(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166530
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241122BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241122BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241122BHJP
B24B 7/22 20060101ALI20241122BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241122BHJP
B24B 7/17 20060101ALI20241122BHJP
B24B 19/22 20060101ALI20241122BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/304 622G
H01L21/304 622H
H01L21/68 P
H01L21/68 S
B24B7/22 Z
B24B7/04 A
B24B7/17 Z
B24B19/22
B24B41/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082686
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】大木 博文
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰広
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂久
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 真哉
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C049
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034AA13
3C034BB72
3C034BB73
3C034DD10
3C034DD20
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA16
3C043BC06
3C043CC04
3C043CC11
3C043CC12
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD05
3C049AA04
3C049AA09
3C049AB04
3C049CA01
3C049CB03
5F057AA03
5F057AA34
5F057BA11
5F057BA16
5F057CA18
5F057CA19
5F057DA11
5F057DA38
5F057EB16
5F057FA13
5F057FA17
5F057FA37
5F057GB02
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5F057GB31
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA37
5F131CA07
5F131CA12
5F131EB01
5F131EB32
5F131EB35
5F131EB37
(57)【要約】
【課題】ウエハの一方の面を保持した状態で保持している面を研削することが可能である半導体製造装置を提供する。
【解決手段】平面視においてウエハ10の第1主面10aの中央部に当接し、ウエハ10を保持する第1主面保持部1と、平面視においてウエハ10の中心と重なって第1主面10aに垂直な方向に延びる回転軸9を中心として回転し、第1主面10aの中央部を囲む領域である外周部に当接して第1主面10aの外周部を研削する第1研削部3と、を備える半導体製造装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視においてウエハの第1主面の中央部に当接し、前記ウエハを保持する第1主面保持部と、
平面視において前記ウエハの中心と重なって前記第1主面に垂直な方向に延びる回転軸を中心として回転し、前記第1主面の中央部を囲む領域である外周部に当接して前記第1主面の外周部を研削する第1研削部と、
を備えた半導体製造装置。
【請求項2】
前記第1研削部は平面視において中央にくり抜いた領域である第1くり抜き部を有し、前記第1主面保持部が平面視において前記第1くり抜き部に重なって配置された請求項1の半導体製造装置。
