(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166570
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】断熱防水構造および断熱防水工法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20241122BHJP
E04D 11/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
E04D5/14 J
E04D11/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082752
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村野 佳巳
(57)【要約】
【課題】高い断熱性能と十分な固定強度を有し、断熱材の輸送コストの軽減が可能な断熱防水構造および断熱防水工法を提供する。
【解決手段】下地の上に配置される断熱層と、前記断熱層の上に配置される防水シートとを備える断熱防水構造であって、前記断熱層は複数の真空断熱材より構成され、前記真空断熱材は仕切部と連結部よりなる区画部材により前記下地上に形成された区画に収められている断熱防水構造である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の上に配置される断熱層と、前記断熱層の上に配置される防水シートとを備える断熱防水構造であって、
前記断熱層は複数の真空断熱材より構成され、
前記真空断熱材は仕切部と連結部よりなる区画部材により前記下地上に形成された区画に収められている断熱防水構造。
【請求項2】
前記連結部の上に固定板が配置され、前記固定板が固定具により下地に固定されている請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項3】
前記連結部はその上面より張設され前記真空断熱材の上面を覆う張り出し部を有し、前記張り出し部の上に前記固定板が配置されている請求項2に記載の断熱防水構造。
【請求項4】
前記固定板は上面に溶融着層を有し、前記防水シートの下面が前記溶融着層を介して前記固定板の上面に固定されている請求項2または3に記載の断熱防水構造。
【請求項5】
前記断熱層と前記防水シートとの間に補強板が配置され、
前記固定板は前記連結部の上の前記補強板の上に載置され、
前記防水シートが接着剤により前記補強板の上面に固定されている請求項2または3に記載の断熱防水構造。
【請求項6】
下地の上に仕切部と連結部よりなる区画部材を載置して前記下地上に区画を形成する工程と、
前記下地上に形成された前記区画に真空断熱材を収めて複数の前記真空断熱材から構成される断熱層を形成する工程と、
前記連結部の上面に固定板を載置し、前記固定板を固定具により前記下地に固定する工程と、
前記断熱層と前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの下面を前記固定板の上面に固定する工程と、
を備える断熱防水工法。
【請求項7】
下地の上に仕切部と連結部よりなる区画部材を載置して前記下地上に区画を形成する工程と、
前記下地上に形成された前記区画に真空断熱材を収めて複数の前記真空断熱材から構成される断熱層を形成する工程と、
前記断熱層と前記区画部材の上に亘って補強板を載置する工程と、
前記連結部の上の前記補強板の上面に固定板を載置し、前記固定板を固定具により前記下地に固定する工程と、
前記補強板の上面に接着剤を塗布した後、前記接着剤が塗布された前記補強板の上に亘って防水シートを敷設し固定する工程と、
を備える断熱防水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱材を用いた断熱防水構造および断熱防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の気候変動により建築物におけるエネルギー使用の合理化から、建築物の高断熱化の要望が高まっている。建物の屋上や屋根においては、例えば躯体などの下地上に合成樹脂製のフォーム材からなる断熱材を敷設した上に防水シートを敷設固定する断熱防水構造が採用されており、厚みの大きい断熱材を使用することでより高い断熱性能を持たせることができる。
