輪速を検知する左前車輪速センサ5FL、舵角センサ6、ヨーレートセンサ7、メータ8、ブザー9、衝突回避支援装置11、制動制御装置12等から構成される。
【0014】
前方カメラ2Fはレンズと撮像素子を備え、自車両10の周辺環境を撮像できるように適切に配置されている。前方カメラ2Fの撮像画像は衝突回避支援装置11に送信されて画像処理が行われる。衝突回避支援装置11では、前方カメラ2Fから送信された撮像画像を基に、自車両10周辺の対象物(以下、適宜物標と記載する)の物標種別を特定する。物標種別の例としては、自動車、自転車、歩行者、二輪車、走行路、白線や黄色線などの車線、交通信号、交通標識、障害物などがある。本実施形態では、自車両10の周辺環境を撮像するために、カメラ2を1つ配置したが、複数配置してもよい。カメラ2は、単眼カメラでもステレオカメラでもよく、カメラの種類やカメラに備わる機能は必要に応じて変更してもよい。
【0015】
レーダー3は、車両10の4隅に設置されており、各レーダー3は、例えば電磁波を発し、上記電磁波が周囲の物標から反射した反射波を受信することにより、自車両10の周辺の物標の位置、および速度を測定し、その測定結果を衝突回避支援装置11に送信する。レーダー3は、例えばミリ波レーダーやレーザーレーダーを用いてもよいし、レーダーの代わりに超音波センサを用いてもよい。更に、複数のセンサ類を組み合わせて用いて、物標の速度、および位置を測定してもよい。
【0016】
本実施形態では、自車両10の周辺の物標の情報を取得する手段の一例として、カメラ2とレーダー3を組み合わせて用いているが、例えばレーダー3の代わりにライダーを組み合わせてもよいし複数のセンサを用いてもよい。
【0017】
自車両10の車体の前後左右には、右前車輪4FR、右後車輪4RR、左後車輪4RL、左前車輪4FLが配置されており、それら各車輪4FR、4RR、4RL、4FLには、右前車輪速センサ5FR、右後車輪速センサ5RR、左後車輪速センサ5RL、左前車輪速センサ5FLが設けられている。各車輪速センサ5FR、5RR、5RL、5FLはそれぞれの車輪速を検知し、各車輪速を衝突回避支援装置11に送信する。衝突回避支援装置11は、前記各車輪速の情報を基に自車両10の速度を演算する。以下、特に区別しない場合、右前車輪4FR、右後車輪4RR、左後車輪4RL、左前車輪4FLを車輪4と記載し、右前車輪速センサ5FR、右後車輪速センサ5RR、左後車輪速センサ5RL、左前車輪速センサ5FLを車輪速センサ5と記載する。
【0018】
舵角センサ6は、自車両10のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出するセンサであり、舵角センサ6で検出した操舵角は衝突回避支援装置11に送信される。
【0019】
ヨーレートセンサ7は、自車両10のヨーレートを検出し、ヨーレートセンサ7で検出したヨーレートは衝突回避支援装置11に送信される。
【0020】
メータ8は、例えば衝突回避支援装置11が自車両10と物標が衝突する可能性が高いと判断した場合に、運転手に対して衝突の可能性が高いことを報知するための警告画像を表示する。本実施形態では、警告画像を表示する手段の一例としてメータ8を配置したが、メータ8の代わりに例えばカーナビゲーションシステムの一部であってもよいし、ヘッドアップディスプレイを用いて画像を表示してもよい。
【0021】
ブザー9は、例えば衝突回避支援装置11が自車両10と物標が衝突する可能性が高いと判断した場合に、運転手に対して衝突の可能性が高いことを報知するための警告音を鳴動する。本実施形態では、警告音を鳴動する手段の一例としてブザー9を配置したが、ブザー9の代わりとして例えばカーナビゲーションシステムの一部であってもよいし、スピーカーから警告音を鳴動してもよい。
【0022】
衝突回避支援装置11は、自車両10と物標との衝突を回避または衝突の被害を軽減する衝突回避支援動作を実行可能な構成とする。衝突回避支援装置11は、上述した複数のセンサから受信した情報を基に、メータ8およびブザー9、および制動制御装置12を作動するための制御信号を出力可能な構成となっている。本実施形態では、衝突回避支援装置11は、例えば自車両10に搭載されるECU(Electric Control Unit)として構成されており、衝突回避支援動作を実現するために、メータ8に警告画像を表示させることや、ブザー9に警告音を鳴動させること、または制動制御装置12を介して自動で制動を作動させることの何れかまたは全てを支援する。
【0023】
制動制御装置12は、自車両10のブレーキ装置(不図示)を制御する。制動制御装置12は、衝突回避支援装置11から出力された制御信号に応じて、ブレーキ装置による制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどのブレーキアクチュエータを含んでいる。
【0024】
図2は、図1に示す衝突回避支援装置11の内部の機能ブロック構成を示したものである。このような機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらを組み合わせたものによって実現される。衝突回避支援装置11の各機能は、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが実行することによって実現される。RAM(Random Access Memory)は、プロセッサが実行するプログラムによる演算の中間データ等を含むデータを格納する。
