(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166587
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】保存システム、保存方法、及び貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
A23L 3/015 20060101AFI20241122BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A23L3/015
F25D23/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082776
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】河杉 翔伍
【テーマコード(参考)】
3L345
4B021
【Fターム(参考)】
3L345AA02
3L345AA30
3L345BB01
3L345BB02
3L345BB03
3L345DD52
3L345DD55
3L345EE03
3L345EE04
3L345EE33
3L345EE34
3L345EE35
3L345EE53
3L345FF04
3L345FF18
3L345FF34
3L345GG02
3L345GG03
3L345GG04
3L345GG06
3L345KK02
3L345KK03
4B021LA26
4B021LP08
4B021LP10
4B021LT06
(57)【要約】
【課題】本開示は、保存物の品質劣化を抑制しながら保存できる保存システム、保存方法、及び貯蔵庫を提供する。
【解決手段】本開示における保存システムは、貯蔵庫と貯蔵庫に収納され保存物を保存する少なくとも一つの保存容器とで構成される保存システムであって、貯蔵庫は、貯蔵室と、貯蔵室の内部を真空にする真空化機構とを備え、保存容器は、保存容器の内側空間と外側空間との圧力差で開閉する逆止弁を備え、保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器の内側空間の空気が逆止弁を通って貯蔵室の内部へ抜け出ることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵庫と前記貯蔵庫に収納され保存物を保存する少なくとも一つの保存容器とで構成される保存システムであって、
前記貯蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室の内部を真空にする真空化機構とを備え、
前記保存容器は、前記保存容器の内側空間と外側空間との圧力差で開閉する逆止弁を備え、
前記保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、前記保存容器の内側空間の空気が前記逆止弁を通って前記貯蔵室の内部へ抜け出ることを特徴とする保存システム。
【請求項2】
前記貯蔵庫は、空気導入機構を更に備え、
前記空気導入機構は、前記貯蔵室の内部へ前記貯蔵室の外部の空気を導入するように動作することを特徴とする請求項1に記載の保存システム。
【請求項3】
前記保存物、前記保存容器、および前記貯蔵室の少なくとも一つの性状を検知する性状検知手段を更に備え、
前記性状検知手段によって検知された性状に基づいて前記真空化機構が真空化操作を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の保存システム。
【請求項4】
前記貯蔵庫は、真空度制御手段を更に備え、
前記真空度制御手段によって前記真空化機構が制御されることで真空度を任意に変更することを特徴とする請求項3に記載の保存システム。
【請求項5】
前記性状検知手段は、前記貯蔵室の内部の真空度を検知する真空度検知手段であり、
前記真空度検知手段によって検知された真空度に基づいて前記真空度制御手段が前記保存容器または前記貯蔵室の内部の真空度を制御することを特徴とする請求項4に記載の保存システム。
【請求項6】
前記性状検知手段は、温度を検知する温度検知手段であり、
前記温度検知手段によって検知された温度に基づいて前記真空化機構が真空動作を行うことを特徴とする請求項3に記載の保存システム。
【請求項7】
前記温度検知手段によって検知された前記保存物の温度が特定の温度よりも低い状態となった後に前記真空動作を行うことを特徴とする請求項6に記載の保存システム。
【請求項8】
前記性状検知手段は、湿度を検知する湿度検知手段であり、
前記湿度検知手段によって検知された湿度に基づいて前記真空化機構が真空動作を行うことを特徴とする請求項3に記載の保存システム。
【請求項9】
前記湿度検知手段によって検知された前記保存物または前記貯蔵室の湿度が特定の湿度よりも低い状態となった後に前記真空動作を行うことを特徴とする請求項8に記載の保存システム。
