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特開2024-166508電子線滅菌設備および電子線滅菌設備の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166508
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電子線滅菌設備および電子線滅菌設備の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/08 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
A61L2/08 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082648
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 武史
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB06
4C058CC01
4C058CC03
4C058EE26
4C058KK03
4C058KK23
4C058KK33
(57)【要約】
【課題】汚染源が滅菌対象物に付着するリスクを低減する電子線滅菌設備および電子線滅菌設備の使用方法を提供する。
【解決手段】電子線滅菌設備100は、滅菌室1と、搬送室2とを備える。滅菌室1は、滅菌対象物Wに電子線を照射することで滅菌対象物Wを滅菌する。搬送室2は、滅菌対象物Wを滅菌室1に搬入、または、滅菌対象物Wを滅菌室1から搬出する。搬送室2は、遮蔽壁3と、搬送装置4と、昇降装置5と、送風装置6とを有する。遮蔽壁3は、滅菌室1において、電子線の照射により発生したX線を遮蔽する。搬送装置4は、滅菌対象物Wを搬送することで、滅菌対象物Wを滅菌室1に搬入、または、滅菌対象物Wを滅菌室1から搬出する。昇降装置5は、搬送装置4を昇降させることで、滅菌対象物Wに遮蔽壁3を越えさせる。送風装置6は、昇降装置5によって、遮蔽壁3を越える滅菌対象物Wに上から風を送る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌対象物に電子線を照射することで前記滅菌対象物を滅菌する滅菌室と、
前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入、または、前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出する搬送室と
を備え、
前記搬送室は、
前記滅菌室において、前記電子線の照射により発生したX線を遮蔽する遮蔽壁と、
前記滅菌対象物を搬送することで、前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入、または、前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出する搬送装置と、
前記搬送装置を昇降させることで、前記滅菌対象物に前記遮蔽壁を越えさせる昇降装置と、
前記昇降装置によって、前記遮蔽壁を越える滅菌対象物に上から風を送る送風装置と
を有することを特徴とする電子線滅菌設備。
【請求項2】
前記搬送装置は、
前記滅菌対象物を搬送するとともに、前記昇降装置によって昇降する昇降搬送体をさらに有し、
前記昇降装置は、前記昇降搬送体を下から支持することを特徴とする請求項1に記載の電子線滅菌設備。
【請求項3】
前記昇降装置は、
駆動力を発生させる駆動源と、
前記駆動力を前記昇降搬送体の昇降動作に変換するリンク機構と
を有することを特徴とする請求項2に記載の電子線滅菌設備。
【請求項4】
前記昇降装置は、前記送風装置の発生させる風よりも小さい速さで、前記昇降搬送体を昇降させることを特徴とする請求項2に記載の電子線滅菌設備。
【請求項5】
前記搬送装置は、
前記遮蔽壁よりも、滅菌前の前記滅菌対象物が配置される滅菌前領域側に配置される第1昇降搬送体と、
前記遮蔽壁よりも、滅菌後の前記滅菌対象物が配置される滅菌後領域側に配置される第2昇降搬送体とを有し、
前記昇降装置は、
前記第1昇降搬送体を昇降させる第1昇降装置と、
前記第2昇降搬送体を昇降させる第2昇降装置とを有し、
