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特開2024-166594避難誘導装置、避難誘導システム、及び、避難誘導方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166594
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】避難誘導装置、避難誘導システム、及び、避難誘導方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20241122BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082784
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】岡沢 理映
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA13
5C086AA22
5C086AA49
5C086CA21
5C086CA23
5C086CA25
5C086FA01
5C086FA11
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA25
5C087AA44
5C087BB18
5C087BB73
5C087BB74
5C087DD02
5C087DD23
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF23
5C087GG07
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG82
(57)【要約】      (修正有)
【課題】地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させる。
【解決手段】避難誘導システムにおいて、建物内の各部屋に存在する在室者の避難を誘導する避難誘導装置3は、各部屋の在室者の人数を取得する人数取得部310と、各部屋の避難の優先度を取得する優先度取得部315と、人数取得部310が取得した各部屋の在室者の人数と予め定めた複数の各避難ルートまでの距離とから各避難ルートで避難した場合の避難ルート占有時間を算出する占有時間算出部316と、優先度取得部315が取得した避難優先度及び占有時間算出部316が算出した避難ルート占有時間に基づいて避難ルートを選択するルート決定部317と、優先度取得部315が取得した避難優先度及びルート決定部317が決定した避難ルートに基づいて、在室者に避難ルートを指示するルート指示部318と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の各部屋に存在する在室者の避難を誘導する避難誘導装置であって、
前記各部屋の在室者の人数を取得する人数取得部と、
各部屋の避難優先度を取得する優先度取得部と、
前記人数取得部が取得した前記各部屋の在室者の人数と予め定めた複数の各避難ルートの距離とから前記各避難ルートで避難した場合の避難ルート占有時間を算出する占有時間算出部と、
前記優先度取得部が取得した前記避難優先度及び前記占有時間算出部が算出した前記避難ルート占有時間に基づいて前記避難ルートを選択するルート決定部と、
前記優先度取得部が取得した前記避難優先度及び前記ルート決定部が決定した前記避難ルートに基づいて、前記在室者に前記避難ルートを指示するルート指示部と、
を備える
ことを特徴とする避難誘導装置。
【請求項2】
前記占有時間算出部は、前記在室者の中に通常の前記避難ルート占有時間よりも避難に時間を要する人がいる場合、補正係数により前記避難に時間を要する人の前記避難ルート占有時間を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の避難誘導装置。
【請求項3】
前記ルート決定部は、前記避難優先度Eik=x-1時点の第nルートの避難ルート占有時間総計をTkn(x-1)とし、避難優先度Eik=xの部屋において、第nルートのそれぞれの避難ルート占有時間総計Tkn(x)を以下の式(A)で示した場合、避難優先度Eik=xの部屋の避難ルートは、各避難ルート占有時間総計Tk1(x)、Tk2(x)…Tkn(x)のうち、最も短い避難ルートに決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の避難誘導装置。
Tkn(x)=Tkn(x-1)+tikn (A)
ここで、
Tkn(x)は、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
Tkn(x-1)は、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
tiknは、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間
である。
【請求項4】
請求項1に記載の避難誘導装置と、
前記各部屋の前記在室者の人数を計測し、前記人数の情報を前記人数取得部に送信する人センサと、
前記ルート指示部が指示する内容を前記各部屋の前記在室者に連絡する連絡装置と、
を備える
ことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項5】
