(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166619
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】軌道決定装置、軌道決定方法、プログラム、訓練装置及び軌道決定モデル
(51)【国際特許分類】
B22D 43/00 20060101AFI20241122BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20241122BHJP
F27D 21/02 20060101ALI20241122BHJP
F27D 25/00 20100101ALI20241122BHJP
【FI】
B22D43/00 D
B22D46/00
F27D21/02
F27D25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082825
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517255566
【氏名又は名称】株式会社エクサウィザーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 基紀
(72)【発明者】
【氏名】平山 将成
(72)【発明者】
【氏名】征矢 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】川西 亮輔
【テーマコード(参考)】
4E014
4K056
【Fターム(参考)】
4E014NA09
4K056AA06
4K056EA02
4K056FA23
(57)【要約】
【課題】溶解金属の表面のスラグを効率的に除去するための技術を提供することである。
【解決手段】本開示の一態様は、容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する状態取得部と、軌道決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を生成する軌道決定部と、を有する軌道決定装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する状態取得部と、
軌道決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を生成する軌道決定部と、
を有する軌道決定装置。
【請求項2】
前記軌道決定部は、前記軌道情報に基づいて前記スラグ除去部材を操作するためのガイダンス情報を生成し、操作者に前記ガイダンス情報を提示する、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項3】
前記軌道決定部は、前記軌道情報に基づいて前記スラグ除去部材に対する制御信号を出力する、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項4】
前記軌道情報は、前記スラグ除去部材の所定の複数の軌道パターンの1つを示す、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項5】
前記軌道情報は、前記溶解金属の表面に対する前記スラグ除去部材の2次元方向の動きを示す、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項6】
前記軌道情報はさらに、前記溶解金属の表面に対する前記スラグ除去部材の鉛直方向の動きを示す、請求項5に記載の軌道決定装置。
【請求項7】
前記軌道情報は、前記溶解金属の表面の分割された区画を示す、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項8】
前記軌道情報は、前記スラグ除去部材の軌道の系列を示す、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項9】
前記状態取得部は、前記スラグ除去部材によって掻き出されたスラグ除去量を計測し、
前記軌道決定部は、前記計測されたスラグ除去量に基づいて、前記溶解金属を掻き混ぜるための軌道情報を生成する、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項10】
前記軌道決定モデルは、前記容器内の溶解金属上を浮遊するスラグの分布状態に基づいて前記軌道情報を生成するよう訓練されている、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項11】
前記軌道決定モデルは、容器内の溶解金属の表面を示す画像データにおける輝度分布を示す輝度分布データと、前記スラグ除去部材の正解軌道を示す正解軌道情報とから構成される訓練データによって訓練されている、請求項10に記載の軌道決定装置。
【請求項12】
前記正解軌道情報は、教師なし学習によってクラスタリングされた正解軌道パターンを示す、請求項11に記載の軌道決定装置。
【請求項13】
前記状態取得部は、前記スラグ除去部材によってスラグ除去動作が終了する毎に、スラグ除去動作の終了後の前記溶解金属の表面を示す画像データを取得する、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項14】
前記スラグ除去部材は、スラグを掻き出すための掻き板を先端に備える掻き出しタイプのドラッガーである、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項15】
