(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166536
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】エッジワイズコイルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20241122BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241122BHJP
H01F 5/06 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01F41/04 A
H01F27/28 147
H01F5/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082698
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴輝
(72)【発明者】
【氏名】増谷 隆志
【テーマコード(参考)】
5E043
5E062
【Fターム(参考)】
5E043AB04
5E062EE01
(57)【要約】
【課題】磁心に密接させて占積率の向上等を図れる角形螺旋状のエッジワイズコイルが得られる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、平角線状の導電材が断面短辺側で屈曲した角形状の螺旋体からなるエッジワイズコイル(C)の製造方法であり、基台(p)上で積層造形して、エッジワイズコイルとなる本体(1)と、基台から本体に連なる連接体(2)とを形成する造形工程を備える。その連接体は、本体の造形開始部に連なる基部(110、120等)と、基部以外で本体に連なる支持部(215、227等)とを有する。基部を除去した後、本体の表面に絶縁層を形成する被覆工程を行なうとよい。被覆工程後の本体を連接体から分離すれば、絶縁被覆されたエッジワイズコイルが得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線状の導電材が断面短辺側で屈曲した角形状の螺旋体からなるエッジワイズコイルの製造方法であって、
基台上で積層造形して、該エッジワイズコイルとなる本体と該基台から該本体に連なる連接体とを形成する造形工程を備え、
該連接体は、該本体の造形開始部に連なる基部と、該基部以外で該本体に連なる支持部とを有するエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項2】
前記支持部は、前記螺旋体の軸方向に関して、非隣接状に配設される請求項1に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項3】
前記支持部は、前記螺旋体の略右端側と略左端側に交互配置される請求項2に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項4】
前記本体の造形開始部は、該本体の角部であり、
該本体の辺部は、前記基台に対して斜めに延びる請求項1に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項5】
前記連接体は、前記螺旋体の軸方向の一端側と他端側に補助部を有する請求項4に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項6】
さらに、前記本体の表面に絶縁層を形成する被覆工程を備える請求項1に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項7】
さらに、前記基部を除去する除去工程を備え、
前記被覆工程は、該除去工程後になされる請求項6に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項8】
さらに、前記被覆工程後に前記本体を前記連接体から分離する分離工程を備える請求項7に記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項9】
前記造形工程は、粉末床溶融結合法によりなされる請求項1~8のいずれかに記載のエッジワイズコイルの製造方法。
【請求項10】
平角線状の導電材が断面短辺側で屈曲した角形螺旋状の積層造形物からなり、
内周側の隅部は、丸め半径1mm以下の内角部または外周側に窪んだ逃部になっているエッジワイズコイル。
【請求項11】
絶縁層を表面に有する請求項10に記載のエッジワイズコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジワイズコイルの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータ、インバータ、トランス、電動機(発電機を含む)等の電磁機器には、コイルが不可欠である。電磁機器の小型化や高性能化等を図るため、コイルの占積率、耐熱性、高周波特性等の向上が求められる。そこで、丸線を巻回したコイルに替えて、細長い矩形断面の平角線を、その短辺側を内周側にして巻回したエッジワイズコイルが提案されている。このようなエッジワイズコイルに関連する記載が、例えば、下記の文献にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-76659
