(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166591
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】リチウムとケイ素を含む水溶液、その製造方法、およびオルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/32 20060101AFI20241122BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C01B33/32
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082780
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129470
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 高
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大介
(72)【発明者】
【氏名】田上 幸治
【テーマコード(参考)】
4G073
5H050
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA03
4G073BA63
4G073BA75
4G073BD01
4G073BD21
4G073CB04
4G073FA12
4G073FB19
4G073FB36
4G073FC05
4G073FC30
4G073FD01
4G073FD22
4G073FD24
4G073GA01
4G073GA03
4G073UB60
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池の正極活物質粒子の表面に良好なLiイオン伝導性を有するLi
4SiO
4(オルトケイ酸リチウム)を被覆するための、リチウムとケイ素を含み、かつ、水溶液の吸光度が低い水溶液およびその製造方法、並びに当該水溶液を用いたオルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】リチウムを0.1質量%以上3.0質量%以下、ケイ素を0.1質量%以上3.0質量%以下含み、リチウムとケイ素のモル比Li/Siが3.70以上5.20以下、波長660nmにおける吸光度が0.10以下である、リチウムとケイ素を含む水溶液。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを0.1質量%以上3.0質量%以下、ケイ素を0.1質量%以上3.0質量%以下含み、リチウムとケイ素のモル比Li/Siが3.70以上5.20以下、波長660nmにおける吸光度が0.10以下である、リチウムとケイ素を含む水溶液。
【請求項2】
前記の水溶液を乾燥させた後に750℃の大気雰囲気下で5時間熱処理して得られた焼成粉末が主としてオルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)の結晶からなるものである、請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液。
【請求項3】
前記の水溶液中のリチウム含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下である、請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液。
【請求項4】
前記水溶液中のケイ素含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下である、請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液。
【請求項5】
前記の水溶液中のリチウムとケイ素のモル比Li/Siが、3.70以上5.00以下である、請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液。
【請求項6】
前記の水溶液の波長660nmでの吸光度が0.07以下である、請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液。
【請求項7】
ケイ素化合物を含む水溶液とリチウム化合物を含む水溶液とを混合してリチウムとケイ素のモル比Li/Siが3.70以上5.20以下の水溶液を得る工程と、
前記のリチウムおよびケイ素を含む水溶液を45℃以上60℃以下で保持する工程と、を含む、請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液の製造方法。
【請求項8】
リチウム二次電池正極活物質の表面に前記の請求項7により得られたリチウムとケイ素を含む水溶液を被覆する水溶液被覆工程と、
