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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166583
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】半導体装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H01L21/304 651E
H01L21/304 648F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082770
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】白瀧 穂高
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB03
5F157AB13
5F157AB34
5F157AB91
5F157AC04
5F157AC56
5F157BB03
5F157CB03
5F157CB13
5F157CF04
5F157CF60
5F157CF74
5F157CF99
5F157DB45
5F157DB51
5F157DC83
5F157DC86
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】異物の再付着を抑制した半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る半導体装置の製造装置は、円筒型ウエハ収納容器を用いてウエハのウェット処理を行う半導体装置の製造装置であって、円筒型ウエハ収納容器は、上面が開口され、側壁に複数のスリットを有し、内部にウエハを搭載する底面部を有し、底面部の複数のスリットに対応した位置に、ウエハを保持する複数のウエハホルダーが設けられ、複数のウエハホルダーは、2つ1組で前記ウエハを1枚保持し、1組をなすウエハホルダーどうしが、円筒型ウエハ収納容器の側壁に沿って、互いに一定角度傾くように配置され、ウエハは、裏面が底面部に設けられた開口部を向き、表面が複数のスリットのうち対応するスリットを向くように前記1組をなすウエハホルダーに収納される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型ウエハ収納容器を用いてウエハのウェット処理を行う半導体装置の製造装置であって、
前記円筒型ウエハ収納容器は、
上面が開口され、側壁に複数のスリットを有し、内部に前記ウエハを搭載する底面部を有し、
前記底面部の前記複数のスリットに対応した位置に、前記ウエハを保持する複数のウエハホルダーが設けられ、
前記複数のウエハホルダーは、
2つ1組で前記ウエハを1枚保持し、
1組をなすウエハホルダーどうしが、前記円筒型ウエハ収納容器の前記側壁に沿って、互いに一定角度傾くように配置され、
前記ウエハは、
裏面が前記底面部に設けられた開口部を向き、表面が前記複数のスリットのうち対応するスリットを向くように前記1組をなすウエハホルダーに収納される、半導体装置の製造装置。
【請求項2】
前記円筒型ウエハ収納容器は、
前記ウェット処理において、ウェット処理槽内の処理液中に配置され、
前記複数のスリットから流入して前記ウエハを処理した前記処理液を使用済み処理液として前記ウェット処理槽の外に排出し、前記使用済み処理液をフィルターで濾過して前記ウェット処理槽に戻す循環システムを備える、請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記円筒型ウエハ収納容器を搭載する誘導モーターステージを備え、
前記誘導モーターステージに搭載された前記円筒型ウエハ収納容器は、
前記ウェット処理において、ウェット処理槽内の処理液中に配置され、
前記複数のスリットから流入して前記ウエハを処理した前記処理液を使用済み処理液として前記底面部の前記開口部に向けて排出し、
前記誘導モーターステージは、
前記円筒型ウエハ収納容器の前記開口部に対向する位置に設けられ、異物を濾過するフィルターと、
前記フィルターの前記開口部とは反対側に設けられたファンと、
前記ファンを回転させる誘導モーターと、を有し、
前記ファンは、
前記誘導モーターにより回転することで、前記使用済み処理液を前記フィルターを通して濾過して濾過済み処理液とし、前記濾過済み処理液は、前記ウェット処理槽内を循環して前記複数のスリットから流入する、請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
前記複数のウエハホルダーは、
前記複数のスリットから流入した前記処理液が前記1組をなすウエハホルダーに収納された前記ウエハの前記表面を処理した後、前記1組をなすウエハホルダーに隣り合う他の1組のウエハホルダーに収納された前記ウエハの前記裏面に当たって前記開口部に流入するように配置される、請求項2または請求項3に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項5】
前記複数のウエハホルダーは、
それぞれが長手方向とは直交する断面形状がコの字形状であり、コの字開口部が間を開けて向かい合うように2つ1組で配置され、向かい合う前記コの字開口部の間に前記ウエハを挟み込むことで前記ウエハを保持する、請求項4に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項6】
前記誘導モーターは、
三相コイルと、
前記ファンを収納するかご型回転子と、を有し、
前記かご型回転子は、樹脂で被覆され、
前記三相コイルは、
前記かご型回転子の外周に近接するように前記誘導モーターステージ内に設けられる、請求項3に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項7】
前記誘導モーターステージは、
前記誘導モーターの電源となるバッテリーを内部に有し、
前記バッテリーは、非接触充電により充電される、請求項6に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記ウエハを自動搬送して、前記円筒型ウエハ収納容器に収納するウエハ自動搬送システムを備える、請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記ウエハ自動搬送システムは、
前記円筒型ウエハ収納容器を収納する回転容器を有し、
前記回転容器は、
