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特開2024-166621記録装置、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166621
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】記録装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B41J2/01 207
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082827
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB08
2C056EB40
2C056EB59
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC79
(57)【要約】
【課題】ノズル列の列間レジが動的に変化する場合に、それに応じて検査データを改めて作成したり、該作成した検査データをバッファに転送したりする必要がないようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態は、記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対し、記録媒体を所定の速度で搬送する搬送手段と、ノズル列間のズレに合わせてインクを吐出するタイミングを変更するための補正値を記憶する記憶手段と、前記搬送手段による搬送動作を停止させることなく、画像を印刷する印刷動作と、ノズルの検査データに基づき印刷する検査動作との切り替えを行う切り替え手段と、前記記録ヘッドからインクを吐出させるための信号を、前記補正値に基づいて生成する第1生成手段と、を有し、前記第1生成手段は、前記切り替え手段による前記印刷動作から前記検査動作への切り替えに同期して、前記補正値を有効から無効に切り替える、ことを特徴とする記録装置である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル列を有し、前記複数のノズル列はそれぞれ複数のノズルから成る、記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対し、記録媒体を所定の速度で搬送する搬送手段と、
ノズル列間のズレに合わせてインクを吐出するタイミングを変更するための補正値を記憶する記憶手段と、
前記搬送手段による搬送動作を停止させることなく、画像を印刷する印刷動作と、ノズルの検査データに基づき印刷する検査動作との切り替えを行う切り替え手段と、
前記記録ヘッドからインクを吐出させるための信号を、前記補正値に基づいて生成する第1生成手段と、
を有し、
前記第1生成手段は、前記切り替え手段による前記印刷動作から前記検査動作への切り替えに同期して、前記補正値を有効から無効に切り替える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体にインクを吐出するための吐出データを生成する第2生成手段と、
前記第2生成手段により生成される前記吐出データが記憶されるバッファであって、該吐出データとして、前記印刷動作のための第1吐出データと、前記検査動作のための第2吐出データと、がある、前記バッファと、
を更に有する、
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1生成手段は、前記記録媒体の搬送に同期した第1信号と、前記印刷動作の区間を知らせるための第2信号と、前記検査動作の区間を知らせるための第3信号と、に基づき、前記補正値を用いて、データを取得するノズル列毎のタイミングを知らせるための第4信号と、インク吐出のタイミングを知らせるための第5信号と、ノズル検査の検知のタイミングを知らせるための第6信号と、を生成し、
前記第1生成手段には、前記補正値の有効と無効とを切り替えるための切り替え信号が入力され、
前記切り替え信号は、前記第3信号に基づき生成される、
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
使用する吐出データを選択する選択手段であって、前記第4信号に応じて、前記バッファに記憶されている前記第1吐出データと、前記第2吐出データと、の何れかを前記バッファから選択的に読み出す前記選択手段を更に有する、
請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第5信号に応じて、前記記録ヘッドを駆動する駆動制御手段と、
前記第6信号に応じて、前記ノズル検査を実施する検査制御手段と、
を更に有する、
請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記検査制御手段は、検査結果データに基づき、吐出不能状態のノズルを示す不吐ノズル情報を取得する、