断熱防水構造においては、断熱材の上に敷設した防水シートを固定するため、ディスクと呼ばれる固定板とビスなどの固定具とからなる固定部材を使用する機械的固定工法を用いることができる。この機械的固定工法では、通常下地の上に敷設した断熱材の上に固定板を載置した後、この固定板の上から固定具を下地に向けて打ち込み固定する。このように下地に固定された固定部材の固定板の表面と、断熱材の上に敷設した防水シートの裏面とを接合することにより、防水シートが部分的に固定される。
【0003】
特許文献1には、高断熱性能を発揮するに十分な層厚の断熱層を有して、断熱材表面に直接塩ビシートを誘導加熱により効率よく貼付し、且つコストの低廉な断熱構造とするため、下地に張設される第1断熱材層と、この上に積層される高周波誘導加熱に対する耐熱機能、防水シートからの可塑剤の移行防止機能、溶着剤による断熱材の溶剤に対する抵抗性を具備する第2断熱材層とからなる断熱層と、第2断熱材層の上面に点在して下地にビスにより係上される固定金具(固定板)と、第2断熱材層上に積層される防水シートと、固定金具と防水シートとの間にあって高周波誘導加熱により溶融されて防水シートを固定金具に固着する熱溶融層とを具えた断熱防水構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかしながら、断熱層の厚みが大きくなるとビスなどの固定具は下地に届くようにより長いものを使用しなければならず、防水シートを固着した固定金具から固定具の固定部分である下地までの距離が長い分、施工後に防水シートが風などに煽られた際に固定具の固定部分にかかる応力は大きく作用するため、固定強度の持続性低下が懸念される。
また、断熱層の厚みを増すことで容積が増えるため、輸送コストの負担も増すこととなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い断熱性能と十分な固定強度を有し、断熱材の輸送コストの軽減が可能な断熱防水構造および断熱防水工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明が用いた手段は、以下に示す断熱防水構造および断熱防水工法である。
【0008】
[1] 下地の上に配置される断熱層と、前記断熱層の上に配置される防水シートとを備える断熱防水構造であって、
前記断熱層は複数の真空断熱材より構成され、
前記真空断熱材は仕切部と連結部よりなる区画部材により前記下地上に形成された区画に収められている断熱防水構造。
【0009】
[2] 前記連結部の上に固定板が配置され、前記固定板が固定具により下地に固定されている[1]に記載の断熱防水構造。
【0010】
[3] 前記連結部はその上面より張設され前記真空断熱材の上面を覆う張り出し部を有し、前記張り出し部の上に前記固定板が配置されている[2]に記載の断熱防水構造。
【0011】
[4] 前記固定板は上面に溶融着層を有し、前記防水シートの下面が前記溶融着層を介して前記固定板の上面に固定されている[2]または[3]に記載の断熱防水構造。
【0012】
[5] 前記断熱層と前記防水シートとの間に補強板が配置され、
前記固定板は前記連結部の上の前記補強板の上に載置され、
前記防水シートが接着剤により前記補強板の上面に固定されている[2]または[3]に記載の断熱防水構造。
【0013】
[6] 下地の上に仕切部と連結部よりなる区画部材を載置して前記下地上に区画を形成する工程と、
前記下地上に形成された前記区画に真空断熱材を収めて複数の前記真空断熱材から構成される断熱層を形成する工程と、
前記連結部の上面に固定板を載置し、前記固定板を固定具により前記下地に固定する工程と、
前記断熱層と前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの下面を前記固定板の上面に固定する工程と、
を備える断熱防水工法。
【0014】
[7] 下地の上に仕切部と連結部よりなる区画部材を載置して前記下地上に区画を形成する工程と、
前記下地上に形成された前記区画に真空断熱材を収めて複数の前記真空断熱材から構成される断熱層を形成する工程と、
前記断熱層と前記区画部材の上に亘って補強板を載置する工程と、
前記連結部の上の前記補強板の上面に固定板を載置し、前記固定板を固定具により前記下地に固定する工程と、
前記補強板の上面に接着剤を塗布した後、前記接着剤が塗布された前記補強板の上に亘って防水シートを敷設し固定する工程と、