建物内の各部屋に存在する在室者の避難を誘導する避難誘導方法であって、
前記各部屋の在室者の人数を取得するステップと、
各部屋の避難優先度を取得するステップと、
前記建物の各部屋の在室者の人数と予め定めた複数の各避難ルートの距離とから前記各避難ルートで避難した場合の避難ルート占有時間を算出するステップと、
前記避難優先度及び前記避難ルート占有時間に基づいて前記避難ルートを選択するステップと、
前記避難優先度及び前記避難ルートに基づいて、前記在室者に前記避難ルートを指示するステップと、
を有する
ことを特徴とする避難誘導方法。
【請求項6】
前記避難ルート占有時間を算出するステップは、前記在室者の中に通常の前記避難ルート占有時間よりも避難に時間を要する人がいる場合、補正係数により前記避難に時間を要する人の前記避難ルート占有時間を補正する
ことを特徴とする請求項5に記載の避難誘導方法。
【請求項7】
前記ルートを選択するステップは、前記避難優先度Eik=x-1時点の第nルートの避難ルート占有時間総計をTkn(x-1)とし、避難優先度Eik=xの部屋において、第nルートのそれぞれの避難ルート占有時間総計Tkn(x)を以下の式(A)で示した場合、避難優先度Eik=xの部屋の避難ルートは、各避難ルート占有時間総計Tk1(x)、Tk2(x)…Tkn(x)のうち、最も短い避難ルートに決定する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の避難誘導装置。
Tkn(x)=Tkn(x-1)+tikn (A)
ここで、
Tkn(x)は、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
Tkn(x-1)は、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
tiknは、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物在室者の避難を誘導する避難誘導装置、避難誘導システム、及び、避難誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長時間揺れる地震に対して、高精度に揺れの大きさや継続時間の目安を建物在室者に知らせる地震情報提供システムが開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された地震情報提供システムは、発生した地震に関する情報発信を建物在室者が存在する階数、区画に応じて行うことで、建物館内の人の心理的な不安を払拭したり、適切な対応を促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-120660号公報
【特許文献2】特開2021-188972号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】岡沢理映、神原浩、猿田正明、「被験者実験による地震の揺れに対する人の感覚の定量化に関する研究」、日本建築学会技術報告集、No.56、pp81-86、2013年2月
【非特許文献2】日本建築学会、「長周期地震動と超高層建物の対応策-専門家として知っておきたいこと-」、pp254-255、2013年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された地震情報提供システムは、揺れの大きさ又は継続時間等をもとに、地震に関する情報及び注意喚起等を提供することに留まっている。そのため、地震発生時に建物在室者がどのように避難をすればよいかを把握するシステムにはなっていない。
【0006】
本発明は、地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させることができる避難誘導装置、避難誘導システム、及び、避難誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる避難誘導装置は、
建物内の各部屋に存在する在室者の避難を誘導する避難誘導装置であって、
前記各部屋の在室者の人数を取得する人数取得部と、
各部屋の避難優先度を取得する優先度取得部と、
前記人数取得部が取得した前記各部屋の在室者の人数と予め定めた複数の各避難ルートの距離とから前記各避難ルートで避難した場合の避難ルート占有時間を算出する占有時間算出部と、
前記優先度取得部が取得した前記避難優先度及び前記占有時間算出部が算出した前記避難ルート占有時間に基づいて前記避難ルートを選択するルート決定部と、
前記優先度取得部が取得した前記避難優先度及び前記ルート決定部が決定した前記避難ルートに基づいて、前記在室者に前記避難ルートを指示するルート指示部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる避難誘導装置、避難誘導システム、及び、避難誘導方法によれば地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の避難誘導システムのイメージの一例を示す。
図2】本実施形態の避難誘導装置の構成の一例を示す。
図3】本実施形態の家具転倒予測部が家具転倒判定に用いる建物のモデルの一例を示す。
図4】本実施形態の家具転倒予測部が用いる家具転倒判定の基準の一例を示す。