前記軌道決定部は、前記画像データから前記容器の内部領域を示す画像データ部分を抽出し、前記画像データ部分を前記軌道決定モデルに入力する、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項16】
前記軌道決定モデルは、1つの画像データに対して複数の軌道を示す軌道情報を出力する、請求項1に記載の軌道決定装置。
【請求項17】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得することと、
軌道決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を生成することと、
を有する、コンピュータが実行する軌道決定方法。
【請求項18】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得することと、
軌道決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を生成することと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項19】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データと、前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の正解軌道を示す正解軌道情報とから構成される訓練データを取得するデータ取得部と、
前記訓練データを利用して、軌道決定モデルを訓練する訓練部と、
を有する訓練装置。
【請求項20】
容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、
前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を決定する、
軌道決定モデルであって、
前記容器内の溶解金属の表面を示す画像データと、前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の正解軌道を示す正解軌道情報とから構成される訓練データを利用して訓練されている軌道決定モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軌道決定装置、軌道決定方法、プログラム、訓練装置及び軌道決定モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
溶解炉内の溶解金属から不純物(「スラグ」、「ノロ」などと呼ばれうる)が分離し、溶解炉内において溶解金属の表面に不純物が浮遊する。浮遊する不純物(以降、「スラグ」と参照する)を取り除くため、除滓作業が行われる。典型的な除滓作業では、操作者が目視で溶解炉内の溶解金属の表面を確認しながら、あるいは、溶解炉内の溶解金属表面を撮像したカメラから送信される溶解金属の表面画像を確認しながら除滓機を操作し、除滓機に備えられたドラッガーによって溶解炉内に浮遊するスラグを炉外に掻き出している。
【0003】
効率的な除滓作業を実現するためには、熟練した操作者による除滓機の操作が必要であり、除滓機動作の自動化技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-105389号公報
【特許文献2】特開2018-179348号公報
【特許文献3】特開2020-085395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の深層学習技術の進展によって、様々な技術分野に人工知能(Artificial Intelligence:AI)技術が利用されてきている。熟練した操作者による除滓機の操作を訓練させた機械学習モデルを利用して、効率的な除滓作業を実現するための技術が所望されうる。
【0006】
本開示の1つの課題は、溶解金属の表面のスラグを効率的に除去するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、容器内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する状態取得部と、軌道決定モデルを利用して、前記画像データに基づいて前記溶解金属上のスラグを掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を生成する軌道決定部と、を有する軌道決定装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、溶解金属の表面のスラグを効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による除滓システムを示す概略図である。
【
図2】
図2A~2Dは、本開示の一実施形態によるスラグを溶解炉外に掻き出すためのドラッガーの動作を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による軌道決定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による軌道決定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態による軌道決定モデルを示す概略図である。
【
図6】