【請求項10】
前記逆止弁は、前記保存容器を区画する部分が開くよりも前に前記保存容器の内側空間の空気が前記逆止弁を通って前記貯蔵室の内部へ抜け出るような動作圧力で作動する構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の保存システム。
【請求項11】
前記保存容器は、前記保存容器の内部と外部との圧力差が特定の圧力差となった時に前記逆止弁の開き方の度合いが変化するような構造であることを特徴とする請求項10に記載の保存システム。
【請求項12】
貯蔵庫の貯蔵室の内部を真空にする真空化ステップと、
保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、前記保存容器の内側空間の空気が逆止弁を通って前記貯蔵室の内部へ抜け出る空気入替ステップと、
前記貯蔵室の内部へ前記貯蔵室の外部の空気を導入する空気導入ステップとを有することを特徴とする保存方法。
【請求項13】
貯蔵室と、
前記貯蔵室の内部を真空にする真空化機構とを備え、
前記貯蔵室の内部に収納される保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、前記保存容器の内側空間の空気が前記保存容器の逆止弁を通って前記貯蔵室の内部へ抜け出ることを特徴とする貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保存システム、保存方法、及び貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、冷蔵庫本体に形成された貯蔵室と、前記貯蔵室に設置され、大気圧から大気圧よりも低い気圧になる低圧室と、前記低圧室内の空気を外部に排気可能な真空ポンプと、前記低圧室の側方に設置される収納ケースと、を有し、前記真空ポンプは、前記低圧室の側方であって、かつ前記収納ケースの後方に設置される冷蔵庫を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、保存物の品質劣化を抑制しながら保存できる保存システム、保存方法、及び貯蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における保存システムは、貯蔵庫と貯蔵庫に収納され保存物を保存する少なくとも一つの保存容器とで構成される保存システムであって、貯蔵庫は、貯蔵室と、貯蔵室の内部を真空にする真空化機構とを備え、保存容器は、保存容器の内側空間と外側空間との圧力差で開閉する逆止弁を備え、保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器の内側空間の空気が逆止弁を通って貯蔵室の内部へ抜け出ることを特徴とする。
【0006】
また、本開示における保存方法は、貯蔵庫の貯蔵室の内部を真空にする真空化ステップと、保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器の内側空間の空気が逆止弁を通って貯蔵室の内部へ抜け出る空気入替ステップと、貯蔵室の内部へ貯蔵室の外部の空気を導入する空気導入ステップとを有することを特徴とする。
【0007】
また、本開示における貯蔵庫は、貯蔵室と、貯蔵室の内部を真空にする真空化機構とを備え、貯蔵室の内部に収納される保存容器の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器の内側空間の空気が保存容器の逆止弁を通って貯蔵室の内部へ抜け出ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示における保存システム、保存方法、及び貯蔵庫は、貯蔵室内部を真空化することで、貯蔵室内部に収納された保存容器の内部も真空化することができる。そのため、保存物の品質劣化を抑制しながら保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】
図2の貯蔵室における真空動作が行われる前段階の貯蔵室の横断面図
【
図5】
図2の貯蔵室における空気導入動作が行われた後段階の貯蔵室の横断面図
【
図6】実施の形態1にかかる冷蔵庫における貯蔵室を脱気する工程のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、真空ポンプなどにより貯蔵室の内部の空気を減らし、食品の劣化を防ぐ技術があった。
【0011】
しかしながら、使用者が食品を貯蔵室内に収納する際に、食品を保存容器で覆ってしまうと貯蔵室内の空気が減っていたとしても食品と保存容器または保存用袋との間に存在する空気は減らないため、食品の酸化による品質劣化を抑制できないと言う課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0012】