前記第1昇降装置は、前記第1昇降搬送体を前記遮蔽壁よりも上の上段位置に上昇させ、
前記第1昇降搬送体は、前記上段位置で、前記第2昇降装置が前記上段位置に上昇させた前記第2昇降搬送体に前記滅菌対象物を引き渡し、
前記第2昇降装置は、前記第1昇降搬送体から前記滅菌対象物を受け取った前記第2昇降搬送体を前記遮蔽壁の上端よりも下の基準位置に下降させることを特徴とする請求項2に記載の電子線滅菌設備。
【請求項6】
前記搬送装置は、
前記昇降装置により昇降されるときに前記滅菌対象物の搬送を停止し、
前記昇降装置による昇降が停止したときに前記滅菌対象物を搬送することを特徴とする請求項1に記載の電子線滅菌設備。
【請求項7】
前記搬送室は、
前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入する第1搬送室と、
前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出する第2搬送室とを有し、
前記送風装置は、
前記第1搬送室に設けられる第1送風装置と、
前記第2搬送室に設けられる第2送風装置と
を有し、
前記第1送風装置の発生させる風の速さは、前記第2送風装置の発生させる風の速さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電子線滅菌設備。
【請求項8】
滅菌対象物に電子線を照射することで前記滅菌対象物を滅菌する滅菌室と、
前記滅菌室において、前記電子線の照射により発生したX線を遮蔽する遮蔽壁と、
前記滅菌対象物を搬送する搬送装置と
を備える電子線滅菌設備の使用方法であって、
前記搬送装置に前記滅菌対象物を搬送させて、前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入、または、前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出し、
前記搬送装置を昇降装置で昇降させて、前記滅菌対象物に前記遮蔽壁を越えさせ、
送風装置によって、前記遮蔽壁を越える滅菌対象物に上から風を送ることを特徴とする電子線滅菌設備の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面の滅菌処理を電子線により行う電子線滅菌設備および電子線滅菌設備の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用の容器などの高い清浄度が要求される容器には、滅菌処理が施される。滅菌処理には、電子線が利用されている。ところが、電子線を滅菌対象物に照射することにより生じるX線は人体に有害である。したがって、滅菌が必要な滅菌対象物に電子線を照射する電子線滅菌設備には、人の居る領域からX線を遮蔽するための構造体が必要であった。
【0003】
特許文献1に記載の滅菌システム、および、特許文献2に記載の電子線照射装置は、電子線が照射される部屋に滅菌対象物を搬送するときに、滅菌対象物を昇降させる構造を取り入れた。このような構造は、特許文献1に記載の滅菌システム、および、特許文献2に記載の電子線照射装置を設置するために必要な面積を小さくすることに寄与した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6181149号公報
【特許文献2】実用新案登録第2584921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている、滅菌対象物を搬送途中で昇降させる構造は、滅菌対象物を昇降させるときに、空気中の微粒子、または浮遊微生物などの汚染源を滅菌対象物に付着させるリスクを増加させた。
【0006】
そこで、本発明は、汚染源が滅菌対象物に付着するリスクを低減する電子線滅菌設備および電子線滅菌設備の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子線滅菌設備は、滅菌対象物に電子線を照射することで前記滅菌対象物を滅菌する滅菌室と、前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入、または、前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出する搬送室とを備え、前記搬送室は、前記滅菌室において、前記電子線の照射により発生したX線を遮蔽する遮蔽壁と、前記滅菌対象物を搬送することで、前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入、または、前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出する搬送装置と、前記搬送装置を昇降させることで、前記滅菌対象物に前記遮蔽壁を越えさせる昇降装置と、前記昇降装置によって、前記遮蔽壁を越える滅菌対象物に上から風を送る送風装置とを有することを特徴とする。