図6A~6Cは、本開示の一実施形態による除滓機に対する制御信号例を示す図である。
【
図7】
図7A~7Cは、本開示の一実施形態による中央排滓、左旋回排滓及び右旋回排滓を示す図である。
【
図8】
図8A~8Cは、本開示の一実施形態による軌道パターンを示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態による溶解炉内の溶解金属の表面領域の区画を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態による訓練装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本開示の一実施形態による軌道決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
以下の実施の形態では、溶解炉から溶解金属のスラグを掻き出すためのドラッガーの軌道を決定する軌道決定装置が開示される。
【0012】
[除滓システム]
図1に示されるように、本開示の一実施形態による除滓システム10は、溶解炉などの溶解金属を収容する容器20、容器20内の溶解金属のスラグを除去する除滓機30、容器20内の溶解金属の表面を撮像するカメラ40、除滓機30を操作する操作端末50、及び、除滓機30のドラッガー31の軌道を決定する軌道決定装置100を有する。以下の実施形態では、除滓機30は、ドラッガー31、容器傾動部32、及び、掻き板33を有し、ドラッガー31は、先端に掻き板33を備えた掻き出しタイプのスラグドラッガーである。
【0013】
除滓システム10では、軌道決定装置100は、カメラ40によって撮像された容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、軌道決定モデル60を利用して、取得した画像データに基づいてドラッガー31の軌道を示す軌道情報を生成する。例えば、軌道決定モデル60は、溶解金属の表面を示す画像データを受け付けると、画像データにおけるスラグの分布状態に基づいて浮遊するスラグを効果的に容器20から掻き出すためのドラッガー31の軌道を決定するよう訓練された何れかの機械学習モデルであってもよい。一例として、除滓機30の容器傾動部32によって傾動された容器20内の溶解金属の表面の撮像画像を確認しながら、溶解金属の表面を浮遊するスラグを効率的に除去するよう除滓機30のドラッガー31を操作する熟練した操作者によって操作されるドラッガー31の軌道を再現するように、軌道決定モデル60は訓練されている。
【0014】
例えば、
図2Aに示されるような溶解金属の表面を浮遊するスラグ21を示す画像データに対して、軌道決定モデル60から出力される軌道情報はまず、
図2Bに示されるように、ドラッガー31をY方向に延ばすよう指示する。次に、軌道情報は、
図2Cに示されるように、ドラッガー31を反時計回りに回転させるよう指示し、最後に、
図2Dに示されるように、延ばされたドラッガー31を戻すことによってスラグ21を手前に掻き出すよう指示するものであってもよい。ここで、ドラッガー31は、掻き出しタイプのドラッガーであり、ドラッガー31の先端には、スラグ21を掻き出すための掻き板33が設けられる。溶解金属の表面に降下された掻き板33が、
図2Dに示されるように、ドラッガー31の復帰動作に伴ってドラッガー31の縮動方向にスラグ21を移動させ、最終的に容器20の外部のスラグパン(図示せず)にスラグ21を排出する。
【0015】
なお、図示された実施例では、軌道決定モデル60は、軌道決定装置100に搭載されているが、本開示による軌道決定モデル60は、これに限定されず、軌道決定装置100に通信接続された他の装置に配置されてもよい。この場合、軌道決定装置100は、画像データを当該装置に送信し、当該画像データに対して軌道決定モデル60から取得した軌道情報を当該装置から受信してもよい。
【0016】
軌道情報を取得すると、軌道決定装置100は、操作端末50の操作者に対するガイダンス情報として、軌道決定モデル60から取得した軌道情報を操作端末50に提示してもよい。ガイダンス情報を取得すると、操作者は、取得したガイダンス情報に従って操作端末50を操作することができる。
【0017】
あるいは、軌道決定装置100は、除滓機30の動作を制御するための制御信号として、軌道決定モデル60から取得した軌道情報を除滓機30に送信してもよい。制御信号を取得すると、取得した制御信号に従ってドラッガー31を自動操業させることができる。
【0018】
このようにして、軌道決定装置100は、軌道決定モデル60を利用して、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データから、画像データに撮像されたスラグ21の分布状態に適したドラッガー31の軌道を示す軌道情報を決定することができる。これにより、スラグ21の分布状態に適したドラッガー31の操作を実現することができる。
【0019】
ここで、軌道決定装置100は、パーソナルコンピュータ等の計算装置によって実現されてもよく、例えば、
図3に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、軌道決定装置100は、バスBを介し相互接続される記憶装置101、プロセッサ102、ユーザインタフェース(UI)装置103及び通信装置104を有する。
【0020】