請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記不吐ノズル情報を用いて、吐出不能状態のノズルの代わりに他の吐出可能状態のノズルを用いてインク吐出するための吐出データを生成する不吐補完処理を実行する実行手段を更に有する、
請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドにおいて、前記複数のノズル列は、第1方向に配置され、前記複数のノズル列のそれぞれにおける前記複数のノズルは、前記第1方向と交差する第2方向に配置され、
前記搬送手段は、前記記録媒体を、前記記録ヘッドに対して相対的に前記第1方向に搬送する、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドは、ノズルからのインクの吐出状態を検知するためのセンサを有する、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1生成手段は、前記切り替え信号を生成する遅延回路を更に有し、
前記切り替え信号により、前記検査動作の直前の前記印刷動作で印刷する画像のためのインク吐出が、全てのノズル列で完了するまで、前記検査データに基づくインク吐出が開始しない、
請求項3乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記検査データに基づく前記第2吐出データによって記録される画像は、前記第1吐出データによって記録される第1画像と第2画像との間に配される、
請求項2乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記複数のノズル列のそれぞれに対応する検査データに基づいて印刷される検査領域の画像は、予備吐データ又はNullデータに基づく画像を少なくとも含み、また、当該検査領域の画像は、ノズル列毎の検査パターンを含む場合があり、
前記第1生成手段は、前記検査パターンの幅に応じたオフセット値を用いて、前記第4信号と、前記第5信号と、前記第6信号と、を生成する、
請求項3乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
複数のノズル列を有し、前記複数のノズル列はそれぞれ複数のノズルから成る、記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対し、記録媒体を所定の速度で搬送する搬送手段と、
ノズル列間のズレに合わせてインクを吐出するタイミングを変更するための補正値を記憶する記憶手段と、
前記搬送手段による搬送動作を停止させることなく、画像を印刷する印刷動作と、ノズルの検査データに基づき印刷する検査動作との切り替えを行う切り替え手段と、
前記記録ヘッドからインクを吐出させるための信号を、前記補正値に基づいて生成する生成手段と、
を有する記録装置の制御方法であって、
前記生成手段が、前記切り替え手段による前記印刷動作から前記検査動作への切り替えに同期して、前記補正値を有効から無効に切り替えるステップを有する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
コンピュータに請求項13に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、記録ヘッドに設けられるノズルの吐出状態を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルが記録媒体の幅以上に亘って配置された長尺の記録ヘッド(所謂ラインヘッド)を1又は複数備えた記録ヘッドから熱エネルギーによりインク液滴を吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置がある。このような構成の記録装置に適用される技術として、記録ヘッドからのインク液滴の吐出を利用して、記録ヘッドに設けられたインク吐出用ノズル(以下ノズル)の吐出状態を検査する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ノズルの吐出状態を検査するための検査データを送信する際に、吐出条件のパラメータを変える方法が開示されている。また、特許文献2には、圧電素子の残留振動を用いてノズルの吐出状態を検査する技術が開示されている。
【0004】
ところで、複数ページのページ画像を連続して印刷する連続印刷中に、ページ画像と異なる検査用の画像(例えば不吐ノズル検出用の検査パターンの画像)を印刷する場合がある。この場合、あるノズル列の検査パターンをインク吐出により記録中、他のノズル列のインク吐出を停止しなければならない等の制約が生じる。そのため、記録ヘッドの各ノズル列に対する列間のズレ(列間レジ)を考慮した検査データをノズル列毎に用意し、メモリに保持しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-142503号公報
