(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166618
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241122BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082823
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 朋哉
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770DA44
5H770HA02X
5H770HA06X
5H770JA19X
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のセンス端子に出現する電圧の波形の差異を抑制する半導体モジュールを提供する。
【解決手段】特定半導体ユニット4Aは、上アーム回路44Uから出力される主電流及び第1導電体パターンEP1が設けられた絶縁基板を備え、複数の半導体ユニットの列の一方の辺に配置された第1センス端子TS1及び他方の辺に配置された第2センス端子TS2を備える。第1センス端子TS1は、絶縁基板に設けられた第1センス用導電体パターンを含む第1配線経路ER1を介して、複数の半導体ユニットの何れか1つの半導体ユニットの第1半導体チップ42-1のエミッタと接続される。第2センス端子TS2は、第1導電体パターンEP1を介さず、第1導電体パターンEP1とは別に絶縁基板に設けられた第2センス用導電体パターンを含む第2配線経路ER2を介して、第1センス端子TS1が接続された第1半導体チップ42-1のエミッタと電気的に接続される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体チップを含む上アーム回路、及び、第2半導体チップを含む下アーム回路と、前記第1半導体チップから出力される主電流及び前記第2半導体チップに入力される主電流が流れる第1導電体パターンが設けられた絶縁基板とを備える複数の半導体ユニットを備え、前記複数の半導体ユニットが列状に並んだ半導体モジュールにおいて、
前記複数の半導体ユニットの列の一方の辺に配置された第1センス端子、及び、他方の辺に配置された第2センス端子を備え、
前記第1センス端子は、
前記絶縁基板に設けられた第1センス用導電体パターンを含む第1配線経路を介して、前記複数の半導体ユニットのいずれか1つの半導体ユニットの第1半導体チップのエミッタと電気的に接続され、
前記第2センス端子は、
前記第1導電体パターンを介さず、前記第1導電体パターンとは別に前記絶縁基板に設けられた第2センス用導電体パターンを含む第2配線経路を介して、前記第1センス端子が接続された前記第1半導体チップの前記エミッタと接続される
半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1センス用導電体パターン、及び前記第2センス用導電体パターンは、それぞれ、ボンディングワイヤによって前記第1半導体チップが備えるエミッタ電極部に接続される
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1センス用導電体パターンと前記第2センス用導電体パターンとは、互いに連続するパターンである、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1センス端子が電気的に接続された前記第1半導体チップと、前記第2センス端子との間に、前記第1導電体パターンが配置される、
請求項1から3のいずれか1に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ、及び導電体パターンが設けられた絶縁基板を備える複数の半導体ユニットを備え、これらの半導体ユニットが列状に並べられた半導体モジュールが知られている(例えば、特許文献1、及び特許文献2)。
この種の半導体モジュールにおいて、複数の半導体ユニットが、それぞれ、第1半導体チップを有する上アーム回路と、第2半導体チップを有する下アーム回路とを含み、それぞれの半導体ユニットが電気的に並列に接続された構成を含むモジュールがあり、この構成を含む半導体モジュールは電力変換装置などに利用されている。
【0003】
さらに、この構成を含む半導体モジュールにおいて、いずれか1つの半導体ユニットの第1半導体チップのエミッタに電気的に接続された第1センス端子、及び第2半導体チップのコレクタに電気的に接続された第2センス端子を備えたモジュールも実施されている。第1半導体チップのエミッタ、及び第2半導体チップのコレクタは互いに導通するため、第1センス端子、及び第2センス端子の電位も等しくなる。したがって、例えば半導体モジュールのスイッチング動作を評価する評価試験の際には、第1センス端子、及び第2センス端子のどちらを用いても同じ評価を行うことができる。
【0004】
また、第1センス端子、及び第2センス端子が、それぞれ、互いに対向した辺に配置された構成の半導体モジュールも実施されている(例えば、非特許文献1参照)。この半導体モジュールによれば、装置等への組込状態に応じて、第1センス端子、及び第2センス端子を使い分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/202866号
