(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166615
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】造形ステージ、三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/245 20170101AFI20241122BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20241122BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241122BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/118
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082820
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 啓太郎
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL56
4F213WL73
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】造形ステージを改善する。
【解決手段】造形ステージは、造形材料が堆積される造形面を有し、造形面には、平面視で、1つの円の円周に沿って所定の弧度を有する複数の溝が形成され、複数の溝は、それぞれ、平面視で第1方向に向かって造形面からの深さが深くなる方向に傾斜し、且つ第1の深さである第1部分と、第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2部分と、を有し、溝を記円の中心を通る直線で切断したときの断面を見たときに、造形面に開口する開口幅のうち、第1部分における開口幅を第1開口幅とし、且つ第2部分における開口幅を第2開口幅として、第1開口幅が第2開口幅よりも大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元造形用の造形材料が堆積される造形面を有する造形ステージであって、
前記造形面には、前記造形面を平面視したとき、1つの円の円周に沿って所定の弧度を有する複数の溝が形成され、
前記複数の溝は、それぞれ、平面視で第1方向に向かって前記造形面からの深さが深くなる方向に傾斜し、且つ前記深さが第1の深さである第1部分と、前記深さが前記第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2部分と、を有し、
前記溝を前記円の中心を通る直線で切断したときの断面を見たときに、前記造形面に開口する開口幅のうち、前記第1部分における前記開口幅を第1開口幅とし、且つ前記第2部分における前記開口幅を第2開口幅として、前記第1開口幅が前記第2開口幅よりも大きい、
造形ステージ。
【請求項2】
前記1つの円を第1の円とし、前記第1の円と同心で、且つ前記第1の円とは異なる第2の円の円周に沿って、さらに複数の前記溝が形成されている、
請求項1に記載の造形ステージ。
【請求項3】
前記第1の円に対応する前記複数の溝をそれぞれ第1溝とし、且つ前記第2の円に対応する前記複数の溝をそれぞれ第2溝として、
平面視で、前記第1溝のうち前記深さがもっとも浅い第1箇所と前記第1の円の中心とを通る直線が、前記第2溝のうち前記深さがもっとも浅い第2箇所に重ならない、
請求項2に記載の造形ステージ。
【請求項4】
請求項1に記載の造形ステージに前記造形材料で三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、
前記造形材料を吐出するノズルで前記造形材料を前記造形面に塗布するときに、平面視で、前記1つの円の前記円周に沿って前記造形ステージに対する前記ノズルの位置を前記第1方向に変化させながら塗布し、
前記造形材料を前記造形ステージから分離するときに、前記造形面を平面視したときに、前記1つの円の中心を回転軸として前記造形ステージに対する前記造形材料の回転位置を前記第1方向と逆の第2方向に変化させる、
三次元造形方法。
【請求項5】
前記造形材料を前記造形面に塗布するときに、平面視で、前記回転軸を中心に前記造形面を前記第2方向に回転させる、
