(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166557
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電力取引管理装置、電力取引管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241122BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082735
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】基幹系統と配電系統とを考慮した約定価格を好適に算出する。
【解決手段】電力取引管理装置は、需要家からの買い入札と売り入札とを取得する入札情報取得部と、配電用変電所の下流側における混雑の有無及び潮流を判定する混雑有無判定部と、混雑がない場合、買い入札及び売り入札を其々合算することにより合算買い入札及び合算売り入札を生成し、ある価格帯において混雑かつ逆潮流である場合、取得した売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で取得した売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において混雑かつ順潮流である場合、合算売り入札を零として生成し、取得した買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算部と、合算買い入札と合算売り入札とを出力する出力部とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電用変電所の下流側に接続された需要家からの買い入札と、配電用変電所の下流側に接続された需要家のうち一部の需要家であって電力供給装置を備える需要家からの売り入札とを取得する入札情報取得部と、
取得した前記買い入札の合計と、前記売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、前記配電用変電所の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する混雑有無判定部と、
前記配電用変電所の下流側に混雑がない場合、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した前記売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、前記合算売り入札が零との前提のもとで、取得した前記買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算部と、
前記合算買い入札と前記合算売り入札とを出力する出力部と、
を備える電力取引管理装置。
【請求項2】
出力した前記合算買い入札と前記合算売り入札とを含んで約定された全国市場の約定結果を取得する約定結果取得部と、
取得された前記約定結果と、前記合算部が非約定とし除外した前記買い入札と、前記合算部が約定とし除外した前記売り入札とに基づき、前記配電用変電所における約定価格を決定する決定部と、
を更に備える請求項1に記載の電力取引管理装置。
【請求項3】
前記電力供給装置の発電量が制約される条件に関する制約条件を取得する制約条件取得部を更に備え、
前記合算部は、取得した前記制約条件に基づき前記合算買い入札と前記合算売り入札を生成する
請求項1又は請求項2に記載の電力取引管理装置。
【請求項4】
配電用変電所の下流側に接続された需要家からの買い入札と、配電用変電所の下流側に接続された需要家のうち一部の需要家であって電力供給装置を備える需要家からの売り入札とを取得する入札情報取得工程と、
取得した前記買い入札の合計と、前記売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、前記配電用変電所の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する混雑有無判定工程と、
前記配電用変電所の下流側に混雑がない場合、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した前記売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、前記合算売り入札が零との前提のもとで、取得した前記買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算工程と、
前記合算買い入札と前記合算売り入札とを出力する出力工程と、
を有する電力取引管理方法。
【請求項5】
コンピュータに、
配電用変電所の下流側に接続された需要家からの買い入札と、配電用変電所の下流側に接続された需要家のうち一部の需要家であって電力供給装置を備える需要家からの売り入札とを取得する入札情報取得ステップと、
取得した前記買い入札の合計と、前記売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、前記配電用変電所の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する混雑有無判定ステップと、
前記配電用変電所の下流側に混雑がない場合、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した前記売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、前記合算売り入札が零との前提のもとで、取得した前記買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算ステップと、