【0008】
滅菌対象物に電子線を照射することで前記滅菌対象物を滅菌する滅菌室と、
前記滅菌室において、前記電子線の照射により発生したX線を遮蔽する遮蔽壁と、
前記滅菌対象物を搬送する搬送装置と
を備える電子線滅菌設備の使用方法であって、
前記搬送装置に前記滅菌対象物を搬送させて、前記滅菌対象物を前記滅菌室に搬入、または、前記滅菌対象物を前記滅菌室から搬出し、
前記搬送装置を昇降装置で昇降させて、前記滅菌対象物に前記遮蔽壁を越えさせ、
送風装置によって、前記遮蔽壁を越える滅菌対象物に上から風を送ることを特徴とする電子線滅菌設備の使用方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子線滅菌設備および電子線滅菌設備の使用方法によれば、汚染源が滅菌対象物に付着するリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電子線滅菌設備の内部構造を概略的に示す図である。
図2図1の断面図である。
図3図1の搬送体を前側から見た図である。
図4図1に示す電子線滅菌設備において、第1送風装置、および、第2送風装置が風を送る図である。
図5図1に示す電子線滅菌設備において、第1搬送室の第1昇降搬送体が、滅菌対象物を支持した状態で、上段位置に向かって上昇する図である。
図6図1に示す電子線滅菌設備において、第1搬送室の第1昇降搬送体が、上段位置で、第1搬送室の第2昇降搬送体に滅菌対象物を引き渡す図である。
図7図1に示す電子線滅菌設備において、第1搬送室の第2昇降搬送体が、滅菌対象物を支持した状態で、基準位置に向かって下降する図である。
図8図1に示す電子線滅菌設備において、第1搬送室の第2昇降搬送体が、基準位置で、定置搬送体に滅菌対象物を引き渡す図である。
図9図1に示す電子線滅菌設備において、第2搬送室の第1昇降搬送体が、上段位置で、第2搬送室の第2昇降搬送体に滅菌対象物を引き渡す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る電子線滅菌設備100について、図1および図2を参照して説明する。実施形態に係る電子線滅菌設備100は、電子線を利用して滅菌対象物Wを滅菌する。滅菌対象物Wは、医薬品の包装容器などの菌を嫌う用途の物である。
【0012】
滅菌対象物Wを搬送する過程で滅菌対象物Wを昇降させるとき、汚染源が舞い上がることがある。本発明の要旨は、滅菌対象物Wが昇降するときに舞い上がる汚染源を風に乗せて除去することにある。このため、本発明の電子線滅菌設備100は、滅菌対象物Wに上から風を送り込む。この風が、舞い上がる汚染源を滅菌対象物Wよりも下の位置に移動させる。加えて、本発明の電子線滅菌設備100は、滅菌対象物Wよりも下の位置で舞い上がる構造を採用している。滅菌対象物Wよりも下の位置で舞い上がる汚染源を風に乗せて除去する結果、滅菌対象物Wに汚染源が付着するリスクを低減できる。
【0013】
実施形態に係る電子線滅菌設備100の構成について、図1から図3を参照して説明する。
【0014】
電子線滅菌設備100について詳細に説明する前に、電子線滅菌設備100で滅菌される滅菌対象物Wの一例を説明する。図1から図3に例示する滅菌対象物Wは、医薬品を収容する箱体WB(図3参照)と、箱体WBから突出する被支持部WH(図3参照)とを有する。被支持部WHは、滅菌対象物Wが搬送されるときに下から支持される部分となる。なお、滅菌対象物Wは、下から支持される部分を有する構造であれば、どのような構造であってもよい。
【0015】
電子線滅菌設備100は、図1および図2に示すように、滅菌対象物Wに電子線を照射する滅菌室1と、滅菌室1とつながる搬送室2とを備える。
【0016】
滅菌室1は、滅菌対象物Wに電子線を照射する2基の電子線照射機11、11と、滅菌対象物Wが搬入される搬入口12と、滅菌対象物Wが搬出される搬出口13とを有する。
