(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166584
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電動圧縮機用モータ、及び、それを備えた電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20241122BHJP
H02K 1/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H02K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082771
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】武藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】篠原 昂佳
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
【Fターム(参考)】
5H601AA01
5H601AA08
5H601AA09
5H601BB11
5H601CC01
5H601DD01
5H601DD11
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD17
5H601JJ06
5H604AA05
5H604AA08
5H604CC01
5H604CC05
5H604DB01
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】振動によるインシュレータとコアの衝突を回避し、インシュレータへの応力を低減することができる電動圧縮機用モータを提供する。
【解決手段】電動圧縮機用モータは、ステータ21のコア22と、このコア22のティース27の外面に装着されたインシュレータ33と、このインシュレータ33の外面に巻装された巻線23を備えたものであって、ティース27の外面に形成された凹部34と、インシュレータ33の内面に形成された凸部41を備え、このインシュレータ33の凸部41がティース27の凹部34に嵌合されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータのコアと、該コアのティースの外面に装着されたインシュレータと、該インシュレータの外面に巻装された巻線を備えた電動圧縮機用モータにおいて、
前記ティースの外面に形成された凹部と、前記インシュレータの内面に形成された凸部を備え、該インシュレータの凸部が前記ティースの凹部に嵌合されていることを特徴とする電動圧縮機用モータ。
【請求項2】
前記インシュレータは、硬質樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機用モータ。
【請求項3】
前記凹部は、前記ティースの一側外面における中央部のみに形成され、前記凸部は、前記凹部に対応する前記インシュレータの一側内面における中央部のみに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機用モータ。
【請求項4】
前記凹部は、前記ティースの外面に複数形成され、前記凸部は、前記各凹部にそれぞれ対応する位置における前記インシュレータの外面に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機用モータ。
【請求項5】
前記インシュレータを前記ティースに装着する際に、最初に前記凹部に進入する側の前記凸部の角部には傾斜面が形成され、当該凸部は先細り形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機用モータ。
【請求項6】
前記ステータのコアは、隣接する複数の前記ティースを有するインナーコアと、該インナーコアの外側に結合して磁路を形成するアウターコアから構成され、前記巻線が巻装された前記インシュレータが、前記ステータの径方向における外側から前記ティースに装着されることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機用モータ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の電動圧縮機用モータを備え、該電動圧縮機用モータと圧縮要素を容器内に収納して成ることを特徴とする電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータのコアに装着されたインシュレータに巻線が巻装されている電動圧縮機用モータ、及び、それを備えた電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より電動圧縮機の圧縮要素を駆動するためのモータは、ステータとこのステータの内側で回転するロータにより構成されている。このうちステータは、コアに形成された複数のティースに、巻線が施されたインシュレータがそれぞれ装着される構成とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、