前記合算買い入札と前記合算売り入札とを出力する出力ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力取引管理装置、電力取引管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統における適正な約定価格を算出することが求められている。このような課題を解決するための技術を開示した文献の一例として、例えば、配電系統の安定化に必要なコストを安価にすること及び発電設備等を保有する需要家の収益面での公平性を確保することの両方を同時に解決するための技術(例えば特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術を用いることにより、配電用変電所以下における約定価格を算出することが可能となるかもしれないが、配電用変電所ごとの約定価格は異なるため、基幹系統全体を見た場合に約定価格が最適化されているとはいえない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、基幹系統と配電系統とを考慮した約定価格を好適に算出することが可能な電力取引管理装置、電力取引管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、配電用変電所の下流側に接続された需要家からの買い入札と、配電用変電所の下流側に接続された需要家のうち一部の需要家であって電力供給装置を備える需要家からの売り入札とを取得する入札情報取得部と、取得した前記買い入札の合計と、前記売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、前記配電用変電所の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する混雑有無判定部と、前記配電用変電所の下流側に混雑がない場合、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、
ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した前記売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、前記合算売り入札が零との前提のもとで、取得した前記買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算部と、前記合算買い入札と前記合算売り入札とを出力する出力部とを備える電力取引管理装置である。
【0007】
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載の電力取引管理装置において、出力した前記合算買い入札と前記合算売り入札とを含んで約定された全国市場の約定結果を取得する約定結果取得部と、取得された前記約定結果と、前記合算部が非約定とし除外した前記買い入札と、前記合算部が約定とし除外した前記売り入札とに基づき、前記配電用変電所における約定価格を決定する決定部とを更に備えるものである。
【0008】
(3)本発明の一態様は、上記(1)又は(2)に記載の電力取引管理装置において、前記電力供給装置の発電量が制約される条件に関する制約条件を取得する制約条件取得部を更に備え、前記合算部は、取得した前記制約条件に基づき前記合算買い入札と前記合算売り入札を生成するものである。
【0009】
(4)本発明の一態様は、配電用変電所の下流側に接続された需要家からの買い入札と、配電用変電所の下流側に接続された需要家のうち一部の需要家であって電力供給装置を備える需要家からの売り入札とを取得する入札情報取得工程と、取得した前記買い入札の合計と、前記売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、前記配電用変電所の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する混雑有無判定工程と、前記配電用変電所の下流側に混雑がない場合、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した前記売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、前記合算売り入札が零との前提のもとで、取得した前記買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算工程と、前記合算買い入札と前記合算売り入札とを出力する出力工程とを有する電力取引管理方法である。
【0010】
(5)本発明の一態様は、コンピュータに、配電用変電所の下流側に接続された需要家からの買い入札と、配電用変電所の下流側に接続された需要家のうち一部の需要家であって電力供給装置を備える需要家からの売り入札とを取得する入札情報取得ステップと、取得した前記買い入札の合計と、前記売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、前記配電用変電所の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する混雑有無判定ステップと、前記配電用変電所の下流側に混雑がない場合、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した前記売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、ある価格帯において、前記配電用変電所の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、前記合算売り入札が零との前提のもとで、取得した前記買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した前記買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する合算ステップと、前記合算買い入札と前記合算売り入札とを出力する出力ステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基幹系統と配電系統とを考慮した約定価格を好適に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態が適用される電力系統の一例を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る電力取引管理システムの一例を示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る電力取引管理装置の機能構成の一例を示す機能構成図である。
