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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016652
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240131BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20240131BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F28F9/02 301J
F28F1/02 A
F25B39/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118938
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】320014857
【氏名又は名称】ハイリマレリジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎章
(72)【発明者】
【氏名】丹野 良城
(72)【発明者】
【氏名】中所 和生
(57)【要約】
【課題】冷媒を通流させる為の構造の簡素化が可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器10は、ヘッダタンク24と、ヘッダタンク24どうしを接続し内部を流通する冷媒と周囲を流れる空気との間で熱交換を行う複数のチューブ26とを各々有する各コア部20,22を備える。各コア部20,22は、空気の流れ方向12に複数重ねて設けられる。熱交換器10は、重ねて配置される一方のヘッダタンク24と重ねて配置される他方のヘッダタンク24との間に設けられる通路形成部材28を備える。一方のヘッダタンク24及び他方のヘッダタンク24は、互いに対向する部分にタンク側穴62を有する。通路形成部材28は、互いに対向するタンク側穴62どうしを連通させる連通穴90を有する。タンク側穴62及び連通穴90のうちの一方の穴62は、他方の穴90よりも長さがタンク長さ方向に長い長穴であり、一方の穴62は、複数の他方の穴90と連通する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相と気相との相変化を生じる冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換器であって、
対向して一対設けられるヘッダタンクと、前記ヘッダタンクどうしを接続し内部を流通する冷媒と周囲を流れる空気との間で熱交換を行う複数のチューブと、を各々有し、空気の流れ方向に複数重ねて設けられるコア部と、
重ねて配置される一方の前記ヘッダタンクと重ねて配置される他方の前記ヘッダタンクとの間に設けられる通路形成部材と、
を備え、
一方の前記ヘッダタンク及び他方の前記ヘッダタンクは、互いに対向する部分にタンク側穴を有し、
前記通路形成部材は、互いに対向する前記タンク側穴どうしを連通させる連通穴を有し、
前記タンク側穴及び前記連通穴のうちの一方の穴は、他方の穴よりも長さがタンク長さ方向に長い長穴であり、前記一方の穴は、複数の前記他方の穴と連通する、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記ヘッダタンクは、前記チューブが各々挿入される複数のチューブ挿入口を有し、前記チューブの並び方向に長い筒状に形成され、
隣り合う前記タンク側穴の間に設けられる連結部を通過して前記ヘッダタンクの周方向に延在する仮想領域を想定した際に、前記チューブ挿入口は、前記仮想領域に開口するものを含む、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記一方の穴の長さ寸法は、隣り合う一組の前記他方の穴における一方の端から他方の端までの長さ寸法より長い、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱交換器であって、
重ねて配置される一方の前記コア部及び他方の前記コア部は、前記チューブの並び方向に分割され、冷媒の通流経路がそれぞれ独立する複数の分割コア部を各々有し、
前記通路形成部材は、重ねて配置される各々の前記分割コア部の前記ヘッダタンクの間に設けられる、
