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特開2024-166571食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166571
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20241122BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20241122BHJP
   A47B 71/00 20060101ALI20241122BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F25D23/00 301L
A23L3/00
A47B71/00 Z
G01N27/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082754
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
(72)【発明者】
【氏名】平井 剛樹
【テーマコード(参考)】
2G046
3L345
4B021
【Fターム(参考)】
2G046AA12
2G046AA23
2G046AA24
2G046AA25
2G046BG04
2G046BJ06
2G046DC18
3L345AA02
3L345AA21
3L345AA26
3L345BB01
3L345CC01
3L345DD21
3L345DD55
3L345DD62
3L345EE03
3L345EE04
3L345EE36
3L345EE48
3L345EE53
3L345FF04
3L345FF32
3L345HH13
3L345HH32
3L345HH34
3L345HH36
3L345HH42
3L345JJ04
3L345JJ13
3L345KK01
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
4B021LA41
4B021LP10
4B021LT01
4B021LW02
(57)【要約】
【課題】本開示は、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行可能な食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法を提供する。
【解決手段】食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部と、気体計測部に対応する位置で食品を保持する食品保持部と、食品が食品保持部に保持されたことに応じて気体計測部による計測を開始させる制御部と、気体計測部の計測結果に基づいて食品の状態を判定する判定部と、を備える、食品保管装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部と、
前記気体計測部に対応する位置で前記食品を保持する食品保持部と、
前記食品が前記食品保持部に保持されたことに応じて前記気体計測部による計測を開始させる制御部と、
前記気体計測部の計測結果に基づいて前記食品の状態を判定する判定部と、
を備える、食品保管装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記食品が前記食品保持部に保持されていない状態が継続した場合に、前記気体計測部による計測を終了させる、請求項1に記載の食品保管装置。
【請求項3】
前記判定部の判定結果を出力する出力部を備え、
前記制御部は、前記気体計測部による計測を繰り返し実行させ、
前記判定部は、前記気体計測部による計測が所定回数だけ実行される毎に、前記食品の状態の判定結果を更新し、
前記出力部は、前記判定部の判定結果が更新された場合に、更新された判定結果を出力する、請求項1に記載の食品保管装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記制御部が前記気体計測部による計測を開始させた後に、前記食品が前記食品保持部に保持されていない状態が継続した場合に、前記判定部の判定結果を出力する、請求項3に記載の食品保管装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記気体計測部の計測結果に基づいて、前記食品に関する第1の判定、及び、第2の判定を実行可能であり、
前記出力部は、前記食品が前記食品保持部に保持されてから所定時間内は前記判定部の第1の判定の結果に基づく第1の情報を出力し、前記所定時間が経過した後は、前記判定部の第2の判定の結果に基づく第2の情報を出力する、請求項3に記載の食品保管装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記食品保持部に保持された前記食品が、計測対象の種類の前記食品である場合に前記気体計測部による計測を開始させる、請求項1から請求項5のいずれかに記載の食品保管装置。
【請求項7】
前記食品保持部は、箱体と、前記箱体の一面から引き出し可能に設けられる食品収容部と、を備え、
前記気体計測部は前記食品収容部に対向して配置され、
前記食品収容部において前記気体計測部に対向する位置に前記食品が配置されたことを検知する食品検知部を備える、請求項1に記載の食品保管装置。
【請求項8】
前記気体計測部は、前記食品収容部の上方に形成された凹部に配置される、請求項7に記載の食品保管装置。
【請求項9】
前記食品収容部は、前記気体計測部に対向する第1収容領域と、前記第1収容領域から離れた位置の第2収容領域とを区画する仕切りを備える、請求項7に記載の食品保管装置。
【請求項10】
前記食品保持部に送風する送風装置を備え、
前記制御部は、前記気体計測部による計測を実行させる間は前記送風装置を停止させる、請求項7から9のいずれかに記載の食品保管装置。
【請求項11】
前記食品保持部は、前記食品を載置可能な台座と、前記気体計測部を収容する計測容器とを備え、
前記計測容器は前記台座に連結され、前記台座の内部空間と前記計測容器の内部空間とが連通する、請求項1に記載の食品保管装置。
【請求項12】
前記計測容器は、前記気体計測部、前記制御部、前記判定部、及び、バッテリを収容し、前記バッテリから前記気体計測部、前記制御部、及び前記判定部に電力を供給可能である、請求項11に記載の食品保管装置。
【請求項13】
前記食品保持部は、前記食品を収容する本体と、前記気体計測部を収容する計測容器とを備え、
前記本体は、前記本体の一面に開閉部が設けられ、
前記計測容器は、前記本体において前記一面とは異なる面に連結され、前記本体の内部空間と前記計測容器の内部空間とが連通する、請求項1に記載の食品保管装置。
【請求項14】
前記本体の内部の温度を変化させる温度調整部を備え、
前記制御部は、前記判定部の判定結果に基づいて前記本体の内部の温度を変化させる、請求項13に記載の食品保管装置。
【請求項15】
食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部、及び、前記気体計測部に対応する位置で前記食品を保持する食品保持部を有する食品保管装置を制御するコンピュータにより、
前記食品が前記食品保持部に保持されたことに応じて前記気体計測部による計測を開始させ、
前記気体計測部の計測結果に基づいて前記食品の状態を判定する、食品保管装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガスセンサを用いて生鮮食品の鮮度判定を行う鮮度判定装置が、スタートスイッチの信号を受信することによりガスセンサの検知を開始する構成を開示する。特許文献2は、気体分子を検出するセンサを搭載する冷蔵庫において、扉の開閉状態や冷蔵庫の使用状態に応じて、センサの検出を行うタイミングを制御する構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-72344号公報
【特許文献2】特開2019-219076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行可能な食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における食品保管装置は、食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部と、前記気体計測部に対応する位置で前記食品を保持する食品保持部と、前記食品が前記食品保持部に保持されたことに応じて前記気体計測部による計測を開始させる制御部と、前記気体計測部の計測結果に基づいて前記食品の状態を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示における食品保管装置は、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1における冷蔵庫の縦断面図
図2】貯蔵部の構成を示す縦断面図
図3】冷蔵庫の制御系の構成を示すブロック図
図4】計測動作の例を示すタイミングチャート
図5】計測部の計測結果の例を示す図表
図6】計測部の計測結果の例を示す図表
図7】冷蔵庫の動作を示すフローチャート
図8】冷蔵庫の動作を示すフローチャート
図9】冷蔵庫の動作を示すフローチャート
図10】冷蔵庫の動作を示す説明図
図11】予測結果の例を示す図表
図12】予測結果と判定結果とに差異が生じた例を示す図表
図13】表示部により表示される画面の例を示す図
図14】表示部により表示される画面の例を示す図
図15】表示部により表示される画面の例を示す図
図16】表示部により表示される画面の例を示す図
図17】変形例1における貯蔵部の構成を示す縦断面図
図18】変形例2における貯蔵部の構成を示す縦断面図
図19】実施形態2における食品保管装置の縦断面図
図20】計測装置の構成を示すブロック図
図21】計測装置の動作を示すフローチャート
図22】実施形態3における食品保管装置の縦断面図
図23】計測装置の構成を示すブロック図
図24】計測装置の動作を示すフローチャート
図25】計測装置の動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、食品の鮮度や熟度などの品質を検知する手段として、食品由来のガス成分を検出するガスセンサを用いる技術があった。この種のセンサで検知を行うタイミングを制御する方法として、例えば、スタートスイッチの信号をトリガとする方法、および、冷蔵庫の扉の開閉状態や冷蔵庫の使用状態を用いる方法が知られている。
しかしながら、上記従来の技術では、適切でないタイミングでセンサによる検出が開始される場合があると言う課題を発明者らは発見した。具体的には、スタートスイッチの誤操作がなされた場合や、食品の出し入れを伴わない冷蔵庫の扉の開閉や冷蔵庫の使用状態の変化が生じた場合が挙げられる。このような場合、品質管理の対象でない食品が発するガス成分をセンサが検知してしまい、管理対象となっている食品の品質の判定を誤る可能性がある。さらに、不要なセンサの作動によって、電力消費の増大、センサ寿命の低下などが懸念される。このため、食品に関する検知や計測を適切なタイミングで実行することが求められていた。これらの課題を解決するために、発明者らは本開示の主題を構成するに至った。
そこで、本開示は、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行可能な食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法を提供する。
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
[1.実施形態1]
以下、各図を参照して実施形態の冷蔵庫1について説明する。
[1-1.冷蔵庫の構成]
図1は、本開示の実施形態1における冷蔵庫1の縦断面図である。
図1において、左側が冷蔵庫1の正面、すなわち前面側であり、右側が冷蔵庫1の背面側である。冷蔵庫1は、主に鋼板により形成された外箱11と、ABSなどの樹脂で成形された内箱12と、外箱11と内箱12との間の空間に充填発泡された断熱材11aとにより形成された断熱箱体で構成される。断熱材11aとしては、例えば、硬質発泡ウレタンが用いられる。
【0011】
冷蔵庫1の断熱箱体は、食品を収容する複数の貯蔵室を備える。実施形態1の冷蔵庫1においては、最上部の貯蔵室が冷蔵室13である。冷蔵室13の直下の両側には、製氷室14と冷凍/解凍室15の2つの貯蔵室が並設されている。更に、製氷室14と冷凍/解凍室15の直下には冷凍室16が設けられ、冷凍室16の直下である冷蔵庫1の最下部には野菜室17が設けられる。
【0012】
冷蔵庫1のそれぞれの貯蔵室の前面側開口には開閉可能な扉が配設される。具体的には、冷蔵室13には、不図示のヒンジにより回動可能な前面扉21が設けられる。製氷室14には前面扉22が設けられ、冷凍/解凍室15には前面扉23が設けられ、冷凍室16には前面扉23が設けられる。野菜室17には前面扉24が設けられる。前面扉22、23、24は、貯蔵室の内部に配置されるバスケットとともに前方に引き出すことが可能なスライド扉である。それぞれの貯蔵室は扉の閉成により冷気が漏洩しないように密閉される。
実施形態1の冷蔵庫1における各貯蔵室の構成は一例であり、各貯蔵室の配置構成は仕様などに応じて設計時に適宜変更可能である。
【0013】
冷蔵室13は、食品などの保存物を冷蔵保存するために凍らない温度の温度帯で維持される。冷蔵室13の具体的な温度例としては1℃~5℃が挙げられる。野菜室17は、冷蔵室13と同等もしくは若干高い温度帯に維持される。野菜室17の具体的な温度例としては2℃~7℃が挙げられる。冷凍室16は、食品を凍った状態で保存するために冷凍温度帯で維持される。冷凍室16の具体的な温度例としては-22℃~-15℃が挙げられる。冷凍/解凍室15は、冷凍室16と同様の温度帯で食品を保存することが可能でありユーザの解凍指令に応じて、冷凍/解凍室15に収容されている冷凍品を解凍するための解凍処理を行うことが可能である。これら冷蔵室13、製氷室14、冷凍/解凍室15、冷凍室16、及び野菜室17を総称して、冷蔵庫1の貯蔵室と呼ぶことができる。
【0014】
冷蔵庫1の上部には、機械室18が設けられる。機械室18には、圧縮機19および冷凍サイクル中の水分除去を行うドライヤ等の冷凍サイクルを構成する部品などが収容される。なお、機械室18の配設位置としては冷蔵庫1の上部に特定されるものではなく、冷凍サイクルの配設位置などに応じて適宜決定されるものであり、冷蔵庫1の下部などの他の領域に配設してもよい。
【0015】
冷蔵庫1の下部にある冷凍室16と野菜室17の背面側には、冷却室31が設けられる。冷却室31には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器32、および冷却器32が生成した冷気を送風する冷却ファン33が設けられる。冷却器32が生成した冷気は、冷却ファン33により各貯蔵室に繋がる風路38を流れて、各貯蔵室に供給される。それぞれの貯蔵室に繋がる風路38にはダンパ39が設けられ、ダンパ39を開閉することにより、各貯蔵室への冷気の流入と停止とが切り替えられる。冷蔵庫1は、圧縮機19の駆動制御、冷却ファン33の回転数制御、及び、ダンパ39の開閉制御を行うことにより、それぞれの貯蔵室を所定の温度帯に維持する。
【0016】
風路38内には、庫内の空気のにおい成分を吸着する不図示の脱臭フィルタが設けられる。冷却室31の下部には、冷却器32やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのヒータ34が設けられる。ヒータ34の下方には、ドレンパン35、ドレンチューブ36、蒸発皿37が設けられ、除霜時などに生じる水分を蒸発させる構成を有する。
【0017】