【特許文献2】特開2017-114049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、列間レジは、事後的かつ動的に変化する可能性があり、前述の特許文献では、列間レジが変化した場合に、列間レジを考慮した検査データを改めて作成し、該作成した検査データをメモリに転送ないし展開する必要が生じる。かかる検査データは、指定ノズルを選択して吐出させるため、ノズル列毎のデータを、ハードウエアを介さず直接にメモリに展開しなければならず、それゆえデータ量が多い。従って、記録装置内のデータ伝送路のスペックアップが必要となり、コストアップにつながる。
【0007】
そこで本開示は、ノズル列の列間レジが動的に変化する場合に、それに応じて検査データを改めて作成したり、該作成した検査データをバッファに転送したりする必要がないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、複数のノズル列を有し、前記複数のノズル列はそれぞれ複数のノズルから成る、記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対し、記録媒体を所定の速度で搬送する搬送手段と、ノズル列間のズレに合わせてインクを吐出するタイミングを変更するための補正値を記憶する記憶手段と、前記搬送手段による搬送動作を停止させることなく、画像を印刷する印刷動作と、ノズルの検査データに基づき印刷する検査動作との切り替えを行う切り替え手段と、前記記録ヘッドからインクを吐出させるための信号を、前記補正値に基づいて生成する第1生成手段と、を有し、前記第1生成手段は、前記切り替え手段による前記印刷動作から前記検査動作への切り替えに同期して、前記補正値を有効から無効に切り替える、ことを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ノズル列の列間レジが動的に変化する場合に、それに応じて検査データを改めて作成したり、該作成した検査データをバッファに転送したりする必要がない。よって、記録装置内のデータ伝送路のスペックアップが不要となり、コストアップを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】記録装置のハードウエア構成を示すブロック図
図2】印刷制御部におけるデータフローを示すブロック図
図3】記録装置の概略構成を示す図
図4】記録ヘッドの構成を示す図
図5】実際に印刷するための印刷領域と、ノズルの吐出状態を検査するための検査領域とを示す図
図6】記録装置の制御系のブロック図
図7】第1実施形態に係る駆動タイミング制御部のブロック図
図8】第1実施形態に係る列間レジ反映動作のフローチャート
図9】第1実施形態に係る駆動タイミング制御部のタイミングチャート
図10】第1実施形態に係る検査タイミングを示す図
図11】第2実施形態に係る駆動タイミング制御部のブロック図
図12】第2実施形態に係る駆動タイミング制御部のタイミングチャート
図13】従来技術の課題を説明するための図
図14】従来技術の課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、後述する第1実施形態と第2実施形態とに共通する内容を、まとめて説明する。
【0012】
<記録装置の構成>
以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、記録装置)について、図1図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る記録装置101のハードウエア構成を示すブロック図である。ホストPC102から送信され、記録装置101に入力された画像データは、ホストI/F部113を経由してRAM116に記憶される。尚、本実施形態では、記録装置102に印刷ジョブを送信する送信側の装置としてホストPCを採用したが、スマートフォンやPDA等の情報処理装置であっても良い。
【0013】
CPU114は、ROM115に記憶されている制御プログラムに従い、各データ処理部(図2参照)の制御を行う。つまり、CPU114は、各データ処理部として機能し、また機能する上で必要なデータをRAM116から読み出し、該読み出したデータにデータ処理を施して、RAMに116に書き戻す。
【0014】
図2は、記録装置101の印刷制御部201におけるソフトウエア構成及びデータフローを示すブロック図である。印刷制御部201を構成する各データ処理部は、CPU114がROM115に記憶されたプログラムを読み出し、該読み出したプログラムをRAM116に展開することで実現される。
【0015】
ホストPC102から送信された画像データは、RIP処理部203に送られる。RIP処理部203は、この画像データに対するレンダリング処理を行い、各画素が多値で表現されるビットマップ形式画像データを取得し、該取得した画像データを記録データ生成部204に送信する。
【0016】
記録データ生成部204は、多値表現のビットマップ形式画像データに対して、インク色変換処理及び量子化処理を実行する。インク色変換処理は、例えば、RGB3チャンネルの画像データを、インク色毎(本例ではCMYK)4チャンネルの画像データに変換する処理である。記録データ生成部204により、多値表現のビットマップ形式画像データに対して、インク色変換処理及び量子化処理が実行されると、インク色のハーフトーンデータが取得される。記録データ生成部204は、このハーフトーンデータをノズルデータ生成部205に送信する。
