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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166515
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】埋込磁石型モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241122BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082662
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】和田 昭人
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】埋込磁石型モータのコギングトルクを少なくする。
【解決手段】埋込磁石型モータ1のロータ30において、ロータコア32は、磁石33が配置されるスリット35と、周方向に隣り合うスリット35の間に位置する磁極部34と、スリット35の径方向外側において周方向に隣り合う磁極部34を繋ぐ外側連結部36を備える。磁極部34の外周面における周方向の中央部分には、内周側に凹む凹部341が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等角度間隔に配置された複数の磁石および前記磁石が埋設されるロータコアを備えるロータと、前記ロータの外周側に等角度間隔で配置されるとともにコイルが巻回される複数の突極を備えるステータと、を有し、
前記ロータコアは、前記磁石が配置されるスリットと、周方向に隣り合う前記スリットの間に位置する磁極部と、前記スリットの径方向外側において周方向に隣り合う前記磁極部を繋ぐ外側連結部と、を備え、
前記磁極部の外周面における周方向の中央部分に、内周側に凹む凹部が設けられていることを特徴とする埋込磁石型モータ。
【請求項2】
前記凹部は、前記磁極部の周方向の中央を頂点として内周側へ凹む湾曲形状であり、
前記磁極部の外周面において、前記凹部から周方向の両側へ前記外側連結部まで延びる一対の磁極部端部分のそれぞれは、外周側へ凸となる湾曲形状であることを特徴とする請求項1に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項3】
前記外側連結部の外周面は、前記スリットの周方向の中央において外周側へ凸となる湾曲形状である凸部と、前記凸部から周方向の両側へ前記磁極部端部分まで延びる一対の外側連結部端部分と、を備え、
前記一対の外側連結部端部分のそれぞれは、内周側に凹む湾曲形状であることを特徴とする請求項2に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項4】
前記凸部および前記外側連結部端部分は、いずれも円弧形状であり、
前記凸部の曲率半径は、前記外側連結部端部分の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項5】
前記凸部は、前記ロータコアの外周面において最も径方向外側に突出した部分よりも内周側に位置することを特徴とする請求項3に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項6】
前記磁極部における前記凹部の頂点は、前記ロータコアの外周面において最も径方向内側に位置することを特徴とする請求項2に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項7】
前記外側連結部の径方向内側の縁は、径方向と直交する方向に延びる直線部と、前記直線部の周方向の中央において径方向外側に凹む第1の切欠き部と、を備え、
前記磁石は、前記直線部に径方向内側から当接し、
前記第1の切欠き部の内面と前記磁石との間に、フラックスバリアとなる第1の空隙が設けられていることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項8】
前記スリットの周方向の両側の側面の径方向外側の端部には、周方向に凹む第2の切欠き部が設けられ、
前記第2の切欠き部の内面と前記磁石との間に、フラックスバリアとなる第2の空隙が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項9】
前記ロータコアは、前記スリットの径方向内側において周方向に隣り合う前記磁極部を繋ぐ内側連結部を備え、