前記のリチウムとケイ素を含む水溶液で被覆されたリチウム二次電池正極活物質を乾燥してリチウムとケイ素を含む被覆層を形成する被覆層形成工程と、
前記のリチウムとケイ素を含む被覆層を有するリチウム二次電池正極活物質に熱処理を施す熱処理工程と、
を有する、オルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用活物質の製造方法。
【請求項9】
リチウム二次電池正極活物質の表面に前記の請求項1に記載のリチウムとケイ素を含む水溶液を被覆する水溶液被覆工程と、
前記のリチウムとケイ素を含む水溶液で被覆されたリチウム二次電池正極活物質を乾燥してリチウムとケイ素を含む被覆層を形成する被覆層形成工程と、
前記のリチウムとケイ素を含む被覆層を有するリチウム二次電池正極活物質に熱処理を施す熱処理工程と、
を有する、オルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の正極活物質粒子の表面を固体電解質であるオルトケイ酸リチウムで被覆するためのリチウムとケイ素を含む水溶液および製造方法、並びに、オルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の正極活物質は、従来一般的にリチウムと遷移金属の複合酸化物で構成される。なかでも、Coを成分に持つ複合酸化物であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)が多用されている。また、最近ではニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、あるいは三元系(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2など)や、それらの複合タイプの利用も増加している。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電解液としては、電解質LiPF6、LiBF4等のリチウム塩を、PC(プロピレンカーボネート)、EC(エチレンカーボネート)等の環状炭酸エステルと、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)等の鎖状エステルの混合溶媒に溶解したものが主として用いられている。このような有機溶媒は酸化雰囲気に弱く、特に正極表面でCo、Ni、Mn等の遷移金属に触れると酸化分解反応を起こしやすい。その要因として、正極表面が高い電位であること、高酸化状態の遷移金属が触媒的に作用することなどが考えられる。したがって、電解液と正極活物質を構成する遷移金属(例えばCo、Ni、Mnの1種以上)との接触をできるだけ防止することが、電解液の性能を維持するうえで有効となる。
【0004】
また、前記の有機溶媒系の電解液の問題点を抜本的に解決するための方法として、電解液を不燃性の固体電解質に替えた全固体型のリチウムイオン二次電池が提案されている。
一般に電池の電極反応は、電極活物質と電解液との界面で生起する。ここで、当該電解液に液体の電解液を用いた場合には、電極上に存在する電極活物質の表面に電解液が浸透し、電荷移動の反応界面が形成される。全固体型電池の場合、イオン伝導性を有する固体電解質が電解液の役割を果たすが、固体電解質それ自体は液体のような流動性を持たないため、二次電池を構成する前に電極活物質となる粉体と固体電解質を混合するか、電極活物質となる粉体を固体電解質により被覆して、予め複合化しておく必要がある。
【0005】
ところが、全固体型リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質と固体電解質との界面をリチウムイオンが移動する際に発生する抵抗(以下、「界面抵抗」と記載する場合がある。)が増大し、全固体型リチウムイオン二次電池の電池容量等の性能が低下し易いという問題があった。当該界面抵抗の増大は、正極活物質と固体電解質とが反応して正極活物質の表面に高抵抗部位が形成されることが原因であるとされており、正極活物質であるコバルト酸リチウムの表面をケイ酸リチウムによって被覆することにより、界面抵抗を低減することが可能であることが知られている。
【0006】
例えば非特許文献1には、金属基板上に蒸着したLiCoO2正極上に固体電解質としてパルスレーザー蒸着法を用いてLi4SiO4(オルトケイ酸リチウム)またはLi2SiO3(メタケイ酸リチウム)を蒸着した薄膜リチウム電池が開示されている。なお、非特許文献1にはLi4SiO4のLiイオン伝導性がLi2SiO3のそれよりも一桁高いことが開示されている。
生産性の高い湿式法を用い、正極活物質の表面に固体電解質としてケイ酸リチウムを被覆する技術としては、例えば特許文献1にガラス質ケイ酸リチウムで表面を被覆した正極活物質粉末が開示されている。
【0007】