冷蔵庫1は、後述するように、表示部141、及び、入力部142を備える。表示部141は液晶表示パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示画面を有し、各種情報を表示する。表示部141の表示画面は、例えば、前面扉21に設置される。表示部141は、冷蔵庫1における各貯蔵室の温度の表示、冷蔵庫1における異常の発生の通知等を行う。
【0018】
入力部142は、冷蔵庫1を使用するユーザの操作を受け付けるデバイスである。入力部142の具体的な構成として、キーやスイッチを備える操作パネルが挙げられる。また、冷蔵庫1は、表示部141と入力部142の機能を備えるタッチパネルを備えてもよい。タッチパネルは、表示部141の表示画面と、表示画面に重畳配置されたタッチセンサとを備え、入力部142は、タッチセンサによってユーザの操作を受け付ける。このタッチパネルは、例えば、前面扉21に設置される。入力部142を用いることにより、冷凍/解凍室15による解凍指令、各貯蔵室の温度の設定等の各種の指示をユーザが入力できる。
【0019】
野菜室17には貯蔵部40が配置される。貯蔵部40は、果物、野菜、その他の生鮮食品、及び、各種の加工食品を収容し、収容されている食品の状態を計測および判定する装置である。貯蔵部40は、野菜室17の上部に設置される。前面扉24を矢印OPで示すように前方に引き出すことにより、貯蔵部40が冷蔵庫1の外部に露出し、貯蔵部40への食品の出し入れが可能となる。
【0020】
[1-2.貯蔵部の構成]
図2は、貯蔵部40の構成を示す縦断面図である。
貯蔵部40は、食品を収容するトレイ41を備える。トレイ41は、前後方向にスライド可能に、内箱12に取り付けられる。トレイ41は、前面扉24(図1)が前方に引き出された状態で、矢印OPで示すように冷蔵庫1の前面から引き出し可能であり、トレイ41が引き出された状態で、トレイ41への食品を収納すること、及び、取り出すことができる。
【0021】
トレイ41は、1または複数の食品を収容可能である。図2には、トレイ41に2つの食品FT、FOが収容された状態を例示する。対象食品FTは、貯蔵部40による状態の計測と判定の対象とされる食品を対象食品FTとする。
【0022】
トレイ41は平板状の底部41aを有し、底部41aに食品保持部43が設置される。食品保持部43は湾曲した凹形状、或いはリング形状の部材であり、対象食品FTを、トレイ41の内部で容易に移動しないように保持する。食品保持部43は、計測の対象とされる対象食品FTを保持し、食品保持部43に保持されない食品FOは、計測の対象とされない。つまり、食品保持部43は、計測の対象となる対象食品FTを、他の食品FOと区別される位置で保持する。
【0023】
トレイ41において、冷蔵庫1の背面側に相当する端部には後壁41bが設けられる。後壁41bは、対象食品FTや食品FOの背面側への脱落を防止する。後壁41bの上方は開放され、この部分を通って、冷気がトレイ41の内部に流入する。また、トレイ41の前端部には前壁41cが設けられる。前壁41cは、ユーザがトレイ41を前方に引き出す際の把手としても機能する。
【0024】
食品保持部43の上方には凹部44が設けられる。凹部44は、野菜室17に面する内箱12の平面に形成された凹部であり、下向きに開放された空間を形成する。凹部44は食品保持部43の上方に位置し、好ましくは、凹部44は食品保持部43の真上にある。
【0025】
凹部44には、収納検知部151、及び、気体計測部160が設置される。収納検知部151は、対象食品FTが食品保持部43に保持されたことを検知する装置である。気体計測部160は、食品保持部43に保持された対象食品FTに関する計測を行う装置である。
【0026】
気体計測部160は、対象食品FTに由来するガスの特性値を計測する。貯蔵部40は、気体計測部160の計測結果に基づいて、対象食品FTの状態を判定する。対象食品FTの状態とは、対象食品FTの特性と言い換えることができる。例えば、対象食品FTの特性とは定量的な特性である。具体的には、生鮮品の鮮度、果物や精肉の熟度、発酵食品の発酵進行程度、焙煎後の珈琲豆の香りの残存程度が挙げられる。また、対象食品FTの特性は定性的な特性であってもよい。具体的には、対象食品FTが果物である場合の果物の種類の識別、清酒やワインなどの飲料の風味に基づく分類が挙げられる。従って、貯蔵部40が計測の対象とする対象食品FTは、何らかのガスを発生し、対象食品FTに由来するガスが貯蔵部40において計測可能な食品であればよい。また、対象食品FTは、対象食品FTに由来するガスの成分や特性値が、対象食品FTの状態と相関を有する食品であることが好ましい。対象食品FTの例としては、上述するように、生鮮食品、飲料、発酵食品、その他の加工食品が挙げられる。本実施形態、及び、以下に説明する各実施形態や変形例では、対象食品FTとして、果物を用いる例を説明する。
【0027】
気体計測部160が計測するガスは、例えば、エステル類、アルデヒド類、アルコール類、二酸化炭素、エチレン、及び、その他の気体が挙げられる。気体計測部160は、1種類のガスを対象として計測する構成であってもよいし、複数のガスの特性値を計測する構成であってもよい。
【0028】
凹部44が形成する空間の開口は、食品保持部43の上面のサイズよりも小さいことが好ましい。例えば、凹部44の開口周縁の形状が円形であり、食品保持部43がリングまたは円形の皿である場合、凹部44の開口の直径は食品保持部43の上端の直径より小さい。より好ましくは、凹部44の開口の直径は食品保持部43の上端の直径の1/2以下であり、さらに好ましくは1/4以下である。また、気体計測部160や収納検知部151を汚れから保護するため、凹部44と食品保持部43との間に、通気性を有するカバーを設置してもよい。このカバーには、通気孔を有する金属部材や合成樹脂製の部材、紙、不織布等を用いることができる。このカバーは、食品保持部43の上方において対象食品FTに接触せず、かつ、凹部44の空間と対象食品FTとの間に配置されることが好適である。
【0029】
食品保持部43に対象食品FTが置かれると、対象食品FTが発するガスが上方に移動して凹部44の内部空間に溜まる。対象食品FTが発するガスの比重が野菜室17内の空気より重い場合も、対象食品FTが発するガスは底部41aに溜まり、その量の増加に伴って凹部44の内部に達する。気体計測部160を凹部44の空間に設置することによって、対象食品FTに由来するガスを効率よく計測できる。
【0030】
収納検知部151は、食品保持部43に対象食品FTが支持されているか否かを検知する。収納検知部151の具体的な構成は任意であり、例えば、近赤外光または超音波により距離を検知する測距センサを備え、食品保持部43の上に物体が存在することを検知する構成であってもよい。また、収納検知部151は、例えば、近赤外光により表面温度を検知するサーモパイルや、分光センサを備える構成であってもよい。収納検知部151がサーモパイルを有する場合、サーモパイルにより底部41aよりも高温の物体が食品保持部43の上に存在することを検知できる。収納検知部151が分光センサを有する構成では、例えば対象食品FTが果物である場合、観測した光がカロテノイドやクロロフィル等に特有のスペクトルを示すか否かに基づいて、対象食品FTが収納検知部151の検知範囲に存在することや、食品保持部43に収納されているのは確かに果物であることを検知できる。収納検知部151は、食品保持部43の下部に設けられて、食品保持部43への荷重を検知するタクトスイッチや重量センサであってもよい。
【0031】
[1-3.制御系の構成]
図3は、冷蔵庫1の制御系の構成を示すブロック図である。
冷蔵庫1は制御部110を備え、制御部110に圧縮機19、冷却ファン33、ヒータ34、ダンパ39、表示部141、入力部142、温度センサ143、計測部150、及び、第1通信部145が接続される。図3は、冷蔵庫1を構成する機能部の少なくとも一部を示した図に過ぎず、冷蔵庫1が図3に示されていない構成を備えることも勿論可能である。また、冷蔵庫1は、図3に示す構成の全てを備えていなくてもよい。
【0032】
温度センサ143は、冷蔵庫1の庫内の温度を検出する。冷蔵庫1は、少なくとも貯蔵部40における対象食品FTの保存環境の温度を検出する1つの温度センサ143を備える。また、冷蔵庫1は、冷蔵室13、製氷室14、冷凍/解凍室15、冷凍室16、及び、野菜室17のうち少なくともいずれかの貯蔵室に温度センサ143を備えてもよく、複数の貯蔵室に温度センサ143を備えてもよい。また、冷蔵庫1は、冷却ファン33により送風される冷気の温度を検出する温度センサ143を備えてもよい。
【0033】
第1通信部145は、トランスミッターとレシーバーとを有する通信装置であり、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を実行する。第1通信部145は、モバイル端末2と無線データ通信を実行する。第1通信部145は、後述する通信ネットワークNを介してモバイル端末2と接続されてもよい。第1通信部145は、制御部110の制御に従って、計測部150の計測結果や、後述する判定部123の判定結果等を示すデータをモバイル端末2に送信する。例えば、第1通信部145は、制御部110が表示部141に表示させる情報を含むデータをモバイル端末2に送信し、モバイル端末2の表示画面に表示させてもよい。この場合、冷蔵庫1は、モバイル端末2を、表示部141と同様に、出力部として利用できる。また、第1通信部145は、モバイル端末2が送信するデータを受信して、制御部110に出力する。例えば、第1通信部145は、モバイル端末2においてユーザが入力した入力内容を示すデータを受信して、制御部110に出力する。この場合、冷蔵庫1は、モバイル端末2において入力された情報に基づいて動作を実行することができ、モバイル端末2を、入力部142と同様の入力デバイスとして利用できる。モバイル端末2は、例えば、タブレット型コンピュータ、スマートフォン等の可搬型のコンピュータである。
【0034】
計測部150は、収納検知部151、及び、気体計測部160を含む。気体計測部160は、センサ素子161と、温度調整部162とを備える。
センサ素子161は、ガスの特性値を計測する。具体的には、センサ素子161は、例えば、素子表面を金属酸化物(MOx)で構成した半導体式ガスセンサが挙げられる。半導体式ガスセンサは、素子表面にガスが付着することによる素子表面の電気抵抗の変化を検出することにより、ガス濃度に関する特性値を、計測値として出力する。素子表面に付着するガスが多いと、素子表面の金属酸化物が還元されて電気抵抗が低下する。このため、ガス濃度が高いほど、計測値である電気抵抗値が低いという特性がある。センサ素子161は、圧電素子を用いて吸着したガスにより振動周波数の変化を検知する方式、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を用いて吸着したガスによるたわみ変化を検知する方式、ガスとの電気化学反応による信号を検知する方式等、種々の構成を採用してもよい。
【0035】
温度調整部162は、センサ素子161の温度を調整する機能を有する。温度調整部162は、例えば、センサ素子161の素子表面を加熱するヒータを備える。温度調整部162は、制御部110の制御に従って発熱および停止する。温度調整部162は、センサ素子161の温度を検出する温度センサを備えてもよく、温度センサとしては、例えばサーミスタ或いは熱電対を用いることができる。
【0036】
実施形態1では、計測部150が、3つのセンサ素子161A、161B、161Cを備える構成を示す。センサ素子161Aには温度調整部162Aが取り付けられ、センサ素子161Bには温度調整部162Bが取り付けられ、センサ素子161Cには温度調整部162Cが取り付けられる。
【0037】
センサ素子161A、161B、161Cは、同じ特性を有するセンサであってもよいし、異なる特性を有するセンサであってもよい。例えば、センサ素子161A、161B、161Cが、同一種類のガスに対して異なる検出特性を示すセンサであってもよい。また、例えば、センサ素子161A、161B、161Cが、それぞれ異なる種類のガスに特異的な特性を示すセンサであってもよい。
【0038】
冷蔵庫1は、第2通信部147を備えてもよい。第2通信部147は、トランスミッターとレシーバーとを有する通信装置であり、例えば、Wi-FiやBluetooth等の無線通信を実行する装置である。第2通信部147は、通信ネットワークNに接続し、通信ネットワークNを介して外部の装置との間でデータ通信を実行する。第2通信部147が通信を行う外部の装置としては、サーバ3、及び、PC(Personal Computer)4が挙げられる。サーバ3は、単一または複数のサーバコンピュータであり、クラウドサーバであってもよい。通信ネットワークNは、専用回線、公衆回線網、インターネット等を含んで構成される通信回線である。通信ネットワークNは、アクセスポイント、スイッチ、ルータ、ゲートウェイ、各種のサーバ装置等の不図示のネットワーク装置を含んでもよい。また、通信ネットワークNは、通信事業者が設置する無線基地局を含んでもよい。
【0039】
冷蔵庫1が第2通信部147を備える場合、第2通信部147は、制御部110の制御に従って、計測部150の計測結果や、後述する判定部123の判定結果等を示すデータをサーバ3に送信する。これにより、冷蔵庫1において貯蔵部40に収容されている対象食品FTに関する情報を、サーバ3に蓄積し、管理できる。例えば、PC4がサーバ3にアクセスすることにより、PC4を操作するユーザが、サーバ3に蓄積された情報を参照できる。また、第2通信部147は、制御部110の制御に従って、計測部150の計測結果や、後述する判定部123の判定結果等を示すデータをサーバ3に送信する。また、第2通信部147は、制御部110の制御に従って、計測部150の計測結果や、後述する判定部123の判定結果等を示すデータをPC4に送信してもよい。この場合、PC4を操作するユーザは、貯蔵部40に収容されている対象食品FTに関する情報を参照できる。
【0040】
制御部110は、プロセッサ120、及び、メモリ130を備える。プロセッサ120は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、その他の演算処理装置により構成される。メモリ130は、プロセッサ120が実行するプログラムやデータを不揮発的に記憶する記憶装置である。メモリ130は、磁気的記憶装置、半導体記憶素子、或いはその他の種類の不揮発性記憶装置により構成される。具体的には、メモリ130は、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュROM(Read Only Memory)、フラッシュROMで構成されるSSD(Solid State Drive)等を有する。メモリ130は、プロセッサ120のワークエリアを構成するRAM(Random Access Memory)を含んでもよい。
【0041】
メモリ130は、プロセッサ120より実行される制御プログラム131を記憶する。メモリ130は、プロセッサ120によって処理され、或いは生成されるデータを記憶する記憶部である。具体的には、メモリ130は、判定モデル132、設定データ133、及び、計測データ134を記憶する。
【0042】
プロセッサ120は、制御プログラム131を実行することによって、制御装置10の各部を制御する。プロセッサ120は、機能部として、温度制御部121、計測制御部122、及び、判定部123を備える。これらの各機能部は、プロセッサ120が制御プログラム131を実行することによって、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される。
【0043】
