(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166564
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】緩衝器、ピストンおよび緩衝器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20241122BHJP
F16F 9/19 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F16F9/32 M
F16F9/32 L
F16F9/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082745
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増澤 駿
(72)【発明者】
【氏名】大石 優
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC14
3J069DD03
3J069DD26
3J069DD48
(57)【要約】
【課題】異音の発生を抑制することができる緩衝器、ピストンおよび緩衝器の製造方法を提供する。
【解決手段】作動流体が封入されているシリンダ21と、シリンダ21内に挿入されて、シリンダ21を第1室41と第2室42とに区画するピストン40と、一端がピストン40のピストン本体45に連結され、他端がシリンダ21の外部へ延出されているロッドと、ピストン本体45の径方向外側に設けられ、シリンダ21と摺動可能なピストンバンド46と、を備え、ピストンバンド46が、シリンダ21と摺動する摺動面46dに、ピストン本体45の径方向外側に設けられる本体溝部91~93よりも多く設けられる複数のバンド溝部131を有すると共に、摺動面46dが、シリンダ21と均等に当接するよう形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されているシリンダと、
前記シリンダ内に挿入されて、該シリンダを第1室と第2室とに区画するピストンと、
一端が前記ピストンのピストン本体に連結され、他端が前記シリンダの外部へ延出されているロッドと、
前記ピストン本体の径方向外側に設けられ、前記シリンダと摺動可能なピストンバンドと、
前記シリンダの端部に設けられる閉塞部材と、
を備える緩衝器であって、
前記ピストンバンドは、
前記シリンダと摺動する摺動面に、前記ピストン本体の径方向外側に設けられる第1溝部よりも多く設けられる複数の第2溝部を有すると共に、
前記摺動面が、前記シリンダと均等に当接するよう形成されている緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記複数の第2溝部は円弧状に形成され、
前記複数の第2溝部の間に形成されている突出部は、円弧状に形成されている、
緩衝器。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記摺動面は、軸方向一端から他端までがストレート状に形成され、
前記摺動面の軸線と前記シリンダの軸線とが同一となるよう形成されている緩衝器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の緩衝器であって、
前記複数の第2溝部と前記シリンダとの間には、前記作動流体が充填されている緩衝器。
【請求項5】
緩衝器に用いられるピストンであり、
ピストン本体と、
該ピストン本体の径方向外側に設けられるピストンバンドと、
を有し、
前記ピストンバンドは、
前記ピストン本体の径方向外側に設けられる複数の溝部よりも多く設けられる径方向外側に突出する複数の突出部を有し、
前記複数の突出部は、各突出部の外径が均等となるよう形成されている、
ピストン。
【請求項6】
作動流体が封入されているシリンダと、
前記シリンダ内に挿入されて、該シリンダを第1室と第2室に区画するピストンと、
一端が前記ピストンのピストン本体に連結されて他端が前記シリンダの外部へ延出されているロッドと 、
前記ピストン本体の径方向外側に設けられ、前記シリンダと摺動可能なピストンバンドと、
前記シリンダの端部に設けられる閉塞部材と、
を備える緩衝器の製造方法であって、
板状であって、外周部が円状をなし、前記外周部よりも径方向内側に孔部を有する形状のピストンバンド素材を形成する工程と、
前記ピストンバンド素材の軸方向一方の端面に、前記外周部から前記孔部までの間に複数の溝部を形成する工程と、
前記ピストンバンド素材を、前記複数の溝部が径方向外側となるよう筒状に変形させる工程と、
前記ピストンバンド素材を前記ピストン本体に結合させる工程と、
を含む緩衝器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器、ピストンおよび緩衝器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器において、ピストン本体とピストンバンドとを有するピストンを備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/225544号
【特許文献2】特許第6817848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩衝器において、異音の発生を抑制することが望まれている。
【0005】