前記円筒型ウエハ収納容器を着脱する際は、前記円筒型ウエハ収納容器の前記側壁が、前記ウエハ自動搬送システムの基盤面に対して垂直となるように可動し、
前記ウエハを前記円筒型ウエハ収納容器に収納する際は、前記側壁が前記基盤面に対して水平となるように可動する、請求項8に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項10】
前記回転容器は、
前記ウエハを前記円筒型ウエハ収納容器に収納する際は、前記ウエハを収納するごとに、一定角度回転する、請求項9に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項11】
前記回転容器の前記一定角度は、
前記1組をなすウエハホルダーどうしの配置角度に相当する、請求項10に記載の半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置の製造装置に関し、特に、ウエハプロセスの薬液処理および洗浄処理を行う半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にウエハプロセスにおける薬液処理および洗浄処理には、複数のウエハをウェット処理槽で同時に処理する方法と、スピンプロセスで枚葉処理する方法がある。前者は処理能力が高いが、薬液の滞留による処理の不均一性、使用薬液量が大量に必要となること、および異物の再付着の問題がある。後者は処理の均一性が保証され、少量の薬液で処理でき、異物の再付着の問題もないが、処理能力が低いことが問題である。このようなトレードオフを改善するために、特許文献1では、薬液処理の均一性を改善するために、薬液を円筒のウェット処理槽に沿って回転させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3153701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、処理に使用された薬液がウェット処理槽内でループして再度処理に使用されるため、異物の再付着が起こる可能性が高い。
【0005】
本開示は上記のような問題を解決するためになされたものであり、異物の再付着を抑制した半導体装置の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置の製造装置は、円筒型ウエハ収納容器を用いてウエハのウェット処理を行う半導体装置の製造装置であって、前記円筒型ウエハ収納容器は、上面が開口され、側壁に複数のスリットを有し、内部に前記ウエハを搭載する底面部を有し、前記底面部の前記複数のスリットに対応した位置に、前記ウエハを保持する複数のウエハホルダーが設けられ、前記複数のウエハホルダーは、2つ1組で前記ウエハを1枚保持し、1組をなすウエハホルダーどうしが、前記円筒型ウエハ収納容器の前記側壁に沿って、互いに一定角度傾くように配置され、前記ウエハは、裏面が前記底面部に設けられた開口部を向き、表面が前記複数のスリットのうち対応するスリットを向くように前記1組をなすウエハホルダーに収納される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る半導体装置の製造装置によれば、ウェット処理に際して、処理液が複数のスリットから流入してウエハを処理するので、複数のウエハをウェット処理槽で同時に処理する際の処理の均一性を改善し、処理液は底面部の開口部から排出されるので異物の再付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す斜視図である。
図2】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す断面図である。
図3】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す水平方向の断面図である。
図4】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す水平方向の断面図である。
図5】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す水平方向の断面図である。
図6】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す水平方向の断面図である。
図7】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器の構成を示す水平方向の断面図である。
図8】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器内での処理液の流れを説明する図である。
図9】本開示に係る実施の形態1の半導体装置の製造装置の構成を示す図である。
図10】本開示に係る実施の形態1の半導体装置の製造装置の構成を示す図である。
図11】本開示に係る実施の形態1の半導体装置の製造装置を用いた処理液によるウエハ処理の全体の流れを説明する図である。
図12】本開示に係る実施の形態1の半導体装置の製造装置を用いた処理液によるウエハ処理の全体の流れを説明する図である。
図13】本開示に係る実施の形態1の円筒型ウエハ収納容器を用いた薬液処理および水洗処理の際の水位を定義する図である。
図14】本開示に係る実施の形態1の半導体装置の製造装置に用いるカートリッジフィルターの構成を説明する概念図である。
図15】PTFEフィルターの構造を模式的に示す図である。
図16】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの構成を示す斜視図である。
図17】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの構成を示す断面図である。
図18】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの構成を示す断面図である。
図19】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの構成を示す水平方向の断面図である。
図20】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの構成を示す水平方向の断面図である。
図21】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの構成を示す水平方向の断面図である。