前記内側連結部と前記磁石との間に、フラックスバリアとなる第3の空隙が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の埋込磁石型モータ。
【請求項10】
前記磁極部は、前記磁石の径方向内側の端部と周方向で隣り合う位置に、フラックスバ
リアとなる孔部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の埋込磁石型モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体からなるロータコアの内部に複数の磁石が埋設されたロータを備えた埋込磁石型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
埋込磁石型モータのロータとして、鋼板を積層して構成したロータコアに放射状に配置された複数のスリットを形成し、複数のスリットの各々に磁石が埋設されたものが用いられる。この種の埋込磁石型モータは、特許文献1に開示される。
【0003】
特許文献1の埋込磁石型モータでは、ロータコアは周方向に等角度間隔に配置された複数の磁極部を備えており、隣り合う磁極部の間に設けられたスリットに磁石が埋め込まれている。ロータコアは、磁極間の漏れ磁束が磁石の外周側を通過することによる有効磁束の減少を抑制するため、磁石の外周側を周方向に延びて隣り合う磁極部を繋ぐ外周部の外周面を、円弧よりも内周側に後退させるとともに、外周側に突出する凸形状にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-139877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
埋込磁石型モータでは、ロータの回転時にロータコアからステータコアへ飛び出す磁束量の変化が大きいことに起因して、コギングトルクが増大することが問題となっている。そこで、ロータコアの外周部における磁束密度を平均化でき、コギングトルクを低減できるロータコア形状を実現したいという要望がある。
【0006】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、埋込磁石型モータにおいて、コギングトルクを低減できるロータコア形状を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の埋込磁石型モータは、等角度間隔に配置された複数の磁石および前記磁石が埋設されるロータコアを備えるロータと、前記ロータの外周側に等角度間隔で配置されるとともにコイルが巻回される複数の突極を備えるステータと、を有し、前記ロータコアは、前記磁石が配置されるスリットと、周方向に隣り合う前記スリットの間に位置する磁極部と、前記スリットの径方向外側において周方向に隣り合う前記磁極部を繋ぐ外側連結部と、を備え、前記磁極部の外周面における周方向の中央部分に、内周側に凹む凹部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ロータコアの磁極部の外周面に、磁極部の周方向の中央の位置で内周側に凹む凹部が設けられている。このようにすると、ロータコアからステータコアへ飛び出す磁束が、磁極部の周方向の中央に集中することを緩和できるため、周方向の位置による磁束量のばらつきを少なくすることができる。従って、ロータの回転時にロータコアからステータコアへ飛び出す磁束量の変化を少なくすることができ、コギングトルクを低減させることができる。
【0009】
本発明において、前記凹部は、前記磁極部の周方向の中央を頂点として内周側へ凹む湾曲形状であり、前記磁極部の外周面において、前記凹部から周方向の両側へ前記外側連結
部まで延びる一対の磁極部端部分のそれぞれは、外周側へ凸となる湾曲形状であることが好ましい。このように、磁極部の外周面の形状を湾曲形状を繋げた波形にすることで、磁束部の外周面において磁束密度の急激な変化を少なくすることができる。従って、コギングトルクを低減させることができる。
【0010】
本発明において、前記外側連結部の外周面は、前記スリットの周方向の中央において外周側へ凸となる湾曲形状である凸部と、前記凸部から周方向の両側へ前記磁極部端部分まで延びる一対の外側連結部端部分と、を備え、前記一対の外側連結部端部分のそれぞれは、内周側に凹む湾曲形状であることが好ましい。このように、外側連結部の外周面を複数の湾曲形状を繋げた波形にすることで、外側連結部における磁束の集中を緩和でき、磁束密度の急激な変化を抑制できる。従って、コギングトルクを低減させることができる。また、外側連結部の周方向の両端において外側連結部の径方向の幅が細くなりすぎてロータコアの強度が不足することを回避できる。
