(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166544
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】金属積層板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/082 20060101AFI20241122BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241122BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241122BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241122BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B32B15/082 B
B32B27/30 D
B32B7/022
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
H05K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082707
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】澤木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】細川 萌
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01
4F100AA01A
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AB01
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4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 シートと金属層との接着性に優れる、薄膜金属層を有する金属積層板を提供する。
【解決手段】 フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記金属層の膜厚が8μm以下であり、テープピール強度が3以上である金属積層板。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記金属層の膜厚が8μm以下であり、テープピール強度が3以上である金属積層板。
【請求項2】
フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記フッ素樹脂の融点が320℃以上、かつシートの融解熱が20mJ/mg以下であり、前記金属層の膜厚が8μm以下である金属積層板。
【請求項3】
前記シートの線膨張率(CTE)が100ppm/K以下である請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項4】
前記フッ素樹脂がポリテトフルオロエチレンである請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項5】
前記酸化物がシリカである請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項6】
前記シリカが球状粒子である請求項5記載の金属積層板。
【請求項7】
前記シリカとして、シランカップリング剤処理されたシリカ粒子を用いる請求項5記載の金属積層板。
【請求項8】
前記シリカの平均粒子径が10μm以下である請求項5記載の金属積層板。
【請求項9】
前記酸化物の含有量が、シート全量に対して30質量%以上である請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項10】
前記金属層が、銅、金、銀及び白金からなる群より選択される1つ以上で形成されている請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項11】
前記金属層が、銅で形成されている請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項12】
前記シートの10GHzでの誘電正接の値が0.0015以下である請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項13】
前記シートの厚みが5~250μmである請求項1又は2記載の金属積層板。
【請求項14】
フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、乾式めっき法により金属層を設ける工程(A)を有する、金属積層板の製造方法。
【請求項15】
フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレーティング法のいずれかの方法により金属層を設ける工程(A)を有する、金属積層板の製造方法。
【請求項16】
前記シートを、300~400℃に加熱する工程(B)を有する、請求項14又は15に記載の金属積層板の製造方法。
【請求項17】
前記金属層が銅層である、請求項14又は15記載の金属積層板の製造方法。
【請求項18】
更に、前記設けられた金属層を、湿式めっき法により厚膜化する工程(C)を有する、請求項14又は15に記載の金属積層板の製造方法。
【請求項19】
請求項1又は2に記載の金属積層板を有する回路用基板。
【請求項20】
請求項19に記載の回路用基板から形成されたアンテナ。
【請求項21】
請求項19に記載の回路用基板から形成されたモビリティ向けのミリ波アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属積層板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用プリント配線板において、伝送損失が小さい高周波用プリント配線板が求められている。このような高周波用プリント配線板において、フッ素樹脂フィルムを使用することが公知である(特許文献1等)。また、配線基板材料としてフィラーを配合したフッ素樹脂を使用することについて、特許文献2に記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、プリント基板として使用する配線基板として、表面に凹凸を有するフッ素樹脂基板に、めっき法により金属膜を形成したものが開示されている。
特許文献4には、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、ニッケル-クロム合金下地層を形成し、この上に、銅導体層を形成した2層フレキシブル基板が開示されている。
特許文献5には、ポリマーフィルム上に金属酸化物からなる層を設け、この上に金属膜を形成するフレキシブルプリント基板の作製方法が開示されている。
特許文献6には、基材フィルム上に特定の表面粗さ(Rz)を有する塗膜を配し、この上に、メッキ、スパッタ、及び蒸着の少なくともいずれかの形成法で金属膜を形成した金属張積層板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-8260号公報
【特許文献2】国際公開第2021-235460号
【特許文献3】特開2004-356547号公報
【特許文献4】国際公開第2008-090654号
【特許文献5】特開2010-192861号公報
【特許文献6】国際公開第2021-199811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、フッ素樹脂シートと金属層との接着性に優れる、薄膜金属層を有する金属積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記金属層の膜厚が8μm以下であり、テープピール強度が3以上である金属積層板である。
また、本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記フッ素樹脂の融点が320℃以上、かつシートの融解熱が20mJ/mg以下であり、前記金属層の膜厚が8μm以下である金属積層板である。
【0007】
前記シートの線膨張率(CTE)が100ppm/K以下であることが好ましい。
前記フッ素樹脂がポリテトフルオロエチレンであることが好ましい。
【0008】