【請求項3】
前記回転軸を中心として回転し、前記第1主面の反対面である第2主面に当接して前記第2主面を研削する第2研削部を備えた請求項1の半導体製造装置。
【請求項4】
前記第2研削部は平面視において中央に、くり抜いた領域である第2くり抜き部または前記第2主面から遠ざかる方向に凹んだ領域である凹み部を有する請求項3の半導体製造装置。
【請求項5】
前記第2研削部は、平面視において前記回転軸から遠くなるにしたがって、前記回転軸の延在する方向において前記第2主面に近づく領域を有する請求項3の半導体製造装置。
【請求項6】
前記第2研削部は前記第2主面の全面に当接する請求項3の半導体製造装置。
【請求項7】
前記第2研削部が回転する方向は前記第1研削部が回転する方向と逆の方向である請求項3~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記第2研削部の単位時間当たりの回転数は前記第1研削部の単位時間当たりの回転数より大きい請求項3~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記第1主面保持部は真空吸着によって前記第1主面を吸着し前記ウエハを保持する請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
前記第1主面保持部は前記第1主面が前記第2主面に対して鉛直方向において下となるように前記ウエハを保持する請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記ウエハの端面に当接して前記ウエハを保持する端面保持部を備えた請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成するSiC基板であるウエハの表面にエピタキシャル成長によってエピタキシャル層を形成したときに,ウエハの裏面には特にその外周部に裏面突起と称される円錐状の突起が発生することがあり,またウエハの表面には特にその外周部にエピクラウンと称される外周端に沿った環状の突起が発生することがある。裏面突起やエピクラウンが発生すると半導体装置製造工程の写真製版プロセスにおいてデフォーカスが発生するなどのトラブルの原因となる。
【0003】
ウエハの突起に関しては、特許文献1においてウエハの表面側でウエハを保持した状態で中央に空洞を有する研磨盤を回転させてウエハの裏面の外周部に当接させ、ウエハの裏面の外周部に発生した突起を除去する研削装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置はウエハの表面を保持した状態でウエハの裏面の研削を行う装置であり、ウエハの裏面に発生した裏面突起を除去しているときには、同時に表面に他の処理、例えば表面に発生した表面突起の除去などを行うことができないという問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、ウエハの一方の面を保持した状態で保持している面を研削することが可能である半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る半導体製造装置は、平面視においてウエハの第1主面の中央部に当接し、ウエハを保持する第1主面保持部と、平面視においてウエハの中心と重なって第1主面に垂直な方向に延びる回転軸を中心として回転し、第1主面の中央部を囲む領域である外周部に当接して第1主面の外周部を研削する第1研削部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1主面保持部がウエハの第1主面の中央部に当接してウエハを保持しながら第1研削部によって第1主面の外周部を研削することが可能となる。このため第1主面の反対面において同時に他の処理を行うことが可能となり、ウエハ両面の処理を短時間で実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る半導体製造装置の概要を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体製造装置の概要を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る半導体製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る半導体製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る半導体製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図7】実施の形態1に係る半導体製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図8】実施の形態2に係る半導体製造装置の概要を示す断面図である。
