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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166523
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】解体方法、及び、昇降装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20241122BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20241122BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G21F9/30 535C
E04G21/16
G21F9/30 535F
E04G23/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082675
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新見 良時
(72)【発明者】
【氏名】島 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宮城 由佳
(72)【発明者】
【氏名】阿藻 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】河本 清道
(72)【発明者】
【氏名】夛田 雅次
【テーマコード(参考)】
2E174
2E176
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174CA02
2E176AA01
2E176AA17
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】原子炉格納容器内の内容物の解体及び搬出を簡略化可能な原子力プラントの解体方法、及び、原子力プラントの解体に用いられる昇降装置を提供する。
【解決手段】原子炉格納容器2を上部2Uと下部2Lとに分割し、上部2Uを昇降装置10により上昇させることで、上部2Uと下部2Lとの間に搬出口2Aを形成し、搬出口2Aから原子炉格納容器2内の搬出対象物を搬出し、搬出の終了後に、昇降装置10により上部2Uを下降させて下部2Lに設置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器を上部と下部とに分割し、
前記上部を昇降装置により上昇させることで、前記上部と前記下部との間に搬出口を形成し、
前記搬出口から前記原子炉格納容器内の搬出対象物を搬出し、
前記搬出の終了後に、前記昇降装置により前記上部を下降させて前記下部に設置する
ことを特徴とする解体方法。
【請求項2】
前記昇降装置は、前記原子炉格納容器の周囲に配置された複数のマストに設けられた昇降部であって、前記上部に接続された前記昇降部を、前記マストに沿って移動させることにより、前記上部を上昇または下降する
ことを特徴とする請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
前記原子炉格納容器の内部に配置された内部クレーンが前記上部に位置するように、前記原子炉格納容器を前記上部と前記下部とに分割し、
前記上部を前記内部クレーンとともに上昇させた状態で、前記原子炉格納容器内の内容物を前記内部クレーンに吊り下げて揚重する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の解体方法。
【請求項4】
前記昇降装置により前記上部を保持した状態で前記上部の下端部を解体し、前記上部に次の下端部を設けることと、
前記昇降装置により前記解体後の前記上部を下降させることと、を交互に繰り返すことで、前記上部を解体する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の解体方法。
【請求項5】
原子力プラントの解体に用いる昇降装置であって、
原子炉格納容器の周囲に配置された複数のマストと、
上部と下部とに分割された前記原子炉格納容器の前記上部に固定され、かつ、前記マストに沿って上下に移動する昇降部と、を備え、
前記昇降部は、前記上部を上昇させることで、前記上部と前記下部との間に、前記原子炉格納容器内の搬出対象物を搬出する搬出口を形成する