軌道決定装置100における後述される各種機能及び処理を実現するプログラム又は指示は、ネットワークなどを介し何れかの外部装置からダウンロードされてもよいし、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の着脱可能な記憶媒体から提供されてもよい。
【0021】
記憶装置101は、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどによって実現され、インストールされたプログラム又は指示と共に、プログラム又は指示の実行に用いられるファイル、データ等を格納する。記憶装置101は、非一時的な記憶媒体(non-transitory storage medium)を含んでもよい。
【0022】
プロセッサ102は、1つ以上のプロセッサコアから構成されうる1つ以上のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、処理回路(processing circuitry)等によって実現されてもよく、記憶装置101に格納されたプログラム、指示、当該プログラム若しくは指示を実行するのに必要なパラメータなどのデータ等に従って、後述される軌道決定装置100の各種機能及び処理を実行する。
【0023】
インタフェース装置103は、軌道決定装置100のユーザとの間のインタフェースを実現する。例えば、ユーザは、ディスプレイ又はタッチパネルに表示されたGUI(Graphical User Interface)をキーボード、マウス等を操作し、インタフェース装置103を介し軌道決定装置100との間で各種情報、データ、指示などを送受信する。
【0024】
通信装置104は、外部装置、インターネット、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークとの通信処理を実行する各種通信回路により実現される。
【0025】
しかしながら、上述したハードウェア構成は単なる一例であり、本開示による軌道決定装置100は、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。
【0026】
[軌道決定装置]
次に、
図4を参照して、本開示の一実施形態による軌道決定装置100を説明する。
図4は、本開示の一実施形態による軌道決定装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0027】
図4に示されるように、軌道決定装置100は、状態取得部110及び軌道決定部120を有する。状態取得部110及び軌道決定部120の各機能部は、軌道決定装置100の記憶装置101に格納されているコンピュータプログラムがプロセッサ102によって実行されることによって実現されてもよい。
【0028】
状態取得部110は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得する。具体的には、状態取得部110は、カメラ40によって撮像された容器20内の溶解金属の表面を示す画像データをカメラ40から取得する。ここで、画像データは、カメラ40によって撮影される溶解金属の表面の動画データからサンプリングされた画像フレームであってもよい。画像フレームのサンプリングは、例えば、ドラッガー31によるスラグ除去動作の開始時などに実行されてもよく、サンプリングされた画像フレームは、スラグ除去動作の開始時の溶解金属の表面に浮遊するスラグ21の分布状態を示すものであってもよい。カメラ40から画像データを取得すると、状態取得部110は、取得した画像データを軌道決定部120に提供する。また、状態取得部110は、操作者が操作端末50のディスプレイ上で溶解金属の表面の状態及び/又はスラグ除去動作中のドラッガー31の動きを確認できるように、カメラ40によって撮像された動画データを操作端末50に転送してもよい。
【0029】
軌道決定部120は、軌道決定モデル60を利用して、画像データに基づいて溶解金属上のスラグ21を掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を生成する。具体的には、状態取得部110から画像データを取得すると、軌道決定部120は、取得した画像データを軌道決定モデル60に入力し、画像データにおける溶解金属の表面上を浮遊するスラグ21を効率的に掻き出すためのドラッガー31の軌道を示す軌道情報を軌道決定モデル60から取得する。
【0030】
ここで、軌道情報は、溶解金属の表面に対するドラッガー31の2次元方向の動き、すなわち、
図2に示されるようなドラッガー31の延伸動作及び回転動作を示すものであってもよい。また、軌道情報はさらに、溶解金属の表面に対するドラッガー31の鉛直方向の動き、すなわち、ドラッガー31の先端の掻き板33の昇降動作を示すものであってもよい。容器傾動部32によって傾動された容器20内の溶解金属の残量、容器20の傾動角などに応じて溶解金属の表面の高さは変動しうる。このため、軌道決定モデル60から提供される軌道情報における鉛直方向の掻き板33の位置は、スラグ21を効率的に除去するとともに、溶解金属の不要な掻き出しを最小限に抑えることが可能になりうる。
【0031】
一実施形態では、軌道決定部120は、軌道情報に基づいてスラグ除去部材を操作するためのガイダンス情報を生成し、操作者にガイダンス情報を提示してもよい。具体的には、軌道決定モデル60から軌道情報を取得すると、軌道決定部120は、取得した軌道情報に基づいて操作者が操作端末50を操作することを支援するためのガイダンス情報を生成し、ガイダンス情報を操作端末50のディスプレイ上などに表示してもよいし、及び/又は、ガイダンス情報を操作端末50のスピーカーを介し音声により通知してもよい。ガイダンス情報の支援によって、操作者は、現在のスラグ21の分布状態に適した軌道によってドラッガー31を動作させるように操作端末50を操作することができる。
