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特開2024-166610パラメータ決定装置、パラメータ決定方法、プログラム、訓練装置及びパラメータ決定モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166610
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】パラメータ決定装置、パラメータ決定方法、プログラム、訓練装置及びパラメータ決定モデル
(51)【国際特許分類】
   F27D 19/00 20060101AFI20241122BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20241122BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20241122BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20241122BHJP
   F27D 21/02 20060101ALI20241122BHJP
   F27D 3/15 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F27D19/00 Z
B22D43/00 D
F27D25/00
F27D21/00 N
F27D21/02
F27D3/15 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082815
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517255566
【氏名又は名称】株式会社エクサウィザーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 基紀
(72)【発明者】
【氏名】平山 将成
(72)【発明者】
【氏名】征矢 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】川西 亮輔
【テーマコード(参考)】
4E014
4K055
4K056
【Fターム(参考)】
4E014NA09
4K055LA02
4K055LA27
4K056AA05
4K056CA01
4K056EA02
4K056FA01
4K056FA17
4K056FA23
(57)【要約】
【課題】溶解金属の表面のスラグを効率的に除去するための技術を提供することである。
【解決手段】本開示の一態様は、容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する画像取得部と、パラメータ決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す除滓機の動作パラメータを決定するパラメータ決定部と、を有するパラメータ決定装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する画像取得部と、
パラメータ決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す除滓機の動作パラメータを決定するパラメータ決定部と、
を有するパラメータ決定装置。
【請求項2】
前記パラメータ決定部は、前記動作パラメータに基づいて前記除滓機を操作するためのガイダンス情報を生成し、操作者に前記ガイダンス情報を提示する、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項3】
前記パラメータ決定部は、前記動作パラメータに基づいて前記除滓機に対する制御信号を出力する、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項4】
前記パラメータ決定モデルは、容器内の溶解金属の表面を示す画像データと、前記スラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す正解動作パラメータとから構成される訓練データによって訓練されている、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項5】
前記パラメータ決定部は、前記容器における前記溶解金属の表面領域を特定する表面領域情報を生成する、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項6】
前記表面領域情報は、楕円の中心位置及び形状を示す、請求項5に記載のパラメータ決定装置。
【請求項7】
前記パラメータ決定モデルは、前記表面領域情報に基づいて前記スラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す前記動作パラメータを決定するよう訓練されている、請求項6に記載のパラメータ決定装置。
【請求項8】
前記スラグ除去部材は、スラグを掻き出すための掻き板を先端に備える掻き出しタイプのドラッガーである、請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項9】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得することと、