【特許文献2】国際公開第2022/130951号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】富士電機株式会社、“2MBI1800XXF170-50”、[online]、[令和5年3月31日検索]、インターネット<URL:https://americas.fujielectric.com/wp-content/uploads/2019/08/2MBI1800XXG170-50.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1センス端子と第2センス端子とが、個々の半導体ユニットの並びを挟んで配置された構成の半導体モジュールにおいて、第1センス端子、及び第2センス端子のそれぞれに出現する電圧波形に差異が生じる場合がある。
【0008】
本開示は、第1センス端子、及び第2センス端子に出現する電圧波形の差異を抑えることができる半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの態様に係る半導体モジュールは、第1半導体チップを含む上アーム回路、及び、第2半導体チップを含む下アーム回路と、前記第1半導体チップから出力される主電流及び前記第2半導体チップに入力される主電流が流れる第1導電体パターンが設けられた絶縁基板とを備える複数の半導体ユニットを備え、前記複数の半導体ユニットが列状に並んだ半導体モジュールにおいて、前記複数の半導体ユニットの列の一方の辺に配置された第1センス端子、及び、他方の辺に配置された第2センス端子を備え、前記第1センス端子は、前記絶縁基板に設けられた第1センス用導電体パターンを含む第1配線経路を介して、前記複数の半導体ユニットのいずれか1つの半導体ユニットの第1半導体チップのエミッタと接続され、前記第2センス端子は、前記第1導電体パターンを介さず、前記第1導電体パターンとは別に前記絶縁基板に設けられた第2センス用導電体パターンを含む第2配線経路を介して、前記第1センス端子が接続された前記第1半導体チップの前記エミッタと接続される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の1つの態様によれば、第1センス端子、及び第2センス端子に出現する電圧波形の差異を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る半導体モジュールの一例を示す平面図である。
【
図2】
図1における左端側の2つの半導体ユニットを拡大して示す平面図である。
【
図3】特定半導体ユニットの等価回路の一例を示す図である。
【
図4】対比構成を対象としたスイッチング動作の評価試験結果を示す図である。
【
図5】本変形例に係る半導体ユニットの平面構成の一例を簡略化して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な形態を説明する。なお、図面において、各部の寸法、及び縮尺が実際と適宜に異なる場合があり、理解を容易にするために模式的に示している部分を含む場合がある。また、以下の説明において、本開示を限定する旨の特段の記載が無い限り、本開示の範囲は以下の説明に記載された形態に限られない。本開示の範囲は当該形態の均等の範囲を含む。
【0013】
図1は、本実施形態に係る半導体モジュール1の一例を示す平面図である。
半導体モジュール1は、放熱基板2と、複数の半導体ユニット4と、を備え、複数の半導体ユニット4が放熱基板2の主面2Sに列状に並べられている。放熱基板2の主材には、高熱伝導性を有する材料が用いられる。当該材料の例には、銅、アルミニウム等の金属、及び合金等が挙げられる。放熱基板2の主面2Sは、耐蝕性を高めるために、ニッケル等の金属、及び合金等のめっき処理が施されてもよい。また、放熱基板2の平面視形状は適宜であり、本実施形態では、半導体ユニット4の並びの方向に長い平面視矩形状である。
【0014】
図2は、
図1における左端側の2つの半導体ユニット4を拡大して示す平面図である。
本実施形態において、半導体モジュール1が有する複数の半導体ユニット4は、それぞれ同一構成のユニットである。半導体ユニット4は、第1半導体チップ42-1を有する上アーム回路44U、及び、第2半導体チップ42-2を有する下アーム回路44Dを備える。また、半導体ユニット4は、平面視矩形状の絶縁基板40を備え、この絶縁基板40の主面40Sには、第1半導体チップ42-1が設けられた正極導電パターンと、第2半導体チップ42-2が設けられ、第1半導体チップ42-1から出力された主電流、及び第2半導体チップ42-2に入力される主電流が流れる第1導電体パターンEP1と、第2半導体チップ42-2から出力された主電流が流れる負極導電パターンと、第1センス用導電体パターンEPS1と、第2センス用導電体パターンEPS2と、が設けられる。
絶縁基板40は、上記放熱基板2の主面2Sに接合されており、絶縁基板40の主材には、絶縁性、及び高熱伝導性を有する材料が用いられる。当該材料の例には、アルミナ等のセラミックが挙げられる。
【0015】
第1半導体チップ42-1、及び第2半導体チップ42-2はスイッチング素子であり、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、及びパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等である。上アーム回路44U、及び下アーム回路44Dは、電気的に直列に接続されており、インバータ回路における1相分の回路要素を構成する。
【0016】