図22】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージに円筒型ウエハ収納容器を取り付けた状態を示す斜視図である。
図23】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージに円筒型ウエハ収納容器を取り付けた状態を示す断面図である。
図24】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージに搭載される円盤フィルターの構造を説明する概念図である。
図25】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの充電装置と充電方法を説明する図である。
図26】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの充電装置の構成を示す水平方向の断面図である。
図27】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの充電装置の構成を示す水平方向の断面図である。
図28】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージを構成するかご型回転子の構造を示す平面図である。
図29】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージを構成するファンの構造を示す図である。
図30】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージを構成する鉄かごの構造を示す図である。
図31】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージの内部に搭載されるインバーター回路を説明する図である。
図32】本開示に係る実施の形態2の誘導モーターステージを充電する充電回路を説明する図である。
図33】本開示に係る実施の形態3のウエハ自動搬送システムの全体構成を示す概略図である。
図34】本開示に係る実施の形態3のウエハ自動搬送システムにおけるカセット交換を説明する図である。
図35】円筒型ウエハ収納容器と回転容器との係合状態を説明する断面図である。
図36】本開示に係る実施の形態3のウエハ自動搬送システムにおけるカセット交換において、回転容器を可動させる動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態1>
<円筒型ウエハ収納容器>
本開示に係る半導体装置の製造装置の実施の形態1について、図1図15を用いて説明する。図1は、実施の形態1の半導体装置の製造装置に使用される円筒型ウエハ収納容器11を示す斜視図である。
【0010】
図1に示すように、円筒型ウエハ収納容器11は、容器本体11aの側壁に、容器の長手方向に沿った複数のスリット12が等間隔に設けられ、容器本体11aの内部の底面部11bに、底面部11bに対して垂直に設けられた細長い複数のウエハホルダー13を備えている。ウエハホルダー13は、長手方向とは直交する断面形状がコの字形状であり、コの字の開口部が間を開けて向かい合うように2つ1組で配置され、向かい合う開口部間にウエハを挟み込むことでウエハを保持する。
【0011】
このように、ウエハホルダー13は、簡単な形状を有しているが、個々に独立して設けられるので、配置の自由度が高い。
【0012】
底面部11bの中央部分は開口部11cとなっており、複数のウエハホルダー13は、開口部11cと容器本体11aの側壁との間に配置されている。円筒型ウエハ収納容器11の材料は薬液耐性のあるフッ素樹脂を使用することができる。
【0013】
図2は、図1のX-X線での矢示方向断面図であり、A-A線、B-B線、C-C線およびD-D線での矢示方向断面図を、それぞれ図3図4図5図6および図7に示す。図3に示すように容器本体11aの側壁の上部の4箇所からは、それぞれ凸部11dが外側に突出している。
【0014】
また、図4に示すようにウエハホルダー13は、1組をなすウエハホルダー13どうしが、容器本体11aの側壁に沿って、互いに一定角度傾くように設置されている。これによってウエハの収納容量が高くなる。
【0015】
また、図5に示すように、ウエハ31は、対をなして向かい合った2つのウエハホルダー13間に収納される。この状態で円筒型ウエハ収納容器11を薬液または水(以下、処理液と呼称する場合あり)を満たした処理槽に沈めると、スリット12から処理液が円筒型ウエハ収納容器11内に流れ込み、ウエハ31の面に衝突し、図5に示すような渦の流れ32となって中心部に流れ込む。
【0016】
図6に示すように、円筒型ウエハ収納容器11の底面部11bの中央部分は開口部11cとなっており、中心部に流れ込込んだ液体は開口部11cを通って円筒型ウエハ収納容器11の下部に達する。
【0017】
図7に示すように、円筒型ウエハ収納容器11の下部は開口部11cよりも大きな開口となっており、液体は円筒型ウエハ収納容器11の外部に流れ出す。これにより、ウエハ31のウェット処理に一度使用された処理液は、再度別のウエハのウェット処理に使用されることはない。
【0018】
図8は、図5に示したウエハ31の配置と、処理液の流れをさらに説明する図である。図8では、1つのスリット12から流入した処理液の流れを模式的に矢印で示している。図8に示すように、スリット12から流入した処理液は、まず、流れ32aに示すように、スリット12の近傍のウエハ31のウエハ表面31aの処理に使用された後、使用後処理液として流れ32bに示すように、隣り合うウエハ31のウエハ裏面31bに当たり、その後、流れ32cに示すように、何れのウエハ31の処理にも使用されず、開口部11cを介して処理槽(図示されず)の底部に設けられた排水口53に流れ込む。1つのスリット12に対して2枚のウエハが対応するように設けられ、そのうち最初に処理液が当たるウエハ31のウエハ表面31aのみが処理されるようにウエハ31が配置されている。
【0019】
このようにウエハホルダー13に収納されている全てのウエハ31は、表面を清浄な処理液で処理することが可能となり、例えば、何れかのウエハ31が異物で汚染されていた場合でも他のウエハ31に、その異物が再付着することが防止される。
【0020】
<半導体装置の製造装置>
図9および図10は、実施の形態1の半導体装置の製造装置1000の構成を示す図である。半導体装置の製造装置1000は、ウェット処理槽51と、処理液70の循環システム100と、を備えている。