非特許文献2にはLi4SiO4を被覆した正極活物質粉末が開示されている。非特許文献2に開示されている技術はメタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)の水溶液を用いて正極活物質粉末にSiO2被覆を形成した後、当該被覆層に酢酸リチウム粉末を固相で反応させてLi4SiO4を形成するというものである。
非特許文献3には湿式法により正極活物質表面にLi4SiO4を被覆する技術が開示されている。
特許文献2には、TEOSを用いないLi4SiO4の前駆体溶液としてメタ珪酸リチウム水溶液とリチウム化合物とを混合して反応前駆体とし、オルト珪酸リチウムを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2014-513392号公報
【特許文献2】特開2021-075406号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】中川敦允他、35th固体イオニクス討論会講演要旨集、p.82, 2009
【非特許文献2】S. Yang et al., Front. Energy, 2017, 11(3) p.374-382
【非特許文献3】Y. Xu et al., J. Materiomics, 2 (2016) p.265-272
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1のパルスレーザー蒸着法は被処理材に制限があり、汎用性に欠ける他、生産性に乏しいという問題があった。特許文献1で開示される技術で形成された被覆層はLi2Si5O11(ポリケイ酸リチウム)またはLi2SiO3であり、それらのケイ酸リチウムはLi4SiO4と比較してLiイオン伝導性が低く、作動時に電池の出力特性が低下するという問題があった。非特許文献2は、最終的に固相反応を用いるために被覆が不均一になり易く、Li4SiO4の形成が不十分であった箇所から高抵抗部位が形成され、電池特性が低下してしまうという問題があった。非特許文献3で開示されている技術では、被覆液の出発物質として酢酸リチウムおよびテトラエトキシシラン(TEOS)を使用したアルコール溶液であるため、製造コストが高くなる。また、TEOSは大気中の水分を吸収し、加水分解しやすいため被覆液としての取り扱いが難しいという問題が存在するために、TEOSを用いない被覆液が望まれていた。特許文献2で開示されている技術の場合、リチウムとケイ素のモル比がLi4SiO4のそれに近づき、リチウムとケイ素のモル比Li/Siが3.7以上となると水溶液中で微粒子が生成してしまうことがわかった。このような水溶液を用いて電極活物質の表面に被覆を形成すると被覆が不均一になり易く、Li4SiO4の形成が不十分であった箇所から高抵抗部位が形成され、電池特性が低下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は前記の問題に鑑み、リチウムイオン二次電池の正極活物質粒子の表面に良好なLiイオン伝導性を有するLi4SiO4(オルトケイ酸リチウム)を被覆するための、リチウムとケイ素を含み、かつ、水溶液の吸光度が低い水溶液およびその製造方法、並びに当該水溶液を用いたオルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記の目的を達成するために、本発明においては、リチウムを0.1質量%以上3.0質量%以下、ケイ素を0.1質量%以上3.0質量%以下含み、リチウムとケイ素のモル比Li/Siが3.70以上5.20以下、波長660nmにおける吸光度が0.10以下である、リチウムとケイ素を含む水溶液が提供される。
[2]前記[1]項のリチウムとケイ素を含む水溶液は、当該水溶液を乾燥させた後に750℃の大気雰囲気下で5時間熱処理して得られた焼成粉末が主としてオルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)の結晶からなるものであることが好ましい。
[3]前記の[1]項のリチウムとケイ素を含む水溶液は、水溶液中のリチウム含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
[4]前記の[1]項のリチウムとケイ素を含む水溶液は、水溶液中のケイ素含有量が0.5質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
[5]前記の[1]項のリチウムとケイ素を含む水溶液は、水溶液中のリチウムとケイ素のモル比Li/Siが、3.70以上5.00以下であることが好ましい。
[6]前記の[1]項のリチウムとケイ素を含む水溶液は、前記水溶液の波長660nmでの吸光度が0.07以下であることが好ましい。
[7]また、本発明においては、前記[1]項のリチウムとケイ素を含む水溶液の製造方法として、ケイ素化合物を含む水溶液とリチウム化合物を含む水溶液とを混合してリチウムとケイ素のモル比Li/Siが3.70以上5.20以下の水溶液を得る工程と、前記のリチウムおよびケイ素を含む水溶液を45℃以上60℃以下で保持する工程を含む、リチウムとケイ素を含む水溶液の製造方法が提供される。
