(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166562
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】姿勢制御装置、姿勢制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/08 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B66C13/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082741
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷 卓
(72)【発明者】
【氏名】山下 知志
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊爾
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小田 裕樹
(57)【要約】
【課題】クレーンに装置自身の重量が付加されることを抑制しつつ、吊荷の振れや回転を制御することができる姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】クレーンの吊荷の姿勢制御装置は、前記吊荷を保持する吊荷保持部と、前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吊荷の回転の有無を検出する回転検出部と、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する回転制御部と、前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部と、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する横揺れ制御部と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの吊荷の姿勢制御装置であって、
前記吊荷を保持する吊荷保持部と、
前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、
前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、
前記転向部の向きを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記吊荷の回転の有無を検出する回転検出部と、
前記吊荷の回転が検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する回転制御部と、
前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部と、
前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する横揺れ制御部と、
を有する姿勢制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、ジャイロセンサと、磁気センサまたはカメラである第1補助センサとをさらに有し、
前記回転検出部は、前記ジャイロセンサの計測値に基づいて前記吊荷の目標姿勢に対する方位偏差を算出するとともに、前記第1補助センサの計測値に基づいて前記方位偏差を補正する、
請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、加速度センサと、測位センサ、測距センサ、またはカメラである第2補助センサとをさらに有し、
前記横揺れ検出部は、前記加速度センサの計測値に基づいて前記吊荷の目標姿勢に対する位置誤差を算出するとともに、前記第2補助センサの計測値に基づいて前記位置誤差を補正する、
請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記推進器の鉛直方向の下端に接続され、前記推進器を前記吊荷保持部の上部に支持するマニホールドをさらに備え、
前記吊荷保持部は、前記吊荷を吊り下げて保持する矩形の部材であって、四方の各辺に少なくとも1つずつ鉛直方向に貫通する孔が形成されており、
前記マニホールドは、前記推進器が発生させた前記気流を異なる複数の方向に分流させて、前記孔それぞれに導入し、
前記転向部は、前記吊荷保持部の前記孔の出口に設けられる、
請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記吊荷保持部は、前記吊荷を吊り下げて保持する矩形の部材、または前記吊荷を内部に収容して保持する直方体形状のコンテナであり、
前記推進器は、前記吊荷保持部の四方の外側面それぞれに少なくとも1つずつ取り付けられ、
前記転向部は、前記推進器の鉛直方向の下方に1つずつ設けられる、
請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記転向部は、水平方向に延びる回転軸回りに回動可能であり、鉛直方向の下方に向かって広がる板状に形成された板状部を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項7】
前記転向部は、前記気流が噴出する向きを変更可能なノズルを有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の姿勢制御装置。
【請求項8】
クレーンの吊荷の姿勢制御装置であって、
鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、
前記吊荷に前記推進器を着脱可能に固定する固定治具と、
前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、
前記転向部の向きを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記吊荷の回転の有無を検出する回転検出部と、
前記吊荷の回転が検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する回転制御部と、
前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部と、
前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する横揺れ制御部と、
を有する姿勢制御装置。
【請求項9】
クレーンの吊荷を保持する吊荷保持部と、前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備える姿勢制御装置を用いた前記吊荷の姿勢制御方法であって、