パラメータ決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す除滓機の動作パラメータを決定することと、
を有する、コンピュータが実行するパラメータ決定方法。
【請求項10】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得することと、
パラメータ決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す除滓機の動作パラメータを決定することと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データと、前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す正解動作パラメータとから構成される訓練データを取得するデータ取得部と、
前記訓練データを利用して、パラメータ決定モデルを訓練する訓練部と、
を有する訓練装置。
【請求項12】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、
前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す除滓機の動作パラメータを決定する、
パラメータ決定モデルであって、
前記容器内の溶解金属の表面を示す画像データと、前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す正解動作パラメータとから構成される訓練データを利用して訓練されているパラメータ決定モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パラメータ決定装置、パラメータ決定方法、プログラム、訓練装置及びパラメータ決定モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶解炉内の溶解金属から不純物(「スラグ」、「ノロ」などと呼ばれうる)が分離し、溶解炉内において溶解金属の表面に不純物が浮遊する。浮遊する不純物(以降、「スラグ」と参照する)を取り除くため、除滓作業が行われる。典型的な除滓作業では、操作者が目視で溶解炉内の溶解金属の表面を確認しながら、あるいは、溶解炉内の溶解金属表面を撮像したカメラから送信される溶解金属の表面画像を確認しながら除滓機を操作し、除滓機に備えられたドラッガーによって溶解炉内に浮遊するスラグを炉外に掻き出している。
【0003】
効率的な除滓作業を実現するためには、熟練した操作者による除滓機の操作が必要であり、除滓機動作の自動化技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-105389号公報
【特許文献2】特開2018-179348号公報
【特許文献3】特開2020-085395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の深層学習技術の進展によって、様々な技術分野に人工知能(Artificial Intelligence:AI)技術が利用されてきている。熟練した操作者による除滓機の操作を訓練させた機械学習モデルを利用して、効率的な除滓作業を実現するための技術が所望されうる。
【0006】
本開示の1つの課題は、溶解金属の表面のスラグを効率的に除去するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する画像取得部と、パラメータ決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の高さと前記容器の傾動角とを示す除滓機の動作パラメータを決定するパラメータ決定部と、を有するパラメータ決定装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、溶解金属の表面のスラグを効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態による除滓システムを示す概略図である。
図2図2A及び2Bは、本開示の一実施形態によるスラグを溶解炉外に掻き出すための除滓機の動作を示す概略図である。
図3図3は、本開示の一実施形態によるパラメータ決定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、本開示の一実施形態によるパラメータ決定装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、本開示の一実施形態によるパラメータ決定モデルを示す概略図である。
図6図6は、本開示の一実施形態によるドラッガーの昇降動作を示す図である。
図7図7A及び7Bは、本開示の一実施形態による表面領域の検出例を示す図である。
図8図8は、本開示の一実施形態による訓練装置の機能構成を示すブロック図である。
図9図9は、本開示の一実施形態によるパラメータ決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
以下の実施の形態では、溶解炉から溶解金属のスラグを除去するための除滓機の動作パラメータを決定するパラメータ決定装置が開示される。
【0012】
[除滓システム]