【0011】
本発明において、前記凸部および前記外側連結部端部分は、いずれも円弧形状であり、前記凸部の曲率半径は、前記外側連結部端部分の曲率半径よりも大きいことが好ましい。このようにすると、周方向の中央の凸部は、曲率半径が大きい平坦な円弧形状になるので、磁束密度の変化が緩やかになる。従って、コギングトルクを低減させることができる。また、凸部を平坦な形状とすることにより、外側連結部の径方向外側への突出量を少なくすることができる。従って、外側連結部を磁束が通りにくくなるので、漏れ磁束を少なくすることができる。
【0012】
本発明において、前記凸部は、前記ロータコアの外周面において最も径方向外側に突出した部分よりも内周側に位置することが好ましい。このように、凸部の径方向外側への突出量が少なければ、外側連結部を磁束が通りにくくなるので、漏れ磁束を少なくすることができる。
【0013】
本発明において、前記磁極部における前記凹部の頂点は、前記ロータコアの外周面において最も径方向内側に位置することが好ましい。このように、凹部の凹み量(深さ)を大きくすることにより、磁極部の周方向の中央への磁束の集中をより大きく緩和できる。
【0014】
本発明において、前記外側連結部の径方向内側の縁は、径方向と直交する方向に延びる直線部と、直線部の周方向の中央において径方向外側に凹む第1の切欠き部と、を備え、前記磁石は、前記直線部に径方向内側から当接し、前記第1の切欠き部の内面と前記磁石との間に、フラックスバリアとなる第1の空隙が設けられていることが好ましい。このようにすると、外側連結部への磁束の漏れを少なくすることができ、有効磁束の減少を抑制できる。
【0015】
本発明において、前記スリットの周方向の両側の側面の径方向外側の端部には、周方向に凹む第2の切欠き部が設けられ、前記第2の切欠き部の内面と前記磁石との間に、フラックスバリアとなる第2の空隙が設けられていることが好ましい。このような位置に空隙を設けると、ステータ側からの磁界の影響を低減させることができ、磁石の減磁を生じにくくすることができる。
【0016】
本発明において、前記ロータコアは、前記スリットの径方向内側において周方向に隣り合う前記磁極部を繋ぐ内側連結部を備え、前記内側連結部と前記磁石との間に、フラックスバリアとなる第3の空隙が設けられていることが好ましい。このようにすると、内周側へ回り込む漏れ磁束を少なくすることができるので、有効磁束の減少を抑制できる。
【0017】
本発明において、前記磁極部は、前記磁石の径方向内側の端部と周方向で隣り合う位置
に、フラックスバリアとなる孔部が設けられていることが好ましい。このようにすると、内周側へ回り込む漏れ磁束を少なくすることができるので、ステータに鎖交する有効磁束の減少を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロータコアの磁極部の外周面に、磁極部の周方向の中央の位置で最も内周側に凹む凹部が設けられている。これにより、ロータコアからステータコアへ飛び出す磁束が、磁路になっている磁極部の周方向の中央に集中することを緩和できるため、周方向の位置による磁束量のばらつきを少なくすることができる。従って、ロータの回転時にロータコアからステータコアへ飛び出す磁束量の変化を少なくすることができ、コギングトルクを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る埋込磁石型モータを回転軸線を含む平面で切断した断面図である。
図2】ロータおよびステータコアを回転軸線と直交する平面で切断した断面図である。
図3】ロータの部分拡大断面図(図2の領域Aの部分拡大図)である。
図4】磁極部および外側連結部の外周面の形状を示す拡大図である。
図5】コギングトルクの測定結果を示すグラフである。
図6】他の実施形態のロータコアを備えるロータの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した埋込磁石型モータについて説明する。図1は本発明に係る埋込磁石型モータ1を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図である。図2はロータ30およびステータコア21を回転軸線Lと直交する平面で切断した断面図である。本明細書において、埋込磁石型モータ1の回転軸線Lが延在する方向を回転軸線方向とし、回転軸線方向の一方側(出力軸2が突出している側)を出力側L1とし、回転軸線方向の他方側(出力軸2が突出している側とは反対側)を反出力側L2とする。
【0021】
(全体構造)