【0021】
図9は、図1に示した円筒型ウエハ収納容器11をウェット処理槽51に沈めた場合のウェット処理槽51を上方から見た平面図と、処理液70の循環システム100を模式的に示している。図10は、円筒型ウエハ収納容器11をウェット処理槽51に沈めた場合のウェット処理槽51の深さ方向の断面図と、処理液70の循環システム100を模式的に示している。
【0022】
図10に示されるように、ウェット処理槽51は、底部に円筒型ウエハ収納容器11を排水口53に対して適切な位置に設置するための、収納容器設置ガイド52と、排水口53および給水口57を備えている。図9および図10に示されるように、使用後の処理液は、排水口53から水路54、ポンプ55およびカートリッジフィルター56を通って濾過され、濾過済み処理液として給水口57からウェット処理槽51に戻る構成となっている。
【0023】
処理液70による処理中は、図10に示されるように、バルブ513とバルブ515を開放し、バルブ514を閉めた状態でポンプ55を稼働することで、カートリッジフィルター56を通った処理液70が循環する。給水口57からウェット処理槽51に供給された処理液70は、円筒型ウエハ収納容器11の複数のスリット12を通って円筒型ウエハ収納容器11内に流入し、矢印で模式的に示す処理液70の流れ510となってウエハ31の表面を処理し、排水口53から排出される。
【0024】
処理液70による処理を完了する場合は、バルブ514とバルブ515を開放し、バルブ513とバルブ516、バルブ517およびバルブ518を閉めた状態でポンプ59を稼働する。
【0025】
この後、処理液70を廃棄する場合は、バルブ514、バルブ515、バルブ516を開放し、バルブ513、バルブ517、バルブ518を閉めた状態で高低差によって処理液70を廃液口511を通して廃棄する。
【0026】
なお、処理液70を再利用する場合は、バルブ514、バルブ515、バルブ517を開放し、バルブ513、バルブ516、バルブ518は閉めた状態で高低差によって薬液をタンク58に流し込む。
【0027】
タンク58に保管した処理液70を再利用する場合は、バルブ513、バルブ514、バルブ515、バルブ517を開放し、バルブ516、バルブ518を閉めた状態で、ポンプ55とポンプ59を稼働し、処理液70をウェット処理槽51に戻す。
【0028】
タンク58に保管した処理液70を廃棄する場合は、バルブ513、バルブ514、バルブ515、バルブ516、バルブ517を閉じて、バルブ518を開放することで高低差によって薬液を廃液口512を通して廃棄する。
【0029】
以上説明したように、半導体装置の製造装置1000によれば、一度、ウエハ31のウェット処理に使用された処理液70が、そのまま他のウエハ31に使用されることなく、また、滞留することなくカートリッジフィルター56を介してウェット処理槽51に戻すことが可能になり、異物の再付着を防止することができる。
【0030】
<ウエハ処理の全体の流れ>
次に、図11および図12を用いて、半導体装置の製造装置1000を用いた処理液によるウエハ処理の全体の流れを説明する。
【0031】
図11は、ウエハの移し替えからウエハの水洗(リンス)処理までを順番に示す図であり、図12は、リンス処理に使用した水の排水からスピン乾燥処理までを順番に示す図である。
【0032】
まず、図11の左端の図に示すように、従来型ウエハ収納容器17から、ウエハ31を円筒型ウエハ収納容器11に移し替える(ウエハの移し替え操作)。この操作は、ウエハ自動搬送システムにより自動的に行われるが、ウエハ自動搬送システムについては、後に実施の形態3においてさらに説明する。
【0033】
次に、図11の左端から2番目の図に示すように、薬液72を循環させた状態で、円筒型ウエハ収納容器11をウェット処理槽51中の薬液72に沈め、ウエハの薬液処理を実行する。この薬液処理では、図5および図8に示したように処理液、ここでは薬液72の流れによってウエハ31の表面が処理される。
【0034】
次に、図11の左端から3番目の図に示すように、薬液処理が完了した後は、ウェット処理槽51から薬液72を完全に排出し、廃液タンクに保管するか、または廃棄する。これによって、円筒型ウエハ収納容器11を持ち上げてリンス工程に進む際に、薬液72内での異物の再付着が起こらない。
【0035】
次に、図11の右端に示すように、ウェット処理槽51から薬液が完全に廃液された後、円筒型ウエハ収納容器11を水洗用の従来型ウェット処理槽61に移動させてウエハの水洗処理を実行する。従来型ウェット処理槽61では、水73の水位を一定に保つように、一定量の水が従来型ウェット処理槽61の上部から給水され、同量の水が従来型ウェット処理槽61の下部から排出される。この水洗処理では、図5および図8に示したように処理液、ここでは水73の流れによってウエハ31の表面が処理される。
【0036】
次に、図12の左端の図に示すように、水洗処理が完了した後は、給水を止め、従来型ウェット処理槽61から水を完全に排出する。これによって、円筒型ウエハ収納容器11を持ち上げて乾燥工程に進む際に、水73内での異物の再付着が起こらない。
【0037】
次に、図12の左端から2番目の図に示すように、従来型ウェット処理槽61から円筒型ウエハ収納容器11を取り出し、ウエハ31を従来型ウエハ収納容器17に移し替える(ウエハの移し替え操作)。この操作も、ウエハ自動搬送システムにより自動的に行われる。ウエハを移し替え終わった円筒型ウエハ収納容器11は、そのまま次のロットの処理に使用される。次に、図12の左端から3番目の図に示すように、従来型ウエハ収納容器17に移し替えられたウエハ31は、従来型ウエハ収納容器17ごとスピン乾燥器74に移され、スピン乾燥処理により乾燥される。
【0038】
次に、図12の右端の図に示すように、乾燥後のウエハ31は元の従来型ウエハ収納容器17から取り出し、乾燥した新たな従来型ウエハ収納容器17に移し替える(ウエハの移し替え操作)。この操作も、ウエハ自動搬送システムにより自動的に行われる。
【0039】
乾燥前のウエハを収納していた従来型ウエハ収納容器17は、そのまま次のロットの処理に使用される。
【0040】
<処理液の水位>
図13は、円筒型ウエハ収納容器11を用いた薬液処理および水洗処理の際の水位を定義するための図である。円筒型ウエハ収納容器11が備えるスリット12のトップの高さをLTS、薬液処理の際の薬液72の水位をLCL、水洗処置の際の水73の水位をL、円筒型ウエハ収納容器のトップの高さをLBSとする場合、それぞれのレベルの高さ関係はLTS<LCL<L<LBSとなる。