【特許文献2】特開2021-114516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2では、連続した平角線を円形状に巻回したエッジワイズコイルを提案しているに過ぎない。
【0005】
また、絶縁被覆された平角線を略多角形状に巻回したエッジワイズコイルも市販されている。このようなエッジワイズコイルでは、絶縁被膜(エナメル膜等)のクラックや剥離等を回避するため、その内周側の隅部がかなり大きな円弧状に丸められている。このような隅部(隅R)は、エッジワイズコイルに内挿される磁心(コア(鉄心)、ヨーク等)との密着を妨げ、無駄な隙間を生じさせて、コイルの占積率の低下、ひいてはコイルや電磁機器の体格の増加を招く。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、占積率の向上等を図れるエッジワイズコイルの製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、角形螺旋状のエッジワイズコイルを積層造形することを着想し、それに適した形態を具現化した。このような成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0008】
《エッジワイズコイルの製造方法》
(1)本発明は、平角線状の導電材が断面短辺側で屈曲した角形状の螺旋体からなるエッジワイズコイルの製造方法であって、基台上で積層造形して、該エッジワイズコイルとなる本体と該基台から該本体に連なる連接体とを形成する造形工程を備え、該連接体は、該本体の造形開始部に連なる基部と、該基部以外で該本体に連なる支持部とを有するエッジワイズコイルの製造方法である。
【0009】
(2)本発明の製造方法によれば、屈曲した内周側にできる隅部(内角部ともいう。)に起因した浮き(乗り上げ)を抑止して、磁心(コア(鉄心)、ヨーク等)に近接可能なエッジワイズコイルが得られる。これによりエッジワイズコイル(単に「コイル」ともいう。)の占積率の向上、体格抑制等が可能となり、ひいては電磁機器の小型化や効率向上等も図れる。
【0010】
また、本発明の製造方法によれば、連接体によりコイル本体を基台に保持した状態で後処理(絶縁処理等)ができる。このため、低剛性なコイルでも取扱いが容易となり、後処理の効率化等も図られる。このような事情は、積層造形の初期にできる基部を除去して、支持部を残した状態でも同様である。これにより、基部を除去した(つまり除去痕を含む)本体への後処理も効率的に行える。
【0011】
《エッジワイズコイル》
本発明は、積層造形されたエッジワイズコイルとしても把握される。つまり本発明は、例えば、平角線状の導電材が断面短辺側で屈曲した角形螺旋状の積層造形物からなり、内周側の隅部が、丸め半径1mm以下、0.5mm以下さらには0.3mm以下の内角部または外周側に窪んだ逃部になったエッジワイズコイルでもよい。
【0012】
コイル表面に絶縁層を設けることにより、コイルの収縮、磁心への直装着等が可能となる。コイル全面が絶縁被覆されていてもよいが、短絡(絶縁破壊)しない限り、コイル表面の一部に露出域があってもよい。
【0013】
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、特に断らない限り、本明細書でいう「x~ymm」は、xmm~ymmを意味する。他の単位系についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係る積層造形物を示す部分斜視図である。
【
図4】その除去後に陽極酸化処理した積層造形物を示す写真である。
【
図5】その陽極酸化処理後に切り出したエッジワイズコイルを示す写真である。
【
図6】エッジワイズコイルの内角部に設ける逃部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、製造方法のみならず、物(エッジワイズコイル等)にも適宜該当する。方法的な構成要素であっても、物に関する構成要素ともなり得る。
【0016】
《積層造形》
(1)造形工程
造形工程は、基台上で、積層を繰り返す付加加工(AM:Additive Manufacturing)によりなされる。これにより、エッジワイズコイルとなる本体と、基台と本体を接続した連接体とを有する積層造形物が形成される。
【0017】
付加加工は、大別して7種類に分類され(ASTM規格)、粉末床溶融結合法(PBF:powder bed fusion)、指向性エネルギー堆積法(DED: Directed Energy Deposition)、結合剤噴射法(binder jetting)、材料噴射法(material jetting)、材料押出法(material extrusion)、液槽光重合法(vat photopolymerization)およびシート積層法(sheet lamination)の各方式がある。
【0018】