図1図2に示すように、埋込磁石型モータ1(以下、単にモータ1という)は、モータハウジング10と、モータハウジング10の内側に配置された筒状のステータ20と、ステータ20の内側に回転可能に配置されたロータ30を備える。モータハウジング10は、モータ1の回転軸線方向に開口を向けた筒状部11と、筒状部11の出力側L1の端部に固定された第1軸受ホルダ12と、筒状部11の反出力側L2の端部に固定された第2軸受ホルダ13を備える。第1軸受ホルダ12の内周側にはボールベアリングからなる第1軸受14の外輪が保持される。また、第2軸受ホルダ13の内周側にはボールベアリングからなる第2軸受15の外輪が保持される。また、第2軸受ホルダ13の反出力側L2には図示しないエンコーダカバーが取り付けられ、エンコーダカバーの内側に図示しないエンコーダが配置される。エンコーダは、ロータ30の回転数や角度位置を検出する。
【0022】
ステータ20は、径方向内側に突出する複数の突極24を等角度間隔に備える環状のステータコア21と、ステータコア21の各突極24に絶縁部材22を介して巻回されたコイル23を備えており、筒状部11の内側に固定される。コイル23は、ステータコア21の端部に配置された図示しない配線基板に接続される。配線基板には給電線が接続されており、給電線および配線基板を介してコイル23に電力が供給される。
【0023】
ロータ30は、ステータ20の内側に回転可能な状態で配置される。ロータ30は、モータ1の回転軸線方向に延在する回転軸31と、回転軸31の外周側に固定されたロータ
コア32と、ロータコア32に埋め込まれた磁石33を備える。回転軸31は、ロータコア32の出力側L1および反出力側L2に突出する。回転軸31の出力側L1の端部には、第1軸受ホルダ12から突出する出力軸2が設けられている。
【0024】
ロータコア32は、珪素鋼板などの磁性体の板(磁性板)を複数枚積層した積層体である。図2に示すように、ロータコア32には、放射状に配置された複数の磁石33が埋め込まれている。ロータコア32の外周側には、ロータコア32に向けて突出する複数の突極24が放射状に配置される。磁石33および突極24は等角度間隔に配置されている。本形態では、ロータコア32に埋め込まれた磁石33の数は10であり、ステータ20に設けられた突極24の数は12であるため、モータ1は10極12スロットのモータである。突極24に巻回されるコイル23には、U相、V相、W相の3相の電流が供給される。なお、ロータ30の磁極数は2以上であればいくつでもよく、突極24の本数も12でなくてもよい。
【0025】
(ロータコア)
図3はロータ30の部分拡大断面図であり、図2の領域Aの部分拡大図である。図2図3に示すように、ロータコア32において、周方向に隣り合う磁石33の間の部分は磁極部34である。ロータコア32には、放射状に配置された複数のスリット35が等角度間隔で形成され、各スリット35に磁石33が埋設される。また、ロータコア32は、周方向に隣り合う磁極部34を繋いでおりスリット35および磁石33の径方向外側に位置する外側連結部36と、周方向に隣り合う磁極部34を繋いでおりスリット35および磁石33の径方向内側に位置する内側連結部37を備える。
【0026】
磁極部34には、スリット35の径方向内側の端部と周方向で隣り合う位置に打ち抜き孔38が形成される。磁極部34は、打ち抜き孔38の径方向内側に位置する磁極部内周部39を備える。磁極部内周部39および内側連結部37は、ロータコア32の内周部分を構成しており、ロータコア32の中心に固定される回転軸31を囲む。ロータコア32は、焼き嵌めにより回転軸31に固定される。
【0027】
スリット35および打ち抜き孔38は、ロータコア32を回転軸線方向に打ち抜いて形成される。スリット35は径方向に延在しており、打ち抜き孔38は六角形である。スリット35および打ち抜き孔38は、ロータコア32の回転軸線方向の端面に開口する。
【0028】
ロータ30には、フラックスバリアとして機能する空隙が4箇所に設けられている。各磁石33は、径方向外側に位置する外側連結部36との間に径方向の隙間である第1の空隙51が設けられるとともに、径方向内側に位置する内側連結部37との間に径方向の隙間である第3の空隙53が設けられる位置に埋め込まれている。また、各スリット35の径方向外側の端部には、磁石33の周方向の側面との間に周方向の隙間である第2の空隙52が設けられている。さらに、各磁極部34に設けられた打ち抜き孔38(孔部)は、第4の空隙54を形成している。
【0029】
(スリットの形状)
スリット35は、径方向に延びる磁石収容部350を備える。磁石33は一定厚さの板状であり、周方向を向く端面が磁石収容部350の周方向の両側の側面41、42と接する。磁石33は、周方向の一方側を向く端面と他方側を向く端面とが異なる極となるように着磁されている。また、周方向で隣り合う磁石33の磁極は反転しており、同極の磁極同士が周方向に対向する。