ことを特徴とする昇降装置。
【請求項6】
前記マストは、前記原子炉格納容器と、前記原子炉格納容器の周囲に配置された外部遮蔽壁との間に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントの解体方法、及び、原子力プラントの解体に用いられる昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの廃止措置では、一例として、系統除染、安全貯蔵、原子炉や周辺設備の解体撤去、及び、建屋の解体撤去が行われる。例えば、特許文献1には、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)において使用される周辺設備の一例である蒸気発生器の解体方法が開示されている。特許文献1では、原子炉格納容器内に設置された蒸気発生器を、原子炉格納容器内で解体する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-59148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子炉格納容器から内容物を搬出する際には、内容物を細かく解体したうえで原子炉格納容器内から撤去する必要があった。そのため、原子炉格納容器内の内容物の解体及び搬出の簡略化が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する解体方法は、原子炉格納容器を上部と下部とに分割し、前記上部を昇降装置により上昇させることで、前記上部と前記下部との間に搬出口を形成し、前記搬出口から前記原子炉格納容器内の搬出対象物を搬出し、前記搬出の終了後に、前記昇降装置により前記上部を下降させて前記下部に設置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、原子炉格納容器内の内容物の解体及び搬出を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、昇降装置が配置された原子力プラントの構成を示す正面図である。
図2図2は、昇降装置が配置された原子力プラントの構成を示す上面図である。
図3図3は、分割された原子炉格納容器の上部を昇降装置によって上昇させた状態を示す正面図である。
図4図4は、原子炉格納容器の上部を上昇させたときに、当該上部に配置された内部クレーンを用いて原子炉格納容器内の内容物を揚重した状態を示す正面図である。
図5図5は、原子炉格納容器の上部を上昇させた後に、当該上部を下降させた状態を示す正面図である。
図6図6は、昇降装置の変更例として、昇降装置が破砕機を備える構成を正面から見た要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、原子力プラントの解体方法、及び、原子力プラントの解体に用いられる昇降装置の一実施形態について図1図6を参照して説明する。なお、本発明の解体方法及び昇降装置が適用される原子力プラントは、一例として、加圧水型原子炉を用いて発電を行う原子力発電所であるが、沸騰水型原子炉を用いる原子力発電所であってもよい。
【0009】
[原子力プラント]
図1に示すように、原子力プラント1は、原子炉格納容器2と、外部遮蔽壁3とを備える。原子炉格納容器2は、一例として、鋼鉄等の金属材料製である。外部遮蔽壁3は、一例として、鉄筋コンクリート製である。原子炉格納容器2は、円筒型でもよいし、釣鐘型でもよいし、円錐型でもよい。外部遮蔽壁3は、原子炉格納容器2の周囲を囲むように、かつ、原子炉格納容器2に対して隙間を空けて配置される。
【0010】
原子炉格納容器2及び外部遮蔽壁3は、基礎100によって支持される。基礎100は、原子炉格納容器2及び外部遮蔽壁3の重量を地盤に伝える。基礎100は、一例として、鉄筋コンクリートによって構成される。
【0011】
原子力プラント1は、原子炉圧力容器4と、蒸気発生器5とを備える。原子炉圧力容器4及び蒸気発生器5は、原子炉格納容器2の内部に配置される。さらに、原子炉格納容器2の内部には、加圧器(非図示)が配置されている。
【0012】
原子炉格納容器2は、内部コンクリート6を備える。内部コンクリート6は、原子炉格納容器2内で原子炉圧力容器4、蒸気発生器5、及び、加圧器等を支持するための構造体である。原子炉圧力容器4、蒸気発生器5、加圧器、及び、内部コンクリート6は、それぞれ原子炉格納容器2の内容物の一例である。