ことを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンク部を有するコア部が重ねて設けられた熱交換器が開示されている。一方のコア部のタンク部には、分配部連通部が接続されており、分配部連通部は、中間タンク部に接続されている。中間タンク部には、集合部連通部が接続されており、集合部連通部は、他方のコア部のタンク部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-185723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この熱交換器は、一方のコア部のタンク部と他方のコア部のタンク部とが、分配部連通部、中間タンク部、及び集合部連通部を介して接続されている。このため、構造が複雑であった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、冷媒を通流させる為の構造の簡素化が可能な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、液相と気相との相変化を生じる冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換器は、対向して一対設けられるヘッダタンクと、前記ヘッダタンクどうしを接続し内部を流通する冷媒と周囲を流れる空気との間で熱交換を行う複数のチューブと、を各々有し、空気の流れ方向に複数重ねて設けられるコア部と、重ねて配置される一方の前記ヘッダタンクと重ねて配置される他方の前記ヘッダタンクとの間に設けられる通路形成部材と、を備え、一方の前記ヘッダタンク及び他方の前記ヘッダタンクは、互いに対向する部分にタンク側穴を有し、前記通路形成部材は、互いに対向する前記タンク側穴どうしを連通させる連通穴を有し、前記タンク側穴及び前記連通穴のうちの一方の穴は、他方の穴よりも長さが前記ヘッダタンク長さ方向に長い長穴であり、前記一方の穴は、複数の前記他方の穴と連通する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様の熱交換器では、重ねて配置される一方のヘッダタンクのタンク側穴と、他方のヘッダタンクのタンク側穴とが、両ヘッダタンク間に設けられる通路形成部材の連通穴によって連通される。そのため、一方のヘッダタンクと他方のヘッダタンクと連通する連通路を、一方のヘッダタンクと他方のヘッダタンクとの間に設けられる通路形成部材の連通穴によって形成することができる。これにより、一方のヘッダタンクと他方のヘッダタンクとを連通させる為の分配部連通部、中間タンク部、及び集合部連通部が不要となる。したがって、冷媒を通流させる為の構造の簡素化が可能な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器の斜視図である。
図2図2は、ヘッダタンクの要部の拡大図である。
図3図3は、ヘッダタンクにチューブが挿入された状態を示す要部の拡大図である。
図4図4は、図1におけるIV-IV断面図である。
図5図5は、通路形成部材の斜視図である。
図6図6は、ヘッダタンクと通路形成部材との関係を示す説明図である。
図7図7は、タンク側穴と連通穴との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱交換器10について説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、熱交換器10の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器10の斜視図である。
【0011】
熱交換器10は、車両(図示省略)に搭載される。熱交換器10は、空調装置(図示省略)で循環され液相と気相との相変化を生じる冷媒と、空調に用いられる空気との間で熱交換を行う。
【0012】
具体的には、熱交換器10は、空調に用いられる空気が通過するHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット(図示省略)内に設けられる。熱交換器10は、空調装置が暖房運転を行う際に、空調に用いられる空気との熱交換を行い、冷媒を凝縮させて空気を加熱する凝縮器である。これに限らず、熱交換器10は、空調装置が冷房運転を行う際に、空調に用いられる空気との間での熱交換を行い、冷媒を蒸発させて空気を冷却及び除湿する蒸発器であってもよい。
【0013】
熱交換器10は、空気の流れ方向12の上流側に配置された上流側コア部20と、空気の流れ方向の下流側に配置された下流側コア部22と、当該熱交換器10の両端部に設けられた補強部材23と、を有する。上流側コア部20と下流側コア部22とは、空気の流れ方向12に重ねて配置される。
【0014】
上流側コア部20及び下流側コア部22は、横方向に延在する一対のヘッダタンク24と、対をなすヘッダタンク24の間に設けられた複数のチューブ26と、その間に設けられたフィン(図示省略)と、を備える。ヘッダタンク24,チューブ26,及びチューブ26の間に設けられたフィンは、アルミニウムなどの金属によって形成され、ろう付け等によって互いに接合されて一体になる。
【0015】