図1に示されるように、本開示の一実施形態による除滓システム10は、溶解炉などの溶解金属を収容する容器20、容器20内の溶解金属のスラグを除去する除滓機30、容器20内の溶解金属の表面を撮像するカメラ40、除滓機30を操作する操作端末50、及び、除滓機30の動作パラメータを決定するパラメータ決定装置100を有する。以下の実施形態では、除滓機30は、ドラッガー31、容器傾動部32、及び、掻き板33を有し、ドラッガー31は、先端に掻き板33を備えた掻き出しタイプのスラグドラッガーである。
【0013】
除滓システム10では、パラメータ決定装置100は、カメラ40によって撮像された容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、パラメータ決定モデル60を利用して、取得した画像データに基づいて除滓機30のドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを決定する。例えば、パラメータ決定モデル60は、溶解金属の表面を示す画像データを受け付けると、画像データにおける溶解金属の表面領域に基づいて浮遊するスラグを効果的に容器20から掻き出すためのドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを決定するよう訓練された何れかの機械学習モデルであってもよい。一例として、除滓機30の容器傾動部32によって傾動された容器20内の溶解金属の表面の撮像画像を確認しながら、溶解金属の表面を浮遊するスラグを効率的に除去するよう除滓機30を操作する熟練した操作者によって操作されるドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを再現するように、パラメータ決定モデル60は訓練されている。
【0014】
例えば、図2Aに示されるような溶解金属の表面を浮遊するスラグ21に対して、パラメータ決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを受け付けると、図2Bに示されるように、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを決定する。
【0015】
なお、図示された実施例では、パラメータ決定モデル60は、パラメータ決定装置100に搭載されているが、本開示によるパラメータ決定モデル60は、これに限定されず、パラメータ決定装置100に通信接続された他の装置に配置されてもよい。この場合、パラメータ決定装置100は、画像データを当該装置に送信し、当該画像データに対してパラメータ決定モデル60から取得した動作パラメータを当該装置から受信してもよい。
【0016】
動作パラメータを取得すると、パラメータ決定装置100は、操作端末50の操作者に対するガイダンス情報として、パラメータ決定モデル60から取得した動作パラメータを操作端末50に提示してもよい。ガイダンス情報を取得すると、操作者は、取得したガイダンス情報に従って操作端末50を操作することができる。
【0017】
あるいは、パラメータ決定装置100は、除滓機30の動作を制御するための制御信号として、パラメータ決定モデル60から取得した動作パラメータを除滓機30に送信してもよい。制御信号を取得すると、取得した制御信号に従ってドラッガー31及び容器傾動部32を自動操業させることができる。
【0018】
このようにして、パラメータ決定装置100は、パラメータ決定モデル60を利用して、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データから、容器20内の溶解金属の表面を特定する表面領域情報に基づいてドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを決定することができる。これにより、容器20内の溶解金属の表面領域に適した除滓機30の操作を実現することができる。
【0019】
ここで、パラメータ決定装置100は、パーソナルコンピュータ等の計算装置によって実現されてもよく、例えば、図3に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、パラメータ決定装置100は、バスBを介し相互接続される記憶装置101、プロセッサ102、ユーザインタフェース(UI)装置103及び通信装置104を有する。
【0020】
パラメータ決定装置100における後述される各種機能及び処理を実現するプログラム又は指示は、ネットワークなどを介し何れかの外部装置からダウンロードされてもよいし、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の着脱可能な記憶媒体から提供されてもよい。
【0021】
記憶装置101は、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどによって実現され、インストールされたプログラム又は指示と共に、プログラム又は指示の実行に用いられるファイル、データ等を格納する。記憶装置101は、非一時的な記憶媒体(non-transitory storage medium)を含んでもよい。
【0022】