図5】本実施形態の家具転倒予測部が用いる家具滑り判定の基準の一例を示す。
図6】本実施形態の避難誘導方法の一例で用いる建物内の状況の一例を示す。
図7】本実施形態の避難誘導方法の一例のフローチャートを示す。
図8】本実施形態の家具転倒判定の一例のフローチャートを示す。
図9】本実施形態の避難誘導方法の一例におけるパラメータ等を示す。
図10】本実施形態の避難誘導方法の一例における避難ルートの計算例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0011】
図1は、本実施形態の避難誘導システム1のイメージの一例を示す。避難誘導システム1は、センサ2と、センサ2から取得した計測データに基づいて避難ルートによる避難誘導結果を算出する避難誘導装置3と、避難誘導装置3から取得した避難誘導結果に基づいて避難ルートの指示を行う連絡装置4と、を備える。本実施形態の避難誘導システム1は、4階の建物10において、1階のロビーを避難場所として設定している。なお、本実施形態の避難誘導装置3は、1階に設置しているが、必ずしも1階に設置する必要はなく、2階以上に設置してもよい。
【0012】
本実施形態のセンサ2は、加速度を計測する加速度センサ21と、部屋内の在室人数Pikを計測する人センサ22と、を含む。本実施形態の加速度センサ21は、建物10の振動の加速度を計測する。例えば、地震発生時の揺れに対する加速度を計測する。加速度センサ21は、各階に少なくとも1つ設置することが好ましいが、全ての階に設置する必要はない。本実施形態の人センサ22は、部屋内の在室人数Pikを計測する。在室人数Pikの計測は、例えば、無線タグを用いたもの、カメラによる画像解析を用いたもの、光電センサと電子カウンタを用いたもの、又は測域センサを用いたもの等で行うとよい。
【0013】
図2は、本実施形態の避難誘導装置3の構成の一例を示す。避難誘導装置3は、汎用又は専用のコンピュータにより構成される。コンピュータは、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され、任意の形態の電子機器である。コンピュータは、クライアント型コンピュータでもよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよいし、例えば、制御盤、コントローラ(マイコン、プログラマブルロジックコントローラ、シーケンサを含む)等と呼ばれる組込型コンピュータでもよい。
【0014】
本実施形態の避難誘導装置3は、センサ2から取得した計測データに基づいて避難誘導結果を算出する制御部31と、計測データに基づいて避難誘導結果を算出するデータ管理プログラム321及び各部屋内の家具11の数等の設定情報322を記憶する記憶部32と、センサ2又は連絡装置4と通信する通信部33と、プログラム又は各種情報等をユーザが入力可能な入力部34と、各種情報等を表示画面又は音声を介して出力する出力部35と、を有する。
【0015】
制御部31は、プロセッサであって、1つ又は複数の演算処理装置(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、NPU(Neural Processing Unit)等)で構成される。
【0016】
制御部31は、各部屋内の在室人数Pikを取得する人数取得部310と、加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiを算出する人感覚算出部311、家具11の転倒可能性を予測する家具転倒予測部312、不安を感じる人の数を算出する不安人数算出部314、各部屋の避難の優先度を算出する優先度取得部315、及び、人に行動を指示するルート指示部318を有する。
【0017】
人数取得部310は、各部屋内の在室人数Pikを取得する。本実施形態では、人センサ22から取得するが、予め在室者の端末等の連絡装置4を個別に登録して記憶部32に記憶させ、端末の位置情報を読取り、部屋内の在室人数Pikを端末の数から取得してもよい。
【0018】
人感覚算出部311は、地震発生時の建物10の各階の揺れに対応する加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiを算出する。本実施形態では、加速度応答波形は、各階に設置した加速度センサ21から取得すればよい。人感覚算出部311は、特許文献2に記載された人の感覚の算出方法を用いればよい。例えば、地震時の最大加速度Amaxを性能評価曲線に当てはめて、揺れに対する人の感覚を求める。性能評価曲線は、非特許文献1に記載されたものを用いればよい。
【0019】
家具転倒予測部312は、各部屋に設置された家具11の転倒可能性及び家具滑り可能性を予測する。各部屋の家具11の数、大きさ及び設置位置等は、予め記憶部32の設定情報322に記憶すればよい。家具11の転倒可能性は、非特許文献2に記載された簡易予測手法を参考に行うとよい。また、家具転倒予測部312は、転倒可能性が非常に高い又は高いと判定された家具11の数Nikを算出する。なお、本実施形態では、転倒可能性が非常に高いこと及び転倒可能性が高いことをあわせて、転倒可能性が高いと表現してもよい。
【0020】
図3は、本実施形態の家具転倒予測部312が各家具転倒判定に用いる建物10のモデルの一例を示す。図4は、本実施形態の家具転倒予測部312が用いる家具転倒判定の基準の一例を示す。図5は、本実施形態の家具転倒予測部312が用いる家具滑り判定の基準の一例を示す。