前記酸化物がシリカであることが好ましい。
前記シリカが球状粒子であることが好ましい。
前記シリカとして、シランカップリング剤処理されたシリカ粒子を用いることが好ましい。
前記シリカの平均粒子径が10μm以下であることが好ましい。
前記酸化物の含有量が、シート全量に対して30質量%以上であることが好ましい。
【0009】
前記金属層が、銅、金、銀及び白金からなる群より選択される1つ以上で形成されていることが好ましい。
前記金属層が、銅で形成されていることが好ましい。
【0010】
前記シートの10GHzでの誘電正接の値が0.0015以下であることが好ましい。
前記シートの厚みが5~250μmであることが好ましい。
【0011】
本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、乾式めっき法により金属層を設ける工程(A)を有する、金属積層板の製造方法でもある。
また、本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレーティング法のいずれかの方法により金属層を設ける工程(A)を有する、金属積層板の製造方法でもある。
【0012】
前記シートを、300~400℃に加熱する工程(B)を有することが好ましい。
前記金属層が銅層であることが好ましい。
更に、前記設けられた金属層を、湿式めっき法により厚膜化する工程(C)を有することが好ましい。
【0013】
本開示は、上記金属積層板を有する回路用基板でもある。
本開示は、上記回路用基板から形成されたアンテナでもある。
本開示は、回路用基板から形成されたモビリティ向けのミリ波アンテナでもある。
【発明の効果】
【0014】
本開示の金属積層板は、薄膜金属層を有する金属積層板であって、フッ素樹脂シートと金属層との接着性に優れるものである。また、本開示により、前記金属積層板を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を詳細に説明する。
モビリティ向けのミリ波アンテナ等に使用される回路用基板として、その厚みがより薄いものが求められることがある。そのため、回路用基板となる金属積層板の導体層として金属箔を使用せず、乾式めっき法又は湿式めっき法により樹脂シートに薄膜の金属層を形成することが行われている。
従来、乾式めっき法又は湿式めっき法により薄膜の金属層を形成するにあたっては、上述の先行文献に記載されているように、樹脂シートとの密着性を確保するために、樹脂シートの表面に凹凸をつけるか、又は、樹脂シート上に、接着層として塗膜を設けるか、もしくは合金や金属酸化物の金属下地層を設けるか等を行うことが検討されてきた。
しかしながら、これらの方法では、製造工程が多くなり、金属積層板のコスト高に繋がる。また、得られる金属積層板の導体損や誘電体損が大きくなることがあるため、回路用基板としての性能が低下するといった課題があった。
【0016】
本開示は、上記のような方法によらなくても、樹脂シートと金属層との接着性に優れる、薄膜の金属層を有する金属積層板を提供することを可能とする。
本開示の金属積層板は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、直接、乾式めっき法等により金属層を設けることを特徴とするものである。
【0017】
本開示の金属積層板は、シートが酸化物を含むものであることにより、シートに、直接、薄膜金属層を設けるようにしても、接着性に優れるものである。これにより、金属積層板の性能を良好とすることができる。また、金属積層板の製造工程が簡素化でき、コスト面でも好適である。
【0018】
上記理由はまだ明確ではないが、酸化物がシート表面に一部析出していることで金属層との密着性が良好になるからであると推察される。
【0019】
本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記金属層の膜厚が8μm以下であり、テープピール強度が3以上である金属積層板である。
【0020】
本開示の金属積層板は、上記したように、フッ素樹脂と酸化物とを含むシート上に、直接、乾式めっき法等により金属層を形成したものである。
上記金属積層板は、シートが酸化物を含むことで、シート上に直接金属層を形成しても、テープピール強度が一定以上の金属積層板が得られる。
上記金属積層板は、金属層の膜厚が8μm以下の薄膜であることから、より薄いものが求められる、フレキシブル回路用基板や110GHz以上の高周波帯に使用される回路用基板、回路用基板から形成されたモビリティ向けのミリ波アンテナ等に好適に使用できる。
【0021】
本開示におけるテープピール強度は、以下の方法で評価したものである。
JIS-K5600付着性試験(クロスカット法)に使用するニチバン社製セロテープ(登録商標)(テープ幅:18mm)を用い、長さ15mmのセロテープを金属積層板の金属層面に気泡がないように張り付けた。張り付けたテープを90°の角度で剥がし、セロテープを張り付けていた金属積層体の金属層(面積270mm2)から金属が剥がれた面積を、画像解析(Python)を用いて算出し、下記により評価した。
1:金属が95%以上、剥がれた
2:金属が60%以上、95%未満剥がれた
3:金属が40%以上、60%未満剥がれた
4:金属が5%以上、40%未満剥がれた
5:金属が5%未満、剥がれた
【0022】
テープピール強度が3以上であれば、シートと金属層との接着性が良好であり、よって、金属積層板の性能も良好となる。
テープピール強度は、4以上であることが好ましく、5であることが最も好ましい。
【0023】
また、本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に金属層が設けられた金属積層板であって、前記フッ素樹脂の融点が320℃以上、かつシートの融解熱が20mJ/mg以下であり、前記金属層の膜厚が8μm以下である金属積層板である。
【0024】
金属積層板のフッ素樹脂の融点が、上記範囲内であることで、より高温で使用できるという点で有利である。
フッ素樹脂の融点は、325℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましい。フッ素樹脂の融点の上限は、特に限定されないが、390℃以下であることが好ましい。
【0025】
フッ素樹脂の融点を320℃以上とするには、フッ素樹脂の組成を調整すること等により好適に得ることができる。
【0026】
金属積層板のシートの融解熱が、上記範囲内であることで、テープピール強度が良好であるという点で有利である。
シートの融解熱は18mJ/mg以下であることが好ましく、17mJ/mg以下であることがより好ましい。シートの融解熱の下限は、特に限定されないが、5mJ/mg以上であることが好ましい。
【0027】
金属積層板のシートの融解熱を20mJ/mg以下とするには、シートを加熱処理すること等により好適に得ることができる。
シートを加熱処理することでフッ素樹脂の結晶化度が変化し、融解熱が小さくなる。融解熱が小さいと、シートが硬くなり、金属層を剥離しようとした場合に、シートの母材破壊ではなく、金属との界面破壊となるので、テープピール強度が強くなる。
【0028】
上記融点は、金属積層板をエッチング処理することによりシートを取り出し、示差走査熱量計DSC(日立ハイテク社製DSC7000X)で230℃から380℃まで10℃/minで昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
また、上記融解熱は、上記取り出したシートを、示差走査熱量計DSC(日立ハイテク社製DSC7000X)で230℃から380℃まで10℃/minで昇温したときの融解熱曲線により求めた値である。
【0029】
(酸化物)
本開示において使用するシートは、酸化物を含むことを特徴とするものである。
上記酸化物としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これら2種以上を併用するものであってもよい。
中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタンが、誘電正接(Df)を低く出来る点で好ましい。
特に、シリカが、シートの線膨張率を低くすることが出来ることから、加熱処理後のシートと金属層とのテープピール強度をより高くすることができるという点で好適である。
また、シリカとアルミナとを併用すると、10GHzでの比誘電率(Dk)を3前後に合わせることが出来る点で好適である。
【0030】