【0017】
ノズルデータ生成部205は、ハーフトーンデータに基づき各ノズルに0又は1を割り当てることで、ノズルデータを生成する。このノズルデータは、図4に示すノズル列(ラインともいう)毎のデータであり、ノズル列に含まれるノズル数分のデータであって、各ノズルに対して0(非吐出)又は1(吐出)が割り当てられた2値表現のデータである。
【0018】
不吐補完処理部207は、不吐ノズル情報記憶部206に記憶されている不吐ノズル情報を用いて、ノズルデータに対する不吐補完処理を実行し、不吐補完処理実行後のノズルデータを、ヘッド傾き補正部209に送信する。前述の「不吐ノズル情報」とは、インクを吐出できないノズル(不吐ノズルとする)を示す情報である。また、「不吐補完処理」は、不吐ノズルに割り当てられている吐出データを、インクを吐出できるノズル(吐出可能ノズルとする)に割り当て直す処理である。
【0019】
ヘッド傾き補正部209は、不吐補完処理が行われたノズルデータに対し、ヘッド傾き情報記憶部208に記憶されているヘッド傾き情報を用いて、ヘッド傾き補正処理を実行する。尚、「ヘッド傾き補正処理」は、インクを吐出する位置を、記録ヘッド112の傾き量に基づき記録媒体の搬送方向に沿って移動させるためのデータ上での補正処理である。この搬送方向は、ノズル列においてノズルが配列される方向(ノズル方向とする)と交差する方向である。尚、本実施形態では、記録媒体が実際に搬送される形態を示しているが、記録媒体が搬送されず記録ヘッドが移動する形態でも構わない。つまり、記録媒体が記録ヘッドに対して相対的に、搬送方向に沿って搬送されれば良い。
【0020】
ノズルデータ間引き部210は、ヘッド傾き補正が行われたノズルデータに対する間引き処理を実行し、間引き処理後のノズルデータを吐出データ転送部211に送信する。
【0021】
吐出データ転送部211は、ノズルデータ間引き部210から送られた間引き処理後のノズルデータを記録ヘッド112に転送する。
【0022】
図3は、本実施形態に係る記録装置101の概略構成を示す図である。図3(a)は記録装置101内部を横から見た図であり、図3(b)は記録装置101内部を上から見た図である。CPU114は、搬送モーター、搬送ローラ、搬送経路301を構成するベルトなどの搬送手段を用いて、記録媒体を所定の速度で搬送させる搬送動作を実行する。給紙部302から給送された記録媒体は搬送経路301に沿ってX方向に搬送され、排紙部303から排出される。記録ヘッド304、305、306、307は、夫々異なる色のインク(本例ではCMYK)を吐出する記録ヘッドであり、搬送経路301に沿ってX方向に搬送される記録媒体に対してインク吐出する。
【0023】
図4は、記録ヘッド304の構成を示す図であり、吐出口形成面を表している。記録ヘッド304は、X方向(記録媒体の搬送方向)位置が夫々異なる複数のノズル列で構成され、図4の例では、8列(具体的にA列~H列)が構成されている。それぞれのノズル列のノズルとして、Y方向(搬送方向と垂直方向)に記録装置の記録幅に相当する数のノズルが配置されている。尚、記録ヘッド305、306、307も記録ヘッド304と同様の構成である。1つの記録ヘッドで1色のインクの吐出を行い、1つの記録ヘッド内にある複数のノズル列ではそれぞれ同じ色のインクの吐出を行う。尚、図4の座標に関する設定(X方向、Y方向)は、他の図でも同様に用いる。
【0024】
ノズル列に含まれる各ノズル対して、対応する発熱体(例えばヒータ)が対向するように配置され、発熱体にエネルギーを与えることによりインクを吐出する。尚、インクを吐出するための手段は発熱体に限定されず、例えば、圧電素子(ピエゾ)を使用しても良い。
【0025】
<印刷領域及び検査領域>
図5は、記録媒体における、ユーザーによって指定された画像が記録される領域(印刷領域と称す)と、記録ヘッドのノズルの吐出状態を検査するための検査データに基づく検査パターンが記録される検査領域と、を示す図である。
【0026】
図5(a)及び図5(b)は、カット紙における検査領域を示している。具体的には、図5(a)は、カット用紙内の記録可能領域の一部を検査領域として利用する場合を示す。図5(b)は、カット用紙1枚の記録可能領域の全てを検査領域として利用する場合を示す。
【0027】
これに対し、図5(c)は、ロール紙における印刷領域及び検査領域を示し、検査領域が、第1印刷領域と第2印刷領域との間となるように記録されている。
【0028】
[第1実施形態]
<印刷動作と検査動作との制御に関わる構成>
以下、印刷動作と検査動作との制御の流れについて、図6を参照して説明する。図6は、印刷動作と検査動作との制御に関わる構成を示すブロック図である。尚、図6に示す各データ処理部は、CPU114がROM115に記憶されたプログラムを読み出し、該読み出したプログラムをRAM116に展開することで実現される。
【0029】