前記姿勢制御装置が前記吊荷の回転の有無を検出するステップと、
前記吊荷の回転が検出された場合に、前記姿勢制御装置が前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、
前記姿勢制御装置が前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出するステップと、
前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記姿勢制御装置が前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、
を有する姿勢制御方法。
【請求項10】
クレーンの吊荷を保持する吊荷保持部と、前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備える姿勢制御装置に、
前記吊荷の回転の有無を検出するステップと、
前記吊荷の回転が検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、
前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出するステップと、
前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、姿勢制御装置、姿勢制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンで吊り下げた吊荷を旋回させるときや、風が発生したときには吊荷の振れが発生する。作業員は、吊荷に取り付けた介錯ロープを引っ張って吊荷の振れを抑制する必要がある。しかしながら、吊荷の振れが始まると、作業員の人力により吊荷を静止させて適切な位置に移動させる手法は時間や手間がかかる。また、突風などにより吊荷が大きく振れた場合は、吊荷が作業員に接触する可能性がある。
【0003】
そこで、吊荷の振れを自動的に抑制する手法が考えられている。たとえば特許文献1には、クレーンから姿勢制御装置を介して吊荷を吊り下げ、姿勢制御装置がスラスタで水平方向に推力を発生させることによって吊荷の振れを抑制する技術が記載されている。また、特許文献2には、ジャイロ効果により吊荷の回転を抑制する姿勢制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-94983号公報
【特許文献2】特開2019-151470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の姿勢制御装置では、装置自体の重量がクレーンに付加されるため、その分クレーンが吊り下げ可能な吊荷の重量が制約される。また、ジャイロ効果を利用した姿勢制御装置は、フライホイール等を搭載することで装置自体の重量が重くなり、また、吊荷の回転に対する制動力が小さい。
【0006】
本開示の目的は、クレーンに装置自身の重量が付加されることを抑制しつつ、吊荷の振れや回転を制御することができる姿勢制御装置、姿勢制御方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、姿勢制御装置は、クレーンの吊荷の姿勢制御装置であって、前記吊荷を保持する吊荷保持部と、前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吊荷の回転の有無を検出する回転検出部と、前記吊荷の回転が検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する回転制御部と、前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部と、前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する横揺れ制御部と、を有する。
【0008】
本開示の一態様によれば、姿勢制御装置は、クレーンの吊荷の姿勢制御装置であって、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記吊荷に前記推進器を着脱可能に固定する固定治具と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吊荷の回転の有無を検出する回転検出部と、前記吊荷の回転が検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する回転制御部と、前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部と、前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更する横揺れ制御部と、を有する。
【0009】
本開示の一態様によれば、姿勢制御方法は、クレーンの吊荷を保持する吊荷保持部と、前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備える姿勢制御装置を用いた前記吊荷の姿勢制御方法であって、前記姿勢制御装置が前記吊荷の回転の有無を検出するステップと、前記吊荷の回転が検出された場合に、前記姿勢制御装置が前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、前記姿勢制御装置が前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出するステップと、前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記姿勢制御装置が前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、を有する。
【0010】
本開示の一態様によれば、プログラムは、クレーンの吊荷を保持する吊荷保持部と、前記吊荷保持部に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸回りに羽根を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器と、前記推進器が発生させた前記気流を転向させる転向部と、前記転向部の向きを制御する制御部と、を備える姿勢制御装置に、前記吊荷の回転の有無を検出するステップと、前記吊荷の回転が検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の回転方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、前記吊荷の水平方向への揺れの有無を検出するステップと、前記吊荷の揺れが検出された場合に、前記気流の流れ方向が前記吊荷の揺れ方向の前方側に傾くように前記転向部の向きを変更するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、クレーンに装置自身の重量が付加されることを抑制しつつ、吊荷の振れや回転を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る姿勢制御装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す平面図である。