【
図4】本実施形態に係る電力取引管理方法の一連の処理の流れについて説明するフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る電力取引管理方法において、買い札及び売り札の合算について具体的に説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る電力取引管理方法を用いて系統制約を行う場合のイメージ図である。
【
図7】本実施形態の電力取引管理装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[従来技術による問題点]
まず、従来技術による問題点について説明する。既に北米や豪州においては、エネルギー市場を通じたノーダル制の混雑管理が行われている。また、日本においても、中長期的な方向性として、再給電からノーダル制の混雑管理へ移行することが定められている。ノーダル制の混雑管理では、各送電設備の送電容量を超過した潮流を流さないことを制約条件として、最適潮流計算(OPF:Optimal Power Flow)が行われ、最適潮流計算を行った結果に基づき市場の約定処理と価格算定が行われる。ノーダル制の混雑管理によれば、各送電設備の送電容量が考慮されるため、市場を通じた混雑管理が可能となる。すなわち、ノーダル制の混雑管理によれば、市場の約定結果において各送電設備の混雑は生じない。
【0014】
しかしながらノーダル制の混雑管理に従えば、各送電設備の送電容量を超過した潮流を流さないことを制約条件としているため、送電容量に達した送電設備の両側で市場は分割されることとなる。すなわち、分割された市場によって算定価格は異なることとなる。この分割された市場ごとの価格は、地点別限界価格(LMP:Locational Marginal Price、又は、これを配電系統に適用する場合、DLMP:Distribution Locational Marginal Price)と呼ばれている。
【0015】
ここで、地点別限界価格は、電力のロスを無視すると、システム価格と混雑価格の和で決まることとなる。現在のノーダル制の混雑管理においては、一般的に、混雑管理の対象は基幹系統のみとなっており、配電系統の混雑まで考慮した約定処理及び価格算定は行われていないのが現状である。
【0016】
一方、近年カーボンニュートラルの実現に向け、近年、配電系統に太陽光等の再エネや、EV(Electric Vehicle)及び蓄電池等の新しい需要設備(以下、電力供給装置とも記載する。)が導入されるようになってきている。これまでは基幹系統のみの混雑管理で問題なかったが、このような新しい需要設備の導入に伴い、配電系統においても、混雑管理が求められるようになってきている。
【0017】
このような状況を受けて、北米において、配電系統にも地点別限界価格を通じたノーダル制の混雑管理の導入が検討され始めている。しかしながら、配電系統の混雑管理と基幹系統の混雑管理とは、互いに別々に管理されることを前提としており、双方を組み合わせた最適化を行うことは容易でない。配電系統の混雑管理と基幹系統の混雑管理とを互いに別々に管理した場合、非効率な約定処理が行われることが懸念される。
【0018】
仮に配電系統の混雑管理と基幹系統の混雑管理とを組み合わせた最適化を行おうとする場合、ノード数が極めて多くなることとなる。ノード数が極めて多くなった場合、現在の技術では、最適潮流計算の解が得られることは保証されておらず、今後の検討課題となっている。
【0019】
[実施形態]
そこで本発明は、上述したような、配電系統の混雑管理と基幹系統の混雑管理とを同時に行うことを目的としている。以下、本発明の態様に係る電力取引管理装置、電力取引管理方法及びプログラムについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺及び数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0020】
図1は、一実施形態が適用される電力系統の一例を示す概略図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る電力取引管理システム1が適用される配電系統の一例について説明する。発電事業者は、電力系統へ特別高圧で電力を供給する。発電事業者供給された電力は、基幹系統31及び送電系統32を経由し、配電系統33に供給される。基幹系統31及び送電系統32は、11[kV]から500[kV]の特別高圧で広範囲に送電を行う。
【0021】
配電系統33には、複数の配電用変電所331が含まれる。図示する一例においては、複数の配電用変電所331の一例として、配電用変電所331-1と、配電用変電所331-2と、…と、配電用変電所331-n(nは1以上の自然数)とが示されている。複数の配電用変電所331には、それぞれ複数の需要家332が接続される。図示する一例においては、説明の簡略化のため、配電用変電所331-1に接続される需要家332についてのみ示している。具体的には、複数の需要家332の一例として、需要家332-1と、需要家332-2と、…と、需要家332-m(mは1以上の自然数)とが示されている。
【0022】
複数の需要家332は、それぞれ電力供給装置333を備えていてもよい。電力供給装置333とは、例えば、太陽光発電等による発電システムや、EV又は蓄電池等による蓄電システム等の分散型エネルギーリソースであってもよい。図示する一例においては、需要家332-2が、電力供給装置333-2を備えている。また、図示する一例において、需要家332-1は、電力供給装置333-1を備えていない。
【0023】
配電系統33において、配電用変電所331は、送電系統32から特別高圧で供給された電圧を、6.6kVの高圧に降圧する。配電用変電所331は降圧した電圧を、配電用変電所331の下流側に接続された複数のフィーダ(不図示)に供給する。各フィーダでは、柱上変圧器により100[V]又は200[V]の低圧に降圧される。降圧された電力は、それぞれの需要家332に供給される。
【0024】
本実施形態に係る電力取引管理システム1は、