上記酸化物は、その形状を特に限定されるものではないが、球状であることが特に好ましい。球状であると、穴あけ加工時に均一に加工しやすい、比表面積が少なく伝送損失が低いという点で好ましいものである。
上記シリカは、球状シリカ粒子を使用することが好ましい。
【0031】
上記球状の酸化物は、その粒子形状が真球に近いものを意味しており、具体的には、球形度が0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.95以上が最も好ましい。球形度はSEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には、画像処理装置(スペクトリス株式会社:FPIA-3000)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。
【0032】
本開示で使用する酸化物は、粒径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上(望ましくは2.3以上、2.5以上)、D50が10μm以下であることが好ましい。更に、D90/D50が1.5以上であることが好ましい(更に望ましくは1.6以上)。D50/D10が1.5以上であることが好ましい(更に望ましくは1.6以上)。更に、D50が5μm以下であることがより好ましい。粒径が大きな酸化物の間隙に粒径が小さな酸化物が入ることが可能になるため、充填性に優れ、且つ、流動性を高くすることができる。特に粒度分布としてはガウス曲線と比較して粒径が小さい側の頻度が大きいことが好ましい。
粒径はレーザー回折散乱方式粒度分布測定装置により測定可能である。また、粗粒がシートの薄膜化を困難にするため、所定以上の粒径をもつ粗粒をフィルタなどで除去したものであることが好ましい。
【0033】
上記酸化物の平均粒子径は、特に限定するものではないが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることが更に好ましい。
平均粒径が10μmを超えると、シートを薄膜にすることが難しくなる場合がある。
上記酸化物の平均粒子径の下限は、0.5μm以上であることが好ましい。上記酸化物の平均粒子径の下限が、0.5μm未満であると、酸化物の凝集が生じることで、充分な効果が得られない場合がある。
なお、ここでの平均粒子径は、レーザー解析式粒度分布計によって測定したD50の値である。
【0034】
上記シリカの平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることが更に好ましい。
上記シリカの平均粒子径の下限は、0.5μm以上であることが好ましい。
【0035】
上記酸化物は、吸水性が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。酸化物の吸水性が上記範囲であれば、シートが吸湿することを抑制することができ、ひいては、吸湿による誘電正接の上昇が抑制されるシートを得ることができる。
酸化物の吸水性は、乾燥時の酸化物の質量を基準とする。吸水性の測定は乾燥状態にある試料を40℃、80%RHに1時間放置し、カールフィッシャー水分測定装置で200℃加熱により生成する水分を測定し、算出する。
【0036】
上記シリカの10GHzの誘電正接は、0.0025以下であることが好ましい。このような値とすることで、シートが低損失になるという点で好ましい。上記上限は、0.002であることがより好ましく、0.0015であることが更に好ましい。一方、上記誘電正接の下限は、0.00001であることが好ましい。
【0037】
本開示において、10GHzで測定したシリカの誘電正接は、円筒形空洞共振器とネットワークアナライザを用い、フィラー粉体試料を石英管に充填し、共振器内に装荷して測定した。試料挿入前後の共振器の特性(共振周波数とQ値)を取得し、その結果から誘電正接を算出した。本測定法は日本工業規格JIS2565マイクロ波用フェライト磁心試験方法に準拠するものであり、室温25℃、湿度40%の環境下測定を行った。
【0038】
また、上記酸化物は、金属積層板をエッチングすることにより得たシートを、600℃で30分間、大気雰囲気下で加熱することでフッ素樹脂を焼き飛ばし、酸化物を取り出したのち、上述の方法を用いて上記各パラメータを測定することもできる。
【0039】
上記酸化物は、表面処理が施されたものであることが好ましい。表面処理を予め施すことで、酸化物の凝集を抑制することができ、シート中に酸化物を良好に分散させることができる。これにより、シート内に酸化物の塊が存在したり、生じたりすることを抑制できる点で好適である。シート内に酸化物の塊が存在したり、生じたりすることでシートが裂けやすくなるが、表面処理された酸化物を使用することで、これを抑制することができる。
【0040】
上記表面処理としては特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。具体的には、例えば、反応性官能基を有するエポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、疎水性のアルキルシラン、フェニルシラン、フッ素化アルキルシランなどのシランカップリング剤による処理、プラズマ処理、フッ素化処理等を挙げることができる。
【0041】
これらの中でも、シランカップリング剤で表面処理し、酸化物がシランカップリング剤でコーティングされたものであることが好ましい。
シランカップリング剤でコーティングすることで、シート中での分散性が向上し、線膨張率を低くすることが出来るという点で有利である。
本開示においては、上記シリカとして、シランカップリング剤処理されたシリカ粒子を用いることが好ましい。
【0042】
上記シランカップリング剤として、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、アクリロキシトリメトキシシラン等のアクリルシラン等が例示される。
【0043】
上記球状シリカ粒子は、市販のシリカ粒子で上述した性質を満たすものを使用するものであってもよい。市販のシリカ粒子としては、例えば、デンカ溶融シリカ FBグレード(デンカ株式会社製)、デンカ溶融シリカ SFPグレード(デンカ株式会社製)、エクセリカ(株式会社トクヤマ製)、高純度合成球状シリカ粒子 アドマファイン(株式会社アドマテックス製)、アドマナノ(株式会社アドマテックス製)、アドマフューズ(株式会社アドマテックス製)等を挙げることができる。
【0044】
上記アルミナ粒子及び酸化チタン粒子は、市販のアルミナ粒子及び酸化チタン粒子で上述した性質を満たすものを使用するものであってもよい。市販のアミナ粒子としては、LS-210B(日本軽金属製)、LS-110F(日本軽金属製)等を挙げることができる。市販の酸化チタン粒子としては、TITONE SA-1(堺化学工業製)等を挙げることができる。
【0045】
上記酸化物は、シート全体の30質量%以上の割合で含まれることが好ましい。このような配合量とすることで、低誘電率、低損失を維持しながら低熱膨張になるという点で好ましい。また、酸化物の配合量がこの範囲であると、加熱処理したシートの融解熱が20mJ/mg以下となり、また、シート表面に酸化物が部分的に析出しており、金属層との接着性に優れる点で好ましい。
上記配合量は、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。酸化物の配合量の上限は特に限定されるものではないが、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
本開示において、上記酸化物の他に、セラミックス、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上の無機粒子を併用してもよい。
これらは、シート中、20質量%以下であることが好ましい。
【0047】
(フッ素樹脂)
本開示において使用するシートは、フッ素樹脂を含有するものである。フッ素樹脂は、低誘電性を有するものであることから、本開示の目的において好適に使用することができる。
【0048】