インク色変換部601は、入力されたRGB3チャンネルの画像データを、インク色毎の画像データ、即ちCMYK4チャンネルの画像データに変換する。量子化部602は、インク色毎の画像データに対する量子化処理を行うことで、記録データを生成し取得する。この記録データは吐出データ生成部603によって、各ノズルに割り付けられる。各ノズルに割り付けられたデータに従い、記録ヘッド609でインクの吐出が行われる。
【0030】
記録ヘッド内のノズルは各ノズルが2次元的にずれて配置されているため、記録ヘッドにノズルデータを送信するタイミングをずらすことによって記録媒体への着弾位置を調整している。本実施形態で、記録ヘッドにノズルデータを送信するタイミングをずらすためには、少なくとも記録媒体搬送方向の最上流ノズル(A列ノズル)と最下流ノズル(H列ノズル)との間の物理的距離に相当する容量のメモリに、ノズルデータを保持する必要がある。そのため、かかるメモリ容量を確保する目的で、プリントバッファ604を設けている。
【0031】
データ選択部605は、プリントバッファ604に保持されたノズルデータを、実際のノズル配置に合うようにタイミングをずらして駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送信する。
【0032】
ユーザーが出力したい画像を印刷するための印刷動作を実行する場合、データ選択部605は、プリントバッファ604から第1吐出データを読み出し、駆動制御部607に送信する。「第1吐出データ」は、ユーザーが出力したい画像印刷用の吐出データであり、インク色変換部601、量子化部602、及び吐出データ生成部603で処理されプリントバッファ604に保持されている。尚、印刷動作を実行する場合、吐出検査制御部608は動作しない。また、本実施形態における駆動とは、ノズルからインクを吐出するため、当該ノズルに対面する素子(例えば発熱体や圧電素子)にエネルギーを供給することを指す。
【0033】
一方、ノズルから正常に吐出されるか検査するための検査動作を実行する場合、データ選択部605は、プリントバッファ604から第2吐出データ、検査駆動データ、及び検査パラメータを読み出し、駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送信する。「第2吐出データ」は、検査パターン印刷用の吐出データであり、インク色変換部601、量子化部602、及び吐出データ生成部603を経ることなく、プリントバッファ604に直接展開ないし保持されている。「検査駆動データ」は、あるノズル列(1列)を用いて印刷する際、全てのノズルから同時に吐出することはできず、ノズルを分割して印刷する必要があるので、その分割印刷の順番を示すためのデータである。「検査パラメータ」は、吐出させるためのエネルギー量の指標としての、ヒータをONしている時間(つまりパルス幅)などを指す。これらのデータを受信した駆動制御部607は、吐出検査用の駆動方法で、記録ヘッドの駆動制御を行う。また、これらのデータを受信した吐出検査制御部608は、第2吐出データを用いて吐出検査制御を行うと共に、記録ヘッド609から送信される検査結果データを受信する。検査結果データを受信した吐出検査制御部608は、検査対象のノズルが、吐出可能状態か吐出不能状態かを判断でき、最終的には、吐出不能状態のノズルを示す情報(不吐ノズル情報とする)を取得する。
【0034】
駆動タイミング制御部606は、実際に吐出を行うタイミング及び吐出周期を制御する。詳しく説明すると、まず、駆動タイミング制御部606には、記録媒体の搬送に同期したタイミングトリガと、印刷動作の区間を知らせるための印刷ウインドウと、検査動作の区間を知らせるための検査ウインドウとが入力される。
【0035】
すると、駆動タイミング制御部606は、これらの信号に基づき、駆動の基準トリガとして利用される駆動トリガを、データ選択部605、駆動制御部607、吐出検査制御部608に送信する。また、駆動タイミング制御部606は、データをプリントバッファ604から読み出す取得タイミングを知らせるためのデータウインドウを、データ選択部605に送信する。さらに、駆動タイミング制御部606は、インク吐出のタイミングを知らせるための駆動ウインドウを、駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送信する。尚、「駆動ウインドウ」は、インク吐出のタイミング、具体的には、インクを吐出させるために必要なエネルギーをノズルに対面する素子に印加するタイミングを知らせるためのウインドウである(図9参照)。また、前述のノズルに対面する素子とは例えば、発熱体や圧電素子である。
【0036】
またさらに、駆動タイミング制御部606は、ノズル検査の検知タイミングを知らせるための検知ウインドウを、吐出検査制御部608に送信する。
【0037】
駆動制御部607は、ノズル列間距離が調整されたノズルデータを受け取り、該受け取ったノズルデータに駆動用データを付加した上で記録ヘッド609に送信する。
【0038】