図22に隣接する複数のティース101を有するインナーコア102と、その外側に結合して磁路を構成するアウターコア(図示せず)から成るコアと、ティース101にステータ100の径方向における外側から装着されるインシュレータ103を備えた従来のステータ100(インナーコア102とインシュレータ103のみの側面図)を示し、
図23は
図22の円C部分の拡大図を示す。
【0005】
インシュレータ103をティース101に装着する際、ティース101はインシュレータ103に形成された装着孔103Aに差し込まれるものであるが、インシュレータ103は通常絶縁性の硬質合成樹脂により成形されるので、ティース101がインシュレータ103の装着孔103Aに圧入され、ティース101の外面が装着孔103Aの内面に圧接すると、インシュレータ103が内側から拡開されるかたちとなって割れが発生する危険性がある。そのため、インシュレータ103とティース101の間には、
図23に拡大して示すように、ステータ100の軸方向に隙間X(クリアランス)が通常確保されるが、この隙間Xがあるためにインシュレータ103は軸方向に移動可能となっていた。
【0006】
そのため、振動等を受けた場合、インシュレータ103とコア(インナーコア102)が衝突してインシュレータ103に応力が発生し、最悪の場合破損してしまう危険性があった。前記特許文献では、構造が異なるものの、インシュレータとコアを、孔に注入した接着剤で固定することで、インシュレータの径方向への移動を抑制するようにしていたが、係る方策では接着剤の注入が必要になる等、組立工数が増加する問題があると共に、接着剤による移動抑制効果には限界があり、改善が求められていた。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、振動によるインシュレータとコアの衝突を回避し、インシュレータへの応力を低減することができる電動圧縮機用モータ、及び、それを備えた電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の電動圧縮機用モータは、ステータのコアと、このコアのティースの外面に装着されたインシュレータと、このインシュレータの外面に巻装された巻線を備えたものであって、ティースの外面に形成された凹部と、インシュレータの内面に形成された凸部を備え、このインシュレータの凸部がティースの凹部に嵌合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の電動圧縮機用モータは、上記発明においてインシュレータは、硬質樹脂により構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の電動圧縮機用モータは、請求項1の発明において凹部は、ティースの一側外面における中央部のみに形成され、凸部は、凹部に対応するインシュレータの一側内面における中央部のみに形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の電動圧縮機用モータは、請求項1の発明において凹部は、ティースの外面に複数形成され、凸部は、各凹部にそれぞれ対応する位置におけるインシュレータの外面に複数形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の電動圧縮機用モータは、請求項1の発明においてインシュレータをティースに装着する際に、最初に凹部に進入する側の凸部の角部には傾斜面が形成され、当該凸部は先細り形状とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の電動圧縮機用モータは、請求項1の発明においてステータのコアは、隣接する複数のティースを有するインナーコアと、このインナーコアの外側に結合して磁路を形成するアウターコアから構成され、巻線が巻装されたインシュレータが、ステータの径方向における外側からティースに装着されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の電動圧縮機は、上記各発明の電動圧縮機用モータを備え、この電動圧縮機用モータと圧縮要素を容器内に収納して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステータのコアと、このコアのティースの外面に装着されたインシュレータと、このインシュレータの外面に巻装された巻線を備えた電動圧縮機用モータにおいて、ティースの外面に形成された凹部と、インシュレータの内面に形成された凸部を備え、このインシュレータの凸部がティースの凹部に嵌合されるようにしたので、インシュレータの凸部とティースの凹部との嵌め合わせにより、インシュレータはコアのティースに強固に保持されることになる。