【0030】
スリット35の径方向外側の端部の内面には、径方向と直交する方向に延びる直線部43と、直線部43の周方向の中央において径方向外側へ矩形状に凹む第1の切欠き部44
が設けられている。磁石33は、径方向外側の端面が直線部43に径方向内側から当接する位置に位置決めされる。第1の切欠き部44の内面と、磁石33の径方向外側の端面との間の径方向の隙間が第1の空隙51である。
【0031】
第1の空隙51を設けたことにより、外側連結部36に接続される磁路が狭まる。これにより、外側連結部36への磁束の漏れが少なくなる。従って、漏れ磁束が減少し、有効磁束が増大して、モータトルクが増大する。
【0032】
磁石収容部350の周方向の両側の側面41、42における径方向外側の端部には、周方向に凹む第2の切欠き部45が設けられている。このため、磁石収容部350は、径方向外側の端部に磁石33よりも周方向の幅が広い幅広部を備える。第2の切欠き部45の内面と、磁石33の周方向の側面との間の周方向の隙間が第2の空隙52である。
【0033】
第2の空隙52はロータコア32の外周部に配置され、隣り合う磁極部34を繋ぐ外側連結部36の内周側に位置する。このような位置に第2の空隙52を設けると、ステータ20側からの磁界の影響を低減させることができ、磁石33の減磁を生じにくくすることができる。外側連結部36は、第3の空隙53が形成されたことによって、その周方向の長さが長くなっている。
【0034】
スリット35の径方向内側の端部の内面は、周方向の両端部分が磁石33の径方向内側の端面に接しており、周方向の中央には、径方向内側へ矩形状に凹む第3の切欠き部46が設けられている。第3の切欠き部46の内面と、磁石33の径方向内側の端面との間の径方向の隙間が第3の空隙53である。
【0035】
ロータコア32の磁極部34に形成された打ち抜き孔38は六角形であり、磁極部34の周方向の中央を通り径方向に延びる基準線P(図4参照)を基準として周方向に対称な形状である。打ち抜き孔38の周方向の両側には、スリット35との間を区画する薄肉部55が設けられている。磁石33は、径方向内側が第3の空隙53に囲まれ、周方向の両側が薄肉部55および第4の空隙54に囲まれている。従って、磁石33の径方向内側へ回り込む漏れ磁束を少なくすることができる。
【0036】
上記のように、打ち抜き孔38は6角形であり、薄肉部55の径方向外側には、径方向外側へ向かうに従って磁極部34の周方向の中央へ向かう傾斜面56が設けられている。従って、磁極部34を通る磁束は、傾斜面56に沿う方向に導かれ、磁極部34の周方向の中央へ向かいながら径方向外側へ向かう。
【0037】
(磁極部の外周面形状)
図4は、磁極部34および外側連結部36の外周面の形状を示す拡大図である。図3図4に示すように、磁極部34の外周面における周方向の中央部分には、内周側に凹む凹部341が設けられている。凹部341は、磁極部34の周方向の中央を通る基準線Pを基準として周方向に対称な形状であり、基準線Pの位置において最も内周側に凹む形状である。より詳細には、凹部341は、磁極部34の周方向の中央を頂点として内周側へ湾曲する湾曲形状である。例えば、凹部341は、半径1.25mmの円弧形状である。図4に示すように、凹部341の頂点は、ロータコア32の外周面において最も径方向内側に位置する。
【0038】
磁極部34の外周面は、凹部341から周方向の両側へ外側連結部36まで延びる一対の磁極部端部分342を備える。各磁極部端部分342は、外周側へ凸となる形状に湾曲している。ここで、凹部341とその両側の磁極部端部分342は、曲率が不連続とならないように滑らかに繋がる。従って、磁極部34の外周面は、全体として滑らかな波形の
凹凸形状をしている。より詳細には、磁極部端部分342は、凹部341に繋がる側の部分が外周側へ凸となる形状に湾曲しているが、外側連結部36の側へ向かうに従って曲率半径が増大しており、外側連結部36に繋がる部分は、直線状に延びる平面部343となっている。なお、平面部343を設けず、磁極部端部分342の全体が湾曲形状であってもよい。
【0039】
(外側連結部の外周面形状)
図4に示すように、外側連結部36の外周面は、スリット35の周方向の中央を頂点として外周側へ凸となる形状に湾曲する湾曲形状の凸部361を備える。より詳細には、凸部361は円弧形状であり、例えば、その半径は30mmである。凸部361の周方向の幅は、スリット35に設けられた第1の切欠き部44の周方向の幅(例えば、8mm)よりも大きい。凸部361は曲率半径が大きい円弧状であるため、径方向外側への突出量は少ない。図4からわかるように、ロータコア32の外周面において最も径方向外側へ突出しているのは磁極部端部分342の頂点であり、凸部361の頂点は磁極部端部分342よりも径方向内側に位置する。