【
図9】実施の形態3に係る半導体製造装置の概要を示す断面図である。
【0010】
本開示においてはウエハの第1主面をウエハ裏面、第1主面と反対側の面である第2主面をウエハ表面と称することがある。また鉛直方向における上方向を上(上方向)、その逆を下(下方向)と称することがある。また縦方向とはウエハが装置に載置されたときのウエハの第1主面および第2主面と垂直な方向であり、横方向とは縦方向と直交する方向である。また平面視とはウエハが装置に載置されたときのウエハの第1主面および第2主面と垂直な方向から視た視方であり、断面視とはウエハの第1主面および第2主面と平行な方向から視た視方である。
【0011】
<実施の形態1>
実施の形態1に係る半導体製造装置101の概要を説明する。
図1は上方からみた半導体製造装置101の概要を示す平面図であり、
図2は
図1における半導体製造装置101のA-A断面を示す断面図である。なお
図1、
図2は半導体製造装置101を示すものであるが、本開示の構造、作用、効果に対する主要な構成のみを示したものであり、任意に構成される装置筐体、駆動部(モーター、シリンダー含む)などは図示していない。また
図2は各構成の説明をわかりやすくするために、点線で示すウエハ10が装置に載置され、保持された状態の半導体製造装置101を示している。
【0012】
図1および
図2に示すように半導体製造装置101はウエハ10の第1主面であるウエハ裏面10aに当接してウエハ10を保持する第1主面保持部である裏面保持部1、ウエハ10の外周端の端面であるウエハ端面に当接してウエハ10を保持する端面保持部2、ウエハ裏面10aに対面して配置され、ウエハ裏面10aの外周部に当接して研削する第1研削部3、ウエハ10の第2主面であってウエハ裏面10aに対して反対面であるウエハ表面10bに対面して配置され、ウエハ表面10bに当接して研削する第2研削部6を備える。なおウエハ10はウエハ裏面10aの側にSi層11を備え、ウエハ表面10bの側にエピタキシャル層12を備えている。以下でそれぞれの構成について詳細に説明する。
【0013】
裏面保持部1は装置筐体(図示しない)の内部に設けられ、ウエハ裏面10aの中央部に当接してウエハ10を保持する保持手段である。裏面保持部1のウエハ10に当接する面である保持面1aは平面となっており、さらに別途設けられた真空ポンプ(図示しない)に接続された吸引口(図示しない)が設けられている。保持面1aがウエハ裏面10aに当接した際に真空ポンプを作動させることによりウエハ10を保持面1aに真空吸着させ、保持することができる。なお裏面保持部1はこのような真空吸着によるものに限定されず、ウエハ10を保持することができればよい。
【0014】
端面保持部2はウエハ端面に当接してウエハ10を保持する保持手段である。端面保持部2は装置筐体(図示しない)に取り付けられており、ウエハ10と同等の厚みを有する端面保持板を接続されたエアシリンダー(図示しない)によってウエハ10の中央方向に向かってウエハ端面に押し付けてウエハ10を保持するものである。
図2においては端面保持部2がウエハ10を保持した状態を図示しているが、保持を解除する場合は各々の端面保持部2がウエハ10から外側に向かって退避する。端面保持部2はウエハ端面の全周に当接していなくてもよく、複数個所にウエハ10を挟んで対向するように設けられていればよい。本実施の形態では
図1に示すようにウエハ10の外周端の外側4か所に設けられている。端面保持部2により研削中にウエハ10の外周部が表裏方向に上下動することやウエハ10が横方向にずれたりすることが抑制される。
【0015】
端面保持部2はエアシリンダーで端面保持板を押し付ける構造には限定されず例えば弾性を有する端面保持板を押し付ける構造でもよい。端面保持部2は、複数の端面保持板を有することができる。なおウエハ10の保持に関しては研削時に外れたりずれたりすることなく保持することができればよく、裏面保持部1または端面保持部2のいずれか一方が十分な保持力を有する場合は、他方は設けられなくてもよい。
【0016】