したがって、本発明は、異音の発生を抑制することができる緩衝器、ピストンおよび緩衝器の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る緩衝器の一の態様は、一端がピストンのピストン本体に連結され、他端がシリンダの外部へ延出されているロッドと、前記ピストン本体の径方向外側に設けられ、前記シリンダと摺動可能なピストンバンドと、前記シリンダの端部に設けられる閉塞部材と、を備え、前記ピストンバンドは、前記シリンダと摺動する摺動面に、前記ピストン本体の径方向外側に設けられる第1溝部よりも多く設けられる複数の第2溝部を有すると共に、前記摺動面が、前記シリンダと均等に当接するよう形成されている、構成とした。
【0007】
本発明に係るピストンの一の態様は、ピストン本体と、該ピストン本体の径方向外側に設けられるピストンバンドと、を有し、前記ピストンバンドは、前記ピストン本体の径方向外側に設けられる複数の溝部よりも多く設けられる径方向外側に突出する複数の突出部を有し、前記複数の突出部は、各突出部の外径が均等となるよう形成されている、構成とした。
【0008】
本発明に係る緩衝器の製造方法の一の態様は、板状であって、外周部が円状をなし、前記外周部よりも径方向内側に孔部を有する形状のピストンバンド素材を形成する工程と、前記ピストンバンド素材の軸方向一方の端面に、前記外周部から前記孔部までの間に複数の溝部を形成する工程と、前記ピストンバンド素材を、前記複数の溝部が径方向外側となるよう筒状に変形させる工程と、前記ピストンバンド素材をピストン本体に結合させる工程と、を含む、構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態の緩衝器を概略的に示す一部を断面とした正面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の緩衝器のピストンを示す断面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の緩衝器のピストンを示す部分拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の緩衝器のピストンの製造方法におけるピストンバンド素材を概略的に示す平面図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の緩衝器のピストンの製造方法におけるピストンバンド素材を示す
図4のV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ以下に説明する。
【0012】
図1は、実施形態の緩衝器(Shock Absorber)を示すものである。実施形態の緩衝器11は複筒型の油圧緩衝器である。緩衝器11は、車両、具体的には自動車のストラット型サスペンション装置に用いられるものである。
【0013】
緩衝器11は、シリンダ21を備えている。
【0014】
シリンダ21は、いずれも金属製の内筒22と外筒23とを有している。内筒22は円筒状である。よって、内筒22は、その内周面22aが円筒面状である。外筒23は有底の円筒状である。内筒22は、外筒23と同軸状に配置されて外筒23の径方向内側に配置されている。内筒22と外筒23との間はリザーバ室24となっている。シリンダ21には、内筒22内に作動流体としての油液Lが封入され、リザーバ室24内に作動流体としての油液LとガスGとが封入されている。
【0015】
外筒23は、円筒状の胴部31と、胴部31の軸方向の一端側を閉塞する底部32と、を有している。外筒23は、胴部31の軸方向における底部32とは反対側の端部が開口部(図示略)となっている。外筒23内の底部32上には、ベースバルブ(図示略)が胴部31に対し径方向に位置決めされて載置されている。緩衝器11は、胴部31の軸方向における底部32とは反対側の端部の内周部に嵌合されるロッドガイド35(閉塞部材)を備えている。内筒22は、軸方向の一端がベースバルブ(図示略)に支持されると共に、軸方向の他端がロッドガイド35に支持されており、これにより、外筒23に対し同軸状に配置されている。
【0016】
緩衝器11は、シリンダ21内に挿入されるピストン40を備えている。言い換えれば、ピストン40は、緩衝器11に用いられる。ピストン40は、シリンダ21の内筒22内に摺動可能に嵌装されている。ピストン40は、内筒22内に第1室41と第2室42とを画成する。言い換えれば、ピストン40は、シリンダ21を第1室41と第2室42とに区画する。第1室41は、内筒22の軸方向におけるピストン40よりも底部32とは反対側に設けられている。第2室42は、内筒22の軸方向におけるピストン40よりも底部32側に設けられている。第2室42は、底部32に載置されたベースバルブ(図示略)によって、リザーバ室24と区画されている。
【0017】
ピストン40は、
図2に示すように、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通孔44が形成された有孔円板状のピストン本体45と、ピストン本体45の外周部に設けられてピストン40の外周部を構成するピストンバンド46と、を備えている。ピストン40は、ピストンバンド46が、
図1に示す内筒22の内周面22aとの間をシールしつつ内周面22aを摺動する。言い換えれば、
図2に示すピストンバンド46は、ピストン本体45の径方向外側に設けられて、
図1に示すシリンダ21の内筒22と摺動可能となっている。
【0018】