吐出検査制御部608は、検査動作時のみ機能し、ノズル列間距離が調整されたノズルデータを受け取り、検査対象のノズル並びに検査用の駆動条件及び検査条件を決定して記録ヘッド609に送信する。ここで「駆動条件」は、前述の検査駆動データと同義であり、「検査条件」は、前述の検査パラメータに基づいて決定される情報である。尚、ノズル検査用の第2吐出データは、指定ノズルの吐出を行うことから、量子化部602を介さずに、直接プリントバッファ604に記憶しておく必要がある。また、本実施形態では、検査対象のノズルが吐出可能か否か、各ノズルの吐出状態を検知するため、各ノズルに設けた温度センサを用いる。但し、不吐検知ための手段又は方法について、温度センサに限定されない。例えば、光学的な検知手段を採用して良いし、記録媒体に形成されたドットパターンを読み取る方法を採用しても良い。更に、各ノズルの吐出状態を検知する手段は、本実施形態の記録装置に必須の構成ではなく、例えば、当該記録装置とは別の装置を用いて、当該記録装置でドット形成された記録媒体を検査しても良い。
【0039】
<駆動タイミング制御部606の詳細な構成>
図7は、本実施形態に係る駆動タイミング制御部606の詳細な構成を示すブロック図である。
【0040】
駆動トリガ生成部702は、駆動トリガを生成し、該生成した駆動トリガを駆動タイミング生成部703及び駆動タイミング制御部606の外部に出力する。生成する駆動トリガとして、固定周期トリガと、記録媒体の搬送に同期したタイミングトリガとが、選択的に用いられる。つまり、駆動トリガ生成部702は、用途に応じて、固定周期トリガとタイミングトリガとを切り替え可能であり、固定周期トリガとタイミングトリガとを切り替えて、駆動タイミング生成部703に送信すると共に駆動タイミング制御部606の外部に出力する。
【0041】
列間レジ値保持部701には、ノズル列間距離に応じた調整値として列間レジ値が保持されている。「列間レジ」とは、ノズル列間距離(ノズル列間のズレ)に合わせてインク吐出のタイミングを変更(調整)するための補正値(調整値)を意味する(例えば、図9の距離Dに対応する時間など)。
【0042】
駆動タイミング生成部703は、列間レジ値保持部701に保持されているノズル列間距離に応じた補正値(列間レジ値)に基づき、プリントバッファ604からデータを取得するタイミングを知らせるためのデータウインドウをノズル列毎に生成する。そして、駆動タイミング生成部703は、生成したデータウインドウを、図6のデータ選択部605に送る。
【0043】
また、駆動タイミング生成部703は、列間レジ値保持部701に保持されているノズル列間距離に応じた補正値(列間レジ値)に基づく駆動ウインドウをノズル列毎に生成する。そして、駆動タイミング生成部703は、生成した駆動ウインドウを、図6の駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送る。
【0044】
また、駆動タイミング生成部703は、列間レジ値保持部701に保持されている最上流のノズル列(本例ではA列)の列間レジ値と、検査データの情報とに基づき、吐出検査のタイミングを知らせるための検知ウインドウを生成する。そして、駆動タイミング生成部703は、生成した検知ウインドウを図6の吐出検査制御部608に送信する。尚、前述した「検査データの情報」とは、検査データ自身が持つ情報であって、例えば、A列の検査データの幅、B列の検査データの幅などである。
【0045】
尚、各種信号の生成タイミングをずらすために必要な、ある基準からの遅延は、図7の駆動トリガ生成部702で生成される駆動トリガをカウントして行っている。遅延回路704は外部から送られる検査ウインドウの立ち上がりエッジを、検査データの直前の画像が全てのノズル列で記録されるまで遅延させた信号(この信号を列間レジ切り替え信号と称す)を生成し、この信号を駆動タイミング生成部703に送信する。「列間レジ切り替え信号」は、前述の列間レジ値につき、有効か無効かを切り替えるための信号である。
【0046】
駆動タイミング生成部703は、列間レジ切り替え信号を受けて、列間レジ値保持部701から取得した列間レジ値を無効にし、検査データウインドウをノズル列毎に生成して、図6のデータ選択部605に送る。尚、検査データウインドウは、検査用の第2吐出データをプリントバッファ604から取得するタイミングを知らせるためのウインドウである。また、ノズル列毎の検査データウインドウについて、レジ値が無効のため、立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングが同じ信号となる。
【0047】
また、駆動タイミング生成部703は、列間レジ切り替え信号を受けて、列間レジ値保持部701から取得したレジ値を無効にし、検査駆動ウインドウをノズル列毎に生成して、図6の駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送る。尚、検査駆動ウインドウは、検査動作時の記録ヘッドが吐出するタイミングを知らせるためのウインドウである。また、ノズル列毎の検査駆動ウインドウについて、レジ値が無効のため、立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングが同じ信号となる。
【0048】