【0021】
図3に示すように、家具転倒判定及び家具滑り判定に用いる建物10は、高さが2h、幅が2bとする。転倒限界加速度A0は、図4に示すように、以下の式(1)で表せる。
Fe<Fbのとき、A0=bg/h
Fe≧Fbのとき、A0=2πFeV0=(Fe/Fb)・(bg/h) (1)
ここで、
Fe=Amax/2πVmax、
Fb=11√h、
A0は、転倒限界加速度、
V0は、転倒限界速度、
Amaxは、床応答の最大加速度、
Vmaxは、床応答の最大速度、
である。
【0022】
また、AR50は、以下の式(2)で表せる。
Fe<Fb’のとき、AR50=bg/h・(1+b/h)
Fe≧Fb’のとき、AR50=2πFeVR50=(Fe/Fb’)・(bg/h)・(1+b/h) (2)
ここで、
Fb’=(11/√h)・(1+b/h)-1.5
AR50は、転倒率50%の加速度、
VR50は、転倒率50%の速度、
である。
【0023】
したがって、家具転倒予測部312は、各床応答の最大加速度Amaxが転倒率50%の加速度AR50より大きい場合に、転倒の可能性が非常に高いと判定する。また、家具転倒予測部312は、床応答の最大加速度Amaxが転倒率50%の加速度AR50より小さく、転倒限界加速度A0より大きい場合に、転倒の可能性が高いと判定する。さらに、家具転倒予測部312は、床応答の最大加速度Amaxが転倒限界加速度A0より小さい場合に、転倒の可能性が低いと判定する。
【0024】
また、家具転倒予測部312は、家具11の滑り可能性を以下の式(3)から判定する。
Amax>As=μg (3)
ここで、
Amaxは、床応答の最大加速度、
As=μgは、移動限界加速度、
である。
【0025】
家具転倒予測部312は、床応答の最大加速度Amaxが移動限界加速度Asより大きい場合、家具11の滑りの可能性が高く、床応答の最大加速度Amaxが移動限界加速度Asより小さい場合、家具11の滑りの可能性が低いと判定する。
【0026】
人感覚補正部313は、家具転倒予測部312が予測した転倒可能性が非常に高い又は高いと判定された家具11のある各部屋内において、人感覚算出部311が算出した加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiを補正係数によって補正する。例えば、家具転倒可能性を考慮した不安を感じる人の割合としての不安を感じる人の補正割合Yaikは、不安を感じる人の割合yaiに補正係数γを足すことで求める。
【0027】
不安人数算出部314は、各部屋内で不安を感じている人及び身の危険を感じている人数Paikを算出する。不安人数算出部314は、各部屋内に在室人数Pikに人感覚算出部311が算出した加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiをかけて、各部屋内で不安を感じている人数Paikを求める。また、不安人数算出部314は、家具転倒予測部312が予測した転倒可能性が非常に高い又は高いと判定された家具11のある各部屋内において、各部屋内に在室人数Pikに不安を感じる人の補正割合Yaikをかけて、各部屋内で不安を感じている人数Paikを求めてもよい。
【0028】
優先度取得部315は、家具転倒予測部312が算出した転倒可能性が非常に高い又は高いと判定された家具11の数Nik及び各部屋内で不安を感じている人数Paikに基づき、建物10の各部屋の避難の優先順位を算出する。優先順位は、例えば、部屋内で不安を感じている人数Paikが多い部屋から順位を高くすればよい。なお、部屋内で不安を感じている人数Paikが同じ場合には、転倒可能性が非常に高い又は高いと判定された家具11の数Nikが多い部屋の優先順位を高くすればよい。
【0029】
なお、本実施形態では、人感覚算出部311、家具転倒予測部312、人感覚補正部313、不安人数算出部314及び優先度取得部315によって、避難優先度Eikを取得したが、他の方法で避難優先度Eikを決定してもよい。例えば、避難優先度Eikは、予め部屋ごとに決めておいてもよい。また、避難優先度Eikは、在室人数Pikのみで決定してもよい。さらに、カメラ等のセンサ2で避難ルートとしての避難階段近傍の人数を取得し、人数の少ない避難階段に近い部屋の避難優先度Eikを高く決定してもよい。
【0030】
占有時間算出部316は、建物10の各部屋の在室人数と各避難階段までの距離から各避難階段の避難ルート占有時間tiknを算出する。例えば、避難ルート占有時間tiknは、部屋から避難階段を通過し、避難先のロビーに到着するまでの時間でもよい。避難ルート占有時間tiknは、高齢者や子供等の避難に時間を要する人がいる場合、補正係数αにより補正してもよい。
【0031】
図6は、建物10の各階の部屋構成及び避難階段の位置を示す。避難ルート占有時間tiknは、以下の式(4)により算出する。
tikn=uikn/v×(pik+p’ik×α) (4)
ここで、
uiknは、部屋から第n避難階段までの距離、
vは、歩行速度、
pikは、在室人数(通常の避難が可能な人数)
p’ikは、在室人数(避難に時間を要する人数)
αは、補正係数
である。
【0032】