【0017】
2基の電子線照射機11、11は、滅菌室1の内部に電子線を照射する。滅菌対象物Wは、滅菌室1の内部で電子線を照射される。電子線が照射された滅菌対象物Wの表面は滅菌される。
【0018】
搬入口12および搬出口13は、滅菌室1の内部および外部をつなげる開口である。滅菌対象物Wは、滅菌前の滅菌対象物Wが配置される領域(滅菌前領域A1)から搬入口12を通って滅菌室1に入る。滅菌室1に入った滅菌対象物Wは、搬出口13を通って、滅菌後の滅菌対象物Wが配置される領域(滅菌後領域A2)に出る。一方で、滅菌室1の内部に照射された電子線は、X線を生じさせる。X線は、搬入口12および搬出口13を通って、滅菌室1の外部に漏れる。
【0019】
以降において、説明の便宜上、滅菌前領域A1から滅菌後領域A2に向かう方向は、後方向と称し、後方向と反対の方向は、前方向と称する。また、重力の方向は、下方向と称し、下方向と反対の方向は、上方向と称する。前後方向および上下方向と交差する方向は、左右方向と称する。
【0020】
搬送室2は、滅菌対象物Wを滅菌室1に搬入、または、滅菌対象物Wを滅菌室1から搬出する部屋である。搬送室2は、電子線滅菌設備100の外部にX線が漏れるのを阻止する。このため、搬送室2の内壁を構成する部材には、X線を遮蔽する材料が使用されている。
【0021】
具体的に、搬送室2は、滅菌対象物Wが入る入口231、または、滅菌対象物Wが出る出口232と、搬入口12または搬出口13につながる照射通路24とを有する部屋である。X線は、照射通路24から搬送室2の内部に漏れる。搬送室2の内部に漏れたX線は、X線を遮蔽する材料に吸収される。
【0022】
搬送室2は、滅菌前領域A1に配置される第1搬送室21と、滅菌後領域A2に配置される第2搬送室22とを有する。
【0023】
第1搬送室21および第2搬送室22のそれぞれは、遮蔽壁3と、滅菌対象物Wを搬送する搬送装置4と、搬送装置4を昇降させる昇降装置5と、搬送される滅菌対象物Wに風を送る送風装置6とをさらに有する。
【0024】
遮蔽壁3は、搬送室2の内部に漏れたX線を遮蔽する壁である。図1および図2に示すように、遮蔽壁3は、入口231または出口232と、照射通路24との間に設けられる。上下方向および前後方向において、遮蔽壁3の設置される範囲は、滅菌室1から漏れるX線の量、および滅菌対象物Wの通過する空間を考慮して適宜定められる。図2に示す、遮蔽壁3は、滅菌室1から漏れたX線を効果的に遮蔽するために、左右方向に沿った端部から滅菌室1に向かって突出する突出部31を有する。加えて、遮蔽壁3の大きさは、図1に示すように、遮蔽壁3の上に滅菌対象物Wが通過できる空間が少なくともできる程度である。
【0025】
搬送装置4は、滅菌室1から遮蔽壁3と交差する方向に沿った搬送経路上に配置される。言い換えると、搬送装置4は、遮蔽壁3の上端よりも下の位置に配置される。また、滅菌対象物Wは、入口231から搬送室2の内部に入り、滅菌室1の内部を通って、出口232から搬送室2の外部に出る。このため、搬送経路は、滅菌室1から、入口231または出口232に向かうとともに、遮蔽壁3と交差する方向に沿うことが好ましい。このようにすれば、搬送経路がより短くなる。結果として、搬送装置4の設置に必要な面積は、小さくできる。
【0026】
搬送装置4は、滅菌前領域A1から滅菌後領域A2に向かって滅菌対象物Wを滅菌室1の内部または外部に搬送する搬送体40を複数有する。各搬送体40の間には、滅菌対象物Wの被支持部WHにおける、搬送方向に沿った長さよりも小さい隙間が設けられる。
【0027】
搬送体40は、図3に示すように、滅菌対象物Wの箱体WBが通過できる大きさの空間を挟む、1組のローラー列401、401を有する。ローラー列401は、搬送方向に沿って並ぶ複数のローラーである。滅菌対象物Wの被支持部WHがローラー列401の上に載ることで、滅菌対象物Wは、各ローラーの回転によって、後方向に向かって搬送される。このように搬送される滅菌対象物Wは、箱体WBの被支持部WHの下面以外の部分が搬送体40と接触しない。したがって、箱体WBの被支持部WHの下面以外に汚染源が付着するリスクを低減できる。また、箱体WBに接触する物がないので、箱体WBに付着した汚染源は、容易に落とされる。
【0028】