そこで本開示は、保存物の品質劣化を抑制しながら保存できる保存システム、保存方法、及び貯蔵庫を提供する。
【0013】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0014】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。また、以下に説明する実施の形態では説明を簡便にする都合上、冷蔵庫を例として挙げることとするが、これによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0015】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図6を用いて、実施の形態1を説明する。
【0016】
[1-1.構成]
[1-1-1.保存システムの構成]
図1は、実施の形態1にかかる保存システム100の概略図である。
図1において、保存システム100は、冷蔵庫10と、保存容器202とを備える。冷蔵庫10と保存容器202については後述する。保存システム100は、本開示における「保存システム」の一例に対応する。
【0017】
[1-1-2.冷蔵庫の構成]
図2は、実施の形態1にかかる冷蔵庫10の縦断面を示す図である。
図2において、左側が冷蔵庫10の正面側であり、右側が冷蔵庫10の背面側である。冷蔵庫10は、主に鋼板により形成された外箱1と、ABSなどの樹脂で成形された内箱2と、外箱1と内箱2との間の空間に充填発泡された断熱材(例えば、硬質発泡ウレタン)40とにより形成された断熱箱体で構成されている。
【0018】
冷蔵庫10の断熱箱体は食品などを保存する複数の保存室を備えており、それぞれの保存室の正面側開口には開閉可能な扉が配設されている。それぞれの保存室は扉の閉成により冷気が漏洩しないように密閉される。実施の形態1の冷蔵庫10においては、最上部の保存室が冷蔵室3である。冷蔵室3の直下の両側には、製氷室4と切替室5の2つの保存室が並設されている。さらに、製氷室4と切替室5の直下には冷凍室6が設けられており、冷凍室6の直下である最下部には野菜室7が設けられている。実施の形態1の冷蔵庫10における各保存室は、上記の構成を有しているが、この構成は一例であり、各保存室の配置構成は仕様などに応じて設計時に適宜変更可能である。
【0019】
冷蔵室3は、食品などの保存物を冷蔵保存するために凍らない温度、具体的な温度例としては1℃~5℃の温度帯で維持される。野菜室7は、冷蔵室3と同等もしくは若干高い温度帯、例えば2℃~7℃に維持される。冷凍室6は、冷凍保存のために冷凍温度帯、具体的な温度例としては、例えば-22℃~-15℃に設定される。切替室5は、通常は冷凍室6と同じ冷凍温度帯に維持される。
【0020】
冷蔵庫10の上部には、機械室8が設けられている。機械室8には、圧縮機9および冷凍サイクル中の水分除去を行うドライヤ等の冷凍サイクルを構成する部品などが収容されている。なお、機械室8の配設位置としては冷蔵庫10の上部に限定されるものではなく、冷凍サイクルの配設位置などに応じて適宜決定されるものであり、冷蔵庫10の下部などの他の領域に配設してもよい。
【0021】
冷蔵庫10の下側領域にある冷凍室6と野菜室7の背面側には、冷却室11が設けられている。冷却室11には、冷気を生成する冷凍サイクルの構成部品である冷却器12、および冷却器12が生成した冷気を各貯蔵室(3、4、5、6、7)に送風する冷却ファン13が設けられている。冷却器12が生成した冷気は、冷却ファン13により各貯蔵室に繋がる風路18を流れて、各貯蔵室に供給される。それぞれの貯蔵室に繋がる風路18にはダンパー19が設けられており、圧縮機9と冷却ファン13の回転数制御とダンパー19の開閉制御により、それぞれの貯蔵室が所定の温度帯に維持される。冷却室11の下部には、冷却器12やその周辺に付着する霜や氷を除霜するための除霜ヒータ14が設けられている。除霜ヒータ14の下部には、ドレンパン15、ドレンチューブ16、蒸発皿17が設けられており、除霜時などに生じる水分を蒸発させる構成を有する。
【0022】
実施の形態1の冷蔵庫10には操作部(図示せず)が備えられていてもよい。その場合、使用者が操作部において冷蔵庫10に対する真空動作の指令を行うことができる。また、操作部には異常の発生などを報知する表示部を有していてもよい。なお、冷蔵庫10においては、無線通信部を備えて無線LANネットワークに接続して、使用者の外部端末から指令を入力する構成としてもよい。また、冷蔵庫10においては音声認識部を備えて、使用者が音声による指令を入力する構成としてもよい。
【0023】
冷蔵庫10は、本開示における「貯蔵庫」の一例に対応する。
【0024】
[1-1-3.貯蔵室の構成]
次に、
図3を用いて貯蔵室201の構成を説明する。冷蔵庫10の構成の説明の中で冷蔵庫10には複数の保存室が存在すると説明したが、その一部または複数の保存室を貯蔵室201として構成してもよい。ここでは説明を簡便にするため、切替室5を貯蔵室201とした場合について説明をすることとする。