を備える断熱防水工法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い断熱性能と十分な固定強度を有し、断熱材の輸送コストの軽減が可能な断熱防水構造および断熱防水工法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】区画部材の一実施形態と真空断熱材の配置を説明する平面図である。
【
図2】区画部材の他の実施形態を示す平面図である。
【
図3】区画部材の他の実施形態を示す平面図である。
【
図4】
図3(3-3)の区画部材の連結部の説明図である。
【
図5】
図3(3-3)の区画部材と真空断熱材の配置を説明する平面図である。
【
図6】本発明の断熱防水構造の一実施形態を示す平面図および断面図である。
【
図7】本発明の断熱防水構造の他の実施形態を示す平面図および断面図である。
【
図8】本発明の断熱防水構造の他の実施形態を示す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明の断熱防水構造および断熱防水工法は以下に限定されるものではない。
【0018】
本発明の断熱防水構造は、建物の屋根や屋上に適用され、断熱層として真空断熱材を利用した高い断熱性能を有する防水構造であり、下地の上に敷設される複数の真空断熱材が、仕切部と連結部とからなる区画部材によって下地上に形成された区画に収められていることを特徴とする。真空断熱材は多孔質構造の芯材と、ガスバリア性フィルムなどの外包材とからなり、内部は真空状態として気体による熱伝導を限りなくゼロに近づけたもので、熱伝導率は一般的な硬質ウレタンフォームの約10分の1と断熱性能が高く、厚みが薄くても十分な断熱性能を得ることができる。
【0019】
真空断熱材としては、芯材としてグラスウール等の繊維やポリウレタンフォーム等発泡断熱材、シリカ等粉末の単体またはこれらの複合材を使用でき、外包材としてはガスバリア性を有する積層フィルムや金属箔などが使用できる。真空断熱材の形状はパネル状のものが好適であり、厚みが5mm~20mm程度であり、長さおよび幅が200mm~1500mm程度のものが使用でき、450mm~600mm角のものがより好ましい。
【0020】
本発明の断熱防水構造において、真空断熱材はその大きさに合わせて下地上に形成された区画に納められており、この区画は仕切部と連結部とからなる区画部材により形成される。仕切部と連結部は一つの部材として形成されていてもよく、それぞれ別の部材により形成されていてもよい。例えば、前者の場合は仕切部と連結部とが連続して形成された格子状の区画部材を挙げることができ、後者は複数の棒状の仕切部と、四方向から該仕切部を挿入可能な受入部を有する複数の連結部とで格子状の区画を形成可能な区画部材を挙げることができる。真空断熱材は外包材に包まれた内部を真空状態に維持することで断熱性能を発揮するため、従来の断熱防水構造における断熱材のようにビスなどの固定具を貫通させて下地に固定することはできず、外包材が傷付かないようにしなければならない。本発明の断熱防水構造においては上記のような区画部材を用いることにより、区画内に真空断熱材を嵌め込むことができるようになるとともに真空断熱材の外包材を保護している。
【0021】
図1~
図4に各種区画部材の実施形態を示す。
図1の区画部材2は仕切部21と連結部22が一つの部材として一体に形成された、格子状の部材の平面図である。仕切部21により格子状に区切られた各区画は、高さと大きさともに断熱層1を形成する真空断熱材11の形状に対応しており、この区画部材2を下地6の上に載置した後、各区画に真空断熱材11が敷き詰められる。仕切部21および連結部22の高さは真空断熱材11の高さと同程度であることが好ましく、このような態様とすることによって上に載置される防水シート等との間にできる空間をなるべく小さくして断熱効果を維持するとともに、真空断熱材11の上に敷設される防水シート等の荷重が直接かからないよう真空断熱材11を保護する効果もある。
図1においては一つの区画に一つの真空断熱材11が収められているが、一つの区画に複数の真空断熱材11が収められていてもよい。特に後者の場合は、真空断熱材11を下地に対して仮固定するために各種接着剤や両面テープなどを用いてもよい。また、区画部材2により形成される区画は必ずしも周囲を閉じているものでなくてもよく、一部が閉じられた区画としてもよい。
【0022】
区画部材2は下地6上に固定され、固定手段としては接着剤等を用いた接着固定によるものやビスなどの固定具を用いた機械固定によるものがある。固定強度や施工性の面から機械固定によるものが好ましく、機械固定による場合は区画部材2の連結部22において固定されていることが好ましく、