部屋から第n避難階段までの距離uiknは、予め記憶部32に記憶させておけばよい。歩行速度vは、一般の歩行者の速度を予め記憶部32に記憶させておけばよい。通常の避難が可能な在室人数pikは、センサ2又は連絡装置4の位置情報からの信号等により取得する。避難に時間を要する人の在室人数p’ikは、避難に時間を要する人が予め連絡装置4等に登録しておき、占有時間算出部316が連絡装置4等から登録した信号を取得することにより、算出する。補正係数αは、予め記憶部32に記憶させておけばよい。なお、本実施形態では、各避難ルートが避難階段を使用して避難先のロビーに降りる時間が同じなので、部屋から避難階段までの時間で比較するが、部屋から避難先までの時間で比較してもよい。
【0033】
ルート決定部317は、優先度取得部315が取得した避難優先度Eik及び占有時間算出部316が算出した避難ルート占有時間tiknに基づいて避難ルートを選択する。本実施形態の避難ルートは、以下の計算によって決定する。まず、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計をTkn(x-1)とする。避難優先度Eik=xの部屋において、第n階段のそれぞれの避難ルート占有時間総計Tkn(x)は、以下の式(A)で示す。避難優先度Eik=xの部屋の避難ルートは、各避難ルート占有時間総計Tk1(x)、Tk2(x)…Tkn(x)のうち、最も短い避難ルートに決定すればよい。
Tkn(x)=Tkn(x-1)+tikn (A)
ここで、
Tkn(x)は、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
Tkn(x-1)は、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計
である。
【0034】
ルート指示部318は、優先度取得部315及びルート決定部317が算出した優先順位と避難ルートに基づいて、連絡装置4に避難ルートを指示する。例えば、ルート指示部318は、優先順位の高い部屋から、連絡装置4に「避難」と連絡し、避難ルートも連絡する。その他の部屋の連絡装置4には「待機」と連絡すればよい。ルート指示部318は、避難対象者が部屋から避難をしたこと、又は、避難対象者が避難を完了したことが確認された場合、次の優先順位の部屋に「避難」の表示と避難ルートを連絡すればよい。ルート指示部318は、全ての部屋の避難が完了するまで、連絡装置4にこの連絡を繰り返す。なお、避難の指示は、避難ルートのみを指示してもよい。また、避難ルートは、前の優先順位の在室者が避難を完了してから指示するのではなく、人数取得部310によって、部屋内の在室人数Pikが少なくなったことに応じて、完了する少し前に指示してもよい。
【0035】
本実施形態の記憶部32は、計測データに基づいて避難誘導結果を算出するデータ管理プログラム321及び各部屋内の家具11の数等の設定情報322等を記憶し、例えば、メインメモリとして機能する揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等と、HDD、SSD等のストレージ装置と、で構成される。
【0036】
本実施形態の通信部33は、インターネットやイントラネット等のネットワーク5に、有線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの送受信を行う。本実施形態の入力部34は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成される入力デバイスでよい。本実施形態の出力部35は、例えば、音(音声)出力装置、バイブレーション装置等で構成される出力デバイスでよい。
【0037】
連絡装置4は、タブレット又はスマートフォン等の携帯端末、及び、コンピュータ等の情報機器でよい。また、部屋に設置され表示可能なディスプレイ、又は、音声で避難誘導を伝えるスピーカー等でもよい。
【0038】
ネットワーク5は、任意の通信規格に従って有線通信又は無線通信、あるいは、有線通信と無線通信の組合せにより構成される。具体的には、例えば、インターネット等の標準化された通信網、又はローカルネットワーク等の建物内で管理される通信網、あるいは、これらの通信網の組合せを利用することができる。また、無線通信の通信規格としては、典型的には国際規格が用いられる。国際規格の通信手段として、IEEE802.15.4、IEEE802.15.1、IEEE802.15.11a、11b、11g、11n、11ac、11ad、ISO/IEC14513-3-10、IEEE802.15.4g等の方式がある。また、Bluetooth(登録商標)、BluetoothLowEnergy、Wi-Fi、ZigBee(登録商標)、Sub-GHz、EnOcean(登録商標)、LTE等の方式を用いることもできる。
【0039】
このような避難誘導装置3、及び、避難誘導システム1によれば、地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させることができる。
【0040】
次に、本実施形態の避難誘導方法を説明する。
【0041】
図7は、本実施形態の避難誘導方法の一例のフローチャートを示す。図8は、本実施形態の家具転倒判定の一例のフローチャートを示す。図9は、本実施形態の避難誘導方法の一例におけるパラメータ等を示す。
【0042】