本開示において使用することができるフッ素樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE/アルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕、TFE/HFP/アルキルビニルエーテル共重合体〔EPA〕、TFE/クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、TFE/エチレン共重合体〔ETFE〕、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、分子量30万以下のテトラフルオロエチレン〔LMW-PTFE〕等が挙げられる。これらは、一種類で使用してもよいし、二種類以上を混合しても良い。
【0049】
中でも、低誘電性という観点から、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)であることが特に好ましい。PTFEはフィブリル性を有するものが好ましい。フィブリル性を有するPTFEとは未焼成のポリマー粉末をペースト押出できるPTFEを意味する。
【0050】
PTFEは、変性ポリテトラフルオロエチレン(以下、変性PTFEという)であってもよいし、ホモポリテトラフルオロエチレン(以下、ホモPTFEという)であってもよいし、変性PTFEとホモPTFEの混合物であってもよい。なお、高分子PTFEにおける変性PTFEの含有割合は、ポリテトラフルオロエチレンの成形性を良好に維持させる観点から、10重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましい。
ホモPTFEは、特に限定されず、特開昭53-60979号公報、特開昭57-135号公報、特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭62-190206号公報、特開昭63-137906号公報、特開2000-143727号公報、特開2002-201217号公報、国際公開第2007/046345号パンフレット、国際公開第2007/119829号パンフレット、国際公開第2009/001894号パンフレット、国際公開第2010/113950号パンフレット、国際公開第2013/027850号パンフレット等で開示されているホモPTFEを好適に使用できる。中でも、高い延伸特性を有する特開昭57-135号公報、特開昭63-137906号公報、特開2000-143727号公報、特開2002-201217号公報、国際公開第2007/046345号パンフレット、国際公開第2007/119829号パンフレット、国際公開第2010/113950号パンフレット等で開示されているホモPTFEが好ましい。
【0051】
変性PTFEは、TFEと、TFE以外のモノマー(以下、変性モノマーという)とからなる。変性PTFEには、変性モノマーにより均一に変性されたもの、重合反応の初期に変性されたもの、重合反応の終期に変性されたものなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。変性PTFEは、TFE単独重合体の性質を大きく損なわない範囲内で、TFEとともに微量のTFE以外の単量体をも重合に供することにより得られるTFE共重合体であることが好ましい。変性PTFEは、例えば、特開昭60-42446号公報、特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭62-190206号公報、特開昭64-1711号公報、特開平2-261810号公報、特開平11-240917号公報、特開平11-240918号公報、国際公開第2003/033555号パンフレット、国際公開第2005/061567号パンフレット、国際公開第2007/005361号パンフレット、国際公開第2011/055824号パンフレット、国際公開第2013/027850号パンフレット等で開示されているものを好適に使用できる。中でも、高い延伸特性を有する特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭64-1711号公報、特開平11-240917号公報、国際公開第2003/033555号パンフレット、国際公開第2005/061567号パンフレット、国際公開第2007/005361号パンフレット、国際公開第2011/055824号パンフレット等で開示されている変性PTFEが好ましい。
【0052】
変性PTFEは、TFEに基づくTFE単位と、変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。変性モノマー単位は、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分である。変性PTFEは、変性モノマー単位が全単量体単位の0.001~0.500重量%含まれることが好ましく、好ましくは、0.01~0.30重量%含まれる。全単量体単位は、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分である。
【0053】
変性モノマーは、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)、エチレン等が挙げられる。用いられる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0054】
パーフルオロビニルエーテルは、特に限定されず、例えば、下記一般式(1)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。
CF2=CF-ORf・・・(1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)
【0055】
本明細書において、パーフルオロ有機基は、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基である。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0056】
パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。PAVEとしては、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)が好ましい。
【0057】
上記パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)は、特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)等が挙げられる。
【0058】
変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PAVE、PFAE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0059】
上記フッ素樹脂は、非溶融加工性であることが好ましい。非溶融加工性であるとは、融点以上に加熱しても、樹脂が十分な流動性を有さず、樹脂において一般的に使用される溶融成形の手法によって成形することができない樹脂を意味する。PTFEがこれに該当する。
【0060】
本開示においては、このような非溶融加工性であるようなフッ素樹脂を使用し、これをフィブリル化するような成形方法によってフッ素樹脂シートとするものであることが好ましい。当該成形方法については、後述する。
【0061】
上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.0~2.3であることが好ましい。このようなPTFEを使用すると、高い強度(凝集力及び単位厚さあたりの突き刺し強度)を有するPTFE膜を得やすい。大きい分子量を有するPTFEは長い分子鎖を有するため、分子鎖が規則的に配列した構造を形成しにくい。この場合、非晶質部の長さが増加し、分子同士の絡み合いの度合いが増加する。分子同士の絡み合いの度合いが高い場合、PTFE膜は、加えられた負荷に対して変形しにくく、優れた機械的強度を示すと考えられる。また、大きい分子量を有するPTFEを使用すると、小さい平均孔径を有するPTFE膜を得やすい。
【0062】
上記SSGの下限は、2.05であることがより好ましく、2.1であることが更に好ましい。上記SSGの上限は、2.25であることがより好ましく、2.2であることが更に好ましい。
【0063】
標準比重〔SSG〕は、ASTM D-4895-89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定したものである。
【0064】