【0025】
図2に示すように、衝突回避支援装置11は、基本的に、物標情報統合処理部201、自車両情報演算部202、警報制動作動判定部203、衝突警報算出部204、制動指示値演算部205を備える。
【0026】
物標情報統合処理部201では、カメラ2およびレーダー3のそれぞれから取得した物標の車両や自転車、歩行者といった物標種別、および現在の物標の位置と速度情報の形式や座標系を統一する。本実施形態で使用する座標系は、一例として、自車両10の前端の中心を原点とし、自車両10の全長方向を縦方向、全幅方向を横方向とした物標の現在の位置(以下、適宜物標現在位置と記載する)と物標の速度(以下、適宜物標速度と記載する)を決定する。同一の物標に対して上記の複数のセンサで検知した場合は、カメラ2およびレーダー3の前後、左右方向の誤差を考慮して、物標現在位置と物標速度を決定してもよい。また、前記物標速度から物標の加速度などの警報制動作動判定部203に必要な物標情報を算出する。
【0027】
自車両情報演算部202では、車輪速センサ5から取得した自車の速度(以下、適宜自車速度と記載する)と、舵角センサ6から取得した自車の操舵角(以下、適宜自車操舵角と記載する)と、ヨーレートセンサ7から取得した自車のヨーレート(以下、適宜自車ヨーレートと記載する)に基づいて、警報制動作動判定部203にて自車進路を予測するために必要な自車両10の旋回半径を演算する。
【0028】
警報制動作動判定部203では、物標情報統合処理部201から取得した物標現在位置、物標速度、物標の加速度と、前記した複数センサおよび自車両情報演算部202から取得した自車両10の自車位置、自車速度、自車加速度、自車操舵角、自車ヨーレート、自車両の旋回半径を基に、自車両10と物標の進路を予測する。前記予測した自車両10の進路(以下、適宜自車予測進路と記載する)と前記予測した物標の進路(以下、適宜物標予測進路と記載する)を基に、自車両10と物標の衝突が予測される時間(以下、適宜衝突余裕時間と記載する)を算出する。衝突余裕時間を基に、自車両10と物標の衝突が予測される地点(以下、適宜衝突予測地点と記載する)を算出し、自車両10と物標が衝突する可能性の有無を判定(以下、適宜衝突判定と記載する)する。自車速度を基に、制動の作動有無を判定するために用いる閾値(以下、適宜制動作動判定閾値と記載する場合がある)を算出し、算出した閾値(制動作動判定閾値)と衝突余裕時間の比較結果と衝突判定の結果から、物標との衝突が予測される時間に応じた警報の作動と、制動の作動を要求する。
【0029】
衝突警報算出部204では、警報制動作動判定部203から取得した前記警報の作動要求を基に、メータ8に警告画像の表示の要求、またはブザー9に警告音の鳴動の要求、または警告画像の表示の要求と警告音の鳴動の要求の両方を出力する。
【0030】
制動指示値演算部205では、警報制動作動判定部203から取得した前記制動の作動要求を基に、物標との衝突を回避するために必要な制動指令値を制動制御装置12に出力する。制動指示値演算部205は、第1減速制御部206または第2減速制御部207、または第1減速制御部206と第2減速制御部207の両方を有している。第1減速制御部206は第1減速度または第1制動力を制動制御装置12に出力し、第2減速制御部207は第2減速度または第2制動力を制動制御装置12に出力する。第1減速制御部206の第1減速度または第1制動力、第2減速制御部207の第2減速度または第2制動力は、車両、周辺環境などに応じて予め設定された値であり、第2減速度または第2制動力は、第1減速度または第1制動力よりも小さな値とする。
【0031】
図3は、本発明の実施形態における衝突回避支援において、警報制動作動判定部203内で算出した閾値(制動作動判定閾値)を短くし、第1減速度または第1制動力によって衝突を回避する時の警報制動作動判定部203のフローチャートの一例である。
【0032】
図3において、ステップS401では、物標情報統合処理部201で取得した物標位置、物標速度と、前記した複数センサおよび自車両情報演算部202から取得した自車速度、自車ヨーレートを基に、自車予測進路と物標予測進路を算出する。自車予測進路と物標予測進路は、物標の加速度、自車の加速度のうち、少なくとも1つを考慮して算出してもよい。
【0033】
ステップS402では、自車予測進路と物標予測進路を基に衝突余裕時間を算出する。衝突余裕時間は、現在の自車速度と物標速度で走行した時に、自車両10から物標までの縦方向の距離(以下、適宜物標現在縦距離と記載する)が0になるまでに経過する時間である。
【0034】
ステップS403では、自車速度と自車ヨーレートから、衝突余裕時間後の衝突予測地点における自車の縦方向の位置と横方向の位置を算出し、物標速度と物標現在位置から、衝突余裕時間後の衝突予測地点における物標の縦方向の位置と横方向の位置を算出する。
【0035】