温度制御部121は、温度センサ143の検出結果に基づいて、圧縮機19、冷却ファン33、ヒータ34、及びダンパ39を含む冷蔵庫1の各部を制御することにより、冷蔵庫1の貯蔵室の温度を適切な温度帯に維持する。計測制御部122は、計測部150による計測を制御する。計測制御部122は、収納検知部151の検知結果に基づいて、気体計測部160による計測を実行させる。計測制御部122は、センサ素子161に通電することにより、センサ素子161による計測を実行させ、計測結果を取得する。また、計測制御部122は、温度調整部162を動作させて、測定時のセンサ素子161の温度を所定の温度に調整する。温度制御部121がセンサ素子161に計測を実行させるタイミング、及び、計測時のセンサ素子161の温度は、設定データ133により定められる。
【0044】
計測制御部122は、計測部150に計測を実行させた場合、計測により得られたデータを計測データ134としてメモリ130に記憶させる。計測データ134は、例えば、計測が行われた日時に対応付けて、センサ素子161の計測結果である計測値を記憶する。また、計測データ134は、センサ素子161の計測結果と計測条件とを対応付けたデータであってもよい。計測条件とは、例えば、計測時におけるセンサ素子161の温度を含む。また、計測条件は、計測時に使用するセンサ素子161が、センサ素子161Aであるか、センサ素子161Bであるか、センサ素子161Cであるかを含んでもよい。また、計測条件は、センサ素子161が計測動作を実行する場合のセンサ素子161の温度、センサ素子161の作動電圧、センサ素子161の作動電圧の周波数、センサ素子161の通電時間、及び、センサ素子161への通電頻度のいずれかを含んでもよい。
【0045】
判定部123は、計測部150の計測結果に基づいて、対象食品FTの状態を判定する。判定部123は、例えば関数、プログラム、或いはその他のアルゴリズムに、計測部150の計測結果を入力することにより、対象食品FTの状態を判定し、判定結果を出力する。判定部123は、対象食品FTの状態を判定する処理において、計測データ134に含まれる過去の計測結果を参照してもよい。
【0046】
本実施形態の判定部123は、判定モデル132を用いて対象食品FTの状態を判定する。判定モデル132は、計測部150の計測結果、計測条件、及び、対象食品FTの状態の相関を予め学習した、学習済みの機械学習モデルであり、いわゆるAI(Artificial Intelligence)である。判定部123は判定モデル132を実行し、判定モデル132に計測部150の計測結果と計測条件とを与えることにより、対象食品FTの状態を推定する。
【0047】
判定モデル132の学習に用いられる学習用データは、例えば、対象食品FTが発するガスの特性値を説明変数とし、対象食品FTとする代表的な食品の熟度或いはその他の食品特性値を目的変数としたデータである。
【0048】
判定部123は、センサ素子161に加え、収納検知部151の検知結果を利用して対象食品FTの状態を判定してもよい。例えば、収納検知部151が分光センサで構成される場合、収納検知部151が検出する分光スペクトルをクロロフィルの吸光波長(約450~680nm)や反射波長(500~600nm)に基づいて解析することにより、対象食品FTが果物や野菜である場合の熟度を、収納検知部151の検出結果から推定できる。同様に、オキシミオグロビンの反射波長(約600nm)に基づいて収納検知部151が検出する分光スペクトルを解析することにより、対象食品FTが肉や赤身魚である場合の鮮度の推定に利用できる。このような情報をセンサ素子161の計測結果と組み合わせることによって、より高精度の判定を行える。
【0049】
冷蔵庫1では、上述したように各種の食品を対象食品FTとすることができる。時間の経過とともに状態が変化する対象食品FTについては、対象食品FTの状態を、鮮度、或いは、熟度と呼ぶことができる。野菜や果物は、未熟な状態から、喫食に適した状態に変化し、さらに場合によって喫食に最適な状態に変化し、その後、喫食に適さない状態となる。肉類や魚介類は、鮮度が高い状態から、鮮度が低下しているが喫食可能な状態を経て、喫食に適さない状態に変化する。このような対象食品FTの変化を成熟、或いは熟成と呼び、変化の過程における対象食品FTの状態を、以下では熟度と呼ぶ。熟度は数値で表され、数値が大きいほど、成熟または熟成が進行したことを示す。以下では、対象食品FTの成熟または熟成が喫食に適する状態となったこと、及び、そのときの熟度を、好適熟度と呼ぶ。
【0050】
判定部123は、計測部150の計測結果から、対象食品FTの熟度を求める。また、判定部123は、対象食品FTの熟度の変化を予測することが可能な構成であってもよい。すなわち、熟度が低く好適熟度に達していない対象食品FTについて、喫食に適する熟度、或いは、好適熟度となる時期の予測を行うことが可能な構成であってもよい。また、熟度が低く好適熟度に達していない対象食品FTについて、熟度を高めるために必要な条件を推定する機能を有していても良い。
【0051】
[1-4.計測動作]
図4は、計測部150による計測動作の例を示すタイミングチャートである。
図4の縦軸はセンサ素子161の状態をONとOFFとで示す。横軸は時間の経過である。図4において(a)はセンサ素子161Aの計測動作を示し、(b)はセンサ素子161Bの計測動作を示し、(c)はセンサ素子161Cの計測動作を示す。T1~T12は特定の時刻を示す。
【0052】
図4に示す例では、センサ素子161A、161B、161Cが順に計測を実行する。具体的には、時刻T1~T2の期間(以下、期間T1~T2と表記する。T3~T12についても同様)でセンサ素子161AがONになり、計測を行う。その後、期間T3~T4でセンサ素子161BがONになり、計測を行い、期間T5~T6でセンサ素子161CがONになり、計測を行う。期間T1~T6を1つの計測サイクルCYとする。1回目の計測サイクルCY1が実行された後に、2回目の計測サイクルCY2が実行される。計測制御部122は、計測部150に複数回の計測サイクルCYを実行させることができる。
【0053】
図4の動作例において、計測サイクルCYにおけるセンサ素子161の温度、センサ素子161の作動電圧、センサ素子161の作動電圧の周波数、センサ素子161の通電時間、及び、センサ素子161への通電頻度は、共通であってもよい。すなわち、計測サイクルCY行う3回の計測では、計測条件として、ONにするセンサ素子161、及び、センサ素子161をONにするタイミングが異なる。
【0054】
図4の動作例では、センサ素子161A、161B、161Cが計測を行うタイミングが異なる。つまり、複数のセンサ素子161が同時点で計測を行うことがない。このため、1つのセンサ素子161が、他のセンサ素子161の計測の影響を受けることを回避できる。例えば、センサ素子161Aとセンサ素子161Bとが同時にONになると、センサ素子161Aの温度が昇温されることにより、センサ素子161Bの周囲のガスの濃度が影響を受けるため、センサ素子161Bの計測値を変化させてしまう可能性がある。また、センサ素子161Aが昇温されることで、温度差による気流をセンサ素子161Aの周囲に発生させ、センサ素子161Bの計測に影響を与える可能性がある。図4に示したようにセンサ素子161A、161B、161Cを1つの計測サイクルCYにおいて異なるタイミングでONにすることにより、より高精度で計測を行える。
【0055】
また、図4の動作例では、センサ素子161A、161B、161CをONにする期間の間に、いずれのセンサ素子161もONにならない非計測期間がある。具体的には、期間T2~T3、T4~T5ではONになっているセンサ素子161がない。また、計測サイクルCY1と計測サイクルCY2との間にも非計測期間T6~T7がある。従って、複数のセンサ素子161により計測を行う場合に、センサ素子161が、他のセンサ素子161の計測動作の影響を受けることが、より確実に防止され、より一層高精度の計測を行うことができる。
【0056】
図5及び図6は計測部150の計測結果の例を示す図表である。図5及び図6において、縦軸は計測値を示し、横軸は時間軸であって、計測された時刻を示す。符号P1はセンサ素子161Aの計測値のプロットであり、符号P2はセンサ素子161Bの計測値のプロットであり、符号P3はセンサ素子161Cの計測値のプロットである。これらの図には、1回目の計測サイクルCY1、2回目の計測サイクルCY2、n回目の計測サイクルCYn、及び、n+1回目の計測サイクルCYn+1の計測値を示している。
【0057】
センサ素子161は金属酸化物を用いた半導体式ガスセンサであるため、計測値が低いほど、センサ素子161が計測したガス濃度が高い。
図5の例では、計測サイクルCY1から計測サイクルCY2にかけて計測値が低下している。例えば、計測サイクルCY1におけるセンサ素子161Aの計測値R1よりも、計測サイクルCY2におけるセンサ素子161Aの計測値R2が低い値となっている。これに対し、計測サイクルCY1から所定時間が経過した後に実行された計測サイクルCYnと計測サイクルCYn+1とを比較すると、計測値の変化が殆どない。これは、食品保持部43に対象食品FTが収容された直後から凹部44のガスの濃度が上昇したこと、及び、所定時間が経過すると凹部44のガスの濃度が安定したことを示す。
【0058】
図6の例では、計測サイクルCY1から計測サイクルCY2にかけて計測値が低下し、計測サイクルCYから計測サイクルCYn+1にかけても計測値が低下している。例えば、計測サイクルCYnのセンサ素子161Aの計測値R3よりも、計測サイクルCYn+1のセンサ素子161Aの計測値R4が低い。これは、食品保持部43に対象食品FTが収容された直後から長時間、凹部44におけるガスの濃度が増加したことを示す。
【0059】
図5に示す計測値の変化と、図6に示す計測値の変化との差異は、対象食品FTの種類や、対象食品FTの熟度によって発生する。例えば、同一の対象食品FTについて、その熟度により、図5に示すような計測値の変化が得られる場合と、図6に示すような計測値の変化が得られる場合とがある。また、異なる種類の複数の対象食品FTのうち、1つが図5に示すような計測値の変化を示し、他の対象食品FTが図6に示すような計測値の変化を示す場合がある。また、計測条件によって、図5に示す計測値の変化と、図6に示す計測値の変化とが現れることがある。例えば、対象食品FTの種類及び熟度が同一であっても、センサ素子161の温度を変えることにより、計測値が、図5に示すような変化を示す場合と、図6に示すような変化を示す場合とが発生し得る。
【0060】
判定部123は、センサ素子161の1回の計測動作の計測値と対象食品FTとの熟度に限らず、例えば図5及び図6に示したように、複数回の計測動作における計測値の変化と、対象食品FTの熟度との相関をもとに、対象食品FTの状態を判定してもよい。例えば、このような相関を学習させた判定モデル132を利用して判定を行うことが考えられる。
【0061】
また、判定部123は、複数回の計測動作を実行する場合、後に実行する計測動作の結果に対してより大きい重み付けを行い、判定を行ってもよい。対象食品FTの投入直後は、センサ素子161が計測するガスの濃度変化が大きい。このため、相対的に長時間が経過した後、濃度変化が小さくなったタイミングで計測された結果を判定に用いたり、より大きい重み付けを行ったりすることで、判定の精度をより高めることが期待できる。
【0062】
[1-5.冷蔵庫の動作]
図7は、対象食品FTの計測に関する冷蔵庫1の動作を示すフローチャートである。ステップS11~S18は計測制御部122により実行される。
制御部110は、収納検知部151によって食品保持部43に対象食品FTが置かれたことを検知すると、処理を開始する(ステップS11)。制御部110は、冷蔵庫1の冷却ファン33を停止させる(ステップS12)。これにより、気流導入部45(図3)からトレイ41へ、図1に矢印Cで示す冷却風の流入が停止するので、トレイ41及び凹部44におけるガスの濃度が安定する。
【0063】
ここで、制御部110は、ステップS12で冷却ファン33を停止させる前に、冷却ファン33を所定時間、低速で動作させてもよい。貯蔵部40に食品FOや対象食品FTが収容された直後は、食品FOや対象食品FTが貯蔵部40よりも高温であることが多い。このため、食品FOや対象食品FTが収容された直後に、食品FOや対象食品FTがガスを発生させると、このガスは温度差による自然対流により凹部44に速やかに流入して充満する。冷蔵庫1は気体計測部160によって、食品保持部43の位置に収容された対象食品FTが発するガスを計測する必要があり、食品FOが発するガスは、計測の妨げとなる。ステップS12で冷却ファン33を所定時間動作させることにより、貯蔵部40に収容された直後の食品FOや対象食品FTが発するガスの影響を抑制し、より高い精度で対象食品FTに由来するガスを計測することが可能となる。
【0064】
また、バリエーションの動作例として、冷却ファン33の停止の合間に短時間の送風を繰り返し挟みながら、気体計測部160によってガスを計測してもよい。例えば、冷却ファン33を所定時間停止させる間に気体計測部160による計測を行い、この所定時間に、より短い時間の送風を冷却ファン33に繰り返し行わせてもよい。この場合、矢印Cで示す冷却ファン33の送風によって、食品FOが発するガスを気流の上流から下流に除去できるので、比較的長時間、ガスの計測を継続する場合であっても、食品FO由来のガスが凹部44に流入する可能性を抑制できる。つまり、対象食品FTに由来するガスの高精度の計測に寄与する。
【0065】
制御部110は、センサ素子161による計測動作を開始する(ステップS13)。ここで開始される計測動作は、上述した1回の計測サイクルCYであってもよいし、複数回の計測サイクルCYを含む一連の計測動作であってもよい。制御部110は、計測動作を開始した後で収納検知部151による監視を継続し、食品保持部43から対象食品FTが取り出されたか否かを判定する(ステップS14)。
【0066】
収納検知部151は食品保持部43上の対象食品FTを検知するので、トレイ41が冷蔵庫1の前面側に引き出されると、対象食品FTがないと検知する。対象食品FTが出し入れされずにトレイ41が元の位置に戻ると、再び収納検知部151が対象食品FTを検知する。このような、対象食品FTの出し入れを伴わないトレイ41の移動がなされた場合に対応して、制御部110は、対象食品FTがないと検知されてから所定時間内に、対象食品FTが検知された場合に、対象食品FTが取り出されていないと判定してもよい。
【0067】
対象食品FTが取り出されたと判定した場合(ステップS14:YES)、制御部110は、既に実行した計測動作の結果を出力する(ステップS15)。ステップS15の出力は、例えば、表示部141への表示である。ステップS15の出力は、モバイル端末2へのデータの送信を含んでもよく、サーバ3及びPC4へのデータの送信を含んでもよい。ステップS15では、実行済みの計測動作の結果だけでなく、実行済みの計測動作の結果から判定部123が判定した判定結果を出力してもよい。以下で説明する制御部110の出力動作も同様に、表示部141への表示を含み、さらにモバイル端末2、サーバ3、及びPC4のいずれか1以上へのデータの送信を含んでもよい。
その後、制御部110は後述するステップS18に移行する。
【0068】
対象食品FTが取り出されていない場合(ステップS14:NO)、制御部110は、ステップS13で計測動作を開始してから、予め設定された設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。設定時間が経過していない場合(ステップS16:NO)、制御部110は、ステップS14に戻る。設定時間が経過した場合(ステップS16:YES)、制御部110は、計測動作を終了し(ステップS17)、ステップS12で停止させた冷却ファン33の制御を開始する(ステップS18)。
【0069】