緩衝器11は、ロッド50を備えている。ロッド50は、その軸方向における一端の第1端部がシリンダ21の内筒22内に配置されている。ロッド50は、この第1端部がピストン40のピストン本体45に連結されている。ロッド50は、その軸方向における、この第1端部とは反対側の他端の第2端部がシリンダ21からシリンダ21の外部に延出されている。
【0019】
ロッド50は、主軸部51と、取付軸部52とを有している。主軸部51および取付軸部52は、いずれも棒状である。取付軸部52は、その外径が主軸部51の外径よりも小径である。取付軸部52は、ロッド50の第1端部に設けられており、内筒22内に配置されている。ロッド50には、取付軸部52にピストン40のピストン本体45が貫通孔44を嵌合させて取り付けられている。ピストン40はロッド50と一体に移動する。
【0020】
外筒23の胴部31には、軸方向の底部32とは反対側の内周部に、上記したロッドガイド35が嵌合されており、このロッドガイド35よりもさらに底部32とは反対側の内周部にシール部材55(閉塞部材)が嵌合されている。ロッドガイド35は、ロッド50の主軸部51を摺動可能に支持する。シール部材55は、ロッド50の主軸部51に対し摺動可能であり、主軸部51と外筒23の胴部31との間を閉塞する。ロッドガイド35とシール部材55とが、シリンダ21の端部に設けられて、シリンダ21の開口部(図示略)を閉塞する。
【0021】
ピストン40には、ピストン本体45の貫通孔44よりも径方向外側に、ピストン本体45を軸方向に貫通する通路61および通路62が形成されている。通路61および通路62は、いずれも、第1室41と第2室42とを連通可能となっている。
【0022】
緩衝器11は、ディスクバルブ63と、ディスクバルブ64とを備えている。
ディスクバルブ63は、ピストン40の軸方向における底部32とは反対側に設けられている。ディスクバルブ63は、ピストン本体45に当接することで通路61を閉塞可能となっている。
【0023】
ディスクバルブ64は、ピストン40の軸方向における底部32側に設けられている。ディスクバルブ64は、ピストン本体45に当接することで通路62を閉塞可能となっている。ディスクバルブ63およびディスクバルブ64は、ピストン40と共にロッド50の取付軸部52にナット65で取り付けられている。
【0024】
ディスクバルブ63は、ロッド50がシリンダ21内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン40が第2室42を狭める方向に移動して第2室42の圧力が第1室41の圧力よりも所定値以上高くなると通路61を開いて第2室42から第1室41に油液Lを流すことになる。その際に、ディスクバルブ63は、減衰力を発生させる。ピストン40およびディスクバルブ63のうちの少なくとも一方には、ディスクバルブ63が通路61を最も閉塞した状態でも通路61を介して第1室41と第2室42とを連通させる固定オリフィス(図示略)が設けられている。
【0025】
ディスクバルブ64は、ロッド50がシリンダ21からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン40が第1室41を狭める方向に移動して第1室41の圧力が第2室42の圧力よりも所定値以上高くなると通路62を開いて第1室41から第2室42に油液Lを流すことになる。その際に、ディスクバルブ64は、減衰力を発生させる。ピストン40およびディスクバルブ64のうちの少なくとも一方には、ディスクバルブ64が通路62を最も閉塞した状態でも通路62を介して第1室41と第2室42とを連通させる固定オリフィス(図示略)が設けられている。
【0026】
緩衝器11は、シリンダ21のロッド50が延出する側の端部に、この端部を覆うように設けられるバンパキャップ67を有している。バンパキャップ67は、シリンダ21の開口部(図示略)の位置でロッド50と外筒23との間を閉塞する上記したシール部材55を覆って保護する。
【0027】
緩衝器11は、シリンダ21が車両の車輪(図示略)側に連結され、ロッド50が車両の車体側に連結されることで、車輪と車体との相対振動を減衰する。
【0028】
ピストン40は、ロッド50に固定されるピストン本体45が金属製であり、
図2に示すようにピストン本体45の外周部70に装着されるピストンバンド46が合成樹脂製である。ピストン本体45は、例えば焼結により形成されている。
【0029】
ピストン本体45において、縮み側の通路61は、ピストン本体45の軸方向における第1端部71側が、ピストン本体45の軸方向における第2端部72側よりもピストン本体45の径方向における内側に配置されている。また、ピストン本体45において、伸び側の通路62は、ピストン本体45の軸方向における第2端部72側が、ピストン本体45の軸方向における第1端部71側よりもピストン本体45の径方向における内側に配置されている。
【0030】
ピストン本体45は、貫通孔44および通路61,62を有する本体ベース部80と、
図3に示すように、いずれも本体ベース部80からピストン本体45の径方向外方に突出する、1箇所の本体凸部81と、同形状の複数、具体的には3箇所の本体凸部82と、1箇所の本体凸部83と、1箇所の本体凸部84と、を有している。合計6箇所の本体凸部81~84は、ピストン本体45の軸方向に間隔をあけて軸方向の第1端部71側から、本体凸部81、本体凸部82、本体凸部82、本体凸部82、本体凸部83、本体凸部84の順に並べられている。
【0031】