本開示において、PTFE粉末を構成するPTFEの分子量(数平均分子量)は、例えば、200~1200万の範囲にあることが好ましい。PTFEの分子量の下限値は、300万であってもよく、400万であってもよい。PTFEの分子量の上限値は、1000万であってもよい。
【0065】
PTFEの数平均分子量の測定方法としては、標準比重(Standard Specific Gravity)から求める方法、及び、溶融時の動的粘弾性による測定法がある。標準比重から求める方法は、ASTM D-4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法によって実施することができる。動的粘弾性による測定法は、例えば、S.Wuによって、Polymer Engineering & Science, 1988, Vol.28, 538、及び、同文献1989, Vol.29, 273に説明されている。
【0066】
上記PTFEは、屈折率が1.2~1.6の範囲内のものであることが好ましい。このような屈折率を有するものとすることで、低誘電であるという点で好ましい。屈折率を上記範囲内のものとすることは、分極率や主鎖の柔軟性を調整する方法等によって行うことができる。上記屈折率の下限は、1.25であることがより好ましく、1.30であることがより好ましく、1.32であることが最も好ましい。上記屈折率の上限は、1.55であることがより好ましく、1.50であることがより好ましく、1.45であることが最も好ましい。
【0067】
上記屈折率は、屈折計(Abbemat 300)を用いて測定した値である。
【0068】
また、上記PTFEは、最大吸熱ピーク温度(結晶融点)は340±7℃であることが好ましい。
【0069】
PTFEは示差走査熱量計で測定した結晶融解曲線上の吸熱カーブの最大ピーク温度が338℃以下の低融点PTFEと、示差走査熱量計で測定した結晶融解曲線上の吸熱カーブの最大ピーク温度が342℃以上の高融点PTFEであってもよい。
【0070】
低融点PTFE粉末は、乳化重合法で重合し製造された粉末であり、前記の最大吸熱ピーク温度(結晶融点)を有し、誘電率(ε)は2.08~2.2、誘電正接(tan δ)は1.9×10-4~4.0×10-4である。市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のポリフロンファインパウダーF201、同F203、同F205、同F301、同F302;旭硝子工業(株)製のCD090、CD076;デュポン社製のTF6C、TF62、TF40などがあげられる。
【0071】
高融点PTFE粉末も、乳化重合法で重合し製造された粉末であり、前記の最大吸熱ピーク温度(結晶融点)を有し、誘電率(ε)は2.0~2.1、誘電正接(tan δ)は1.6×10-4~2.2×10-4と全体的に低い。市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のポリフロンファインパウダーF104、F106;旭硝子工業(株)製のCD1、CD141、CD123;デュポン社製のTF6、TF65などがあげられる。
【0072】
なお、両PTFE重合粒子が2次凝集した粉末の平均粒径は通常、250~2000μmであることが好ましい。特に、溶媒を用いて造粒して得られる造粒粉末は予備成形の際の金型充填時の流動性が向上する点から好ましい。
【0073】
上述したような各パラメータを満たす粉末形状のPTFEは、従来の製造方法により得ることができる。例えば、国際公開第2015-080291号や国際公開第2012-086710号等に記載された製造方法に倣って製造すればよい。
【0074】
(シート)
本開示においては、上述したように、フッ素樹脂及び酸化物を含有するシートを用いることが重要である。シートは、必要に応じて、これら以外の他の成分を含有するものであってもよいし、フッ素樹脂及び酸化物のみからなるものであってもよい。他の成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
【0075】
本開示で使用するシートは、線膨張率(CTE)が、100ppm/K以下であることが好ましい。
上記範囲内であることで、低収縮で寸法安定性に優れたシートとなる点で好ましい。上記上限は、80ppm/Kであることがより好ましく、70ppm/Kであることが更に好ましく、50ppm/Kであることが最も好ましい。上記下限は、特に限定するものではないが、10ppm/Kであることがより好ましく、20ppm/Kであることが更に好ましい。
【0076】
本開示における線膨張率は、TMA―7100(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いたTMA測定を引張モードで行い、サンプル片として、長さ20mm、幅5mm、厚み150μmに切出したシートを用いて、チャック間を10mmに設定し、49mNの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で0~150℃でのサンプルの変位量から線膨張率を求めた値である。
【0077】
上記シートは、10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、誘電損失が低いという点で好ましい。
上記比誘電率の上限は、3.2であることがより好ましく、3.1であることが更に好ましい。一方、上記比誘電率の下限は、2.0であることが好ましく、2.5であることがより好ましい。
【0078】
上記シートは、10GHzにおける誘電正接(Df)が0.0015以下であることが好ましい。誘電正接を当該範囲内のものとすることで、回路中の電気信号の損失を低く抑えることができる点で好ましい。上記誘電正接は、0.0012以下であることがより好ましく、0.0011以下であることが更に好ましい。一方、上記誘電正接の下限は、0.00001であることが好ましい。
【0079】
本開示におけるシートの10GHzでの比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は、スプリットシリンダ式誘電率・誘電正接測定装置(EM lab社製)を用いて、25℃、10GHzのDk及びDfを測定することにより求めた値である。
【0080】
また、上記シートは、エッチング処理することにより金属積層体からシートを取り出したのち、上述の方法を用いて上記各パラメータを測定することもできる。
【0081】
上記シートは、その厚さが5~250μmであることが好ましい。上記シートは、薄いものであっても、充分にその目的を達成することができる。このような観点から、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが更に好ましい。また、必要に応じて100μm以下の厚みに加工が可能であると、各種厚みの基板に幅広く適用が可能であり好ましい。
【0082】
(シートの製造方法)
上記シートは、上述したフッ素樹脂及び酸化物を混合して成膜することによって得ることができる。その製造方法を限定するものではないが、ペースト押出成形、粉体圧延成形等によって行うことが好適である。
【0083】
上述したように、シートに使用するフッ素樹脂としては、非溶融加工性であるフッ素樹脂を使用することが好ましい。このようなフッ素樹脂を使用した場合、これをシート状に成形する場合は、原料としての粉末状のPTFEをフィブリル化することで成形することが好ましい。
【0084】
上記粉末状のPTFEは、一次粒子径が0.05~10μmのものを使用することが好ましい。このようなものを使用することで、成形性、分散性に優れるという利点がある。なお、ここでの一次粒子径は、ASTM D 4895に準拠し測定した値である。
【0085】
上記粉末状のPTFEは、二次粒子径が500μm以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。二次粒子径が500μm以上のPTFEが当該範囲内のものであることによって、強度の高いシートを作製できるという点で利点を有する。
二次粒子径が500μm以上のPTFEを用いることで、より抵抗が低く、靭性に富んだシートを得ることができる。
【0086】
上記二次粒子径の下限は、300μmであることがより好ましく、350μmであることが更に好ましい。上記二次粒子径の上限は、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。二次粒子径は例えばふるい分け法などで求めることができる。
【0087】