請求項4に記載の三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形ステージ、三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、造形ステージに三次元造形物を造形することができる三次元造形装置が知られている。特許文献1は、造形ステージの一例として、貫通孔が形成された上部プレートと、貫通孔に挿入される凸部を有する下部プレートとを備えるステージを開示する。造形時には、凸部が上部プレートの上面から突出することによって造形ステージと三次元造形物との固定性が高められる。造形後には、凸部が上部プレートの上面よりも下方に退避することによって三次元造形物を造形ステージから分離することができる。特許文献1は、貫通孔と凸部とを水平面に対して傾斜させる構成を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する造形ステージでは、すべての貫通孔の傾斜方向が一定である。断面で見たときに、1つの凸部の外周と水平面とがなす角度が鋭角である箇所と鈍角である箇所が存在する。すべての貫通孔の傾斜方向が一定である場合、凸部の外周と水平面とがなす角度が鈍角となる箇所の方向が、すべての貫通孔で一定となる。従来の造形ステージには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
造形ステージは、三次元造形用の造形材料が堆積される造形面を有する造形ステージであって、前記造形面には、前記造形面を平面視したとき、1つの円の円周に沿って所定の弧度を有する複数の溝が形成され、前記複数の溝は、それぞれ、平面視で第1方向に向かって前記造形面からの深さが深くなる方向に傾斜し、且つ前記深さが第1の深さである第1部分と、前記深さが前記第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2部分と、を有し、前記溝を前記円の中心を通る直線で切断したときの断面を見たときに、前記造形面に開口する開口幅のうち、前記第1部分における前記開口幅を第1開口幅とし、且つ前記第2部分における前記開口幅を第2開口幅として、前記第1開口幅が前記第2開口幅よりも大きい。
【0006】
三次元造形方法は、上記の造形ステージに前記造形材料で三次元造形物を造形する三次元造形方法であって、前記造形材料を吐出するノズルで前記造形材料を前記造形面に塗布するときに、平面視で、前記1つの円の前記円周に沿って前記造形ステージに対する前記ノズルの位置を前記第1方向に変化させながら塗布し、前記造形材料を前記造形ステージから分離するときに、前記造形面を平面視したときに、前記1つの円の中心を回転軸として前記造形ステージに対する前記造形材料の回転位置を前記第1方向と逆の第2方向に変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
三次元造形装置1は、
図1に示すように、吐出部2と、供給装置3と、造形ステージ4と、移動機構部5と、制御部6と、を有する。三次元造形装置1は、吐出部2から造形ステージ4に向かって造形材料を吐出しつつ、吐出部2と造形ステージ4との相対的な位置を変化させることができる。吐出部2と造形ステージ4との相対的な位置は、移動機構部5によって造形ステージ4を移動させることによって行われる。吐出部2と造形ステージ4との相対的な位置は、吐出部2を移動させることによっても実現できる。さらに、吐出部2と造形ステージ4との相対的な位置は、造形ステージ4及び吐出部2の双方を移動させることによっても実現できる。
【0009】
三次元造形装置1の動作は、制御部6によって制御される。三次元造形装置1は、造形ステージ4の造形面11に所望の形状の三次元造形物を造形することができる。造形面11の「面」とは、平面だけで構成された面だけではなく一定の領域を占める面として把握可能なものを含む。面は、例えば、その表面に凹凸が形成されていてもよい。なお、三次元造形物を造形することを、三次元造形と呼ぶこともある。また、造形材料のことを溶融材料と呼ぶこともある。
【0010】
図1には、X軸、Y軸、及びZ軸が付されている。X軸、Y軸、及びZ軸は、相互に直交する座標軸である。これ以降に示す図についても必要に応じてX軸、Y軸、及びZ軸が付される。この場合、各図におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、