本体凸部81~84は、いずれも円環状である。本体凸部81~84は、ピストン本体45の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。1箇所の本体凸部81の径方向外端の本体外端面81a、3箇所の本体凸部82のそれぞれの径方向外端の本体外端面82a、1箇所の本体凸部83の径方向外端の本体外端面83aおよび1箇所の本体凸部84の径方向外端の本体外端面84aは、いずれも円筒面状であり、これら本体外端面81a~84aも、ピストン本体45の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。
【0032】
本体凸部81~84のうち、ピストン本体45の軸方向において最も第1端部71側にある1箇所の本体凸部81の外径、すなわち1箇所の本体外端面81aの外径は、ピストン本体45の軸方向において中間位置にある3箇所の本体凸部82および1箇所の本体凸部83の外径、すなわち3箇所の本体外端面82aおよび1箇所の本体外端面83aの外径よりも小径となっている。3箇所の本体凸部82および1箇所の本体凸部83の外径、すなわち3箇所の本体外端面82aおよび1箇所の本体外端面83aの外径は同径になっている。1箇所の本体凸部81、3箇所の本体凸部82、1箇所の本体凸部83および1箇所の本体凸部84のうち、ピストン本体45の軸方向において最も第2端部72側にある本体凸部84の外径、すなわち本体外端面84aの外径は、他の本体凸部81~83の外径、すなわち本体外端面81a~83aの外径よりも小径となっている。
【0033】
本体凸部81の本体外端面81aは、ピストン本体45の軸方向における長さである軸方向寸法が、他の本体凸部82~84の本体外端面82a~84aの軸方向寸法と比して大きくなっている。
【0034】
ピストン本体45の軸方向に隣り合う本体凸部81,82の間は、これらの本体外端面81a,82aよりも径方向内方に凹む円環溝状の本体溝部91(第1溝部)となっている。ピストン本体45の軸方向に隣り合う本体凸部82,82の間およびピストン本体45の軸方向に隣り合う本体凸部82,83の間は、これらの本体外端面82a,83aよりも径方向内方に凹む同形状の円環溝状の本体溝部92(第1溝部)となっている。よって、ピストン本体45には、同形状の本体溝部92が複数、具体的には3箇所形成されている。ピストン本体45の軸方向に隣り合う本体凸部83,84の間は、これらの本体外端面83a,84aよりも径方向内方に凹む円環溝状の本体溝部93(第1溝部)となっている。ピストン本体45には、ピストン本体45の軸方向に間隔をあけて、本体溝部91、本体溝部92、本体溝部92、本体溝部92、本体溝部93が、第1端部71側からこの順に並べられている。本体溝部91~93は、ピストン本体45の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。よって、本体溝部91の径方向外側に向く本体溝面91a、本体溝部92の径方向外側に向く本体溝面92aおよび本体溝部93の径方向外側に向く本体溝面93aも、ピストン本体45の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。
【0035】
本体溝部91の本体溝面91aのピストン本体45の中心軸線を含む平面での断面の形状は、ピストン本体45の径方向における内側部分が、内側に凹の円弧状をなし、ピストン本体45の径方向における外側部分が、ピストン本体45の径方向における外側ほどピストン本体45の軸方向において互いに離れるように傾斜する形状をなす。
【0036】
本体溝部92は、ピストン本体45の軸方向において鏡面対称の形状である。よって、本体溝面92aも、ピストン本体45の軸方向において鏡面対称の形状である。本体溝面92aのピストン本体45の中心軸線を含む平面での断面の形状は、ピストン本体45の径方向における内側部分が、内側に凹の円弧状をなし、ピストン本体45の径方向における外側部分が、ピストン本体45の径方向における外側ほどピストン本体45の軸方向において互いに離れるように傾斜する一対の直線状をなす。本体溝部91の溝底径、すなわち本体溝面91aの最小径と、3箇所の本体溝部92の溝底径、すなわち3箇所の本体溝面92aの最小径とは、同径である。本体溝部92と本体溝部92との間の本体凸部82も、ピストン本体45の軸方向において鏡面対称の形状となっている。
【0037】
本体溝部93は、本体溝部91,92とは異なる形状であり、本体溝部93の本体溝面93aは、本体溝部91,92の本体溝面91a,92aとは異なる形状である。本体溝面93aの形状は、ピストン本体45の径方向における内側部分が円筒面状をなし、ピストン本体45の径方向における外側部分がピストン本体45の径方向における外側ほどピストン本体45の軸方向において互いに離れるように傾斜する一対のテーパ面状である。本体溝部93の溝底径、すなわち本体溝面93aの最小径は、他の全部の本体溝部91,92の溝底径、すなわち本体溝面91a,92aの最小径よりも小径となっている。
【0038】
ピストン本体45の本体凸部81よりも軸方向の第1端部71側は、本体ベース部80の外周面である円筒面状の小径面部101となっている。この小径面部101の外径は、本体凸部81~84のいずれの外径、すなわち本体外端面81a~84aのいずれの外径よりも小径となっている。小径面部101の外径は、本体溝部91,92の溝底径、すなわち本体溝面91a,92aの最小径よりも小径であり、本体溝部93の溝底径、すなわち本体溝面93aの最小径よりも大径となっている。
【0039】
