IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特開2024-166540波長可変レーザ装置及びその製造方法
<>
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図1
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図2
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図3
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図4
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図5
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図6
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図7
  • 特開-波長可変レーザ装置及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166540
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】波長可変レーザ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082702
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB33
5F173MC30
5F173MD12
5F173ME64
5F173ME85
5F173MF02
5F173MF12
(57)【要約】
【課題】フォトニクス素子に対して半導体ゲインチップを接着剤により実装する場合、接着剤の濡れ広がりを抑制した波長可変レーザ装置を提供する。
【解決手段】波長可変レーザ装置1は、半導体ゲインチップ10と、半導体ゲインチップが上部に搭載されたキャリア40と、キャリア40の端面に接着剤30を介して接着されたフォトニクス素子20と、を備える。半導体ゲインチップ10の長手方向の下側端部は、フォトニクス素子20の長手方向の上側端部と対向して配置される。キャリア40の端面の接着剤30が塗布された部分の上側部分に不連続な形状41,42,43が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ゲインチップと、
前記半導体ゲインチップが上部に搭載されたキャリアと、
前記キャリアの端面に接着剤を介して接着されたフォトニクス素子と、
を備え、
前記半導体ゲインチップの長手方向の下側端部は、前記フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向して配置され、
前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側部分に不連続な形状が形成されている、波長可変レーザ装置。
【請求項2】
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側で、前記キャリアの上面に続く部分に形成されたザグリ形状である、請求項1に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項3】
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側に形成された切り欠き形状である、請求項1に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項4】
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分より突出した凸部である、請求項1に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項5】
前記接着剤は、エポキシ系接着剤である、請求項1に記載の波長可変レーザ装置。
【請求項6】
端面に不連続な形状を有するキャリアを用意し、
前記キャリアの上部に半導体ゲインチップを搭載し、
前記キャリアの端面のうち、前記不連続な形状の下側部分に接着剤を介してフォトニクス素子を接着し、
前記半導体ゲインチップの長手方向の下側端部が、前記フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向するように配置する、波長可変レーザ装置の製造方法。
【請求項7】
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側で、前記キャリアの上面に続く部分に形成されたザグリ形状である、請求項6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
【請求項8】
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側に形成された切り欠き形状である、請求項6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
【請求項9】
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分より突出した凸部である、請求項6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
【請求項10】
前記接着剤は、エポキシ系接着剤である、請求項6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は波長可変レーザ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の光通信では、モバイルフロントホールなどの領域で、多くの場合、レーザの波長を任意に変えられる機能が求められる。波長可変レーザの方式は様々なものがあるが、半導体ゲインチップとSiフォトニクス素子を組み合わせた外部共振器型波長可変レーザが特性およびコストの面から有望な候補の1つと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-204025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトニクス素子に対して半導体ゲインチップを接着剤により実装する場合、接着剤の濡れ広がりを抑制した波長可変レーザ装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様にかかる波長可変レーザ装置は、
半導体ゲインチップと、
前記半導体ゲインチップが上部に搭載されたキャリアと、
前記キャリアの端面に接着剤を介して接着されたフォトニクス素子と、
を備え、
前記半導体ゲインチップの長手方向の下側端部は、前記フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向して配置され、
前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側部分に不連続な形状が形成されている。
【0006】
本開示の一態様にかかる波長可変レーザ装置の製造方法は、
端面に不連続な形状を有するキャリアを用意し、
前記キャリアの上部に半導体ゲインチップを搭載し、
前記キャリアの端面のうち、前記不連続な形状の下側部分に接着剤を介してフォトニクス素子を接着し、
前記半導体ゲインチップの長手方向の下側端部が、前記フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向するように配置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接着剤の濡れ広がりを抑制した波長可変レーザ装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる波長可変レーザ装置のレイアウトの一例を示す。
図2】比較例にかかる半導体ゲインチップのキャリアへの実装を説明する図である。
図3】比較例にかかる実装構造例を説明する図である。
図4】実施の形態にかかる接着剤の濡れ広がりを防止する実装構造例を説明する図である。
図5】本開示を使用したキャリアの構造例を説明する上面図及び側面図である。
図6】他の実施の形態にかかる不連続な形状を説明する図である。
図7】他の実施の形態にかかる不連続な形状を説明する図である。