【0041】
薬液処理の際の薬液72の水位LCLおよび水洗処理の際の水73の水位Lは、スリット12が完全に薬液72および水73に浸る水位となっている。これによって、ウエハの上部までが確実に処理される。また、スリット12全体に均等に水圧がかかりウエハ全体が均一な流速でウェット処理される。
【0042】
薬液処理の際の薬液72の水位LCLを円筒型ウエハ収納容器11のトップの高さLBSよりも低い水位とすることで、円筒型ウエハ収納容器11の上部から薬液72が流入しないレベルにしている。
【0043】
一方、水洗処理の際の水73の水位Lを薬液処理の際の薬液72の水位LCLよりも高いレベルにすることで、円筒型ウエハ収納容器11に付着した薬液を確実に水洗でき、作業者への薬品付着リスクと円筒型ウエハ収納容器11の水洗コストを低減できる。なお、水位Lを高さLBSと同じとすることもできる。
【0044】
<カートリッジフィルター>
図14は、図9および図10を用いて説明した半導体装置の製造装置1000に用いるカートリッジフィルター56の構成を説明する概念図である。図14に示すように、カートリッジフィルター56は、内部が空洞になったカートリッジフィルター外壁91に組み込まれたPTFE(polytetrafluoroethylene)フィルター92を備えており、PTFEフィルター92は、内部が空洞となった縦長の構造になっている。空洞には供給口95を介して外部から処理液が供給される構成となっている。空洞内に侵入した処理液は、矢印で示す処理液の流れ93のようにPTFEフィルター92を通過して濾過され、カートリッジフィルター外壁91の側面を伝って供給口95とは反対側の排出口96を介して外部に排出される。
【0045】
図15は、PTFEフィルター92の構造を模式的に示す図である。図15に示すように、PTFEフィルター92は、直径500nm未満の孔が空いたフィルム状の素材921を何層も重ねた構造になっており、直径500nm以上の粒子異物94が通過できない構造になっている。
【0046】
<実施の形態2>
本開示に係る半導体装置の製造装置の実施の形態2について、図16図32を用いて説明する。図16は、実施の形態2の半導体装置の製造装置に使用される誘導モーターステージ101を示す斜視図である。
【0047】
<誘導モーターステージ>
図16に示されるように誘導モーターステージ101は、3本の脚部103を有する誘導モーターステージボディー111の中央部に円盤フィルター112が設けられ、円盤フィルター112によって処理液が濾過される構成となっている。
【0048】
図17は、図16に示すY-Y線での矢示方向断面図であり、図18は、図16に示すZ-Z線での矢示方向断面図である。
【0049】
図17および図18に示すように、誘導モーターステージ101は、フッ素樹脂で形成された誘導モーターステージボディー111に、異物を濾過するための円盤フィルター112が搭載され、円盤フィルター112の裏面側には処理液をステージ下部に流すためのフッ素樹脂で形成されたファン113が設けられている。ファン113は、ファン113を回転させるためのかご型回転子114に収納され、かご型回転子114の外周には、フッ素樹脂で形成された複数のボール115が配置され、かご型回転子114を面内回転させる際のベアリングとして機能する。
【0050】
図17に示すように、誘導モーターステージボディー111の内部には、かご型回転子114を回転させるための三相コイル116、三相コイル116の電源となるバッテリー118、バッテリー118を充電するための受電コイル117およびバッテリー118に充電された直流電力を三相電力に変換するインバーター回路119を備えている。
【0051】
また、図18に示すように、誘導モーターステージボディー111の内部には、受電コイル117で受電した交流電力を直流電力に変換する整流回路110も備えている。
【0052】
三相コイル116、受電コイル117、バッテリー118、インバーター回路119、整流回路110および配線102は、誘導モーターステージボディー111の中に完全に埋め込まれており、処理液と接触しない構造になっている。
【0053】
三相コイル116と、かご型回転子114によって誘導モーターが構成され、ブラシレスでファン113を回転させることが可能となる。また、誘導用の三相コイル116を、フッ素樹脂で形成された誘導モーターステージボディー111内に埋め込んだ構造にすることによって、誘導モーターを処理液中で稼働させることが可能になる。
【0054】
また、かご型回転子114の外周にボール115を埋め込むことで、ファン113を支えながら回転させるベアリング構造にしており、これによってファン113に回転軸が不要となる。
【0055】
充電式のバッテリー118を受電コイル117を介して非接触充電で充電する構造であり、バッテリー118の電力が尽きた場合は、誘導モーターステージ101を充電装置に搭載して充電することになる。なお、充電装置に関しては後に説明する。
【0056】
図17および図18に示すE-E線、F-F線およびG-G線での水平方向での矢示方向断面図を、それぞれ図19図20および図21に示す。
【0057】
図19に示すように円盤フィルター112は、円筒状の円盤フィルター外壁151と、円盤フィルター外壁151に挿入されるPTFEフィルター152とを有し、円盤フィルター外壁151ごと誘導モーターステージボディー111の先端の円筒部に挿入されている。
【0058】
図20に示すように3つの三相コイル116は、3本の脚部103が設けられた位置にそれぞれ対応して誘導モーターステージボディー111内に埋め込まれている。3つの三相コイル116は、ファン113側に入力端子In、InおよびInを有している。
【0059】
ファン113は、かご型回転子114の内側に配置されている。なお、ファン113およびかご型回転子114の構造については後にさらに説明する。
【0060】
図21に示すように受電コイル117はリング状に設けられ、配線102を介して整流回路110に電気的に接続され、整流回路110は配線102を介してバッテリー118に電気的に接続されている。バッテリー118どうしは配線102を介して互いに接続され、バッテリー118は配線102を介してインバーター回路119に電気的に接続され、インバーター回路119で三相交流電力に変換される。インバーター回路119の三相出力は、配線102を介して受電コイル117の内周側に設けられた出力端子Out、OutおよびOutに接続されている。出力端子Out、OutおよびOutは、図20における3つの三相コイル116の入力端子In、InおよびInに電気的に接続される。