プロセッサ102は、1つ以上のプロセッサコアから構成されうる1つ以上のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、処理回路(processing circuitry)等によって実現されてもよく、記憶装置101に格納されたプログラム、指示、当該プログラム若しくは指示を実行するのに必要なパラメータなどのデータ等に従って、後述されるパラメータ決定装置100の各種機能及び処理を実行する。
【0023】
インタフェース装置103は、パラメータ決定装置100のユーザとの間のインタフェースを実現する。例えば、ユーザは、ディスプレイ又はタッチパネルに表示されたGUI(Graphical User Interface)をキーボード、マウス等を操作し、インタフェース装置103を介しパラメータ決定装置100との間で各種情報、データ、指示などを送受信する。
【0024】
通信装置104は、外部装置、インターネット、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークとの通信処理を実行する各種通信回路により実現される。
【0025】
しかしながら、上述したハードウェア構成は単なる一例であり、本開示によるパラメータ決定装置100は、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。
【0026】
[パラメータ決定装置]
次に、図4を参照して、本開示の一実施形態によるパラメータ決定装置100を説明する。図4は、本開示の一実施形態によるパラメータ決定装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
図4に示されるように、パラメータ決定装置100は、画像取得部110及びパラメータ決定部120を有する。画像取得部110及びパラメータ決定部120の各機能部は、パラメータ決定装置100の記憶装置101に格納されているコンピュータプログラムがプロセッサ102によって実行されることによって実現されてもよい。
【0028】
画像取得部110は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する。具体的には、画像取得部110は、カメラ40によって撮像された容器20内の溶解金属の表面を示す画像データをカメラ40から取得する。ここで、画像データは、カメラ40によって撮影される溶解金属の表面の動画データからサンプリングされた画像フレームであってもよい。画像フレームのサンプリングは、例えば、ドラッガー31によるスラグ除去動作の開始時などに実行されてもよく、サンプリングされた画像フレームは、スラグ除去動作の開始時の溶解金属の表面領域を示すものであってもよい。カメラ40から画像データを取得すると、画像取得部110は、取得した画像データをパラメータ決定部120に提供する。また、画像取得部110は、操作者が操作端末50のディスプレイ上で溶解金属の表面の状態及び/又はスラグ除去動作中のドラッガー31の動きを確認できるように、カメラ40によって撮像された動画データを操作端末50に転送してもよい。
【0029】
パラメータ決定部120は、パラメータ決定モデル60を利用して、画像データに基づいて溶解金属上のスラグ21を掻き出すためのスラグ除去部材の高さと容器20の傾動角とを示す除滓機30の動作パラメータを決定する。具体的には、画像取得部110から画像データを取得すると、パラメータ決定部120は、取得した画像データをパラメータ決定モデル60に入力し、画像データにおける溶解金属の表面上を浮遊するスラグ21を効率的に掻き出すためのドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータをパラメータ決定モデル60から取得する。
【0030】
ここで、ドラッガー31の高さは、図2に示されるような除滓機30における容器20の載置台と掻き板33(例えば、先端)との間の高さに限定されるものでなく、掻き板33の先端と溶解金属の表面との間の鉛直方向の距離を規定可能な他の指標が利用されてもよい。
【0031】
一実施形態では、パラメータ決定部120は、動作パラメータに基づいて除滓機30を操作するためのガイダンス情報を生成し、操作者にガイダンス情報を提示してもよい。具体的には、パラメータ決定モデル60から動作パラメータを取得すると、パラメータ決定部120は、取得した動作パラメータに基づいて操作者が操作端末50を操作することを支援するためのガイダンス情報を生成し、ガイダンス情報を操作端末50のディスプレイ上などに表示してもよいし、及び/又は、ガイダンス情報を操作端末50のスピーカーを介し音声により通知してもよい。ガイダンス情報の支援によって、操作者は、現在の溶解金属の表面領域に適したドラッガー31の高さと容器20の傾動角によってドラッガー31と容器傾動部32とを動作させるように操作端末50を操作することができる。
【0032】
また、一実施形態では、パラメータ決定部120は、動作パラメータに基づいて除滓機30に対する制御信号を出力してもよい。具体的には、パラメータ決定モデル60から動作パラメータを取得すると、パラメータ決定部120は、取得した動作パラメータに基づいて除滓機30のドラッガー31と容器傾動部32とを動作させるための制御信号を生成し、制御信号を除滓機30に送信してもよい。制御信号によって、除滓機30は、現在の溶解金属の表面領域に適したドラッガー31の高さと容器20の傾動角とによってドラッガー31と容器傾動部32とを動作させることができる。
【0033】