【0032】
また、一実施形態では、軌道決定部120は、軌道情報に基づいてスラグ除去部材に対する制御信号を出力してもよい。具体的には、軌道決定モデル60から軌道情報を取得すると、軌道決定部120は、取得した軌道情報に基づいて除滓機30のドラッガー31を動作させるための制御信号を生成し、制御信号を除滓機30に送信してもよい。制御信号によって、除滓機30は、現在のスラグ21の分布状態に適した軌道によってドラッガー31を自動的に動作させることができる。
【0033】
なお、状態取得部110は、スラグ除去部材によってスラグ除去動作が終了する毎に、スラグ除去動作の終了後の溶解金属の表面を示す画像データを取得してもよい。具体的には、上述したようなドラッガー31による1回のスラグ除去動作が終了すると、状態取得部110は、スラグ除去動作後の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、取得した画像データを軌道決定部120にわたしてもよい。スラグ除去動作後の画像データを取得すると、軌道決定部120は、軌道決定モデル60を利用して、取得した画像データに示される溶解金属の表面を浮遊するスラグ21の分布状態に適したドラッガー31の次の軌道情報を決定しうる。なお、画像データの取得は、必ずしもドラッガー31による1回のスラグ除去動作が終了することに応答して実行される必要はなく、所定の回数のスラグ除去動作が終了したことに応答して、状態取得部110は、所定の回数のスラグ除去動作後の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、取得した画像データを軌道決定部120にわたしてもよい。
【0034】
[軌道決定モデル]
上述したように、軌道決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを受け付け、溶解金属上のスラグ21を除去するためのスラグ除去部材としてのドラッガー31の軌道を示す軌道情報を出力する何れかの機械学習モデルにより実現されてもよい。具体的には、軌道決定モデル60は、容器20内の溶解金属上を浮遊するスラグ21の分布状態に基づいて軌道情報を生成するよう訓練されてもよい。例えば、軌道決定モデル60は、畳み込みニューラルネットワークなどのニューラルネットワークによって実現されてもよいし、他の何れかのタイプの機械学習モデルによって実現されてもよい。
【0035】
例えば、
図5に示されるように、軌道決定モデル60は、訓練データデータベース(DB)80に格納されている訓練データを利用して訓練装置70によって訓練され、訓練済みのモデルが、軌道決定モデル60として利用されうる。軌道決定モデル60が、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを入力として受け付け、ドラッガー31の軌道を示す軌道情報を出力として生成する場合、各訓練データは、溶解金属の表面を示す画像データと、ドラッガー31の正解軌道を示す正解軌道情報とのペアから構成されうる。例えば、軌道決定モデル60がニューラルネットワークによって実現される場合、訓練装置70は、訓練対象のニューラルネットワークの入力層に訓練用の画像データを入力し、出力層から取得した軌道情報と対応する正解軌道情報との比較結果に応じて訓練対象のニューラルネットワークのパラメータを更新してもよい。
【0036】
このような正解軌道情報は、熟練した操作者によるドラッガー31の操作データに基づいて生成されてもよい。例えば、操作データは、
図6に示されるような3次元の時系列データとして取得されてもよい。
図6Aに示される時系列データは、ドラッガー31の延伸方向(Y方向)への動作を示す。すなわち、操作者は、時点t1においてドラッガー31を延ばし、時点t2において延伸動作を停止するよう操作端末50に指示する。そして、操作者は、時点t4においてドラッガー31を戻し、時点t5において復帰動作を停止するよう操作端末50に指示する。また、
図6Bに示される時系列データは、ドラッガー31の回転動作(X方向)を示す。すなわち、操作者は、時点t1においてドラッガー31を反時計回りに回転させ、時点t3において回転動作を停止するよう操作端末50に指示する。そして、操作者は、時点t4においてドラッガー31を時計回りに回転させ、時点t6において回転動作を停止するよう操作端末50に指示する。また、
図6Cに示される時系列データは、時点t3においてドラッガー31を鉛直方向(Z方向)に降下させ、時点t4において降下動作を停止するよう操作端末50に指示する。そして、操作者は、時点t5においてドラッガー31を上昇させ、時点t6において上昇動作を停止するよう操作端末50に指示する。なお、ドラッガー31は、動作パラメータによって設定されるドラッガー31の高さまでしか降下しないよう制御される。すなわち、操作者がドラッガー31を降下するよう操作しても、ドラッガー31は、動作パラメータに示される高さまでしか降下できないよう設定されている。訓練用の画像データは、
図6A及び6Bに示されるようなドラッガー31の2次元の動作を示す操作データと関連付けされてもよいし、あるいは、