【0016】
これにより、インシュレータの軸方向への移動を抑制し、振動によるインシュレータとコアの衝突を回避して、インシュレータへの応力を著しく低減し、インシュレータの破損を効果的に解消することができるようになる。また、インシュレータの凸部をティースの凹部に嵌め合わせるという構造のため、組立作業性が損なわれることもない。
【0017】
この場合、従来の如くインシュレータがティースにより拡開されるものでは無く、インシュレータの凸部がティースの凹部内面から圧縮方向の圧力を受けるかたちとなるので、請求項2の発明の如く硬質樹脂により構成されたインシュレータが割れることも無くなる。また、凸部が形成されていることで、インシュレータ自体の剛性も向上させることができ、これによってもインシュレータの破損を抑制する効果がある。
【0018】
また、請求項3の発明の如く凹部を、ティースの一側外面における中央部のみに形成し、凸部を、凹部に対応するインシュレータの一側内面における中央部のみに形成するようにすれば、簡素な形状で、組立作業性を損なうこと無く、インシュレータの軸方向への移動を抑制することができるようになる。また、凸部によりインシュレータの側壁の剛性を高めることができるようになる。
【0019】
逆に、請求項4の発明の如く凹部を、ティースの外面に複数形成し、凸部を、各凹部にそれぞれ対応する位置におけるインシュレータの外面に複数形成するようにすれば、インシュレータをティースにより強固に保持させ、インシュレータの軸方向への移動をより効果的に抑制することが可能となる。
【0020】
この場合、請求項5の発明の如くインシュレータをティースに装着する際に、最初に凹部に進入する側の凸部の角部に傾斜面を形成し、当該凸部を先細り形状とすることで、ティースの凹部内にインシュレータの凸部を嵌め込み易くなり、組立作業性を一段と向上させることができるようになる。
【0021】
そして、以上の発明は、請求項6の発明の如くステータのコアが、隣接する複数のティースを有するインナーコアと、このインナーコアの外側に結合して磁路を形成するアウターコアから構成され、巻線が巻装されたインシュレータが、ステータの径方向における外側からティースに装着される電動圧縮機用モータにおいて極めて有効なものとなる。
【0022】
また、請求項7の発明の如く、請求項1乃至請求項6の発明の電動圧縮機用モータと、圧縮要素を容器内に収納して電動圧縮機を構成することにより、性能が安定した、故障が少ない電動圧縮機とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の電動圧縮機用モータを搭載した一実施形態の電動圧縮機の縦断側面図である。
【
図2】
図1の電動圧縮機用モータを構成するステータの分解斜視図である(実施例1)。
【
図3】
図2のステータのインナーコアの斜視図である。
【
図5】
図2のステータのインシュレータの斜視図である。
【
図6】
図2のインナーコアにインシュレータを装着した状態の側面図である。
【
図9】本願の発明構造と従来構造におけるインシュレータへの最大発生応力を説明する図である。
【
図10】本発明の他の実施例のインナーコアのティース部分の斜視図である(実施例2)。
【
図11】
図10の実施例の場合のインシュレータの斜視図である。
【
図14】本発明のもう一つの他の実施例のインナーコアのティース部分の斜視図である(実施例3)。
【
図15】
図14の実施例の場合のインシュレータの斜視図である。
【
図18】本発明の更にもう一つの他の実施例のインナーコアのティース部分の斜視図である(実施例4)。
【
図19】
図18の実施例の場合のインシュレータの斜視図である。
【
図22】従来の電動圧縮機用モータのステータの側面図である(インナーコアとインシュレータのみ)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0025】
図1は本発明の電動圧縮機用モータ4を搭載した実施例の電動圧縮機1の縦断側面図、
図2は本発明の一実施例の電動圧縮機用モータ4のステータ21の分解斜視図、
図3はインナーコア26の斜視図、
図4は同じくインナーコア26の側面図、
図5はインシュレータ33の斜視図、
図6はインナーコア26にインシュレータ33を装着した状態の側面図、
図7は
図6の円A部分の拡大図、
図8は
図7のB-B線断面図をそれぞれ示している。
【0026】
