(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016650
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】チーズ様食品
(51)【国際特許分類】
A23C 19/093 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
A23C19/093
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118936
(22)【出願日】2022-07-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229519
【氏名又は名称】日本ハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勝則
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 晃一
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC07
4B001AC15
4B001AC45
4B001EC99
(57)【要約】
【課題】曳糸性および弾力に優れたチーズ様食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)レンネットカゼイン、(B)溶融塩、(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸から選ばれる1種または2種以上を含む有機酸、ならびに(D)油脂を含む、チーズ様食品。前記(A)から(D)を含む原料組成物を混合する工程を含む、チーズ様食品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)レンネットカゼイン、
(B)溶融塩、
(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸から選ばれる1種または2種以上を含む有機酸、ならびに
(D)油脂
を含む、チーズ様食品。
【請求項2】
前記有機酸(C)がグルコン酸またはグルコノデルタラクトンを含む、請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項3】
前記溶融塩(B)がリン酸塩類を含まない、請求項1または2に記載のチーズ様食品。
【請求項4】
(A)レンネットカゼイン、
(B)溶融塩、
(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸から選ばれる1種または2種以上を含む有機酸、ならびに
(D)油脂
を含む原料を混合する工程を含む、チーズ様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズ様食品およびその製造方法、より具体的には、曳糸性および弾力に優れたチーズ様食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりや原料高騰によるコスト削減の観点からレンネットカゼイン(乳タンパク質)を用いた、チーズ様食品を製造することが検討されている。
【0003】
従来のチーズ様食品およびその製造方法としては、例えば次のようなものが知られている。
【0004】
特許文献1には、原料チーズ類の含有量が60質量%以下であるチーズ様食品であって、アセチル化酸変性澱粉、乳タンパク質、油脂、および溶融塩を含み、前記溶融塩が80質量%以上のクエン酸塩を含み、前記溶融塩が前記チーズ様食品の全質量に対して1質量%以上3質量%以下であるチーズ様食品が記載されている。
【0005】
特許文献2には、カゼイン蛋白質/ホエー蛋白質の重量比が3.3~15である蛋白質、油脂、酸性原料を使用し、加熱溶融することでチーズ様食品を得る製造方法であって、カゼイン蛋白質がレンネットカゼイン及び/又は脱脂乳のpHを2~4に下げて分画した蛋白質を中性に調整して得られる乳蛋白濃縮物に含有されるカゼイン蛋白質である、チーズ様食品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-120664号公報
【特許文献2】特開2006-223209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のチーズ様食品は、熱を加えた時にモッツァレラチーズのように伸びる曳糸性はみられなかった。また、従来のチーズ様食品は、ナチュラルチーズのような弾力がなく、シュレッドなどの加工に難があった。
【0008】
なお、特許文献1には、原料チーズ類の含有量が少ないか、または原料チーズ類を含まないチーズ様食品として、加熱溶融した際の伸びが良い、すなわち曳糸性が高いチーズ様食品が提供されると記載されているが、特殊な澱粉(アセチル化酸変性デンプン)を使用する必要があり、また曳糸性と共に弾力性にも優れたチーズ様食品とする点から改善の余地があった。特許文献2には、得られるチーズ様食品の曳糸性については記載されていない。