【0061】
図22は、誘導モーターステージ101に円筒型ウエハ収納容器11を取り付けた状態を示す斜視図であり、図22のZ-Z線での矢示方向断面図を図23に示す。図23に示されるように、円筒型ウエハ収納容器11は、誘導モーターステージボディー111の先端の円筒部に被せるように搭載され、円筒型ウエハ収納容器11の底面部11bの開口部11cが、円盤フィルター112の上方に位置している。
【0062】
円筒型ウエハ収納容器11を誘導モーターステージ101に搭載した状態で処理液を満たしたウェット処理槽に沈める。この際に、誘導モーターステージ101のファン113を回転させた状態でウェット処理槽に沈めることで、円筒型ウエハ収納容器11のスリット12から流入した処理液が、ウエハ処理に使用されて使用済み処理液となった後、ファン113の回転によって円盤フィルター112を通過して濾過され、濾過済み処理液としてステージ下部から排出される。排出された濾過済み処理液はウェット処理槽内を循環し、再びスリット12から流入する。
【0063】
ウェット処理槽は、円筒型ウエハ収納容器11を搭載した誘導モーターステージ101を処理液に沈めることができる容積を有し、処理液を排出する開閉可能な排出口を備えた従来型ウェット処理槽を使用することができ、処理液を循環させるようなポンプを設ける必要はない。ウエハ処理が終われば、排出口を開いて処理液を排出し、ウエハ処理を開始する際には、排出口を閉じて処理液をウェット処理槽の開口部から注げばよい。
【0064】
このように、実施の形態2の半導体装置の製造装置は、図12に示した従来型ウェット処理槽61と、円筒型ウエハ収納容器11を搭載した誘導モーターステージ101とで構成することができ、製造装置の構造を簡略化できる。
【0065】
<円盤フィルター>
図24は、誘導モーターステージ101に搭載される円盤フィルター112の構造を説明する概念図である。円盤フィルター112は、円筒状の円盤フィルター外壁151と、円盤フィルター外壁151内に挿入される円盤状のPTFEフィルター152を備えており、PTFEフィルター152の密閉性を高めるために、円盤フィルター外壁151の内側の直径は、PTFEフィルター152の直径よりも小さめに設計されている。
【0066】
<充電装置および充電方法>
次に、図25図27を用いて、誘導モーターステージ101の充電装置と充電方法について説明する。図25に示されるように、誘導モーターステージ101はバッテリー118の充電のために充電装置160に搭載される。充電装置160は、充電装置ボディー161と、送電コイル162を備えている。充電装置ボディー161は、円盤型となっており、送電コイル162は、誘導モーターステージ101の搭載面側に、誘導モーターステージ101側の受電コイル117と対応するように設けられている。誘導モーターステージ101を充電装置160に搭載すると、送電コイル162と受電コイル117とが近接することになる。
【0067】
図25におけるH-H線およびI-I線での矢示方向断面図を、それぞれ図26および図27に示す。図26に示されるように、送電コイル162はリング状に設けられている。
【0068】
誘導モーターステージ101の搭載面とは反対側の裏面の外周には、図27に示されるように、リング状の脚部163が設けられている。また、脚部163で囲まれた裏面の中央部には凸部164が設けられ、充電装置160の取り付け、取り外しの際に手で掴む部分となっている。
【0069】
送電コイル162は、商用電力である交流100Vを電源とし、バッテリー118はリチウムイオンバッテリーを使用することができる。リチウムイオンバッテリーを充電する際の電圧は一般的に4.2Vとされており、送電コイル162と受電コイル117との巻線比を24:1程度とすることで、受電コイル117に、4.2V程度の交流電力を発生させる。発生した交流電力は、整流回路110に入力され、直流電力に変換されてバッテリー118に充電される。
【0070】
送電コイル162から受電コイル117への送電は、電磁誘導により行われ、非接触充電となるので、充電端子を設けることが困難な誘導モーターステージ101の充電に適している。
【0071】
<ファンおよびかご型回転子>
次に、図28図30を用いて、ファン113およびかご型回転子114の構造を説明する。図28は、図20に示した水平方向の断面図における、かご型回転子114の構造を示す平面図である。図28に示されるようにかご型回転子114は、鉄かご202がフッ素樹脂で被覆された構造であり、フッ素樹脂で形成されたフッ素樹脂部201の底面には、ファン113の羽の形状と枚数に合わせた複数の開口部203が設けられている。処理液はかご型回転子114の上部から流入し開口部203から排出される。ファン113は、この底面に取り付けられ、かご型回転子114の回転に合わせて回転する。なお、図28は断面図であるので鉄かご202が露出しているが、鉄かご202は全体がフッ素樹脂で覆われ、処理液と接触する部分は存在しない。また、鉄かご202を示したが、かご型回転子114を構成するかごの材質は鉄に限定されず、導電体であれば、銅、アルミニウムなども使用できる。
【0072】
図29は、ファン113の平面図と側面図を示しているが、羽1131の形状および枚数はこれに限定されるものではない。
【0073】
図30は、鉄かご202の平面図と側面図を示している。鉄かご202は、2つの短絡環2021と複数の二次導体2022とで構成される。二次導体2022は誘導電流を流す棒状の導体であり、2つの短絡環2021は、複数の二次導体2022の両端面をそれぞれ短絡するリング状の導体である。
【0074】
誘導用の三相コイル116により、複数の二次導体2022に流れる誘導電流の向きを変えることでかご型回転子114を回転させることができ、かご型回転子114の回転と共にファン113が回転する。
【0075】
<インバーター回路>