また、熱交換器10は、重ねて配置される上流側コア部20のヘッダタンク24と下流側コア部22のヘッダタンク24との間に設けられる通路形成部材28を備える。
【0016】
上流側コア部20は、チューブ26の並び方向の中央部で分割され、冷媒の通流経路がそれぞれ独立する第一分割コア部30と第二分割コア部32とを有する。下流側コア部22は、チューブ26の並び方向の中央部で分割され、冷媒の通流経路がそれぞれ独立する第三分割コア部34と第四分割コア部36とを有する。
【0017】
(チューブ)
各コア部20,22に設けられた各チューブ26は、各コア部20,22のヘッダタンク24どうしを接続し内部を流通する冷媒と周囲を流れる空気との間で熱交換を行う。
【0018】
各コア部20,22は、各々のチューブ26の間を空気が通過するように、空気の流れ方向に対して交差するように設けられる。各コア部20,22は、連続して空気が通過するように、空気の流れ方向に重ねて設けられる。本実施形態の熱交換器10では、各コア部20,22が二つ並べて設けられ前後二層になっているが、二つに限らず複数設けられればよい。
【0019】
チューブ26は、平行に並べて設けられ、間隔を空けて積層される。チューブ26は、扁平な形状に形成され、厚さ方向に積層される。隣り合うチューブ26どうしの間隔には、フィンが設けられる。チューブ26は、空気の流れ方向12に対して交差する方向に積層される。チューブ26内には、冷媒が流通する流路が形成される。
【0020】
(フィン)
フィンは、隣り合うチューブ26の間に設けられ、チューブ26と交互に積層される。フィンは、チューブ26の長手方向に沿って波状に形成され、隣接する二つのチューブ26と接合される。複数のチューブ26とフィンの周囲には、空調装置のブロワ(図示省略)によって供給される空気が通過する。そのため、チューブ26の内部を流通する冷媒は、チューブ26の表面とフィンとを介して、空気との間で熱交換を行うことができる。このように、フィンは、冷媒と空気との間の熱交換を促進させる。
【0021】
(補強部材)
補強部材23は、上流側コア部20及び下流側コア部22の両端部に各々設けられる。補強部材23は、上流側コア部20及び下流側コア部22の両端部に設けられるフィンに当接する。補強部材23は、長手方向の端部が各ヘッダタンク24にそれぞれ係止され、一対のヘッダタンク24の間を連結して補強する。補強部材23は、チューブ26とフィンとをろう付けして上流側コア部20及び下流側コア部22を形成する際に、フィンにろう付けされて上流側コア部20及び下流側コア部22と一体になる。
【0022】
(ヘッダタンク)
上流側コア部20のヘッダタンク24は、チューブ26の並び方向の中央部で内部が区画され、ヘッダタンク24は、第一分割コア部30を構成する第一上部ヘッダタンク40と、第二分割コア部32を構成する第二上部ヘッダタンク42とを有する。また、上流側コア部20のヘッダタンク24は、第一分割コア部30を構成する第一下部ヘッダタンクと(図示省略)、第二分割コア部32を構成する第二下部ヘッダタンク46とを有する。第一下部ヘッダタンクと第二下部ヘッダタンク46とは内部で連通する。なお、本実施形態では、第一下部ヘッダタンクと第二下部ヘッダタンク46とが別体の場合について説明するが、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、第一下部ヘッダタンクと第二下部ヘッダタンク46とを一体にしてもよい。
【0023】
下流側コア部22のヘッダタンク24は、チューブ26の並び方向の中央部で内部が区画され、第三分割コア部34を構成する第三上部ヘッダタンク50と、第四分割コア部36を構成する第四上部ヘッダタンク52とを有する。また、下流側コア部22のヘッダタンク24は、第三分割コア部34を構成する第三下部ヘッダタンク54と、第四分割コア部36を構成する第四下部ヘッダタンク56とを有する。第三下部ヘッダタンク54と第四下部ヘッダタンク56とは互いに区画されている。
【0024】
図2は、ヘッダタンク24の要部の拡大図である。図3は、ヘッダタンク24にチューブ26が挿入された状態を示す要部の拡大図である。図4は、図1におけるIV-IV断面図である。
【0025】
図4に示すように、各ヘッダタンク24は、チューブ26の並び方向に長い筒状である(図1参照)。各上部ヘッダタンク40,50,(42,52)は、断面が略矩形状に形成されている。各上部ヘッダタンク40,50,(42,52)の上面60は、当該熱交換器10を取り付けた状態において、幅方向の中央部が上方へ向けて突出した曲面状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、第一上部ヘッダタンク40及び第三上部ヘッダタンク50は、互いに対向する部分にタンク側穴62を有する(第一上部ヘッダタンク40のみ図示)。また、第二上部ヘッダタンク42及び第四上部ヘッダタンク52も同様に、互いに対向する部分にタンク側穴62を有する。なお、図2には、第一分割コア部30の第一上部ヘッダタンク40の要部が代表して示されている。