搬送体40には、図1に示すように、上下方向の位置が固定された定置搬送体41と、昇降する昇降搬送体42とがある。
【0029】
定置搬送体41は、遮蔽壁3を挟む位置以外に設けられる。実施形態の搬送装置4は、第1搬送室21および第2搬送室22のそれぞれにおいて、入口231または出口232近傍、および、照射通路24、24のそれぞれに定置搬送体41が1台ずつ配置される。
【0030】
以降において、第1搬送室21、および、第2搬送室22に配置される定置搬送体41は、前側から順に、第1定置搬送体411、第2定置搬送体412、第3定置搬送体413、第4定置搬送体414と称する場合がある。
【0031】
昇降搬送体42は、滅菌前領域A1側および滅菌後領域A2側から遮蔽壁3を挟む位置に1台ずつ設けられる。以降の説明において、遮蔽壁3よりも滅菌前領域A1側に配置される昇降搬送体42は、第1昇降搬送体43と称し、遮蔽壁3よりも滅菌後領域A2側に配置される昇降搬送体42は、第2昇降搬送体44と称する場合がある。
【0032】
昇降装置5は、搬送経路上の位置(基準位置)、および、遮蔽壁3の上端よりも上の位置(上段位置)との間で、昇降搬送体42を昇降させる。
【0033】
好ましくは、昇降装置5は、昇降搬送体42を下から支持する。このようにすると、搬送装置4を昇降させたとき、汚染源は、昇降搬送体42によって搬送される滅菌対象物Wの下で舞い上がる。したがって、昇降搬送体42が昇降することで舞い上がる汚染源が滅菌対象物Wに付着するのを防止できる。
【0034】
具体的には、昇降装置5は、駆動力を発生させる駆動源53と、駆動力を昇降動作に変換するリンク機構54とを有する。
【0035】
駆動源53は、回転力を発生させるモーターであり、リンク機構54は、回転力を上下方向に沿った運動に変換するスライダクランク機構であることが好ましい。スライダクランク機構において、上下方向にスライドするリンクには、昇降搬送体42が接続される。これにより、上下方向にスライドするリンクの動きに合わせて、昇降搬送体42が昇降する。
【0036】
好ましくは、上下方向にスライドするリンクは、滅菌対象物Wを支持する昇降搬送体42において、滅菌対象物Wよりも下の位置で昇降搬送体42を支える。このようにすると、リンク機構54の一部が、滅菌対象物Wよりも上の位置に配置されるのを防止できる。結果として、リンク機構54が動作することで舞い上がる汚染源が滅菌対象物Wに付着するリスクを低減できる。
【0037】
また、好ましくは、駆動源53、および、リンク機構54が昇降搬送体42よりも下の位置に配置される。このようにすると、汚染源の発生源となりうる、駆動源53、および、リンク機構54は、昇降搬送体42から離れた位置に配置される。結果として、汚染源が滅菌対象物Wに付着するリスクを低減できる。
【0038】
昇降装置5は、第1昇降搬送体43および第2昇降搬送体44に対して1基ずつ設けられる。以降、第1昇降搬送体43を昇降させる昇降装置5は、第1昇降装置51と称し、第2昇降搬送体44を昇降させる昇降装置5は、第2昇降装置52と称する場合がある。
【0039】
送風装置6は、搬送装置4によって搬送されている滅菌対象物Wに、汚染源の混入量が基準以下の風を送る。具体的に、送風装置6は、風を送るファンと、ファンの発生させた風に含まれる汚染源を取り除くフィルタを組み合わせた装置である。汚染源を取り除くフィルタには、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタが採用される。
【0040】
送風装置6は、上段位置に配置された昇降搬送体42よりも上の位置に設けられる。このようにすることで、搬送装置4によって搬送される滅菌対象物Wには、上から風が送られる。したがって、送風装置6の発生させる風が、滅菌対象物Wよりも上に汚染源が舞い上がるのを防止する。この結果、送風装置6の発生させる風が、搬送されている滅菌対象物Wに汚染源が付着するリスクを低減する。
【0041】
好ましくは、風の速さを計測する風速センサ(図示せず)が、上段位置に配置された昇降搬送体42と、送風装置6との間の位置に配置される。このようにすると、送風装置6の発生させる風の速さが、風速センサによって計測できる。したがって、風速センサの計測結果に基づいて、送風装置6は、その発生させる風の速さを調整できる。さらに、上段位置と、送風装置6との間隔は、上段位置に昇降搬送体42が配置されたときに、風速センサの計測結果が、昇降搬送体42の影響を受けない程度であるのが好ましい。このようにすると、風速センサの計測精度が向上する。結果として、送風装置6は、その発生させる風の速さを、より精密に制御できる。なお、速さは、速度のように、大きさと、向きとを表す量ではなく、大きさのみを表す量として用いている。