なお、画像取得部110は、スラグ除去部材によってスラグ除去動作が終了する毎に、スラグ除去動作の終了後の溶解金属の表面を示す画像データを取得してもよい。具体的には、上述したようなドラッガー31による1回のスラグ除去動作が終了すると、画像取得部110は、スラグ除去動作後の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、取得した画像データをパラメータ決定部120にわたしてもよい。スラグ除去動作後の画像データを取得すると、パラメータ決定部120は、パラメータ決定モデル60を利用して、取得した画像データに示される溶解金属の表面領域に適した除滓機30に対する次の動作パラメータを決定しうる。なお、画像データの取得は、必ずしもドラッガー31による1回のスラグ除去動作が終了することに応答して実行される必要はなく、所定の回数のスラグ除去動作が終了したことに応答して、画像取得部110は、所定の回数のスラグ除去動作後の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、取得した画像データをパラメータ決定部120にわたしてもよい。また、画像データの取得は、ドラッガー31による1回のスラグ除去動作の間に、複数回実行されてもよい。
【0034】
[パラメータ決定モデル]
上述したように、パラメータ決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを受け付け、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを出力する何れかの機械学習モデルにより実現されてもよい。具体的には、パラメータ決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データと、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す正解動作パラメータとから構成される訓練データによって訓練されてもよい。例えば、パラメータ決定モデル60は、重回帰モデルなどの統計モデル、畳み込みニューラルネットワークなどのニューラルネットワークなどによって実現されてもよいし、他の何れかのタイプの機械学習モデルによって実現されてもよい。
【0035】
例えば、図5に示されるように、パラメータ決定モデル60は、訓練データデータベース(DB)80に格納されている訓練データを利用して訓練装置70によって訓練され、訓練済みのモデルが、パラメータ決定モデル60として利用されうる。パラメータ決定モデル60が、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを入力として受け付け、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す除滓機30に対する動作パラメータを出力として生成する場合、各訓練データは、溶解金属の表面を示す画像データと、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す正解動作パラメータとのペアから構成されうる。例えば、パラメータ決定モデル60がニューラルネットワークによって実現される場合、訓練装置70は、訓練対象のニューラルネットワークの入力層に訓練用の画像データを入力し、出力層から取得した動作パラメータと対応する正解動作パラメータとの比較結果に応じて訓練対象のニューラルネットワークのパラメータを更新してもよい。
【0036】
このような正解動作パラメータは、熟練した操作者による除滓機30の操作データに基づいて生成されてもよい。例えば、図6に示される時系列データは、ある傾動角に傾動された容器20内の溶解金属上のスラグ21を掻き出す際の熟練した操作者によるドラッガー31の昇降動作の一例を示す。図6に示される時系列データは、時点t3においてドラッガー31を降下させ、時点t4において降下動作を停止するよう操作端末50に指示する。そして、操作者は、時点t5においてドラッガー31を上昇させ、時点t6において上昇動作を停止するよう操作端末50に指示する。この降下動作により降下されたドラッガー31又は掻き板33の高さがドラッガー31の正解の高さとして利用され、そのときの容器20の傾動角が容器20の正解の傾動角として利用されてもよい。なお、ドラッガー31は、動作パラメータによって設定されるドラッガー31の高さまでしか降下しないよう制御される。すなわち、操作者がドラッガー31を降下するよう操作しても、ドラッガー31は、動作パラメータに示される高さまでしか降下できないよう設定されている。
【0037】
一実施形態では、パラメータ決定部120は、容器20における溶解金属の表面領域を特定する表面領域情報を生成してもよい。ここで、表面領域情報は、容器20内の溶解金属の表面領域の位置と形状とを示すものであってもよい。例えば、容器20が鍋形状である場合、傾動された容器20内の溶解金属の表面は楕円形状となりうる。この場合、表面領域情報は、3次元空間における楕円状の表面領域の中心位置及び形状を示すものであってもよい。例えば、パラメータ決定部120は、画像取得部110から画像データを取得すると、取得した画像データに対して何れか公知の楕円フィッティング処理を実行し、画像データにおける溶解金属の表面領域を抽出してもよい。
【0038】