第1研削部3はウエハ裏面10aに対面して配置されウエハ裏面10aの外周部を研削するものであり、研磨材、例えばダイヤモンド砥粒を含んだ砥石などで構成される。第1研削部3は平面視において環状の形状であり、中央部にくり抜いた領域である第1くり抜き部5を有する。裏面保持部1は平面視において第1くり抜き部5に重なるように配置されており、ウエハ裏面10aの中央部に当接し、ウエハ10を保持する。第1研削部3は第1研削ステージ4に取り付けられている。
【0017】
第1研削ステージ4は第1研削ステージ4を回転させる第1モーター(図示しない)に接続されている。第1モーターが回転することにより、第1研削ステージ4およびそれに取り付けられた第1研削部3が裏面保持部1の保持面1aに垂直であり、すなわちウエハ裏面10aに垂直な回転軸9を中心に回転する。第1モーターは回転方向や回転速度を任意に設定することができる制御部(図示しない)と接続されている。
【0018】
また第1研削ステージ4は第1研削ステージ4の位置を保持面1aに垂直な方向に上下動させる第1上下駆動部(図示しない)に接続されている。第1上下駆動部が駆動することにより第1研削ステージ4とともに第1研削部3も上下動しウエハ裏面10aとの当接有無が制御される。半導体製造装置101はさらに保持面1aと垂直な方向における第1研削ステージ4の位置を検出する第1センサ(図示しない)を有している。第1上下駆動部および第1センサは制御部に接続されており、第1センサによる位置情報によって、第1上下駆動部を制御し、第1研削ステージ4の位置を上下に変動させることが可能となっている。
【0019】
第2研削部6はウエハ表面10bに対面して配置されウエハ表面10bの外周部を研削するものである。第2研削部6は第2研削ステージ7に取り付けられている、半導体製造装置101はさらに第2研削ステージ7を、回転軸9を中心に回転させる第2モーター(図示しない)、第2研削ステージ7の保持面1aに垂直な方向の位置を変動させる第2上下駆動部(図示しない)、および保持面1aに垂直な方向における第2研削ステージ7の位置を検出する第2センサ(図示しない)を備えている。第2モーター、第2上下駆動部および第2センサの構成や機能はそれぞれ第1モーター、第1上下駆動部および第1センサと同様のため説明は省略する。
【0020】
第1研削部3においては中央部に第1くり抜き部5が設けられていたが、第2研削部6においても同様に第2研削部6および第2研削ステージ7の中央部をくり抜いた領域である第2くり抜き部8が設けられている。しかしながら第2研削部6においては第2くり抜き部8ではなく、第2くり抜き部8の領域に第2研削部6が前記第2主面から遠ざかる方向に凹んだ凹み部が設けられていてもよい。第2くり抜き部8または凹み部が設けられることにより、第2研削部6がウエハ表面10bの外周部のみに当接し、ウエハ表面10bの外周部のみを研削することが可能となる。
【0021】
なおウエハ10の研削を湿式で行う場合には研削中にウエハ裏面10aと第1研削部3との間およびウエハ表面10bと第2研削部6との間に水等の液体を供給する給水部(図示しない)を備えていてもよい。
【0022】
次に半導体製造工程における半導体製造装置101の動作について説明する。以下の説明は半導体製造工程の中のウエハ製造工程であり、さらに具体的にはエピタキシャル成長工程後のウエハ研削工程における半導体製造装置101の動作に関するものである。なお当該説明において示す図はウエハ研削工程を模式的に示す断面図であり、半導体製造装置101については
図1のA-A断面と同じ断面を示しているが、本開示の構造、作用、効果に対する主要な構成のみを示し、任意に構成される装置筐体、駆動部(モーター、シリンダー含む)などは図示していない。
【0023】
エピタキシャル成長工程後のウエハ研削工程においてはまずウエハ10を半導体製造装置101に搬入する搬入工程が行われる。
図3はウエハ搬入前の搬入工程を模式的に示す断面図である。
図3に示すようにウエハ10が搬入される前は第1研削部3と第2研削部6がそれぞれ紙面上下方向に互いに遠ざかるような位置に退避しており、さらに端面保持部2も紙面左右方向において外側に退避している。
【0024】
次にその状態でウエハ10が搬送ハンド(図示しない)によって裏面保持部1の上に載置され、裏面保持部1と端面保持部2によって保持される。
図4はウエハ搬入後の搬入工程を模式的に示す断面図である。
図4に示すようにウエハ10が裏面保持部1の保持面1aの上に搬入されると裏面保持部1の真空ポンプがオンしてウエハ10が裏面保持部1の保持面1aに吸着され、次に端面保持部2がウエハ10の中心に向かって移動し、ウエハ端面に当接してウエハ10を横方向から保持する。このときウエハ10は平面視においてウエハ10の中心と回転軸9とが重なる位置に保持される。