ステップS404では、衝突予測地点における自車両10の位置を基に、衝突判定を実施する。判定方法の一例としては、衝突予測地点における自車両10の前端の位置と衝突予測地点における物標の側面の位置より自車両10と物標が重なる部分があるかを判定し、重なる部分がある場合は衝突予測地点において衝突する可能性があると判断し、衝突判定を成立させてステップS405に進む。衝突判定が成立しない場合は、自車両10が物標に衝突する可能性がないと判断し、ステップS405からステップS411を実施しない(制動の作動を要求しない)。
【0036】
ステップS405では、自車両10が自車速度で走行としているときに、第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した時に、自車両10が停車するまでに必要な距離(以下、適宜自車停車移動距離と記載する)を算出する。自車両10が自車停車移動距離を自車速度で走行した時に経過する時間を、衝突を回避するために制動の作動が必要かどうかかを判定するために用いる閾値(制動作動判定閾値)とする。本実施形態では、制動作動判定閾値を衝突予測時間と比較するために時間としたが、時間の代わりに距離にしても良く、距離にした場合は前記自車停車移動距離を制動作動判定閾値とする。
【0037】
ステップS406では、自車予測進路と物標予測進路を基に、物標が自車の進路に対して交差する道路を走行しているかを判定する。物標が自車の進路に対して交差する道路を走行している場合は、判定を成立させてステップS407に進み、判定が成立しない場合はステップS411に進む。
【0038】
ステップS407では、物標が物標予測横位置に到達し、到達後に自車予測進路と物標予測進路が交差する領域(以下、適宜予測交差領域と記載する)を物標が通過するまでに経過する時間(以下、適宜予測通過時間と記載する)を算出する。予測交差領域の長さは自車幅と物標全長を基に算出するが、自車幅と物標全長に加えて、自車速度や物標速度、自車両10と物標との位置関係、センサの検知精度の誤差等を考慮した余裕距離を考慮してもよい。自車速度や物標速度、自車両10と物標との位置関係によって、衝突予測地点での自車両10と物標の重なりの比率(以下、適宜予測ラップ率と記載する)が変わるため、予測ラップ率を算出し、算出した予測ラップ率を基に予測通過時間を算出してもよい。
【0039】
図4により、交差点道路100における自車速度と物標速度が等しい時に、自車両10の現在の位置から物標現在位置までの横方向の距離が長い場合(図4の(A)列)と横方向の距離が短い場合(図4の(B)列)におけるそれぞれの衝突予測地点での自車両10と物標の予測ラップ率について説明する。501は自車の現在の位置を示している。502と602は物標現在位置を示している。物標現在位置502は物標現在位置602と比較して、自車両10から離れた横位置にいるとする。503は、ステップS403で算出した衝突予測地点における自車両10の位置を示しており、504は、物標現在位置502の場合における衝突予測地点における物標の位置を示しており、604は、物標現在位置602の場合における衝突予測地点における物標の位置を示している。101はステップS407で算出した予測交差領域を示している。701は、物標現在位置から衝突予測地点までの距離を示しており、物標の速度と衝突余裕時間が等しい場合は物標現在位置が異なっていても同じ距離となる。702は、衝突予測地点における物標の位置504から物標が予測交差領域101の通過に必要な距離を示している。703は、衝突予測地点における物標の位置604から物標が予測交差領域101の通過に必要な距離を示している。505は、衝突予測地点における自車両10と物標が重なっている部分の長さ(比率)である予測ラップ率を示している。605も、衝突予測地点における予測ラップ率を示している。物標現在位置602と比較して、物標現在位置502が自車両10から離れた横位置にいる。そのため、物標速度が同じ場合では505の長さよりも605の長さは長くなるため、物標現在位置502における予測ラップ率は物標現在位置602における予測ラップ率よりも小さくなる。同様に、物標速度が同じ場合では702の距離よりも703の距離の方が短くなるため、物標現在位置602の物標の予測通過時間は、物標現在位置502の物標の予測通過時間よりも短くなる。
【0040】
このように、物標速度が同じ場合でも予測ラップ率によって予測通過時間が異なるため、算出した前記予測ラップ率を基に予測通過時間を算出することで、自車両10と物標の位置関係に応じた予測通過時間の算出を可能にする。この予測通過時間を基にステップS410では制動の作動有無を判定する閾値(制動作動判定閾値)を変更するため、より自車両10から物標までの距離が短い領域で制動を作動することで、制動の過剰作動を抑止することができる。
【0041】
ステップS407では、物標速度が速い場合や、自車両10から物標までの距離が長い場合は、センサによって検知した物標の速度や位置などの検知情報に誤差が含まれる。そのため、センサで検知した情報を基に算出した予測通過時間が、物標の実際の位置を基に算出した予測通過時間よりも短くなる場合には、物標が予測交差領域を通過するまでの時間を確保できず、自車両10が物標に衝突する可能性がある。そのため、物標速度が所定速度より速い場合、または物標現在縦距離が所定距離より長い場合、または物標速度が所定速度より速い場合と物標現在縦距離が所定距離より長い場合の両方を満たす場合は、予測通過時間に所定時間を加算することで、自車両10が物標に衝突することを防ぐ。