第1導電体パターンEP1、正極導電パターン、負極導電パターン、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2は、いずれも、導電性を有し、例えば、銅、アルミニウム等の金属、及び合金等の導電体を主材とするパターンによって形成される。また、第1導電体パターンEP1と、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2とは、互いに直接は接続されず、第1半導体チップ42-1のエミッタ電極部TEE、並びに、当該エミッタ電極部TEEに接続された後述の第1センス用配線部材WS-1、及び第2センス用配線部材WS-2を介して接続される。
第1導電体パターンEP1は、上アーム回路44U、及び下アーム回路44Dを直列に接続するパターンである。第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2については後述する。
【0017】
本実施形態の半導体モジュール1は、それぞれが上アーム回路44U、及び下アーム回路44Dを備える6つの半導体ユニット4を有し、それぞれの半導体ユニット4が複数本の配線6、配線7、及び、非図示の主端子接続配線によって互いに電気的に並列に接続されることにより、直流電力を交流に変換する電力変換装置として機能する。主端子接続配線は、正極端子P1、負極端子N1、及び出力端子O1からなる各半導体ユニット4の主電流端子同士を接続する配線である。配線6に用いられる部材は適宜であり、例えばボンディングワイヤが用いられる。
かかる半導体モジュール1は、モータ駆動回路に用いられるインバータ回路、直流サーボ回路、及び交流サーボ回路、電源装置、又は、パワーコンディショナなどの各種の用途に用いられる。
【0018】
また、前掲
図1に示すように、本実施形態の半導体モジュール1は、第1センス端子TS1、第2センス端子TS2、第3センス端子TS3、第4センス端子TS4の4つのセンス端子と、2つのゲート端子TGと、温度検出端子TSTと、サーミスタ8と、が放熱基板2の主面2Sに設けられる。
サーミスタ8は半導体モジュール1の温度を検出する温度検出素子である。温度検出端子TSTはサーミスタ8に接続され、当該サーミスタ8によって検出された温度の外部出力に用いられる。
【0019】
第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2は、それぞれ、本開示における「第1センス端子」、及び「第2センス端子」に相当する。以下の説明では、列状に並んだ複数の半導体ユニット4のうちの左端に位置するユニットを「特定半導体ユニット4A」と称する。
【0020】
図3は、特定半導体ユニット4Aの等価回路の一例を示す図である。
特定半導体ユニット4Aは、上述の通り、第1半導体チップ42-1を有する上アーム回路44Uと、第2半導体チップ42-2を有する下アーム回路44Dと、を有し、それぞれが上述の第1導電体パターンEP1によって直列に接続される。上アーム回路44Uには、第1ダイオード46D1が第1半導体チップ42-1に逆並列に接続され、また、下アーム回路44Dには、第2ダイオード46D2が第2半導体チップ42-2に逆並列に接続される。また特定半導体ユニット4Aには、正極端子P1、負極端子N1、及び出力端子O1が設けられる。
【0021】
正極端子P1、及び第3センス端子TS3は、外部に設けられた直流電源の正極側に接続される端子であり、第1半導体チップ42-1のコレクタに電気的に接続される。
負極端子N1、及び第4センス端子TS4は、外部に設けられた直流電源の負極側に接続される端子であり、第2半導体チップ42-2のエミッタに電気的に接続される。
出力端子O1、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2は、外部への出力側に接続される端子であり、第1半導体チップ42-1のエミッタ及び第2半導体チップ42-2のコレクタに電気的に接続される。
なお、前述のとおり正極端子P1、負極端子N1、出力端子O1からなる主電流端子は、非図示の主端子接続配線により主電流用の外部接続端子に並列に接続される。
ゲート端子TGは、外部に設けられた制御回路の制御信号が入力される端子であり、第1半導体チップ42-1、及び第2半導体チップ42-2のそれぞれのゲートに電気的に接続される。
【0022】
正極端子P1、及び負極端子N1に直流電源の直流電力が供給された状態において、ゲート端子TGを通じて第1半導体チップ42-1、及び第2半導体チップ42-2に制御信号が入力されることにより、第1半導体チップ42-1、及び第2半導体チップ42-2が、それぞれスイッチング動作する。この結果、交流電流が第1導電体パターンEP1上の出力端子O1に流れ、1相分の交流電力が出力される。
【0023】
上述の通り、各半導体ユニット4は、配線6、配線7、及び主端子接続配線によって互いに並列接続される。したがって、各半導体ユニット4のそれぞれは、正極端子P1、負極端子N1、及びゲート端子TGに供給される直流電力又は制御信号によって特定半導体ユニット4Aと同様に動作する。
【0024】
また、本実施形態の半導体モジュール1において、第3センス端子TS3は、
図1に示される通り、特定半導体ユニット4Aの隣の半導体ユニット4が備える第1半導体チップ42-1のコレクタに接続される。
【0025】
次いで、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2について詳述する。
【0026】