【0025】
貯蔵室201内には保存容器202が設置される。保存容器202はここでは樹脂製の薄い膜によって作成された保存袋のようなものを想定することとし、保存袋の一部には食品などの保存物203を収納するための開口部(図示せず)が存在する。その開口部を通って保存物203が使用者によって収納される。
図2には説明を簡便にする目的上、保存容器202は一つしか記載していないが貯蔵室201内に複数の保存容器202が同時に存在してもよい。保存容器202の一部には逆止弁204が設置されている。
【0026】
貯蔵室201には真空化機構205が貯蔵室201の外側から接続されており、その接続部は特に明記しないが一般には金属、または樹脂製のチューブが用いられる。真空化機構205には一般に真空ポンプが使用される。
【0027】
また貯蔵室201には空気導入機構206が設けられる。
図2では空気導入機構206は貯蔵室201の外側から接続されているが、空気導入機構206は貯蔵室201に直接設けられるような構成であってもよく、例えば貯蔵室201を開閉するような蓋のような構造であってもよい。また空気導入機構206は真空化機構205と同じものであってもよい。たとえば真空化機構205を真空ポンプのようなものを使用するとした場合、真空ポンプ内の空気の流れを反転するような逆動作をさせることで貯蔵室201内に大気を送り込むことができる。このように貯蔵室201内に大気を導入するような機構を総称して空気導入機構206と定義する。
【0028】
貯蔵室201内には保存物203、または/および保存容器202、または/および貯蔵室201内の性状を検知する性状検知手段207を設ける。ここでいう性状とは温度や湿度、真空度といったものを想定するが、これによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図しない。性状検知手段207はたとえば冷蔵庫10の各部屋の内部の温度を検知するために設けられる温度センサのようなものでもよいし、冷蔵庫10の野菜室の内部の湿度を検知するために設けられる湿度センサのようなものでもよいがこれに限定されない。またその検知方式は赤外線を用いたようなセンサでもよいし、熱抵抗センサでもよいがこれに限定されない。性状検知手段207は検知対象を最も効率よく検知できるような場所に設置されることが望ましく、例えば保存物203の温度を検知したい場合には保存物203が静置されると想定される貯蔵室201の底面部分に設置される。また例えば性状検知手段207が貯蔵室201内の真空度を検知する場合には性状検知手段207は真空化機構205の近傍であり貯蔵室201の内部に設置されるがこれに限定されない。
【0029】
貯蔵室201は、本開示における「貯蔵室」の一例に対応する。保存容器202は、本開示における「保存容器」の一例に対応する。
【0030】
[1-2.動作]
以上のように構成された冷蔵庫10について、その動作を以下説明する。
【0031】
[1-2-1.真空動作]
図4に基づいて、冷蔵庫10(貯蔵室201)の真空動作を説明する。まず、
図4には図示しないが、保存容器202には逆止弁204とは別に容器内に保存物203を入れるための開口部が存在する。使用者によって保存容器202内に保存物203が開口部から収納される。その後、保存容器202は貯蔵室201に収納され、貯蔵室201は密閉される。その後、使用者やタイマーなどによって冷蔵庫10に対して真空動作を開始せよとの指示があるまで、真空化機構205は待機する。そして、その指示があると真空化機構205は、貯蔵室201内を真空化し始める。
【0032】
このときの動作による貯蔵室201内部の変化を、
図4を用いて説明する。
図4は、保存物203を保存容器202に収納した状態で保存容器202が貯蔵室201に配置され、真空動作がされた後の状態を示している。真空動作がされる前は貯蔵室201内、保存容器202内は大気圧(1気圧)である。真空化機構205によって貯蔵室201内が真空化されると、保存容器202の内部の気圧は保存容器202の外側の気圧よりも大きくなる。この気圧差によって保存容器202に設置された逆止弁204が開口し、保存容器202内の空気は逆止弁204を通って貯蔵室201内に抜け出てくる。一定時間後にはこの操作により保存容器202内は貯蔵室201内と同じ真空度(気圧)になる。ゆえに
図4の状態では保存容器202内と貯蔵室201内の気圧は同じになっている。図示していないが保存容器202に設けられた保存物203を収納するための開口部よりも先に逆止弁204が作動するように逆止弁204の動作圧力を設定することで保存容器202内の空気は逆止弁204を通って貯蔵室201の内部へ抜け出てくる。
【0033】
[1-2-2.空気導入動作]
次に