【0009】
本発明は、曳糸性および弾力に優れたチーズ様食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、チーズ様食品の製造方法において、レンネットカゼイン、溶融塩、油脂等と共に、チーズ様食品およびその原料組成物のpHを調整するために配合される有機酸として、グルコン酸等の特定の種類のものを用いることにより、曳糸性および弾力に優れたチーズ様食品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は少なくとも下記の事項を包含する。
[1]
(A)レンネットカゼイン、
(B)溶融塩、
(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸から選ばれる1種または2種以上を含む有機酸、ならびに
(D)油脂
を含むチーズ様食品。
[2]
前記有機酸(C)がグルコン酸またはグルコノデルタラクトンを含む、項1に記載のチーズ様食品。
[3]
前記溶融塩(B)がリン酸塩類を含まない、項1または2に記載のチーズ様食品。
[4]
(A)レンネットカゼイン、
(B)溶融塩、
(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸から選ばれる1種または2種以上を含む有機酸、ならびに
(D)油脂
を含む原料を混合する工程を含む、チーズ様食品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、好ましい曳糸性および弾力を有するチーズ様食品を提供することができる。
【0013】
なお、本発明においてグルコン酸等の特定の種類の有機酸を用いることにより曳糸性等に関する本発明の効果が奏されるようになる作用として、例えば次のような仮説が考えられる。ただし、このような仮説により本発明は限定的に解釈されるべきではなく、本仮説とは異なる作用により本発明の効果の一部または全部が奏されるとしても、本発明の構成およびそれによりもたらされる効果は否定されるものではない。
【0014】
乳タンパク質であるカゼイン(レンネットカゼイン等)は、集合して小さな粒子(サブミセル)を形成する。サブミセル同士は、リン酸カルシウムで架橋されてカゼインミセルを形成し、カゼインミセルの中に脂肪が分散している。原料組成物に配合される溶融塩(例えばクエン酸ナトリウム)は、カゼインミセルにおけるリン酸カルシウムによる架橋を切断(キレート)し、サブミセルを分散させる作用を有する成分である。このような状態にあるチーズ様食品を加熱すると、脂肪が融解し、力をかけた方向に伸びるようになる。一方、原料組成物のpHもカゼインミセルにおけるリン酸カルシウムによる架橋と関係しており、pHが低い(酸性が強い)ほど多くのリン酸カルシウムがカゼインミセルから離脱し、チーズ様食品中に残された架橋は少なくなる。
【0015】
ここで、従来のチーズ様食品の製造方法においては、原料組成物のpHの調整のために、主に乳酸またはクエン酸が用いられていた(特許文献1および2それぞれの実施例参照)。しかしながら、これらの有機酸を用いた場合、原料組成物のpHは(特定のpHの領域において)急激に変動し、その際にリン酸カルシウムが急激に離脱するため、カゼインミセルが不安定となり、互いに凝集しやすくなると考えられる。これに対して本発明では、原料組成物のpHの調整のために、グルコン酸等を用いるため、原料組成物のpHの変動、すなわちリン酸カルシウムの離脱が緩やかになり、カゼインミセルの不安定化および凝集を抑えることができると考えられる。後記実施例に示すように、本発明により得られるチーズ様食品は、乳酸、クエン酸、その他の有機酸を用いていた従来のチーズ様食品(比較例)に比べて、曳糸性および弾力が格段に向上している。
【0016】
さらに、従来のチーズ様食品の製造方法においては、溶融塩としてリンを含む化合物(リン酸塩類)を用いないで製造することは困難であり、実質的にリン酸塩類が必要であったが、本発明ではリン酸塩類を使用しなくともチーズ様食品を製造することができる。近年は、リン酸塩類を含まない食品を嗜好する消費者もいるため、本発明はそのような消費者の嗜好に応えることができる。例えば、特許文献1には、溶融塩としてはリン酸塩(例えばポリリン酸ナトリウム)が知られているが曳糸性の観点からクエン酸を含む溶融塩が好ましいと記載されているが、実施例で使用しているチーズ溶融剤「CH-4」(オルガノフードテック株式会社製)は、クエン酸ナトリウム89.3%、クエン酸1.7%およびリン酸水素ナトリウム9.0%を含む製品であり、リンを含む化合物は完全には排除されていない。また、引用文献2の実施例でも、溶融塩としてポリリン酸ナトリウムまたはヘキサメタリン酸ナトリウムが使用されている。これに対して本発明では、溶融塩としてクエン酸塩(クエン酸ナトリウム)のみを使用した場合であっても、曳糸性および弾力に優れたチーズ様食品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
-チーズ様食品-