以上により、ピストン本体45は、ピストンバンド46が装着される外周部70に、複数の本体凸部81~84と本体溝部91~93とが、本体凸部81、本体溝部91、本体凸部82、本体溝部92、本体凸部82、本体溝部92、本体凸部82、本体溝部92、本体凸部83、本体溝部93、本体凸部84というように、軸方向に沿って交互に設けられ、第1端部71に近い側の一端に本体凸部81が形成され、第2端部72に近い側の他端に本体凸部84が形成され、本体凸部81よりも第1端部71に近い側に本体ベース部80の小径面部101が形成されている。
【0040】
ピストンバンド46は、フッ素樹脂等の低摩擦材、具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなっている。ピストンバンド46は、ピストン本体45の外周部70に装着される。以下、このようにピストン本体45の外周部70に装着された状態のピストンバンド46について説明する。
【0041】
ピストンバンド46は、円環帯状をなすバンド本体部110と、バンド本体部110の内周側にバンド本体部110の軸方向に間隔をあけて第1端部71側から順に並べられた、1箇所のバンド係合凸部111と、複数、具体的には3箇所の同形状のバンド係合凸部112と、1箇所のバンド係合凸部113と、を有している。また、ピストンバンド46は、バンド本体部110の外周側にバンド本体部110の軸方向に間隔をあけて第1端部71側から順に並べられた、1箇所の突出部121と、複数、具体的には16箇所の同形状の突出部122と、1箇所の突出部123と、を有している。
【0042】
ピストンバンド46は、1箇所のバンド係合凸部111、3箇所のバンド係合凸部112および1箇所のバンド係合凸部113が、いずれもバンド本体部110の円筒面状の内周面110aから径方向内方に突出する円環状をなしている。1箇所のバンド係合凸部111、3箇所のバンド係合凸部112および1箇所のバンド係合凸部113は、ピストンバンド46の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。よって、1箇所のバンド係合凸部111の径方向内側に向く係合凸状面111a、3箇所のバンド係合凸部112のそれぞれの径方向内側に向く係合凸状面112aおよび1箇所のバンド係合凸部113の径方向内側に向く係合凸状面113aも、ピストンバンド46の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。
【0043】
バンド係合凸部111の係合凸状面111aのピストンバンド46の中心軸線を含む平面での断面の形状は、ピストンバンド46の径方向における内側部分が、内側に凸の円弧状をなし、ピストンバンド46の径方向における外側部分が、ピストンバンド46の径方向における外側ほどピストンバンド46の軸方向において互いに離れるように傾斜する形状をなす。
【0044】
バンド係合凸部112は、ピストンバンド46の軸方向において鏡面対称の形状である。よって、バンド係合凸部112の係合凸状面112aも、ピストンバンド46の軸方向において鏡面対称の形状である。係合凸状面112aのピストンバンド46の中心軸線を含む平面での断面の形状は、ピストンバンド46の径方向における内側部分が、内側に凸の円弧状をなし、ピストンバンド46の径方向における外側部分が、ピストンバンド46の径方向における外側ほどピストンバンド46の軸方向において互いに離れるように傾斜する一対の直線状をなす。バンド係合凸部111の内径、すなわち係合凸状面111aの最小径と、3箇所のバンド係合凸部112の内径、すなわち3箇所の係合凸状面112aの最小径とは、同径である。
【0045】
バンド係合凸部113は、バンド係合凸部111,112とは異なる形状であり、バンド係合凸部113の係合凸状面113aは、バンド係合凸部111,112の係合凸状面111a,112aとは異なる形状である。係合凸状面113aの形状は、ピストンバンド46の径方向における内側部分が円筒面状をなし、ピストンバンド46の径方向における外側部分がピストンバンド46の径方向における外側ほどピストンバンド46の軸方向において互いに離れるように傾斜する一対のテーパ面状である。バンド係合凸部113の内径、すなわち係合凸状面113aの最小径は、他の全部のバンド係合凸部111,112の内径、すなわち係合凸状面111a,112aの最小径よりも小径となっている。
【0046】
ピストンバンド46は、1箇所の突出部121、16箇所の同形状の突出部122および1箇所の突出部123が、いずれもバンド本体部110から径方向外方に突出する円環状をなしている。1箇所の突出部121、16箇所の突出部122および1箇所の突出部123は、ピストンバンド46の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。よって、1箇所の突出部121の径方向外側に向く外周面121a、16箇所の突出部122のそれぞれの径方向外側に向く外周面122aおよび1箇所の突出部123の径方向外側に向く外周面123aも、ピストンバンド46の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。
【0047】
突出部121の外周面121aは、ピストンバンド46の径方向における外端部分が、円筒面状をなしている。また、突出部121の外周面121aは、ピストンバンド46の軸方向における突出部122側の部分が、ピストンバンド46の中心軸線を含む平面での断面の形状が、ピストンバンド46の径方向における外側が外側に凸の円弧状をなし、ピストンバンド46の径方向における内側が内側に凹の円弧状をなしている。突出部121は、ピストンバンド46の軸方向における突出部122とは反対側の端部が、バンド本体部110と共に、ピストンバンド46の軸方向に対して垂直に広がる平面状の端面46aを構成している。