図3に示される通り、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2は、いずれも、特定半導体ユニット4Aにおける第1半導体チップ42-1のエミッタに接続される端子であり、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2には、それぞれ、第1半導体チップ42-1のエミッタの電圧が出現する。第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2は、例えば半導体モジュール1のスイッチング動作を評価する評価試験の際に用いられる。
【0027】
なお、第1半導体チップ42-1のエミッタは、第2半導体チップ42-2のコレクタと電気的に接続される。そのため、第1半導体チップ42-1のエミッタと第2半導体チップ42-2のコレクタは基本的には同電位であり、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2には、それぞれ、第2半導体チップ42-2のコレクタの電圧が出現するとも言える。
【0028】
前掲
図1に示すように、半導体モジュール1の平面視において、第1センス端子TS1は、複数の半導体ユニット4の並びを間に挟む一方の位置に配置されており、第2センス端子TS2は、他方の位置に配置されている。換言すれば、第1センス端子TS1は、複数の半導体ユニット4の列の一方の辺に配置されており、第2センス端子TS2は、他方の辺に配置されている。
したがって、他の装置などに組み付けられたときの半導体モジュール1の姿勢、及び、半導体モジュール1の周囲に設けられたスペース等の組付状態に応じて、ユーザは、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2の中から、評価試験の際などに使用し易い方の端子を適宜に選ぶことができ、利便性が高められる。
【0029】
ところで、上述の通り、第1半導体チップ42-1のエミッタと、第2半導体チップ42-2のコレクタとは基本的には同電位である。したがって、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のうち、例えば第2センス端子TS2を第2半導体チップ42-2のコレクタに接続した構成でも、理想的には、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれに同じ電圧が出現する。この構成の具体的形態としては、第1半導体チップ42-1のエミッタと第2半導体チップ42-2のコレクタとを接続する上記第1導電体パターンEP1に第2センス端子TS2を接続する構成が有り得る。以下、この構成を「対比構成」と称する。
【0030】
図4は、対比構成を対象としたスイッチング動作の評価試験結果を示す図である。
この評価試験は、各半導体ユニット4における下アーム回路44Dの第2半導体チップ42-2をオフにした状態で、各半導体ユニット4における上アーム回路44Uの第1半導体チップ42-1をスイッチング動作させた、そのときの第1半導体チップ42-1のエミッタと第2半導体チップ42-2のコレクタの間の電圧を評価する試験である。この電圧の計測には第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれが用いられる。以下では、第1半導体チップ42-1のエミッタと第2半導体チップ42-2のコレクタの間の電圧を、「エミッタ-コレクタ間電圧VEC」と言う。
なお、
図4において、矢印AGが指す線はゲート電圧を示し、矢印AIが指す線は出力電流を示し、矢印ACEが示す線はエミッタ-コレクタ間電圧を示す。ゲート電圧は、ゲート端子TGを通じて第1半導体チップ42-1のゲートに与えられる電圧である。出力電流は第1半導体チップ42-1のエミッタから第1導電体パターンEP1に出力される電流である。
【0031】
第1センス端子TS1と第2センス端子TS2とで、そこに出現するエミッタ-コレクタ間電圧の波形を比較すると、
図4の矢印Xで示すように、スイッチング動作時のターンオン波形に顕著な差異が生じる。
この差異は、次のように説明される。すなわち、第1導電体パターンEP1には比較的大きな主電流が流れることに加え、第1導電体パターンEP1の線幅は、そこでの発熱を抑えるために半導体ユニット4に設けられた他の導電体パターンよりも大きいため、インダクタンス等の電気特性が他の導電体パターンと異なる。
そして、第2センス端子TS2は、かかる第1導電体パターンEP1を第2半導体チップ42-2のコレクタに至るまでの配線経路に含むのに対し、第1センス端子TS1は、第1半導体チップ42-1のエミッタに至るまでの配線経路に第1導電体パターンEP1を含まない。
この結果、第2センス端子TS2は、主電流の影響により、そこに出現する電圧の波形が第1センス端子TS1とは異なることになる。
【0032】
一方、本実施形態の半導体モジュール1は、対比構成とは異なり、第2センス端子TS2は勿論のこと第1センス端子TS1も、第1半導体チップ42-1のエミッタに至るまでの配線経路に第1導電体パターンEP1を経路に含まない。
したがって、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のいずれの端子においても、そこに出現する電圧の波形が第1導電体パターンEP1の影響を受けることはなく、それぞれの電圧の波形の間の差異が抑えられることとなる。
【0033】