本発明のチーズ様食品は、(A)レンネットカゼイン、(B)溶融塩、(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸からなる群より選ばれる1種または2種以上を含む有機酸(本明細書において「特定有機酸」と呼ぶ。)、ならびに(D)油脂を含む。なお、本発明のチーズ様食品の原料組成物も同様に、上記成分(A)~(D)を含む。本明細書の記載において、特に断らない限り、「チーズ様食品」に含まれる成分として記載されている事項は、その「原料組成物」に含まれる成分としても記載されているものと解釈することができる。
【0018】
(A)レンネットカゼイン
レンネットカゼインは乳タンパク質の一種であり、脱脂乳等に含まれるカゼインをレンネット酵素により凝固したものである。レンネットカゼインは公知のチーズ様食品の製造に用いられているものと同様のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0019】
本発明のチーズ様食品のレンネットカゼインの含有量は適宜調節することができるが、例えば、チーズ様食品全量に対して5~30質量%とすることができ、10~20質量%とすることが好ましい。
【0020】
(B)溶融塩
溶融塩は、レンネットカゼイン等の乳タンパク質を溶融させ、チーズ様食品(およびその原料組成物)中の分散性を高めるための成分である。溶融塩としては、例えば、クエン酸塩、リン酸塩類、グルコン酸塩を使用することができる。リン酸塩類としては、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩が挙げられる。溶融塩の対塩(カウンターイオン)としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、マンガンが挙げられる。溶融塩の具体例としては、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム等が挙げられる。溶融塩は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて(任意の比率で混合して)使用してもよい。弾力が良好である点、またリン酸塩類を含まないチーズ様食品を製造できる点から、溶融塩としては、クエン酸塩が好ましく、クエン酸ナトリウムがより好ましい。すなわち、本発明の溶融塩は、クエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)を含むが、リン酸塩類を含まないことが好ましい。
【0021】
溶融塩の含有量は、適宜調節することができるが、例えば、チーズ様食品全量に対して0.1~3質量%とすることができ、1~3質量%とすることが好ましい。
【0022】
(C)有機酸
本発明では有機酸として、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、又はリンゴ酸を使用する。これらの特定有機酸は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて(任意の比率で混合して)使用してもよい。曳糸性および弾力の観点から、特定有機酸としては、グルコン酸および/又はグルコノデルタラクトンを使用することが好ましい。なお、グルコノデルタラクトンは、水に溶解すると加水分解されてグルコン酸に変化するため、原料組成物に配合する成分としてグルコノデルタラクトンを使用した場合、製造されたチーズ様食品においてグルコノデルタラクトンの一部または全部(ほとんど)がグルコン酸になっていてもよい。
【0023】
特定有機酸の含有量は、適宜調節することができるが、例えば、チーズ様食品全量に対して0.1~10質量%とすることができ、0.5~5質量%とすることが好ましく、0.5~3質量%とすることがさらに好ましい。また、特定有機酸の含有量は、例えば、チーズ様食品のpHが4.5~7.5となるような量とすることができ、5.5~6.5となるような量とすることが好ましい。
【0024】
なお、食品分野において、グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸は、pH調整剤および調味料(酸味料)としての用途が知られている物質である。本発明において、これらの特定有機酸は、チーズ様食品およびその原料組成物のpHを適切な範囲に調整すること(その際に本発明の効果を奏すること)を主たる目的としているが、それと同時にチーズ様食品の食味を好ましいものとすることも目的とすること、つまりpH調整剤および調味料(酸味料)の機能を同時に果たすことは何ら問題ない。
【0025】
本発明では、チーズ様食品およびその原料組成物のpHを適切な範囲に調整するための成分(pH調整剤)として、特定有機酸のみを使用する(pH調整剤としての有機酸全量の100質量%を占める)ことが特に好ましいが、本発明の効果(曳糸性および弾力性の向上)が失われない範囲で、特定有機酸と、特定有機酸以外の有機酸とを併用することも許容される。本発明において、pH調整剤として、特定有機酸と、特定有機酸以外の有機酸とを併用する場合、これらの有機酸全量のうち特定有機酸の比率が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0026】