【
図4】第1の実施形態の姿勢制御装置の第1の変形例を示す平面図である。
【
図5】第1の実施形態の姿勢制御装置の第2の変形例を示す平面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係る姿勢制御装置による姿勢制御方法の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態に係る回転制御を説明するための図である。
【
図9】第1の実施形態に係る横揺れ制御を説明するための図である。
【
図10】第2の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す平面図である。
【
図11】第2の実施形態の姿勢制御装置の変形例を示す平面図である。
【
図12】第3の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す側面図である。
【
図13】第3の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す平面図である。
【
図14】第3の実施形態の姿勢制御装置の変形例を示す平面図である。
【
図15】第4の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す側面図である。
【
図16】少なくとも1つの実施形態に係る転向部の変形例を示す模式図である。
【
図17】少なくとも1つの実施形態に係る姿勢制御装置の制御部のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図9を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る姿勢制御装置の全体構成を示す概略図である。
姿勢制御装置1は、クレーンの吊荷9の回転および横振れを抑制して、吊荷9が目標の姿勢(位置および向き)を取るように制御するための装置である。姿勢制御装置1は、クレーンの先端のフックHにワイヤW1で吊り下げられる。また、吊荷9は、姿勢制御装置1からワイヤW2で吊り下げられる。
【0014】
(姿勢制御装置の構成)
図2は、第1の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す平面図である。
図3は、
図2のII-II線に沿う断面図である。
図2および
図3に示すように、姿勢制御装置1は、吊り治具10(吊荷保持部)と、推進器20と、転向部24と、マニホールド25と、制御部30とを備える。
【0015】
吊り治具10は、
図2に示すように平面視で矩形状をなしている。吊り治具10は、バッテリ(不図示)などを内蔵する。また、吊り治具10には、クレーンの先端のフックHに姿勢制御装置1を吊り下げるワイヤW1(
図1)が接続されるとともに、吊荷9を吊り下げるワイヤW2(
図1)が接続される。吊り治具10は、吊荷9を吊り下げて保持する吊荷保持部として機能する。
【0016】
また、吊り治具10には、鉛直方向に貫通する複数の孔11が形成される。
図2に示すように、孔11は、吊り治具10の各辺に少なくとも1つずつ形成される。孔11は、平面視で各辺に直交する方向を長辺とする矩形状(スリット状)に形成され、
図2の例のように吊り治具10の重心位置Gを中心として放射状に(十字状に)配列される。
【0017】
図4は、第1の実施形態の姿勢制御装置の第1の変形例を示す平面図である。
吊り治具10は、
図4に示すように、各辺に2つずつ孔11が形成されていてもよい。また、孔11の数は4の倍数であればよく、各辺に3つ以上の孔11が形成されてもよい。
【0018】
推進器20は、吊り治具10の重心位置Gを含む領域に設けられる。推進器20は、
図3に示すようにダクテッドファンであり、電動機21と、羽根22と、ダクト23とを有している。
【0019】
電動機21および羽根22は、軸線Xに沿って鉛直方向に延びる回転軸21aの下端側および上端側にそれぞれ設けられる。電動機21は、吊り治具10に内蔵されたバッテリから電力が供給されると、回転軸21aを介して羽根22を回転駆動する。なお、他の実施形態では、電動機21は吊り治具10に内蔵されたバッテリからではなく、外部の電源装置から、たとえばワイヤW2に沿わせて配置された電源ケーブルを介して電力供給されてもよい。
【0020】
羽根22は、回転軸21a回りに回転することにより、鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる。推進器20は、この下方に向かう気流に対する反作用により、姿勢制御装置1を鉛直方向に上昇させる推力(浮力)を得る。気流の流れ方向において、気流が流れ去る側を「下流側」、その反対側を「上流側」とも記載する。なお、
図2には推進器20が2枚の羽根22を有している例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、推進器20は3枚以上の羽根22を有していてもよい。
【0021】
ダクト23は、鉛直方向に延びる円筒状に形成され、電動機21および羽根22を外周側から覆うように配置される。ダクト23の内部は、羽根22の回転により発生した気流の流路となる。
【0022】
なお、本実施形態では、推進器20がダクテッドファンである例について説明するが、これに限ら得ることはない。他の実施形態では、推進器20はプロペラや、高圧ガスを噴出するスラスタなどであってもよい。
【0023】
図5は、第1の実施形態の姿勢制御装置の第2の変形例を示す平面図である。
図5に示すように、姿勢制御装置1は複数(たとえば4つ)の推進器20を備えていてもよい。
図5の例では、各推進器20は、吊り治具10の重心位置Gの周囲に均等に配置される。各推進器20が発生させた気流は、マニホールド25を通じて吊り治具10の四方に形成された各孔11に導入される。
【0024】
マニホールド25は、
図3に示すように、推進器20(ダクト23)の鉛直方向の下端に接続される。マニホールド25は、推進器20を吊り治具10の上部に支持する支柱である。また、マニホールド25は、内部が中空となっており、ダクト23を通過した気流を複数の異なる方向に分流させて、吊り治具10の複数の孔11それぞれに導入する。