図8及び図9は、計測に関する冷蔵庫1の動作を示すフローチャートであり、計測動作の具体的な例を示す。図8及び図9の動作は計測制御部122及び判定部123により実行される。図8の動作は、対象食品FTがトレイ41に収容されていない状態で、収納検知部151が対象食品FTを検知したことをトリガとして開始される。
【0070】
制御部110は、気体計測部160により1分間の計測を実行させる(ステップS21)。この1分間の計測は、図4に示した計測サイクルCYを複数、含んでもよい。また、制御部110は、ステップS21では、設定データ133に含まれる初期値の計測条件に従ってセンサ素子161及び温度調整部162を動作させる。その後、制御部110は、1分間の気体計測部160による計測結果を取得する(ステップS22)。
【0071】
制御部110は、ステップS22で取得した計測結果をもとに、食品保持部43に置かれた対象食品FTが、判定対象の食品であるか否かを判定する(ステップS23)。上述のように、センサ素子161の計測値の経時的な変化等は対象食品FTの種類により異なる。判定部123は、特定の1または複数の種類の食品を対象として判定を行う構成であってもよく、例えば、メロン、モモ、洋ナシ、キウイ、アボカドの5種類を対象とすることが考えられる。これらの果物は収穫後も熟度が進行する、いわゆる追熟をすることが知られており、気体計測部160による計測と判定を行うことの利点が顕著である。
【0072】
ステップS23で、制御部110は、1分間の計測動作の結果から、対象食品FTが判定部123による判定の対象であるか否かを判定する。制御部110は、ステップS21で1分間の計測動作を実行させる際に、対象食品FTの種類の判定に適した計測条件でセンサ素子161及び温度調整部162を動作させてもよい。例えば、計測制御部122が判定の対象とする食品と、それ以外の食品とで計測結果に顕著な差異が現れる計測条件で、1分間の計測動作を実行してもよい。
【0073】
対象食品FTが判定対象の食品でないと判定した場合(ステップS23:NO)、制御部110は、ユーザに対して食品の種類が対象外であることの通知を実行する(ステップS24)。ステップS24の通知は、例えば、通知メッセージや画像を表示部141に表示することを含む。また、ステップS24の通知は、モバイル端末2、サーバ3、及びPC4のいずれか1以上に対して通知データを送信することを含んでもよい。ステップS24を実行した後、制御部110は計測動作を終了する。
【0074】
対象食品FTが判定対象の食品であると判定した場合(ステップS23:YES)、制御部110は第1判定を実行する(ステップS25)。第1判定は、気体計測部160がステップS21で実行した1分間の計測結果をもとに、判定部123が対象食品FTの熟度を判定する処理である。制御部110は、ステップS21で行った計測動作の後に、第1判定をするための計測動作を実行してもよい。
第1判定では、繰り返しの測定により得られた複数の計測値を用いることにより、安定した値を判定用生データとして採用し、判定を行ってもよいし、複数の計測値の変化量(例えば、計測値の差、計測値の比)を判定用生データとして採用してもよい。以下の判定も同様である。
【0075】
制御部110は、第1判定の判定結果を出力する(ステップS26)。制御部110は、その後、長時間計測を実行する(ステップS27)。長時間計測は、1分間より長く、第1判定のために行う計測動作よりも長い時間で実行される計測動作である。長時間計測は、複数回の計測サイクルCYを含む。計測サイクルCYを繰り返す周期は、1分間の計測動作よりも長い周期であってもよい。また、制御部110は、長時間計測において、例えば、所定周期で複数回の計測サイクルCYを実行する処理を、所定周期よりも長い周期で繰り返し実行してもよい。
【0076】
制御部110は、長時間計測の結果を取得し(ステップS28)、長時間計測の計測結果をもとに判定部123による第2判定を行う(ステップS29)。制御部110は、第2判定の結果により第1判定の結果を更新し、さらに更新した判定結果を出力する(ステップS30)。その後、制御部110は、計測動作を終了するか否かを判定する(ステップS31)。計測動作を終了しない場合はステップS27に戻る。
【0077】
第1判定及び第2判定は、例えば、対象食品FTの熟度を判定する処理である。第2判定は第1判定よりも長い時間の計測動作の結果を用いるので、第1判定よりも精度の良い判定結果が得られる。従って、ユーザが対象食品FTを貯蔵部40に収容させた直後に、簡易的な判定によって速やかにユーザに情報を提供でき、さらに、時間をかけて、より高精度の判定を行うことができる。
【0078】
第1判定と第2判定の判定内容を、異なる内容としてもよい。制御部110は、第1判定と第2判定で異なる段階の熟度の判定を行ってもよく、例えば、第1判定で対象食品FTの熟度を5段階で判定し、第2判定では熟度を10段階で判定してもよい。
【0079】
判定部123は、計測動作を行った時点における対象食品FTの熟度を判定する機能に加え、その後の熟度の変化を予測する機能を備えてもよい。この場合、図8の動作に代えて、制御部110は予測を含む動作を実行する。この動作例を図9に示す。
【0080】
図9の動作は、図8の動作と同様に対象食品FTがトレイ41に収容されていない状態で、収納検知部151が対象食品FTを検知したことをトリガとして開始される。
【0081】
制御部110は、気体計測部160により、所定時間の計測を実行させ、計測結果を取得する(ステップS41)。ステップS41の計測は、図4に示した計測サイクルCYを複数、含んでもよい。また、制御部110は、ステップS21では、設定データ133に含まれる初期値の計測条件に従ってセンサ素子161及び温度調整部162を動作させる。
【0082】
制御部110は、ステップS41で取得した計測結果をもとに、食品保持部43に置かれた対象食品FTが、判定対象の食品であるか否かを判定する(ステップS42)。この判定はステップS23と同様の処理である。対象食品FTが判定対象の食品でないと判定した場合(ステップS42:NO)、制御部110は、ステップS24と同様に、食品の種類が対象外であることの通知を実行する(ステップS43)。
【0083】
対象食品FTが判定対象の食品であると判定した場合(ステップS42:YES)、制御部110は、ステップS42で取得した計測結果をもとに対象食品FTの熟度を判定する(ステップS44)。さらに、制御部110は、ステップS44の判定結果をもとに、対象食品FTの熟度変化の予測を実行する(ステップS45)。
【0084】
図10は、冷蔵庫1の動作を示す説明図であり、対象食品FTの熟度と保存温度との相関を示すデータの利用形態を示す。図10の縦軸は対象食品FTの熟度の変化を示し、横軸は時間の経過を示す。図10には、対象食品FTの熟度と時間の経過との相関を示す相関曲線が、温度帯ごとに含まれる。すなわち、(a)は30℃における対象食品FTの熟度の変化を示し、(b)は25℃における対象食品FTの熟度の変化を示し、(c)は20℃における対象食品FTの熟度の変化を示し、(d)は15℃における対象食品FTの熟度の変化を示す。図10の相関曲線を示す情報は、判定部123が熟度の予測に用いる情報の一例であり、例えば設定データ133に含まれ、制御部110によって参照可能にメモリ130に記憶される。設定データ133は、対象食品FTの種類毎に、対象食品FTの熟度変化と温度との相関を示すデータを含んでいてもよいし、複数種類の対象食品FTに共通して使用される1つのデータを含んでもよい。これら曲線(a)~(d)は一例であり、例えば、設定データ133が、より細かい温度毎の熟度の変化に関するデータを含んでいてもよい。
【0085】
ステップS45で、判定部123は、温度センサ143により検出された貯蔵部40の温度に該当する相関曲線を選択し、選択した相関曲線上に、ステップS45で判定した対象食品FTの熟度をプロットする(図中符号P11)。図10には、ステップS45で判定した熟度がレベル1(LV1)であり、貯蔵部40の温度が20℃である例を示す。判定部123は、選択した相関曲線に基づき、対象食品FTの熟度が、好適熟度であるレベル4(LV4)に達するまでの時間dを求める。さらに、判定部123は、選択した相関曲線に従って、所定時間毎の対象食品FTの熟度を予測する。
【0086】
制御部110は、予測を行う場合に、温度センサ143で計測された温度を参照してもよい。この場合、制御部110は、温度センサ143が計測した瞬間値を用いてもよいが、例えば直近の24時間における計測値の平均を用いれば、より高精度の予測が可能となる。また、将来の温度の予測値を用いてもよい。例えば、制御部110は、サーバ3等の外部のサーバ装置から、冷蔵庫1の設置環境における気温の予報データを取得し、取得した予報データを利用して貯蔵部40の温度を予測してもよい。
【0087】
制御部110は、ステップS45で実行した予測の結果を通知し、メモリ130に一時的に記憶する(ステップS46)。ステップS47の通知は、例えば表示部141を利用する処理であり、モバイル端末2、サーバ3、及びPC4等へのデータの送信を含んでもよい。
【0088】
制御部110は、予測を行ってから所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS47)、所定時間が経過していない場合は(ステップS47:NO)、ステップS48で待機する。所定時間が経過した場合(ステップS47:YES)、制御部110は気体計測部160により、所定時間の計測を実行させ、計測結果を取得する(ステップS48)。ステップS48の計測は、図4に示した計測サイクルCYを複数、含んでもよい。ステップS48の計測は、ステップS41の計測と同じ回数または同じ時間であってもよいし、より多い回数の計測サイクルCYを含んでもよい。ステップS48の計測の計測条件はステップS41と同じ条件としてもよい。
【0089】
制御部110は、ステップS48の計測結果に基づいて対象食品FTの熟度を判定し(ステップS49)、ステップS49の判定結果と、メモリ130が記憶する予測結果とを比較する(ステップS50)。
【0090】
制御部110は、ステップS49の判定結果とメモリ130が記憶する予測結果との差が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS51)。判定結果と予測結果との差が所定値より小さい場合(ステップS51:NO)、制御部110はステップS47に戻り、所定時間が経過してから次の計測を実行する。
【0091】
判定結果と予測結果との差が所定値以上である場合(ステップS51:YES)、制御部110は、予測方式を補正する(ステップS52)。例えば、判定部123が予測に用いた関数、演算式、プログラム等のアルゴリズムやパラメータ、判定モデル132等を、ステップS49の判定結果に合うように補正する。その後、制御部110は、補正した予測方式に基づく予測を実行し(ステップS53)、メモリ130が記憶する予測結果をステップS53の予測結果によって更新する(ステップS54)。ステップS54で、制御部110は、更新後の予測結果を通知する処理も行う。制御部110は、計測動作を終了するか否かを判定し(ステップS55)、終了しない場合は(ステップS55:NO)、ステップS47に戻る。
【0092】
図8及び図9の動作において、ユーザが入力部142やモバイル端末2によって対象食品FTの種類を入力してもよい。この場合、制御部110は、対象食品FTの種類を判定する処理を省略してもよく、例えば入力に基づいて、対象食品FTが判定対象の食品であるか否かを判定してもよい。
【0093】
図11は、予測結果の例を示す図表であり、ステップS46でメモリ130に記憶される予測結果の一例である。図11において、横軸は時間の経過を示し、縦軸は対象食品FTの熟度の予測値である。
符号P21のプロットは、ステップS44によって時刻T21で判定された熟度である。符号P31、P32、P33は、判定部123がステップS44の判定から予測した熟度の変化を示す。図11の例では、好適熟度をレベル4(LV4)とする。図11の予測結果によれば、対象食品FTの熟度がレベル4(LV4)に達するのは、時刻T21から時間d1が経過した、時刻T24である。
【0094】
図12は、予測結果と判定結果とに差異が生じた例を示す図表である。図12の縦軸、横軸、及びプロットP21、P31、P32、P33は図11と共通である。
【0095】
図12には、プロットP31、P32、P33を予測した後に判定された判定結果を、符号P22で示す。プロットP22は、例えば、ステップS49の処理により、時刻T22で判定された判定結果である。制御部110は、時刻T22における熟度の予測結果であるプロットP31と、時刻T22で判定された実際の判定結果であるプロットP22とを比較し、その差が所定値以上であるか否かを判定する。プロットP31とプロットP22との差が所定値以上である場合は、予測結果と実際の熟度とのずれが大きいことを意味する。このため、制御部110は予測方式を補正し、補正後の予測方式により時刻T22よりも後の熟度を予測する。補正後の予測方式による予測結果を符号P34、P35で示す。プロットP34、P35によれば、対象食品FTの熟度がレベル4(LV4)に達するのは、時刻T24ではなく、より早い時刻T23である。つまり、対象食品FTの熟度は、最初に予測された時間d1よりも短い時間d2で、レベル4(LV4)に達する。このように、予測結果が更新された場合、制御部110は、表示部141等を用いて通知を実行する。これにより、ユーザは、対象食品FTの熟度に関して、より正確な予測結果を知ることができる。
【0096】
図13図14図15及び図16は、表示部141により表示される画面の例を示す図であり、ユーザに対する通知の態様を例示する。
【0097】
図13及び図14には、ステップS30(図8)等で判定結果を出力する画面の例として、判定結果画面810を示す。判定結果画面810は、表示切替部811、熟度通知部812、及び、詳細表示部813を含む。表示切替部811は、判定結果画面810に表示させる情報の切替をユーザが指示するための操作部である。
【0098】
熟度通知部812は、制御部110が判定した対象食品FTの熟度を通知する画像や文字を含む。熟度通知部812は、ユーザが対象食品FTの状態を直感的に把握できるように、短いメッセージや画像を含むことが好ましい。熟度通知部812の画像としては、未熟の場合と完熟の場合で異なるイメージ写真を表示して、一目で未熟と完熟を区別できるようにする例が挙げられる。また、同じ目的で画面の背景色を変更してもよい。例えば、未熟な場合は背景色を緑色に、完熟の場合は赤色に、過熟な場合は褐色や青色にして、熟度をイメージさせてもよい。熟度通知部812には、対象食品FTの熟度に加え、対象食品FTの熟度の変化を示す情報を含んでもよい。例えば、図13には、対象食品FTが喫食に適するまで2日を要することが表示される。この上方は、判定部123が予測した結果であってもよいし、判定部123が判定した熟度と対象食品FTの種類に対応して予め設定された情報であってもよい。
【0099】
詳細表示部813は、対象食品FTの熟度について詳細な情報を表示する。例えば、図13の詳細表示部813には、食味の指標として未熟、食べ頃、過熟の3つの表現で表示し、食味の指標と対象食品FTの熟度とを対応付けて示す。後述するように、ユーザの個人毎の嗜好が設定されている場合には、図13に示すように、食味の指標に対応付けて個人毎の嗜好を表示してもよい。つまり、個人によって食べ頃の好みに幅があることを考慮して、食べ頃の予測を表示する際はどのような風味や食感であるかについて情報を表示したり、好みによって食べ頃予測日が異なることを表示したりしてもよい。また、図14の詳細表示部813は、食味の指標を、ユーザがより実感しやすい表現で表示した例である。
【0100】