【0042】
所定速度と所定距離と所定時間(予測通過時間に加算する時間)は、自車両10と物標の速度や位置関係によって可変にしてもよい。換言すると、所定速度と所定距離と所定時間(予測通過時間に加算する時間)は、自車両10と物標の速度や位置関係に基づいて演算してもよい。自車両10が制動を作動した後に物標が減速することで自車両10が物標に衝突することを防ぐために、予測通過時間は現在の物標の加速度を考慮して算出してもよいし、予め物標が一定の減速度で減速することを考慮して予測通過時間に余裕時間を加えてもよい。
【0043】
ステップS408では、自車速度と現在の自車位置から、第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって自車両10を減速した時に、自車両10が衝突予測地点に到達するまでに経過する時間(以下、適宜衝突予測地点到達時間または第1減速時衝突予測地点到達時間と記載する)を算出する。自車両10と衝突予測地点までの距離が自車停車移動距離よりも長い場合は、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した場合に衝突予測地点に到達する前に停車するため、一例として衝突予測地点到達時間は、予測通過時間よりも大きくなるような値に設定する。
【0044】
ステップS409では、予測通過時間と第1減速時衝突予測地点到達時間を基に、ステップS405で算出した制動作動判定閾値の変更の要否を判定(以下、適宜閾値変更判定と記載する)する。衝突予測地点到達時間が予測通過時間よりも長い場合は(換言すると、予測通過時間が衝突予測地点到達時間より小さい場合は)、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速後に衝突予測地点に到達した時には、物標が既に予測交差領域101を通過しているため、制動作動判定閾値を短くしても自車両10が物標に衝突することがないと判断し、ステップS410に進む。衝突予測地点到達時間が予測通過時間よりも短い場合は(換言すると、予測通過時間が衝突予測地点到達時間より大きい場合は)、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速して衝突予測地点に到達した時に、物標が予測交差領域101を通過していないため、制動作動判定閾値を短くしないと判断し、ステップS411に進む。
【0045】
自車速度や物標速度を基にした判定を、前記閾値変更判定に加えてもよい。自車速度が遅い場合は制動作動判定閾値が短く、制動作動判定閾値をさらに短くすると、自車両10が物標により近い位置で制動を作動することになり、物標との衝突の可能性が高まってしまう可能性がある。そのため、自車速度が所定値(所定の自車速閾値)よりも遅い場合は制動作動判定閾値を変更しない。物標速度が遅い場合は、物標が予測交差領域内で停車する場合が考えられる。そのため、物標速度が所定速度(所定の物体車速閾値)よりも遅い場合は制動作動判定閾値を変更しない。言い換えると、自車速度が所定値以下の場合、または、物標速度が所定速度以下の場合、制動作動判定閾値の変更を禁止し、自車速度が所定値より大きい場合、および、物標速度が所定速度より大きい場合、制動作動判定閾値の変更を許可する。
【0046】
ステップS410では、ステップS405で算出した制動作動判定閾値を所定時間短く(小さく)する。所定時間は、自車両10と物標の速度、位置関係に応じて可変とする。
【0047】
図5では、一例として交差点道路100においてステップS410で制動作動判定閾値を変更しない場合(図5の(A)列)と変更した場合(図5の(B)列、(C)列)に、制動を作動した時の自車両10と物標の位置関係と、時間経過における衝突余裕時間と物標現在位置の横位置と縦位置の変化を示している。自車現在位置801は自車両10の現在の位置を示しており、物標現在位置802は物標現在位置を示している。自車減速時予測位置803は、自車両10が自車現在位置801で第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した時に、衝突予測地点到達時間後の自車両10の位置を示しており、物標減速時予測位置804は、物標現在位置802から物標速度が変わらなかった場合における衝突予測地点到達時間後の物標の位置を示している。
【0048】
制動作動判定閾値805は、ステップS405で算出した制動作動判定閾値を示しており、制動作動判定閾値806と制動作動判定閾値807は、ステップS410で所定時間短くした時の制動作動判定閾値を示しており、制動作動判定閾値806は、制動作動判定閾値807より大きな値とする。
【0049】
物標縦距離850(図5の(A)列)は、衝突余裕時間が制動作動判定閾値805よりも小さくなり、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速し始めた時の自車両10と物標間の縦距離を示している。