図1のように予め連結部22にビス孔22aが形成されていることが好ましい。機械固定においては区画部材2の連結部22の上に固定板を載置した後にビスなどの固定具を固定板と区画部材2の連結部22に貫通させ下地に固定することで、固定の際に区画部材に与える衝撃を少なくして安定的に固定することができ好ましい。
【0023】
図2は区画部材2の仕切部21と連結部22とが別の部材からなるものであり、(2-1)はその平面図である。仕切部21は棒状の複数の部材からなり、連結部22は仕切部21の先端を収容可能な受入部を四方向に有する部材であり、仕切部21を連結している。(2-2)は(2-1)の連結部22のみの側面図を示しており、(2-3)は(2-1)の連結部22の裏面を示したものである。(2-2),(2-3)を見ると連結部22の裏面には外周側の四方向に溝が形成されており、これを仕切部21の受入部(仕切部受入溝22b)としている。また連結部の中央部分の裏面には溝は形成されず、連結部の中心にビス孔22aが形成されている。
【0024】
区画部材2は連結部22の上面より張設された張り出し部22cを有してもよい。
図3は張り出し部22cを有する連結部22を備えた区画部材2の実施形態例であり、(3-1),(3-2)は仕切部21と連結部22とが一体に形成された例であり、(3-3)は仕切部21と連結部22とが別の部材からなるものである。張り出し部22cを有していると、連結部22の上に固定板を載置する際に張り出し部22cが支えとなり安定して固定板を載置することができるとともに、張り出し部22cによって下に配置される真空断熱材11の上面を保護しつつ真空断熱材11の角部の押さえも兼ねることができる。したがって真空断熱材11による高断熱性能を長期に亘って維持することができる上、十分な固定強度も維持することができる。なお、張り出し部22cは連結部22と別部材として構成することも可能である。
【0025】
図4は、
図3(3-3)に示された区画部材2の連結部22の平面図(4-1)と側面図(4-2)、および裏面図(4-3)を示したものである。(4-1)は
図3(3-3)の区画部材を上側より見た平面図であり、上面に中心から円周状に張り出した張り出し部22cを有する。(4-2)および(4-3)を見ると、張り出し部22cの裏面側には外周付近に複数の空間が設けられており(22b、22d)、これら空間からなる仕切部受入溝22bと断熱材受入溝22dにそれぞれ仕切部21の端部と真空断熱材11の角部を納めることができる。
【0026】
区画部材の材質としては特に制限はなく、各種合成樹脂やゴム製、木製、金属製のものなどが使用できるが、断熱性能を考慮すると合成樹脂製やゴム製、木製のものが好ましく、耐久性や取り扱いのしやすさから合成樹脂製のものがより好ましい。合成樹脂としては例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂や、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂などが使用でき、これら樹脂の発泡体も使用できる。区画部材が仕切部と連結部とがそれぞれ別部材から構成される場合には、例えば仕切部を軽量で取り扱いしやすい発泡樹脂製の部材とし、連結部を固定部材に対応可能な強度を有する硬質または半硬質の部材とすることもできる。
【0027】
図5は、
図3(3-3)に示された区画部材2と真空断熱材11を下地上に配置した状態を上から見た平面図である。仕切部21と連結部22よりなる区画部材2により下地上に形成されたそれぞれの区画に真空断熱材11が配置され、真空断熱材11の四隅は連結部22の張り出し部22cの下の空間に収められており、真空断熱材11が動かぬようになっている。連結部22の中心には上下方向に貫通したビス孔22aが形成されており、この連結部22の上に固定板を配置して固定板の上からビスなどの固定具を打ち込む際、固定具をビス孔22aに貫通させて下地に打ち込み固定することができる。
【0028】
図6,7は、同じく
図3(3-3)に示された区画部材2を用いた断熱防水構造を示している。
図6では機械的固定により、
図7では接着剤により防水シート4が固定されている。それぞれ詳細を説明する。
【0029】
図6の(6-1)は断熱防水構造の一部を上から見た平面図であり、大きい点線は防水シート4の下にある区画部材の配置を示している。
図6の(6-2),(6-3),(6-4)はそれぞれ(6-1)のA-A´,B-B´,C-C´における断面図である。