[8]本発明ではさらに、リチウム二次電池正極活物質の表面に前記の[7]項記載の製造方法により得られたリチウムとケイ素を含む水溶液を被覆する水溶液被覆工程と、 前記のリチウムとケイ素を含む水溶液で被覆されたリチウム二次電池正極活物質を乾燥してリチウムとケイ素を含む被覆層を形成する被覆層形成工程と、 前記のリチウムとケイ素を含む被覆層を有するリチウム二次電池正極活物質に熱処理を施す熱処理工程とを有する、オルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用活物質の製造方法が提供される。
[9]本発明ではさらに、リチウム二次電池正極活物質の表面に前記の[1]項記載のリチウムとケイ素を含む水溶液を被覆する水溶液被覆工程と、 前記のリチウムとケイ素を含む水溶液で被覆されたリチウム二次電池正極活物質を乾燥してリチウムとケイ素を含む被覆層を形成する被覆層形成工程と、 前記のリチウムとケイ素を含む被覆層を有するリチウム二次電池正極活物質に熱処理を施す熱処理工程とを有する、オルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用活物質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により得られるリチウムとケイ素を含む水溶液を用いると、水溶液中のリチウムとケイ素のモル比がLi/Siが3.70以上となっても電極活物質の表面に主としてLi4SiO4(オルトケイ酸リチウム)の結晶からなる層を被覆することが可能になる。したがって、本発明は全固体型リチウムイオン二次電池の性能向上に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例5で得られた水溶液を乾燥、焼成して得られた粉末のX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[正極活物質]
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液で被覆される正極活物質は例として以下のものが挙げられる。正極活物質はLiと遷移金属Mの複合酸化物からなるものであり、従来からリチウムイオン二次電池に使用されている物質、例えばリチウム酸コバルト(Li1+XCoO2、-0.1≦X≦0.3)、Li1+XNiO2、Li1+XMn2O4、Li1+XNi1/2Mn1/2O2、Li1+XNi1/3Co1/3Mn1/3O2(いずれも-0.1≦X≦0.3)、Li1+X[NiYLi1/3-2Y/3Mn2/3-Y/3]O2(0≦X≦1、0<Y<1/2)等や、これらのLiあるいは遷移金属元素の一部をAlその他の元素で置換したリチウム遷移金属酸化物や、Li1+XFePO4、Li1+XMnPO4(いずれも-0.1≦X≦0.3)などのオリビン構造を持つリン酸塩やスピネル型化合物としてマンガン酸リチウム(LiMnO4)やMnの一部をAlやTi、Cr、Fe、Zr、Y、W、Ta、Nb、Ni、Co、Fe等で置換したもの(LiAl0.1Mn0.9O4、LiNi0.5Mn1.5O4等)などが挙げられる。
【0016】
[Li源]
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液においては、Li源として水可溶性の水酸化リチウム(LiOH)、塩化リチウム(LiCl)、硫酸リチウム、硝酸リチウム等を使用することが可能である。なおLi源としては、最終的に正極活物質の表面にオルトケイ酸リチウムを含む被覆層を形成した際に不純物の残り難いLiOHを使用することが好ましい。LiOHは無水のものでも水和しているものでも、いずれでも構わない。水溶液に添加したLiOHはLi+とOH-に解離し、強アルカリ性を示す。強アルカリ性のほうが、水溶液が安定であり水溶液中で微粒子の生成を抑制できるため好ましい。本明細書においてはLiOH等の追加のLi源を溶解した水溶液をA液と呼称する。本発明においては後記のB液に追加のLiを含むA液を添加してリチウムとケイ素を含む水溶液を調製するが、調整後の水溶液中のリチウム濃度をLiとして0.1質量%以上3.0質量%以下となるものである。
リチウム濃度が0.1質量%以上では、当該水溶液中の被覆層成分の濃度が大きくなり、被覆層形成工程にて被覆が均一になり易くなる。また、Li濃度が3.0質量%以下だと、当該水溶液中に多量の微粒子が発生することを抑制し、被覆層形成工程にて被覆が均一になり易くなる。リチウム濃度は0.5質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
【0017】
[Si源]