次に、図31を用いて、誘導モーターステージボディー111の内部に搭載されるインバーター回路119について説明する。インバーター回路119は、図31に示すような一般的な三相インバーター回路で構成される。図31に示されるように、三相インバーター回路は、直流電源であるバッテリーBTのプラス端子に接続された電力線Pと、マイナス端子に接続された電力線Nとの間に直列にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)T1およびT2が接続され、IGBTT1およびT2には、それぞれダイオードD1およびD2が逆並列に接続されている。IGBTT1およびT2の接続ノードは出力ノードとなって、一相分の交流電力を出力する。また、電力線Pと電力線Nとの間には、直列にIGBTT11およびT12が接続され、IGBTT11およびT12には、それぞれダイオードD11およびD12が逆並列に接続されている。IGBTT11およびT12の接続ノードは出力ノードとなって、一相分の交流電力を出力する。また、電力線Pと電力線Nとの間には、直列にIGBTT21およびT22が接続され、IGBTT21およびT22には、それぞれダイオードD21およびD22が逆並列に接続されている。IGBT211およびT22の接続ノードは出力ノードとなって、一相分の交流電力を出力する。
【0076】
三相インバーター回路の三相出力は、モーターMTに入力される。バッテリーBTおよびモーターMTが、それぞれ誘導モーターステージボディー111の内部に搭載されるバッテリー118および三相コイル116に対応する。なお、図31に示した三相インバーター回路は一例であり、これに限定されるものではない。
【0077】
<充電回路>
次に、図32を用いて、充電装置160に誘導モーターステージ101を搭載することで構成される充電回路について説明する。図32は、一般的な充電回路を示しており、交流電源PWが、変圧器TRの一次側コイルに接続され、変圧器TRの二次側コイルには整流回路RCが接続されている。整流回路RCは、ダイオードD1、D2、D3およびD4で構成される全波整流回路であり、ダイオードD1とD2の接続ノード、およびダイオードD3とD4の接続ノードは変圧器TRの二次側コイルに接続されている。ダイオードD1とD4の接続ノード、およびダイオードD2とD3の接続ノードには、バッテリーBTの正および負の電極に接続されている。
【0078】
交流電源PWが、商用電力である交流100Vの電源であり、変圧器TRの一次側コイルが、充電装置160の送電コイル162に対応し、変圧器TRの二次側コイルが、誘導モーターステージ101の受電コイル117に対応し、整流回路RCおよびバッテリーBTが、それぞれ誘導モーターステージ101の整流回路110およびバッテリー118に対応する。
【0079】
<実施の形態3>
本開示に係る実施の形態1において、図11および図12を用いて、半導体装置の製造装置1000を用いた処理液によるウエハ処理の全体の流れを説明したが、本開示に係る実施の形態3においては、図33図36を用いてウエハ自動搬送システム171について説明する。
【0080】
図33は、ウエハ31を自動搬送する、ウエハ自動搬送システム171の全体構成を示す概略図である。ウエハ自動搬送システム171は、従来型ウエハ収納容器17が配置される従来型ウエハ収納容器エリア172、円筒型ウエハ収納容器11が配置される円筒型ウエハ収納容器エリア173、スピン乾燥器74が配置されるスピン乾燥エリア174およびオリフラ調整エリア175を有し、ウエハ31は各エリア間を自動搬送される。
【0081】
ウエハ31は、各エリア間に設けられた図示されない搬送装置により、1つのエリアからから別の2つのエリアへの搬送が選択可能なため、例えば、従来型ウエハ収納容器71から円筒型ウエハ収納容器11へのウエハ31の入れ替えだけを行うこともできれば、円筒型ウエハ収納容器11から取り出したウエハ31をスピン乾燥エリア174で乾燥してから、従来型ウエハ収納容器71に収納することも可能である。
【0082】
このように、ウエハ31の移し替えを、エアピンセットなどを用いて人間の手で実施する場合、吸着面を間違う、ウエハ31の落下、ウエハ収納時の擦れによる不良などの人的リスクが高まるが、ウエハ自動搬送システム171を用いることで、これらのリスクを軽減できる。
【0083】
図34は、円筒型ウエハ収納容器11から従来型ウエハ収納容器71へウエハ31を自動で移し替えるカセット交換を説明する図であり、図33に示したウエハ自動搬送システム171のうち、従来型ウエハ収納容器エリア172、オリフラ調整エリア175および円筒型ウエハ収納容器エリア173を断面図で示している。ウエハ自動搬送システム171は、基盤となるウエハ自動搬送システムボディー181上に構成される。なお、ウエハ31の搬送装置は便宜的に省略しているが、一般的なウエハの搬送装置を使用することができる。
【0084】
従来型ウエハ収納容器71から取り出したウエハ31のオリフラの向きをオリフラ合わせステージ182で調整した後、円筒型ウエハ収納容器11に収納する。円筒型ウエハ収納容器11は、回転容器183内に収納されている。回転容器183は、回転容器183を可動させる可動部186に取り付けられている。
【0085】
図34におけるJ-J線での矢示方向断面図を図35に示す。図35に示すように、円筒型ウエハ収納容器11の容器本体11aの側壁の上部から突出する凸部11dが、回転容器183の側壁に設けられた凹部に係合する構成となっており、これによって、回転容器183に円筒型ウエハ収納容器11を一定の角度で設置することが可能となる。さらに、円筒型ウエハ収納容器11が、回転容器183内で、想定外に滑ることを防止できる。
【0086】
回転容器183の底部からは回転軸184が突出しており、回転軸184は、可動部186の底面内に設けたモータ187に接続され、モータ187の回転により回転容器183を一定角度で回転させることができる。
【0087】
円筒型ウエハ収納容器11にウエハ31が1枚収納されるごとに、回転軸184が一定角度回転し、次のウエハ31が収納可能になる。回転軸184の回転角度は、円筒型ウエハ収納容器11のウエハ収納容量によって異なる。例として、図4に示したように、円筒型ウエハ収納容器11のウエハ収納枚数が8枚の場合は、回転軸184は45℃ずつ合計7回、回転させることで、8組のウエハホルダー13の組に8枚のウエハ31を保持させることができる。
【0088】
ウエハ31の収納に際して、回転容器183を1組のウエハホルダー13どうしの配置角度に相当する一定角度で回転させることで、ウエハの搬送装置の搬送アームの角度を水平にしたまま、連続でウエハ搬送が可能となるので、搬送効率が高くなる。
【0089】