図1におけるX軸、Y軸、及びZ軸に対応する。
図1は、X軸とY軸とによって規定されるXY平面に三次元造形装置1を配置した状態を示す。本実施形態では、XY平面を水平な平面に一致させた状態で三次元造形装置1をXY平面に配置したときの状態が、三次元造形装置1の使用状態である。水平面に一致させたXY平面に三次元造形装置1を配置したときの三次元造形装置1の姿勢を、三次元造形装置1の使用姿勢と呼ぶ。
【0011】
三次元造形装置1の構成部品やユニットを示す図や説明にX軸、Y軸、及びZ軸が表記される場合がある。その場合、構成部品やユニットを三次元造形装置1に組み込んだ状態でのX軸、Y軸、及びZ軸を意味する。また、三次元造形装置1の使用姿勢における各構成部品やユニットの姿勢を、それらの構成部品やユニットの使用姿勢と呼ぶ。そして、以下において、三次元造形装置1や、その構成部品、ユニット等の説明では、特にことわりがないときには、それぞれの使用姿勢での説明とする。
【0012】
なお、三次元造形装置1が実際に使用される場面では、水平面は、実質的に水平な面であればよい。実質的な水平には、例えば、三次元造形装置1が使用されるときに載置される面について許容される傾斜範囲内で傾斜が含まれる。このようなことから、実質的な水平面は、例えば、高精度に形成された定盤などの面に限定されない。実質的な水平面には、例えば、三次元造形装置1が使用されるときに載置される机や、台、棚、床などの種々の面が含まれる。また、鉛直方向は、厳密に重力方向に沿った距離に限定されず、実質的な水平面に対する垂直方向も含まれる。このため、実質的な水平面が、例えば、机や、台、棚、床などの面であるときには、鉛直方向は、これらの面に対する垂直方向を指す。
【0013】
X軸、Y軸、及びZ軸には、それぞれ、矢印が付される。X軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれにおいて、矢印の向きが+(正)の方向を示し、矢印の向きとは反対の向きが-(負)の方向を示す。Z軸は、XY平面に直交する軸である。三次元造形装置1の使用状態において、+Z方向が鉛直上方向となる。三次元造形装置1の使用状態では、
図1において、-Z方向が鉛直下方向である。XY平面を-Z方向に視認することを平面視と呼ぶ。
【0014】
造形ステージ4は、移動機構部5による駆動によって、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに沿って変位可能である。造形ステージ4は、移動機構部5による駆動によって、X軸に沿って往復移動可能である。造形ステージ4は、移動機構部5による駆動によって、Y軸に沿って往復移動可能である。造形ステージ4は、移動機構部5による駆動によって、Z軸に沿って往復移動可能である。造形ステージ4は、移動機構部5による駆動によって、回転軸RZを中心に回転可能である。回転軸RZは、Z軸に沿って延びる軸である。
【0015】
移動機構部5は、Xモーター13、Yモーター14、Zモーター15及びθモーター16を有する。Xモーター13、Yモーター14、Zモーター15及びθモーター16の駆動は、制御部6によって制御される。移動機構部5は、Xモーター13の駆動力によって、造形ステージ4をX軸に沿って移動させる。移動機構部5は、Yモーター14の駆動力によって、造形ステージ4をY軸に沿って移動させる。移動機構部5は、Zモーター15の駆動力によって、造形ステージ4をZ軸に沿って移動させる。移動機構部5は、θモーター16の駆動力によって、造形ステージ4を回転軸RZを中心に回転させる。
【0016】
吐出部2は、可塑化部17と、ノズル18と、を有する。可塑化部17は、造形材料の原料である粒状材料19を溶融して造形材料にする。ノズル18は、造形材料を吐出する。供給装置3は、粒状材料19を吐出部2に供給する。粒状材料19は、粒状に形成された樹脂材料である。粒状材料19は、ペレット状や粉末状の材料も含む。供給装置3から吐出部2に供給される粒状材料19は、供給路20を介して可塑化部17に供給される。
【0017】
可塑化部17は、スクリューケース21と、駆動モーター22と、ヒーター23と、スクリュー24と、バレル25とを備えている。可塑化部17は、供給路20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル18に供給する。「可塑化」とは、熱可塑性を有する材料に熱が加わり溶融することを意味する。「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現することをも意味する。なお、本実施形態のスクリュー24は、フラットスクリューで構成される。