次いで、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれから第1半導体チップ42-1のエミッタに至るまでの配線経路について、より詳細に説明する。
以下では、第1センス端子TS1から第1半導体チップ42-1のエミッタまでの配線経路を「第1配線経路ER1」と称し、第2センス端子TS2から第1半導体チップ42-1のエミッタまでの配線経路を「第2配線経路ER2」と称する。
【0034】
前掲
図2に示すように、第1配線経路ER1は、絶縁基板40に設けられた上述の第1センス用導電体パターンEPS1と、第1センス用配線部材WS-1とを含む。第1センス用配線部材WS-1は、第1半導体チップ42-1が備えるエミッタ電極部TEEと第1センス用導電体パターンEPS1との接続、並びに、第1センス用導電体パターンEPS1と第1センス端子TS1との接続に用いられる部材である。
一方、第2配線経路ER2は、絶縁基板40に設けられた上述の第2センス用導電体パターンEPS2と、第2センス用配線部材WS-2とを含む。第2センス用配線部材WS-2は、第1半導体チップ42-1のエミッタ電極部TEEと第2センス用導電体パターンEPS2との接続、並びに、第2センス用導電体パターンEPS2と第2センス端子TS2との接続に用いられる部材である。
第1センス用配線部材WS-1、及び第2センス用配線部材WS-2には、例えば、ボンディングワイヤが用いられる。
【0035】
このように、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2は、いずれも、第1センス用配線部材WS-1、及び第2センス用配線部材WS-2によって第1半導体チップ42-1が備えるエミッタ電極部TEEに物理的に接続される。したがって、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2が、それぞれ異なる箇所に接続される構成に比べ、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれに出現する電圧の波形の差異が更に抑えられる。
【0036】
また、本実施形態の特定半導体ユニット4Aにおいて、第1センス用導電体パターンEPS1は、第1センス端子TS1に最も近い第1の辺4S1の近傍に配置され、当該第1の辺4S1に沿って延在する。したがって、第1センス端子TS1の近くに第1センス用導電体パターンEPS1が位置するため、両者を接続する第1センス用配線部材WS-1の配線長を短縮できる。
また、第2センス用導電体パターンEPS2は、半導体ユニット4の並びを挟んで、換言すれば第1半導体チップ42-1を挟んで第1の辺4S1と反対側の辺である第2の辺4S2の近傍に配置され、当該第2の辺4S2に沿って延在する。したがって、第2センス用導電体パターンEPS2についても第2センス端子TS2の近くに位置するため、両者を接続する第2センス用配線部材WS-2の配線長を短縮できる。
【0037】
ここで、本実施形態において、第2センス端子TS2は、特定半導体ユニット4Aの第2センス用配線部材WS-2に直接、接続されるのではく、その隣に位置する半導体ユニット4の第2センス用配線部材WS-2に接続される。
具体的には、特定半導体ユニット4Aの第2センス用導電体パターンEPS2と、その隣に位置する半導体ユニット4の第2センス用導電体パターンEPS2とが第2センス用配線部材WS-2によって接続されており、当該隣に位置する半導体ユニット4の第2センス用導電体パターンEPS2に、第2センス端子TS2が第2センス用配線部材WS-2によって接続される。
【0038】
第2センス端子TS2が、特定半導体ユニット4Aが備える第1半導体チップ42-1のエミッタ電極部TEEに、その隣の半導体ユニット4の第2センス用導電体パターンEPS2を経由して接続される構成であるため、放熱基板2の主面2Sの任意の位置に、特定半導体ユニット4Aの位置に拘束されることなく第2センス端子TS2を配置できる。なお、第2センス端子TS2が特定半導体ユニット4Aに、他の2以上の半導体ユニット4の第2センス用導電体パターンEPS2を経由して接続されてもよい。
【0039】
本実施形態において、第1配線経路ER1、及び第2配線経路ER2は、それぞれ、インダクタンス、及び抵抗といった、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2に出現する電圧の波形に影響を及ぼす電気特性が略等しくなっている。例えば、係る電気特性は、例えば、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2のそれぞれの線幅、厚み、平面視形状、及び主材などを適宜に調整することにより実施されてもよい。また、例えば、電気特性は、第1センス用配線部材WS-1、及び、第2センス用配線部材WS-2のそれぞれの断面積、長さ、及び接合材料などを適宜に調整することによって実施されてもよい。