付加情報816は、対象食品FTの喫食に関してユーザに付加的な情報を提供する。例えば、図13の付加情報816は、図9に示した処理により予測された予測結果に関する情報を表示する。また、付加情報816は、図14に示すように、対象食品FTの熟度の進行について情報を表示してもよい。例えば、対象食品FTの熟度が好適熟度である場合に、対象食品FTの風味や食感についてのより詳細な情報や、食べ方のヒント、おいしく冷却できるまでの時間についての情報を表示してもよい。
【0101】
付加情報816には、例えば、対象食品FTの保管方法を伝える情報を含めてもよい。一般的な果物の追熟は低温では進行しないことが知られている。制御部110は、対象食品FTの熟度が好適熟度に達していないと判定した場合であって、温度センサ143が検出した温度が低温(例えば10℃以下)である場合には、対象食品FTを、より高温の環境で保管することに関する情報を付加情報816として表示させてもよい。例えば、制御部110は、付加情報816として、対象食品FTを冷蔵庫1の外に出して保管することを薦めるメッセージを表示させてもよい。
【0102】
図15は、判定結果画面810に予測結果を表示する例を示す。図15の判定結果画面810は、予測通知部822、詳細表示部823、及び、付加情報824を含む。予測通知部822は、制御部110の予測結果を通知する画像や文字を含み、ユーザが予測結果を直感的に把握できるように、短いメッセージや画像を含むことが好ましい。詳細表示部823は、予測結果に関する詳細な情報を表示し、例えば、対象食品FTが好適熟度となる日付をカレンダーで示す。付加情報824は、予測結果に関する付加的な情報を表示する。例えば、図15では、付加情報824に、気温の影響による熟度の変化についての情報が表示される。ここで、制御部110は、気温など気象に関する情報を、例えば、第2通信部147によって外部のサーバから取得し、判定結果画面810に表示してもよい。
【0103】
図16は、対象食品FTに関する付加的な情報として、食べ方のヒントを表示する情報表示画面830の例を示す。情報表示画面830には、推奨される対象食品FTの食べ方等に関する情報を表示する情報表示部832が設けられる。図16の例では、情報表示部832に、対象食品FTを冷蔵庫1の冷蔵室13や野菜室17で冷やすことの提案が表示される。ここで、制御部110は、冷蔵庫1の型番情報を取得して情報表示画面830に表示してもよい。また、制御部110は、対象食品FTを冷蔵室13や野菜室17で冷やす時間の目安を情報表示部832に表示してもよく、この時間の目安は、冷蔵庫1における冷蔵室13や野菜室17の温度設定、容積、冷却能力、現在の収納量等を加味して算出された値であってもよい。
【0104】
このように、対象食品FTの熟度が未熟である時と完熟後であるときで異なる情報を出力することで、ユーザに対してより有用な情報を提供できる。
【0105】
図13図16に示した判定結果画面810や情報表示画面830において、対象食品FTの熟度と相関して変化する他の特性値を推定して通知してもよい。例えば、ほとんどの果物についての食感の指標として、果実硬度が知られている。果実硬度は、熟度が高まるにつれて低下する傾向がある。また、例えば、果物の甘味の指標として知られているBrix糖度/酸度比は、果物が完熟したときに高い値を示す。また、鮮魚については、新鮮魚肉に含まれる抗酸化成分として知られるDHAの含量は、鮮度の低下とともに低減する。野菜及び果物のビタミンC含量は、熟度の上昇すなわち鮮度の低下と共に低減する。
【0106】
制御部110は、対象食品FTの熟度の進行と相関を有する果実高度、Brix糖度/酸度比、ビタミンC含量、DHA含量等の指標を、食品特性として、対象食品FTの熟度と合わせて判定してもよい。例えば、対象食品FTの種類毎に、食品特性と熟度との相関、或いは、食品特性とセンサ素子161の計測値との相関を学習した判定モデル132を利用してもよい。また、対象食品FTの種類毎に、食品特性と熟度との相関、或いは、食品特性とセンサ素子161の計測値との相関を定めるパラメータやテーブルを設定データ133としてメモリ130に記憶し、これらのパラメータやテーブルを用いて制御部110が食品特性を判定し、ユーザに通知してもよい。このように食品の各種特性を推定して通知することによって、ユーザの食の楽しみを広げることも可能となる。また、対象食品FTが可食か否かだけではなく、風味や食感を想起させる情報を通知することによって、ユーザの喫食への期待を高めることができる。その結果、食品ロスの削減、家庭における食育への寄与を実現し、食生活の豊かさの向上に貢献することが期待できる。
【0107】
冷蔵庫1が通知や出力を行うタイミングは図8図10に示した例に限定されない。例えば、ユーザがモバイル端末2やPC4を操作して、制御部110との通信を実行したタイミングで通知や出力を行ってもよい。また、冷蔵庫1に人感センサを設け、人感センサによって冷蔵庫1の前における人の存在を検知した場合に通知や出力を行ってもよい。
【0108】
冷蔵庫1による出力方法として、冷蔵庫1にLED(Light Emitting Diode)を用いたインジケータ等の出力装置を設け、判定結果等を出力してもよい。例えば、対象食品FTの熟度を示す色でインジケータを発光させる制御を行ってもよい。
【0109】
判定結果画面810や情報表示画面830を表示するタイミングは、例えば、常時表示してもよいし、ユーザがモバイル端末2を操作したときや、対象食品FTの熟度の判定結果が変化した時、好適熟度に達する予測した時期が所定値以上変化した時が挙げられる。また、好適熟度に達する予測した時期が変化した場合には、予測が変化したことを通知する内容を表示してもよい。
【0110】
また、冷蔵庫1は、対象食品FTの熟度を判定結果画面810等により通知あるいは出力する際に、対象食品FTの熟度の判定結果にバイアス値を加えてもよい。例えば、判定結果が好適熟度(例えば、レベル3またはレベル4)よりも未熟であることを示す場合に、制御部110は、判定結果にバイアス値を加えて、判定結果を、より未熟である熟度を示す値にしてもよい。ユーザが対象食品FTを早く食べたいという欲求を持っている場合に、好適熟度に近いことを示唆するような通知をすると、短時間で好適熟度になることをユーザに期待させ、ユーザの期待を損なう可能性がある。このため、判定結果にバイアス値を加えて、対象食品FTが好適熟度に達するまでの時間が長いことを示唆することにより、ユーザが過度な期待感を抱くことを抑制し、結果としてユーザの満足度を高めることができる。
【0111】
バイアス値を加えるか否かを判断する基準として、対象食品FTの熟度の判定結果の確からしさを用いてもよい。すなわち、制御部110は、対象食品FTの熟度を判定する際に、判定結果の確からしさを示す指標値を算出してもよい。この指標値は、対象食品FTの実際の熟度が判定結果と一致する確率と言い換えることができるので、以下では確率と呼ぶ。制御部110は、対象食品FTの熟度が、判定結果より低い熟度である確率が所定値以上である場合に、判定結果にバイアス値を加えてもよい。例えば、判定結果が好適熟度(例えば、レベル4)であり、実際の熟度が好適熟度より未熟(例えば、レベル3)である確率が49%である場合は、判定結果をレベル3とする。
【0112】
さらに、バイアス値の絶対値を、判定結果の熟度が高まるにつれて縮小するとよい。例えば、判定結果がレベル5である場合のバイアス値を、判定結果がレベル3である場合のバイアス値よりも小さくする。このようなバイアス値の設定により、ユーザの期待感を適切に誘導し、理想的な喫食体験の提供、不自然な通知の抑制を実現できる。
【0113】
また、制御部110は、低い確率で現れる判定結果を、より高い確率で現れる判定結果に補正して通知または出力してもよい。例えば、対象食品FTが青果である場合、食品流通が適切な市場においては極端に未熟な対象食品FTが販売される可能性は低い。このため、好適熟度に比べて極端に未熟であることを示す判定結果(例えば、レベル1)が現れる確率は、非常に低いといえる。制御部110は、例えば、判定結果がレベル1である場合、この判定結果を、より好適熟度に近いレベル2やレベル3に補正し、補正後の判定結果を通知または出力してもよい。
【0114】
さらに、予測結果が、出現頻度の低い内容である場合に、制御部110は、予測結果をそのまま出力せず、いったん別の内容を出力してもよい。例えば、より頻度の高くて近い予測結果を出力してもよく、ユーザに対象食品FTの置き方を確認するように知らせる内容を出力してもよい。
【0115】
また、対象食品FTを貯蔵部40に収容してからの経過時間に応じて、異なる種類の情報を出力してもよい。例えば、貯蔵部40が収容された直後は追熟が必要/不要かを示す情報や、対象食品FTの種類に関する情報を出力してもよい。また、貯蔵部40が収容されてから所定時間が経過した後は、より精度の高い熟度の判定値、予測される喫食可能な時期等に加え、食べ方に関する情報を付加してもよい。また、好適熟度となる時期が近づいた場合や、好適熟度に到達したときには、ユーザに対し、対象食品FTを冷やす、食べる、次の対象食品FTを購入する等の行動を促す情報を出力してもよい。また、対象食品FTが好適熟度を超えて劣化した状態となった場合には、対象食品FTの廃棄や新しい対象食品FTの購入を促す情報を出力してもよい。
さらに、制御部110は、対象食品FTの種類に応じて、生産者や流通から発信される情報、対象食品FTに関連する旅行情報等をサーバ3から取得して、出力してもよい。
【0116】
また、貯蔵部40において対象食品FTを支持する構成も図2の例に限定されない。例えば、食品保持部43は、重量センサを内蔵し、食品保持部43の重量センサが収納検知部151として機能する構成であってもよい。
【0117】
また、貯蔵部40に保管される食品FOが発する臭いやガスが計測に影響することを抑制するため、冷蔵庫1に脱臭装置、或いはガス除去装置を設けてもよい。例えば、矢印Cで示す冷却風の流通方向において、気体計測部160より上流の位置に、脱臭装置、或いはガス除去装置を設けてもよい。脱臭装置及びガス除去装置としては、例えば、活性炭によりガスを吸着する装置や、イオンや放電により有機物を分解する装置が挙げられる。脱臭装置、或いはガス除去装置が、電源供給により動作する構成である場合、制御部110は、例えば、冷却ファン33を動作させる間に脱臭装置、或いはガス除去装置を動作させることが考えられる。
【0118】
また、計測部150の構成は、図3に示したように3つのセンサ素子161A、161B、161C及び温度調整部162A、162B、162Cを備える構成に限定されない。例えば、計測部150は、4以上のセンサ素子161と、同数の温度調整部162とを備える構成であってもよい。計測部150が4個以上のセンサ素子161を備える構成では、センサ素子161を複数のグループに分け、グループ毎に計測を実行させてもよい。この例では、複数(例えば、2個)のセンサ素子161を用いる1回目の計測動作と、他のセンサ素子161を用いる2回目の計測動作とを、時間をおいて実行することが考えられる。1回目と2回目の計測動作の間隔の長さは制限されないが、この時間が十分に長いと、貯蔵部40に収容された対象食品FTからのガスの発生状態、及び、凹部44におけるガスの濃度が安定する。この間隔は、例えば、1日、或いはそれ以上とすることができる。
【0119】
例えば、1回目の計測を行うセンサ素子161として高感度のセンサを用い、2回目の計測を行うセンサ素子161として、より低感度のセンサを用いることが考えられる。より低感度のセンサ素子161は、感度が低いだけでなく、感度が低いものの計測値と対象食品FTの状態との相関が高いセンサであることが好ましい。
【0120】
対象食品FTが収容された直後は対象食品FTから放出されるガスが十分に凹部44に溜まらないため、凹部44のガス濃度が低い。この状態では、高感度のセンサ素子161を用いて凹部44でガスを計測することが適している。一方、貯蔵部40に対象食品FTが収容されてから時間が経過すると凹部44に溜まるガスの濃度が上昇する。この状態では、相対的に低感度のセンサ素子161を用いても、十分な精度で計測を行える。
【0121】
この例で、制御部110は、1回目の計測動作の結果に基づき第1判定を行い、2回目の計測動作の結果に基づき第2判定を行う。第1判定を対象食品FTが貯蔵部40に収容された直後に行うとすれば、対象食品FTの状態について、ある程度の精度で速やかな判定を行うことが求められるため、低いガス濃度を高感度に計測することが適している。第2判定では、対象食品FTから放出されるガスの量が十分であるため、より低感度のセンサ素子でも高精度の計測を行える。
【0122】
対象食品FTに由来するガスのうち、対象食品FTの熟度を判定する指標となり得るガスは複数の種類がある。このため、単一の成分の多寡だけでなく、複数種類のガス成分の組成比から対象食品FTの熟度を判定することで、より高精度で判定を行える。センサ素子161が半導体式ガスセンサである場合、センサ素子161の計測結果は電気抵抗値であるから、より多くの情報を得るためには、計測対象の気体に対して異なる応答特性を示す複数のセンサ素子161で計測を行うことが好ましい。
【0123】
また、計測部150は、1個のセンサ素子161を備える構成としてもよい。この場合、制御部110は、センサ素子161の計測条件を変えながら複数回の計測動作を実行してもよい。例えば、センサ素子161に印加する電圧、センサ素子161への通電時間、センサ素子161の温度のいずれかが異なる複数の計測動作を実行させてもよい。このように、センサ素子161を複数の計測条件で動作させて、各計測条件の計測値を取得すれば、応答特性が異なる複数のセンサ素子161を利用することと同様に、凹部44に溜まる気体について多くの情報を得ることができる。
【0124】
また、図2の貯蔵部40の構成は一例であり、収納検知部151や気体計測部160の位置は変更可能である。ここで、貯蔵部40の別の構成について、実施形態1の変形例1及び変形例2として説明する。変形例1及び変形例2において、実施形態1と共通する構成には同符号を付して説明を省略する。
【0125】
[1-6.実施形態1の変形例1]
図17は、実施形態1の変形例1における貯蔵部40Aの構成を示す縦断面図である。変形例1の貯蔵部40Aは、貯蔵部40において凹部44における気体計測部160の配置を、冷蔵庫1の背面側とした例である。
【0126】
実施形態1では、図2に示したように、気体計測部160を冷蔵庫1の前面側に配置した。気体計測部160は、凹部44に溜まった気体におけるガスの特性値を計測する。従って、貯蔵部40のどの位置に配置してもよく、例えば図17に示すように、凹部44の斜面において背面側に設置してもよい。
【0127】
気体計測部160は、図2及び図17に示すように、食品保持部43に支持された対象食品FTと、鉛直方向で対向しない位置にあることが好ましい。すなわち、図17における収納検知部151の位置とは異なる位置に、気体計測部160を配置することが適切である。これは、対象食品FTに由来するガスが対象食品FTから真上に上昇した場合に、センサ素子161にガスが直接、当たらない方が、計測に影響を与えにくいためである。
【0128】
[1-7.実施形態1の変形例2]
図18は、変形例2における貯蔵部40Bの構成を示す縦断面図である。
貯蔵部40Bは、貯蔵部40において、収納検知部151を凹部44の外に配置した構成を有する。収納検知部151は、光学的に対象食品FTを検知するものが好適であり、例えばデジタルカメラである。この場合、制御部110は、収納検知部151の撮影画像から、パターンマッチング等により対象食品FTが気体計測部160の計測範囲に設置されたか否かを判定する。
【0129】
制御部110は、収納検知部151の撮影画像を解析することにより、対象食品FTがトレイ41に置かれたことを検知するだけでなく、対象食品FTが、判定対象の食品であるか否かの判定を行うことができる。収納検知部151は、トレイ41に置かれた対象食品FTを撮影できればよく、収納検知部151の位置は任意に変更可能である。例えば、冷却風Cに当たらない位置に収納検知部151を設置してもよい。