【0018】
スクリューケース21は、スクリュー24を収容するための筐体である。スクリューケース21の下面には、バレル25が固定されている。スクリューケース21とバレル25とによって囲まれた空間に、スクリュー24が収容されている。スクリューケース21の上面には、駆動モーター22が固定されている。スクリュー24は、Z軸に沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。スクリュー24は、バレル25に対向する面に、スクリュー溝26が形成された溝形成面27を有している。溝形成面27は、具体的には、バレル25のスクリュー対向面28と対向する。スクリュー24は、中心軸RXを回転軸として回転可能に構成されている。
【0019】
駆動モーター22は、スクリュー24の+Z方向に位置する。駆動モーター22は、スクリュー24の溝形成面27とは反対側の面に接続されている。駆動モーター22は、スクリュー24を回転させるための動力を発生する。スクリュー24は、駆動モーター22からの動力によって、中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター22の駆動は、制御部6によって制御される。なお、駆動モーター22は、直接、スクリュー24と接続されていなくてもよい。例えば、スクリュー24と駆動モーター22とは、減速機を介して接続されていてもよい。
【0020】
バレル25は、スクリュー24の-Z方向に位置する。バレル25は、スクリュー24の溝形成面27と対向して配置されている。バレル25は、スクリュー24の溝形成面27に対向するスクリュー対向面28を有する。バレル25には、スクリュー24の中心軸RX上に、連通孔29が設けられている。可塑化部17によって生成された造形材料は、連通孔29を介してノズル18へと供給される。ヒーター23は、バレル25に埋設されている。バレル25には、Y軸に沿って延びる2本の棒状のヒーター23が設けられている。ヒーター23は、スクリュー24とバレル25との間に供給された材料を加熱する。ヒーター23の駆動は、制御部6によって制御される。
【0021】
ノズル18は、バレル25の-Z方向に配置されている。ノズル18には、ノズル流路30と、ノズル孔31とが形成されている。ノズル流路30は、ノズル18内に設けられた流路である。ノズル流路30は、バレル25の連通孔29と連通する。ノズル孔31は、ノズル18の-Z方向の端部に開口している。ノズル孔31は、ノズル流路30の-Z方向の端部である。ノズル孔31は、ノズル流路30の-Z方向の端部に設けられた流路断面が縮小された部分を含む。可塑化部17からノズル流路30に供給された造形材料は、ノズル孔31から吐出される。本実施形態では、ノズル孔31の開口形状は円形である。なお、ノズル孔31の開口形状は円形に限られず、例えば、楕円や、四角形、四角形以外の多角形などであってもよい。
【0022】
図2に示すように、スクリュー24は、溝形成面27を有する。溝形成面27には、スクリュー溝26が設けられている。スクリュー24の溝形成面27の中央部であるスクリュー中央部33は、スクリュー溝26の一端が接続されている窪みとして構成されている。スクリュー中央部33は、
図1に示すバレル25の連通孔29に対向する。スクリュー中央部33は、中心軸RXと交差する。
【0023】
図2に示すように、スクリュー24のスクリュー溝26は、いわゆるスクロール溝を構成する。スクリュー溝26は、スクリュー中央部33から、スクリュー24の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。スクリュー溝26は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面27には、凸条部34が設けられている。凸条部34は、スクリュー溝26の側壁部を構成する。凸条部34は、各スクリュー溝26に沿って延びる。スクリュー溝26は、スクリュー24の側面35に形成された材料導入口36まで連続する。材料導入口36は、
図1に示す供給路20を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0024】