図2の例のように、吊り治具10に4つの孔11が形成されている場合、マニホールド25は4つに分岐して各孔11に接続される。推進器20が発生させた気流は、マニホールド25および複数の孔11を通過して、吊り治具10の鉛直方向の下方に分散して噴出される。
【0025】
なお、
図4の例のように、孔11が8つ(各辺に2つずつ)形成されている場合、マニホールド25は各孔11に対応して8つに分岐する。
【0026】
転向部24は、複数の孔11の出口(鉛直方向の下端)それぞれに設けられ、孔11から噴出される気流を転向させて推力方向を変化させる。
【0027】
転向部24は、板状部24aおよびアクチュエータ24cを有する。板状部24aは、水平方向(X軸に直交する方向)に延びる回転軸Y回りに回動可能であり、回転軸Yから鉛直方向の下方に向かって広がる平板状のルーバーまたはフラップである。板状部24aは、吊り治具10の各孔11に対し1つずつ設けられる。アクチュエータ24cは、後述の制御部30の制御にしたがい、板状部24aを回転軸Y回りに回動させる。転向部24は、板状部24aを回動させて傾けることにより、孔11から噴出される気流の向きを板状部24aに沿って転向させることができる。なお、板状部24aは、それぞれ異なる方向に異なる角度で回動可能である。
【0028】
制御部30は、
図3に示すように吊り治具10の上面に固定される。制御部30は、吊荷9の回転や揺れを検出し、推進器20が発生させる推力の方向を制御することにより、検出した回転や振れを抑制する。
【0029】
(制御部の機能構成)
図6は、第1の実施形態に係る制御部の機能構成を示すブロック図である。
図6に示すように、制御部30は、ジャイロセンサ301と、加速度センサ302と、第1補助センサ303と、第2補助センサ304と、通信処理部305と、回転検出部306と、回転制御部307と、横揺れ検出部308と、横揺れ制御部309とを備える。
【0030】
ジャイロセンサ301は、吊り治具10の姿勢を検出可能な傾斜角や、回転を検出可能な角加速度を計測する。
【0031】
加速度センサ302は、吊り治具10の横揺れを検出可能な加速度を計測する。
【0032】
第1補助センサ303は、本実施形態では磁気センサである。第1補助センサ303(磁気センサ)は、地磁気の方向を計測することにより、吊り治具10の向く方位を検出する。
【0033】
第2補助センサ304は、本実施形態ではGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した測位センサである。第2補助センサ304(測位センサ)は、受信した衛星信号に基づき吊り治具10の絶対位置(移動、経度)を計測する。
【0034】
通信処理部305は、外部機器との間で吊荷9の姿勢制御に用いられる情報や信号などの送受信を行う。外部機器は、たとえばクレーンの制御装置、クレーンの操作者が姿勢制御装置1を遠隔操作するための端末などである。本実施形態では、通信処理部305は、クレーンの動作(吊荷9の移動、旋回)が停止したことを示すクレーン停止信号を外部機器から取得する。制御部30は、クレーン停止信号の受信をトリガとして、吊荷9の姿勢制御を開始する。
【0035】
回転検出部306は、ジャイロセンサ301の計測値に基づいて、吊り治具10の回転、および吊り治具10に吊り下げられた吊荷9の回転の有無を検出する。
【0036】
回転制御部307は、吊荷9の回転が検出された場合に、気流の流れ方向が姿勢制御装置1の回転方向の前方側に傾くように、転向部24(板状部24a)の向きを変更する。
【0037】
横揺れ検出部308は、加速度センサ302の計測値に基づいて、吊り治具10の横揺れ、および吊り治具10に吊り下げられた吊荷9の横揺れの有無を検出する。
【0038】
横揺れ制御部309は、吊荷9の横揺れが検出された場合に、気流の流れ方向が姿勢制御装置1の揺れ方向の前方側に傾くように転向部24(板状部24a)の向きを変更する。
【0039】
(姿勢制御装置による姿勢制御方法)
図7は、第1の実施形態に係る姿勢制御装置による姿勢制御方法の流れを説明するためのフローチャートである。
クレーンの操作者は、クレーンのフックHに姿勢制御装置1を吊り下げ、姿勢制御装置1の吊り治具10に吊荷9を吊り下げた状態で、クレーンによる吊荷9の吊り上げを行う。また、吊荷9の吊り上げが完了すると、操作者はクレーンを停止する操作を行う。クレーンの制御装置は、クレーンの動作を停止すると、姿勢制御装置1の制御部30にクレーン停止信号を送信する。また、操作者が端末装置を通じて姿勢制御装置1の制御部30にクレーン停止信号を送信する操作を行ってもよい。制御部30の通信処理部305がこのクレーン停止信号を受信すると(ステップS01)、制御部30は吊荷9の姿勢制御を開始する。
【0040】
まず、回転検出部306は、吊荷9のヨー回転の有無を検出する(ステップS02)。
【0041】
たとえば、回転検出部306は、ジャイロセンサ301の計測値に基づいて、目標姿勢(目標向き)に対する吊荷9の方位偏差(ヨー角度)を算出する。回転検出部306は、算出した方位偏差が所定の角度閾値以上である場合、吊荷9が回転していると判断する。目標姿勢は、たとえば姿勢制御開始時(クレーン停止信号受信時)における吊荷9の初期姿勢である。また、回転検出部306は、算出した方位偏差を、第1補助センサ303(磁気センサ)が検出した吊荷9の向きに基づいて補正してもよい。
【0042】
なお、他の実施形態では、回転検出部306は、通信処理部305を介して外部機器から吊荷9の目標姿勢を取得し、ジャイロセンサ301の計測値および第1補助センサ303が検出した吊荷9の向きに基づいて、目標姿勢に対する吊荷9の方位偏差を求めてもよい。
【0043】
回転検出部306が吊荷9のヨー回転を検出した場合(ステップS02;YES)、回転制御部307は吊荷9の回転制御を実行する(ステップS03)。
【0044】
図8は、第1の実施形態に係る回転制御を説明するための図である。
たとえば、
図8に示すように、吊り治具10および吊荷9が破線矢印で示す回転方向Drに回転していたとする。この場合、回転制御部307は、全ての転向部24の板状部24aを回転方向Drの前方側に向かって同角度だけ回動するように制御する。このとき、回転制御部307は、方位偏差の大きさに応じて板状部24aを回動させる角度を調整する。そうすると、推進器20が発生させる気流の流れ方向Dflが回転方向Drの前方側に傾くように転向され、気流の流れに対する反作用で回転方向Drとは反対方向(実線矢印で示す推力方向Dth)の推力が発生する。この推力により、吊荷9の回転が抑制される。
【0045】