【0040】
外側連結部36の外周面は、凸部361から周方向の両側へ磁極部端部分342まで延びる一対の外側連結部端部分362を備える。各外側連結部端部分362は、内周側に凹む湾曲形状である。例えば、外側連結部端部分362は、半径6.30mmの円弧形状である。凸部361とその両側の外側連結部端部分362は、曲率が不連続とならないように滑らかに繋がる。さらに、外側連結部端部分362と磁極部端部分342は、曲率が不連続とならないように滑らかに繋がる。すなわち、磁極部端部分342の平面部343は、外側連結部端部分362の端部の接線方向に延びている。
【0041】
(コギングトルク)
図5は、コギングトルクの測定結果を示すグラフである。本形態において、上記のようなロータコア32の外周面形状を採用した理由は、試作したモータ1のコギングトルクを計測し、磁場解析を行った結果、磁束密度が平均化され、コギングトルクの改善が見られたからである。
【0042】
図5に示す「実施例1」のデータは、図3図4に示す本実施形態のロータコア形状を採用したモータ1のコギングトルクの測定結果である。図5に示す「従来」のデータは、磁極部34の外周面が全体として径方向外側へ凸となる湾曲状であり、磁極部34の外周面に凹部341のような凹みが設けられていないロータコア形状のコギングトルクである。
【0043】
図6は、他の実施形態のロータコア32Aを備えるロータの部分拡大断面図である。図6に示す形態と上記実施形態との相違点は、外側連結部36の径方向内側の縁に第1の切欠き部44が設けられておらず、第1の空隙51がない点である。図5に示す「実施例2」のデータが、図6に示すロータコア形状でのコギングトルクである
【0044】
図に示すように、「実施例1」「実施例2」のロータコア形状を採用した場合は、いずれも、磁極部34に凹部341が設けられていない「従来」のロータ形状と比較して、コギングトルクが低減されることがわかる。
【0045】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本発明の埋込磁石型モータ1は、等角度間隔に配置された複数の磁石33および磁石33が埋設されるロータコア32を備えるロータ30と、ロータ30の外周側に等角度間隔で配置されるとともにコイル23が巻回される複数の突極24を備えるステータ20と、を有する。ロータコア32は、磁石33が配置されるスリット35と、周
方向に隣り合うスリット35の間に位置する磁極部34と、スリット35の径方向外側において周方向に隣り合う磁極部34を繋ぐ外側連結部36と、を備える。磁極部34の外周面における周方向の中央部分に、内周側に凹む凹部341が設けられている。
【0046】
このように、磁極部34の外周面の周方向の中央に凹部341を設けたことにより、ロータコア32からステータコア21へ飛び出す磁束が磁極部34の周方向の中央に集中することを緩和できる。従って、周方向の位置による磁束量のばらつきが少ないので、ロータ30の回転時にロータコア32からステータコア21へ飛び出す磁束量の変化が少ない。よって、コギングトルクを低減させることができる。
【0047】
本形態では、磁極部34に設けられた凹部341は、磁極部34の周方向の中央を頂点として内周側へ凹む湾曲形状である。そして、磁極部34の外周面において、凹部341から周方向の両側へ外側連結部36まで延びる一対の磁極部端部分342のそれぞれは、外周側へ凸となる湾曲形状である。従って、磁極部34の外周面の形状は、湾曲形状(例えば、円弧形状)を繋げた波形形状になっているため、磁束部の外周面において磁束密度の急激な変化が少ない。よって、コギングトルクを低減させることができる。
【0048】
なお、磁極部34の外周面は、凹部341の周方向の両側を外周側に凸となる形状にしなくてもよい。例えば、磁極部端部分を、凹部341から周方向の両側へ向かうに従って径方向外側へ向かう方向に直線状に、もしくは湾曲しながら延びる形状にすることもできる。
【0049】
本形態では、外側連結部36の外周面は、スリット35の周方向の中央において外周側へ凸となる湾曲形状である凸部361と、凸部361から周方向の両側へ磁極部端部分342まで延びる一対の外側連結部端部分362と、を備える。そして、一対の外側連結部端部分362のそれぞれは、内周側に凹む湾曲形状である。従って、外側連結部36の外周面の形状は、湾曲形状を繋げた波形形状になっているため、外側連結部36における磁束の集中を緩和でき、磁束密度の急激な変化が少ない。また、外側連結部36の周方向の両端において外側連結部36の径方向の幅が細くなりすぎてロータコア32の強度が不足することを回避できる。