【0048】
突出部122は、ピストンバンド46の軸方向において鏡面対称の形状である。よって、突出部122の外周面122aも、ピストンバンド46の軸方向において鏡面対称の形状である。突出部122の外周面122aのピストンバンド46の中心軸線を含む平面での断面の形状は、ピストンバンド46の径方向における外側部分が、外側に凸の円弧状をなし、ピストンバンド46の径方向における内側部分が、ピストンバンド46の軸方向両側共に、内側に凹の円弧状をなしている。
【0049】
突出部123は、突出部121,122とは異なる形状であり、突出部123の外周面123aは、突出部121,122の外周面121a,122aとは異なる形状である。外周面123aの形状は、ピストンバンド46の径方向における外側部分が円筒面状をなしている。また、外周面123aの形状は、ピストンバンド46の軸方向における突出部122側の部分が、ピストンバンド46の中心軸線を含む平面での断面の形状が、ピストンバンド46の径方向における外側が外側に凸の円弧状をなし、ピストンバンド46の径方向における内側が内側に凹の円弧状をなしている。突出部123は、ピストンバンド46の軸方向における突出部122とは反対側の端部が、バンド本体部110と共に、ピストンバンド46の軸方向における突出部122とは反対側ほど小径となるテーパ面状の端面46bを構成している。
【0050】
1箇所の突出部121の外径、すなわち外周面121aの外径と、16箇所の突出部122のそれぞれの外径、すなわち16箇所の外周面122aのそれぞれの外径と、1箇所の突出部123の外径、すなわち外周面123aの外径とは、同径である。言い換えれば、ピストンバンド46の外周部に径方向外方に突出して設けられた全ての円環状の突出部121~123は、各突出部121,122,123の外径が均等となるよう形成されている。よって、ピストンバンド46は、外周部に径方向外方に突出して設けられた全ての突出部121~123が、径方向の外端位置を同一円筒面上に配置している。1箇所の外周面121aの外径、16箇所の外周面122aのそれぞれの外径および1箇所の外周面123aの外径は、内筒22の内周面22aの内径よりも締め代分大径となっている。
【0051】
ピストンバンド46の軸方向に隣り合う突出部121と突出部122との間と、ピストンバンド46の軸方向に隣り合う突出部122と突出部122との間と、ピストンバンド46の軸方向に隣り合う突出部122と突出部123との間とが、これらの径方向の外端部よりも径方向内方に凹む円環溝状の同形状のバンド溝部131(第2溝部)となっている。ピストンバンド46には、ピストンバンド46の軸方向に間隔をあけて、17箇所のバンド溝部131が並べられている。17箇所のバンド溝部131は、同形状であり、ピストンバンド46の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。よって、17箇所のバンド溝部131のそれぞれの径方向外側に向く凹状面131aも、同形状であり、ピストンバンド46の中心軸線を中心とした同軸状に配置されている。17箇所のバンド溝部131は、溝径、すなわち凹状面131aの最小径が同径であり、ピストンバンド46の軸方向における幅が同長さである。ピストンバンド46の軸方向におけるバンド溝部131の幅は、例えば0.15mmである。ピストンバンド46の軸方向における突出部122の配置ピッチは一定であり、バンド溝部131の配置ピッチも一定である。ピストンバンド46の軸方向において、突出部122の配置ピッチとバンド溝部131の配置ピッチとは同等である。
【0052】
バンド溝部131は、ピストンバンド46の軸方向において鏡面対称の形状である。よって、凹状面131aも、ピストンバンド46の軸方向において鏡面対称の形状である。凹状面131aのピストンバンド46の中心軸線を含む平面での断面の形状は、ピストンバンド46の径方向における内側部分が、内側に凹部の円弧状をなし、ピストンバンド46の径方向における外側部分が、ピストンバンド46の軸方向両側共に、外側に凸の円弧状をなしている。
【0053】
ピストンバンド46の複数、具体的には17箇所のバンド溝部131は、ピストン40の中心軸線を含む平面での断面が円弧状である。ピストンバンド46のピストン40の軸方向に隣り合うバンド溝部131の間の突出部122も、ピストン40の中心軸線を含む平面での断面が円弧状である。
【0054】
ピストンバンド46は、バンド係合凸部111が本体溝部91に、複数のバンド係合凸部112がそれぞれ一対一で対応する本体溝部92に、バンド係合凸部113が本体溝部93に、それぞれ嵌合する。すると、ピストンバンド46は、バンド係合凸部111の係合凸状面111aが、本体溝部91の本体溝面91aに、複数のバンド係合凸部112の係合凸状面112aが、それぞれ一対一で対応する本体溝部92の本体溝面92aに、バンド係合凸部113の係合凸状面113aが、本体溝部93の本体溝面93aに、それぞれ全面的に隙間なく密着し、本体ベース部80の内周面110aが、本体凸部81~83の本体外端面81a~83aのそれぞれの全面に隙間なく密着する。なお、ピストンバンド46は、係合凸状面111aを本体溝面91aに、複数の係合凸状面112aを、それぞれ一対一で対応する本体溝面92aに、係合凸状面113aを本体溝面93aに、内周面110aを本体外端面81a~83aの全面に、それぞれ隙間なく密着させるのではなく、部分的に隙間を有していても良い。
【0055】