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液においては、Siの出発物質は水に可溶性であれば特に限定はされないが、Li源にもなるリチウムとケイ素を含有した水溶液を使用することが好ましい。例えばLi2Si5O11水溶液、Li2Si14O29水溶液、Li2Si18O37水溶液などの水溶液中のリチウムとケイ素のモル比(Li/Si)が0.1以上のポリケイ酸リチウム水溶液を使用することが好ましい。フッ化物イオン等を用いるとSiを酸性側で可溶化することが可能であるが、酸性側では被覆される正極活物質が溶解するので好ましくない。本明細書においてはLi2Si5O11を溶解した水溶液をB液と呼称する。本発明においてはB液に前記のLiを含むA液を添加してリチウムとケイ素を含む水溶液を調製するが、調整後の水溶液中のケイ素濃度をSiとして0.1質量%以上3.0質量%以下となるものである。
ケイ素濃度が0.1質量%以上では、当該水溶液中の被覆層成分の濃度が大きくなり、被覆層形成工程にて被覆が均一になり易くなる。ケイ素濃度が3.0質量%以下だと、当該水溶液中に多量の微粒子が発生することを抑制し、被覆層形成工程にて被覆が均一になり易くなる。ケイ素濃度は0.5質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液においては、水溶液中のリチウムとケイ素のモル比Li/Siの値を3.70以上5.20以下となるものである。
Li/Siの値が3.70以上5.20以下にすることで、Liイオン伝導性が高いLi4SiO4が得られやすい。また、Li/Siのモル比が5.20を超えると、溶解可能な濃度を超えた量の微粒子が発生し易くなる。リチウムとケイ素のモル比Li/Siの値は、好ましくは3.70以上5.00以下である。なお、リチウムとケイ素を含む水溶液は、効果を損ねない範囲で、アルコールなどの有機溶媒を含んでもよい。
【0019】
[吸光度]
本発明に係るリチウムとケイ素を含む水溶液の波長660nmにおける吸光度の値は0.1以下であることが好ましい。ここで波長660nmにおける水溶液の吸光度は、当該水溶液中に存在する微粒子による散乱光の強さを示す指標となるもので、その波長における吸光度が高いことは、水溶液中に存在する微粒子濃度が高いことを意味している。そして、当該微粒子濃度が高い水溶液を電極活物質上に塗布すると、電極活物質表面に微粒子が付着して被覆層が凸凹になり、被覆層の厚さが不均一になり易い。被覆層の厚さが不均一になると、被覆層の厚さが不十分な薄膜部や、さらには、被覆されていない箇所が発生し、被覆率が低下する場合がある。本発明者らの検討によれば、波長660nmにおける水溶液の吸光度の値が0.10以下であれば、水溶液中の微粒子量は十分に少なく、被覆層厚さの均一性および被覆率への悪影響が抑えられる。吸光度の値は好ましくは0.07以下である。なお、吸光度の値は、紫外可視分光光度計を用い、水溶液温度は25℃とし、波長660nmにおける吸光度を測定したものである。このとき、吸光度の下限値は、0.000である。但し、吸光度測定に用いた紫外可視分光光度計における、装置上の検出限界は0.001である。
【0020】
[炭素含有量]
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液が炭素を含むと、最終的に正極活物質の表面にオルトケイ酸リチウムを含む被覆層を形成した際に不純物として残り、電池性能を低下させる恐れがある。そのため、本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液においては、焼成しても揮発しない有機物の含有量が少ないことが好ましい。
当該水溶液中に含まれる炭素含有量を全有機炭素量(TOC)で5mg/L以下にすることができる。なお、本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液のSi源およびLi源にLiとSiおよび水分を除いた不可避不純物量が1000ppm以下の試薬を使用すると、TOCを5mg/L以下にすることができる。当該水溶液中に含まれる炭素含有量は3mg/L以下にすることができ、より好ましくは2mg/L以下とすることができる。
【0021】
[製造方法]
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液の製造方法においては、前述のように、Siを含むB液にLiを含むA液を添加してリチウムとケイ素を含む混合液を調製する。この混合液は、微粒子が発生し、液が白濁する。添加原料溶液としてB液にLi2Si5O11(ポリケイ酸リチウム)の水溶液、A液に水酸化リチウム(LiOH)の水溶液を用いると、混合した溶液は実質的にリチウムイオン、ケイ酸イオンと不可避的不純物のみを含むものとなる。なお、A液にB液を添加しても構わない。
引き続き、前記の混合液を公知の機械的撹拌手段を用いて撹拌しながら、水溶液の温度を45℃以上60℃以下で保持することで、微粒子が溶解してリチウムとケイ素を含む水溶液を得る。
【0022】