図1に示したような電力系統に対して適用されるものである。
【0025】
図2は、本実施形態に係る電力取引管理システムの一例を示す概略図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る電力取引管理システム1の一例について説明する。電力取引管理システム1は、複数の第1情報処理装置21と、第2情報処理装置22とを備える。複数の第1情報処理装置21は、それぞれ配電用変電所331から情報を取得し、配電用変電所331に対し情報を提供する。具体的には、第1情報処理装置21は、配電用変電所331の下の配電系統に接続されている多数の需要家又は多数の需要家を束ねて入札を行う小売事業者及び発電事業者等から情報を取得し、情報を提供する。図示する一例においては、第1情報処理装置21-1は、配電用変電所331-1から情報を取得し、配電用変電所331-1に対し情報を提供する。また、第1情報処理装置21-2は、配電用変電所331-2から情報を取得し、配電用変電所331-2に対し情報を提供する。また、第1情報処理装置21-3は、配電用変電所331-3から情報を取得し、配電用変電所331-3に対し情報を提供する。
【0026】
第1情報処理装置21は、配電用変電所331以下に接続されたそれぞれの需要家332から、買い札(以下、買い入札とも記載する。)に関する情報と、売り札(以下、売り入札とも記載する。)に関する情報とを取得する。(それぞれの需要家332へ電気の供給を行う小売事業者や特定卸電気事業者がそれぞれの需要家332を代行することもある。)第1情報処理装置21は、取得した情報に基づき、合算処理を行う。第1情報処理装置21は、複数の買い札に基づく合算処理を行うことにより合算買い札を生成し、複数の売り札に基づく合算処理を行うことにより合算売り札を生成する。第1情報処理装置21は、生成した合算買い札に関する情報と合算売り札に関する情報とを第2情報処理装置22に出力する。
【0027】
第2情報処理装置22は、第1情報処理装置21から、それぞれ合算買い札に関する情報と合算売り札に関する情報とを取得する。第2情報処理装置22は、取得した複数の合算買い札に関する情報と合算売り札に関する情報に加え、基幹系統と送電系統に接続された需要家や発電事業者等からの買い札と売り札に関する情報に基づき、約定価格を決定する。第2情報処理装置22は、決定した約定価格(LMP)に関する情報をそれぞれの第1情報処理装置21に出力する。第1情報処理装置21は、第2情報処理装置22から約定価格に関する情報を取得し、取得した当該地点の約定価格に基づき、電力の買い量及び売り量を決定する。また、第1情報処理装置21は、取得した約定価格に関する情報に基づき、接続先である配電用変電所331以下の混雑を考慮して、混雑が生じないよう約定価格(DLMP)を決定する。
【0028】
なお、電力取引管理システム1の実施形態は図示した一例に限定されず、例えば第1情報処理装置21及び第2情報処理装置22の機能が1台のサーバ装置に集約されることにより実現されてもよい。また、第1情報処理装置21及び第2情報処理装置22の機能の少なくとも一部をクラウドコンピューティングによって実現してもよい。以下の説明において、第1情報処理装置21により実現される機能を有する装置の具体例として、電力取引管理装置10について説明する。
【0029】
図3は、本実施形態に係る電力取引管理装置の機能構成の一例を示す機能構成図である。同図を参照しながら、電力取引管理装置10の機能構成の一例について説明する。電力取引管理装置10は、入札情報取得部11と、混雑有無判定部12と、合算部13と、出力部14と、記憶部15と、制約条件取得部16と、約定結果取得部17と、決定部18とを備える。これらの各機能部は、例えば、電子回路を用いて実現される。また、各機能部は、必要に応じて、半導体メモリや磁気ハードディスク装置などといった記憶手段を内部に備えてよい。また、各機能を、コンピュータおよびソフトウェアによって実現するようにしてもよい。
【0030】
入札情報取得部11は、配電用変電所331の下流側に接続された需要家332からの買い入札と、売り入札とを取得する。売り入札は、配電用変電所331の下流側に接続された需要家332のうち一部の需要家であって、電力供給装置333を備える一部の需要家から取得されるものである。入札情報取得部11は、取得した買い入札及び売り入札に関する情報を、入札情報IBとして混雑有無判定部12に出力する。
【0031】
混雑有無判定部12は、入札情報取得部11から入札情報IBを取得する。取得した入札情報IBに含まれる買い入札の合計と売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、配電用変電所331の下流側における混雑の有無を判定する。ここで、所定の閾値とは、すなわち配電用変電所331が許容する電力供給量(例えば±300[MW(メガワット)]等)であってもよい。所定の閾値は、許容電力量情報IAとして記憶部15に記憶されていてもよい。ここで、混雑とは、配電用変電所331が上流から買う電力量が所定の閾値以上である場合や、配電用変電所331が上流に売る電力量が所定の閾値以上である場合をいう。混雑有無判定部12は、混雑が発生している場合、取得した入札情報IBに含まれる買い入札の合計と売り入札の合計とに基づき、潮流方向(逆潮流であるか順潮流であるか)を判定する。混雑有無判定部12は、判定した結果として、混雑の有無に関する情報と、潮流方向に関する情報とを混雑情報IJとして合算部13に出力する。
【0032】