【0025】
なお搬送ハンドは半導体製造装置101に備えられていてもよいが、例えば搬送ロボットのような別の装置に備えられていてもよい。
【0026】
搬入工程において、ウエハ10はウエハ裏面10aが第1研削部3と面し、ウエハ表面10bが第2研削部6と面するように搬入される。ここでウエハ裏面10aとはエピタキシャル工程において裏面だった面であり、ウエハ10においてSi層11が設けられている側の面である。またウエハ表面10bとはエピタキシャル工程において表面だった面であり、ウエハ10においてエピタキシャル層12が設けられている側の面である。さらに詳細は後述するがウエハ裏面10aの外周部には突起部13が発生しており、またウエハ表面10bの外周部には突起部14が発生している。
【0027】
搬入工程でウエハ10が搬入されると、次にウエハ裏面10aの突起部13およびウエハ表面10bの突起部14を研削する研削工程が実施される。研削工程においてはまず第1モーターおよび第2モーターが起動して第1研削ステージ4および第2研削ステージ7が回転軸9を中心に互いに逆の回転方向に回転する。回転方向は同方向であってもよいが、逆方向とするとウエハ10が上下の研削ステージの回転方向に連れ回りしてずれるのを抑制することができる。
【0028】
次に第1上下駆動部および第2上下駆動部が駆動し、第1研削部3および第2研削部6をそれぞれウエハ裏面10aおよびウエハ表面10bに近づけ、当接させて研削が行われる。
図5および
図6はウエハ研削工程を模式的に示す断面図である。第1研削ステージ4および第2研削ステージ7がそれぞれウエハ裏面10aおよびウエハ表面10bに近づくと
図5に示すようにまず第1研削部3とウエハ裏面10aの突起部13および第2研削部6とウエハ表面10bの突起部14がそれぞれ当接し、突起部13および突起部14の研削が行われる。
【0029】
そしてさらに第1研削ステージ4および第2研削ステージ7がウエハ10に近づくと突起部13および突起部13が研削されて除去され、
図6に示すように第1研削部3と第2研削部6との上下方向の距離が突起部が無い領域のウエハの板厚に等しくなる。この時点で突起物13および突起物14が除去され、研削が完了したという判定が制御部においてなされる。第1研削部3と第2研削部6との距離は第1研削ステージ4および第2研削ステージ7の位置を検知する第1センサおよび第2センサの位置情報を利用する。
【0030】
制御部において研削が完了したと判定されると、第1上下駆動部および第2上下駆動部がウエハ10に当接していた第1研削ステージ4および第2研削ステージ7を退避させる。そしてその後に第1モーターおよび第2モーターが停止し、第1研削ステージ4および第2研削ステージ7の回転が停止される。
【0031】
研削工程が終わると搬出工程においてウエハ10が搬出される。
図7は搬出工程を模式的に示す断面図である。搬出工程においては
図7に示すように第1研削部3と第2研削部6がウエハ10から遠ざかるように第1研削ステージ4と第2研削ステージ7が退避しており、さらに端面保持部2がウエハ10の外側に退避してウエハ10の端面の保持が解除される。その後、搬送ハンドがウエハ10の上に移動してウエハ10を保持し、裏面保持部1の真空吸着が解除されて、搬出ハンドがウエハ10を装置外に搬出する。
【0032】
実施の形態1の半導体製造装置101の効果を説明する。効果の説明にあたり、まずエピタキシャル成長においてウエハ裏面10aおよびウエハ表面10bにそれぞれ発生する突起部13および突起部14について説明する。エピタキシャル成長とは半導体装置製造における薄膜結晶成長技術のひとつで、半導体の単結晶の基板上に、新しく単結晶の薄膜を成長させるプロセス技術である。エピタキシャル成長の方法の一つには、例えば気相中の成分を基板結晶表面に堆積させる気相エピタキシャル成長(VPE:Vapor Phase EpitaxyまたはCVD:Chemical Vapor Deposition)がある。
【0033】
例えばウエハ10がSiCを含んで構成されたSiC基板であるときにエピタキシャル成長をさせた場合、ウエハ裏面10a上には外周部の特にオリフラ部周辺において高さ5、6μm程度のフジツボ状の突起である裏面突起(突起部13に相当)が発生することがあり、またウエハ表面10b上には外周部において高さ15~20μm程度の環状の突起であるエピクラウン(突起部14に相当)が発生することがある。これらの裏面突起やエピクラウンはウエハ10の平坦性を損なうため、半導体製造工程の写真製版プロセスにおいてデフォーカスなどのトラブルの原因となることがある。