前記の微粒子を溶解する保持温度が45℃以上60℃以下とすることで、微粒子が溶解され、得られる水溶液の波長660nmにおける吸光度の値が0.10以下にすることができる。
前記の混合液は公知の機械的撹拌手段を用いて撹拌しながら、水溶液の温度を45℃以上60℃以下で保持することで、A液添加による局所的な温度低下を防ぐことができ微粒子の溶解時間を短くすることができるため好ましい。
【0023】
本発明においては微粒子溶解のための保持時間は特に規定しないが、経済性を考え、3時間以下とすることが好ましい。また、保持時間は例えば15分以上とすることができる。微粒子溶解の完了の時点は、前記の工程で得られた水溶液の吸光度が0.10以下になった時点とする。
【0024】
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液の製造方法においては、前記の微粒子を溶解する工程の後に、得られたリチウムとケイ素を含む水溶液を公知の濾過手段を用いて濾過する工程を設けても構わない。混合溶液を45℃以上60℃以下で保持は、45℃未満でリチウムを含むA水溶液とケイ素を含むB水溶液を混合して得られた溶液を昇温して、45℃以上60℃以下で保持してもよい。または、液温が45℃以上60℃以下リチウムを含むA水溶液とケイ素を含むB水溶液を混合して、温度調整し45℃以上60℃以下に保持してもよい。
前記の、微粒子を溶解して得られるリチウムとケイ素を含む水溶液のリチウムとケイ素のモル比Li/Siの値を3.70以上5.20以下とする。調整後の水溶液中のケイ素濃度はSiとして0.1質量%以上3.0質量%以下、リチウム濃度はLiとして0.1質量%以上3.0質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液の製造方法においては、前記の微粒子を溶解する工程の後に、得られたリチウムとケイ素を含む水溶公知の濾過手段を用いて濾過する工程を設けても構わない。
【0026】
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液は、当該水溶液を乾燥させた後に750℃の大気雰囲気下で5時間熱処理して得られた焼成粉末が、主としてオルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)の結晶からなるものである、すなわち当該結晶を主相に持つものである。
Li4SiO4の結晶を主相に持つとは、当該焼成粉末をX線回折測定して得られたX線回折パターンにおいて、Li4SiO4結晶に同定された回折ピークのうち、最もピーク強度が高い回折ピーク強度をI0とし、異相(Li4SiO4の結晶相で同定できなかったピーク)の回折ピークのうち最もピーク強度が高い回折ピーク強度をI1としたとき、回折ピーク強度比I1/I0においてI1/I0<1.0の関係が成り立つイオン伝導体であることを意味する。ここで、異相が検出されない場合はI1=0となり、上記I1/I0<1.0の関係が成り立つ。本発明の効果を阻害しない範囲で異相の混在は許容されるが、異相の存在量は少ない方が好ましい。例えば、I1/I0≦0.50であることがより好ましく、I1/I0≦0.15であることがさらに好ましい。水溶液の乾燥方法としては例えば噴霧乾燥方法などが用いられる。
【0027】
[被覆処理]
本発明のリチウムとケイ素を含む水溶液を用いるリチウムイオン二次電池用正極活物質への被覆処理の実施形態として以下が挙げられる。
被覆処理の対象となる正極活物質としては、比表面積が0.1~2m2/g程度のものを使用することができる。正極活物質の比表面積はその粒径に反比例するので、リチウムイオン二次電池の用途に応じて正極活物質の比表面積を適宜選択する。
正極活物質に被覆される被覆層の厚さは3~20nmとすることが好ましい。より好ましくは5~15nmである。
被覆処理には転動流動層コート法や高速気流の衝突せん断法などの公知の方法を用い、正極活物質に本発明の水溶液を接触させ、乾燥した後に熱処理をすることにより、オルトケイ酸リチウムを含む被覆層を有する正極活物質を得ることができる。
【実施例0028】
[リチウムおよびケイ素含有量の測定]
0.1g分取した溶液試料に純水15mLと塩酸5mLを添加し、その後、さらに過酸化水素水2mLを添加してリチウムおよびケイ素を溶解した。メスフラスコを用いて得られた溶解液を定容した後、必要に応じて適宜希釈し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES、アジレント・テクノロジー(株)製CP-720)を用いて希釈液中のリチウムおよびケイ素濃度を測定し、溶液試料中のリチウムおよびケイ素の含有量を算出した。
【0029】
[吸光度の測定]
水溶液中の不溶性の微粒子量の定性評価は、紫外可視分光光度計(SHIMADZU(株)製UV-1800)を用い、波長660nmにおける吸光度を測定することにより行った。吸光度の測定は純水(イオン交換水)を参照試料とし、石英セル(10mm×10mm×45mm)を用いて25℃で行った。