【0013】
原子炉格納容器2の内部には、内部クレーン7が配置されている。内部クレーン7は、原子炉格納容器2の内部において、例えば、内部コンクリート6に支持される原子炉圧力容器4や蒸気発生器5の上方に配置される。内部クレーン7は、原子炉格納容器2内の資材、機材、及び、設備等の内容物を吊り下げた状態で、それらを揚重及び搬送するポーラクレーンである。例えば、内部クレーン7は、原子力プラント1の操業時や点検時において、原子炉圧力容器4から燃料を取り出す際の原子炉圧力容器4の上蓋の開閉等に使用される。
【0014】
[昇降装置]
原子力プラント1の解体には、昇降装置10が用いられる。昇降装置10は、原子炉格納容器2の周囲に配置される複数のマスト11と、各マスト11に配置される昇降部12と、を備える。マスト11は、原子炉格納容器2と外部遮蔽壁3との間において、基礎100の上に設置される。マスト11は、原子炉格納容器2の頂部よりも上方まで延びる。マスト11は、非図示の控え部材を介して外部遮蔽壁3によって支持されている。
【0015】
昇降部12は、移動部12Aと、接続部12Bとを備える。移動部12Aは、マスト11に沿って上下に移動するクライミング機構である。移動部12Aは、例えば、上段部分と下段部分とを備える。移動部12Aは、例えば、上段部分をマスト11に固定した状態で下段部分をマスト11に沿って移動(例えば上昇)させた後、下段部分をマスト11に固定した状態で上段部分をマスト11に沿って移動させる。移動部12Aは、上記の動作を繰り返すことでマスト11に沿って上下に移動する。
【0016】
接続部12Bは、移動部12Aと一体に構成される。接続部12Bは、原子炉格納容器2の外面のうち特に上側の部分に対して、溶接などの手段によって固定される。昇降部12では、移動部12Aがマスト11に沿って上下に移動することで、移動部12Aと一体に構成された接続部12Bが上下に移動する。
【0017】
昇降装置10は、マスト11の上端近傍に支持梁13を備える。支持梁13は、複数のマスト11に接続されている。支持梁13は、複数のマスト11同士の距離(間隔)を一定に保つ。
【0018】
昇降装置10は、制御装置20を備える。制御装置20は、移動部12Aの動作を制御するため処理を実行する制御部と、制御部が移動部12Aの動作を制御するためのプログラム等を記憶する記憶部とを備える。
【0019】
図2に示すように、複数のマスト11は、原子炉格納容器2と外部遮蔽壁3との間に所定の間隔で配置される。図2では、一例として、等間隔に配置された12本のマスト11を備える昇降装置10の構成を図示している。また、図2では、便宜上、原子炉格納容器2にドットを付して示すとともに、外部遮蔽壁3の外形を太線によって示している。
【0020】
支持梁13は、一例として、円形状を有する。支持梁13は、複数のマスト11の各々に接続される。支持梁13は、一例として、複数のマスト11に対して、原子炉格納容器2とは反対側、すなわち外部遮蔽壁3側に配置される。
【0021】
[原子力プラントの解体方法]
以下、昇降装置10を用いた原子力プラント1の解体方法について、図3図5を参照して説明する。なお、以下に示す解体方法は、例えば、原子力プラント1の系統除染が行われた後、安全貯蔵のための期間を経た後に行われる。
【0022】
図3に示すように、まず、原子炉格納容器2の周方向に沿って原子炉格納容器2の全体に亘って原子炉格納容器2を切断する。これにより、原子炉格納容器2を上部2Uと下部2Lとに2分割する。原子炉格納容器2を切断する部位は、原子炉格納容器2の高さ方向において、原子炉圧力容器4よりも上方でもよいし、蒸気発生器5よりも上方でもよいし、内部クレーン7よりも下方でもよい。上部2Uには、昇降装置10の接続部12Bが接続されている。下部2Lには、原子炉圧力容器4や蒸気発生器5が配置された内部コンクリート6が位置している。
【0023】
そして、昇降装置10の各昇降部12をマスト11に沿って上昇させることで、上部2Uを持ち上げる。このとき、制御装置20は、上部2Uが鉛直方向に上昇するように、各マスト11に配置された移動部12Aの動作を制御する。これにより、上部2Uと下部2Lとの間に搬出口2Aが形成される。原子炉格納容器2内の内容物は、搬出口2Aから搬出される。原子炉格納容器2の内容物は、例えば、所定の大きさに解体された解体材の状態で搬出される。解体材は、例えば、内部コンクリート6が所定の大きさに切断されたコンクリートブロックや、所定の大きさに切断された原子炉圧力容器4である。