図5に基づいて空気導入動作を説明する。
図5は、真空動作が行われた後、貯蔵室201内に空気導入動作を行った後の状態を示している。真空動作を行ったのちに、空気導入機構206を作動し、貯蔵室201内に貯蔵室201の外部から空気を入れる動作をする。ここで空気は、空気導入機構206を作動させる前の保存容器202または貯蔵室201の気圧よりも高い気圧を有する。すると貯蔵室201内は真空動作を行う前の状態よりも圧力の高い状態になる。すると保存容器202内の気圧よりも貯蔵室201内の気圧の方が高くなったことで、貯蔵室201内の空気によって保存容器202は内側に収縮し、小さくなる。真空動作を行った際の真空度が大きいほどこの時に収縮する割合は大きくなる。また空気導入動作によって貯蔵室201内に導入される空気の量が多いほど、言い換えると貯蔵室201内の圧力が高くなるほど保存容器202の収縮する割合は大きくなる。
【0034】
このとき保存容器202が複数、貯蔵室201内に収納されたような場合でも上で述べたような真空動作、空気導入動作を行うことですべての保存容器202の内部を真空化することができる。これにより使用者は保存容器202に保存物203を収納しさえすれば、あとは貯蔵室201内に保存容器202をいくつも収納するだけで冷蔵庫10が一度にまとめて保存容器202を真空化することができ、使用者の手間なく保存物203の保存状態を向上することができるようになる。
【0035】
[1-2-3.操作フローチャート]
次に先述したような真空動作、空気導入動作を行う操作の流れについて
図6を用いて説明する。
【0036】
最初に冷蔵庫10には保存容器202に保存物203が存在するかどうかという情報がインプットされる。この際、保存物203が存在すれば(ステップ601:YES)、次に性状検知手段207によって検知した保存物203の温度が指定温度以下であるかを確認する(ステップ602)。もしこの時、保存物203が指定温度以下でない場合(ステップ602:NO)は、真空動作を行わず、指定温度以下になるまで待機する。今回の例では貯蔵室201は冷蔵庫10の内部に存在するため貯蔵室201内に設置される保存容器202ならびに保存物203は時間を経るごとに温度が下がっていくことが想定される。例えば、貯蔵室201内を冷却することで保存容器202ならびに保存物203の温度を下げてもよい。これにより一定時間が経過すれば保存物203は指定温度以下になると期待される。このときたとえば保存物203の温度が60℃以下であるときに真空動作を行うようにしてもよい。その場合、保存容器202内の真空度が0.3気圧まで下がったような場合でも保存物203に含まれる水分は沸騰する温度を下回るため保存物203は沸騰せず、そのため真空ポンプの故障を防止することができる。
【0037】
その後、保存物203が指定温度以下になった場合(ステップ602:YES)、次に貯蔵室201内の湿度が指定湿度以下になっているかを性状検知手段207によって判断する(ステップ603)。このとき指定湿度以下になっていない場合は真空動作を行わず、指定湿度以下になるまで待機する。このときたとえば貯蔵室201内の湿度が50%を下回ったことを検知してから真空動作を行うようにしてもよい。保存容器202を貯蔵室201内に投入した際に冷蔵庫10の外側の空気の影響で貯蔵室201内に湿気が入り込み、また貯蔵室201内の温度が上昇したような場合を想定するとして貯蔵室201の温度が10℃、湿度が80%だとする。この状態で真空動作を行うと真空動作中に貯蔵室201の温度が下がっていき4℃程度になったとすると貯蔵室201中に含まれる湿気は結露として貯蔵室201内部に発生する。もしこのとき貯蔵室201内に発生した結露が真空動作をしている最中の真空ポンプ内に吸い込まれると真空ポンプの寿命を縮めることに
なってしまう。もし真空動作を行う前に先に述べたように貯蔵室201内の湿度が50%を下回ったことを確認してから真空動作を行えば、もし真空動作中に貯蔵室201内の温度が0℃を下回るようなことがあったとしても貯蔵室201中の空気は露点を下回らないため結露が発生せず、真空ポンプの寿命を縮めることはなくなる。例えば、空気導入機構206を制御することで貯蔵室201内の湿度を低下させてもよい。空気導入機構206そして指定湿度以下になったのちに(ステップ603:YES)真空化機構205によって真空動作を開始する(ステップ604)。
【0038】