図36は、図34を用いて説明したカセット交換において、円筒型ウエハ収納容器11を回転容器183内に収容する際に回転容器183を可動させる動作を説明する図である。図36においては、回転容器183を可動させる動作を説明するために、回転容器183がウエハ自動搬送システムボディー181に対して水平になった状態と、垂直になった状態を同時に示している。このような動作は、可動部186の底部下部とウエハ自動搬送システムボディー181とに渡って設けられた可動式固定アーム185が、可動部186とウエハ自動搬送システムボディー181とを繋ぐ角度を90度変えることで可能となる。
【0090】
円筒型ウエハ収納容器11を回転容器183に収納する際には、回転容器183がウエハ自動搬送システムボディー181に対して垂直になるように可動式固定アーム185の角度を変えることで、回転容器183の上部から円筒型ウエハ収納容器11を差し込むことができる。円筒型ウエハ収納容器11を回転容器183から取り外す場合も同様である。
【0091】
このように、円筒型ウエハ収納容器11を上部から取り付け、取り外しできる構造にすることによって、作業者が円筒型ウエハ収納容器11を認識しやすくなり、ウエハ31がウエハホルダー13から落下するリスクを低減できる。なお、円筒型ウエハ収納容器11にウエハ31を収納する際には、回転容器183がウエハ自動搬送システムボディー181に対して水平になるように、可動式固定アーム185の角度を変えることは言うまでもない。
【0092】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0093】
以上説明した本開示を付記としてまとめて記載する。
【0094】
(付記1)
円筒型ウエハ収納容器を用いてウエハのウェット処理を行う半導体装置の製造装置であって、
前記円筒型ウエハ収納容器は、
上面が開口され、側壁に複数のスリットを有し、内部に前記ウエハを搭載する底面部を有し、
前記底面部の前記複数のスリットに対応した位置に、前記ウエハを保持する複数のウエハホルダーが設けられ、
前記複数のウエハホルダーは、
2つ1組で前記ウエハを1枚保持し、
1組をなすウエハホルダーどうしが、前記円筒型ウエハ収納容器の前記側壁に沿って、互いに一定角度傾くように配置され、
前記ウエハは、
裏面が前記底面部に設けられた開口部を向き、表面が前記複数のスリットのうち対応するスリットを向くように前記1組をなすウエハホルダーに収納される、半導体装置の製造装置。
【0095】
(付記2)
前記円筒型ウエハ収納容器は、
前記ウェット処理において、ウェット処理槽内の処理液中に配置され、
前記複数のスリットから流入して前記ウエハを処理した前記処理液を使用済み処理液として前記ウェット処理槽の外に排出し、前記使用済み処理液をフィルターで濾過して前記ウェット処理槽に戻す循環システムを備える、付記1に記載の半導体装置の製造装置。
【0096】
(付記3)
前記円筒型ウエハ収納容器を搭載する誘導モーターステージを備え、
前記誘導モーターステージに搭載された前記円筒型ウエハ収納容器は、
前記ウェット処理において、ウェット処理槽内の処理液中に配置され、
前記複数のスリットから流入して前記ウエハを処理した前記処理液を使用済み処理液として前記底面部の前記開口部に向けて排出し、
前記誘導モーターステージは、
前記円筒型ウエハ収納容器の前記開口部に対向する位置に設けられ、異物を濾過するフィルターと、
前記フィルターの前記開口部とは反対側に設けられたファンと、
前記ファンを回転させる誘導モーターと、を有し、
前記ファンは、
前記誘導モーターにより回転することで、前記使用済み処理液を前記フィルターを通して濾過して濾過済み処理液とし、前記濾過済み処理液は、前記ウェット処理槽内を循環して前記複数のスリットから流入する、付記1に記載の半導体装置の製造装置。
【0097】
(付記4)
前記複数のウエハホルダーは、
前記複数のスリットから流入した前記処理液が前記1組をなすウエハホルダーに収納された前記ウエハの前記表面を処理した後、前記1組をなすウエハホルダーに隣り合う他の1組のウエハホルダーに収納された前記ウエハの前記裏面に当たって前記開口部に流入するように配置される、付記2または付記3に記載の半導体装置の製造装置。
【0098】
(付記5)
前記複数のウエハホルダーは、
それぞれが長手方向とは直交する断面形状がコの字形状であり、コの字開口部が間を開けて向かい合うように2つ1組で配置され、向かい合う前記コの字開口部の間に前記ウエハを挟み込むことで前記ウエハを保持する、付記4に記載の半導体装置の製造装置。
【0099】
(付記6)
前記誘導モーターは、
三相コイルと、
前記ファンを収納するかご型回転子と、を有し、
前記かご型回転子は、樹脂で被覆され、
前記三相コイルは、
前記かご型回転子の外周に近接するように前記誘導モーターステージ内に設けられる、付記3に記載の半導体装置の製造装置。
【0100】
(付記7)
前記誘導モーターステージは、
前記誘導モーターの電源となるバッテリーを内部に有し、
前記バッテリーは、非接触充電により充電される、付記6に記載の半導体装置の製造装置。
【0101】
(付記8)
前記ウエハを自動搬送して、前記円筒型ウエハ収納容器に収納するウエハ自動搬送システムを備える、付記1に記載の半導体装置の製造装置。
【0102】
(付記9)
前記ウエハ自動搬送システムは、
前記円筒型ウエハ収納容器を収納する回転容器を有し、
前記回転容器は、
前記円筒型ウエハ収納容器を着脱する際は、前記円筒型ウエハ収納容器の前記側壁が、前記ウエハ自動搬送システムの基盤面に対して垂直となるように可動し、
前記ウエハを前記円筒型ウエハ収納容器に収納する際は、前記側壁が前記基盤面に対して水平となるように可動する、付記8に記載の半導体装置の製造装置。
【0103】
(付記10)
前記回転容器は、
前記ウエハを前記円筒型ウエハ収納容器に収納する際は、前記ウエハを収納するごとに、一定角度回転する、付記9に記載の半導体装置の製造装置。
【0104】
(付記11)
前記回転容器の前記一定角度は、
前記1組をなすウエハホルダーどうしの配置角度に相当する、付記10に記載の半導体装置の製造装置。
【符号の説明】
【0105】
11 円筒型ウエハ収納容器、11b 底面部、11c 開口部、13 ウエハホルダー、31 ウエハ、51,61 ウェット処理槽、70 処理液、56 カートリッジフィルター、100 循環システム、101 誘導モーターステージ、112 円盤フィルター、113 ファン、114 かご型回転子、116 三相コイル、118 バッテリー、183 回転容器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36