【0034】
そこでウエハ製造工程においてはこれら裏面突起やエピクラウンを除去するためにウエハ研削装置でウエハ10の表面を研削する工程が設けられることがある。しかしながら従来のウエハ研削装置はウエハ10の片面を保持した状態で、保持した面と逆の面を研削するものであったため、ウエハ裏面10aの裏面突起とウエハ表面10bのエピクラウンを除去するには、まず一方の面を研磨してからウエハ10の表裏を逆にして他方の面を研削する必要があった。これに対し、実施の形態1に係る半導体製造装置101は裏面保持部がウエハ裏面10aの中央部に当接してウエハ10を保持しながら第1研削部3によってウエハ裏面10aの外周部を研削するため、ウエハ表面10bにおいて別の処理を同時に実施することが可能となる。そこでウエハ表面10bを研削する第2研削部6を設けることによってウエハ表面10bの外周部の研削の処理を同時に行うことが可能となり、従来の研削装置と比較しておおよそウエハ10の片面の研削時間とウエハ10を反転して再度搬入出する時間を削減することができ、スループットが向上する効果を奏する。
【0035】
<実施の形態2>
実施の形態1ではウエハ裏面10aの外周部に発生する裏面突起とウエハ表面10bの外周部に発生するエピクラウンを表裏同時に研削することが可能な半導体製造装置101について記載した。実施の形態2ではウエハ表面10bに発生するエピクラウンの研削をより容易に行うことが可能な半導体製造装置102について説明する。なお実施の形態1と同様な構成については説明を省略する。
【0036】
図8は半導体製造装置102の断面を示す断面図であり、実施の形態1における半導体製造装置101のA-A断面に相当する位置の断面を示したものである。なお
図8は半導体製造装置102を示すものであるが、本開示の構造、作用、効果に対する主要な構成のみを示したものであり、任意に構成される装置筐体、駆動部(モーター、シリンダー含む)などは図示していない。また
図8は各構成の説明をわかりやすくするために、点線で示すウエハ10が装置に載置され、保持された状態の半導体製造装置102を示している。
【0037】
半導体製造装置102が半導体製造装置101と異なる点はウエハ表面10bを研削する第2研削部6の形状である。すなわち半導体製造装置101の第2研削部6はウエハ表面10bに当接する面がウエハ表面10bに平行な面であったのに対し、半導体製造装置102の第2研削部6は
図8に示すようにウエハ表面10bに当接する面がウエハ表面10bと平行でなく傾きを有しており、さらに具体的には回転軸9から遠くなるにしたがって第2研削部6とウエハ表面10bとの距離が近づく形状を有している。すなわち、第2研削部6は、平面視において回転軸9から遠くなるにしたがって、回転軸9の延在する方向において第2主面に近づく領域を有している。
【0038】
実施の形態2の効果について説明する。
図8に示すように、ウエハ表面10bの外周部に発生するエピクラウンはウエハ10の外周端にごく近い領域を除き、ウエハ10の中心から外周端に向かう方向において突起の高さが次第に大きくなっていく傾向がある。従ってエピクラウンを研削して除去するにはウエハ10の外周端に近いほど多くの研削が必要となる。実施の形態2にかかる半導体製造装置102においては、第2研削部6のウエハ表面10bに当接する面が回転軸9から外周に向かうにしたがってウエハ表面10bに近づく傾斜を有しているため、ウエハ10の外周端に近い部分ほど第2研削部6がより早くより強い圧力でウエハ表面10bに当接し研削を行うことができる。その結果、より効率的に短時間でウエハ表面10bのエピクラウンを除去することができるという効果を奏する。
【0039】
<実施の形態3>
実施の形態1ではウエハ裏面10aの外周部に発生する裏面突起とウエハ表面10bの外周部に発生するエピクラウンを表裏同時に研削することが可能な半導体製造装置101について記載した。実施の形態3では裏面突起およびエピクラウンに加えてウエハ表面10bに発生するエピ欠陥を同時に研削することが可能な半導体製造装置103について説明する。なお実施の形態1と同じ構成については説明を省略する。
【0040】
図9は半導体製造装置103の断面を示す断面図であり、実施の形態1における半導体製造装置101のA-A断面に相当する位置の断面を示したものである。なお
図9は半導体製造装置103を示すものであるが、本開示の構造、作用、効果に対する主要な構成のみを示したものであり、任意に構成される装置筐体、駆動部(モーター、シリンダー含む)などは図示していない。また