ピストンバンド46は、その外周面46cが、ピストン本体45の径方向外側に設けられる合計5箇所の本体溝部91~93よりも多い、合計17箇所のバンド溝部131を有している。ピストン40は、本体溝部91~93のピストン40の軸方向における形成密度よりも、バンド溝部131のピストン40の軸方向における形成密度の方が高い。
【0056】
ピストンバンド46は、その外周面46cが、ピストン本体45の径方向外側に設けられる合計5箇所の本体溝部91~93よりも多い、合計18箇所の突出部121~123を有している。ピストン40は、本体溝部91~93のピストン40の軸方向における形成密度よりも、突出部121~123のピストン40の軸方向における形成密度の方が高い。
【0057】
ピストンバンド46は、ピストン本体45の径方向外側に設けられる合計6箇所の本体凸部81~84よりも多い、合計18箇所の突出部121~123を有している。ピストン40は、本体凸部81~84のピストン40の軸方向における形成密度よりも、突出部121~123のピストン40の軸方向における形成密度の方が高い。
【0058】
ピストンバンド46は、バンド係合凸部111~113を含んでピストン本体45に固定される固定部141と、ピストンバンド46の軸方向一端側の端部の延出部142と、を有している。固定部141は、ピストン本体45に対し径方向および軸方向に固定されている。延出部142は、ピストン本体45に対し径方向および軸方向には固定されておらず、ピストンバンド46において、第1端部71に近い側に配置されている。言い換えれば、延出部142は、固定部141の第1端部71側の端部から第1端部71側に延出している。延出部142は、本体凸部81の本体外端面81aとは軸方向に位置が重なり合わない。
【0059】
ここで、ピストン40を製造する製造方法について説明する。
この製造方法では、まず、板状であって、
図4に示すように外周部135が円状をなし、この外周部135よりも径方向内側に孔部136を有する形状の、後にピストンバンド46となる一定厚さのピストンバンド素材46Aを形成する素材形成工程を行う。この素材形成工程により形成されたピストンバンド素材46Aは、孔部136の径が
図2に示すピストン本体45の外径よりも小径となっている。
【0060】
この製造方法は、次に、このピストンバンド素材46Aの軸方向一方の端面に、外周部135から孔部136までの間に、
図4および
図5に示すように、後に複数のバンド溝部131となる複数の溝部131Aを径方向に所定の間隔をあけて同軸状に形成する溝部工程を行う。この溝部工程では、例えば、ピストンバンド素材46Aの軸方向一方の平坦な端面に、複数の溝部131Aにそれぞれ一対一で対応する凸部が径方向に所定の間隔をあけて同軸状に形成された金型を加熱しつつ押し当てて複数の溝部131Aを形成する。
【0061】
この製造方法は、次に、このピストンバンド素材46Aを加熱しつつ、その軸方向の複数の溝部131Aが形成された側とは反対側の面に円錐状の治具を押し当ててテーパ状に変形させ、最終的に、複数の溝部131Aが径方向外側になるように筒状に変形させる筒状形成行程を行う。
【0062】
この製造方法は、次に、筒状とされたピストンバンド素材46Aを金属製のピストン本体45の外周部70に被せて、ピストン本体45に結合させてピストンバンド46とする結合工程を行う。この結合工程においては、例えば、筒状とされたピストンバンド素材46Aをピストン本体45の外周部70に被せた状態で、ピストン本体45を加熱することでピストンバンド素材46Aの内周部を加熱し変形させて、内周部に、
図3に示す1箇所の本体溝部91と嵌合する、係合凸状面111aを含む1箇所のバンド係合凸部111と、3箇所の本体溝部92に嵌合する、それぞれが係合凸状面112aを含む3箇所のバンド係合凸部112と、1箇所の本体溝部93に嵌合する係合凸状面113aを含むバンド係合凸部113と、を形成する。これにより、ピストンバンド素材46Aがピストンバンド46となる。
【0063】
以上のようにピストン本体45の外周部70にピストンバンド46を被せて結合させた構成のピストン40が、
図1に示すように、そのピストン本体45の貫通孔44にロッド50の取付軸部52を嵌合させて、取付軸部52に、ディスクバルブ63,64と共にナット65で固定される。その際に、ピストン40は、ロッド50の軸方向において、ピストン本体45が、第1端部71が主軸部51側に、第2端部72が主軸部51とは反対側の位置する向きとされる。よって、ピストン40は、
図2に示すピストンバンド46の延出部142が、固定部141から
図1に示すロッド50の軸方向における主軸部51側、すなわち第1室41および第2室42のうちの第1室41側に延出する。
【0064】
そして、このようにロッド50に固定された状態のピストン40が、シリンダ21の内筒22の内周面22aに嵌合される。
図3に示すように、この嵌合前のピストン40は、ピストンバンド46の1箇所の突出部121の外周面121aの外径、16箇所の突出部122の外周面122aのそれぞれの外径および1箇所の突出部123の外周面123aの外径が、内筒22の内周面22aの内径よりも大径となっている。このため、ピストン40は、シリンダ21の内筒22の内周面22aに嵌合されると、ピストンバンド46の1箇所の突出部121、16箇所の突出部122および1箇所の突出部123が全て締め代分弾性変形して内筒22の内周面22aに圧接する。その際に、ピストン40は、ピストンバンド46の1箇所の突出部121、16箇所の突出部122および1箇所の突出部123のそれぞれの径方向外端部分が、内筒22の内周面22aに倣って円筒面状をなし、同一の円筒面上に配置されて、内周面22aを摺動する摺動面46dとなる。また、その際に、17箇所のバンド溝部131は、径方向内側の部分が、内筒22の内周面22aから径方向内側に離間して、内筒22の内周面22aとの間に空間を形成する。