【0130】
図18の構成において、トレイ41に複数の食品を収容可能な場合、対象食品FTを収容する領域と、対象食品FT以外の食品を収容する領域とを区画する隔壁47が設けられる。隔壁47は、トレイ41において食品を収容可能な領域を、第1収容領域47aと、第2収容領域47bとに区画する。第1収容領域47aは、気体計測部160に対向し、気体計測部160による計測に適する位置である。第2収容領域47bは、気体計測部160と対向しない領域である。気体計測部160が計測する対象食品FTは、第1収容領域47aに収容することが適切である。つまり、ユーザが対象食品FTを第1収容領域47aに収容することにより、対象食品FTを、気体計測部160による計測に適した位置に保持できる。この構成では、収納検知部151は、第1収容領域47aに位置する対象食品FTを検知できればよい。
【0131】
隔壁47は、対象食品FTを気体計測部160による計測に適した位置に保持する食品保持部として機能する。従って、トレイ41に隔壁47を設ける場合、食品保持部43(図2)は不要である。隔壁47は、第1収容領域47aと第2収容領域47bとの間における対象食品FT及び食品FOの移動を防ぐ効果に加え、食品FOが発する気体が凹部44に流入することを抑制する効果を奏する。このため、食品FOの影響を抑制し、対象食品FTに関する計測を、より高精度で行うことができる。
【0132】
収納検知部151をデジタルカメラで構成する場合、制御部110は、収納検知部151の撮影画像を解析することにより、対象食品FTが、判定対象の食品であるか否かの判定をも行うことができる。
【0133】
[1-8.効果等]
本開示の実施形態1における冷蔵庫1は、食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部160と、気体計測部160に対応する位置で対象食品FTを保持する食品保持部43と、を備える。冷蔵庫1は、対象食品FTが食品保持部43に保持されたことに応じて気体計測部160による計測を開始させる制御部110と、気体計測部160の計測結果に基づいて食品の状態を判定する判定部123と、を備える。これにより、対象食品FTが計測可能な位置に保持されたことを契機として計測を開始するので、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行できる。
【0134】
制御部110は、対象食品FTが食品保持部43に保持されていない状態が継続した場合に、気体計測部160による計測を終了させる。これにより、不要な計測動作を実行しないので、計測に関する効率向上を図ることができる。
【0135】
冷蔵庫1は、判定部123による判定結果を出力する出力部を備える。出力部は、例えば、表示部141、モバイル端末2、或いはPC4である。制御部110は、気体計測部160による計測を繰り返し実行させ、判定部123は、気体計測部160による計測が所定回数だけ実行される毎に、対象食品FTの状態の判定結果を更新する。出力部は、判定部の判定結果が更新された場合に、更新された判定結果を出力する。これにより、対象食品FTに関する測定を繰り返し行う毎に判定結果が更新され、より新しい判定結果が出力される。このため、対象食品FTに関する適切な情報をユーザに提供できる。
【0136】
また、冷蔵庫1は、制御部110が気体計測部160による計測を開始させた後に、対象食品FTが食品保持部43に保持されていない状態が継続した場合に、判定部の判定結果を出力する。これにより、ユーザが食品を移動させた可能性がある場合に、ユーザに対して食品の特性に関する情報を提供できる。
【0137】
判定部123は、気体計測部160の計測結果に基づいて、食品に関する第1の判定、及び、第2の判定を実行可能する。対象食品FTが食品保持部43に保持されてから所定時間内は第1の判定の結果に基づく第1の情報が出力され、所定時間が経過した後は第2の判定の結果に基づく第2の情報が出力される。これにより、出力部が最新の判定結果に関する情報を出力するので、より適切な情報をユーザに提供できる。
【0138】
制御部110は、食品保持部43に保持された食品が、計測対象の種類の食品である場合に気体計測部160による計測を開始させる。このため、計測の対象とならない食品に対する不要な計測動作を実行しないので、計測に関する効率向上を図ることができる。
【0139】
また、冷蔵庫1は、箱体としての外箱11及び内箱12と、外箱11から引き出し可能に設けられる食品収容部としてのトレイ41を備え、気体計測部160はトレイ41に対向して配置される。冷蔵庫1は、トレイ41において気体計測部160に対向する位置に食品が配置されたことを検知する食品検知部としての収納検知部151を備える。制御部110は、収納検知部151により対象食品FTが検知されたことに応じて、気体計測部160による計測を開始させる。これにより、対象食品FTが収容された後に速やかに気体計測部160による計測を実行し、対象食品FTの状態を速やかに判定できる。
【0140】
貯蔵部40において、気体計測部160は、食品収容部の上方に形成された凹部44に配置されるので、対象食品FTに由来するガスを凹部44に貯留させて計測を行うことにより、より高い精度で計測を行うことができる。
【0141】
そして、冷蔵庫1は、トレイ41に送風する送風装置としての冷却ファン33を備える。制御部110は、気体計測部160により計測動作を実行させる間は冷却ファン33を停止させる。これにより、計測に対する外乱を抑制することができ、より高い精度で計測を行うことができる。
【0142】
上記の構成において、隔壁47により区画される第1収容領域47aは、食品保持部43に相当する。すなわち、対象食品FTが第1収容領域47aに収容されることは、対象食品FTが食品保持部43に保持されることに相当する。制御部110は、第1収容領域47aに対象食品FTが収容されているか否かに応じて、上記動作を実行できる。
【0143】
換言すれば、変形例2の貯蔵部40Bは、気体計測部160に対向する第1収容領域47aと、第1収容領域から離れた位置の第2収容領域47bとを区画する隔壁47を備える。これにより、計測対象の対象食品FTを、計測対象でない食品FOから区画された領域に収容することができ、より高い精度で計測を行うことができる。
【0144】
実施形態1、変形例1、及び変形例2において、冷蔵庫1は計測装置、及び、食品保管装置の一例に対応する。表示部141、モバイル端末2、及びPC4は表示部の一例に対応し、プロセッサ120はコンピュータの一例に対応し、制御プログラム131はプログラムの一例に対応する。外箱11及び内箱12は箱体の一例に対応し、トレイ41は食品保持部および食品収容部の一例に対応し、収納検知部151は食品検知部の一例に対応する。冷却ファン33は送風装置の一例に対応し、隔壁47は仕切りの一例に対応する。
【0145】
[2.実施形態2]
図19は、本開示の実施形態2における食品保管装置5の縦断面図である。
食品保管装置5は、外部トレイ50を備え、外部トレイ50の中に台座51及び計測容器53が載置されている。外部トレイ50には、台座51及び計測容器53のほか、1または複数の食品FOを収容可能である。
【0146】
台座51は、その上部に対象食品FTを載置可能な台であり、その内部は中空である。計測容器53は台座51に連結される箱形の容器である。
【0147】
容器空間54には計測装置55が収容される。計測装置55は、不図示の回路基板に、後述する制御部510、及び、計測部550が実装された構成を有する。容器空間54には、計測装置55に電力を供給するバッテリ571が収容される。
【0148】
台座51と計測容器53との接合部には通気孔52aが貫通する。通気孔52aにより、台座51の内部の保持部空間52と、計測容器53の内部の容器空間54とが連通する。計測容器53の上面には通気孔54aが設けられ、通気孔54aを通じて容器空間54と外部との間で空気が流通可能である。
【0149】
計測装置55が動作を行うと、計測装置55を構成する各種電子デバイスやバッテリ571が発する熱により容器空間54の空気が通気孔54aから外部に流出する。これに伴い、容器空間54には通気孔52aを通じて保持部空間52から空気が流入する。
【0150】
台座51に対象食品FTが置かれた場合、対象食品FTが発するガスの一部は保持部空間52に放出され、保持部空間52に滞留する。このガスは気流と共に通気孔52aから容器空間54に移動し、センサ素子561によりガスの特性値を計測可能となる。
保持部空間52には、台座51に対象食品FTが置かれたことを検知する収納検知部551が配置される。収納検知部551は計測装置55を構成する装置であり、収納検知部551と、計測容器53に収容された計測装置55とは不図示の配線または無線通信により接続される。
【0151】
収納検知部551の具体的な構成は任意であり、例えば、近赤外光または超音波により距離を検知する測距センサを備え、台座51に物体が存在することを検知する構成であってもよい。また、収納検知部551は、例えば、近赤外光により表面温度を検知するサーモパイルや、分光センサを備える構成であってもよい。収納検知部551がサーモパイルを有する場合、サーモパイルにより保持部空間52よりも高温の物体が台座51の上に存在することを検知できる。収納検知部551が分光センサを有する構成では、対象食品FTを観測した光がカロテノイドやクロロフィル等に特有のスペクトルを示すか否かに基づいて、対象食品FTが収納検知部551の検知範囲に存在することを検知できる。また、収納検知部551は、容器空間54から、台座51の上方を撮影するカメラであってもよい。また、収納検知部551は、保持部空間52に配置される照度センサであってもよい。収納検知部551は、台座51への荷重を検知するタクトスイッチや重量センサであってもよく、測距センサであってもよい。
【0152】
図20は、計測装置55の構成を示すブロック図である。図20に示すように、計測装置55は制御部510を備え、制御部510に温度センサ541、通信部545、及び、計測部550が接続される。
【0153】
温度センサ541は、計測容器53により保持されている対象食品FTの保存環境の温度を検出する。温度センサ541は、例えば、外部トレイ50に設置され、対象食品FTの周囲の温度を検出する。また、温度センサ541は、保持部空間52に配置されてもよい。
【0154】
通信部545は、トランスミッターとレシーバーとを有する通信装置であり、Wi-FiやBluetooth等の近距離無線通信を実行する。通信部545は、モバイル端末2と無線データ通信を実行する。通信部545は、通信ネットワークN(図3)等の外部の通信ネットワークNを介してモバイル端末2と接続されてもよい。通信部545は、制御部510の制御に従って、計測部550の計測結果や、判定部522の判定結果等を示すデータをモバイル端末2に送信する。モバイル端末2は、計測装置55が送信するデータに基づいて表示画面に表示を行う機能を有し、計測装置55は、モバイル端末2を、出力部として利用できる。また、通信部545は、モバイル端末2が送信するデータを受信して、制御部510に出力する。例えば、通信部545は、モバイル端末2においてユーザが入力した入力内容を示すデータを受信して、制御部510に出力する。この場合、計測装置55は、モバイル端末2において入力された情報に基づいて動作を実行することができ、モバイル端末2を、入力部142と同様の入力デバイスとして利用できる。
【0155】
計測部550は、収納検知部551、及び、気体計測部560を含む。気体計測部560は、センサ素子561と、温度調整部562とを備える。
センサ素子561は、ガスの特性値を計測するセンサであり、その具体的な構成は、例えばセンサ素子161(図3)と同様である。温度調整部562は、センサ素子561の温度を調整する機能を有する。温度調整部562の具体的な構成は、例えば、温度調整部162(図3)と同様である。
【0156】
実施形態2では、気体計測部560が、3つのセンサ素子561A、561B、561Cを備える構成を例示する。センサ素子561Aには温度調整部562Aが取り付けられ、センサ素子561Bには温度調整部562Bが取り付けられ、センサ素子561Cには温度調整部562Cが取り付けられる。
【0157】
センサ素子561A、561B、561Cは、同じ特性を有するセンサであってもよいし、異なる特性を有するセンサであってもよい。例えば、センサ素子561A、561B、561Cが、同一種類のガスに対して異なる検出特性を示すセンサであってもよい。また、例えば、センサ素子561A、561B、561Cが、それぞれ異なる種類のガスに特異的な特性を示すセンサであってもよい。
【0158】
制御部510は、プロセッサ520、及び、メモリ530を備える。プロセッサ520は、CPU、MPU、その他の演算処理装置により構成される。メモリ530は、プロセッサ520が実行するプログラムやデータを不揮発的に記憶する記憶装置である。メモリ530は、磁気的記憶装置、半導体記憶素子、或いはその他の種類の不揮発性記憶装置により構成される。具体的には、メモリ530は、HDD、フラッシュROM、フラッシュROMで構成されるSSD等を有する。メモリ530は、プロセッサ120のワークエリアを構成するRAMを含んでもよい。
【0159】
メモリ530は、プロセッサ520より実行される制御プログラム531を記憶する。メモリ530は、プロセッサ520によって処理され、或いは生成されるデータを記憶する記憶部である。具体的には、メモリ530は、判定モデル532、設定データ533、及び、計測データ534を記憶する。
【0160】
プロセッサ520は、制御プログラム531を実行することによって、制御装置10の各部を制御する。プロセッサ520は、機能部として、計測制御部521、および、判定部522を備える。これらの各機能部は、プロセッサ520が制御プログラム531を実行することによって、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される。
【0161】
計測制御部521は、収納検知部151の検知結果に基づいて、気体計測部160による計測を実行させる。計測制御部521は、センサ素子561に通電することにより、センサ素子561による計測を実行させ、計測結果を取得する。また、計測制御部521は、温度調整部562を動作させて、測定時のセンサ素子561の温度を所定の温度に調整する。温度制御部121がセンサ素子561に計測を実行させるタイミング、及び、計測時のセンサ素子561の温度は、設定データ533により定められる。
【0162】
計測制御部521は、計測部550に計測を実行させた場合、計測により得られたデータを計測データ534としてメモリ530に記憶させる。計測データ534は、例えば、計測が行われた日時に対応付けて、センサ素子561の計測結果である計測値を記憶する。また、計測データ534は、センサ素子561の計測結果と計測条件とを対応付けたデータであってもよい。計測条件とは、例えば、計測時におけるセンサ素子561の温度を含む。また、計測条件は、計測時に使用するセンサ素子561が、センサ素子561Aであるか、センサ素子561Bであるか、センサ素子561Cであるかを含んでもよい。また、計測条件は、センサ素子561が計測動作を実行する場合のセンサ素子561の温度、センサ素子561の作動電圧、センサ素子561の作動電圧の周波数、センサ素子561の通電時間、及び、センサ素子561への通電頻度のいずれかを含んでもよい。
【0163】
判定部522は、計測部550の計測結果に基づいて、対象食品FTの状態を判定する。判定部522は、例えば、判定部123(図3)と同様に構成され、関数、プログラム、或いはその他のアルゴリズムに、計測部550の計測結果を入力することにより、対象食品FTの状態を判定し、判定結果を出力する。判定部522は、対象食品FTの状態を判定する処理において、計測データ534に含まれる過去の計測結果を参照してもよい。本実施形態の判定部522は、判定モデル532を用いて対象食品FTの状態を判定する。判定モデル532は、計測部550の計測結果、計測条件、及び、対象食品FTの状態の相関を予め学習した、学習済みの機械学習モデルであり、いわゆるAIである。判定部522は判定モデル532を実行し、判定モデル532に計測部550の計測結果と計測条件とを与えることにより、対象食品FTの状態を推定する。