【0042】
好ましくは、搬送室2において、搬送装置4の下の位置には、搬送室2の内部の空気を搬送室2の外部に排気する排気口25が設けられる。このようにすると、送風装置6の発生させた風は、排気口25を通って、搬送室2の外部に排気される。これにより、送風装置6の発生させる風は、搬送室2の内部において、下方向に一様に向かうため、滞留しづらくなる。したがって、排気口25は、搬送室2の内部に汚染源の滞留を防止する。
【0043】
排気口25に加えて、搬送室2には、排気口25の開度を調整するバルブ(図示せず)を排気口25に設けるのが好ましい。このようにすると、送風装置6の発生させる風が、より一様に流れるように、排気口25の開度を調整できる。さらに、搬送室2の内圧を計測するセンサを搬送室2内に設けることが好ましい。このようにすると、バルブは、搬送室2の外部の圧力よりも、搬送室2の内圧が高くなるように、排気口25の開度を調整できる。したがって、バルブは、搬送室2の外部から搬送室2に汚染源が流れ込むのを防止できる。
【0044】
送風装置6は、第1搬送室21および第2搬送室22に1基ずつ設けられる。説明の便宜上、第1搬送室21に設けられる送風装置6は、第1送風装置61と称し、第2搬送室22に設けられる送風装置6は、第2送風装置62と称する場合がある。
【0045】
電子線滅菌設備100の使用方法について、および図4から図9を参照して説明する。
【0046】
図4に示すように、滅菌対象物Wを滅菌するとき、第1送風装置61、および、第2送風装置62は、搬送装置4に向かって風6AW、6BWを送る。
【0047】
好ましくは、第1送風装置61の発生させる風6AWの速さは、第2送風装置62の発生させる風6BWの速さよりも小さい。このようにすると、第2送風装置62の発生させる風6BWの一部が、搬出口13から滅菌室1を通って、第1搬送室21に流れ込む。したがって、第1搬送室21から第2搬送室22に汚染源が流れ込むのを防止できる。この結果、第2送風装置62は、滅菌後の滅菌対象物Wが汚染源によって汚染されるリスクを低減できる。
【0048】
以降、図5から図9を参照して、電子線滅菌設備100が、滅菌前領域A1から滅菌室1に滅菌対象物Wを搬入して、滅菌室1に搬入された滅菌対象物Wを滅菌後領域A2に搬出する動作を説明する。この動作中、第1送風装置61、および、第2送風装置62は、図4を用いて説明したように、風6AW、6BWを発生させる。しかしながら、滅菌対象物Wの搬送動作の理解を容易にするために、図5から図9では、第1送風装置61、および、第2送風装置62の発生させる風6AW、6BWの記載を省略している。
【0049】
図5に示すように、滅菌前の滅菌対象物Wは、第1搬送室21の入口231から第1搬送室21の内部に入れられる。第1搬送室21の内部に入れられた滅菌対象物Wは、第1定置搬送体411によって滅菌室1に向けて搬送される。第1定置搬送体411によって搬送される滅菌対象物Wは、基準位置に配置された第1昇降搬送体43に引き渡される。前述のように、各搬送体40の隙間は、被支持部WHの搬送方向に沿った長さよりも小さい。このため、滅菌対象物Wは、第1定置搬送体411と、第1昇降搬送体43とで橋渡しされた状態を経て、第1定置搬送体411から第1昇降搬送体43に引き渡される。
【0050】
第1昇降装置51は、滅菌対象物Wが引き渡された第1昇降搬送体43を上段位置に向かって上昇させる。好ましくは、第1昇降装置51が、基準位置から上段位置に第1昇降搬送体43を上昇させる間、第1昇降搬送体43は、滅菌対象物Wを搬送する動作を一時的に停止させる。したがって、第1昇降装置51は、滅菌対象物Wが安定した状態で、基準位置から上段位置に滅菌対象物Wを上昇させられる。
【0051】
第1昇降装置51は、第1送風装置61の発生させる風6AWよりも小さい速さで第1昇降搬送体43を上昇させるのが好ましい。このようにすると、上昇する第1昇降搬送体43の周囲の風6AWが乱れるのを防止できる。結果、第1送風装置61の発生させる風6AWは、汚染源を効率よく滅菌対象物Wから離せる。