具体的には、図7Aに示されるような画像データを取得した場合、パラメータ決定部120は、何れか公知の楕円フィッティング処理を実行し、図7Bの破線に示されるような楕円を抽出することができうる。典型的には、容器20の側壁と溶解金属の表面との間の境界は、輝度差などによって視覚的に検出できうるものであり、楕円状の溶解金属の表面領域を画像処理によって抽出可能である。このようにして楕円の形状を検出すると、パラメータ決定部120は、楕円の形状と撮影時の容器20の傾動角と鍋台座に対するカメラの相対的な位置姿勢とに基づいて、3次元空間における楕円の中心座標を導出することができうる。パラメータ決定部120は、導出した表面領域を規定する楕円の中心位置及び形状をパラメータ決定モデル60に入力し、パラメータ決定モデル60からドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを取得してもよい。
【0039】
この場合、パラメータ決定モデル60は、楕円の中心位置及び形状(例えば、長軸の長さ及び短軸の長さ)を説明変数として受け付け、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを目的変数として出力する重回帰モデルとして実現されてもよい。例えば、パラメータ決定モデル60は、楕円の中心位置及び形状に対応する表面領域を確認した熟練した操作者が設定したドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す操作データから導出される重回帰モデルであってもよい。
【0040】
また、一実施形態では、パラメータ決定モデル60には、画像データにおける輝度分布を示す輝度分布データが入力されてもよい。溶解金属の温度はスラグ21の温度より有意に高くなっており、溶解金属の表面を撮像することによって取得された画像データにおいて、溶解金属の表面領域と容器20の側壁とでは、有意な輝度差が生じうる。このため、パラメータ決定モデル60は、画像データにおける輝度分布を示す輝度分布データと、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す正解動作パラメータとから構成される訓練データによって訓練されてもよい。この場合、パラメータ決定部120は、このように訓練されたパラメータ決定モデル60を利用するため、前処理として画像データから輝度分布データを導出し、導出された輝度分布データをパラメータ決定モデル60に入力してもよい。このようにして、輝度分布データを利用することによって、パラメータ決定モデル60は、容器20内の表面領域をより良好に特定することが可能になり、動作パラメータをより良好に決定することができうる。
【0041】
[訓練装置]
次に、図8を参照して、本開示の一実施形態による訓練装置70を説明する。訓練装置70は、サーバ等の計算装置として実現可能であり、限定することなく、図3に示されるようなパラメータ決定装置100と同様のハードウェア構成により実現されうる。図8は、本開示の一実施形態による訓練装置70の機能構成を示すブロック図である。図8に示されるように、訓練装置70は、データ取得部71及び訓練部72を有する。
【0042】
データ取得部71は、パラメータ決定モデル60を訓練するための訓練データを取得する。訓練データは、例えば、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データと、溶解金属上のスラグ21を掻き出すためのスラグ除去部材の高さと容器20の傾動角とを示す正解動作パラメータとから構成されうる。訓練データは、好適には、熟練した操作者による除滓機30の操作データに基づいて生成され、画像データにおける溶解金属の表面領域に基づいて浮遊するスラグを効果的に容器20から掻き出すためのドラッガー31の高さと容器20の傾動角とから構成されてもよい。
【0043】
訓練部72は、訓練データを利用して、パラメータ決定モデル60を訓練する。例えば、パラメータ決定モデル60が、ニューラルネットワークによって実現される場合、訓練部72は、訓練対象のパラメータ決定モデル60に訓練データの画像データを入力し、訓練対象のパラメータ決定モデル60から出力結果を取得する。そして、訓練部72は、取得した出力結果と訓練データの正解動作パラメータとを比較し、出力結果と正解動作パラメータとの間の誤差に基づいて、誤差逆伝播法に従ってパラメータ決定モデル60のパラメータを調整する。最終的に取得されるパラメータ決定モデル60が、パラメータ決定装置100に提供される。
【0044】
このようにして取得されたパラメータ決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得すると、画像データに基づいて溶解金属上のスラグ21を掻き出すためのスラグ除去部材の高さと容器20の傾動角とを示す除滓機30の動作パラメータを決定しうる。
【0045】
[パラメータ決定処理]
次に、図9を参照して、本開示の一実施形態によるパラメータ決定処理を説明する。当該パラメータ決定処理は、上述したパラメータ決定装置100によって実行され、より詳細には、パラメータ決定装置100の1つ以上のプロセッサ102が1つ以上の記憶装置101に格納された1つ以上のプログラム又は指示を実行することによって実現されてもよい。図9は、本開示の一実施形態によるパラメータ決定処理を示すフローチャートである。
【0046】