図1において、実施例の電動圧縮機1は、容器2内に圧縮要素の実施例としてのスクロール圧縮要素3と、本発明の電動圧縮機用モータ4を収納してなるスクロール式電動圧縮機である。実施例のスクロール圧縮要素3は、容器2に固定された固定スクロール6と、電動圧縮機用モータ4の回転軸8により、固定スクロール6に対して回転せずに公転運動される可動スクロール7とから成り、固定スクロール6に形成された渦巻き状のラップ11と可動スクロール7に形成された渦巻き状のラップ12とが噛み合うように配置されている。
【0027】
容器2内には図示しない冷媒導入通路から冷媒が導入され、両ラップ11、12間に構成される圧縮室に外側から吸い込まれる。この圧縮室は可動スクロール7の公転運動により中心に向けて狭くなるため、吸い込まれた冷媒は圧縮され、中心部から吐出室14、図示しない冷媒吐出通路を経て吐出されることになる。また、容器2内は低圧となるため、電動圧縮機用モータ4の周囲にも冷媒が通過することになり、この冷媒で電動圧縮機用モータ4は冷却されるかたちとなる。
【0028】
次に、本発明の電動圧縮機用モータ4について説明する。実施例の電動圧縮機用モータ4は永久磁石同期モータであり、コア22と巻線23から成るステータ21と、回転軸8に固定されてステータ21の内側で回転する磁石内蔵型のロータ24(複数枚の電磁鋼板を積層して成る)とから構成されている。
【0029】
ステータ21のコア22は、複数(極数に応じた数。実施例では12個)のティース27を有するインナーコア26(
図3、
図4に拡大して示す)と、アウターコア28とが分離された二分割構成とされており、インナーコア26の隣接するティース27、27の各先端部27A、27Aは相互に連続した構成とされている(
図3)。これにより、インナーコア26の各ティース27間のスロット31は、外側(ステータ21の径方向における外側)に向けて開放し、内側(ステータ21の径方向における中心側)が閉じた形状とされている。
【0030】
係るインナーコア26及びアウターコア28は複数枚の電磁鋼板を積層し、結合して構成されている。また、アウターコア28の内側には、インナーコア26のティース27と同数の嵌合凹所32が形成されている(
図2)。
【0031】
また、インナーコア26の各ティース27の一側(向かって右側)外面における中央部(この実施例では中央部のみ)には、凹部34が形成されている。この凹部34は、外側(ステータ21の径方向における外側)から内側(ステータ21の径方向における中心側)に向けて形成されており、外側の端部、及び、隣接するティース27側が開放した溝状を呈している(
図3、
図4)。
【0032】
一方、巻線23は絶縁体から成るインシュレータ(ボビン)33に予め巻装されており、このインシュレータ33の内側にはインナーコア26のティース27が差し込まれる装着孔36が形成されている。また、インシュレータ33は、実施例ではPET(ポリエチレンテレフタレート)、又は、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の硬質合成樹脂の射出成形により構成されている。
【0033】
また、インシュレータ33は、内側に前記装着孔36を有してその外面に巻線23が施される(巻装される)。尚、
図5では巻線23は示していない)巻装部37と、この巻装部37の内側端、即ち、ステータ21の径方向において内側となる端部に位置する内側壁部38と、巻装部37の外側端、即ち、ステータ21の径方向において外側となる端部に位置する外側壁部39を有している。
【0034】
インシュレータ33の内側壁部38及び外側壁部39は、巻装部37より周囲外方に張り出して巻装部37からの巻線23の脱落を防止する形状を呈している。更に、インシュレータ33の一側(向かって右側)内面、即ち、装着孔36の一側内面における中央部には(この実施例では中央部のみ)、ティース27の凹部34に対応する位置に、凸部41が形成されている。
【0035】
実施例の場合凸部41は、外側(ステータ21の径方向における外側)から内側(ステータ21の径方向における中心側)に渡って形成されており(突条形状を呈する)、内側の角部(後述する如くインシュレータ33をティース27に装着する際に、最初に凹部34に進入する側の角部)は、
図8に示す如き傾斜面42とされている。即ち、凸部41の内側端は厚さ寸法が小さくなっている(
図8)。
【0036】
次に、係るステータ21の組立手順(製造方法)を説明する。ステータ21を組み立てる際には、先ず、電磁鋼板を積層して結合することにより、インナーコア26とアウターコア28を構成する。また、巻線23を各インシュレータ33の巻装部37の外面に巻装し、巻線23が巻装されたインシュレータ33を12個用意する。
【0037】