図9は各構成の説明をわかりやすくするために、点線で示すウエハ10が装置に載置され、保持された状態の半導体製造装置103を示している。
【0041】
半導体製造装置103が半導体製造装置101と異なる点はウエハ表面10bを研削する第2研削部6および第2研削ステージ7の形状である。すなわち、半導体製造装置101の第2研削部6および第2研削ステージ7が中央部に第2くり抜き部8を有しているのに対し、半導体製造装置103の第2研削部6および第2研削ステージ7は中央部にくり抜いた部分を有さず、第2研削部6がウエハ表面10bの全面に当接する構成となっている。
【0042】
ウエハ表面10bにはエピタキシャル成長において、前述したエピクラウン以外にも突起や凹みなどの欠陥が発生することがある。これらをエピ欠陥と称する。エピ欠陥はウエハ表面10bの主に外周部に発生するエピクラウンとは異なり、中央部も含めた全面に発生することがある。半導体製造装置103はウエハ表面10bを研削する第2研削部6がくり抜き部を有さずにウエハ表面10bの全面に対応する領域に設けられているため、第2研削部6が回転したときにウエハ表面10bの中央部に発生したエピ欠陥についても研削することができるという効果を奏する。
【0043】
なお実施の形態1~3において第1研削部3のウエハ裏面10aに当接する面はウエハ10と平行であったが、これに限定されず、実施の形態2における第2研削部6のようにウエハ10に当接する面がウエハ10に対して傾いている形状を有してもよい。回転軸9から遠ざかるに従ってウエハ裏面10aの突起13が増加する、あるいは突起13の高さが高くなるような場合には第2研削部6と同様に第1研削部3が回転軸9から遠くなるにしたがって第1研削部3とウエハ裏面10aとの距離が近づく形状とすることでより効率的に突起13を研削除去することができる。
【0044】
実施の形態1~3において研削工程で突起物の研削完了の判定は、第1研削ステージ4の位置を検出する第1センサおよび第2研削ステージ7の位置を検出する第2センサを利用し、第1研削部3と第2研削部6との距離が突起物のない状態でのウエハ10の板厚に等しくなることを検知することで行った。しかしこれには限定されず、例えば第1研削部3とウエハ裏面10aの突起物がない平坦部との距離および第2研削7とウエハ表面10bの突起物がない平坦部との距離を計測する光学センサを別途設けて判定に利用してもよい。あるいは、例えば第1モーターおよび第2モーターに流れる電流値を制御部でモニターし、研削時の電流値の変化によって第1研削部3および第2研削部6にかかる負荷の変化を検知して突起物が除去されたことを判定してもよい。
【0045】
実施の形態1~3において第1研削ステージ4および第2研削ステージ7の回転速度、すなわち単位時間当たりの回転数は変更することができる。例えばウエハ表面10bのエピクラウンはウエハ裏面10aに発生する裏面突起よりも研削除去しにくい場合があり、研削により多くの時間を要することがある。このようなときは第2研削部6の回転速度を第1研削部3の回転速度より大きくすることでウエハ表面10bの研削時間を短縮し、スループットを向上させる効果を奏する。
【0046】
実施の形態1~3において第1研削部3は環状の形状を有していた。しかしこれに限定されず、例えば回転方向に対して環状に連続していない1つまたは複数のブロック状で第1研削ステージ4に配置されていてもよい。このようなブロック状で配置されていても第1研削ステージ4が回転することでウエハ裏面10aの外周部の所望する環状の領域に当接することができればよい。同様に第2研削部6についても実施の形態1、2では環状の形状、実施の形態3では円形を有していたが、回転方向に対して環状に連続していない1つまたは複数のブロック状で配置されていてもよい。
【0047】
実施の形態1~3において裏面保持部1は鉛直方向においてウエハ10の下に配置されていた。従ってウエハ10は鉛直方向においてウエハ表面10bが上になり、ウエハ裏面10aが下になるように保持されていた。しかし逆に裏面保持部1は鉛直方向においてウエハ10の上に配置し、ウエハ10は鉛直方向においてウエハ表面10bが下になり、ウエハ裏面10aが上になるように保持されていてもよい。この構成とすることにより、ウエハ10を研削した際に研削で発生した研削くずが重力で下に落ちて第1研削ステージ4と裏面保持部1との間に入り込むことが低減され、第1研削ステージ4や裏面保持部1の動作不良を抑制する効果を奏する。
【0048】