【0050】
物標縦距離851(図5の(B)列)は、衝突余裕時間が制動作動判定閾値806よりも小さくなり、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速し始めた時の自車両10と物標間の縦距離を示している。
【0051】
物標縦距離852(図5の(C)列)は、衝突余裕時間が制動作動判定閾値807よりも小さくなり、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速し始めた時の自車両10と物標間の縦距離を示している。
【0052】
減速開始タイミング875は、自車両10が第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速し始めた時のタイミングを示している。物標交差領域通過タイミング876は、物標が予測交差領域101を通過した時のタイミングを示している。
【0053】
自車両到達タイミング877は、自車両10が自車現在位置801において、第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速後に衝突予測地点に到達した時のタイミングを示している。衝突予測地点到達時間878は、自車現在位置801における衝突予測地点到達時間を示しており、予測通過時間879は、物標現在位置802における予測通過時間を示している。
【0054】
物標縦距離850よりも、物標縦距離851の方が短くなるため、ステップS410において制動作動判定閾値を短くすることで自車両10がより物標に接近した位置で制動を作動することになり、センサにおける認識精度と自車両10と物標の進路の予測精度が向上することにより、制動の過剰作動を抑止して機能性が向上する。
【0055】
ただし、ステップS410で制動作動判定閾値から短くする所定時間には上限を設定する。図5の(C)列に示すように、制動作動判定閾値807を基に制動を作動した場合では、衝突予測地点到達時間878と予測通過時間879が同じであるため、自車両10が衝突予測地点に到達した時に物標が予測交差領域101を通過することになる。
【0056】
制動作動判定閾値807よりも更に制動作動判定閾値を短くすると、自車両10が衝突予測地点に到達した時に物標が予測交差領域101を通過していないため、衝突してしまう可能性がある。そのため、予測通過時間879が衝突予測地点到達時間878よりも長くならない範囲で制動作動判定閾値を短くする所定時間を設定する。
【0057】
図3に戻り、ステップS411では、ステップS402で算出した衝突余裕時間とステップS405で算出した制動作動判定閾値、またはステップS410で所定時間短くした制動作動判定閾値を基に、制動を作動するかを判定する。閾値変更判定(S409)を満たした場合は、一例としてステップS410で所定時間短くした制動作動判定閾値よりも衝突余裕時間が下回る場合に、制動指示値演算部205に対して第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力による制動の作動を要求する。
【0058】
制動作動判定閾値を距離とした場合では、一例として自車停車移動距離から自車両10が現在の速度で所定時間走行した距離を減算した距離を制動作動判定閾値とし、物標現在縦距離が制動作動判定閾値を下回る場合に、制動指示値演算部205に対して第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力による制動の作動を要求する。
【0059】
本実施形態では、物標が予測交差領域101を通過した後に自車両10が衝突予測地点に到達できる範囲で制動作動判定閾値を所定時間短くして制動を作動している。しかしながら、自車両10が制動を作動した後に物標が減速すると、自車両10が衝突予測地点に到達した時に物標が予測交差領域101を通過していないため、衝突する可能性がある。そこでステップS410では、所定時間短くした制動作動判定閾値を衝突余裕時間が下回って制動を作動した後に、自車両10が物標の減速を検知した場合は、第1減速度よりも大きな減速度または第1制動力よりも大きな制動力を制動指示値演算部205に要求する(つまり、第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって自車両を減速しているときに、物標の車速(減速)に応じて、自車両の減速度または制動力を大きくする)ことで、自車両10は、衝突予測地点よりも手前で停車して物標との衝突を防ぐことができる。
【0060】
自車両10と物標が本実施形態の衝突回避支援装置11を搭載している場合は、所定時間短くした制動作動判定閾値を衝突余裕時間が下回ったときに、自車両10と物標が互いに制動を作動して減速し始めると、自車両10と物標が衝突する場合がある。しかしながら、相手車両の減速を検知した時に互いに衝突予測地点よりも手前で停車できるような大きな減速度または制動力(本実施形態では、第1減速度よりも大きな減速度または第1制動力よりも大きな制動力)を制動指示値演算部205に要求するため、自車両10と物標の衝突を防ぐことができる。
【0061】