また、駆動タイミング生成部703は、プリントバッファ604に保持されている検査データの情報に基づき吐出検査のタイミングを知らせるための検知ウインドウを生成し、該生成した検知ウインドウを吐出検査制御部608に送信する。尚、「検査データの情報」とは、検査データ自身が持つ情報であって、例えば、A列の検査データの幅、B列の検査データの幅などである。
【0049】
ここで、駆動タイミング生成部703によって実行される列間レジ反映動作について、図8を参照して説明する。図8は、列間レジ反映動作のフローチャートである。
【0050】
ステップS801において、図7の列間レジ値保持部701に保持された列間レジ値を用いて、各ノズル列のタイミング調整を行う。以降「ステップS~」を「S~」と略記する。
【0051】
S802において、列間レジ切り替え信号の値がHighか判定する。本ステップの判定結果が真(つまり、列間レジ切り替え信号の値がHighとなった)の場合、S803に進む。一方、本ステップの判定結果が偽(つまり、列間レジ切り替え信号の値がLowのまま)の場合、列間レジ切り替え信号の値がHighになるまで待つ。
【0052】
S803において、列間レジ値を無効にする。
【0053】
S804において、列間レジ切り替え信号の値がHighか判定する。本ステップの判定結果が真(つまり、列間レジ切り替え信号の値がHighのまま)の場合、列間レジ切り替え信号の値がLowになるまで待つ。一方、本ステップの判定結果が偽(つまり、列間レジ切り替え信号の値がLowとなった)の場合、S801へ戻り、次の画像の印刷制御のため、列間レジ値保持部701に保持された値を用いて、列間タイミングの調整を行う。
【0054】
図9は、本実施形態に係る駆動タイミング制御部606の動作を説明するための図であって、各種信号の波形などを示す。尚、図9は、A列~G列において、指定ノズルの吐出/不吐出検知のための検査を行い、H列において、当該検査を行わない動作を示しているが、便宜上C列~G列に関する内容については、図示していない。
【0055】
図9のタイミングチャートで表現される信号は夫々、駆動タイミング制御部606に対して、入力又は出力する信号である。具体的には、記録媒体の搬送に同期したタイミングトリガと同等の駆動トリガ、印刷の区間を知らせる印刷ウインドウ、ノズルを検査する検査区間を知らせる検査ウインドウがある。また、A列の印刷データ(図6の第1吐出データ)をプリントバッファ604から取得するタイミングを示すA列印刷データウインドウ、B列の印刷データをプリントバッファ604から取得するタイミングを示すB列印刷データウインドウがある。さらに、列間レジ機能が有効かそれとも無効かを知らせる列間レジ切り替え信号、列毎の検査データをプリントバッファ604から取得するタイミングを示す検査データウインドウがある。またさらに、実際のノズルの吐出に検査のタイミングを合わせるための検知ウインドウ(内部信号)がある。
【0056】
印刷ウインドウが入力されると、駆動タイミング生成部703は、該印刷ウインドウに基づき、駆動の基準トリガとして利用される駆動トリガと、データをメモリから読み取る取得タイミングを知らせるためのデータウインドウとを、データ選択部605に送信する。また、駆動タイミング生成部703は、印刷ウインドウに基づき、基準トリガとして利用される駆動トリガと、吐出のタイミングを知らせるための駆動ウインドウ(図9では図示せず)とを、駆動制御部607に送信する。さらに、駆動タイミング生成部703は、印刷ウインドウに基づき、駆動トリガと、駆動ウインドウと、ノズル検査の検知タイミングを知らせるための検知ウインドウとを、吐出検査制御部608に送信する。
【0057】
駆動制御部607は、ノズル列間距離の調整が実施されたノズルデータを受け取り、当該受け取ったノズルデータに駆動用のデータを付加して記録ヘッド609に送信する。
【0058】
図9に示すように、各列(A列、B列・・・)の印刷データウインドウは、外部から送られる印刷ウインドウ及び検査ウインドウを基準に、図7の列間レジ値保持部701に保持されている列間のズレ量分遅延して、駆動タイミング制御部606から出力される。その際、検査ウインドウが入力されているタイミングでは、各列の印刷データウインドウの信号値は順次Lowとなる。信号値がLowの状態をNOActive状態とする。図9の場合、A列は列間のズレ量が0、B列は(A列B列の)列間のズレ量が距離Dの場合の波形を示している。つまり、B列の印刷データウインドウにおける立ち上がりのタイミングは、A列の印刷データウインドウにおける立ち上がりのタイミングよりも、距離Dに対応する時間だけ遅くなっている。
【0059】
図9に示すように、検査ウインドウの立ち上がりエッジを起点に、図7の遅延回路704によって、検査データの直前の画像のための吐出が全ノズル列で終わるタイミング(即ちH列の駆動が終わるタイミング)を超えた時点まで遅延させる。このタイミングを、列間レジ切り替え信号値をHighにするタイミングとする。信号値がHighの状態をActive状態とする。図9は、列Hの画像が終わったタイミングで列間レジ切り替え信号をHighにすることを示している。列間レジ切り替え信号は、図9に示すように、検知ウインドウ(内部)が閉じた時点で、列間レジ切り替え信号値をLowにする。列間レジ切り替え信号により、検査動作の直前の印刷動作で印刷する画像のためのインク吐出が全てのノズル列で完了するまで、検査データに基づくインク吐出は開始しない。