[X線回折測定]
水溶液を噴霧乾燥して得られた粉末試料を750℃で熱処理した後、X線回折測定を行った。測定条件は以下の通りである。
管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:30mA、発散スリット:1.0°、散乱スリット:1.0°、受光スリット:0.3mm、スキャン速度:2.0°/min、ステップ幅:0.02。
ピークサーチは島津製作所 XRD-6100ソフトウェアを使用し、ピークサーチ条件は以下の条件にて実施した。
スムージング処理:自動
バックグラウンド処理:自動
Ka1-a2比:50
ピークサーチ:自動
【0030】
[炭素量測定]
水溶液中の炭素量はTC-IC法により測定した。なお、TC-IC法とは、試料中の全炭素量(TC)と無機体炭素量(IC)を個別に測定し、その差から全有機体炭素量(TOC)を求める測定方法である。測定には全有機体炭素計(島津製作所製、TOC-LCHS)を用いた。
TC測定:試料を酸化触媒が充てんされた燃焼管(680℃)に注入し、燃焼あるいは分解により発生した二酸化炭素(CO2)を分析部で検出する。
IC測定:試料を酸性(pH3以下)にし、通気処理を行うことで炭酸塩等からCO2を遊離させ、分析部で検出する。
【0031】
[実施例1]
100mLビーカーにLiOH・H2O(水酸化リチウム一水和物、富士フィルム和光純薬(株)製)5.99gとイオン交換水59.94gを投入し、室温下で10分間撹拌して溶解させ、それをA液とした。100mLビーカーにLi2Si5O11水溶液(シグマアルドリッチ(株)製、濃度20mass%)11.02gとイオン交換水34.04gを投入し、撹拌しながら50℃に保持し、それをB液とした。50℃に保持した撹拌下のB液に、添加速度:5g/minでA液を添加したところ、添加後の混合溶液中に白色の微粒子が発生した。引き続き、混合溶液を50℃に保持して撹拌を120分間継続したところ、微粒子が溶解して透明な水溶液が得られた。
【0032】
得られた水溶液中に含有されるリチウム量とケイ素量をICP-AES法で測定するとともに、得られた水溶液の波長660nmにおける吸光度を測定した。リチウムとケイ素の含有量は原料として仕込んだ量にほぼ等しく、Li/Siのモル比は4.70であった。また、吸光度は0.03であり、TOCは1mg/Lであった。
【0033】
本実施例で得られた水溶液を、噴霧乾燥機(東京理化器械(株)製 SD-1000)を用いて噴霧乾燥し、白色の乾燥粉末を得た。噴霧乾燥の条件は、入口温度180℃、出口温度90℃、溶液の添加速度10g/minである。当該乾燥粉末を750℃の大気雰囲気下で5時間熱処理した後乳鉢で解砕し、750℃焼成粉末を得た。当該750℃焼成粉末についてX線回折測定を実施したところ、Li4SiO4(オルトケイ酸リチウム)の結晶に由来する回折ピークが観察された。Li4SiO4(オルトケイ酸リチウム)の結晶に由来する回折ピーク強度I0は、得られたX線回折パターンにおいて、最もピーク強度の高い回折ピークであった。また、異相は検出されなかったため、異相(Li4SiO4の結晶相で同定できなかったピーク)の回折ピークのうち最もピーク強度が高い回折ピーク強度I1=0となる。従って、I1/I0<1.0の関係が成り立つため、得られた焼成粉末は、オルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)の結晶を主相に持つものであることが分かった。
したがって、本実施例により得られたリチウムとケイ素を含む水溶液はオルトケイ酸リチウムの前駆体であり、当該水溶液を正極活物質に被覆、乾燥し、750℃で熱処理することによりオルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を有するリチウム二次電池用正極活物質が得られる。
【0034】
本実施例の水溶液の調製条件を表1に、得られた水溶液の組成、750℃焼成粉末のX線回折測定結果を表2に示す。
【0035】
[実施例2~5]
実施例2および3として、A液を得る際のLiOH・H2Oとイオン交換水の量と、B液を得る際のイオン交換水の量とを変化させ、実施例1とはLi/Siモル比の異なる、微粒子の溶解した透明な水溶液を得た。それらの実施例の水溶液の調製条件を表1に、得られた水溶液の組成、750℃焼成粉末のX線回折測定結果を表2に併せて示す。実施例2および3に係る水溶液から得られた750℃焼成粉末のX線回折測定結果からはいずれも、Li4SiO4(オルトケイ酸リチウム)の結晶に由来する回折ピークが観察された。Li4SiO4(オルトケイ酸リチウム)の結晶に由来する回折ピーク強度I0は、得られたX線回折パターンにおいて、最もピーク強度の高い回折ピークであった。そのため、Li4SiO4結晶の回折ピークのうち最もピーク強度の高い回折ピーク強度をI0と異相の回折ピークのうち最もピーク強度の高い回折ピーク強度をI1としたとき、回折ピーク強度比I1/I0は、I1/I0<1.0の関係が成り立つため、得られた焼成粉末は、オルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)の結晶を主相に持つものであることが分かった。実施例2は異相が検出され、回折ピーク強度比I1/I0=0.09であった。実施例3は異相が検出されなかった。