真空動作開始後、性状検知手段207によって貯蔵室201内部の真空度を確認し、指定の真空度に到達すれば(ステップ605:YES)、真空動作を終了する(ステップ606)。このときの真空度は低ければ低いほど保存物203の周囲の空気の量を減らせるが、一方で真空度が低いほど貯蔵室201に対して貯蔵室201の外側の大気によって加わる圧力が大きくなり、貯蔵室201を区画する部分を破損する可能性が大きくなる。またそれを防ぐために貯蔵室201の構造をより強固なものにしようとすると、コストが大きくなったり貯蔵室201の容量が小さくなったりする問題がある。これにより貯蔵室201内部の到達真空度は目的の真空度に設定する必要がある場合が想定される。たとえばここでは真空度を0.3気圧と想定するとする。0.3気圧では通常の大気圧下での保存時よりも空気の量を約3分の1にすることができ、酸化などのリスクを大きく低減できる。このようにして指定の真空度に到達してから真空動作を終了することで貯蔵室201を作る際のコストや容量、保存物203の品質劣化といった課題を解決できる可能性がある。
【0039】
その後、空気導入動作を開始して貯蔵室201内に大気を導入する(ステップ607)。空気導入動作を開始してから規定時間(例えば、5分)が経過したことを確認すると(ステップ608:YES)、空気導入動作を終了する(ステップ609)ことで一連の操作を終了する。
【0040】
なお、ここでの説明では性状検知手段207が検知するものは保存物203の温度、貯蔵室201の湿度、貯蔵室201内の真空度としたがこれに限定されず他の検知された性状によって制御をおこなわれてもよい。また性状検知手段207が検知した保存物203の温度や、貯蔵室201内の湿度や真空度などの複数の検知した性状に基づいてステップを進めたが、その一部を判断に使用する場合であっても問題ない。また性状検知手段207によって検知した情報を使用せずに(例えば、時間による制御や使用者による動作制御)、真空動作、空気導入動作を行ってもよい。
【0041】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、保存システム100は、冷蔵庫10と、保存容器202とで構成される。保存容器202は冷蔵庫10に収納され保存物203を保存する。保存システム100において、冷蔵庫10は、貯蔵室201と、貯蔵室201の内部を真空にする真空化機構205とを備え、保存容器202は、保存容器202の内側空間と外側空間との圧力差で開閉する逆止弁204を備え、保存容器202の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器202の内側空間の空気が逆止弁204を通って貯蔵室201の内部へ抜け出る。
【0042】
これにより保存容器202に収納された保存物203の周囲を真空化することができ、そのため保存物203の酸化による劣化などの品質劣化を防ぐことができるようになる。
【0043】
また本実施の形態において、冷蔵庫10は空気導入機構206を備えていてもよい。空気導入機構206は、貯蔵室201の内部へ貯蔵室201の外部の空気を導入するように動作する。これによって、保存容器202に収納された保存物203の周囲を真空化した
状態で、貯蔵室201内を空気導入機構206により導入された空気の圧力にすることができる。そのため使用者は保存容器202を貯蔵室201から取り出すことができ、任意の保存室に収納することができる。
【0044】
また本実施の形態において、冷蔵庫10は、保存物203、保存容器202、貯蔵室201の少なくとも一つの性状を検知する性状検知手段207を備えていてもよい。性状検知手段207によって検知された性状に基づいて真空化機構205が真空化操作を行う。これによって、冷蔵庫10の不具合のリスクを低減できる、または保存物203の品質低下を抑制できる。
【0045】
また本実施の形態において、冷蔵庫10に真空度制御手段を設け、貯蔵室201内の真空度を任意に制御できるようにしてもよい。これによって貯蔵室201内の真空度を目的の真空度に確実にすることができ、真空度によっておこる保存物203への化学的、物理的な段階的な変化を任意の段階に制御できるようになることで保存物203の保存状態を向上することができる。
【0046】
また本実施の形態において、性状検知手段207は貯蔵室201の内部の真空度を検知する真空度検知手段であり、検知した真空度を元に真空度制御手段を行いながら真空動作を行うものであってもよい。これにより保存物203の温度にひもづいた真空動作を行うことができ、保存物203の真空化での化学的な変化を最適な温度状態で行うことができるようになる。
【0047】
また本実施の形態において、性状検知手段207は温度を検知する温度検知手段であり、検知した温度を元に温度制御を行いながら真空動作を行うものであってもよい。これにより保存物203の温度にひもづいた真空動作を行うことができ、保存物203の真空化での化学的な変化を最適な温度状態で行うことができるようになる。
【0048】
また本実施の形態において、保存物203の温度が特定の温度よりも低い状態となったのちに真空動作を行うものであってもよい。これにより確実に保存物203の温度が低い状態で真空動作を行うことができる。そのため、保存物203の突沸を防止することができ、そのため真空ポンプの寿命を縮めるリスクを低減できる。
【0049】