【0024】
なお、原子炉格納容器2内の解体材以外にも、原子炉格納容器2内の内容物を解体されていない状態で搬出口2Aから搬出してもよい。すなわち、本実施形態の原子力プラント1の解体方法では、原子炉格納容器2内の任意の搬出対象物が、解体された解体材の状態、もしくは、解体されていない状態で、搬出口2Aから搬出される。
【0025】
外部遮蔽壁3には、原子炉格納容器2内の搬出対象物を搬出口2Aから外部に搬出するために、任意の大きさの開口3Aが形成されてもよい。上部2Uを持ち上げた状態であれば、原子炉格納容器2内の解体作業を行うための各種の重機や大型設備を、搬出口2A及び開口3Aから原子炉格納容器2内に搬入することもできる。
【0026】
原子炉格納容器2内に内部クレーン7が設けられている場合には、内部クレーン7が上部2Uに位置するように、原子炉格納容器2が2分割される。この場合、上部2Uを上昇させた状態では、上部2Uを持ち上げる前の状態よりも内部クレーン7が上方に移動する。したがって、原子炉格納容器2内の内部クレーン7の揚程が増加する。
【0027】
図4に示すように、昇降装置10を用いた原子力プラント1の解体方法の一例は、上部2Uを内部クレーン7とともに持ち上げたときに、原子炉格納容器2内の内容物を内部クレーン7に吊り下げて揚重する。
【0028】
従来の解体方法では、蒸気発生器5のような大型の資機材は、上部2Uを持ち上げる前では揚程が不足することから、内部クレーン7を用いてそのまま揚重することができない場合がある。その場合、蒸気発生器5の搬出には、内部クレーン7の揚程に応じて蒸気発生器5を解体する必要があった。もしくは、原子炉格納容器2に上方から開口を形成した後、外部に配置された大型のクレーンによって当該開口から蒸気発生器5を引き上げる必要があった。
【0029】
この点、本実施形態によれば、上部2Uを持ち上げる前では揚程が不足する大型の内容物であっても、解体せずに揚重するための揚程を確保できる。もしくは、大型の内容物を解体する際の分割数を少なくすることが可能となる。なお、揚重した内容物は、解体せずに、もしくは、搬出口2A及び開口3Aを通過可能な大きさに解体された後、外部に搬出することができる。
【0030】
図5に示すように、上部2Uを持ち上げた状態での原子炉格納容器2内の搬出対象物の搬出が終了した後、昇降装置10の昇降部12をマスト11に沿って下降させることで、上部2Uを下降させて下部2Lの上に設置する。これにより、搬出口2Aが形成された原子炉格納容器2が再び塞がれる。
【0031】
例えば、原子炉圧力容器4や蒸気発生器5の搬出が終了した後に上部2Uを下降させることで、搬出口2Aが形成された原子炉格納容器2を再び塞いだ状態で内部コンクリート6の解体を行うことができる。これにより、原子炉圧力容器4や蒸気発生器5を搬出した後の内部コンクリート6の解体作業において、内部コンクリート6の粉塵が外部に飛散することを抑制できる。また、内部コンクリート6の解体後には、図5に示す状態から再び上部2Uを持ち上げることで、内部コンクリート6の解体材を搬出口2Aから外部に搬出できる。なお、図5では、搬出された原子炉圧力容器4を蒸気発生器5二点鎖線で図示している。
【0032】
原子炉格納容器2内の原子炉圧力容器4、蒸気発生器5、及び、内部コンクリート6等が搬出された後には、内部クレーン7等の原子炉格納容器2内の各種設備も解体及び搬出される。その後、原子炉格納容器2及び外部遮蔽壁3が解体されることで、原子力プラント1の全体が解体される。
【0033】
原子力プラント1の解体方法の一例は、原子炉格納容器2を解体する工程を含む。原子炉格納容器2を解体する工程の一例は、まず、昇降装置10により上部2Uを保持した状態で上部2Uの下端部を解体する。上部2Uの下端部の解体は、上部2Uの下端部が所定の加工位置に配置された状態で行われる。加工位置は、例えば、下部2Lの上方における所定の高さの位置である。
【0034】
例えば、昇降装置10により上部2Uを下部2Lから浮かせるように吊り下げ支持した状態で、上部2Uにおける下縁から所定の高さまでの部分、すなわち、所定の高さを有する下端部を周方向の全周に亘って解体する。これにより、上部2Uにおいて、解体された下端部よりも上方に位置する部分に次の下端部が新たに形成される。