【0030】
(6-2)は仕切部21と連結部22の中心を通る断面を示しており、連結部22の裏面側の仕切部受入溝22bに仕切部21の端部が挿入されている。連結部22の上に固定板31が配置され、固定具32が固定板31の上から連結部22のビス孔22aを貫通して下地6に打ち込まれている。連結部22の上面には張り出し部22cが設けられており、張り出し部22cの上に固定板31が載置されることで固定板31が安定して載置されている。固定板31と仕切部21の上に亘って敷設された防水シート4は、固定板31と固定具32とからなる固定部材3により下地6に対して固定されている。具体的には、固定板31はその上面に溶融着層(図示せず)を有しており、溶融着層を介して防水シート4の下面が固定板31の上面に固定されている。このように本構造における固定部材3は連結部22を下地6に固定するとともに防水シート4を下地6に固定するものである。
【0031】
(6-3)は(6-2)に示した断面と並行で連結部22の中心をやや外れた位置における断面を示しており、連結部22の上面には固定板31が配置され防水シート4が溶融着層を介して固定板31に固定されており、連結部22の裏面に設けられた仕切部受入溝22bに挿入された仕切部21の断面が図示されている。また、隣り合う連結部22の間の下地上には断熱層1を形成する真空断熱材11が載置されており、真空断熱材11の角部は連結部22の張り出し部22cの下側の断熱材受入溝22dに受容されている。
【0032】
(6-4)は(6-2),(6-3)に示した断面と並行で連結部22より外れた位置における断面を示している。下地上の隣り合う仕切部21の間に真空断熱材11が配置されており、仕切部21と真空断熱材11の上に防水シート4が載置されている。
【0033】
通常、機械的固定による防水シートの固定においては、防水シートが点接着で固定されるため、十分な固定強度を得るために複数の固定板を一定のピッチで下地上に配置固定しているが、あらかじめ区画部材2の連結部22の配置が固定板31を配置する際に最適なピッチに設定されるように仕切部21の長さを調整することが好ましい。そうすることにより連結部22が固定板31の配置位置を示すガイドとなり、施工時の手間を省くことができる。固定ピッチの例として450mm~600mm程度で設定される場合、真空断熱材11の大きさも同様に450mm~600mm程度の大きさのものを使用することが好ましい。連結部22の張り出し部22cの外周は、固定板31の外周と同等かやや大きいことが好ましい。このような態様では連結部22の張り出し部22cが真空断熱材11の上面を保護する効果が高まり、固定板31を固定具32により下地に固定する際に誤って真空断熱材11を傷つけてしまうことを防止できる。
【0034】
図7の(7-1)は断熱防水構造の一部を上から見た平面図であり、大きい点線は防水シート4の下にある固定板と該固定板の下に複数配置されている補強板の配置を示している。
図7の(7-2),(7-3),(7-4)はそれぞれ(7-1)のD-D´,E-E´,F-F´における断面図である。
【0035】
(7-2)は隣り合う補強板5の間を通り且つ固定板31の中心を通る断面を示しており、固定板31の下には連結部22の裏面側の仕切部受入溝22bに仕切部21の端部が挿入されている。連結部22の上面には張り出し部22cが設けられており、張り出し部22cの上には周囲の4つの補強板5の角部が載置され、さらにその上に固定板31が配置され、固定具32が固定板31の上から隣り合う補強板5の間を通り連結部22のビス孔22aを貫通して下地6に打ち込まれて固定されている。1つの補強板5の4つの角部がそれぞれ異なる周囲の連結部22の張り出し部22cの上に載置されることで補強板5が安定して載置され、固定板31と固定具32との固定部材3により下地に対し強固に固定されている。このように本構造における固定部材3は連結部22を下地6に固定するとともに補強板5を下地6に固定するものである。固定板31と補強板5の上に亘って敷設された防水シート4は、接着剤により補強板5に対し固定されている。
【0036】
(7-3)は(7-2)に示した断面と並行で固定板31の中心をやや外れた位置における断面を示しており、連結部22の上面には補強板5の端部が、この補強板5の端部の上に固定板31が配置され、補強板5および固定板31の上面を覆う防水シート4が接着剤により補強板5に固定されている。連結部22の裏面に設けられた仕切部受入溝22bに挿入された仕切部21の断面が図示されている。また、隣り合う連結部22の間の下地上には断熱層1を形成する真空断熱材11が載置されており、真空断熱材11の端部は連結部22の張り出し部22cの下側の断熱材受入溝22dに受容されている。