このように巻線23を施したインシュレータ33をインナーコア26の外側、即ち、ステータ21の径方向における外側から各ティース27に装着する。その場合、インシュレータ33の装着孔36内にインナーコア26のティース27を挿入するかたちでインシュレータ33をティース27に外側から装着するものであるが、その際、インシュレータ33の凸部41をティース27の凹部34内に外側から嵌め込む。
【0038】
尚、インシュレータ33の凸部41の厚さ寸法(ステータ21の軸方向の寸法)は、凹部34の内側に嵌合可能な値に設定されている。これにより、インシュレータ33の凸部41は、ティース27の凹部34に嵌合され、凸部41と凹部34とが接触する箇所では、両者は隙間無く嵌め合わされることになる(
図7、
図8)。
【0039】
また、前述した如くインシュレータ33をティース27に装着する際に、最初に凹部34に進入する側の角部には、
図8に示す如き傾斜面42が形成され、凸部41は先細り形状とされているので、凸部41を凹部34に容易に差し込むことができる。このようにしてインナーコア26に巻線23が施されることになる。
【0040】
次に、巻線23が施されたインナーコア26をアウターコア28内に嵌め込む。この際、インナーコア26の各ティース27の外端部がアウターコア28の各嵌合凹所32内に嵌着されることでインナーコア26とアウターコア28は一体化される。これにより、インナーコア26の外側にアウターコア28が結合され、磁路が形成される。尚、各インシュレータ33の巻線23は、所定の電気回路を構成するように配線されるものとする。
【0041】
以上のように本発明では、ステータ21のコア22と、このコア22のインナーコア26のティース27の外面に装着されたインシュレータ33と、このインシュレータ33の外面に巻装された巻線23を備えた電動圧縮機用モータ4において、ティース27の外面に形成された凹部34と、インシュレータ33の内面に形成された凸部41を備え、このインシュレータ33の凸部41がティース27の凹部34に嵌合されるようにしたので、インシュレータ33の凸部41とティース27の凹部34との嵌め合わせにより、インシュレータ33はコア22のティース27に強固に保持されることになる。
【0042】
これにより、インシュレータ33の軸方向への移動を抑制し、振動によるインシュレータ33とコア22の衝突を回避して、インシュレータ33への応力を著しく低減することができるようになる。
【0043】
図9は
図22、
図23に示した従来構造の場合の最大発生応力と、上述した本願の発明構造の場合の最大発生応力を示している。尚、
図9はインシュレータの軸方向にプラスマイナス1Gの加速度荷重を加えた場合である。この図からも明らかな如く、従来構造に比較して、本願の発明構造では最大発生応力を約89%低減させることができた。これにより、インシュレータ33の破損を効果的に解消することができるようになった。
【0044】
また、本発明ではインシュレータ33の凸部41をティース27の凹部34に嵌め合わせるという構造のため、組立作業性が損なわれることもない。この場合、従来の如くインシュレータがティースにより拡開されるものでは無く、インシュレータ33の凸部41がティース27の凹部34内面から圧縮方向の圧力を受けるかたちとなるので、実施例の如く硬質樹脂により構成されたインシュレータ33が割れることも無くなる。また、凸部41が形成されていることで、インシュレータ33自体の剛性も向上させることができ、これによってもインシュレータ33の破損を抑制する効果がある。
【0045】
また、実施例では凹部34を、ティース27の一側外面における中央部のみに形成し、凸部41を、凹部34に対応するインシュレータ33の一側内面における中央部のみに形成しているので、簡素な形状で、組立作業性を損なうこと無く、インシュレータ33の軸方向への移動を抑制することができるようになる。また、凸部41によりインシュレータの巻装部37(側壁)の剛性を高めることができるようになる。
【0046】
この場合、実施例ではインシュレータ33をティース27に装着する際に、最初に凹部34に進入する側の凸部41の角部に傾斜面42を形成し、凸部41を先細り形状としているので、ティース27の凹部34内にインシュレータ33の凸部41を嵌め込み易くなり、組立作業性を一段と向上させることができるようになる。
【0047】
そして、以上のことは実施例の如くステータ21のコア22が、隣接する複数のティース27を有するインナーコア26と、このインナーコア26の外側に結合して磁路を形成するアウターコア28から構成され、巻線23が巻装されたインシュレータ33が、ステータ21の径方向における外側からティース27に装着される電動圧縮機用モータ4において極めて有効なものとなる。
【0048】
また、実施例の如く電動圧縮機用モータ4と、スクロール圧縮要素3を容器2内に収納して電動圧縮機1を構成することにより、性能が安定した、故障が少ない電動圧縮機1とすることが可能となる。