また、制御部30は、ステップS03の回転制御を実行すると、再度ステップS02に戻り、吊荷9のヨー回転が収まったか確認する。ヨー回転が収まっていない場合(ステップS02;YES)は、再度、回転制御を実行する(ステップS03)。つまり、制御部30は、回転検出部306がヨー回転を検出しなくなる(方位偏差が所定の角度閾値未満となる)まで、ステップS02~S03を繰り返し実行する。
【0046】
次に、回転検出部306がヨー回転を検出しない場合(ステップS02;NO)、横揺れ検出部308は、吊荷9の横揺れの有無を検出する(ステップS04)。
【0047】
たとえば、横揺れ検出部308は、加速度センサ302の計測値に基づいて、目標姿勢(目標位置)に対する吊荷9の水平方向における位置誤差を算出する。横揺れ検出部308は、算出した位置誤差が所定の誤差閾値以上である場合、吊荷9が横揺れしていると判断する。目標姿勢は、たとえば姿勢制御開始時(クレーン停止信号受信時)における吊荷9の初期姿勢である。また、横揺れ検出部308は、算出した位置誤差を、ジャイロセンサ301の計測値(傾斜角)や第2補助センサ304(測位センサ)が検出した吊荷9の絶対位置に基づいて補正してもよい。
【0048】
なお、他の実施形態では、横揺れ検出部308は、通信処理部305を介して外部機器から吊荷9の目標姿勢を取得し、加速度センサ302の計測値、および第2補助センサ304が検出した吊荷9の絶対位置に基づいて、目標姿勢に対する現在の吊荷9の揺れ方向および位置誤差を算出してもよい。
【0049】
横揺れ検出部308が吊荷9の横揺れを検出した場合(ステップS04;YES)、横揺れ制御部309は吊荷9の位置制御を実行する(ステップS05)。
【0050】
図9は、第1の実施形態に係る横揺れ制御を説明するための図である。
たとえば、
図9に示すように、吊り治具10および吊荷9が破線矢印で示す揺れ方向Dsに向かって揺れていたとする。この場合、横揺れ制御部309は、揺れ方向Dsに回動可能な転向部24の板状部24aを、揺れ方向Dsの前方側に向かって回動するように制御する。
図9の例では、紙面の上下に配置された板状部24aを揺れ方向Dsの前方(紙面の右側)に傾くように回動させる。このとき、横揺れ制御部309は、揺れの方向や位置誤差の大きさに応じて各板状部24aを回動させる角度を調整する。そうすると、推進器20が発生させる気流の流れ方向Dflが揺れ方向Dsの前方側に傾くように転向され、気流の流れに対する反作用で揺れ方向Dsとは反対方向(実線矢印で示す推力方向Dth)の推力が発生する。この推力により、吊荷9の横揺れが抑制される。
【0051】
また、制御部30は、ステップS05の位置制御を実行すると、再度ステップS04に戻り、吊荷9の横揺れが収まったか確認する。横揺れが収まっていない場合(ステップS04;YES)は、再度、位置制御を実行する(ステップS05)。つまり、制御部30は、横揺れ検出部308が横揺れを検出しなくなる(位置誤差が所定の誤差閾値未満となる)まで、ステップS04~S05を繰り返し実行する。
【0052】
次に、横揺れ検出部308が横揺れを検出しない場合(ステップS06;NO)、制御部30は、転向部24の板状部24aの向きを固定する(ステップS06)。
【0053】
なお、吊荷9の姿勢が安定した後、再びクレーンを動作させる場合がある。クレーンの制御装置は、たとえば操作者によりクレーンの操作を受け付けると、姿勢制御装置1の制御部30に姿勢制御の終了信号を送信する。また、操作者が端末装置を通じて姿勢制御装置1の制御部30に終了信号を送信する操作を行ってもよい。制御部30の通信処理部305がこの終了信号を受信すると(ステップS07;YES)、制御部30は吊荷9の姿勢制御を終了する。また、制御部30は、終了信号を受信しない場合(ステップS07;NO)、ステップS02に戻り、吊荷9の姿勢制御の一連の処理を引き続き実行する。
【0054】
姿勢制御装置1の制御部30は、クレーン停止信号を受信する度に、
図7の一連の処理を実行する。
【0055】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る姿勢制御装置1は、吊荷9を保持する吊り治具10と、吊り治具10に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸21a回りに羽根22を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器20と、推進器20が発生させた気流を転向させる転向部24と、転向部24の向きを制御する制御部30と、を備える。制御部30は、吊荷9の回転の有無を検出する回転検出部306と、吊荷9の回転が検出された場合に、気流の流れ方向が吊荷9の回転方向Drの前方側に傾くように転向部24の向きを変更する回転制御部307と、吊荷9の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部308と、吊荷9の揺れが検出された場合に、気流の流れ方向が吊荷9の揺れ方向の前方側に傾くように転向部24の向きを変更する横揺れ制御部309と、を有する。
【0056】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、推進器20により鉛直方向の上方へ向かう推力、すなわち、浮力を得ることができるので、姿勢制御装置1の自重によりクレーンが吊り下げ可能な吊荷9の重量が制限されることを抑制することができる。また、姿勢制御装置1は、推力方向を転向させて吊荷9の回転および横揺れを抑制することができる。したがって、作業員は安全かつ効率的にクレーン作業を実施することが可能となる。
【0057】
また、姿勢制御装置1は、推進器20の鉛直方向の下端に接続され、推進器20を吊り治具10の上部に支持するマニホールド25をさらに備える。吊り治具10は、吊荷9を吊り下げて保持する矩形の部材であって、四方の周縁部に少なくとも1つずつ鉛直方向に貫通する複数の孔11が形成されており、マニホールド25は、推進器20が発生させた気流を異なる複数の方向に分流させて、孔11それぞれに導入し、転向部24は、吊り治具10の孔11の出口に設けられる。
【0058】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、たとえば推進器20を1つのみ有する簡易な構成であっても、推進器20が発生させた気流を分配して、吊荷9の回転および横揺れを抑制することが可能となる。
【0059】
また、制御部30は、ジャイロセンサ301と、磁気センサである第1補助センサ303とを備える。回転検出部306は、ジャイロセンサ301の計測値に基づいて吊荷9の目標姿勢に対する方位偏差を算出するとともに、第1補助センサ303の計測値に基づいて方位偏差を補正する。