本実施形態の避難誘導方法の説明で用いる建物10は、図6に示したように、1階にロビー、2階に4部屋、3階に6部屋、4階に8部屋を持つ。避難誘導方法は、2階乃至4階の各部屋から第1避難階段61、第2避難階段62、第3避難階段63を降りて1階のロビーを避難場所として避難する場合で説明する。各部屋内の丸印は人を示し、各部屋内の長方形は家具11を示す。
【0043】
図9に示すように、各部屋の家具数は、予め記憶部32に記憶されている。各部屋内の在室人数Pikは、人センサ22により計測される。地震が発生すると、加速度センサ21が最大応答加速度を計測する。
【0044】
本実施形態の避難誘導方法は、まず、ステップ1で、制御部31が通信部33を介して人センサ22から各室の在室人数Pikを取得する(ST1)。続いて、ステップ2で、制御部31が通信部33を介して加速度センサ21からi階の加速度応答波形を取得し、記憶部32に記憶する(ST2)。
【0045】
次に、ステップ3で、取得した最大加速度Amaxから避難が必要か否かを判定する(ST3)。避難が必要か否かの判定は、取得した最大加速度Amaxと予め定めた閾値を比較して、最大加速度Amaxが閾値よりも大きい場合に避難が必要と判定すればよい。図9に示す例では、2階の最大応答加速度が100cm/s2、3階の最大応答加速度が200cm/s2、4階の最大応答加速度が320cm/s2、であり、閾値を50cm/s2とする。ステップ3において、避難が必要でないと判定された場合、ステップ2に戻る。ステップ3において、避難が必要であると判定された場合、ステップ4に進む。この例では、2階から4階の人がロビーに避難する場合について説明する。
【0046】
次に、ステップ4で、人感覚算出部311が、地震発生時の建物10の各階の揺れに対応する加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiを算出する(ST4)。加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiの算出は、特許文献2を参考にすればよい。図9に示す例では、加速度応答波形に基づき不安を感じる人の割合yaiは、2階が0.08、3階が0.52、4階が0.86である 。
【0047】
次に、ステップ5で、家具転倒予測部312は、各部屋の家具11の転倒可能性を算出する(ST5)。家具11の転倒可能性の算出は、図7に示すサブルーチンで説明する。
【0048】
家具11の転倒可能性の算出は、まず、ステップ51で、転倒限界加速度A0<移動限界加速度Asを満足するか否かを判定する(ST51)。ステップ51において、転倒限界加速度A0<移動限界加速度Asを満足する場合、ステップ52で、床応答の最大加速度Amax>転倒率50%の加速度AR50を満足するか否かを判定する(ST52)。ステップ52において、床応答の最大加速度Amax>転倒率50%の加速度AR50を満足する場合、ステップ53で、転倒可能性が非常に高いと判定する(ST53)。
【0049】
ステップ52において、床応答の最大加速度Amax>転倒率50%の加速度AR50を満足しない場合、ステップ54で、床応答の最大加速度Amax>転倒限界加速度A0を満足するか否かを判定する(ST54)。ステップ54において、床応答の最大加速度Amax>転倒限界加速度A0を満足する場合、ステップ55で、転倒可能性が高いと判定する(ST55)。ステップ54において、床応答の最大加速度Amax>転倒限界加速度A0を満足しない場合、ステップ56で、転倒可能性が低いと判定する(ST56)。
【0050】
ステップ51において、転倒限界加速度A0<移動限界加速度Asを満足しない場合、ステップ57で、床応答の最大加速度Amax>移動限界加速度Asを満足するか否かを判定する(ST57)。ステップ57において、床応答の最大加速度Amax>移動限界加速度Asを満足する場合、ステップ58で、家具11が滑ると判定し、移動量を推定する(ST58)。ステップ57において、床応答の最大加速度Amax>移動限界加速度Asを満足しない場合、ステップ59で、家具11が滑らないと判定する。
【0051】
次に、ステップ6で、ステップ5において判定した結果、部屋に転倒可能性が非常に高い又は高い家具11が有るか否か判定する(ST6)。ステップ6において、部屋に転倒可能性が非常に高い又は高い家具11が有る場合、ステップ7で、不安を感じる人の割合yaiを補正した補正割合Yaikを算出する(ST7)。ステップ6において、部屋に転倒可能性が非常に高い又は高い家具11がない場合、ステップ8に進む。
【0052】
本実施形態の不安を感じる人の補正割合Yaikの算出は、不安を感じる人の割合yaiに補正係数γ=0.2を足せばよい。ただし、補正割合Yaikが1を超える場合はYaik=1とする。例えば、図9に示す例では、部屋2-1は、転倒可能性が非常に高い又は高い家具11が存在しないので、不安を感じる人の割合yai=0.08がそのまま補正割合Yaik=0.7となる。部屋2-2は、転倒可能性が非常に高い又は高い家具11が存在するので、不安を感じる人の割合yai=0.7に0.2を足すと補正割合Yaik=0.9となる。部屋3-3は、転倒可能性が高い家具11が存在するので、不安を感じる人の割合yai=0.89に0.2を足すと補正割合Yaik=1.09となるが、1を超えてしまうので、補正割合Yaik=1となる。
【0053】