図2には、3つのスクリュー溝26と、3つの凸条部34と、を有するスクリュー24の例が示されている。スクリュー24に設けられるスクリュー溝26や凸条部34の数は、3つには限定されない。スクリュー24には、1つのスクリュー溝26のみが設けられていてもよいし、2以上の複数のスクリュー溝26が設けられていてもよい。また、スクリュー溝26の数に合わせて任意の数の凸条部34が設けられてもよい。
【0025】
図2には、材料導入口36が3箇所に形成されているスクリュー24の例が図示されている。スクリュー24に設けられる材料導入口36の数は、3箇所に限定されない。スクリュー24には、材料導入口36が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0026】
図3に示すように、バレル25は、スクリュー対向面28を有する。スクリュー対向面28の中央には、連通孔29が形成されている。スクリュー対向面28における連通孔29の周りには、複数の案内溝37が形成されている。それぞれの案内溝37は、一端が連通孔29に接続され、連通孔29からスクリュー対向面28の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝37は、造形材料を連通孔29に導く機能を有している。なお、造形材料を効率良く連通孔29へと到達させるために、バレル25には案内溝37が形成されていると好ましいが、案内溝37が形成されていなくてもよい。
【0027】
制御部6は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。制御部6は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーによって実行することで、種々の機能を発揮する。例えば、制御部6は、三次元造形処理を実行する機能等を発揮する。なお、制御部6は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0028】
三次元造形処理とは、三次元造形物を造形するための処理を指す。三次元造形処理のことを、単に造形処理と呼ぶこともある。制御部6は、三次元造形処理において、可塑化部17と移動機構部5とを制御して、吐出部2から造形面11に造形材料を吐出し、造形面11上に造形材料を堆積させる。より具体的には、制御部6は、造形面11上に吐出した造形材料を固化させつつ、造形材料の層を形成することによって、三次元造形物を造形する。造形材料の固化とは、吐出部2から吐出された造形材料が流動性を失うことを指す。本実施形態では、造形材料は、冷えることによって熱収縮するとともに流動性を失って固化する。
【0029】
本実施形態の制御部6は、三次元造形処理において、造形データに従って三次元造形物を造形する。制御部6は、例えば、三次元CADソフトや三次元CGソフトを用いて作成された三次元造形物の形状を表す形状データ上の三次元造形物を所定の厚みの層に分割することによって、造形データを生成する。この場合、制御部6は、例えば、三次元造形装置1に接続された外部のコンピューター等から形状データを取得できる。また、制御部6は、例えば、造形データを生成することなく、外部のコンピューター等から直接、造形データを取得してもよい。更に、例えば、スライサーソフト等によって造形データが生成されてもよい。
【0030】
図4に示すように、造形ステージ4は、造形面11を有する。造形面11は、+Z方向に向いている。造形面11には、複数の溝41が形成されている。複数の溝41は、それぞれ、造形面11から-Z方向に向かって凹となる向きに形成されている。複数の溝41は、3つの配列42を構成する。3つの配列42では、それぞれ、複数の溝41が環状に配列する。3つの配列42を個別に識別する場合に、3つの配列42は、それぞれ、第1配列42A、第2配列42B及び第3配列42Cと表記される。第1配列42Aは、複数の溝41が環状に配列する。第2配列42Bは、複数の溝41が環状に配列する。第3配列42Cは、複数の溝41が環状に配列する。
【0031】
図5に示すように、第1配列42Aは、第1円43Aの円周に沿っている。第2配列42Bは、第2円43Bの円周に沿っている。第3配列42Cは、第3円43Cの円周に沿っている。第1円43A、第2円43B及び第3円43Cは、造形ステージ4の中心軸44を中心とする同心円である。中心軸44は、造形ステージ4の回転軸RZに一致する。第1円43A、第2円43B及び第3円43Cのうちのいずれか1つが、第1の円に対応する。第1円43A、第2円43B及び第3円43Cのうちの残りの1つが、第2の円に対応する。