【0060】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、ジャイロセンサ301による方位偏差(ヨー角)の累積的な誤差を、第1補助センサ303(磁気センサ)が検出した吊荷9の向く方位により補正することができるので、より精度よく吊荷9の回転を抑制することができる。
【0061】
また、制御部30は、加速度センサ302と、測位センサである第2補助センサ304とを備える。横揺れ検出部308は、加速度センサ302の計測値に基づいて吊荷9の目標姿勢に対する位置誤差を算出するとともに、第2補助センサ304の計測値に基づいて位置誤差を補正する。
【0062】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、加速度センサ302による位置誤差の累積的な誤差を、第2補助センサ304(測位センサ)が検出した吊荷9の絶対位置により補正することができるので、より精度よく吊荷9の横揺れを抑制することができる。
【0063】
<第1の実施形態の変形例1>
上述の第1の実施形態において、第1補助センサ303が磁気センサである例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、第1補助センサ303は、カメラであってもよい。この場合、回転検出部306は、カメラが撮影した画像に既知の画像処理を施すことにより、吊荷9が回転しているか否か、および、吊荷9が向く方位を検出する。回転検出部306は、検出した吊荷9の向く方位から、方位偏差の推定、またはジャイロセンサ301の計測値に基づく方位偏差の補正を行う。
【0064】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、吊荷9の方位偏差を精密に検出することができるので、より精度よく吊荷9の回転を抑制することができる。
【0065】
<第1の実施形態の変形例2>
上述の第1の実施形態において、第2補助センサ304が測位センサである例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、第2補助センサ304は、吊り治具10(吊荷9)と周囲の物体(クレーンや建築物など)との間の距離を計測する測距センサ(レーザセンサ、超音波センサなど)、または、カメラであってもよい。
【0066】
第2補助センサ304が測距センサである場合、横揺れ検出部308は、吊荷9と周囲の物体との間の距離の変化から、吊荷9が横揺れしているか否か、および吊荷9の位置を推定する。
【0067】
また、第2補助センサ304がカメラである場合、横揺れ検出部308は、カメラが撮影した画像に既知の画像処理を施すことにより、吊荷9が横揺れしているか否か、および、吊荷9の位置を推定する。
【0068】
横揺れ検出部308は、第2補助センサ304の計測値から推定した吊荷9の位置に基づいて、位置誤差の推定、または加速度センサ302の計測値に基づく位置誤差の補正を行う。
【0069】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について
図10~
図11を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0070】
図10は、第2の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す平面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る姿勢制御装置1は、マニホールド25をなくし、吊り治具10の四方の外側面に少なくとも1つずつ推進器20が取り付けられている。また、本実施形態では、吊り治具10は孔11を有していない。
【0071】
図11は、第2の実施形態の姿勢制御装置の変形例を示す平面図である。
なお、
図11に示すように、姿勢制御装置1は、吊り治具10の1つの外側面に対し、複数(たとえば2つずつ)の推進器20を取り付けられたものであってもよい。
【0072】
転向部24は、1つの推進器20に対して、1つずつ設けられる。
【0073】
本実施形態に係る姿勢制御装置1は、マニホールド25をなくし、吊り治具10の外側面に推進器20を取り付けることにより、軽量かつコンパクトな構成とすることができる。また、このような構成であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について
図12~
図14を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0075】
図12は、第3の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す側面図である。
図12に示すように、本実施形態に係る姿勢制御装置1は、吊り治具10に代えてコンテナ12を備えている。コンテナ12は、直方体形状を有しており、内部に吊荷9を収容して保持する吊荷保持部として機能する。
【0076】
図13は、第3の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す平面図である。
図12および
図13に示すように、コンテナ12の四方の外側面には、少なくとも1つずつ推進器20が設けられる。
【0077】
図14は、第3の実施形態の姿勢制御装置の変形例を示す平面図である。
なお、
図14に示すように、姿勢制御装置1は、コンテナ12の1つの外側面に対し、複数(たとえば2つずつ)の推進器20を取り付けられたものであってもよい。
【0078】
転向部24は、1つの推進器20に対して、1つずつ設けられる。
【0079】
また、制御部30は、
図12の例のように、コンテナ12と推進器20と接続する接続部13のうちいずれか一つに設けられる。制御部30の機能構成は第1の実施形態と同様である。
【0080】
上述の実施形態では、姿勢制御装置1はワイヤW2により吊荷9を吊り下げていた。このため、ワイヤW2の揺動を考慮する必要があった。これに対し、本実施形態に係る姿勢制御装置1は、内部に吊荷9を収容可能なコンテナ12を備え、コンテナ12の外側面に推進器20を取り付けた構成を有している。これにより、姿勢制御装置1は、ワイヤW2の揺動に影響されることなく、吊荷9の回転および横揺れを直接的に抑制可能である。このため、姿勢制御装置1は、より効果的に吊荷9を安定させることができる。さらに、推進器20から噴出する気流が吊荷9に衝突することがないので、吊荷9をより安定させることができる。
【0081】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について