第1配線経路ER1、及び第2配線経路ER2の電気特性が略等しくなることで、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれに出現する電圧の波形の差異が更に抑えられる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の半導体モジュール1は、第1半導体チップ42-1を含む上アーム回路44U、及び、第2半導体チップ42-2を含む下アーム回路44Dと、第1半導体チップ42-1から出力される主電流、及び第2半導体チップ42-2に入力される主電流が流れる第1導電体パターンEP1が設けられた絶縁基板40とを備える複数の半導体ユニット4を備え、複数の半導体ユニット4が列状に並んだモジュールである。また、半導体モジュール1は、複数の半導体ユニット4の列の一方の辺に配置された第1センス端子TS1、及び、他方の辺に配置された第2センス端子TS2を備える。そして、第1センス端子TS1は、絶縁基板40に設けられた第1センス用導電体パターンEPS1を含む第1配線経路ER1を介して、特定半導体ユニット4Aの第1半導体チップ42-1のエミッタと接続される。また、第2センス端子TS2は、第1導電体パターンEP1を介さず、第1導電体パターンEP1とは別に絶縁基板40に設けられた第2センス用導電体パターンEPS2を含む第2配線経路ER2を介して、第1センス端子TS1に接続された第1半導体チップ42-1のエミッタと接続される。
【0041】
この構成によれば、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2は、それぞれ、第1センス用導電体パターンEPS1を含む第1配線経路ER1、及び、第2センス用導電体パターンEPS2を含む第2配線経路ER2を介して、互いに同じ第1半導体チップ42-1のエミッタに接続される。
したがって、第1配線経路ER1、及び第2配線経路ER2の電気特性を揃えることにより、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれに出現する電圧の波形の差異が抑えられる。
加えて、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2は、いずれも、第1導電体パターンEP1とは別に設けられている。
したがって、例えば、上述の対象構成のように、第2センス端子TS2が第2センス用導電体パターンEPS2に代えて、第1導電体パターンEP1に物理的に接続される構成に比べ、第1導電体パターンEP1に流れる主電流の影響によって、第2センス端子TS2に出現する電圧の波形が、第1センス端子TS1に出現する電圧の波形から大きく異なることもない。
【0042】
また、本実施形態の半導体モジュール1において、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2は、それぞれ、第1センス用配線部材WS-1、及び第2センス用配線部材WS-2によって第1半導体チップ42-1が備えるエミッタ電極部TEEに接続される。
【0043】
この構成によれば、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2がいずれも同じ第1半導体チップ42-1のエミッタ電極部TEEに物理的に接続されるため、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれに出現する電圧の波形の差異が更に抑えられる。
【0044】
また、本実施形態の半導体モジュール1において、第1センス端子TS1が接続された第1半導体チップ42-1を挟んで、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2が配置される。
【0045】
この構成によれば、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれと、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2のそれぞれとの間の配線長を短縮できる。
【0046】
2.変形例
以上に例示した実施形態に付加される変形の形態を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の形態を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0047】
(変形例1)
図5は、本変形例に係る半導体ユニット4の平面構成の一例を簡略化して示す平面図である。
同図に示すように、半導体ユニット4において、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2は互いに連続することにより物理的に繋がっていてもよい。
本変形例によれば、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2が連続するパターンであるため、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2の電気的特性の差異が抑えられる。この結果、第1センス端子TS1、及び第2センス端子TS2のそれぞれに出現する電圧の波形の差異が抑えられる。
【0048】
なお、第1センス用導電体パターンEPS1、及び第2センス用導電体パターンEPS2は、それぞれ、複数の物理的に分離したパターンを含み、各パターンが配線部材によって電気的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…半導体モジュール、2…放熱基板、4…半導体ユニット、4A…特定半導体ユニット、40…絶縁基板、42-1…第1半導体チップ、42-2…第2半導体チップ、44D…下アーム回路、44U…上アーム回路、EP1…第1導電体パターン、EPS1…第1センス用導電体パターン、EPS2…第2センス用導電体パターン、ER1…第1配線経路、ER2…第2配線経路、TEE…エミッタ電極部、TS1…第1センス端子、TS2…第2センス端子、WS-1…第1センス用配線部材、WS-2…第2センス用配線部材。