上記粉末状のPTFEは、より高強度でかつ均質性に優れるシートが得られることから、平均一次粒子径が50nm以上であることが好ましい。より好ましくは、100nm以上であり、更に好ましくは150nm以上であり、特に好ましくは200nm以上である。
PTFEの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、成形性にも優れる。上限は特に限定されないが500nmであってよい。重合工程における生産性の観点からは、350nmであることが好ましい。
【0088】
上記平均一次粒子径は、重合により得られたPTFEの水性分散液を用い、ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定できる。
【0089】
本開示に使用するPTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のポリテトラフルオロエチレンのコアと、より低分子量のポリテトラフルオロエチレンまたは変性のポリテトラフルオロエチレンのシェルとを含む変性ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。このような変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0090】
ペースト押出成形、粉体圧延成形の具体的な方法は特に限定されるものではないが、以下に一般的な方法を記載する。
【0091】
(ペースト押出成形)
上記シートの製造方法は、炭化水素系界面活性剤を使用して得られたフッ素樹脂及び酸化物を含む原料組成物と押出助剤とを混合する工程(1a)、得られた混合物をペースト押出成形する工程(1b)、押出成形で得られた押出物を圧延する工程(1c)、圧延後のシートを乾燥する工程(1d)、乾燥後のシートを焼成して成形体を得る工程(1e)を含むものであってよい。
上記ペースト押出成形は、上記原料組成物に、顔料等の従来公知の添加剤を加えて行うこともできる。
【0092】
上記押出助剤としては特に限定されず、一般に公知のものを使用できる。例えば、炭化水素油等が挙げられる。
【0093】
(粉体圧延成形)
上記シートは、粉体圧延成形によって成形することもできる。粉体圧延成形は、樹脂粉体に剪断力を付与することで、フィブリル化させ、これによってシート状に成形する方法である。その後、焼成して成形体を得る工程を含むものであってよい。
より具体的には、
フッ素樹脂及び酸化物を含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)
前記工程(1)によって得られた混合物をバルク状に成形する工程(2)及び
前記工程(2)によって得られたバルク状の混合物をシート状に圧延する工程(3)
を有する製造方法によって得ることができる。
更に、上記で得られたシート状物を、200~400℃で、1~60分間焼成する工程(4)を有するようにしてもよい。
また、工程(2)は省略しても構わない。
【0094】
なお、このような粉体圧延成形によってシートとする場合は、フッ素樹脂及び酸化物のみを混合して成形することが好ましい。
【0095】
また、本開示のシートは、フッ素樹脂及び酸化物を含有する溶液又は分散液を調製した後、基材上に塗布・乾燥させることによるキャスト法等により、形成するようにしてもよい。
【0096】
(金属積層板)
上記シートは、回路用基板のシートとして、その他の基材と積層して使用することができる。
本開示の金属積層板は、上述したシートの片面又は両面に金属層を設けた金属積層板である。
本開示の金属積層板は、回路用基板用途において特に好適に使用することができる。
【0097】
金属層は、銅、金、銀及び白金からなる群より選択される1つ以上で形成されていることが好ましい。特に、金属層は、銅で形成されていることがより好ましい。銅を使用する場合は導体損が小さいため好ましい。
【0098】
(金属積層板の製造方法)
本開示の金属積層板の製造方法は、例えば、上記のようにして製造した、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、乾式めっき法等により金属層を設けることにより行う。
本開示は、フッ素樹脂と酸化物とを含むシートの片面若しくは両面に、乾式めっき法により金属層を設ける工程(A)を有する、金属積層板の製造方法でもある。
【0099】
上記乾式めっき法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、またはイオンプレーティング法のいずれかの方法が挙げられる。中でも、密着性の強い膜を作製できる点から、イオンプレーティング法が好ましい。
上記各方法は、一般的な方法により行えばよい。
【0100】
上記金属層は、銅、金、銀及び白金からなる群より選択される1つ以上で形成された層であることが好ましい。
特に、金属層は、銅層であることがより好ましい。
【0101】
また、本開示の金属積層板の製造方法においては、上記シートに対して、300~400℃に加熱する工程(B)を有することが好ましい。
上記工程(B)は、上記工程(A)の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
【0102】
工程(B)における加熱処理として、焼成等を行うことで、フッ素樹脂の結晶化度が変化し、融解熱が小さくなる。融解熱が小さくなることよって、シートが硬くなり、金属層を剥離しようとした場合に、シートの母材破壊ではなく、金属との界面破壊となるので、テープピール強度が強くなる。
一方、焼成をしていないシートは柔らかく、金属がシートに密着していても、テープピール強度試験時にシートが母材破壊してしまうため、低テープピール強度となる。
【0103】
特に、工程(B)として、上記シート製造時に、シートを乾燥した後、焼成することが好適である。
シート上に金属層を形成する前に、シートを焼成することにより、シートの強度を予め高くした上で、金属層を設けるようにすることができ、これにより、得られる金属積層板のテープピール強度がより良好となる。
【0104】
シートを成形し、乾燥後焼成する場合の焼成工程は、シートに対して、フッ素樹脂の融点以上の加熱により焼成することが好ましい。
【0105】
また、工程(B)として、金属層を形成後に焼成を行うようにしてもよい。この場合、金属積層板を、フッ素樹脂の融点以上の加熱により焼成することが好ましい。
また、加熱時に金属層が酸化しないよう、真空下若しくは不活性ガス下で焼成することが好ましい。
【0106】
本開示は、上記のように乾式めっき法等により、シート表面に金属層を形成することで金属積層板を得ることで、金属層の厚みが8μm以下となる。
【0107】
本開示の金属積層板の製造方法においては、更に、上記により形成した金属層を、湿式めっき法により厚膜化する工程(C)を有するようにしてもよい。
湿式めっき法で厚膜化することで短時間かつ低コストで厚膜化が可能となる。
なお、上記工程(C)を有する場合、上記工程(B)は、工程(C)の後に行うようにしてもよい。
【0108】
湿式めっき法としては、電解めっき法または無電解めっき法が挙げられる。
特に、均一にめっきが被覆する観点で、無電解めっき法によるのが好ましい。上記各方法は、一般的な方法により行えばよい。
【0109】
厚膜化によって形成される金属層は、先の金属層と同種であっても、異なっていてもよいが、同種であることが好ましい。
【0110】
上記工程(C)において、厚膜化した後の金属層全体の膜厚は、8μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。なお、厚膜化した後の金属層全体の膜厚は、8μmを超えるものであってもよい。
【0111】
本開示の金属張積層板は、更に、上記金属層およびフッ素樹脂シート以外の層を有するものであってもよい。
金属層およびフッ素樹脂シート以外の層は、ポリイミド、モディファイドポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテル、及びポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0112】
これらの金属層およびシート以外の層は、上述した樹脂からなるものであれば特に限定されない。また、当該金属層およびシート以外の層は、厚みが、12.5~260μmの範囲内のものであることが好ましい。
【0113】
本開示の金属積層板は、その用途を特に限定されず、回路用基板として好適に使用される。
本開示は、上記金属積層板を有する回路用基板でもある。