また本実施の形態において、性状検知手段207は湿度を検知する湿度検知手段であり、検知した湿度を元に湿度制御を行いながら真空動作を行うものであってもよい。これにより貯蔵室201またはおよび保存容器202の雰囲気の湿度状態に応じた真空動作を行うことができる。そのため雰囲気中の湿気が及ぼす課題を解決することができる。
【0050】
また本実施の形態において、保存容器202またはおよび貯蔵室201の湿度が特定の湿度よりも低い状態となったのちに真空動作を行うものであってもよい。これにより保存容器202またはおよび貯蔵室201内に含まれる空気中の水分が結露するリスクを低減することができる。そのため真空ポンプの寿命を縮めるリスクを低減できる。
【0051】
また本実施の形態において、逆止弁204は保存容器202を区画する部分が開くよりも前に逆止弁204を通って保存容器202内部の空気が貯蔵室201へ抜け出るような動作圧力で作動するようにしてもよい。これにより貯蔵室201内を真空化していった際に保存容器202内部の空気が確実に逆止弁204を通って貯蔵室201内へ抜け出ていくようになる。そのため、保存容器202を区画する部分、たとえば保存容器202に設けられた保存物203を収納するための開口部が逆止弁204よりも先に開くことを防止でき、空気導入動作を行う際に保存容器202は確実に密閉され、保存容器202内の真空が保持される。
【0052】
また本実施の形態において、保存容器202の内部と保存容器202の外部との圧力差が指定された圧力差となったときに逆止弁204が開き方の度合いが変化するような構造をとるようにしてもよい。これにより逆止弁204は指定の圧力差にたいして開きかたの度合いを変化させながら開口するようになる。そのため逆止弁204の開き具合を指定したい場合に、真空化機構205またはおよび空気導入機構206によって貯蔵室201内を目的の真空度に制御することで逆止弁204の動作を制御できるようになる。
【0053】
本実施の形態において、保存物203の保存方法は、冷蔵庫10の貯蔵室201の内部を真空にする真空化ステップと、保存容器202の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器202の内側空間の空気が逆止弁204を通って貯蔵室201の内部へ抜け出る空気入替ステップと、貯蔵室201の内部へ貯蔵室201の外部の空気を導入する空気導入ステップとを有する。これにより、上述した保存システム100と同様の効果を奏する。
【0054】
本実施の形態において、冷蔵庫10は、貯蔵室201と、貯蔵室201の内部を真空にする真空化機構205とを備え、貯蔵室201の内部に収納される保存容器202の内側空間と外側空間との圧力差によって、保存容器202の内側空間の空気が保存容器202の逆止弁204を通って貯蔵室201の内部へ抜け出る。これにより、上述した保存システム100と同様の効果を奏する。
【0055】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0056】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0057】
実施の形態1では、貯蔵庫の一例として冷蔵庫を説明した。貯蔵庫は、真空化できるように密閉された空間であればよい。したがって、貯蔵庫は、冷蔵庫に限定されない。したがって実施の形態1では家庭用冷蔵庫の貯蔵室の一部を真空化する方法を説明したが、たとえば業務用の冷蔵庫の内部で同様の方法を実施してもよい。
【0058】
図6に示す動作のステップ単位は、冷蔵庫10の動作の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、動作が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、そのステップの順番は、本開示の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0059】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、保存物を収納する保存容器の内部または保存容器を収納する貯蔵室の内部を真空化する保存システム、保存方法、及び貯蔵庫に適用可能である。具体的には、家庭用冷蔵庫、業務用冷蔵庫などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 外箱
2 内箱
3 冷蔵室
4 製氷室
5 切替室
6 冷凍室
7 野菜室
8 機械室
9 圧縮機
10 冷蔵庫
11 冷却室
12 冷却器
13 冷却ファン
14 除霜ヒータ
15 ドレンパン
16 ドレンチューブ
17 蒸発皿
18 風路
19 ダンパー
40 断熱材
100 保存システム
201 貯蔵室
202 保存容器
203 保存物
204 逆止弁
205 真空化機構
206 空気導入機構
207 性状検知手段