【0035】
その後、昇降装置10を用いて、解体された上部2Uの下端部の高さの分だけ上部2Uを下降させる。これにより、上部2Uに形成された次の下端部が加工位置に配置される。そして、昇降装置10により上部2Uを保持した状態で、上部2Uの次の下端部を解体する。このように、昇降装置10により上部2Uを保持した状態で上部2Uの下端部を解体することと、昇降装置10により上部2Uを下降させることとを交互に繰り返すことにより、上部2Uの全体を下方から順に解体する。
【0036】
したがって、原子炉格納容器2を解体する工程では、昇降装置10により上部2Uを保持した状態で上部2Uの下端部を解体することで、上部2Uに次の下端部を設ける工程が行われる。その後、上部2Uに形成された次の下端部が加工位置に配置されるように、昇降装置10により上部2Uを下降させる工程が行われる。これらの工程を交互に繰り返すことにより、上部2Uの全体が下方から順に解体される。
【0037】
[実施形態の作用]
原子炉格納容器2を上部2Uと下部2Lとに分割するとともに、上部2Uを持ち上げることで、上部2Uと下部2Lとの間に搬出口2Aが形成される。原子炉格納容器2内の搬出対象物を搬出口2Aから搬出することで、例えば、内部コンクリート6を解体したコンクリートブロック等の解体材の大型化、もしくは、内容物を解体せずに搬出することが可能となる。
【0038】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)搬出口2Aから原子炉格納容器2内の搬出対象物を搬出することで、大型の内容物であっても、解体せずに搬出すること、もしくは、解体材の大型化が可能となる。これにより、解体材を形成する工程の簡略化や、搬出の工程の簡略化を図ることができる。結果として、原子力プラント1の解体に要する工期の短縮が可能となる。
【0039】
(2)搬出口2Aから原子炉格納容器2内の搬出対象物を搬出する際には、上部2Uが全天候対応型の屋根として機能する。そのため、例えば、原子炉格納容器2の全体を解体した後に原子炉格納容器2内の搬出対象物を搬出する場合と比較して作業環境を改善できる。
【0040】
(3)上部2Uを持ち上げた状態での原子炉格納容器2内の搬出対象物の搬出が終了した後、上部2Uを下降させて下部2Lの上に設置することで、原子炉格納容器2が再び閉塞される。これにより、例えば、原子炉格納容器2内から搬出対象物を搬出した後、原子炉格納容器2内の内容物(内部コンクリート6等)を切断して解体する際に原子炉格納容器2を閉塞することで、切断時の粉塵が外部に飛散することを抑制できる。さらに、原子炉格納容器2が備える空調機能を利用することもできる。そして、原子炉格納容器2が有する放射線の防護壁(管理区域)として性能を利用できる。
【0041】
(4)昇降装置10は、原子炉格納容器2の周囲に配置された複数のマスト11と、上部2Uに接続されるとともに、マスト11に沿って上下に移動する昇降部12とを備える。このような昇降装置10によれば、昇降部12がマスト11に沿って上下に移動することで、上部2Uを上昇または下降させることができる。
【0042】
(5)内部クレーン7が配置された上部2Uを持ち上げることで、内部クレーン7の揚程が大きくなる。したがって、従来では解体した状態で引き上げる必要があった大型の内容物であっても、内部クレーン7による揚重が可能となる。また、従来の蒸気発生器5の搬出方法のように、原子炉格納容器2に上方から開口を形成した後、大型のクレーンによって外部から当該開口を通じて内容物を引き上げる場合と比較すると、上部2Uが全天候対応型の屋根として機能する点でも好適である。
【0043】
(6)原子炉格納容器2と外部遮蔽壁3との間にマスト11を配置することで、外部遮蔽壁3によってマスト11への風を遮ることができる。また、控え部材を介して外部遮蔽壁3によってマスト11を支持することができる。さらに、原子炉格納容器2と外部遮蔽壁3との間にマスト11を配置することで、マスト11と上部2Uとの間の水平方向の距離が短くなる。そのため、上部2Uを持ち上げる際に、上部2Uの重量によってマスト11や昇降部12に加わる負荷(曲げモーメント)が小さくなる。加えて、原子炉格納容器2と外部遮蔽壁3とを支持する基礎100の上にマスト11が配置されるため、上部2Uの重量が加わった状態のマスト11を基礎100によって安定して支持できる。