図6は、本発明の実施形態における衝突回避支援において、警報制動作動判定部203内で算出した閾値(制動作動判定閾値)を大きくし、第2減速度または第2制動力によって衝突を回避する時の警報制動作動判定部203のフローチャートの一例である。
【0062】
ステップS901、S902、S903、S904、S905、S906、S907ではそれぞれ、ステップS401、S402、S403、S404、S405、S406、S407と同様の処理を実施する。
【0063】
ステップS908では、自車速度と現在の自車位置から、第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって自車両10を減速した時に、自車両10が衝突予測地点に到達するまでに経過する時間(以下、適宜衝突予測地点到達時間または第2減速時衝突予測地点到達時間と記載する)を算出する。第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって自車速度から減速した時に、自車両10と衝突予測地点までの距離が、自車両10が停車するまでに必要な距離(自車停車移動距離)よりも短い場合は、自車両10が衝突予測地点での衝突を回避できない可能性があるため、一例として第2減速時衝突予測地点到達時間は、予測通過時間よりも大きくなる値を設定する。
【0064】
ステップS909では、ステップS409と同様に、予測通過時間と第2減速時衝突予測地点到達時間を基に、閾値変更判定を実施する。第2減速時衝突予測地点到達時間が予測通過時間よりも長い場合は(換言すると、予測通過時間が第2減速時衝突予測地点到達時間より小さい場合は)、自車両10が第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって減速し、衝突予測地点に到達した時には、物標が既に予測交差領域101を通過しているため、制動作動判定閾値を長くしても自車両10が物標に衝突することがないと判断し、ステップS910に進む。第2減速時衝突予測地点到達時間が予測通過時間よりも短い場合は(換言すると、予測通過時間が第2減速時衝突予測地点到達時間より大きい場合は)、自車両10が第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって減速して衝突予測地点に到達した時に、物標が予測交差領域101を通過していないため、制動作動判定閾値を長くしないと判断し、ステップS911に進む。ステップS409と同様に、自車速度や物標速度を基にした判定を前記閾値変更判定に加えてもよい。
【0065】
ステップS910では、ステップS905で算出した制動作動判定閾値を所定時間長く(大きく)する。所定時間は、自車両10と物標の速度、位置関係に応じて可変とする。
【0066】
図7では、一例として制動作動判定閾値を所定時間長くし、第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって減速した場合と、制動作動判定閾値を変更せずに第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した場合に、時間経過における衝突余裕時間と物標現在位置の横位置と縦位置と自車両10の減速度の変化を示している。
【0067】
点線グラフ1001は、制動作動判定閾値を変更せずに第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した場合の衝突余裕時間を示しており、実線グラフ1002は、制動作動判定閾値を所定時間長くし、第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって減速した場合の衝突余裕時間を示している。
【0068】
点線グラフ1003は、制動作動判定閾値を変更せずに第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した場合の物標現在位置の縦位置を示しており、実線グラフ1004は、制動作動判定閾値を所定時間長くし、第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって減速した場合の物標現在位置の縦位置を示している。
【0069】
減速開始タイミング1051は、制動作動判定閾値を所定時間長くした場合に制動を作動した時のタイミングを示しており、減速開始タイミング1052は、制動作動判定閾値を変更せずに制動を作動した時のタイミングを示している。
【0070】
衝突予測地点到達タイミング1053は、減速開始タイミング1051で第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって減速した場合に自車両10が衝突予測地点に到達した時のタイミングを示しており、衝突予測地点到達タイミング1054は、減速開始タイミング1052で第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力によって減速した場合に、自車両10が衝突予測地点に到達した時のタイミングを示している。
【0071】