図8】実施の形態にかかる波長可変レーザ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
図1は、波長可変レーザ装置のレイアウトの一例を示す。図1に示す波長可変レーザ装置は、外部共振器型レーザであり、半導体ゲインチップ10とSiフォトニクス素子20を備える。半導体ゲインチップ10はその内部に光学的な利得(光学利得領域11)をもつ素子である。Siフォトニクス素子20の内部には、波長フィルタ領域(および光取り出し領域)21が設けられ、レーザに戻る光の波長を制御することでレーザの発振波長を決定することができる。それぞれの素子を精密に位置決めして固定することが必要となる。これは実装と呼ばれる。
【0011】
Siフォトニクス素子20に対して半導体ゲインチップ10を実装する場合、図2に示すように、まず半導体ゲインチップ10をキャリアに実装する。半導体ゲインチップ10の厚みとSiフォトニクス素子20の厚みは異なることが多い。そのため、その厚みの違いを吸収することがキャリア40を利用する目的の一つである。キャリア40は窒化アルミニウム(AlN)などの材料からなる場合がある。半導体ゲインチップ10をキャリア40に実装後に、キャリア40の端面に接着剤30を塗布して、Siフォトニクス20に対して実装する。接着剤30の例としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤が挙げられる。特に、低粘度であると濡れ広がりやすいエポキシ系接着剤の場合に本開示は有効であり得る。
【0012】
図3は、比較例にかかる実装構造例を説明する図である。接着剤30はキャリア40の右端面に塗布され、キャリア40の右端面とSiフォトニクス素子20の左端面との固着に使用される。接着剤30の塗布量および塗布形状を適切に管理しないと半導体ゲインチップ10の端面およびSiフォトニクス素子20の波長フィルタ等がある部分に接着剤30が濡れ広がり光学特性が劣化し得る。図3の破線領域で示した、キャリア40とSiフォトニクス素子20との間の上部領域には、接着剤を付着すべきではない。そこで、本開示は、接着剤の濡れ広がりを制御する方法を提案する。
【0013】
本開示の目的は接着剤の濡れ広がりを防止することである。その目的を果たすために、図4に示すように、キャリア40の右端面の上部の少なくとも一部にザグリ形状41を設けることを特徴とする。原理的には、接着剤30が濡れ広がるためには、接着剤が触れている面が連続的に存在することが必要である。接着剤が触れる面が不連続であれば、接着剤の濡れ広がりは表面張力によって抑制される。ザグリ形状のような不連続な形状を接着剤30の塗布領域付近に形成すれば良い。不連続な形状を作る簡単な方法の一つは段差を構成することである。図4の破線領域で示した、キャリア40とSiフォトニクス素子20との間の上部領域には、接着剤を付着すべきではない。
【0014】
段差があることで、接着剤はそれ以上に濡れ広がることができず、結果として半導体ゲインチップおよびSiフォトニクス素子の端面の濡れ広がりを抑制することができる。サグリの形状については接着剤の粘性や塗布量、塗布域、また光学特性との兼ね合いから、その深さおよび幅を決定すれば良い。一例としては、ザグリ形状の深さは0.1mm程度、ザグリ形状の幅0.03-0.05mm程度を想定するが、この限りではない。本開示を使用したキャリアの例を図5に示す。図5に示すように、キャリア40の角部、すなわち、右端面と上端面にザグリ形状を形成することで、容易に接着剤の濡れ広がりを抑制した波長可変レーザ装置を製造することができる。
【0015】
図6は、キャリア40の右端面の接着剤30が塗布された部分の上側部分に形成された切り欠き形状42を示す。他の実施形態では、サイズや形状が異なる2つ以上の切り欠きを有してもよい。例えば、切り欠き形状は、矩形、半円状又は半楕円形でもよい。
【0016】
図7は、キャリア40の右端面の接着剤30が塗布された部分の上側部分に形成された凸部43を示す。他の実施形態では、サイズや形状が異なる2つ以上の凸部を有してもよい。例えば、凸部の形状は、三角形、矩形、半円状又は半楕円形でもよい。
【0017】
以上ここまで述べてきたようにキャリアに不連続な形状を入れることで、接着剤の濡れ広がりを防止することが出来る。
【0018】
図8は、実施の形態にかかる波長可変レーザ装置の製造方法を示すフローチャートである。
端面に不連続な形状を有するキャリアを用意する(ステップS11)。キャリアの上部に半導体ゲインチップを搭載する(ステップS12)。キャリアの端面のうち、前記不連続な形状の下側部分に接着剤を介してフォトニクス素子を接着する(ステップS13)。半導体ゲインチップの長手方向の下側端部が、フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向するように配置する(ステップS14)。
【0019】
これにより、接着剤の濡れ広がりを抑制した波長可変レーザ装置を容易に製造することができる。特に、前述したザグリ形状又は切り欠き形状を形成することで、より一層容易に波長可変レーザ装置を製造することができる。
【0020】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上記実施形態では、Siフォトニクス素子について説明したが、当業者が理解しうるSi以外のフォトニクス素子にも適用可能である。
【0021】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
半導体ゲインチップと、
前記半導体ゲインチップが上部に搭載されたキャリアと、
前記キャリアの端面に接着剤を介して接着されたフォトニクス素子と、
を備え、
前記半導体ゲインチップの長手方向の下側端部は、前記フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向して配置され、
前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側部分に不連続な形状が形成されている、波長可変レーザ装置。
(付記2)
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側で、前記キャリアの上面に続く部分に形成されたザグリ形状である、付記1に記載の波長可変レーザ装置。
(付記3)
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側に形成された切り欠き形状である、付記1に記載の波長可変レーザ装置。
(付記4)
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分より突出した凸部である、付記1に記載の波長可変レーザ装置。
(付記5)
前記接着剤は、エポキシ系接着剤である、付記1~4のいずれか一項に記載の波長可変レーザ装置。
(付記6)
端面に不連続な形状を有するキャリアを用意し、
前記キャリアの上部に半導体ゲインチップを搭載し、
前記キャリアの端面のうち、前記不連続な形状の下側部分に接着剤を介してフォトニクス素子を接着し、
前記半導体ゲインチップの長手方向の下側端部が、前記フォトニクス素子の長手方向の上側端部と対向するように配置する、波長可変レーザ装置の製造方法。
(付記7)
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側で、前記キャリアの上面に続く部分に形成されたザグリ形状である、付記6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
(付記8)
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分の上側に形成された切り欠き形状である、付記6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
(付記9)
前記不連続な形状は、前記キャリアの端面の前記接着剤が塗布された部分より突出した凸部である、付記6に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
(付記10)
前記接着剤は、エポキシ系接着剤である、付記6~9のいずれか一項に記載の波長可変レーザ装置の製造方法。
【符号の説明】
【0022】
1 波長可変レーザ装置
10 半導体ゲインチップ
11 光学利得領域
20 フォトニクス素子
21 波長フィルタ領域
30 接着剤
40 キャリア
41 ザグリ形状
42 切り欠き形状
43 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8