【0032】
第2円43Bは、第1円43Aの外に位置する。第3円43Cは、第2円43Bの外に位置する。複数の溝41のうち第1配列42Aを構成する複数の溝41は、それぞれ、第1配列溝41Aと表記される。複数の溝41のうち第2配列42Bを構成する複数の溝41は、それぞれ、第2配列溝41Bと表記される。複数の溝41のうち第3配列42Cを構成する複数の溝41は、それぞれ、第3配列溝41Cと表記される。第1円43A、第2円43B及び第3円43Cのうちの第1の円に対応する配列42を構成する複数の溝41が第1溝に対応する。第1円43A、第2円43B及び第3円43Cのうちの第2の円に対応する配列42を構成する複数の溝41が第2溝に対応する。
【0033】
本実施形態では、各配列42を構成する溝41の個数が、3つの配列42の間で相互に等しい。つまり、第1配列42Aを構成する溝41と、第2配列42Bを構成する溝41と、第3配列42Cを構成する溝41とが、相互に等しい。第1配列溝41Aは、第1円43Aの円周に沿って伸びている。つまり、第1配列溝41Aは、第1円43Aの円弧に沿っている。第2配列溝41Bは、第2円43Bの円周に沿って伸びている。つまり、第2配列溝41Bは、第2円43Bの円弧に沿っている。第3配列溝41Cは、第3円43Cの円周に沿って伸びている。つまり、第3配列溝41Cは、第3円43Cの円弧に沿っている。
【0034】
平面視で、第1配列溝41Aの長さが、複数の第1配列溝41Aの間で相互に等しい。第1円43Aの円周のうち1つの第1配列溝41Aに重なる円弧の長さは、複数の第1配列溝41Aの間で相互に等しい。つまり、1つの第1配列溝41Aに重なる円弧を区切る平面角が、複数の第1配列溝41Aの間で相互に等しい。第1配列42Aでは、複数の溝41が同じ角度ピッチで並んでいるとも表現され得る。本実施形態では、第1円43Aの円周のうち1つの第1配列溝41Aに重なる円弧の長さは、第1円43Aの円周を8等分したときの1つの円弧の長さである。複数の第1配列溝41Aは、第1円43Aの円周に沿って相互に同一の弧度を有する。
【0035】
平面視で、第2配列溝41Bの長さが、複数の第2配列溝41Bの間で相互に等しい。第2円43Bの円周のうち1つの第2配列溝41Bに重なる円弧の長さは、複数の第2配列溝41Bの間で相互に等しい。つまり、1つの第2配列溝41Bに重なる円弧を区切る平面角が、複数の第2配列溝41Bの間で相互に等しい。第2配列42Bでは、複数の溝41が同じ角度ピッチで並んでいるとも表現され得る。本実施形態では、第2円43Bの円周のうち1つの第2配列溝41Bに重なる円弧の長さは、第2円43Bの円周を8等分したときの1つの円弧の長さである。複数の第2配列溝41Bは、第2円43Bの円周に沿って相互に同一の弧度を有する。
【0036】
平面視で、第3配列溝41Cの長さが、複数の第3配列溝41Cの間で相互に等しい。第3円43Cの円周のうち1つの第3配列溝41Cに重なる円弧の長さは、複数の第3配列溝41Cの間で相互に等しい。つまり、1つの第3配列溝41Cに重なる円弧を区切る平面角が、複数の第3配列溝41Cの間で相互に等しい。第3配列42Cでは、複数の溝41が同じ角度ピッチで並んでいるとも表現され得る。本実施形態では、第3円43Cの円周のうち1つの第3配列溝41Cに重なる円弧の長さは、第3円43Cの円周を8等分したときの1つの円弧の長さである。複数の第3配列溝41Cは、第3円43Cの円周に沿って相互に同一の弧度を有する。よって、本実施形態では、すべての溝41が同じ所定の弧度を有する。また、本実施形態では、各配列42において、周方向に隣り合う2つの溝41が互いにつながっている。つまり、周方向に隣り合う2つの溝41の間に隙間がない。
【0037】
なお、配列42の個数は3つに限定されない。配列42の個数は、1つでも2つでもよい。さらに、配列42の個数は、3つを超える個数でもよい。1つの配列42を構成する溝41の個数は8個に限定されない。1つの配列42を構成する溝41の個数は、1個以上の任意の個数でもよい。また、各配列42において、周方向に隣り合う2つの溝41の間に隙間を有する構成も採用することができる。
【0038】
図6は、造形ステージ4の溝41を説明する斜視図である。