図15を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0082】
図15は、第4の実施形態に係る姿勢制御装置の構成を示す側面図である。
上述の第3の実施形態に係る姿勢制御装置1は、コンテナ12を備え、コンテナ12の外側面に推進器20を取り付ける構成であった。これに対し、本実施形態では、姿勢制御装置1は、コンテナ12をなくし、吊荷9の外側面に推進器20を着脱可能に固定する固定治具を備えている。推進器20は、固定治具14により、吊荷の四方の外側面それぞれに少なくとも1つずつ取り付けられる。推進器20の数については、第3の実施形態と同様である。
【0083】
転向部24は、1つの推進器20に対して、1つずつ設けられる。
【0084】
また、制御部30は、吊荷9と推進器20と接続する固定治具14のうちいずれか一つに設けられる。制御部30の機能構成は第1の実施形態と同様である。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る姿勢制御装置1は、吊荷9の外側面に固定治具14により推進器20を直接取り付けている。このようにすることで、姿勢制御装置1は、ワイヤW2の揺動に影響されることなく、吊荷9の回転および横揺れを直接的に抑制可能である。このため、姿勢制御装置1は、より効果的に吊荷9を安定させることができる。さらに、推進器20から噴出する気流が吊荷9に衝突することがないので、吊荷9をより安定させることができる。
【0086】
また、姿勢制御装置1は、吊荷9の外側面に推進器20を直接取り付けることにより、異なるサイズや形状を有する様々な吊荷9に柔軟に適用することが可能である。
【0087】
<その他の実施形態>
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0088】
また、上述の各実施形態において、転向部24が板状部24aを有する構成について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態に係る転向部24は、たとえば
図16に示すように、板状部24aに代えてノズル24bを有する構成であってもよい。ノズル24bは、管状をなしており、内部に気流が流通可能な流路が形成されている。ノズル24bは、アクチュエータ24cにより回動されて、気流が噴出する向きを変更可能である。また、ノズル24bは、弾性変形可能な材料で形成されたものであってもよい。
【0089】
<姿勢制御装置の制御部のハードウェア構成>
図17は、少なくとも1つの実施形態に係る姿勢制御装置の制御部のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【0090】
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、および、インタフェース904を備える。
【0091】
上述の制御部30は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。
【0092】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0093】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0094】
また、プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0095】
<付記>
上述の実施形態に記載の姿勢制御装置、姿勢制御方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0096】
(1)第1の態様によれば、クレーンの吊荷9の姿勢制御装置1は、吊荷9を保持する吊荷保持部10,12と、吊荷保持部10,12に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸21a回りに羽根22を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器20と、推進器20が発生させた気流を転向させる転向部24と、転向部24の向きを制御する制御部30と、を備える。制御部30は、吊荷9の回転の有無を検出する回転検出部306と、吊荷9の回転が検出された場合に、気流の流れ方向が吊荷の回転方向Drの前方側に傾くように転向部24の向きを変更する回転制御部307と、吊荷9の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部308と、吊荷9の揺れが検出された場合に、気流の流れ方向が吊荷9の揺れ方向Dsの前方側に傾くように転向部24の向きを変更する横揺れ制御部309と、を有する。
【0097】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、推進器20により鉛直方向の上方へ向かう推力、すなわち、浮力を得ることができるので、姿勢制御装置1の自重によりクレーンが吊り下げ可能な吊荷9の重量が制限されることを抑制することができる。また、姿勢制御装置1は、推力方向を転向させて吊荷9の回転および横揺れを抑制することができる。したがって、作業員は安全かつ効率的にクレーン作業を実施することが可能となる。
【0098】
(2)第2の態様によれば、第1の態様に係る姿勢制御装置1において、制御部30は、ジャイロセンサ301と、磁気センサまたはカメラである第1補助センサ303とをさらに有する。回転検出部306は、ジャイロセンサ301の計測値に基づいて吊荷9の目標姿勢に対する方位偏差を算出するとともに、第1補助センサ303の計測値に基づいて方位偏差を補正する。
【0099】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、ジャイロセンサ301による方位偏差(ヨー角)の累積的な誤差を、第1補助センサ303が検出した吊荷9の向く方位により補正することができるので、より精度よく吊荷9の回転を抑制することができる。
【0100】
(3)第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る姿勢制御装置1において、制御部30は、加速度センサ302と、測位センサ、測距センサ、またはカメラである第2補助センサ304とをさらに有する。横揺れ検出部308は、加速度センサ302の計測値に基づいて吊荷9の目標姿勢に対する位置誤差を算出するとともに、第2補助センサ304の計測値に基づいて位置誤差を補正する。
【0101】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、加速度センサ302による位置誤差の累積的な誤差を、第2補助センサ304が検出した吊荷9の絶対位置により補正することができるので、より精度よく吊荷9の横揺れを抑制することができる。