【0052】
第2昇降装置52は、第1昇降装置51が滅菌対象物Wを上段位置に上昇させるまでの間に、第2昇降搬送体44を上段位置に上昇させる。第2昇降装置52も、第1昇降装置51と同様に、第1送風装置61の発生させる風6AWよりも小さい速さで第1昇降搬送体43を上昇させるのが好ましい。
【0053】
図6に示すように、上段位置に配置された第1昇降搬送体43は、搬送動作を開始する。これにより、第1昇降搬送体43に支持された滅菌対象物Wが、第2昇降搬送体44に向かって移動する。滅菌対象物Wは、第1昇降搬送体43と、第2昇降搬送体44とで橋渡しされた状態を経て、第1昇降搬送体43から第2昇降搬送体44に引き渡される。これにより、滅菌対象物Wは、遮蔽壁3を越える。第2昇降搬送体44に滅菌対象物Wが引き渡れた後、第2昇降搬送体44は、搬送動作を停止させる。
【0054】
図7に示すように、第2昇降装置52は、滅菌対象物Wが引き渡された第2昇降搬送体44を基準位置に下降させる。好ましくは、第2昇降装置52が、第2昇降搬送体44を下降させる速さは、第1送風装置61の発生させる風6AWの速さよりも小さい。したがって、第2昇降搬送体44が下降するときも、下降する第2昇降搬送体44の周囲の風6BWが乱れるのを防止できる。また、第2昇降搬送体44が下降するとき、第1昇降搬送体43も、第1送風装置61の発生させる風6AWよりも小さい速さで、第1昇降装置51によって下降させられるのが好ましい。
【0055】
図8に示すように、下降する第2昇降搬送体44は、基準位置に配置される。このように、第1昇降搬送体43および第2昇降搬送体44が、基準位置と、上段位置との間で昇降することで、滅菌対象物Wは、遮蔽壁3を越えられる。
【0056】
滅菌対象物Wを支持した第2昇降搬送体44が基準位置に配置された後、第2昇降搬送体44は、滅菌後領域A2に向けて搬送する。第2昇降装置52の昇降が停止したとき、第2昇降搬送体44が滅菌対象物Wの搬送を開始するため、第2昇降搬送体44は、滅菌対象物Wを安定して下降させられる。
【0057】
基準位置に配置された第2昇降搬送体44は、滅菌室1に向けて滅菌対象物Wを搬送する。第2昇降搬送体44によって搬送される滅菌対象物Wは、第2定置搬送体412に引き渡される。第2定置搬送体412は、滅菌室1の内部に向かって滅菌対象物Wを搬送する。
【0058】
滅菌室1の内部に搬送された滅菌対象物Wは、滅菌が完了した後に、第2搬送室22から第3定置搬送体413に引き渡される。第3定置搬送体413は、滅菌後の滅菌対象物Wを第2搬送室22の内部に搬送する。
【0059】
図9に示すように、第2搬送室22の内部に搬送された滅菌対象物Wは、第3定置搬送体413から、第1昇降搬送体43に引き渡される。第2搬送室22に配置された、第1昇降搬送体43、および、第2昇降搬送体44も、第1搬送室21に配置された、第1昇降搬送体43、および、第2昇降搬送体44の場合と同様の昇降動作および搬送動作を行う。これにより、第1昇降搬送体43に引き渡された滅菌対象物Wは、第2搬送室22に設けられた遮蔽壁3を越えられる。
【0060】
第2搬送室22に設けられた遮蔽壁3を越えた滅菌対象物Wは、第2搬送室22に設けられた第2昇降搬送体44から第4定置搬送体414に引き渡される。第4定置搬送体414は、第2搬送室22の出口232に向けて滅菌対象物Wを搬送する。第2搬送室22の出口232に搬送された滅菌対象物Wは、滅菌後領域A2である、第2搬送室22の外部に搬出される。
【0061】
ところで、実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。前記発明を実施するための形態として記載した構成以外については、任意の構成であり、適宜削除および変更することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 滅菌室
2 搬送室
3 遮蔽壁
4 搬送装置
5 昇降装置
6 送風装置
21 第1搬送室
22 第2搬送室
41 第1昇降搬送体
42 第2昇降搬送体
51 駆動源
52 リンク機構
61 第1送風装置
62 第2送風装置
6AW 風
6BW 風
W 滅菌対象物
100 電子線滅菌設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9