図6Cに示されるようなドラッガー31の鉛直方向の動作を示す操作データとさらに関連付けされてもよい。
【0037】
一実施形態では、軌道決定モデル60には、画像データにおける輝度分布を示す輝度分布データが入力されてもよい。溶解金属の温度はスラグ21の温度より有意に高くなっており、溶解金属の表面を撮像することによって取得された画像データにおいて、溶解金属の部分とスラグ21の部分とでは、有意な輝度差が生じうる。このため、軌道決定モデル60は、画像データにおける輝度分布を示す輝度分布データと、ドラッガー31の正解軌道を示す正解軌道情報とから構成される訓練データによって訓練されてもよい。この場合、軌道決定部120は、このように訓練された軌道決定モデル60を利用するため、前処理として画像データから輝度分布データを導出し、導出された輝度分布データを軌道決定モデル60に入力してもよい。このようにして、輝度分布データを利用することによって、軌道決定モデル60は、スラグ21の分布状態をより良好に特定することが可能になり、ドラッガー31の軌道をより良好に決定することができうる。
【0038】
また、一実施形態では、軌道決定部120は、画像データから容器20の内部領域を示す画像データ部分を抽出し、画像データ部分を軌道決定モデル60に入力してもよい。すなわち、軌道決定部120は、状態取得部110によって取得された画像データから容器20の内側の内部領域を示す画像データ部分を抽出するための前処理を実行し、溶解金属の表面を含む内部領域を示す画像データ部分を軌道決定モデル60に入力してもよい。軌道決定において重要なのは溶融金属やスラグ21の分布であるが、カメラ40の設置状況によっては容器20の内壁や周囲の構造物等の異物が画像データに含まれることがある。それらの異物を訓練データに含めた場合、軌道決定モデル60の精度が低下しうる。そこで、鍋の内部領域のデータだけを入力するモデルとして軌道決定モデル60を訓練することで、より好適な軌道を出力しうる。
【0039】
また、一実施形態では、軌道情報は、スラグ除去部材の所定の複数の軌道パターンの1つを示すものであってもよい。すなわち、軌道情報は、予め規定されたドラッガー31の複数の軌道パターンの何れかを示すものであってもよい。実際の操作では、熟練した操作者は、複数の軌道パターンから現在のスラグ21の分布状態に適した軌道パターンを選択し、選択した軌道パターンに従ってドラッガー31を操作していることがある。例えば、軌道パターンは、中央排滓、左旋回排滓及び右旋回排滓に分類されてもよい。なお、中央排滓は、
図7Aに示されるように、容器20の中央領域に配置されたドラッガー31を伸縮してスラグ21を掻き出す軌道パターンである。また、左旋回排滓は、
図7Bに示されるように、容器20の左側領域に配置されたドラッガー31を伸縮してスラグ21を掻き出す軌道パターンである。また、右旋回排滓は、
図7Cに示されるように、容器20の右側領域に配置されたドラッガー31を伸縮してスラグ21を掻き出す軌道パターンである。さらに、各軌道パターンは、ドラッガー31の昇降タイミングも示してもよい。このとき、軌道決定モデル60は、画像データ又は輝度分布データを入力として受け付け、3つの軌道パターンの何れか1つを出力するよう訓練されてもよい。軌道決定部120は、このように訓練された軌道決定モデル60を利用して、画像データ又は輝度分布データからドラッガー31の軌道パターンを決定してもよい。
【0040】
なお、訓練データとしての軌道パターンの分類は、操作者などによって行われてもよいが、本開示による軌道パターンの分類は、これに限定されず、操作データをクラスタリングすることによって行われてもよい。例えば、訓練データとしての正解軌道パターンは、k-means法などの何れか公知の教師なし学習によってクラスタリングされてもよい。例えば、
図6に示されるような操作データが多数収集され、収集された操作データがk個のパターンにクラスタリングされてもよい。各クラスタの操作データの平均データが導出され、導出された平均データが当該クラスタの軌道パターンとして決定されてもよい。
【0041】
また、一実施形態では、軌道決定モデル60は、1つの画像データに対して複数の軌道を示す軌道情報を出力してもよい。すなわち、軌道決定モデル60は、入力される1つの画像データに対して2つ以上の軌道を示す軌道情報を出力するよう訓練されてもよい。例えば、容器20の中央のスラグ21を掻き出した直後の画像データが、軌道決定モデル60に入力された場合、次の掻き動作として、軌道決定モデル60は、容器20の左側と右側とがいずれも好適になりうる。このようなケースでは、操作者によっては左側を掻くこともあれば、右側を掻くこともある。そこで、左右両方とも正解データとして利用して軌道決定モデル60を訓練することで、操作者の操作データの偏りによる悪影響を軽減した軌道情報を生成しうる。このような軌道決定モデル60を用いる場合、最終的には実行する動作を1つに決定する必要がある。このため、2つ以上の軌道が出力される軌道決定モデル60を用いる場合には、軌道決定モデル60とは異なるロジックを用いて1つの動作を決定してもよい。例えば、軌道決定部120は、過去に選択した各動作の出現頻度を算出し、軌道決定モデル60から出力された軌道情報の複数の軌道の候補のうち、出現頻度の小さい動作を選択するなどの方法が考えられる。このような構成によると、出力される軌道の偏りを軽減したシステムを構築できるという効果がある。ここでいう軌道の偏りとは、例えば、右側よりも左側を多く選択する傾向がある等を意味する。