図6は、造形ステージ4を
図5に示す第3円43Cで切断した状態を示す。各溝41は、傾斜している。各溝41は、平面視で第1方向R1に向かって造形面11からの深さが深くなる方向に傾斜する。第1方向R1は、造形面11を平面視したときに中心軸44を中心に時計回り方向である。第1方向R1の逆方向は、第2方向R2である。第2方向R2は、造形面11を平面視したときに中心軸44を中心に反時計回り方向である。各溝41は、造形面11からの深さが第1の深さである第1部分45と、深さが第1の深さよりも深い第2の深さを有する第2部分46と、を有する。複数の溝41の傾斜方向は、第2方向R2に向かって造形面11からの深さが深くなる方向でもよい。
【0039】
図7は、
図5中のA-A線における断面図である。
図7は、第3配列溝41Cの第1部分45を、中心軸44を通る直線で切断したときの断面図に対応する。
図7に示すように、第3配列溝41Cは、造形面11に開口する開口部47を有する。第1部分45における開口部47は、第1開口幅48を有する。第1部分45における溝41の底幅49は、第1開口幅48よりも大きい。各溝41の内側壁50は、溝41の底から造形面11に向かって溝41の内側に向かって傾斜する。内側壁50と水平面とがなす角度αが鋭角である。つまり、各溝41の内側壁50は、逆テーパー状に形成されている。各溝41は、いわゆるアリ溝である。
【0040】
図8は、
図5中のB-B線における断面図である。
図8は、第3配列溝41Cの第2部分46を、中心軸44を通る直線で切断したときの断面図に対応する。
図8に示すように、第3配列溝41Cの第2部分46における開口部47は、第2開口幅51を有する。第2部分46においても、溝41の底幅49は、第2開口幅51よりも大きい。本実施形態では、
図7に示す第1開口幅48が、
図8に示す第2開口幅51よりも大きい。本実施形態では、内側壁50と水平面とがなす角度αが、10~60度に設定されている。角度αが10度を下回ると、溝41の形成が困難となる。角度αが60度を超えると、後述する造形物の固定力を確保することが困難となる。また、本実施形態では、第2部分46における溝41の底幅49が、第1部分45における溝41の底幅49よりも狭い。本実施形態では、第1方向R1に向かって溝41の底幅49が徐々に狭くなる。
【0041】
また、本実施形態では、
図5に示すように、第1箇所53と中心軸44とを通る直線54が、第2箇所55に重ならない。直線54は、第3箇所56にも重ならない。第1箇所53は、第3配列溝41Cのうち造形面11からの深さがもっとも浅い箇所である。第2箇所55は、第2配列溝41Bのうち造形面11からの深さがもっとも浅い箇所である。第3箇所56は、第1配列溝41Aのうち造形面11からの深さがもっとも浅い箇所である。なお、直線54が第2箇所55に重なっていてもよい。また、直線54が第3箇所56に重なっていてもよい。さらに、直線54が第2箇所55と第3箇所56とに重なっていてもよい。
【0042】
上記の構成を有する三次元造形装置1は、ノズル孔31から造形ステージ4に向かって造形材料を吐出することによって、造形ステージ4の造形面11に造形物を形成することができる。このとき、三次元造形装置1では、ノズル孔31から造形材料を吐出しつつ、吐出部2と造形ステージ4との相対的な位置を変化させることによって様々な立体形状の造形物を形成することができる。ノズル孔31から造形ステージ4の造形面11に吐出された造形材料は、複数の溝41の内部に進入する。複数の溝41の内部に進入した造形材料が固化すると、固化した部分のZ軸に沿った位置が溝41の側壁によって規制される。このため、造形ステージ4に形成される造形物が+Z方向へ移動することを抑制することができる。
【0043】
造形ステージ4によれば、内側壁50と水平面とがなす角度αが鋭角である。複数の溝41が円周に沿って形成されているので、角度αが鋭角である部分が、平面視で中心軸44を起点として様々な方位に配置される。よって、様々な方位に対して造形物の固定力を均等にしやすい。このため、角度αが鋭角である部分が特定の方向に偏っている場合に比較して、造形物を安定して固定することができる。
【0044】