次に、ステップ8で、不安人数算出部314が各部屋内で不安を感じている人数Paikを算出する(ST8)。各部屋内で不安を感じている人数Paikは、各部屋内の在室人数Pikに補正割合Yaikをかけて求める。図9に示す例では、部屋2-1で不安を感じている人数Paikは、部屋内の人数2人に補正割合Yaik=0.08をかけた0.16となる。また、部屋4-1で不安を感じている人数Paikは、部屋内の人数25人に補正割合Yaik=1をかけた25となる。
【0054】
次に、ステップ9で、家具転倒予測部312は、転倒可能性が非常に高い又は高い家具11の数Nikを算出する(ST9)。転倒可能性が非常に高い又は高い家具11の数Nikは、非特許文献2に記載された簡易予測手法によりもとめればよい。図9に示す例では、部屋2-3の家具数は1で、転倒可能性が非常に高い又は高い家具11の数Nikは0である。また、部屋4-1の家具数は5で、転倒可能性が非常に高い又は高い家具11の数Nikは3である。
【0055】
次に、ステップ10で、優先度取得部315は、避難の優先度を決定する(ST10)。優先度取得部315は屋内で不安を感じている人数Paikが多い部屋から避難の優先順位を高く決定すればよい。なお、部屋内で不安を感じている人数Paikが同じ場合には、転倒可能性が非常に高い又は高いと判定された家具11の数Nikが多い部屋の避難優先順位を高くすればよい。図9に示す例では、部屋4-1において不安を感じている人数Paik=25が一番多いので、避難優先順位を1番とする。続いて、部屋4-5が2番、部屋4-4が3番という様に避難優先順位を決定する。
【0056】
次に、ステップ11で、占有時間算出部316は、建物10の各部屋の在室人数pikと避難階段までの距離uiknから、各避難階段の避難ルート占有時間tiknを算出する(ST11)。避難ルート占有時間tiknは、式(4)から算出する。本実施形態の歩行速度vは0.8m/s、補正係数αは1.5、各部屋から各避難階段までの距離uiknは図6及び図9に示したように、予め入力しておくと好ましい。
【0057】
次に、ステップ12で、ルート決定部317は、各部屋の在室者の避難ルートを決定する(ST12)。図10は、本実施形態の避難誘導方法における避難ルートの計算例を示す。図10(a)は、図9を避難優先度順に並び替えた表、図10(b)は、避難ルート占有時間総計表である。
【0058】
本実施形態の避難ルートは、以下の計算によって決定する。まず、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計をTkn(x-1)とする。避難優先度Eik=xの部屋において、第n階段のそれぞれの避難ルート占有時間総計Tkn(x)は、以下の式(A)で示す。避難優先度Eik=xの部屋の避難ルートは、各避難ルート占有時間総計Tk1(x)、Tk2(x)…Tkn(x)のうち、最も短い避難ルートに決定すればよい。
Tkn(x)=Tkn(x-1)+tikn (A)
ここで、
Tkn(x)は、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
Tkn(x-1)は、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計
である。
【0059】
図10に示す例では、避難優先度Eikが1番の部屋4-1の在室者が避難ルート占有時間tiknの1番目に短い第1避難階段61を使用する。避難優先度Eikが2番の部屋4-5の在室者は、第1避難階段61の避難ルート占有時間総計Tk1(2)=206に対して、第2避難階段62の避難ルート占有時間総計Tk2(2)は615、第3避難階段63の避難ルート占有時間総計Tk3(2)は769なので、最も短い第1避難階段61の避難ルートを使用する。避難優先度Eikが3番の部屋4-4の在室者は、第1避難階段61の避難ルート占有時間総計Tk1(3)=831に対して、第2避難階段2の避難ルート占有時間総計Tk2(3)は75、第3避難階段63の避難ルート占有時間総計Tk3(3)は125なので、最も短い第2避難階段62の避難ルートを使用する。その後、ルート決定部317は、避難ルートを順次決定する。
【0060】
次に、ステップ13で、ルート指示部318は、避難ルート及び避難行動を指示する(ST13)。ルート指示部318は、優先度取得部315が算出した優先順位に基づいて、個人の連絡装置4等にルート決定部317が決定した避難ルート及び避難行動を指示する。なお、避難ルートのみを指示してもよい。
【0061】
例えば、図10に示す例では、避難優先度Eikが1番の部屋4-1の連絡装置4等に「避難」を指示し、避難ルートとなる第1避難階段61を指示する。また、避難優先度Eikが2番の部屋4-5の在室者は、避難ルートが第1避難階段61に決定しているが、部屋4-1の在室者が約103秒間、第1避難階段61を使用するので、部屋4-1の在室者の避難が完了するまで、部屋4-5の連絡装置4等には、「待機」と指示する。
【0062】
避難優先度Eikが3番の部屋4-4の連絡装置4等には、「避難」を指示し、避難ルートとなる第2避難階段62を指示する。避難優先度Eikが4番の部屋3-5の在室者は、避難ルートが第1避難階段61に決定しているが、部屋4-1の在室者が約103秒間及び部屋4-5の在室者が103秒間、第1避難階段61を使用するので、部屋4-1及び部屋4-5の在室者の避難が完了するまで、部屋3-5の連絡装置4等には、「待機」と指示する。避難優先度Eikが5番の部屋3-6の連絡装置4等には、「避難」を指示し、避難ルートとなる第3避難階段63を指示する。