【0037】
(7-4)は(7-2),(7-3)に示した断面と並行で固定板31より外れた位置における断面を示している。下地上の隣り合う仕切部21の間に真空断熱材11が配置されており、仕切部21と真空断熱材11の上に補強板5と防水シート4が載置されており、補強板5と防水シート4とは接着剤により固定されている。
【0038】
図7の断熱防水構造においては、補強板5の固定に固定部材3が使用されており、防水シート4は補強板5に対して全面的に接着剤で固定された面接着であり、使用する部材の種類は
図6の断熱防水構造より多くなるが、
図6の構造に比べ防水シートの固定強度が固定板31の配置に影響を受けないため、固定板31の固定ピッチは
図6に比べ広くすることができる。真空断熱材11の大きさに合わせて固定ピッチを設定することができ、例えば600mm~1500mm程度のピッチにすることで、使用部材の数量が抑えられ、コストの低減や施工時間の短縮などを図ることが可能である。
【0039】
固定板31はおおよそ平坦な薄板であり、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形であってもよいが、真空断熱材11や防水シート4を傷つけにくく、固定板31の上面と防水シート4の下面とを接着する構造としたときに、防水シート4が風に煽られた際に接着端部の一部に応力が集中することを避けるため、平面形状は円形が好ましく、さらに真円形であることが好ましい。固定板31の厚みは0.5mm~5.0mm程度であり、大きさは一辺または外径が30mm~100mm程度とすることができる。また、固定板31には固定具32が打ち込まれるための厚み方向に貫通するビス孔が設けられていてもよく、ビス孔は固定板31の中心部に設けられていることが好ましい。また、ビス孔には固定具32の頭部を受け入れるための座掘りが設けられていてもよい。さらに、固定板31の外周部分やビス孔の周囲にリブが設けられていてもよく、リブが設けられることで固定板31に固定具32を打ち込む際に、固定板31に反りや曲がりが生じることを防止できる。
【0040】
固定板31は薄板状の鋼板や合成樹脂などから成形することができ、強度の面から薄板鋼板が好適である。固定板31が薄板鋼板の場合、表面が熱可塑性樹脂で被覆された溶融着層を有していてもよい。少なくとも上面に防水シート4と同じ熱可塑性樹脂で被覆された溶融着層を有する固定板31の場合、固定板31の上面と防水シート4の下面とを接合することが可能となり、具体的には溶剤による溶着や熱風溶接機などによる加熱圧着での溶接固定が可能となる。また、固定板31が少なくとも上面に熱可塑性樹脂で被覆された溶融着層を有する薄板鋼板の場合には、誘導加熱装置による誘導加熱により固定板31の上面と防水シート4の下面とを接合することが可能となる。ここで熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル系樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、またエチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリオレフィン系、エラストマー系などのホットメルト接着剤なども利用できる。
【0041】
固定具32は固定板31を下地6に留め付け固定するものであり、ビスやボルト、釘など下地6に打ち込むことのできるものであり、金属製のビスが好適に用いることができ、アンカービス、タッピングビス、ドリルビスなどを用いることができる。材質としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、固定板31の上面から頭部がはみ出ないように、ビスのビス頭の形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。また、下地6がコンクリートの場合には固定具32にプラグを組み合わせて使用してもよい。
【0042】
防水シート4について説明する。