図9に示されるように、ステップS101において、パラメータ決定装置100は、容器20内の溶解金属の表面の画像データを取得する。具体的には、パラメータ決定装置100は、容器20の上方に配置されたカメラ40から、容器20内の溶解金属の表面領域を示す画像データを取得する。
【0047】
ステップS102において、パラメータ決定装置100は、パラメータ決定モデル60を利用して、スラグ除去部材の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを生成する。具体的には、パラメータ決定装置100は、取得した画像データ及び/又は当該画像データから導出された輝度分布データをパラメータ決定モデル60に入力し、パラメータ決定モデル60からドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを取得する。パラメータ決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面領域に基づいて動作パラメータを生成するよう訓練されたものであってもよい。
【0048】
例えば、パラメータ決定モデル60は、画像データ及び/又は輝度分布データを入力として受け付けると、ドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを出力するよう訓練されたニューラルネットワークであってもよい。また、パラメータ決定装置100は、画像データ及び/又は輝度分布データに対して、容器20内の溶解金属の楕円状の表面領域を抽出するための楕円フィッティング処理を実行し、抽出された楕円の中心位置及び形状を導出してもよい。その後、パラメータ決定装置100は、重回帰モデルとして実現されるパラメータ決定モデル60の説明変数に導出された楕円の中心位置及び形状を入力し、目的変数としてドラッガー31の高さと容器20の傾動角とを示す動作パラメータを取得してもよい。
【0049】
ステップS103において、パラメータ決定装置100は、除滓機30を操作するためのガイダンス情報として動作パラメータを提示してもよい。具体的には、パラメータ決定装置100は、取得した動作パラメータに基づいて操作者をガイドするためのガイダンス情報を生成し、ガイダンス情報を操作端末50に送信してもよい。ガイダンス情報を取得すると、操作端末50は、操作者による除滓機30の操作をガイドするようディスプレイ上にガイダンス情報を表示してもよいし、及び/又はスピーカーを介しガイダンス情報を通知してもよい。操作端末50は、操作者によるドラッガー31の昇降動作によってドラッガー31を昇降させるが、動作パラメータに示されるドラッガー31の高さを超過してドラッガー31を降下させることはない。
【0050】
あるいは、パラメータ決定装置100は、ドラッガー31と容器傾動部32とを動作させるための制御信号を除滓機30に出力してもよい。具体的には、パラメータ決定装置100は、ドラッガー31と容器傾動部32とを動作させるための制御信号を生成し、制御信号を除滓機30に送信してもよい。制御信号を受信すると、除滓機30は、制御信号に従ってドラッガー31と容器傾動部32とを動作させる。
【0051】
ステップS104において、パラメータ決定装置100は、スラグ除去動作を終了するか判定する。例えば、パラメータ決定装置100は、所定の回数のスラグ除去動作が終了したか判断し、所定の回数のスラグ除去動作が終了した場合、当該パラメータ決定処理を終了してもよい。あるいは、パラメータ決定装置100は、スラグ除去動作の開始から所定の時間が経過した場合、当該パラメータ決定処理を終了してもよい。あるいは、パラメータ決定装置100は、容器20内のスラグ残量及び/又は直近のスラグ除去量が所定の閾値以下になった場合、当該パラメータ決定処理を終了してもよい。他方、所定の回数のスラグ除去動作が終了していない場合、スラグ除去動作の開始から所定の時間が経過していない場合、あるいは、容器20内のスラグ残量及び/又は直近のスラグ除去量が所定の閾値以下になっていない場合、パラメータ決定装置100は、ステップS101に戻って、スラグ除去動作を継続する。
【0052】
上述した実施形態によると、熟練した操作者によるドラッガー31のスラグ除去動作に基づいて訓練されたパラメータ決定モデル60を利用して、溶解金属の表面領域に適した除滓機30に対する動作パラメータを取得することが可能になる。これにより、熟練度の低い操作者であっても、パラメータ決定モデル60から出力された動作パラメータに従ってドラッガー31と容器傾動部32とを操作することが可能であり、また、パラメータ決定モデル60から出力された動作パラメータに従ってドラッガー31と容器傾動部32との動作を自動制御することが可能である。
【0053】
以上、本開示の実施の形態について詳述したが、本開示は上述した特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 除滓システム
20 容器
21 スラグ
30 除滓機
31 ドラッガー
32 容器傾動部
33 掻き板
40 カメラ
50 操作端末
60 パラメータ決定モデル
70 訓練装置
80 訓練データDB
100 パラメータ決定装置
110 画像取得部
120 パラメータ決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9