【0063】
つまり、最初、第1避難階段61は部屋4-1の在室者が避難し、第2避難階段62は部屋4-4の在室者が避難し、第3避難階段63は部屋3-6の在室者が避難する。第1避難階段61からは、部屋4-1の後、部屋4-5、部屋3-5、部屋2-1の在室者が避難する。第2避難階段62からは、部屋4-4の後、部屋4-6、部屋3-4、部屋4-2、部屋4-3、部屋2-2、部屋2-4の在室者が避難する。第3避難階段63からは、部屋3-6の後、部屋4-8、部屋3-1、部屋3-2、部屋3-3、部屋4-7、部屋2-3の在室者が避難する。最終的に、第1避難階段61の避難ルート占有時間総計Tk1は372秒、第2避難階段62の避難ルート占有時間総計Tk2は395秒、第3避難階段63の避難ルート占有時間総計Tk3は384秒となる。
【0064】
このような避難誘導方法によれば、地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させることができる。
【0065】
以上、本実施形態の避難誘導装置3は、建物内の各部屋に存在する在室者の避難を誘導する避難誘導装置3であって、避難誘導装置3は、各部屋の在室人数Pikを取得する人数取得部310と、各部屋の避難の優先度を取得する優先度取得部315と、人数取得部310が取得した各部屋の在室人数Pikと予め定めた複数の各避難ルートまでの距離uiknとから各避難ルートで避難した場合の避難ルート占有時間tiknを算出する占有時間算出部316と、優先度取得部315が取得した避難優先度Eik及び占有時間算出部316が算出した避難ルート占有時間tiknに基づいて避難ルートを選択するルート決定部317と、優先度取得部315が取得した避難優先度Eik及びルート決定部317が決定した避難ルートに基づいて、在室者に避難ルートを指示するルート指示部318と、を備える。したがって、本実施形態の避難誘導装置3によれば、地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させることができる。
【0066】
また、本実施形態の避難誘導装置3では、占有時間算出部316は、在室者の中に通常の避難ルート占有時間tiknよりも避難に時間を要する人がいる場合、補正係数αにより避難に時間を要する人の避難ルートの避難ルート占有時間tiknを補正する。したがって、本実施形態の避難誘導装置3によれば、より適切に避難ルートを指示することができる。
【0067】
また、本実施形態の避難誘導装置3では、ルート決定部317は、避難優先度Eik=x-1時点の第nルートの避難ルート占有時間総計をTkn(x-1)とし、避難優先度Eik=xの部屋において、第nルートのそれぞれの避難ルート占有時間総計Tkn(x)を以下の式(A)で示した場合、避難優先度Eik=xの部屋の避難ルートは、各避難ルート占有時間総計Tk1(x)、Tk2(x)…Tkn(x)のうち、最も短い避難ルートに決定する。したがって、本実施形態の避難誘導装置3によれば、より効率的に避難ルートを指示することができる。
Tkn(x)=Tkn(x-1)+tikn (A)
ここで、
Tkn(x)は、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
Tkn(x-1)は、避難優先度Eik=x-1時点の第n階段の避難ルート占有時間総計、
tiknは、避難優先度Eik=x時点の第n階段の避難ルート占有時間
である。
【0068】
さらに、本実施形態の避難誘導システム1は、前記避難誘導装置3と、各部屋の人の数を計測する人センサ22と、ルート指示部318が指示する内容を各部屋の人に連絡する連絡装置4と、を備える。したがって、本実施形態の避難誘導システム1によれば、地震発生時に建物在室者の所在を把握した上で、各在室者に適切な避難ルートを指示し、効率的に避難させることができる。
【0069】
なお、本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。例えば、ルート決定部317は、避難優先度Eikが連続した部屋同士の避難ルートが同じ場合、避難ルート占有時間tiknが2番目に短い避難ルートを選択してもよい。
【0070】
上記実施形態では、各実施形態の避難誘導システム1及び避難誘導装置3が有する特徴をそれぞれ説明したが、各実施形態の特徴を適宜組み合わせてもよく、例えば、任意の2つ以上を適宜組み合わせてもよいし、全てを組み合わせてもよい。
【0071】
上記実施形態では、避難誘導システム1が備える各部の機能は、1つの装置で実現されるものとして説明したが、各部の機能が複数の装置に分散されることで複数の装置で実現されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…避難誘導システム、2…センサ、21…加速度センサ、22…人センサ、
3…避難誘導装置、310…人数取得部、311…人感覚算出部、312…家具転倒予測部、313…不安感算出部、314…優先度取得部、315…占有時間算出部、316…ルート決定部、317…ルート指示部、
4…連絡装置、5…ネットワーク、10…建物、11…家具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10