【0102】
(4)第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様に係る姿勢制御装置1は、推進器20の鉛直方向の下端に接続され、推進器20を吊荷保持部10の上部に支持するマニホールド25をさらに備える。吊荷保持部10は、吊荷9を吊り下げて保持する矩形の部材であって、四方の各辺に少なくとも1つずつ鉛直方向に貫通する孔11が形成されており、マニホールド25は、推進器20が発生させた気流を異なる複数の方向に分流させて、孔11それぞれに導入し、転向部24は、吊荷保持部10の孔11の出口に設けられる。
【0103】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、たとえば推進器20を1つのみ有する簡易な構成であっても、推進器20が発生させた気流を分配して、吊荷9の回転および横揺れを抑制することが可能となる。
【0104】
(5)第5の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様に係る姿勢制御装置1において、吊荷保持部10,12は、吊荷9を吊り下げて保持する矩形の部材(吊り治具10)、または吊荷9を内部に収容して保持する直方体形状のコンテナ12であり、推進器20は、吊荷保持部10,12の四方の外側面それぞれに少なくとも1つずつ取り付けられ、転向部24は、推進器20の鉛直方向の下方に1つずつ設けられる。
【0105】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、姿勢制御装置1と吊荷9をワイヤW2で接続した場合と異なり、ワイヤW2の揺動に影響されることなく、吊荷9の回転および横揺れを直接的に抑制可能である。このため、姿勢制御装置1は、より効果的に吊荷9を安定させることができる。さらに、推進器20から噴出する気流が吊荷9に衝突することがないので、吊荷9をより安定させることができる。
【0106】
(6)第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様に係る姿勢制御装置1において、転向部24は、水平方向に延びる回転軸回りに回動可能であり、鉛直方向の下方に向かって広がる板状に形成された板状部24aを有する。
【0107】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、板状部24aの回動角度を変えるのみで推進器20が発生させた気流の向きを変えることが可能となる。これにより、簡素な構成のもとで、吊荷9の回転や横揺れを抑制することができる。
【0108】
(7)第7の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様に係る姿勢制御装置1において、転向部24は、気流が噴出する向きを変更可能なノズル24bを有する。
【0109】
このようにすることで、姿勢制御装置1は、ノズル24bの回動角度を変えるのみで推進器20が発生させた気流の向きを変えることが可能となる。これにより、簡素な構成のもとで、吊荷9の回転や横揺れを抑制することができる。
【0110】
(8)第8の態様によれば、クレーンの吊荷9の姿勢制御装置1は、鉛直方向に延びる回転軸21a回りに羽根22を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器20と、吊荷9に推進器20を着脱可能に固定する固定治具14と、推進器20が発生させた気流を転向させる転向部24と、転向部24の向きを制御する制御部30と、を備える。制御部30は、吊荷9の回転の有無を検出する回転検出部306と、吊荷9の回転が検出された場合に、気流の流れ方向が吊荷の回転方向Drの前方側に傾くように転向部24の向きを変更する回転制御部307と、吊荷9の水平方向への揺れの有無を検出する横揺れ検出部308と、吊荷9の揺れが検出された場合に、気流の流れ方向が吊荷9の揺れ方向Dsの前方側に傾くように転向部24の向きを変更する横揺れ制御部309と、を有する。
【0111】
(9)第9の態様によれば、姿勢制御方法は、クレーンの吊荷9を保持する吊荷保持部10,12と、吊荷保持部10,12に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸21a回りに羽根22を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器20と、推進器20が発生させた気流を転向させる転向部24と、転向部24の向きを制御する制御部30と、を備える姿勢制御装置を用いた吊荷9の姿勢制御方法であって、姿勢制御装置1が吊荷9の回転の有無を検出するステップと、吊荷9の回転が検出された場合に、姿勢制御装置1が気流の流れ方向が吊荷9の回転方向Drの前方側に傾くように転向部24の向きを変更するステップと、姿勢制御装置1が吊荷9の水平方向への揺れの有無を検出するステップと、吊荷9の揺れが検出された場合に、姿勢制御装置1が気流の流れ方向が吊荷9の揺れ方向Dsの前方側に傾くように転向部24の向きを変更するステップと、を有する。
【0112】
(10)第10の態様によれば、プログラムは、クレーンの吊荷9を保持する吊荷保持部10,12と、吊荷保持部10,12に取り付けられ、鉛直方向に延びる回転軸21a回りに羽根22を回転させて鉛直方向の下方に向かう気流を発生させる推進器20と、推進器20が発生させた気流を転向させる転向部24と、転向部24の向きを制御する制御部30と、を備える姿勢制御装置に、姿勢制御装置1が吊荷9の回転の有無を検出するステップと、吊荷9の回転が検出された場合に、姿勢制御装置1が気流の流れ方向が吊荷9の回転方向Drの前方側に傾くように転向部24の向きを変更するステップと、姿勢制御装置1が吊荷9の水平方向への揺れの有無を検出するステップと、吊荷9の揺れが検出された場合に、姿勢制御装置1が気流の流れ方向が吊荷9の揺れ方向Dsの前方側に傾くように転向部24の向きを変更するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0113】
1 姿勢制御装置
9 吊荷
10 吊り治具(吊荷保持部)
11 孔
12 コンテナ(吊荷保持部)
13 接続部
14 固定治具
20 推進器
21 電動機
21a 回転軸
22 羽根
23 ダクト
24 転向部
24a 板状部
24b ノズル
24c アクチュエータ
25 マニホールド
30 制御部
301 ジャイロセンサ
302 加速度センサ
303 第1補助センサ
304 第2補助センサ
305 通信処理部
306 回転検出部
307 回転制御部
308 検出部
309 制御部