【0164】
判定モデル532が学習に用いる学習用データとしては、例えば、対象食品FTが発するガスの特性値を説明変数とし、対象食品FTとする代表的な食品の熟度或いはその他の食品特性値を目的変数としたデータが挙げられる。
【0165】
判定部522は、センサ素子561に加え、収納検知部551の検知結果を利用して対象食品FTの状態を判定してもよい。これは、判定部123が、センサ素子161の計測結果に加え、収納検知部151の検知結果を利用する場合と同様である。
【0166】
計測装置55は、各種の食品を対象食品FTとすることができる。対象食品FTについては実施形態1と同様である。判定部522は、計測部550の計測結果から、対象食品FTの熟度を求める。また、判定部522は、対象食品FTの熟度の変化を予測することが可能な構成であってもよい。すなわち、熟度が低く好適熟度に達していない対象食品FTについて、喫食に適する熟度、或いは、好適熟度となる時期の予測を行うことが可能な構成であってもよい。また、熟度が低く好適熟度に達していない対象食品FTについて、熟度を高めるために必要な条件を推定する機能を有していても良い。
【0167】
バッテリ571は、不図示の充電用端子から供給される電力により充電可能な二次電池である。バッテリ571は、電源部572に接続される。電源部572は、バッテリ571の電力を所定電圧の直流電力として計測装置55の各部に供給する。
【0168】
制御部510は、計測部550を制御して、センサ素子561による計測動作を実行できる。計測動作の詳細は、実施形態1で説明した制御部110の動作と同様に行うことができる。すなわち、制御部510は、図4図6図8図12に示した各動作を実行できる。この場合において、計測制御部521は計測制御部122と同様に動作し、判定部522は判定部123と同様に動作する。また、制御プログラム531、判定モデル532、設定データ533、及び、計測データ534は、図3に示した制御プログラム131、判定モデル132、設定データ133、及び計測データ134にそれぞれ相当する。制御対象としての温度センサ541、収納検知部551、センサ素子561、及び、温度調整部562は、図3の温度センサ143、収納検知部151、センサ素子161、及び、温度調整部162に相当する。
【0169】
図19は、対象食品FTの計測に関する計測装置55の動作を示すフローチャートである。この動作は図7で説明した制御部110の動作に対応する。ステップS71~S76は計測制御部521により実行される。
【0170】
制御部510は、収納検知部551によって台座51に対象食品FTが置かれたことを検知すると、処理を開始し(ステップS71)、センサ素子561による計測動作を開始する(ステップS72)。ここで開始される計測動作は、図4及び図5に示した1回の計測サイクルCYであってもよいし、複数回の計測サイクルCYを含む一連の計測動作であってもよい。制御部510は、計測動作を開始した後で収納検知部551による監視を継続し、台座51から対象食品FTが取り出されたか否かを判定する(ステップS73)。
【0171】
収納検知部551は台座51の上の対象食品FTを検知する。対象食品FTがないことを収納検知部551が検知してから所定時間内に、収納検知部551が対象食品FTを検知した場合、制御部510は、対象食品FTが取り出されていないと判定してもよい。
【0172】
対象食品FTが取り出されたと判定した場合(ステップS73:YES)、制御部510は、既に実行した計測動作の結果を出力する(ステップS74)。ステップS74の出力は、例えば、モバイル端末2へのデータの送信である。ステップS74では、実行済みの計測動作の結果だけでなく、実行済みの計測動作の結果から判定部522が判定した判定結果を出力してもよい。その後、制御部510は本処理を終了する。
【0173】
対象食品FTが取り出されていない場合(ステップS73:NO)、制御部510は、ステップS72で計測動作を開始してから、予め設定された設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS75)。設定時間が経過していない場合(ステップS75:NO)、制御部510は、ステップS73に戻る。設定時間が経過した場合(ステップS75:YES)、制御部510は、計測動作を終了する(ステップS76)。
【0174】
制御部510が判定部522の判定結果等を出力する動作は、図13図16に示した判定結果画面810及び情報表示画面830を表示するための表示データを、モバイル端末2に送信する動作である。
また、食品保管装置5がLEDを用いたインジケータ等の出力装置を有する場合、制御部510は出力装置を制御して、判定結果等を出力してもよい。例えば、対象食品FTの熟度を示す色でインジケータを発光させる制御を行ってもよい。
【0175】
実施形態2の食品保管装置5は、食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部560と、気体計測部560に対応する位置で対象食品FTを保持する食品保持部としての台座51と、を備える。食品保管装置5は、対象食品FTが台座51に保持されたことに応じて気体計測部560による計測を開始させる制御部510と、気体計測部560の計測結果に基づいて食品の状態を判定する判定部522と、を備える。これにより、対象食品FTが計測可能な位置に保持されたことを契機として計測を開始するので、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行できる。
【0176】
また、食品保管装置5は、食品を載置可能な台座51と、気体計測部560を収容する計測容器53とを備える。計測容器53は台座51に連結され、台座51の内部空間である保持部空間52と計測容器53の内部空間である容器空間54とが連通する。
これにより、対象食品FTを台座51に載置して安定させた状態で、対象食品FTに由来する気体に関する計測を行うことができる。
【0177】
また、計測容器53は、計測装置55、及び、バッテリ571を収容し、バッテリ571から計測装置55に電力を供給可能である。この構成により、食品保管装置5は、可搬型の装置として実現できる。このため、食品保管装置5の設置場所や移動の自由度が増し、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0178】
食品保管装置5においては、対象食品FTが保持される台座51とは別の計測容器53に、計測装置55を収容しているため、計測装置55が対象食品FTにより汚れることを防止できる。さらに、通気孔52aにラビリンス構造やフィルタを設けて、保持部空間52から容器空間54への異物や液体等の進入を抑制または防止してもよい。また、外部から容器空間54への異物や液体等の進入を抑制または防止するため、通気孔54aに、ラビリンス構造やフィルタを設けてもよい。
【0179】
また、食品保管装置5は、保持部空間52に強制的に外気を取り込む換気手段を設けてもよく、保持部空間52において除湿を行う除湿装置を設けてもよい。また、保持部空間52に除菌装置や除菌効果を有するデバイスを設置してもよい。
【0180】
実施形態2において、プロセッサ520はコンピュータの一例に対応し、制御プログラム531はプログラムの一例に対応し、収納検知部551は食品検知部の一例に対応し、台座51は食品保持部の一例に対応する。
【0181】
[3.実施形態3]
図22は、実施形態3における食品保管装置7の縦断面図である。
食品保管装置7は、箱形の本体71を備え、本体71の内部空間である本体空間72には対象食品FTを含む複数の食品を収容可能である。本体71の前面には開閉可能な前面扉71aが設けられ、前面扉71aを開くことにより対象食品FT及び食品FOの出し入れが可能となる。前面扉71aには、前面扉71aを貫通する通気孔72aが形成される。本体空間72と外部との間で、通気孔72aを通じて空気が流通する。
【0182】
本体空間72には、食品を保持する棚71bが設けられ、棚71bと、本体空間72の底面とに食品を載置できる。食品保持部73は計測対象である対象食品FTを保持する皿状の容器である。棚71bの上は計測対象でない食品FOを保持する場所である。本体71は、対象食品FTと食品FOとを異なる高さに収容する。棚71bの数は制限されず、2段以上の棚71bを設けて、より多数の食品FOを本体71に収容可能な構成としてもよい。
【0183】
本体空間72には収納検知部551Aが配置される。収納検知部551Aは、収納検知部151(図3)及び収納検知部551(図19)と同様のセンサであり、対象食品FTが食品保持部73にあることを検知する。収納検知部551Aの具体的な構成は任意であり、例えば、近赤外光または超音波により距離を検知する測距センサを備え、食品保持部73の上に物体が存在することを検知する構成であってもよい。また、収納検知部551Aは、例えば、近赤外光により表面温度を検知するサーモパイルや、分光センサを備える構成であってもよい。収納検知部551Aがサーモパイルを有する場合、サーモパイルにより保持部空間52よりも高温の物体が食品保持部73の上に存在することを検知できる。収納検知部551Aが分光センサを有する構成では、対象食品FTを観測した光がカロテノイドやクロロフィル等に特有のスペクトルを示すか否かに基づいて、対象食品FTが収納検知部551Aの検知範囲に存在することを検知できる。また、収納検知部551Aは、本体空間72において食品保持部73を撮影するカメラであってもよい。
【0184】
食品保管装置7は、計測容器74を備える。計測容器74は本体71に連結される中空の容器である。計測容器74の内部空間である容器空間75には、計測装置55Aが収容される。計測装置55Aは、不図示の回路基板に、後述する制御部510A、及び、計測部550Aが実装された構成を有する。
【0185】
本体71と計測容器74との接合部には通気孔72bが貫通する。通気孔72bにより、本体空間72と容器空間75とが連通する。計測容器74の上面には通気孔75aが設けられ、通気孔75aを通じて容器空間75と外部との間で空気が流通可能である。
【0186】
計測装置55Aが動作を行うと、計測装置55Aを構成する各種電子デバイスが発する熱により容器空間75の空気が通気孔75aから外部に流出する。これに伴い、容器空間75には通気孔72bを通じて本体空間72から空気が流入する。
【0187】
食品保持部73に対象食品FTが置かれた場合、対象食品FTが発するガスの一部は本体空間72に放出され、本体空間72に滞留する。このガスは気流と共に通気孔72bから容器空間75に移動し、センサ素子561によりガスの特性値を計測可能となる。
【0188】
図23は、計測装置55Aの構成を示すブロック図である。計測装置55Aは、制御部510A、ヒータ548、計測部550A、及び、電源変換回路573を備える他は、実施形態2で説明した計測装置55と共通する。計測装置55Aにおいて、計測装置55と共通の構成には同符号を付して説明を省略する。
【0189】
ヒータ548は、制御部510Aに接続され、制御部510Aの制御に従って本体空間72を加熱する。ヒータ548は、少なくとも、対象食品FTの周囲温度を上昇させるように、本体空間72に配置される。例えば、食品保持部73の下、或いは、棚71bの下にヒータ548が設置される。
【0190】
計測部550Aは、計測部550の構成の収納検知部551を、収納検知部551Aに代えたものである。収納検知部551Aは、図22に示したように本体空間72に配置され、食品保持部73における対象食品FTを検知する。その他の計測部550Aの構成は、計測部550と共通である。
【0191】
電源変換回路573は、商用交流電源に接続され、交流電流を所定電圧の直流電流に変換して、計測装置55Aの各部に供給する。
【0192】
制御部510Aは、プロセッサ520の構成部として温度調整部523を備える。温度調整部523以外の構成は制御部510と共通する。温度調整部523は、判定部522の判定結果に従ってヒータ548への通電を制御することにより、対象食品FTの周囲温度を調整する。
【0193】
図24は、計測装置55Aの動作を示すフローチャートである。ステップS101~S104、S109は計測制御部521により実行され、ステップS105~S107は判定部522により実行され、ステップS108は温度調整部523により実行される。
【0194】
制御部510Aは、収納検知部551によって台座51に対象食品FTが置かれたことを検知すると、処理を開始し(ステップS101)、目標消費日の入力を受け付ける(ステップS102)。目標消費日は、ユーザが対象食品FTの喫食を希望する日付であり、ユーザは、目標消費日を、例えばモバイル端末2により入力する。この場合、制御部510Aは、通信部545によりモバイル端末2からデータを受信することにより、入力を受け付ける。
【0195】
制御部510Aは、気体計測部560に計測動作を実行させる(ステップS103)。ここで開始される計測動作は、図4及び図5に示した1回の計測サイクルCYであってもよいし、複数回の計測サイクルCYを含む一連の計測動作であってもよい。制御部510Aは、設定データ533に含まれる初期値の計測条件に従ってセンサ素子561及び温度調整部562を動作させる。その後、制御部510Aは、気体計測部560による計測結果を取得する(ステップS104)。
【0196】
制御部510Aは、ステップS104で取得した計測結果をもとに対象食品FTの状態、具体的には熟度を判定する(ステップS105)。制御部510Aは、計測を行った日時と、判定した熟度と、ステップS102で受け付けた目標消費日と、をもとに、保存好適温度を算出する(ステップS106)。
【0197】
保存好適温度とは、特定の条件を満たすように対象食品FTを保存するのに適した温度である。特定の条件とは、目標消費日に、対象食品FTの熟度が好適熟度となることである。保存好適温度を求める処理は、例えば、判定部522が実行する。判定部522が保存好適温度を求める手法として、ここでは、対象食品FTの熟度と保存温度との相関に関するデータを利用する例を説明する。
【0198】
図25は、計測装置55Aの動作を示す説明図であり、熟度と保存温度との相関を示すデータの利用形態を示す。図25の縦軸は対象食品FTの熟度を示し、横軸は時間の経過を示す。図25には、対象食品FTの熟度と時間の経過との相関を示す相関曲線が、温度帯ごとに含まれる。すなわち、(a)は30℃における対象食品FTの熟度の変化を示し、(b)は25℃における対象食品FTの熟度の変化を示し、(c)は20℃における対象食品FTの熟度の変化を示し、(d)は15℃における対象食品FTの熟度の変化を示す。
【0199】
図25の相関曲線(a)~(d)のデータは、設定データ533に含まれ、制御部510Aによって参照可能にメモリ530に記憶される。これら曲線(a)~(d)は一例であり、例えば、計測装置55Aが、より細かい温度毎の熟度の変化に関するデータを有していてもよい。また、設定データ533は、対象食品FTの種類毎に、対象食品FTの熟度変化と温度との相関を示すデータを含んでいてもよいし、複数種類の対象食品FTに共通して使用される1つのデータを含んでもよい。
【0200】
図25のプロットP41は、気体計測部560が計測を行った日時T72、及び、ステップS105で判定された対象食品FTの熟度を示す点である。プロットP42は、目標消費日を示す時刻T72、及び、対象食品FTの好適熟度を示す点である。
【0201】