【0027】
各上部ヘッダタンク40,(42,50,52)は、例えば五つのタンク側穴62を有する。各タンク側穴62は、各上部ヘッダタンク40,(42,50,52)の長さ方向に長い長穴である。各タンク側穴62は、ヘッダタンク24の長さ方向に所定の間隔をおいて配置されており、隣り合うタンク側穴62の間には、連結部64が存在する。
【0028】
これにより、各上部ヘッダタンク40,(42,50,52)に、ヘッダタンク24の長さ方向に長い一つのタンク側穴62を形成した場合と比較して、各上部ヘッダタンク40,(42,50,52)の剛性の低下が抑制される。
【0029】
図3及び図4に示すように、各ヘッダタンク24は、チューブ26が各々挿入される複数のチューブ挿入口66を有する。隣り合うタンク側穴62の間の連結部64を通過して各ヘッダタンク24の周方向に延在する仮想領域68を想定した際に、チューブ挿入口66は、仮想領域68に開口するものを含む(図3参照)。
【0030】
図3に示すように、各チューブ挿入口66は、バーリング加工で形成されている。各チューブ挿入口66の縁部には、挿入されたチューブ26を周面から支えるとともに、チューブ挿入口66を補強する起立壁70が形成される(図4参照)。
【0031】
図1に示すように、各ヘッダタンク24は、各コア部20,22にて対向するように一対ずつ設けられる。ヘッダタンク24は、複数のチューブ26の長手方向の両端部が各々挿入されるように配置される。各ヘッダタンク24は、冷媒を一時的に貯蔵する。
【0032】
各上部ヘッダタンク40,42,50,52の端部と、第一下部ヘッダタンクの端部と、第三下部ヘッダタンク54の端部とは、閉塞部材72で閉塞される。第二下部ヘッダタンク46の端部と第四下部ヘッダタンク56の端部とには、配管を中継するための中継部材74が設けられる。
【0033】
各コア部20,22における一方のヘッダタンク24には、空調に用いられる冷媒が流入する。一方のヘッダタンク24に流入した冷媒は、複数のチューブ26内をそれぞれ流通する。冷媒は、チューブ26を流通する際に空気との間で熱交換を行う。各コア部20,22における他方のヘッダタンク24には、チューブ26内を流通した冷媒が流れ込む。
【0034】
(通路形成部材)
図1に示すように、通路形成部材28は、重ねて配置される第一分割コア部30の第一上部ヘッダタンク40と第三分割コア部34の第三上部ヘッダタンク50との間に設けられる。また、通路形成部材28は、重ねて配置される第二分割コア部32の第二上部ヘッダタンク42と、第四分割コア部36の第四上部ヘッダタンク52との間に設けられる。
【0035】
図5は、通路形成部材28の斜視図である。図6は、ヘッダタンク24と通路形成部材28との関係を示す説明図である。
【0036】
図5に示すように、通路形成部材28は、長尺状の部材である。通路形成部材28は、重ねて配置される各コア部20,22の間に挿入される板状の挿入片80と、挿入片80の端部に形成された二股部82とによって断面Y字状に形成される。
【0037】
図4に示すように、挿入片80の厚み寸法T1は、各ヘッダタンク24の厚み寸法T2よりも大きい。
【0038】
二股部82を構成する一片84及び他片86の外側面は、各上部ヘッダタンク40,50,(42,52)の上面60の曲面に沿った湾曲面である。これにより、通路形成部材28の挿入片80を隣り合う上部ヘッダタンク40,50,(42,52)の間に配置した状態において、二股部82の一片84は、一方の上部ヘッダタンク50,(40,42,52)の上面60に面接触する。また、二股部82の他片86は、他方の上部ヘッダタンク40,(42,50,52)の上面60に面接触する。
【0039】
そして、通路形成部材28は、二股部82の一片84及び他片86が各上部ヘッダタンク40,50,(42,52)の上面60に面接触した状態で、隣り合う上部ヘッダタンク40,50,(42,52)の間への挿入量が定まる。また、この挿入状態において、通路形成部材28は、各上部ヘッダタンク40,50,(42,52)にろう付けされる。
【0040】
図6に示すように、通路形成部材28の挿入片80は、互いに対向するタンク側穴62どうしを連通させる十個の連通穴90を有する。連通穴90は、タンク側穴62よりも長さ寸法が短い楕円穴であり、二つの連通穴90が一つのタンク側穴62と連通する。
【0041】
なお、本実施形態では、タンク側穴62を連通穴90よりも長さが長い長穴としたが、本実施形態は、これに限定されるものはない。例えば、連通穴90をタンク側穴62よりも長さが長い長穴としてもよい。