(D)油脂
本発明では油脂として、植物油脂や動物油脂を使用することができる。植物油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、ヤシ油、パーム油、コーン油、亜麻仁油、エゴマ油、オリーブオイル、グレープシードオイル、ココナッツオイル、ごま油、こめ油、ひまわり油、べに花油、綿実油、落花生油が挙げられ、菜種油、大豆油、ヤシ油、パーム油が好ましい。動物性油脂としては、例えば、ラード、牛脂、バター、鶏油、精製魚油、馬脂が挙げられ、ラード、バターが好ましい。油脂の融点は、0~50℃のものが好ましく、20~40℃のものがより好ましい。油脂は、常温で固体のもの(固形油脂、脂肪)であってもよいし、常温で液体のもの(脂肪油)であってもよい。
【0027】
油脂の含有量は、適宜調節することができるが、例えば、チーズ様食品全量に対して、0.1~50質量%とすることができ、20~40質量%とすることが好ましい。
【0028】
(E)任意成分
本発明のチーズ様食品は、必要に応じて、(A)~(D)以外の成分をさらに含むことができる。そのような任意成分としては、例えば、調味料、着色料、加工澱粉、乳化剤、香料、原料チーズ類、水分などが挙げられる。任意成分は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
調味料としては、アミノ酸、核酸、有機酸(グルコン酸、グルコノデルタラクトン、リンゴ酸以外のもの)、上白糖、食塩、脱脂粉乳、食物繊維等が挙げられる。調味料は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。調味料の含有量は、例えばチーズ様食品全量に対して0.01~10質量%とすることができる。
【0030】
着色料としては、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素等が挙げられる。着色料は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。着色料の含有量は、例えばチーズ様食品全量に対して0.01~5質量%とすることができる。
【0031】
加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム等が挙げられる。加工澱粉は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。加工澱粉の含有量は、例えばチーズ様食品全量に対して0.01~20質量%とすることができる。
【0032】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げられる。乳化剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。乳化剤の含有量は、例えばチーズ様食品全量に対して0.01~5質量%とすることができる。
【0033】
香料としては、チーズ風香料、バター風香料、バニラエッセンス、スモークフレーバー等が挙げられる。香料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。香料の含有量は、例えばチーズ様食品全量に対して0.01~5質量%とすることができる。
【0034】
原料チーズ類としては、ナチュラルチーズ(軟質チーズ、半硬質チーズ、硬質チーズ、超硬質チーズ)、プロセスチーズ、フードチーズ等が挙げられる。原料チーズ類の含有量は、例えばチーズ様食品全量に対して0.01~40質量%とすることができる。
【0035】
水分量は、チーズ食品全量に対して20~90質量%とすることができる。
【0036】
本発明のチーズ様食品の用途は特に限定されるものではなく、様々なチーズ代替食品として使用することができる。チーズ代替食品としては、例えば、ピザのトッピングチーズ、ハンバーグの内包チーズなどが挙げられ、ピザのトッピングチーズは本発明によるチーズ様代替食品として好ましい。
【0037】
-チーズ様食品の製造方法-
本発明のチーズ様食品の製造方法は、(A)レンネットカゼイン、(B)溶融塩、(C)グルコン酸、グルコノデルタラクトンおよびリンゴ酸からなる群より選ばれる1種または2種以上を含む有機酸、ならびに(D)油脂、さらに必要に応じて(E)任意成分を含む原料を混合する工程(本明細書において「混合工程」と呼ぶ。)を含む。
【0038】
混合工程において、各成分は全て同時に混合してもよく、一部を混合してから他の成分を加えてさらに混合してもよい。例えば、原料の全てを同時に添加して混合した後、攪拌しながら加熱処理(詳細は後述)を行うようにしてもよいし、原料の一部を混合し、攪拌しながら加熱処理を行った後、原料の残部を混合する(必要に応じてさらに加熱処理を行う)ようにしてもよい。
【0039】