【0065】
シリンダ21の内筒22の内周面22aに嵌合された状態で、ピストン40のピストンバンド46の摺動面46dには、複数、具体的には17箇所のバンド溝部131が設けられている。ピストンバンド46は、全ての突出部121~123が同外径に形成されて同軸状に配置されているため、摺動面46dが、内筒22の内周面22aと均等に当接する。言い換えれば、ピストンバンド46の摺動面46dは、シリンダ21と均等に当接するよう形成されている。また、シリンダ21の内筒22の内周面22aに嵌合された状態で、ピストンバンド46の摺動面46dは、軸方向一端から他端までがストレート状となり、摺動面46dの軸線とシリンダ21の軸線とが同一となる。言い換えれば、ピストンバンド46の摺動面46dは、軸方向一端から他端までがストレート状に形成され、摺動面46dの軸線とシリンダ21の軸線とが同一となるよう形成されている。また、複数、具体的には17箇所のバンド溝部131は、同形状であるため、ピストン40がシリンダ21の内筒22の内周面22aに嵌合された状態でピストンバンド46の軸方向における幅が一定となる。そして、17箇所のバンド溝部131とシリンダ21の内筒22との間には、作動流体である油液Lが充填されることになる。
【0066】
上記した特許文献1,2には、緩衝器において、ピストン本体とピストンバンドとを有するピストンを備えたものが開示されている。緩衝器において、異音の発生を抑制することが望まれている。緩衝器においては、通常、ピストンバンドとシリンダとは隙間なく密着した状態で摺動する。一方で摺動時に、ピストンバンドとシリンダとの間の摩擦力によっては、ピストンバンドのシリンダとの密着面が摩擦力によってリアルタイムには動かずに、スティックスリップを引き起こし、異音を発生させてしまう可能性がある。
【0067】
実施形態の緩衝器11は、ピストン40のピストンバンド46が、シリンダ21と摺動する摺動面46dに、ピストン本体45の径方向外側に設けられる本体溝部91~93よりも多く設けられる複数のバンド溝部131を有すると共に、摺動面46dが、シリンダ21と均等に当接するよう形成されている。このため、緩衝器11は、ピストンバンド46の摺動面46dの一部に入力が加わることに起因するスティックスリップを抑制することができる。よって、緩衝器11は、スティックスリップに起因する異音の発生を抑制することができる。
【0068】
実施形態の緩衝器11は、ピストン40のピストンバンド46の複数のバンド溝部131が円弧状に形成され、複数のバンド溝部131の間に形成されている突出部122が円弧状に形成されている。このように、突出部122が円弧状に形成されているため、シリンダ21との接触面積が小さくなり、面圧が上がる。ピストンバンド46をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成することにより、面圧が上がるとPTFEの特性によって摩擦係数が下がることになる。よって、緩衝器11は、スティックスリップをさらに抑制することができ、スティックスリップに起因する異音の発生をさらに抑制することができる。
【0069】
実施形態の緩衝器11は、ピストン40のピストンバンド46の摺動面46dが、軸方向一端から他端までがストレート状に形成され、ピストンバンド46の摺動面46dの軸線とシリンダ21の軸線とが同一となるよう形成されているため、ピストン40の摺動時におけるシリンダ21に対する倒れを抑制することができる。よって、異音の発生をさらに抑制することができる。
【0070】
実施形態の緩衝器11は、ピストン40のピストンバンド46の複数のバンド溝部131とシリンダ21との間には、作動流体である油液Lが充填されているため、ピストンバンド46のシリンダ21に対する摺動性が向上し、よって、異音の発生をさらに抑制することができる。
【0071】
実施形態の緩衝器11は、ピストン40のピストンバンド46の、複数のバンド溝部131のピストンバンド46の軸方向における幅が一定であることから、シリンダ21との間に均等状に油溜めを形成することができ、摺動時の摩擦低減に有効な形状となる。よって、異音の発生をさらに抑制することができる。
【0072】
実施形態の緩衝器11の製造方法は、板状であって、外周部135が円状をなし、外周部135よりも径方向内側に孔部136を有する形状のピストンバンド素材46Aを形成する工程と、ピストンバンド素材46Aの軸方向一方の端面に、外周部135から孔部136までの間に複数の溝部131Aを形成する工程と、ピストンバンド素材46Aを、複数の溝部131Aが径方向外側となるよう筒状に変形させる工程と、ピストンバンド素材46Aをピストン本体45に結合させる工程と、を含む。このため、複数のバンド溝部131を有するピストンバンド46を比較的容易に形成してピストン本体45に結合させることができる。
【符号の説明】
【0073】
11…緩衝器、21…シリンダ、35…ロッドガイド(閉塞部材)、40…ピストン、41…第1室、42…第2室、45…ピストン本体、46…ピストンバンド、46A…ピストンバンド素材、46d…摺動面、50…ロッド、55…シール部材(閉塞部材)、91~93…本体溝部(第1溝部)、122…突出部、131…バンド溝部(第2溝部)、131A…溝部。