合算部13は、入札情報取得部11から入札情報IBを取得する。また、合算部13は、混雑有無判定部12から混雑情報IJを取得する。合算部13は、取得した情報に基づき合算処理を行うことにより、合算買い入札と合算売り入札とを生成する。ここで、合算部13は、配電用変電所331の下流側が混雑していない場合、配電用変電所331の下流側における全ての買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、配電用変電所331の下流側における全ての売り入札を合算することにより合算売り入札を生成する。また、合算部13は、(1)配電用変電所331の下流側に混雑がない場合、取得した買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、(2)ある価格帯において、配電用変電所331の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、(3)ある価格帯において、配電用変電所331の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、合算売り入札が零との前提のもとで、取得した買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する。なお、合算部13は、除外した買い入札又は売り入札に関する情報を、除外情報IEとして記憶部15に記憶させる。合算部13は、生成した合算買い入札と合算売り入札とを合算情報ITとして出力部14に出力する。
【0033】
ここで、電力供給装置333が再生可能エネルギー等の発電装置である場合、気候や時間帯条件によって発電量が変化する場合がある。例えば電力供給装置333の一例として太陽光発電システムを例示すると、そのときの天気(晴れているか、曇っているか)や、時間帯(太陽が出ている時間か否か)等により、発電量が大きく左右されることが知られている。このような不安定な発電量に基づいて合算買い入札と合算売り入札とを生成し、約定処理が行われることは好適ではない。そこで、合算部13は、配電用変電所331の下流側に電力供給装置333が存在する場合、発電量を左右する条件を制約条件として取得し、取得した制約条件に基づき、合算買い入札と合算売り入札を生成してもよい。この場合、電力取引管理装置10は、制約条件取得部16を備えることにより、制約条件を考慮した処理を行う。
【0034】
制約条件取得部16は、電力供給装置333の発電量が制約される条件に関する制約条件を取得する。当該制約条件とは、例えば将来の天気に関する情報(例えば時刻ごとの天気予報)や、時刻に関する情報等であってもよい。また、制約条件取得部16は、配電用変電所331の下流側に接続される電力供給装置333の種類に関する情報や、接続される数に関する情報等を取得する。電力供給装置333の種類に関する情報や、接続される数に関する情報等は、予め記憶部15に記憶されていてもよいし、売り入札に含まれていてもよい。制約条件取得部16は、取得した情報を制約条件情報IRとして合算部13に出力する。合算部13は、取得した制約条件情報IRに含まれる制約条件に基づき、合算買い入札と合算売り入札とを生成する。
【0035】
出力部14は、合算部13から合算情報ITを取得し、取得した合算情報ITに含まれる合算買い入札と合算売り入札とを、第2情報処理装置22に出力する。出力部14により出力される情報には、配電用変電所331の下流側における買い入札を合算した曲線(買い入札曲線)と、売り入札を合算した曲線(売り入札曲線)とが含まれるということができる。
【0036】
ここで、第2情報処理装置22が行う約定処理について説明する。第2情報処理装置22は、複数の第1情報処理装置21から、合算買い入札及び合算売り入札に関する情報を取得する。第2情報処理装置22は、1つの配電用変電所331を1つのバランシンググループと見立て、基幹系統31の市場において、約定処理を行う。第2情報処理装置22は、具体的には、それぞれの第1情報処理装置21から取得した入札曲線(買い入札曲線及び売り入札曲線)を、1つのバランシンググループからの入札として処理をすることにより、配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格を、約定価格として決定する。第2情報処理装置22は、決定した約定価格を、それぞれの第1情報処理装置21に出力する。
【0037】
約定結果取得部17は、第2情報処理装置22から、決定された約定価格に関する情報を取得する。決定された約定価格に関する情報を約定結果情報ICとも記載する。当該約定価格は、入札情報取得部11により出力された合算買い入札と合算売り入札とに基づく約定結果であるということもできる。すなわち、約定結果取得部17は、出力部14により出力された合算買い入札と合算売り入札とに基づく約定結果を取得するということもできる。
【0038】
決定部18は、合算部13(又は記憶部15)から合算情報ITを取得し、合算部13(又は記憶部15)から除外情報IEを取得し、約定結果取得部17から約定結果情報ICを取得する。決定部18は、取得した約定結果と、合算部13が非約定とし除外した買い入札と、合算部13が約定とし除外した売り入札とに基づき、配電用変電所331の下流側における約定価格を決定する。すなわち、電力取引管理装置10は、決定部18を備えることにより、全国市場の約定価格、すなわち、配電用変電所の一次側ノードにおける地点別限界価格に基づき、配電系統の地点別限界価格を決定するということもできる。
【0039】
図4は、本実施形態に係る電力取引管理方法の一連の処理の流れについて説明するフローチャートである。同図を参照しながら、上述した電力取引管理装置10により行われる電力取引管理方法の一連の処理の流れについて説明する。
【0040】
(ステップS11)まず、電力取引管理装置10は、配電用変電所331の下流側における全ての買い入札と売り入札とを取得する。
【0041】
(ステップS12)次に、電力取引管理装置10は、取得した全ての買い入札と売り入札とに基づき、各価格帯において、配電用変電所331の下流側が混雑しているか否かを確認する。混雑の有無を確認するため、電力取引管理装置10は、配電用変電所331が許容する電力供給量についての情報を予め記憶していてもよい。
【0042】
(ステップS13)電力取引管理装置10は、混雑が発生していると判定された場合(すなわち、ステップS13;YES)、処理をステップS14に進める。電力取引管理装置10は、混雑が発生していないと判定された場合(すなわち、ステップS13;NO)、処理をステップS17に進める。
【0043】
(ステップS14)電力取引管理装置10は、混雑の方向(すなわち、潮流方向)を確認する。電力取引管理装置10は、順潮流(すなわち、需要過多)である場合(すなわち、ステップS14;YES)、処理をステップS16に進める。電力取引管理装置10は、逆潮流(すなわち、供給過多)である場合(すなわち、ステップS14;NO)、処理をステップS15に進める。