【0042】
図4に示すように、通路形成部材28の挿入片80の厚み寸法T1は、各ヘッダタンク24の厚み寸法T2よりも大きい。このため、各ヘッダタンク24内の圧力が高められた状態において、挿入片80の連通穴90の内周面が形成する単位長さあたりの受圧面積は、各ヘッダタンク24のタンク側穴62の内周面が形成する単位長さあたりの受圧面積よりも大きい。
【0043】
このため、連通穴90を長穴にすると、連通穴90の内周面が形成する総受圧面積が増大する。すると、連通穴90の内周面が受ける圧力が増大するので、連通穴90が変形し得る。
【0044】
そこで、本実施形態では、タンク側穴62を連通穴90よりも長さが長い長穴とすることで、連通穴90の内周面が形成する総受圧面積の増大を抑制し、連通穴90の変形を未然に抑制する。
【0045】
図7は、タンク側穴62と連通穴90との関係を示す図であり、通路形成部材28が重ねて配置される各上部ヘッダタンク50,(40,42,52)の間にセットされた状態が示されている。
【0046】
図7に示すように、各上部ヘッダタンク50,(40,42,52)のタンク側穴62の長さ寸法L1は、隣り合う一組の連通穴90における一方の端92から他方の端94までの長さ寸法L2よりも長い。具体的に説明すると、タンク側穴62の長さ寸法L1は、隣り合う一組の連通穴90における一方の端92から他方の端94までの長さ寸法L2よりも、例えば0.5mm長い。
【0047】
これにより、通路形成部材28が各上部ヘッダタンク50,(40,42,52)の長さ方向へずれて配置された場合であっても、一組の連通穴90がタンク側穴62からはみ出すことを抑制する。よって、連通穴90とタンク側穴62との連通部分で形成される連通路が狭まることを抑制する。
【0048】
(中継部材)
図1に示すように、中継部材74は、第二下部ヘッダタンク46と連通する第二下部タンク接続パイプ100と、第四下部ヘッダタンク56と連通する第四下部タンク接続パイプ102と、を有する。また、中継部材74は、第三下部ヘッダタンク54と連通する第三下部タンク接続パイプ104を有する。各接続パイプ100,102,104には、冷媒が通流する配管(図示省略)が接続される。
【0049】
供給用の配管から第三下部タンク接続パイプ104を介して第三下部ヘッダタンク54に流入し、チューブ26内を流れて第三分割コア部34に流入した冷媒は、通路形成部材28を介して第一分割コア部30に流入する。第一分割コア部30に流入した媒体は、第一下部ヘッダタンク、第二下部ヘッダタンク46、及び第二下部タンク接続パイプ100を介して、回収用の配管で回収される。
【0050】
供給用の配管から第四下部タンク接続パイプ102を介して第四下部ヘッダタンク56に流入し、チューブ26内を流れて第四分割コア部36に流入した冷媒は、通路形成部材28を介して第二分割コア部32に流入する。第二分割コア部32に流入した媒体は、第二下部ヘッダタンク46及び第二下部タンク接続パイプ100を介して、回収用の配管で回収される。
【0051】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0052】
熱交換器10は、液相と気相との相変化を生じる冷媒と空気との間で熱交換を行う熱交換器10である。熱交換器10は、対向して一対設けられるヘッダタンク24と、ヘッダタンク24どうしを接続し内部を流通する冷媒と周囲を流れる空気との間で熱交換を行う複数のチューブ26と、を各々有する各コア部20,22を備える。各コア部20,22は、空気の流れ方向12に複数重ねて設けられる。熱交換器10は、重ねて配置される一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24との間に設けられる通路形成部材28を備える。
【0053】
一方のヘッダタンク24及び他方のヘッダタンク24は、互いに対向する部分にタンク側穴62を有する。通路形成部材28は、互いに対向するタンク側穴62どうしを連通させる連通穴90を有する。タンク側穴62及び連通穴90のうちの一方の穴62は、他方の穴90よりも長さが長い長穴であり、一方の穴62は、複数の他方の穴90と連通する。
【0054】
この構成の熱交換器10によれば、重ねて配置される一方のヘッダタンク24のタンク側穴62と、重ねて配置される他方のヘッダタンク24のタンク側穴62とは、両ヘッダタンク24の間に設けられる通路形成部材28の連通穴90によって連通される。そのため、一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24と連通する連通路を、一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24との間に設けられる通路形成部材28の連通穴90によって形成することができる。