判定部522は、プロットP41、P42を配置した上で、曲線(a)~(d)の熟度がプロットP41に重なるように、曲線(a)~(d)の位置を揃える。そして、判定部522は、曲線(a)~(d)のうち、プロットP42に重なるか、最も近い曲線を選択する。図25の例では、曲線(c)が選択される。曲線(c)が示す保存温度は20℃であるため、判定部522は保存好適温度を20℃に決定する。
【0202】
図24に戻り、制御部510Aは、温度センサ541の検出温度を取得し、取得した現在の温度と、ステップS106で求めた保存好適温度との温度差が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS107)。温度差が閾値以上であると判定した場合(ステップS107:YES)、制御部510Aはヒータ548を動作させて、本体空間72の温度を保存好適温度にするための温度調整を行う(ステップS108)。その後、制御部510AはステップS109に移行する。
温度差が閾値以上でないと判定した場合(ステップS107:NO)、制御部510AはステップS109に移行する。
【0203】
ステップS109で、制御部510Aは、本体空間72から対象食品FTが取り出されたか否かを判定する(ステップS109)。対象食品FTが取り出されたと判定した場合(ステップS109:YES)、制御部510Aは、本処理を終了する。対象食品FTが取り出されていない場合(ステップS109:NO)、制御部510Aは、ステップS107に戻る。
【0204】
実施形態3の食品保管装置7は、食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部560Aと、気体計測部560Aに対応する位置で対象食品FTを保持する食品保持部73と、を備える。食品保管装置7は、対象食品FTが食品保持部73に保持されたことに応じて気体計測部560Aによる計測を開始させる制御部510と、気体計測部560の計測結果に基づいて食品の状態を判定する判定部522と、を備える。これにより、対象食品FTが計測可能な位置に保持されたことを契機として計測を開始するので、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行できる。
【0205】
また、食品保管装置7は、対象食品FTを収容する本体71と、気体計測部160を収容する計測容器74とを備える。本体71の一面には開閉部としての前面扉71aが設けられ、計測容器74は、本体71の前面とは異なる面に連結され、本体71の内部空間である本体空間72と計測容器74の内部空間である容器空間75とが連通する。これにより、前面扉71aの開閉の影響を受けにくい位置に計測容器74を配置するので、食品保持部73に収容された食品に由来する気体の計測を、より高精度で行うことができる。
【0206】
また、食品保管装置7は、本体71の内部の温度を変化させる温度調整部としてのヒータ548を備える。制御部510は、判定部522の判定結果に基づいて本体71の内部の温度を変化させる。これにより、本体空間72に保管される対象食品FTの状態を、対象食品FTの熟度に応じて調整できる。
【0207】
食品保管装置7においては、対象食品FTが保持される本体71とは別の計測容器74に、計測装置55Aを収容しているため、計測装置55Aが対象食品FTにより汚れることを防止できる。さらに、通気孔72bにラビリンス構造やフィルタを設けて、本体空間72から容器空間75への異物や液体等の進入を抑制または防止してもよい。また、外部から容器空間75への異物や液体等の進入を抑制または防止するため、通気孔75aに、ラビリンス構造やフィルタを設けてもよい。
【0208】
また、食品保管装置7は、本体空間72を冷却する冷却装置を備える構成としてもよい。この場合、対象食品FTの保管温度を低下させることができる。この場合、例えば、対象食品FTの熟度が好適熟度に達した後は保存温度を低下させて鮮度を維持することができ、対象食品FTを冷凍して腐敗や劣化を防止することができる。
【0209】
また、食品保管装置7は、本体71に強制的に外気を取り込む換気手段を設けてもよく、本体空間72の除湿を行う除湿装置を設けてもよい。また、本体空間72に除菌装置や除菌効果を有するデバイスを設置してもよい。
【0210】
実施形態3において、前面扉71aは開閉部の一例に対応し、プロセッサ520はコンピュータの一例に対応し、制御プログラム531はプログラムの一例に対応し、収納検知部551Aは食品検知部の一例に対応し、ヒータ548は温度調整部の一例に対応する。
【0211】
[4.他の実施形態]
以上のように、本出願において開示する例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0212】
上述した各実施形態では、独立して使用される冷蔵庫1、食品保管装置5、7により対象食品FTを保管或いは収容する例を説明したが、これは一例である。例えば、大型冷蔵庫や倉庫に組み込み設置することが可能である。また、食品保管装置7において、対象食品FTを収容する複数の本体71を1つの制御部510Aに接続し、1つの制御部510Aが複数の対象食品FTについての判定や予測を行う構成であってもよい。制御部110、及び、制御部510についても同様である。
【0213】
図3図20図23のブロック図に示した構成は一例であって、各ブロック図に示された機能部の具体的な実装形態は特に限定されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで各部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上述した実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアとしてもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、冷蔵庫1、食品保管装置5、7の各装置を構成する機器の具体的な細部構成についても、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【0214】
また、例えば、図7図9図21図24に示した動作のステップ単位は、制御部110、510、510Aの動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本開示が限定されることはない。
【0215】
なお、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0216】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0217】
(付記)
【0218】
(技術1)食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部と、前記気体計測部に対応する位置で前記食品を保持する食品保持部と、前記食品が前記食品保持部に保持されたことに応じて前記気体計測部による計測を開始させる制御部と、前記気体計測部の計測結果に基づいて前記食品の状態を判定する判定部と、を備える、食品保管装置。
これにより、食品が気体計測部によって計測可能な位置に保持されたことを契機として計測を開始するので、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行できる。
【0219】
(技術2)前記制御部は、前記食品が前記食品保持部に保持されていない状態が継続した場合に、前記気体計測部による計測を終了させる、技術1に記載の食品保管装置。
これにより、不要な計測動作を実行しないので、計測に関する効率向上を図ることができる。
【0220】
(技術3)前記判定部の判定結果を出力する出力部を備え、前記制御部は、前記気体計測部による計測を繰り返し実行させ、前記判定部は、前記気体計測部による計測が所定回数だけ実行される毎に、前記食品の状態の判定結果を更新し、前記出力部は、前記判定部の判定結果が更新された場合に、更新された判定結果を出力する、技術1または技術2に記載の食品保管装置。
これにより、食品の特性を判定した結果に関する情報をユーザに提供できる。さらに、複数の計測動作を実行した場合に判定結果を更新するので、より適切な情報をユーザに提供できる。
【0221】
(技術4)前記出力部は、前記制御部が前記気体計測部による計測を開始させた後に、前記食品が前記食品保持部に保持されていない状態が継続した場合に、前記判定部の判定結果を出力する、技術3に記載の食品保管装置。
これにより、ユーザが食品を移動させた可能性がある場合に、ユーザに対して食品の特性に関する情報を提供できる。
【0222】
(技術5)前記判定部は、前記気体計測部の計測結果に基づいて、前記食品に関する第1の判定、及び、第2の判定を実行可能であり、前記出力部は、前記食品が前記食品保持部に保持されてから所定時間内は前記判定部の第1の判定の結果に基づく第1の情報を出力し、前記所定時間が経過した後は、前記判定部の第2の判定の結果に基づく第2の情報を出力する、技術3または技術4に記載の食品保管装置。
これにより、最新の判定結果に関する情報を出力するので、より適切な情報をユーザに提供できる。
【0223】
(技術6)前記制御部は、前記食品保持部に保持された前記食品が、計測対象の種類の前記食品である場合に前記気体計測部による計測を開始させる、技術1から技術5のいずれかに記載の食品保管装置。
これにより、計測の対象とならない食品に対する不要な計測動作を実行しないので、計測に関する効率向上を図ることができる。
【0224】
(技術7)前記食品保持部は、箱体と、前記箱体の一面から引き出し可能に設けられる食品収容部と、を備え、前記気体計測部は前記食品収容部に対向して配置され、前記食品収容部において前記気体計測部に対向する位置に前記食品が配置されたことを検知する食品検知部を備える、技術1から技術6のいずれかに記載の食品保管装置。
これにより、食品が収容された後に速やかに計測を実行できる。このため、食品に由来する気体の特性に基づき、食品の状態を速やかに判定できる。
【0225】
(技術8)前記気体計測部は、前記食品収容部の上方に形成された凹部に配置される、技術7に記載の食品保管装置。
これにより、食品に由来する気体を凹部に貯留させて計測を行うので、より高い精度で気体の計測を行うことができる。
【0226】
(技術9)前記食品収容部は、前記気体計測部に対向する第1収容領域と、前記第1収容領域から離れた位置の第2収容領域とを区画する仕切りを備える、技術7または技術8に記載の食品保管装置。
これにより、計測対象の食品を、計測対象でない食品から区画された領域に収容することができ、より高い精度で計測を行うことができる。
【0227】
(技術10)前記食品保持部に送風する送風装置を備え、前記制御部は、前記気体計測部による計測を実行させる間は前記送風装置を停止させる、技術7から技術9のいずれかに記載の食品保管装置。
これにより、計測に対する外乱を抑制することができ、より高い精度で計測を行うことができる。
【0228】
(技術11)前記食品保持部は、前記食品を載置可能な台座と、前記気体計測部を収容する計測容器とを備え、前記計測容器は前記台座に連結され、前記台座の内部空間と前記計測容器の内部空間とが連通する、技術1から技術10のいずれかに記載の食品保管装置。
これにより、食品を台座に載置して安定させた状態で、食品に由来する気体に関する計測を行うことができる。
【0229】
(技術12)前記計測容器は、前記気体計測部、前記制御部、前記判定部、及び、バッテリを収容し、前記バッテリから前記気体計測部、前記制御部、及び前記判定部に電力を供給可能である、技術11に記載の食品保管装置。
これにより、可搬型の装置として食品保管装置を実現できる。
【0230】
(技術13)前記食品保持部は、前記食品を収容する本体と、前記気体計測部を収容する計測容器とを備え、前記本体は、前記本体の一面に開閉部が設けられ、前記計測容器は、前記本体において前記一面とは異なる面に連結され、前記本体の内部空間と前記計測容器の内部空間とが連通する、技術1から技術12のいずれかに記載の食品保管装置。
これにより、開閉部の開閉の影響を受けにくい位置に計測容器を配置するので、食品保持部の本体に収容された食品に由来する気体の計測を、より高精度で行うことができる。
【0231】
(技術14)前記本体の内部の温度を変化させる温度調整部を備え、前記制御部は、前記判定部の判定結果に基づいて前記本体の内部の温度を変化させる、技術13に記載の食品保管装置。
これにより、保管される食品の状態を調整できる。
【0232】
(技術15)食品由来の気体の特性値を計測する気体計測部、及び、前記気体計測部に対応する位置で前記食品を保持する食品保持部を有する食品保管装置を制御するコンピュータにより、前記食品が前記食品保持部に保持されたことに応じて前記気体計測部による計測を開始させ、前記気体計測部の計測結果に基づいて前記食品の状態を判定する、食品保管装置の制御方法。
これにより、食品が気体計測部によって計測可能な位置に保持されたことを契機として計測を開始するので、食品の特性に関する計測を適切なタイミングで実行できる。
【産業上の利用可能性】
【0233】
以上のように、本開示に係る食品保管装置、および、食品保管装置の制御方法は、冷蔵庫、又はその他の装置により保管される食品の状態を判定する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0234】
1 冷蔵庫(計測装置、食品保管装置)
2 モバイル端末(出力部)
3 サーバ
4 PC(出力部)
5、7 食品保管装置
10 制御装置
11 外箱(箱体)
12 内箱(箱体)
17 野菜室
18 機械室
19 圧縮機
21、22、23、24 前面扉
31 冷却室
32 冷却器
33 冷却ファン(送風装置)
34 ヒータ
35 ドレンパン
36 ドレンチューブ
37 蒸発皿
38 風路
39 ダンパ
40、40A、40B 貯蔵部
41 トレイ(食品収容部)
41a 底部
41b、41c 壁
43 食品保持部
44 凹部
45 気流導入部
47 隔壁(仕切り)
47a 第1収容領域
47b 第2収容領域
50 外部トレイ
51 台座(食品保持部)
52 保持部空間
52a、54a 通気孔
53 計測容器
54 容器空間
55、55A 計測装置
71 本体
71a 前面扉
71b 棚
72 本体空間
72a、72b、75a 通気孔
73 食品保持部
74 計測容器
75 容器空間
110 制御部
120 プロセッサ(コンピュータ)
121 温度制御部
122 計測制御部
123 判定部
130 メモリ
131 制御プログラム(プログラム)
132 判定モデル
133 設定データ
134 計測データ
141 表示部(出力部)
142 入力部
143 温度センサ
145 第1通信部
147 第2通信部
150 計測部
151 収納検知部(食品検知部)
160 気体計測部
161、161A、161B、161C センサ素子
162、162A、162B、162C 温度調整部
510、510A 制御部
520 プロセッサ(コンピュータ)
521 計測制御部
522 判定部
523 温度調整部
530 メモリ
531 制御プログラム(プログラム)
532 判定モデル
533 設定データ
534 計測データ
541 温度センサ
545 通信部
548 ヒータ(温度調整部)
550、550A 計測部
551、551A 収納検知部(食品検知部)
560 気体計測部
561、561A、561B、561C センサ素子
562、562A、562B、562C 温度調整部
571 バッテリ
572 電源部
573 電源変換回路
810 判定結果画面
830 情報表示画面
FT 対象食品
N 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図20
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