【0044】
(ステップS15)電力取引管理装置10は、当該価格帯における売り入札の一部を非約定とし、合算買い入札の生成に用いる買い入札から除外する。
【0045】
(ステップS16)電力取引管理装置10は、当該価格帯における全ての売り入札を非約定とし、合算買い入札の生成に用いる売り入札から除外する。また、電力取引管理装置10は、買い入札の一部を非約定とし、混雑が解消するまで合算買い入札の生成に用いる買い入札から除外する。
【0046】
(ステップS17)電力取引管理装置10は、除外されていない買い入札と、売り入札とを合算することにより、合算買い入札又は合算売り入札を生成する。
【0047】
(ステップS18)電力取引管理装置10は、複数の配電用変電所331を取りまとめる第2情報処理装置22に対し、生成した合算買い入札と合算売り入札とを出力する。ここで、第2情報処理装置22は、複数の配電用変電所331それぞれについての合算買い入札と合算売り入札に関する情報を取得する。第2情報処理装置22は、取得した合算買い入札と合算売り入札に基づき約定処理を行う。第2情報処理装置22は、約定処理を行った結果を、それぞれの配電用変電所331に対して出力する。
【0048】
(ステップS19)電力取引管理装置10は、第1情報処理装置21から、出力した合算買い入札と合算売り入札とに基づき生成された約定結果を取得する。
【0049】
(ステップS20)電力取引管理装置10は、第1情報処理装置21から取得した約定結果と、ステップS15において除外した買い入札及び、ステップS16において除外した売り入札とに基づき、配電用変電所331以下における約定価格を決定する。
【0050】
図5は、本実施形態に係る電力取引管理方法において、買い札及び売り札の合算について具体的に説明するための図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る電力取引管理方法における買い入札及び売り入札の合算について、具体的に説明する。なお、図示する一例において単位は省略するが[MW]であるとする。
【0051】
図5(A)には、配電用変電所331の下流側における具体的な売り入札の一例と、配電用変電所331の下流側における全ての売り入札を単純に合算した場合における合計値とを記載している。図示するように、売り入札“売りA”では、10円以上12円未満が150、12円以上15円未満が200、15円以上18円未満が250、18円以上20円未満が300である。また、売り入札“売りB”では、10円以上12円未満が50、12円以上15円未満が100、15円以上18円未満が150、18円以上20円未満が200である。また、売り入札“売りC”では、10円以上12円未満が0、12円以上15円未満が0、15円以上18円未満が50、18円以上20円未満が100である。この場合、単純に合算した場合における合計値(売り計)は、10円以上12円未満が200、12円以上15円未満が300、15円以上18円未満が450、18円以上20円未満が600である。
【0052】
図5(B)には、配電用変電所331の下流側における具体的な買い入札の一例と、配電用変電所331の下流側における全ての買い入札を単純に合算した場合における合計値とを記載している。図示するように、買い入札“買いA”では、10円以上12円未満が300、12円以上15円未満が200、15円以上18円未満が150、18円以上20円未満が100である。また、買い入札“買いB”では、10円以上12円未満が200、12円以上15円未満が150、15円以上18円未満が50、18円以上20円未満が0である。また、買い入札“買いC”では、10円以上12円未満が50、12円以上15円未満が0、15円以上18円未満が0、18円以上20円未満が0である。この場合、単純に合算した場合における合計値(買い計)は、10円以上12円未満が450、12円以上15円未満が300、15円以上18円未満が200、18円以上20円未満が100である。
【0053】
図5(C)には、
図5(B)に示した合計値(買い計)から、
図5(A)に示した合計値(売り計)を引いた値が示されている。ここで、配電用変電所331が許容する電力量が±300[MW]である場合について検討する。
図5(C)を見てみると、10円以上12円未満が-350であり、配電用変電所331の下流側では、10円以上12円未満で約定できないことが分かる。ただし、全国市場の結果として、配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格が10円以上12円未満となった場合、全国市場において10円以上12円未満で約定した安価な売り入札を、配電用変電所331の下流側への供給に使うことができる。そこで、電力取引管理装置10は、10円以上12円未満の全ての売り入札と一部の買い入札を一旦除外し、全国市場へあげる。ここで、再び、
図5(C)を見てみると、18円以上20円未満が-500である。この売り入札を全国市場へあげてしまうと、全国市場の結果として、配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格が18円以上20円未満になった場合、配電用変電所331の下流側において混雑が生じてしまう。そこで、電力取引管理装置10は、一部の売り入札を一旦除外し、全国市場へあげる。
【0054】
図5(D)には、配電用変電所331が許容する電力量である±300[MW]を考慮して、すなわち混雑を考慮して、買い入札及び売り入札の上限値を300とした場合の一例を示している。図示するように、10円以上12円未満の200の売り入札と250の買い入札、18円以上20円未満の200の売り入札は、一旦、非約定として除外されている。
【0055】
図5(E)には、電力取引管理装置10により一部の入札が一旦除外された後の、合算売り入札の一例が示されている。ここで、配電用変電所331の下流側が10円以上12円未満で約定することはないため、
図5(D)のとおり、電力取引管理装置10は、すべての売り入札を除外し、合算売り入札を零とする。また、電力取引管理装置10は、18円以上20円未満で、配電用変電所331が許容する電力量を超えたため約定できない分(具体的には、200の売り入札)を一旦除外し、合算売り入札とする。