より具体的には、例えば、特定有機酸(C)を、レンネットカゼイン(A)、溶融塩(B)、油脂(D)および必要に応じて任意成分(E)と同時に添加して混合し、そのような全部の原料を含む混合物(原料組成物)に対して加熱処理を行った後、冷却処理(詳細は後述)を行うような実施形態(混合工程の第1実施形態)でもよいし、レンネットカゼイン(A)、溶融塩(B)、油脂(D)および必要に応じて任意成分(E)を同時に添加して混合し、そのような一部の原料を含む混合物に対して加熱処理を行ってから、さらに特定有機酸(C)を添加して混合した後、冷却処理を行うような実施形態(混合工程の第2実施形態)であってもよい。本発明における混合工程は、このうち第1実施形態により行うことが好ましい。
【0040】
混合工程では、従来のチーズ様食品の製造方法において用いられているような、一般的な混合手段を用いることができ、例えば、乳化釜に各成分を投入し、攪拌するようにして行うことができる。混合工程における混合(攪拌)等に関する諸条件は適宜調節することができる。例えば、撹拌の回転数は、100~1000rpmとすることができる。
【0041】
混合工程では、チーズ様食品を製造するために一般的に必要とされる、混合(攪拌)以外の処理をさらに含むことができる。例えば、混合工程は通常、(1)原料の全部または一部の混合物を加熱する処理(本明細書において「加熱処理」と呼ぶ。)、および(2)加熱処理(1)を経た原料の全部の混合物(原料組成物)を冷却する処理(本明細書において「冷却処理」と呼ぶ。)を含む。
【0042】
加熱処理に関する諸条件は適宜調節することができる。加熱温度は、例えば70~100℃とすることができ、加熱時間は、例えば1~10分間とすることができる。加熱処理は、攪拌をしながら行うことができる。加熱処理は、混合工程において、1段階で行ってもよいし、2段階以上で行ってもよい。
【0043】
冷却処理に関する諸条件は適宜調節することができる。冷却温度は、例えば1~10℃とすることができ、冷却時間は、例えば1~5時間とすることができる。冷却処理は、例えば、加熱処理を経た原料組成物を適切な容器に入れて静置するようにして行うことができる。
【0044】
本発明のチーズ様食品の製造方法は、必要に応じて、混合工程以外の工程をさらに含むことができる。そのような任意工程としては、例えば、チーズ様食品を所望の形状およびサイズにカットまたはシュレッドする工程、包装する工程、冷蔵庫等で保管する工程、その他の製品化のために必要な工程が挙げられるが、特に限定されるものではない。任意工程は、基本的に従来のチーズ様食品と同様の実施形態で(装置、方法、条件等の適切な手段を用いて)行うことができ、必要に応じて本発明のチーズ様食品の製造方法に適合するように調整することもできる。
【0045】
本明細書に特に明記されていない技術的事項については、当業者であれば、チーズ様食品に関する技術分野における、一般的な技術的事項、または公知の技術的事項を適宜適用することができ、それによって本明細書の記載事項に基づいて本発明を実施することが可能である。
【実施例0046】
1.チーズ様食品の作製
(実施例1~6、比較例1~9)
表1~3に記載の含有量となるように、乳化釜に、レンネットカゼイン、溶融塩、有機酸、および水を混合し十分に撹拌した。有機酸は、加熱後のpHが6前後となるように添加した。固形油脂を加えて混合した後、撹拌しながら80℃まで加温した。十分に冷却し、チーズ様食品を得た。
【0047】
(比較例10)
表3に記載の含有量となるように、乳化釜に、レンネットカゼイン、溶融塩、および水を混合し十分に撹拌した。固形油脂を加えて混合した後、撹拌しながら加温し、60℃に到達した時点で乳酸を添加した。乳酸は、加熱後のpHが6前後となるように添加した。その後撹拌しながら80℃まで加温した。十分に冷却しチーズ様食品を得た。
【0048】
(比較例11)
表3に記載の含有量となるように、乳化釜に、レンネットカゼイン、溶融塩、および水を混合し十分に撹拌した。固形油脂を加えて混合した後、撹拌しながら加温し、80℃に到達した時点で乳酸を添加した。乳酸は、加熱後のpHが6前後となるように添加した。十分に混合したのち、冷却しチーズ様食品を得た。
【0049】
2.チーズ様食品の曳糸性の測定
電子レンジで600W、20秒加熱溶融させ、伸びた糸の長さを測定した。それぞれ5サンプルずつ測定し、平均値を算出した。数値が大きいほど、曳糸性が良好であることを示す。
【0050】
3.チーズ様食品の破断応力の測定
チーズ様食品を厚さ10mmのブロックにして、レオメーター(CR-500DX、SUN SCIENTIFIC社製)を用いて5mm進入時の破断応力を測定した。それぞれ5サンプルずつ測定し、平均値を算出した。数値が大きいほど、弾力が良好であることを示す。
【0051】
各実施例および比較例の曳糸性および破断応力の測定結果を表1~3に示す。有機酸としてグルコン酸、グルコノデルタラクトン又はリンゴ酸を用いている実施例1~6のチーズ様食品はいずれも、その他の有機酸を用いている比較例1~11のチーズ様食品に比べて、曳糸性が格段に向上しており、それと共に弾力(破断応力)も大きく向上していることが分かる。
【0052】