回路用基板とは半導体やコンデンサチップなどの電子部品を電気的に接続すると同時に、限られた空間内に配置し固定するための板状部品である。本開示の金属積層体から形成される回路用基板の構成は特に制限はない。回路用基板は、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板のいずれであってもよい。回路用基板は、片面、基板、両面基板、多層基板(ブルドアップ基板等)のいずれであってもよい。特に、フレキシブル基板、リジット基板用に好適に使用することができる。特に、10GHz以上の高周波用プリント基板として好適に使用することができる。
【0114】
本開示において高周波回路とは、単に高周波信号のみを伝送する回路からなるものだけでなく、高周波信号を低周波信号に変換して、生成された低周波信号を外部へ出力する伝送路や、高周波対応部品の駆動のために供給される電源を供給するための伝送路等、高周波信号ではない信号を伝送する伝送路も同一平面上に併設された回路も含まれる。また、アンテナ、フィルタなどの回路基板としても利用できる。本開示の金属積層板は、金属層が薄膜であることから、柔軟性があり、自由に曲げることができるフレキシブル回路用基板として好適に使用できる。
【0115】
本開示は、上記回路基板から形成されたアンテナでもある。特に、モビリティ向けのミリ波アンテナとすることが好適である。
本開示は、上記回路基板から形成されたモビリティ向けのミリ波アンテナでもある。
【0116】
本開示においてモビリティとは、自家用車やバス、タクシー、トラックなどの自動車全般をはじめ、オートバイや自転車、原動機付自転車などの二輪車、鉄道、シニアカー、1人乗りのコンパクトなパーソナルモビリティなど、移動や輸送に関わるあらゆる手段・手法を示す。また、必ずしも地上を移動するものに限られず、航空機等、空中や水中を移動するものであってもよい。
【0117】
回路用基板は、上述した金属積層板を使用して、一般的な方法によって製造することができる。
【0118】
本開示の金属積層板は、電気電子部品として使用される。例えば、ETC、GPS、無線LANおよび携帯電話等の電子機器や通信機器に使用されるアンテナ、高速伝送用コネクタ、CPUソケット、衝突防止用レーダーなどのミリ波および準ミリ波レーダー、RFIDタグ、コンデンサー、インバーター部品、ケーブルの被覆材、リチウムイオン電池等の二次電池の絶縁材、スピーカー振動板等が挙げられる。
【0119】
高速通信対応基板としては、基地局アンテナ基板、アンテナ分配基板、無線基地局の無線部分であるRRH(Remote Radio Head)用基板、無線基地局の制御部又はベースバンド部(BBU:Base Band Unit)用基板、高速通信用トランシーバー基板、RNC(Radio Network Contoroler)用基板、高速トランスミッター用基板、高速レシーバー用基板、高速信号多重回路用基板、60GHz帯使用のWiFig用基板、データセンター用のサーバーで使用されるデーター転送用基板などが挙げられる。また、高速通信対応基板としては、アンテナ用基板、例えば、5G以降の規格で求められる大容量通信に向けた、超多素子アンテナ(Massive MIMO)向けの基板等も例示できる。さらに、マイクロ波による空間伝送型無線給電用の受電アンテナも挙げられる。
【0120】
誘電体導波線路においては、高周波のミリ波又はサブミリ波を低損失で伝送させるために、低誘電損失な材料が求められている。本開示の金属積層板は、ミリ波、サブミリ波等を伝送する誘電体導波線路用の絶縁材料として、好適に使用できる。
誘電体導波線路としては、円柱状誘電体線路、方形状誘電体線路、だ円形状誘電体線路、チューブ状誘電体線路、イメージ線路、インシュラーイメージ線路、トラップドイメージ線路、リブガイド、ストリップ誘電体線路、逆ストリップ線路、Hガイド、非放射性誘電体線路(NRDガイド)等が挙げられる。
【0121】
回路用基板用の金属積層板は、上述したシート、金属層および基材層を有する積層板であってもよい。基材層としては特に限定されず、ガラス繊維からなる布帛層、樹脂フィルム層を有することが好ましい。
【0122】
上記ガラス繊維からなる布帛層は、ガラスクロス、ガラス不織布等からなる層である。
ガラスクロスとしては市販のものが使用でき、フッ素樹脂との親和性を高めるためにシランカップリング剤処理を施されたものが好ましい。ガラスクロスの材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられるが、入手が容易である点からEガラス、Sガラス、NEガラスが好ましい。繊維の織り方としては平織でも綾織でも構わない。ガラスクロスの厚さは通常5~90μmであり、好ましくは10~75μmであるが、使用するフッ素樹脂フィルムよりは薄いものを用いることが好ましい。
【0123】
上記積層板は、ガラス不織布をガラス繊維からなる布帛層として使用するものであってもよい。ガラス不織布とは、ガラスの短繊維を少量のバインダー化合物(樹脂あるいは無機物)で固着したもの、あるいはバインダー化合物を使用せずにガラス短繊維を絡ませることによってその形状を維持しているものであり、市販のものが使用できる。ガラス短繊維の直径は好ましくは0.5~30μmであり、繊維長は好ましくは5~30mmである。バインダー化合物の具体例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂等の樹脂や、シリカ化合物等の無機物が挙げられる。バインダー化合物の使用量はガラス短繊維に対して通常3~15質量%である。ガラス短繊維の材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられる。ガラス不織布の厚さは通常50μm乃至1000μmであり、100~900μmであることが好ましい。尚、本願におけるガラス不織布の厚さは、JIS P8118:1998に準じ、(株)小野測器製のデジタルゲージDG-925(荷重110グラム、面径10mm)を用いて測定した値を意味する。フッ素樹脂との親和性を高めるために、ガラス不織布にシランカップリング剤処理を施してもよい。
【0124】
ガラス不織布の多くは空隙率が80%以上と非常に高いので、フッ素樹脂からなるシートより厚いものを使用し、圧力によって圧縮して用いることが好ましい。
【0125】
上記ガラス繊維からなる布帛層は、ガラスクロスとガラス不織布とを積層した層であってもよい。これによって、相互の性質が組み合わせられて、好適な性質を得ることができる。
上記ガラス繊維からなる布帛層は、樹脂を含浸させたプリプレグの状態であってもよい。
【0126】
上記積層板は、ガラス繊維からなる布帛層とフッ素樹脂シートが界面で接着していてもよく、ガラス繊維からなる布帛層にフッ素樹脂シートの一部もしくはすべてが含侵されていてもよい。
更に、ガラス繊維からなる布帛にフッ素樹脂組成物を含侵させてプリプレグを作成したものであってもよい。このようにして得られたプリプレグに対して、更に、上記フッ素樹シートを積層したものであってもよい。この場合、プリプレグを作成する際に使用するフッ素樹脂組成物としては特に限定されるものではなく、上記シートを使用することもできる。
【0127】
上記基材層として用いる樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルム、熱硬化性樹脂フィルムが好ましい。耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド、モディファイドポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイドなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテル、ポリブタジエンなどを含むものが挙げられる。
【0128】
耐熱性樹脂フィルムおよび熱硬化性樹脂フィルムは強化繊維を含んでいても良い。強化繊維としては特に限定されないが、例えばガラスクロス、とくに低誘電タイプのものが好ましい。
耐熱性樹脂フィルムおよび熱硬化性樹脂フィルムの誘電特性、線膨張率、吸水率などの特性は特に限定されないが、たとえば、20GHzにおける誘電率は3.8以下が好ましく、3.4以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。20GHzにおける誘電正接は、0.0030以下が好ましく、0.0025以下がより好ましく、0.0020以下が更に好ましい。線膨張率は100ppm/K以下が好ましく、70ppm/K以下がより好ましく、40ppm/K以下が更に好ましい。吸水率は1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。