防水シート4は長尺状のシートであり、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル樹脂系シート、ポリオレフィン、塩素化ポリエチレンなど熱可塑性エラストマー系シート、アクリル系シートといった熱可塑性樹脂製シートや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどの加硫ゴム系/非加硫ゴム系といったゴム製シートなどからなり、それぞれ単層の均質シートからなるものや、これらを複合した積層シートからなるものでもよい。塩化ビニル樹脂系シートにおいては、可塑剤を含有した軟質シートが好ましい。また、防水シート4は補強層が積層されたシートであってもよく、補強層としては例えばガラスクロスやポリエステルクロスなどの織布や、ガラス不織布やポリエステル不織布などの不織布が挙げられる。防水シート4が、補強層が積層されたシートからなる場合は、施工時の固定強度がより向上するため好ましい。施工の際に防水シート4の下面が溶融着層を有する固定板の上面に接合される場合には、防水シート4の下面は熱可塑性樹脂層もしくはゴム層が露出していることが好ましく、補強層は防水シート4の中間層として積層されていることが好ましい。
【0043】
補強板5について説明する。
補強板5は防水シート4を接着工法により施工する際に、断熱層1および仕切部材2の上に敷設されて断熱層1の上面を保護するとともに、区画部材2に固定部材3により固定され、その上に防水シート4が接着剤により固定される。補強板5としてはセメント板、繊維強化セメント板(スレート板)、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)、火山礫,フライアッシュ,グラスウールまたはロックウールを混合したパネルなどの無機質板が使用できる。大きさは特に制限はないが、区画部材2の上に複数の補強板5を敷設して固定する際に例えば隣接する複数の補強板5の角部が1つの区画部材2の連結部22上に配置できるよう設定することが好ましい。このようにすることで隣接する複数の補強板5の角部を連結部22上において一つの固定部材3により同時に固定することができる。
【0044】
防水シート4を補強板5に固定する接着剤としては、一般的な接着剤を使用することができ、エポキシ樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン形接着剤、SBR系接着剤、ニトリルゴム系接着剤などが挙げられる。防水シート4の端部や複数の防水シート4同士の重ね合せ端部などには、必要に応じて各種シーリング剤を使用して端部の防水処理を行うことが好ましい。
【0045】
下地6について説明する。
下地6は特に制限はなく、鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)、軽量発泡コンクリート(ALC)、金属下地、木質下地などである。
図6~
図7の実施形態では下地6はRC下地である。
【0046】
本発明の防水構造においては、上記以外のものをさらに備えることができ、例えば緩衝シートが挙げられる。緩衝シートは主に
図6に示されるような機械的固定構造において、断熱層1と固定板31および防水シート4との間に敷設され、断熱層1と防水シート4との間における成分移行の防止や、施工時及び施工後において断熱層1である真空断熱材11の上面を保護するために備えられる。
図8に緩衝シート7を使用した断熱防水構造の例を示す。
【0047】
緩衝シート7としては、例えば柔軟性を有した発泡シート等が好適に用いられる。発泡シートとしては、ポリエチレンなどのオレフィン系発泡シートの他、スチレン系発泡シート、ポリウレタン系発泡シートなどを用いることができる。また、前述のような発泡シートに補強層として不織布や織布などが積層されたものを緩衝シートとして使用することもでき、補強層である不織布や織布に用いられる繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。緩衝シートの厚みは通常0.5mm~3.0mm程度のものが使用できる。
【0048】
以下、本発明の断熱防水工法について図により説明するが、これに限定されるものではない。
【0049】
図6の断熱防水工法について説明する。
図6の断熱防水工法は、下地の上に仕切部と連結部からなる区画部材を載置して下地上に区画を形成する工程と、下地上に形成された区画に真空断熱材を収めて複数の真空断熱材から構成される断熱層を形成する工程と、連結部の上面に固定板を載置し、前記固定板を固定具により前記下地に固定する工程と、断熱層と固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程と、防水シートの下面を固定板の上面に固定する工程とを備える。以下詳細を説明する。