実施の形態1~3においては、ウエハ10は裏面保持部1によって保持され、第1研削部3および第2研削部6が回転することによってウエハ裏面10aおよびウエハ表面10bを研削した。しかしこれとは逆に裏面保持部1によって保持されたウエハ10が裏面保持部1とともに回転し、第1研削部3および第2研削部6が回転せずに固定されていてもよい。またウエハ10が裏面保持部1とともに回転し、さらに第1研削部3および第2研削部6が回転してもその回転速度が異なっていればよい。これらは例えば装置の製作がしやすい構成とすればよい。
【0049】
実施の形態1~3においては、ウエハ表面10bの裏面保持部がウエハ裏面10aの中央部に当接してウエハ10を保持しながら第1研削部3によってウエハ裏面10aの外周部を研削するため、ウエハ表面10bに面する側に第2研削部7を配置し、ウエハ表面10bの研削を同時に行うことが可能となった。しかしウエハ表面10bにおいて行う処理は研削に限定されない。例えばウエハ表面10bに対面する位置にウエハ10の洗浄手段であるエアブロー装置、洗浄水(洗浄液)スプレー等の洗浄処理機構を配置し、ウエハ裏面10aの研削時に同時にウエハ表面10bの洗浄処理を実施することが可能となる構成であってもよい。
【0050】
本開示のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したによるものである。その要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また各実施の形態は組み合わせすることが可能である。また、本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【0051】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0052】
(付記1)
平面視においてウエハの第1主面の中央部に当接し、前記ウエハを保持する第1主面保持部と、
平面視において前記ウエハの中心と重なって前記第1主面に垂直な方向に延びる回転軸を中心として回転し、前記第1主面の中央部を囲む領域である外周部に当接して前記第1主面の外周部を研削する第1研削部と、
を備えた半導体製造装置。
(付記2)
前記第1研削部は平面視において中央にくり抜いた領域である第1くり抜き部を有し、前記第1主面保持部が平面視において前記第1くり抜き部に重なって配置された付記1の半導体製造装置
(付記3)
前記回転軸を中心として回転し、前記第1主面の反対面である第2主面に当接して前記第2主面を研削する第2研削部を備えた付記1または付記2の半導体製造装置。
(付記4)
前記第2研削部は平面視において中央に、くり抜いた領域である第2くり抜き部または前記第2主面から遠ざかる方向に凹んだ領域である凹み部を有する付記3の半導体製造装置。
(付記5)
前記第2研削部は、平面視において前記回転軸から遠くなるにしたがって、前記回転軸の延在する方向において前記第2主面に近づく領域を有する付記3または付記4の半導体製造装置。
(付記6)
前記第2研削部は前記第2主面の全面に当接する付記3の半導体製造装置。
(付記7)
前記第2研削部が回転する方向は前記第1研削部が回転する方向と逆の方向である付記3~6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
(付記8)
前記第2研削部の単位時間当たりの回転数は前記第1研削部の単位時間当たりの回転数より大きい付記3~7のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
(付記9)
前記第1主面保持部は真空吸着によって前記第1主面を吸着し前記ウエハを保持する付記1~8のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
(付記10)
前記第1主面保持部は前記第1主面が前記第2主面に対して鉛直方向において下となるように前記ウエハを保持する付記1~9のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
(付記11)
前記ウエハの端面に当接して前記ウエハを保持する端面保持部を備えた付記1~10のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【符号の説明】
【0053】
101、102、103 半導体製造装置、1 裏面保持部、2 端面保持部、3 第1研削部、4 第1研削ステージ、5 第1くり抜き部、6 第2研削部、7 第2研削ステージ、8 第2くり抜き部、9 回転軸、10 ウエハ、10a ウエハ裏面、 10b ウエハ表面