制動作動判定閾値を所定時間長くした場合では制動作動判定閾値を変更しない場合と比較し、物標現在位置の縦位置がより離れた位置から自車両10が第1減速度よりも小さい第2減速度または第1制動力よりも小さい第2制動力によって緩やかに減速して衝突を回避する。そのため、運転手の操作性を損なわずにユーザビリティを向上することができる。
【0072】
図6に戻り、ステップS911では、ステップS902で算出した衝突余裕時間とステップS905で算出した制動作動判定閾値、またはステップS910で所定時間長くした制動作動判定閾値を基に、制動を作動するかを判定する。
【0073】
閾値変更判定(S909)を満たした場合は、一例としてステップS910で所定時間長くした制動作動判定閾値よりも衝突余裕時間が下回る場合に、制動指示値演算部205にたして第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力による制動の作動を要求する。
【0074】
制動作動判定閾値を距離とした場合では、一例として自車停車移動距離から自車両10が現在の速度で所定時間走行した距離を加えた距離を制動作動判定閾値とし、物標現在縦距離が制動作動判定閾値を下回る場合に、制動指示値演算部205に対して第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力による制動の作動を要求する。
【0075】
ステップS911もステップS411と同様に、所定時間長くした制動作動判定閾値を衝突余裕時間が下回って制動を作動した後に、自車両10が物標の減速を検知した場合は、第2減速度または第2制動力よりも大きな減速度または制動力を制動指示値演算部205に要求する(つまり、第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力によって自車両を減速しているときに、物標の車速(減速)に応じて、自車両の減速度または制動力を大きくする)ことで、自車両10は、衝突予測地点よりも手前で停車して物標との衝突を防ぐことができる。
【0076】
なお、制動指示値演算部205が、第1減速制御部206と第2減速制御部207の両方を有している場合、上述した処理により、制動作動判定閾値を短くし、第1減速度または第1制動力によって衝突を回避する動作を実行するか(図3)、制動作動判定閾値を長くし、第2減速度または第2制動力によって衝突を回避する動作を実行するか(図6)は、周辺環境等に応じて自動で決定してもよいし、運転手が事前に決定(選択)してもよい。
【0077】
以上で説明したように、本実施形態の衝突回避支援装置11は、自車両の予測進路(自車予測進路)と、前記自車両と交差する道路に存在する物体の予測進路(物標予測進路)を演算し、前記自車両の予測進路(自車予測進路)と、前記物体の予測進路(物標予測進路)から、前記自車両と前記物体との衝突余裕時間および衝突予測地点を演算し、前記衝突余裕時間、または前記衝突余裕時間で前記自車両が走行する距離が制動作動判定閾値以下の場合、前記物体との衝突を回避するために所定の減速度または制動力(第1減速制御部206による第1減速度または第1制動力、または、第2減速制御部207による第2減速度または第2制動力)により前記自車両を減速する衝突回避支援装置11であって、前記衝突回避支援装置11は、前記所定の減速度または制動力により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である衝突予測地点到達時間を演算し、前記物体が、前記物体の予測進路(物標予測進路)と前記自車両の予測進路(自車予測進路)との交差領域(予測交差領域)の通過に要する予想時間である予測通過時間と、前記衝突予測地点到達時間とに基づいて、前記制動作動判定閾値を変更(大きく、または、小さく)する。
【0078】
また、前記衝突回避支援装置11は、第1減速度または第1制動力により前記自車両を減速する第1減速制御部206と、前記第1減速度または第1制動力よりも小さい第2減速度または第2制動力により前記自車両を減速する第2減速制御部207と、を備え、前記第1減速制御部206により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である第1減速時衝突予測地点到達時間を演算し、前記予測通過時間が、前記第1減速時衝突予測地点到達時間より小さい場合、前記制動作動判定閾値を小さくする。
【0079】
また、前記衝突回避支援装置11は、第1減速度または第1制動力により前記自車両を減速する第1減速制御部206と、前記第1減速度または第1制動力よりも小さい第2減速度または第2制動力により前記自車両を減速する第2減速制御部207と、を備え、前記第2減速制御部207により前記自車両を減速したときに、前記自車両が前記衝突予測地点に到達するまでの予測時間である第2減速時衝突予測地点到達時間を演算し、前記予測通過時間が、前記第2減速時衝突予測地点到達時間より小さい場合、前記制動作動判定閾値を大きくする。
【0080】