原料粉末(混合粉末を含む。)へ高エネルギービーム(レーザや電子ビームなどの熱源)を照射して溶融凝固(結合)させる粉末焼結積層造形法(PBF、DED)によれば、所望の導電材からなるエッジワイズコイルが得られる。PBFは、原料粉末を薄く1層敷く毎に、所定の経路で高エネルギービーム(レーザ、電子ビーム等)を走査して、原料粉末を溶融凝固させることを繰り返し、所望形状の積層造形物を得る。DEDは、高エネルギービームの焦点付近に投射した原料粉末を溶融凝固させつつ、その溶融凝固位置を走査(移動)させて所望形状の積層造形物を得る。特に、パウダーベッド方式の一種である選択的レーザ溶融方式(SLM:Selective laser melting)によれば、所望形状のエッジワイズコイルを高精度に製作できる。
【0019】
(2)本体
本体は、平角線状の導電材が断面短辺側で屈曲した角形螺旋状であり、エッジワイズコイルの基本骨格を構成する。その断面は、通常、細長い矩形(長方形)状である。適宜、その断面の短辺を厚さ、その長辺を高さという。
【0020】
本体は、コイルに内挿される磁心の形態に沿う角形状であればよい。その螺旋形状は、正多角形でも、異形状でもよい。具体的にいうと、長方形状や正方形状の他、台形等の四角形状、三角形状、五角形状、六角形状等でもよい。
【0021】
本体を構成する螺旋片の数(一般的なコイルの巻数に相当する数)は問わないが、例えば、5~500回、10~100回、20~50回である。通常、各螺旋片の形態(形状、大きさ)は同じであるが、異なる形態の螺旋片が含まれてもよい。本明細書では、各螺旋片の中心の軌跡を「螺旋軸」、その進行方向(延在方向)を「軸方向」という。軸方向の両端側にある螺旋片の端部(切れ端)は、必ずしも造形開始部でなくてもよい。
【0022】
基台に対する本体の配置は問わない。角形螺旋状の本体は、例えば、その角部が基台に連接していてもよいし、その辺部が基台に連接していてもよい。前者であれば、除去(切断等)する部分(連接体の基部)を少なくできる。
【0023】
(3)連接体
連接体は、基台から本体に連なる部分であり、少なくとも基部と支持部を有する。
【0024】
基部は、本体の造形開始部が基台と連なる部位である。基部は、本体の造形開始部(角部、辺部等)に応じた形態(形状、大きさ)であればよい。
【0025】
支持部は、基部以外で、基台から本体に連なる造形部位である。支持部により、造形不良等を回避しつつ、本体の形態自由度や基台に対する配置(傾き等)の自由度を確保できる。また支持部を設けることにより、基部を除去した後でも、本体は基台に対して保持され得る。
【0026】
支持部は、例えば、本体の軸方向に沿って、非隣接状に配設されるとよい。この場合、本体を支持部から分離したときにできる分離痕同士の接触が回避され、それらの間での短絡等が抑止される。具体例を挙げると、支持部は、例えば、螺旋体の略右端側と略左端側に交互配置されてもよい。このとき、露出した分離痕同士の接触回避に加えて、各螺旋片を基台に対して安定的に保持できる。各支持部は、基台から同じ高さになくてもよい。交互配置する他、支持部を千鳥状に配置して、各分離痕同士の接触を回避してもよい。但し、支持部を規則的に配設すれば、支持部の切断、除去等(本体の基台からの分離)を効率的に行える。
【0027】
本体の角部を造形開始部として、基台に対して本体を斜めに造形するとき(例えば、基台に対する辺部のなす角が30°~60°または40°~50°となるとき)、本体の軸方向の一端側と他端側にある辺部にそれぞれ補助部をさらに設けてもよい。基部を除去した後でも、本体の端側にある螺旋片の辺部を安定的に保持できる。
【0028】
(4)導電材
積層造形に用いる原料(粉末)は、高導電率な材質からなるとよい。例えば、純金属または合金からなる金属基材、特にCu基材(純Cu、Cu合金等)、Al基材(純Al、Al合金等)等からなる原料を用いるとよい。
【0029】
《後処理》
エッジワイズコイルは、通常、被覆処理されて用いられる。造形工程で得られた本体の表面に絶縁層を形成する被覆工程は、例えば、本体を基台に保持した状態でなされるとよい。これにより、低剛性な本体の取扱が容易になり、作業性の向上等も図れる。
【0030】
被覆工程は、基部を除去する除去工程後になされるとよい。これにより基部の除去痕にも絶縁層が形成されるため、除去痕間における短絡も抑止される。被覆工程後に除去工程を行なうときは、除去痕付近に絶縁処理を別途行なってもよい。
【0031】
基台に保持された本体に被覆工程を施したとき、本体を連接体や基台から分離する分離工程を行なうと、被覆処理されたエッジワイズコイルが得られる。分離工程は、例えば、放電加工、ワイヤーカット、レーザカット等によりなされる。
【0032】
絶縁層は、エッジワイズコイルの短絡または絶縁破壊が抑止できればよい。このため、本体全面が完全に絶縁層で被覆されている必要は必ずしもない。短絡しない限り、露出した除去痕や分離痕があってもよい。
【0033】
絶縁層の材質や厚さ等は、エッジワイズコイルの仕様(材質、耐電圧等)に応じて、適宜選択される。Al基材からなる本体に設ける絶縁層なら、例えば、陽極酸化皮膜でもよい。Cu基材からなる本体の絶縁層なら、例えば、エナメル、絶縁樹脂等からなる塗膜でもよい。塗装は、例えば、噴霧、浸漬、電着等によりなされる。
【0034】