【0042】
あるいは、操作データは、
図8に示されるようなドラッガー31の先端の掻き板33の2次元又は3次元の軌跡であってもよく、2次元又は3次元の軌跡の形状特徴量を示す軌跡データが、何れか公知の教師なし学習によってクラスタリングされてもよい。例えば、形状特徴量として、掻き板33の軌跡形状の長さ、幅、角度、X軸に関する最大・最小座標、Y軸に関する最大・最小座標などであってもよい。各クラスタの操作データの平均データが導出され、導出された平均データが当該クラスタの軌道パターンとして決定されてもよい。
【0043】
また、一実施形態では、軌道情報は、溶解金属の表面の分割された区画を示してもよい。例えば、容器20内の溶解金属の表面は、複数の区画に分割され、軌道情報は、これらの区画の何れかを示すようにしてもよい。
図9に示される例では、溶解金属の表面領域は、A1,A2,・・・,A9の9個の区画に分割される。なお、A10は、排滓動作後のドラッガー31の位置、すなわち、炉外におけるスラグ21の掻き出し位置を示す。この場合、軌道決定モデル60は、画像データ又は輝度分布データを入力として受け付け、9個の区画の何れか1つを出力するよう訓練されてもよい。軌道決定部120は、このように訓練された軌道決定モデル60を利用して、画像データ又は輝度分布データから区画に対応するドラッガー31の移動位置(例えば、移動すべき区画)を決定してもよい。
【0044】
また、一実施形態では、軌道情報は、スラグ除去部材の軌道の系列を示してもよい。具体的には、軌道情報は、複数回のスラグ除去動作に対するドラッガー31の各軌道を示してもよい。熟練した操作者によるスラグ除去動作では、操作者は、溶解金属の表面を浮遊するスラグ21の分布状態を確認すると、複数回のスラグ除去動作の軌道パターンの系列を決定し、決定した軌道パターンの系列に従って各スラグ除去動作を実行することがある。例えば、軌道パターンの系列は、中央排滓→中央排滓→中央排滓→左旋回排滓→左旋回排滓→右旋回排滓→右旋回排滓→中央排滓の10回のスラグ除去動作の軌道パターンを示すものであってもよい。あるいは、軌道パターンの系列は、A2→A1→A3→A5→A4→A6→A8→A7→A9→A10の10回のスラグ除去動作の区画を示すものであってもよい。この場合、軌道決定モデル60は、画像データ又は輝度分布データを入力として受け付け、何れかの軌道パターン又は区画の系列を出力するよう訓練されてもよい。軌道決定部120は、このように訓練された軌道決定モデル60を利用して、画像データ又は輝度分布データから軌道パターン又は区画の系列を決定してもよい。
【0045】
また、一実施形態では、状態取得部110は、スラグ除去部材によって掻き出されるスラグ除去量を計測し、軌道決定部120は、計測されたスラグ除去量に基づいて、溶解金属を掻き混ぜるための軌道情報を生成してもよい。具体的には、状態取得部110は、カメラ及び/又はセンサを利用して、ドラッガー31によって掻き出されたスラグ除去量を計測し、軌道決定部120に計測したスラグ除去量を通知してもよい。容器20内のスラグ残量が減少すると、1回のスラグ除去動作で掻き出されるスラグ量が減少しうる。この場合、熟練した操作者はしばしば容器20内の溶解金属を掻き混ぜてスラグ21を集めやすくすることがある。このような掻き混ぜ用の軌道パターンが設定され、スラグ除去量が所定の閾値を下回ると、軌道決定部120は、掻き混ぜ用の軌道パターンを選択してもよい。溶解金属の掻き混ぜが終了すると、状態取得部110は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得し、掻き混ぜ後の溶解金属の表面に浮遊するスラグ21に対してスラグ除去動作を実行してもよい。
【0046】
[訓練装置]
次に、
図10を参照して、本開示の一実施形態による訓練装置70を説明する。訓練装置70は、サーバ等の計算装置として実現可能であり、限定することなく、
図3に示されるような軌道決定装置100と同様のハードウェア構成により実現されうる。
図10は、本開示の一実施形態による訓練装置70の機能構成を示すブロック図である。
図10に示されるように、訓練装置70は、データ取得部71及び訓練部72を有する。
【0047】
データ取得部71は、軌道決定モデル60を訓練するための訓練データを取得する。訓練データは、例えば、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データと、溶解金属上のスラグ21を掻き出すためのスラグ除去部材の正解軌道を示す正解軌道情報とから構成されうる。訓練データは、好適には、熟練した操作者による除滓機30の操作データに基づいて生成され、画像データにおける溶解金属の表面領域に基づいて浮遊するスラグを効果的に容器20から掻き出すためのドラッガー31の軌道から構成されてもよい。
【0048】
訓練部72は、訓練データを利用して、軌道決定モデル60を訓練する。例えば、軌道決定モデル60が、ニューラルネットワークによって実現される場合、訓練部72は、訓練対象の軌道決定モデル60に訓練データの画像データを入力し、訓練対象の軌道決定モデル60から出力結果を取得する。そして、訓練部72は、取得した出力結果と訓練データの正解軌道情報とを比較し、出力結果と正解軌道情報との間の誤差に基づいて、誤差逆伝播法に従って軌道決定モデル60のパラメータを調整する。最終的に取得される軌道決定モデル60が、軌道決定装置100に提供される。
【0049】