【0129】
シート及び金属層を有する積層板を、樹脂フィルム層等の基材層と積層させる場合、積層板のシート層側を基材層と接着させることで積層させることができる。この場合は、積層前に積層板のシート層側に対して表面処理を施して、接着性能を高めたものを使用するものであってもよい。ここでの表面処理としては、特に限定されず、プラズマ処理等を挙げることができる。
【0130】
上記積層板において、金属層、基材、及び上述したシートの積層順や製造方法は特に限定されるものではなく、目的に応じた層構成とすることができる。
上述した積層順として、具体的には、基材層/シート/金属層で構成されるもの、金属層/シート/基材層/シート/金属層で構成されるもの等を挙げることができる。
また、必要に応じて、その他の層を有するものとすることもできる。
【実施例0131】
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
【0132】
各実施例、比較例において使用したシリカは、表1に示すように、アドマテックス社製SC6500-SQ(平均粒子径2.1μm)、アドマテックス社製SC6500-SQ(平均粒子径2.1μm)を3-アミノプロピルトリエトキシシラン(シリカ粒子の質量に対して1質量%の処理量)により表面処理を施した球状シリカを用いた。
【0133】
各実施例において使用したフッ素樹脂粒子(PTFE)は、以下の性質を有するものであった。
平均粒子径:500μm
見掛密度:460g/L
標準比重:2.17
【0134】
(実施例1~4)
(ペースト押出成形)
フッ素樹脂粒子(PTFE)とシリカを、表1に示す割合で所定量計量し、ドライアイス存在下、ミキサーで混合した。混合中の温度は-10℃以下であった。
得られた混合粉末にオイル(アイソパーH)を21%添加し、混合し、5時間程度熟成させた。
熟成させた組成物を圧力3MPaの条件で予備成形し、予備成形した成形体を40℃、50mm/minの条件で押出し、押出サンプルを得た。
押出サンプルを2本ロールで圧延し(ロール間隙:500~80μmに設定)、膜厚125μmのサンプルを得、200℃、2時間乾燥し、360℃で、15分間焼成することでシートを得た。
【0135】
(イオンプレーティング)
上記シートを物理気相成長法(PVD)装置に導入し、下記条件で、イオンプレーティング法で銅を成膜し、金属積層板を得た。銅層の膜厚は、0.113μmであった。
RF出力:100W、成膜圧力:4.0×10-2Pa、成膜レート:16.1Å/S
【0136】
(実施例5~8)
(真空蒸着)
実施例1~4で使用した各シートを、物理気相成長法(PVD)装置に導入し、下記条件で、真空蒸着法で銅を成膜し、金属積層板を得た。銅層の膜厚は、0.102μmであった。
RF出力:なし、成膜圧力:1.15×10-2Pa、成膜レート:21.9Å/S
【0137】
(実施例9~12)
シート成形時に焼成を行わず、イオンプレーティング法により成膜した後、真空下で、360℃、15分間加熱することにより焼成を行ったこと以外は、それぞれ実施例1と同様にして、金属積層板を得た。
【0138】
(実施例13~16)
シート成形時に焼成を行わず、真空蒸着法により成膜した後、真空下で、360℃、15分間加熱することにより焼成を行ったこと以外は、実施例5と同様にして、金属積層板を得た。
【0139】
(比較例1)
シリカを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして金属積層板を得た。
【0140】
(比較例2)
シリカを使用しなかったこと以外は、実施例9と同様にして金属積層板を得た。
【0141】
(比較例3)
(PFAシート成形)
PFA(TFE/PAVE(質量%):94.6/5.4、融点:310℃、MFR:14g/10分)を350℃で押出成形し、100μm厚さのシートを得た。
(イオンプレーティング)
得られたPFAシートを、実施例1と同様にして、イオンプレーティング法により銅層を形成し、金属積層板を得た。
【0142】
(比較例4)
(FEPシート成形)
FEP(TFE/HFP(質量%):90/10、融点:270℃、MFR:6g/10分)を300℃で押出成形し、100μm厚さのシートを得た。
(イオンプレーティング)
得られたFEPシートを、実施例1と同様にして、イオンプレーティング法により銅層を形成し、金属積層板を得た。
【0143】
(比較例5)
シリカを使用しなかったこと以外は、実施例5と同様にして金属積層板を得た。
【0144】
(比較例6)
シリカを使用しなかったこと以外は、実施例13と同様にして金属積層板を得た。
【0145】
(比較例7)
比較例3で得たPFAシートを用いた他は、実施例5と同様にして、真空蒸着法により銅層を形成し、金属積層板を得た。
【0146】
(比較例8)
比較例4で得たFEPシートを用いた他は、実施例5と同様にして、真空蒸着法より銅層を形成し、金属積層板を得た。
【0147】
(比較例9)
シート成形時及びイオンプレーティング時に焼成を行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして金属積層板を得た。
【0148】
(比較例10)
シート成形時及び真空蒸着時に焼成を行わなかったこと以外は、実施例8と同様にして金属積層板を得た。
【0149】
得られた各サンプルについて、以下の基準に基づいて、測定及び評価を行った。
なお、シートに関する評価は、下記方法により回収したシートについて行った。
【0150】
[金属層の厚み]
金属層の厚みは触針式表面粗さ計を用いて測定した。
【0151】
[テープピール強度]
JIS-K5600付着性試験(クロスカット法)に使用するニチバン社製セロテープ(登録商標)(テープ幅:18mm)を用い、長さ15mmのセロテープを金属積層板の銅層に気泡がないように張り付けた。張り付けたテープを90°の角度で剥がし、セロテープを張り付けていた金属積層板の銅層(面積270mm2)から銅が剥がれた面積を、画像解析(Python)を用いて算出し、下記により評価した。
1:銅が95%以上、剥がれた
2:銅が60%以上、95%未満剥がれた
3:銅が40%以上、60%未満剥がれた
4:銅が5%以上、40%未満剥がれた
5:銅が5%未満、剥がれた
【0152】
〔金属積層板のエッチング〕
金属積層板を塩化第2鉄水溶液でエッチングして、流れる清水で2~5分間洗浄し、更に蒸留水で洗浄し、温度80±3℃の恒温槽中で約60分間乾燥し、単体のシート(誘電体層)を回収した。
【0153】
[シートの厚み]
シートの厚みはマイクロメーターを用いて測定した。
【0154】
[シート表面のXPS測定]
走査型X線光電子分光分析装置(XPS/ESCA)PHI5000VersaProbeII(アルバック・ファイ株式会社製)を用いて測定した。
【0155】
[フッ素樹脂の融点及びシートの融解熱(DSC測定)]
DSC(日立ハイテク社製DSC7000X)で230℃から380℃まで10℃/minで昇温した際の融解熱と融点を測定した。
【0156】
[シートの誘電正接(Df)]
スプリットシリンダ式誘電率・誘電正接測定装置(EM lab社製)を用いて、25℃、10GHzの誘電率及び誘電正接を測定した。
【0157】
[シートの線膨張率(CTE)]
TMA―7100(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いたTMA測定を引張モードで行い、サンプル片として、長さ20mm、幅5mm、厚み150μmに切出したフッ素樹脂シートを用いて、チャック間を10mmに設定し、49mNの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で0~150℃でのサンプルの変位量から線膨張率を求めた。
結果を表1、2に示す。
【0158】
【0159】
【0160】
(実施例17)
実施例2で得られた金属積層板に、硫酸銅めっき(工程(C))を行い、18μmの厚さで導体層を形成した。得られた金属積層板についてテープピール強度試験を行い、5であることを確認した。
【0161】
上記結果から、実施例の金属積層板は、テープピール強度が高く、シートと金属層の接着性という観点において優れた性能を有するものである。
また、XPS測定の結果から、シリカを添加したシートは、その表面にシリカが存在していることが分かる。