被覆工程は、本体の面粗度(表面粗さ)の調整工程後になされてもよい。この調整工程は、例えば、化学研磨、電解研磨等の他、サンドブラスト等によりなされてもよい。凹凸を抑制した表面(平滑面)に絶縁層を設けることにより、絶縁層の厚さが均一化して、絶縁破壊電圧の向上等が図られる。
【0035】
《用途》
エッジワイズコイルの用途、使用方法は問わない。エッジワイズコイルは、例えば、磁心(コア、ヨーク等)に嵌装されて、コンバータ、インバータ、トランス、電動機(発電機を含む)等の電磁機器の一部を構成する。このとき、本発明のエッジワイズコイルの内周面を磁心の外周面に近接さらには密接した状態にできるため、占積率の増加ひいては電磁機器の小型化等が図られる。
【実施例0036】
エッジワイズコイル(試料)を積層造形法により製作した。この具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
【0037】
《モデル》
エッジワイズコイルになる造形物Mの部分斜視図を
図1に示した。説明の便宜上、図中に矢印で示した方向を上下方向、左右方向および前後方向とする。前後方向は、螺旋の進行方向(軸方向)とした。
【0038】
造形物Mは、平板状のプレートp(基台)上に造形された本体1と、本体1とプレートpを接続する連接体2とからなる。
【0039】
本体1は、略正方形状の螺旋片11、12、13、14…、(合計25巻)が連続してなる。各螺旋片は同形状であり、螺旋片の各辺部はプレートpに対して45°傾斜している。具体的にいうと、例えば、螺旋片11は、四つの辺部111、112、113、114と、各辺部間にできる角部115、116、117からなる。鱗片状11の端部110、螺旋片11の辺部114と螺旋片12の辺部121との間にできる角部120等が、本体1の造形開始部となる。
【0040】
螺旋片の各辺部は、厚さt(短辺)が幅w(長辺)より十分に小さい矩形断面(w>t)からなる。連なる辺部同士は、その短辺(厚さt)側で、内角θ(略90°)を形成している。こうして、平角断面の短辺側に屈曲した正方形状の螺旋片が連続した本体1が造形される。
【0041】
連接体2は、プレートp上からそれぞれ、各螺旋片の造形開始部である端部110、角部120…等に連なる基部110、120…等と、螺旋片11の角部115に連なる支持部215、螺旋片12の角部127に連なる支持部227…等と、螺旋片11の辺部111の中間付近に連なる補助部2105および後端側(25番目)の螺旋片にある最終の辺部の中間付近に連なる補助部(図略)とからなる。
【0042】
螺旋片毎に設けられる基部は、細く短い柱状である。螺旋片の右側端部(角部)付近または左側端部(角部)付近に交互に設けられる支持部は細長い円錐柱状である。前端側と後端側の各辺部の中間付近に設けられる補助部は細長い円柱状である。
【0043】
《積層造形》
パウダーベッド方式(粉末床溶融結合法)により、一つのプレートp上に、上述した造形物M(本体1と連接体2)を二つ造形した。その写真を
図2Aに示した。連接体2の一部を拡大した写真を
図2Bに示した。両図を併せて「
図2」という。
【0044】
各螺旋片の具体的なサイズは、平角断面:1mm×3mm、一辺長:30mm、隣接間隔(ピッチ):1.2mmとした。プレートpには純Al基板(A1070)を用いた。
【0045】
造形物Mは、純Al粉末(粒径:12~80μm)を原料粉末とし、レーザを熱源とする造形装置(SLM:SLM Solutions 社製 SLM280)を用いて製作した。
【0046】
《後処理》
(1)除去工程
造形物Mにある基部210、220…のみを、ワイヤー放電加工により除去した。除去工程後の造形物Mを
図3に示した。
【0047】
(2)被覆工程
先ず、基部を除去した造形物Mを化学研磨した(研磨工程)。面粗度を整えた造形物Mの全表面を陽極酸化処理した(被覆工程)。こうして造形物Mの表面をアルマイト(酸化アルミニウム)層で絶縁被覆した。被覆工程後の造形物Mを
図4に示した。ちなみに、被覆工程前に面粗度を調整することで、絶縁破壊電圧が300~500V程度向上することを確認している。
【0048】
(3)分離工程
被覆工程後の造形物Mを、基部215等および補助部2105等から切り離した。この加工もワイヤー放電加工により行なった。
【0049】
こうして、
図5に示すようなエッジワイズコイルCが得られた。なお、このエッジワイズコイルCには、絶縁被覆されていない分離痕(215、2105等)が残存している。それらは、絶縁被覆された他部を介して相互に離間された状態となる。このためエッジワイズコイルCは、絶縁被覆されていない露出部(分離痕)があっても、短絡等を回避できる。勿論、そのような露出部に別途、絶縁処理(塗装等)を施してもよい。
【0050】
このようにして得られるエッジワイズコイルCは、
図5からも明らかなように、矩形螺旋状であって、その内周側の隅部は実質的に丸め(隅R)がない状態(略直角)となっている。ちなみに、その隅部を拡大して観察したところ、隅Rは0.5mm以下であった。
【0051】
《変形例》
図6に示すように、例えば、辺部(111、112等)の間にできる角部(115等)の内周側に、略円弧状に窪んだ逃げ(115a等)を設けてもよい。これにより、エッジワイズコイルCの内周面を磁心の外周面へより確実に密接させられる。