このようにして取得された軌道決定モデル60は、容器20内の溶解金属の表面を示す画像データを取得すると、画像データに基づいて溶解金属上のスラグ21を掻き出すためのスラグ除去部材の軌道を示す軌道情報を決定しうる。
【0050】
[軌道決定処理]
次に、
図11を参照して、本開示の一実施形態による軌道決定処理を説明する。当該軌道決定処理は、上述した軌道決定装置100によって実行され、より詳細には、軌道決定装置100の1つ以上のプロセッサ102が1つ以上の記憶装置101に格納された1つ以上のプログラム又は指示を実行することによって実現されてもよい。
図11は、本開示の一実施形態による軌道決定処理を示すフローチャートである。
【0051】
図11に示されるように、ステップS101において、軌道決定装置100は、容器20内の溶解金属の表面の画像データを取得する。具体的には、軌道決定装置100は、容器20の上方に配置されたカメラ40から、容器20内の溶解金属の表面を浮遊するスラグ21の分布状態を示す画像データを取得する。
【0052】
ステップS102において、軌道決定装置100は、軌道決定モデル60を利用して、スラグ除去部材の軌道情報を生成する。具体的には、軌道決定装置100は、取得した画像データ及び/又は当該画像データから導出された輝度分布データを軌道決定モデル60に入力し、軌道決定モデル60からドラッガー31の軌道を示す軌道情報を取得する。軌道決定モデル60は、容器20内の溶解金属上を浮遊するスラグ21の分布状態に基づいて軌道情報を生成するよう訓練されたものであってもよい。
【0053】
例えば、軌道決定モデル60は、画像データ及び/又は輝度分布データを入力として受け付けると、ドラッガー31の軌道パターン(例えば、中央排滓、左旋回排滓、右旋回排滓など)を出力するよう訓練されてもよい。また、軌道決定モデル60は、画像データ及び/又は輝度分布データを入力として受け付けると、ドラッガー31が移動すべき区画(例えば、
図9における区画A1~A9など)を出力するよう訓練されてもよい。また、軌道決定モデル60は、画像データ及び/又は輝度分布データを入力として受け付けると、複数回のスラグ除去動作に対するドラッガー31の軌道パターン又は区画の系列を出力するよう訓練されてもよい。なお、軌道情報は、これらの軌道パターン及び/又は区画とともに、ドラッガー31の降下及び/又は上昇のタイミングを示してもよい。
【0054】
ステップS103において、軌道決定装置100は、ドラッガー31を操作するためのガイダンス情報として軌道情報を提示してもよい。具体的には、軌道決定装置100は、取得した軌道情報に基づいて操作者をガイドするためのガイダンス情報を生成し、ガイダンス情報を操作端末50に送信してもよい。ガイダンス情報を取得すると、操作端末50は、操作者によるドラッガー31の操作をガイドするようディスプレイ上にガイダンス情報を表示してもよいし、及び/又はスピーカーを介しガイダンス情報を通知してもよい。
【0055】
あるいは、軌道決定装置100は、ドラッガー31を動作させるための制御信号を除滓機30に出力してもよい。具体的には、軌道決定装置100は、ドラッガー31を動作させるための制御信号を生成し、制御信号を除滓機30に送信してもよい。制御信号を受信すると、除滓機30は、制御信号に従ってドラッガー31を動作させる。ここで、制御信号は、例えば、
図6A~6Cに示されるように、ドラッガー31のスラグ除去動作に関するドラッガー31の延伸動作、回転動作及び昇降動作のオン・オフタイミングを規定する3次元のタイミングチャートによって表されてもよい。
【0056】
ステップS104において、軌道決定装置100は、スラグ除去動作を終了するか判定する。例えば、軌道決定装置100は、所定の回数のスラグ除去動作が終了したか判断し、所定の回数のスラグ除去動作が終了した場合、当該軌道決定処理を終了してもよい。あるいは、軌道決定装置100は、スラグ除去動作の開始から所定の時間が経過した場合、当該軌道決定処理を終了してもよい。あるいは、軌道決定装置100は、容器20内のスラグ残量及び/又は直近のスラグ除去量が所定の閾値以下になった場合、当該軌道決定処理を終了してもよい。他方、所定の回数のスラグ除去動作が終了していない場合、スラグ除去動作の開始から所定の時間が経過していない場合、あるいは、容器20内のスラグ残量及び/又は直近のスラグ除去量が所定の閾値以下になっていない場合、軌道決定装置100は、ステップS101に戻って、スラグ除去動作を継続する。
【0057】
上述した実施形態によると、熟練した操作者によるドラッガー31のスラグ除去動作に基づいて訓練された軌道決定モデル60を利用して、溶解金属上を浮遊するスラグ21の分布状態に適したドラッガー31の軌道情報を取得することが可能になる。これにより、熟練度の低い操作者であっても、軌道決定モデル60から出力された軌道情報に従ってドラッガー31を操作することが可能であり、また、軌道決定モデル60から出力された軌道情報に従ってドラッガー31の動作を自動制御することが可能である。
【0058】
以上、本開示の実施の形態について詳述したが、本開示は上述した特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 除滓システム
20 容器
21 スラグ
30 除滓機
31 ドラッガー
32 容器傾動部
33 掻き板
40 カメラ
50 操作端末
60 軌道決定モデル
70 訓練装置
80 訓練データDB
100 軌道決定装置
110 状態取得部
120 軌道決定部