【0050】
本形態では、凸部361および外側連結部端部分362は、いずれも円弧形状であり、凸部361の曲率半径は、外側連結部端部分362の曲率半径よりも大きい。従って、凸部361は、曲率が大きい平坦な円弧形状であるため、磁束密度の変化が緩やかである。従って、コギングトルクを低減させることができる。また、凸部361が平坦な形状であって径方向外側への突出寸法が少ない。よって、外側連結部36を磁束が通りにくくなっているため、漏れ磁束が少ない。
【0051】
なお、外側連結部36の外周面の形状は、本形態の形状に限定されるものではなく、他形状に変更することもできる。例えば、周方向の両端に内周側へ凹む湾曲形状を設けず、外側連結部36の外周面全体を、外周側へ突出する1つの平坦な湾曲形状にすることができる。
【0052】
本形態では、外側連結部36に設けられた凸部361は、ロータコア32の外周面において最も径方向外側に突出した部分(すなわち、磁極部端部分342の頂点)よりも内周側に位置する。このように、径方向外側への突出寸法が小さければ、外側連結部36を磁束が通りにくい。従って、漏れ磁束が少ない。
【0053】
本形態では、磁極部34における凹部341の頂点は、ロータコア32の外周面において最も径方向内側に位置する。このように、凹部341の凹み量(深さ)を大きくするこ
とにより、磁極部34における磁束の集中をより大きく緩和できる。
【0054】
本形態では、外側連結部36の径方向内側の縁は、径方向と直交する方向に延びる直線部43と、直線部43の周方向の中央の位置において径方向外側に凹む第1の切欠き部44を備える。磁石33は、直線部43に径方向内側から当接する。第1の切欠き部44の内面と磁石33との間に、フラックスバリアとなる第1の空隙51が設けられている。第1の空隙51を設けることにより、外側連結部36への磁束の漏れが少なくなるため、有効磁束の減少を抑制できる。よって、モータトルクを増大させることができる。なお、図6に示す形態のように、第1の空隙51を設けなくても良い。
【0055】
本形態では、スリット35の周方向の両側の側面の径方向外側の端部には、周方向に凹む第2の切欠き部45が設けられ、第2の切欠き部45の内面と磁石33との間に、フラックスバリアとなる第2の空隙52が設けられている。このような位置に空隙を設けると、ステータ20側からの磁界の影響を低減させることができ、磁石の減磁を生じにくくすることができる。なお、第2の空隙52を設けなくてもよい。
【0056】
本形態では、ロータコア32は、スリット35の径方向内側において周方向に隣り合う磁極部34を繋ぐ内側連結部37を備え、内側連結部37と磁石33との間に、フラックスバリアとなる第3の空隙53が設けられている。従って、内周側へ回り込む漏れ磁束を少なくすることができるので、有効磁束の減少を抑制でき、モータトルクを増大させることができる。なお、第3の空隙53を設けなくてもよい。
【0057】
本形態では、磁極部34は、スリット35に配置される磁石33の径方向内側の端部と周方向で隣り合う位置に、フラックスバリアとなる打ち抜き孔38が設けられている。従って、内周側へ回り込む漏れ磁束を少なくすることができるので、有効磁束の減少を抑制でき、モータトルクを増大させることができる。なお、打ち抜き孔38を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…埋込磁石型モータ(モータ)、2…出力軸、10…モータハウジング、11…筒状部、12…軸受ホルダ、13…軸受ホルダ、14…第1軸受、15…第2軸受、20…ステータ、21…ステータコア、22…絶縁部材、23…コイル、24…突極、30…ロータ、31…回転軸、32、32A…ロータコア、33…磁石、34…磁極部、35…スリット、36…外側連結部、37…内側連結部、38…打ち抜き孔、39…磁極部内周部、41、42…側面、43…直線部、44…第1の切欠き部、45…第2の切欠き部、46…第3の切欠き部、51…第1の空隙、52…第2の空隙、53…第3の空隙、54…第4の空隙、55…薄肉部、56…傾斜面、341…凹部、342…磁極部端部分、343…平面部、350…磁石収容部、361…凸部、362…外側連結部端部分、L…回転軸線、L1…出力側、L2…反出力側、P…基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6