本実施形態の衝突回避支援装置11は、自車両に対して直交する車線(自車両と交差する道路)を走行する物体に対する衝突回避支援において、制動の作動有無を判定するための閾値(制動作動判定閾値)と衝突余裕時間とを比較する。衝突余裕時間と比較して、自車両が前記物体に衝突する可能性が低い範囲で前記閾値を短く(小さく)することで、従来の衝突回避支援装置よりも自車両が前記物体に接近した位置で制動を作動して衝突を回避することが可能である。自車両から前記物体までの距離が短い領域で制動を作動するため、センサにおける認識精度と自車両と前記物体の進路の予測精度を向上し、制動の過剰作動を抑止することで、機能性を向上する。
【0081】
また、上記とは異なる手段として、衝突を回避するために必要な自車両の制動力または減速度を小さくし、制動の作動有無を判定するための前記閾値(制動作動判定閾値)を長く(大きく)する。前記閾値を長くすることにより、前記閾値を長くする前より自車両が前記物体から離れた位置から緩やかに減速して衝突を回避することが可能である。そのため、運転手の操作性を損なわずにユーザビリティを向上することができる。
【0082】
このように、本実施形態によれば、制動の過剰作動や急作動を抑止することで、機能性やユーザビリティを向上することができる。
【0083】
なお、制動の作動有無を判定するために要する閾値(制動作動判定閾値)の比較対象として、衝突余裕時間に代えて、衝突余裕時間で自車両が走行する距離を用いる場合について補足説明する。衝突余裕時間は、自車両と物標が衝突するまでの時間である。本実施形態のように、交差点の場合では、衝突余裕時間は、自車両と物標の縦方向の位置が等しくなるまでの時間であるため、衝突余裕時間で自車両が走行する距離は、現在の自車位置から物標までの縦距離と同義になる(図8の左図参照)。制動作動判定閾値(衝突余裕時間走行距離閾値とも称する)は、減速度または制動力によって減速した時に自車両が停車するまでに要する距離を基に、本実施形態によって上記の距離を長くする、または短くした距離になる。制動作動判定閾値(衝突余裕時間走行距離閾値)は衝突を回避するために必要な最低距離であるため、衝突余裕時間で自車両が走行する距離と制動作動判定閾値(衝突余裕時間走行距離閾値)を比較し、衝突余裕時間で自車両が走行する距離>制動作動判定閾値(衝突余裕時間走行距離閾値)の場合は(図8の中央図参照)、制動を作動しなくても衝突しないため、制動を作動しないが、衝突余裕時間で自車両が走行する距離≦制動作動判定閾値(衝突余裕時間走行距離閾値)の場合は(図8の右図参照)、衝突を回避するために制動を作動することになる。
【0084】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、自車両10と物標の速度や位置情報、または自車両10と物標が走行している道路形状などによって、ステップS409とステップS909において制動作動判定閾値の変更の要否を判定する処理を加えてもよい。例えば自車両10と物標が走行している道路形状において、制動作動判定閾値の変更要否を判定する場合では、自車両10が非優先道路を走行している時は、自車両10が交差点の手前で確実に停車する必要があるため、制動作動判定閾値を変更しないようにしてもよい。
【0085】
本実施形態では、一例として、自車両10と衝突する可能性がある1台の車両に対して制動を作動して衝突を回避する場合を記載したが、自車両10と衝突する可能性がある物標が複数存在する場合では、制動作動判定閾値を変更することで複数の物標の中で初めに衝突する可能性が高い物標に対して制動を作動して衝突を回避した後に、別の物標から自車両10が衝突される可能性がある。そこで、自車両10と衝突する可能性がある物標が複数存在する場合は、制動作動判定閾値を変更せずに自車両10と衝突する可能性がある複数の物標の中で初めに衝突する可能性が高い物標の手前で確実に停車するようにしてもよい。
【0086】
本実施形態では、一例として、自車両10の運転手が車両操作をしない場合において制動を作動して衝突を回避する場合を記載したが、制動を作動する前後で自車両10の運転手による車両操作情報により、運転手による衝突回避行動が予想できる場合には、運転手の車両操作(制動操作)では衝突を回避できない場合があるため、制動作動判定閾値を変更せずに自車両10は衝突予測地点よりも手前で確実に停車するようにしてもよい。
【0087】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0088】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0089】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0090】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0091】
2 カメラ
3 ミリ波レーダー
4 車輪
5 車輪速センサ
6 舵角センサ
7 ヨーレートセンサ
8 メータ
9 ブザー
10 車両(自車両)
11 衝突回避支援装置
12 制動制御装置
100 交差点道路
101 予測交差領域
201 物標情報統合処理部
202 自車両情報演算部
203 警報制動作動判定部
204 衝突警報算出部
205 制動指示値演算部
206 第1減速制御部
207 第2減速制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8