【0036】
実施例4および5として、A液を得る際のLiOH・H
2Oとイオン交換水の量と、B液を得る際のイオン交換水の量とを変化させ、実施例1からLi/Siモル比を変化させるとともに、微粒子溶解工程の保持温度を変化させて、実施例4および5に係る微粒子の溶解した透明な水溶液を得た。これらの実施例の水溶液の調製条件を表1に、得られた水溶液の組成、750℃焼成粉末のX線回折測定結果を表2に併せて示す。実施例4および5に係る水溶液から得られた750℃焼成粉末のX線回折測定結果からはいずれも、Li
4SiO
4(オルトケイ酸リチウム)の結晶に由来する回折ピークが観察された。
図1に実施例5で得られた水溶液を乾燥、焼成して得た粉末を上述に記載の方法でX線回折測定して得られたX線回折パターンを示す。
図1にはLi
4SiO
4(オルトケイ酸リチウム)に由来するピークが観察される。Li
4SiO
4(オルトケイ酸リチウム)の結晶に由来する回折ピーク強度I
0は、得られたX線回折パターンにおいて、最もピーク強度の高い回折ピークであった。そのため、Li
4SiO
4結晶の回折ピークのうち最もピーク強度の高い回折ピーク強度をI
0と異相の回折ピークのうち最もピーク強度の高い回折ピーク強度をI
1としたとき、回折ピーク強度比I
1/I
0は、I
1/I
0<1.0の関係が成り立つため、得られた焼成粉末は、オルトケイ酸リチウム(Li
4SiO
4)の結晶を主相に持つものであることが分かった。実施例4は異相が検出され、回折ピーク強度比I
1/I
0=0.03であった。実施例5は異相が検出され、回折ピーク強度比I
1/I
0=0.09であった。
【0037】
[比較例1]
100mLビーカーにLiOH・H2O(水酸化リチウム一水和物、富士フィルム和光純薬(株)製)8.76gとイオン交換水87.59gを投入し、室温下で10分間撹拌して溶解させ、それをA液とした。100mLビーカーにLi2Si5O11水溶液(シグマアルドリッチ(株)製、濃度20mass%)11.02gとイオン交換水3.63gを投入し、撹拌しながら50℃に保持し、それをB液とした。50℃に保持した撹拌下のB液に、添加速度:5g/minでA液を添加したところ、添加後の混合溶液中に白色の微粒子が発生した。この場合、Li/Siのモル比は5.98である。引き続き、微粒子を含む混合溶液を50℃に保持して撹拌を120分間継続したところ微粒子は溶解せず、吸光度は1.00となった。この場合、溶解可能な濃度を超えた量の微粒子が発生したために、微粒子が溶解し切らなかったと考えられる。微粒子が溶解しなかったので、750℃焼成粉末は作成しなかった。
【0038】
[比較例2、3]
実施例1からA液を得る際のLiOH・H2Oとイオン交換水の量と、B液を得る際のイオン交換水の量とを変化させLi/Siのモル比とを変化させるとともに、微粒子溶解工程の保持温度を変化させて比較例2および3の水溶液を得た。これらの場合、Li/Siは本発明の範囲であったが、生成した微粒子は溶解しなかった。この場合、保持温度が適切でなかったために、微粒子が溶解しなかったと考えられる。微粒子が溶解しなかったので、750℃焼成粉末は作成しなかった。これらの比較例の水溶液の調製条件を表1に、得られた水溶液の組成を表2に併せて示す。
【0039】
[比較例4]
500mLビーカーにLiOH・H2O(水酸化リチウム一水和物、富士フィルム和光純薬(株)製)45.40gとイオン交換水272.43gを投入し、室温下で10分間撹拌して溶解させた。これをA液とした。500mLビーカーに珪酸リチウム溶液(日本化学工業(株)製、珪酸リチウム35、SiO2:20.9質量%、LiO2:2.9質量%、モル比:3.55)95.95gを投入し、撹拌しながら40℃に保持し、それをB液とした。40℃に保持した撹拌下のB液に、添加速度:5g/minでA液を添加したところ、添加後の混合溶液中に白色の微粒子が発生した。この場合、Li含有量は2.13質量%、Si含有量は2.27質量%、Li/Siモル比は3.80である。引き続き、混合溶液を40℃に保持して撹拌を70分間継続したところ、微粒子は溶解しなかった。微粒子が溶解しなかったので、750℃焼成粉末は作成しなかった。比較例4の水溶液の調製条件を表1に、得られた水溶液の組成を表2に併せて示す。
【0040】
以上の結果から、本発明の製造方法を用いると、リチウム二次電池用正極活物質の表面にオルトケイ酸リチウムを含有する被覆層を形成するための前駆体として使用することができる、リチウムとケイ素を含む水溶液が得られることが判る。
【0041】
【0042】