まず、下地6の上に区画部材2の複数の連結部22を一定のピッチで間隔を空けて配置する。連結部22の裏面に設けられた仕切部受入溝22bに仕切部21の一方の端部を挿入した後、隣に配置された連結部22の仕切部受入溝22bに仕切部21の他方の端部を挿入する。複数の仕切部21を同様に連結部22に連結していくことにより下地6上に区画を形成する。この際、仕切部21と連結部22とからなる区画部材2で形成された下地6上の区画に真空断熱材11を配置しつつ作業することが好ましい。真空断熱材11はその角部を連結部22の張り出し部22cの裏面に設けられた断熱材受入溝22dに収めるように配置する。上記作業を繰り返すことにより複数の真空断熱材11からなる断熱層1を形成していく。
【0050】
下地6上に全ての区画部材2と真空断熱材11を配置して断熱層1を形成した後、固定部材3の固定板31を連結部22の上に配置し、固定板31の上から固定具32を打ち込み下地に固定する。固定板31は薄板鋼板製であり、上面に熱可塑性樹脂からなる溶融着層を有している。全ての連結部22において固定板31を固定具32により固定できたら、固定板31および複数の真空断熱材11からなる断熱層1の上に亘って防水シート4を敷設する。防水シート4の上から固定板31を誘導加熱装置により加熱して溶融着層を溶融させ、防水シート4の上から固定板31を押圧し、防水シート4の下面と固定板31の上面とを固定する。
【0051】
図6の断熱防水工法については仕切部21と連結部22が別部材からなる区画部材2によるものであるが、代わりに仕切部21と連結部22とが一体に形成された一つの部材からなる区画部材2を用いてもよい。固定板31と防水シート4との固定方法としては、溶剤による溶着や熱風溶接機などによる加熱圧着での溶接固定を行ってもよい。例えば固定板31の溶融着層および防水シート4が塩化ビニル樹脂製である場合には、溶剤としてテトラヒドロフランやメチルエチルケトンなどを好適に用いることができる。
【0052】
図7の断熱防水工法について説明する。
図7の断熱防水工法は、下地の上に仕切部と連結部からなる区画部材を載置して下地上に区画を形成する工程と、下地上に形成された区画に真空断熱材を収めて複数の真空断熱材から構成される断熱層を形成する工程と、断熱層と区画部材の上に亘って補強板を載置する工程と、連結部の上の補強板の上面に固定板を載置し固定板を固定具により下地に固定する工程と、補強板の上面に接着剤を塗布した後接着剤が塗布された補強板の上に亘って防水シートを敷設し固定する工程とを備える。以下詳細を説明する。
まず、下地6の上に区画部材2の複数の連結部22を一定のピッチで間隔を空けて配置する。連結部22の裏面に設けられた仕切部受入溝22bに仕切部21の一方の端部を挿入した後、隣に配置された連結部22の仕切部受入溝22bに仕切部21の他方の端部を挿入する。複数の仕切部21を同様に連結部22に連結していくことにより下地6上に区画を形成する。この際、仕切部21と連結部22とからなる区画部材2で形成された下地6上の区画に真空断熱材11を配置しつつ作業することが好ましい。真空断熱材11はその角部を連結部22の張り出し部22cの裏面に設けられた断熱材受入溝22dに収めるように配置する。上記作業を繰り返すことにより複数の真空断熱材11からなる断熱層1を形成していく。
【0053】
下地6上に全ての区画部材2と真空断熱材11を配置して断熱層1を形成した後、補強板5を角部が連結部22の上に載るように配置してゆき、固定部材3の固定板31を連結部22の上の複数の補強板5の角部の上に配置し、固定板31の上から固定具32を打ち込み下地に固定する。全ての補強板5の角部において固定板31を固定具32により固定できたら、必要に応じて補強板5の突き付け目地部に絶縁テープを貼り付けた後、補強板5および固定板31の上に亘って接着剤を塗布し、その上から防水シート4を敷設し圧着して固定する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、高い断熱性能と十分な固定強度を有し、断熱材の輸送コストの軽減が可能な断熱防水構造および断熱防水工法を提供することができ、特に建築物の屋根や屋上などの防水構造および防水工法として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 断熱層
11 真空断熱材
2 区画部材
21 仕切部
22 連結部
3 固定部材
31 固定板
32 固定具
4 防水シート
5 補強板
6 下地
7 緩衝シート