【0056】
図5(F)には、電力取引管理装置10により一部の入札が一旦除外された後の、合算買い入札の一例が示されている。全国市場の結果として、配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格が10円以上12円未満となる場合、全国市場において10円以上12円未満で約定した安価な売り入札を、配電用変電所331の下流側への供給に使うことができるため、電力取引管理装置10は、10円以上12円未満で、配電用変電所331が許容する電力量を超えることから約定できない分(具体的には250の買い入札)を一旦除外し、合算買い入札とする。
【0057】
電力取引管理装置10は、このように生成した合算売り入札と、合算買い入札とを、第1情報処理装置21に出力することにより、全国市場へあげる。
【0058】
図6は、本実施形態に係る電力取引管理方法を用いて混雑管理を行う場合のイメージ図である。同図を参照しながら、本実施形態に係る電力取引管理方法を用いて混雑管理を行う場合の概要について説明する。図示する一例は、
図5を参照しながら説明した10円以上12円未満の場合に対応するものである。
【0059】
売り入札“売りA”では、10円以上12円未満が150である。また、買い入札“買いA”では、10円以上12円未満が300である。図示する一例において、配電線が許容する電力は150[MW]までとする。この場合、“買いA”の300のうち配電線が許容する電力150までは、配電変電所の上位系統から10円以上12円未満で約定した売り入札を用いて供給することができる。したがって、電力取引管理装置10は、全国市場で150の調達が可能となるよう、買い入札を150として全国市場へあげる。このとき、配電用変電所の一次側ノードにおける地点別限界価格が10円以上12円未満となった場合でも、当該配電線の地点別限界価格は12円以上15円未満である。
【0060】
売り入札“売りB”では、10円以上12円未満が50である。また、買い入札“買いB”では、10円以上12円未満が200である。図示する一例において、配電線が許容する電力は100[MW]までとする。この場合、“買いB”の200のうち配電線が許容する電力100までは、配電変電所の上位系統から10円以上12円未満で約定した売り入札を用いて供給することができる。したがって、電力取引管理装置10は、全国市場で100の調達が可能となるよう、買い入札を100として全国市場へあげる。このとき、配電用変電所の一次側ノードにおける地点別限界価格が10円以上12円未満となった場合でも、当該配電線の地点別限界価格は12円以上15円未満である。
【0061】
売り入札“売りC”では、10円以上12円未満が0であるため図示しない。また、買い入札“買いC”では、10円以上12円未満が50である。図示する一例において、配電線が許容する電力は50[MW]までとする。この場合、“買いC”の50全てについて、配電変電所の上位系統から10円以上12円未満で約定した売り入札を用いて供給することができる。したがって、電力取引管理装置10は、全国市場で50の調達が可能となるよう、買い入札を50として全国市場へあげる。このとき、配電用変電所の一次側ノードにおける地点別限界価格が仮に10円以上12円未満となった場合、当該配電線の地点別限界価格は10円以上12円未満となる。
【0062】
図6を参照しながら説明したように、買い入札及び売り入札から除外をすべき量は、それぞれ250と200となる。
【0063】
図7は、本実施形態の電力取引管理装置の内部構成の一例を示すブロック図である。電力取引管理装置10の少なくとも一部の機能は、コンピュータを用いて実現され得る。図示するように、そのコンピュータは、中央処理装置901と、RAM902と、入出力ポート903と、入出力デバイス904や905等と、バス906と、を含んで構成される。コンピュータ自体は、既存技術を用いて実現可能である。中央処理装置901は、RAM902等から読み込んだプログラムに含まれる命令を実行する。中央処理装置901は、各命令にしたがって、RAM902にデータを書き込んだり、RAM902からデータを読み出したり、算術演算や論理演算を行ったりする。RAM902は、データやプログラムを記憶する。RAM902に含まれる各要素は、アドレスを持ち、アドレスを用いてアクセスされ得るものである。なお、RAMは、「ランダムアクセスメモリー」の略である。入出力ポート903は、中央処理装置901が外部の入出力デバイス等とデータのやり取りを行うためのポートである。入出力デバイス904や905は、入出力デバイスである。入出力デバイス904や905は、入出力ポート903を介して中央処理装置901との間でデータをやりとりする。バス906は、コンピュータ内部で使用される共通の通信路である。例えば、中央処理装置901は、バス906を介してRAM902のデータを読んだり書いたりする。また、例えば、中央処理装置901は、バス906を介して入出力ポートにアクセスする。なお、第1情報処理装置21及び第2情報処理装置22についても同様に、図示するような機能構成を有していてもよい。
【0064】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態に係る電力取引管理装置10は、入札情報取得部11を備えることにより、配電用変電所331の下流側に接続された需要家332からの買い入札を取得し、配電用変電所331の下流側に接続された需要家332のうち一部の需要家332であって電力供給装置333を備える需要家332からの売り入札を取得する。また、電力取引管理装置10は、混雑有無判定部12を備えることにより、取得した買い入札の合計と、売り入札の合計とを、所定の閾値と比較することにより、配電用変電所331の下流側における混雑の有無及び逆潮流であるか順潮流であるかを判定する。