造形ステージ4によれば、造形面11に、各配列42の円周に沿って所定の弧度を有する複数の溝41が形成されている。複数の溝41は、それぞれ、平面視で、第1方向R1に向かって造形面11からの深さが深くなる方向に傾斜する。造形面11に堆積した造形材料が溝41の第2部分46に進入することによって、造形物を造形ステージ4に固定することができる。そして、溝41の深さが浅くなる向きに造形物を造形ステージ4に対して回転させることによって、造形物を造形ステージ4から容易に分離することができる。
【0045】
本実施形態では、同心円状に配列する第1配列42A、第2配列42B及び第3配列42Cが形成されている。このため、第1配列42A、第2配列42B及び第3配列42Cのいずれか1つの場合に比較して、造形物を安定して固定することができる。
【0046】
三次元造形装置1では、ノズル18で造形材料を造形面11に塗布するときに、平面視で、ノズル18の位置を第1方向R1に変化させながら塗布することが好ましい。さらに、このとき、第1円43A、第2円43B及び第3円43Cのそれぞれの円周に沿って、造形ステージ4に対するノズル18の位置を第1方向R1に変化させながら塗布することが好ましい。この三次元造形方法によれば、造形材料を造形面11に塗布するときに、ノズル18から吐出される造形材料を溝41の深さが浅い側から深い側に向かって塗布することができる。これにより、溝41の内部に造形材料を進入させやすいので造形物を造形ステージ4に固定させやすい。
【0047】
造形ステージ4に対するノズル18の位置を第1方向R1に変化させることは、ノズル18を移動させることによって達成することができる。造形ステージ4に対するノズル18の位置を第1方向R1に変化させることは、造形ステージ4を移動させることによっても達成することができる。さらに、造形ステージ4に対するノズル18の位置を第1方向R1に変化させることは、ノズル18及び造形ステージ4の双方を移動させることによっても達成することができる。なお、ノズル孔31の形状は、円形に限定されない。
【0048】
造形材料を造形面11に塗布するときに、平面視で、中心軸44を中心に造形面11を第2方向R2に回転させる方法が採用され得る。この三次元造形方法によれば、造形材料を造形面11に塗布するときに、ノズル18から吐出される造形材料を溝41の深さが浅い側から深い側に向かって塗布することができる。
【0049】
また、造形材料を造形ステージ4から分離するときに、造形面11を平面視したときに、中心軸44を回転軸として造形ステージ4に対する造形材料の回転位置を第2方向R2に変化させることが好ましい。この三次元造形方法によれば、造形材料を造形ステージ4から分離するときに、造形ステージ4に対する造形材料の回転位置を第2方向R2に変化させることができる。これにより、溝41の内部の造形材料を溝41の深さが深い側から浅い側に向かって変位させることができる。この結果、造形材料を造形ステージ4から容易に分離することができる。
【0050】
造形ステージ4に対する造形材料の位置を第2方向R2に変化させることは、造形材料を回転させることによって達成することができる。造形ステージ4に対する造形材料の位置を第2方向R2に変化させることは、造形ステージ4を回転させることによっても達成することができる。さらに、造形ステージ4に対する造形材料の位置を第2方向R2に変化させることは、造形材料及び造形ステージ4の双方を回転させることによっても達成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…三次元造形装置、2…吐出部、3…供給装置、4…造形ステージ、5…移動機構部、6…制御部、11…造形面、13…Xモーター、14…Yモーター、15…Zモーター、16…θモーター、17…可塑化部、18…ノズル、19…粒状材料、20…供給路、21…スクリューケース、22…駆動モーター、23…ヒーター、24…スクリュー、25…バレル、26…スクリュー溝、27…溝形成面、28…スクリュー対向面、29…連通孔、30…ノズル流路、31…ノズル孔、33…スクリュー中央部、34…凸条部、35…側面、36…材料導入口、37…案内溝、41…溝、41A…第1配列溝、41B…第2配列溝、41C…第3配列溝、42…配列、42A…第1配列、42B…第2配列、42C…第3配列、43A…第1円、43B…第2円、43C…第3円、44…中心軸、45…第1部分、46…第2部分、47…開口部、48…第1開口幅、49…底幅、50…内側壁、51…第2開口幅、53…第1箇所、54…直線、55…第2箇所、56…第3箇所、R1…第1方向、R2…第2方向、RX…中心軸、RZ…回転軸、α…角度。