【0044】
(7)支持梁13を設けることで、上部2Uを持ち上げる際にマスト11に対して上部2Uの重量が加わった場合でも、マスト11同士の間隔を一定に保つようにマスト11が支持される。これにより、マスト11の撓み、変形を抑制できる。
【0045】
(8)昇降装置10により上部2Uを保持した状態で上部2Uの下端部を解体することと、昇降装置10により上部2Uを下降させることと、を交互に繰り返すことで原子炉格納容器2の上部2Uが下方から順に解体される。このような解体方法であれば、上部2Uのうち下方の部分が解体される際にも、上部2Uのうち上方の部分を全天候対応型の屋根として用いることができる。また、このような解体方法であれば、高所での作業を行わずに、比較的低所である下部2Lの近傍での作業によって上部2Uの全体を解体できる。
【0046】
[変更例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
図6に示すように、昇降装置10は、外部遮蔽壁3を解体するための破砕機14を備えてもよい。破砕機14は、一例として、各昇降部12に取り付けられる。破砕機14は、外部遮蔽壁3の上端を破砕する。この場合、原子炉格納容器2内の内容物の解体及び搬出後に外部遮蔽壁3を解体する際に、破砕機14による外部遮蔽壁3の解体と、昇降部12による破砕機14の移動(下降)とを繰り返すことで、外部遮蔽壁3を上から順に解体することができる。言い換えれば、上部2Uの持ち上げに利用したマスト11及び昇降部12を、外部遮蔽壁3を解体する際の破砕機14の移動にも用いることができる。
【0048】
・昇降装置10において、マスト11が原子炉格納容器2と外部遮蔽壁3との間に配置される構成を例示した。これに限定されず、例えば、外部遮蔽壁3の外側にマスト11を配置してもよい。
【0049】
・原子炉格納容器2内の内部クレーン7が上部2Uに位置するように、原子炉格納容器2を上下に2分割する場合について例示した。これに限定されず、例えば、内部クレーン7を原子力プラント1の解体に用いない場合には、上部2Uから内部クレーン7を取り外してもよい。また、原子炉格納容器2を上部2Uと下部2Lとに分割する際には、原子炉格納容器2における上下方向の任意の部位で分割してよい。
【0050】
・原子力プラント1の解体方法において、昇降装置10の構成は、上部2Uを上昇させて搬出口2Aを形成するとともに、上部2Uを下降させて下部2Lに設置することができるのであれば、特に限定されない。
【0051】
・例えば、上部2Uを持ち上げた状態において、マスト11が控え部材等によって十分に安定した状態が保たれるのであれば、支持梁13は割愛されてもよい。また、支持梁13の形状は、上記実施形態で説明した円形状に限定されず、例えば、原子炉格納容器2を挟んで向かい合うマスト11同士を直線的に結ぶような形状であってもよい。
【0052】
・昇降装置10により上部2Uを保持した状態で上部2Uの下端部を解体することと、昇降装置10により上部2Uを下降させることと、を交互に繰り返すことで原子炉格納容器2の上部2Uを下方から順に解体する解体方法を例示した。この場合、上部2Uの下端部が解体される加工位置は、一定の高さでもよいし、下端部が解体されるごとに異なる高さが設定されてもよい。また、上記の原子炉格納容器2の解体方法は、原子炉格納容器2内の内容物の搬出が完了した後に行われる場合に限定されない。例えば、上部2Uの下端部を解体と、上部2Uの下降とを交互に繰り返すなかに、原子炉格納容器2内の内容物の搬出が行われてもよい。原子炉格納容器2の解体方法は、上記の例に限定されず、例えば、上部2Uを下部2Lに設置した状態で上部2Uを解体してもよい。この場合、上部2Uを上端から下方に向けて順に解体するなど、任意の箇所から解体することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…原子力プラント、2…原子炉格納容器、2A…搬出口、2L…下部、2U…上部、3…外部遮蔽壁、3A…開口、4…原子炉圧力容器、5…蒸気発生器、6…内部コンクリート、7…内部クレーン、10…昇降装置、11…マスト、12…昇降部、12A…移動部、12B…接続部、13…支持梁、14…破砕機、20…制御装置、100…基礎。
図1
図2
図3
図4
図5
図6