また、電力取引管理装置10は合算部13を備えることにより、(1)配電用変電所331の下流側に混雑がない場合、取得した買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、(2)ある価格帯において、配電用変電所331の下流側が混雑しており、かつ逆潮流であると判定された場合、取得した売り入札の一部を下流側の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した売り入札を合算することにより合算売り入札を生成し、買い入札を合算することにより合算買い入札を生成し、(3)ある価格帯において、配電用変電所331の下流側が混雑しており、かつ順潮流であると判定された場合、合算売り入札を零として生成し、合算売り入札が零との前提のもとで、取得した買い入札の一部を下流の混雑が解消するまで非約定とし除外した上で、取得した買い入札を合算することにより合算買い入札を生成する。更に、電力取引管理装置10は、出力部14を備えることにより、合算買い入札と合算売り入札とを出力する。すなわち、本実施形態によれば、配電用変電所331ごとに、配電用変電所331の下流側の混雑が考慮された合算買い入札と合算売り入札とを算出し、算出された合算買い入札と合算売り入札とに基づき、全国市場で約定処理が行われる。したがって、本実施形態によれば、基幹系統と配電系統の混雑管理を組み合わせた最適化を実現することができる。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、電力取引管理装置10は、約定結果取得部17を備えることにより、出力した合算買い入札と合算売り入札とを含んで約定された全国市場の約定結果(配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格)を取得し、決定部18を備えることにより、約定結果取得部17により取得された約定結果と、合算部13が非約定とし除外した買い入札と、合算部13が約定とし除外した売り入札とに基づき、配電用変電所331以下の配電系統における地点別限界価格を決定する。すなわち、電力取引管理装置10によれば、全国市場の約定結果に基づき、ローカル市場の地点別限界価格を決定する。したがって、本実施形態によれば、基幹系統と配電系統の混雑管理を組み合わせた最適化を実現することができる。本実施形態によれば、基幹系統と配電系統の混雑管理を組み合わせた最適化を実現することができる。
【0066】
また、上述した実施形態によれば、電力取引管理装置10は、制約条件取得部16を更に備えることにより、電力供給装置333の発電量が制約される条件に関する制約条件を取得し、合算部13は、取得した制約条件に基づき合算買い入札と合算売り入札とを生成する。電力供給装置333の発電量が制約される条件に関する制約条件とは、例えば日射予測当の再生可能エネルギーの出力予測に用いられる条件である。よって、本実施形態によれば、精度よく、基幹系統と配電系統の混雑管理を組み合わせた最適化を実現することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態における電力取引管理装置10が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0068】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…電力取引管理システム、10…電力取引管理装置、11…入札情報取得部、12…混雑有無判定部、13…合算部、14…出力部、15…記憶部、16…制約条件取得部、17…約定結果取得部、18…決定部、21…第1情報処理装置、22…第2情報処理装置、31…基幹系統、32…送電系統、33…配電系統、331…配電用変電所、332…需要家、333…電力供給装置、IB…入札情報、IA…許容電力量情報、IJ…混雑情報、IE…除外情報、IT…合算情報、IR…制約条件情報、IC…約定結果情報
【手続補正書】
【提出日】2023-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
図5(B)には、配電用変電所331の下流側における具体的な買い入札の一例と、配電用変電所331の下流側における全ての買い入札を単純に合算した場合における合計値とを記載している。図示するように、買い入札“買いA”では、10円以上12円未満が300、12円以上15円未満が200、15円以上18円未満が150、18円以上20円未満が100である。また、買い入札“買いB”では、10円以上12円未満が200、12円以上15円未満が150、15円以上18円未満が50、18円以上20円未満が0である。また、買い入札“買いC”では、10円以上12円未満が50、12円以上15円未満が0、15円以上18円未満が0、18円以上20円未満が0である。この場合、単純に合算した場合における合計値(買い計)は、10円以上12円未満が
550、12円以上15円未満が
350、15円以上18円未満が200、18円以上20円未満が100である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
図5(C)には、
図5(B)に示した合計値(買い計)から、
図5(A)に示した合計値(売り計)を引いた値が示されている。ここで、配電用変電所331が許容する電力量が±300[MW]である場合について検討する。
図5(C)を見てみると、10円以上12円未満
が350であり、配電用変電所331の下流側では、10円以上12円未満で約定できないことが分かる。ただし、全国市場の結果として、配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格が10円以上12円未満となった場合、全国市場において10円以上12円未満で約定した安価な売り入札を、配電用変電所331の下流側への供給に使うことができる。そこで、電力取引管理装置10は、10円以上12円未満の全ての売り入札と一部の買い入札を一旦除外し、全国市場へあげる。ここで、再び、
図5(C)を見てみると、18円以上20円未満が-500である。この売り入札を全国市場へあげてしまうと、全国市場の結果として、配電用変電所331の一次側ノードにおける地点別限界価格が18円以上20円未満になった場合、配電用変電所331の下流側において混雑が生じてしまう。そこで、電力取引管理装置10は、一部の売り入札を一旦除外し、全国市場へあげる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】