【0055】
これにより、一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24とを連通する為の分配部連通部、中間タンク部、及び集合部連通部が不要となる。したがって、冷媒を通流させる為の構造の簡素化が可能な熱交換器10を提供することができる。
【0056】
また、タンク側穴62及び連通穴90のうちの一方の穴62は、他方の穴90よりも長さがヘッダタンク24の長さ方向に長い長穴であり、一方の穴62は、複数の他方の穴90と連通する。このため、タンク側穴62及び連通穴90が同形状の場合と比較して、各ヘッダタンク24に設けられる通路形成部材28に位置ずれが生じた場合であっても、タンク側穴62と連通穴90との連通によって形成される連通路の狭小化の抑制が可能となる。
【0057】
また、一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24とを通路形成部材28で連通させることができる。このため、一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24とを分配部連通部、中間タンク部、及び集合部連通部を用いて連通する場合と比較して、部品点数を抑えることができる。
【0058】
さらに、一方のヘッダタンク24と、分配部連通部と、中間タンク部と、集合部連通部と、他方のヘッダタンク24とを順次接続して一方のヘッダタンク24と他方のヘッダタンク24とを連通する場合と比較して、接続箇所の数を抑えることができる。これにより、冷媒漏れを抑制するために、各接続部で行う接続精度の管理コストを抑えることができる。
【0059】
これらによって、製造コストの抑制が可能となる。
【0060】
また、ヘッダタンク24は、チューブ26が各々挿入される複数のチューブ挿入口66を有し、チューブ26の並び方向に長い筒状に形成される。隣り合うタンク側穴62の間に設けられる連結部64を通過してヘッダタンク24の周方向に延在する仮想領域68を想定した際に、チューブ挿入口66は、仮想領域68に開口するものを含む。
【0061】
この構成によれば、すべてのチューブ挿入口66が、タンク側穴62から周方向へずれた部位に開口する場合と比較して、チューブ挿入口66が設けられた周方向のライン上において、ヘッダタンク24の長さ方向に分断する領域を小さくすることができる。
【0062】
これにより、ヘッダタンク24の剛性の低下が抑えられるので、補強構造を別途設けることなく、チューブ26挿入時のヘッダタンク24の変形を抑制することができる。
【0063】
また、一方の穴62の長さ寸法L1は、隣り合う一組の他方の穴90における一方の端92から他方の端94までの長さ寸法L2より長い。
【0064】
この構成によれば、通路形成部材28が一方の穴62の長さ方向にずれて配置された場合であっても、タンク側穴62と連通穴90との連通によって形成される連通路の狭小化が抑制される。これにより、通路形成部材28の取り付け精度を必要以上に高めることなく、連通穴90による流路面積の確保が可能となる。
【0065】
また、通路形成部材28にあっては、連通穴90によって形成される空隙部を少なくすることができる。このため、連通穴90を有することによる通路形成部材28の剛性低下を抑制することができる。
【0066】
また、重ねて配置される一方のコア部20及び他方のコア部22は、チューブ26の並び方向に分割され、冷媒の通流経路がそれぞれ独立する複数の分割コア部30,32,34,36を各々有する。通路形成部材28は、重ねて配置される各々の分割コア部30,32,34,36の各上部ヘッダタンク40,42,50,52の間に設けられる。
【0067】
この構成によれば、一方のコア部20及び他方のコア部22は、冷媒の通流経路がそれぞれ独立する分割コア部30,32,34,36で構成されており、各分割コア部30,32,34,36において、熱交換を独立して行うことが可能となる。
【0068】
このため、熱交換器10を用いることで、例えば、車室内空間の各場所毎に、乗員の有無又は乗員の好みに応じた適切な温度制御が可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0070】
10 熱交換器
12 流れ方向
20 上流側コア部
22 下流側コア部
24 ヘッダタンク
26 チューブ
28 通路形成部材
30 第一分割コア部
32 第二分割コア部
34 第三分割コア部
36 第四分割コア部
62 タンク側穴
64 連結部
66 チューブ挿入口
68 仮想領域
90 連通穴
92 一方の端
94 他方の端
L1 長さ寸法
L2 長さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7