【0060】
検査データウインドウは、列間レジ切り替え信号に基づき、駆動タイミング生成部703によって生成される。詳しくは、列間レジ切り替え信号の値がHighの区間において、信号の値が、検査データのサイズに対応する期間だけHighとなるよう生成される。検知ウインドウ及びノズル列毎の駆動ウインドウ(図9では図示せず)は実際の吐出のタイミングの信号となるため、検査データウインドウから数カラム遅れた信号となっている。各種信号の遅延については、図7の駆動トリガ生成部702で生成される駆動トリガをカウントして行っている。
【0061】
図9に示す結果から、仮にA列とB列との間のズレ量がDから変わったとしても、検査データの内容に影響しないことが分かる。このように本実施形態によれば、印刷中にノズル列間の距離が変化し、列間距離の調整値を動的に変えた場合でも、印刷前に準備した検査データを使うことができるようになる。
【0062】
図10は、本実施形態に係る駆動タイミング制御部606で生成される検知ウインドウの詳細として、A列及びB列を一度に検査する例を示している。尚、図10では示していないが、C列ないしH列の検査データの構造についても、A列又はB列と同様である。すまり、検査データは、Null(又は予備吐)のデータを有し、また、検査が必要な場合には、各列の検査パターンのデータを有する。検査パターンは、予備吐パターン(図中、ドットで表現する領域)と、検知用パターン(図中、斜線で表現する領域)とから成る。
【0063】
図10に示すように、検査データに含まれる検査パターンは、予備吐パターンと、検知用パターンとに分かれている。そのため、駆動タイミング生成部703で生成された検知ウインドウ(内部)に基づき、検知用パターン部分だけ信号値Highになるような検知ウインドウを生成している。尚、予備吐パターン幅、検知用パターン幅に関しては、事前にレジスタに設定した値を使用する。
【0064】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態を説明する。尚、以下では、第1実施形態と共通する内容は適宜省略し、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0065】
<駆動タイミング制御部606の詳細な構成>
図11は、本実施形態に係る駆動タイミング制御部606の詳細な構成を示すブロック図である。
【0066】
駆動トリガ生成部1102は、駆動トリガを生成し、該生成した駆動トリガを駆動タイミング生成部1103及び駆動タイミング制御部606の外部に出力する。生成する駆動トリガとして、固定周期トリガと、記録媒体の搬送に同期したタイミングトリガとが、選択的に用いられる。つまり、駆動トリガ生成部1102は、用途に応じて、固定周期トリガとタイミングトリガとを切り替え可能であり、固定周期トリガとタイミングトリガとを切り替えて、駆動タイミング生成部1103に送信し、駆動タイミング制御部606の外部に出力する。
【0067】
列間レジ値保持部1101には、列間レジ値が保持されている。
【0068】
駆動タイミング生成部1103は、列間レジ値保持部1101に保持されているノズル列間距離に応じた調整値(列間レジ値)に基づき、プリントバッファ604からデータを取得するタイミングを知らせるためのデータウインドウをノズル列毎に生成する。そして、駆動タイミング生成部1103は、生成したデータウインドウを、図6のデータ選択部605に送る。
【0069】
また、駆動タイミング生成部1103は、列間レジ値保持部1101に保持されているノズル列間距離に応じた調整値(列間レジ値)に基づく駆動ウインドウをノズル列毎に生成する。そして、駆動タイミング生成部1103は、生成した駆動ウインドウを、図6の駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送る。
【0070】
また、駆動タイミング生成部1103は、列間レジ値保持部1101に保持されている最上流のノズル列(本例ではA列)の列間レジ値と、検査データの情報とに基づき、吐出検査のタイミングを知らせるための検知ウインドウを生成する。そして、駆動タイミング生成部1103は、生成した検知ウインドウを図6の吐出検査制御部608に送信する。
【0071】
尚、各種信号の生成タイミングをずらすために必要な、ある基準からの遅延は、図11の駆動トリガ生成部1102で生成される駆動トリガをカウントして行っている。遅延回路1104は外部から送られる検査ウインドウの立ち上がりエッジを、検査データの直前の画像が全てのノズル列で記録されるまで遅延させた信号(列間レジ切り替え信号)を生成し、この信号を駆動タイミング生成部1103に送信する。
【0072】
駆動タイミング生成部1103は、列間レジ切り替え信号を受けて、列間レジ値保持部1101から取得した列間レジ値を無効にし、検査データウインドウをノズル列毎に生成して、図6のデータ選択部605に送る。ここで、本実施形態と第1実施形態(図7参照)との差分は、検査パターン幅のオフセット値を保持する検査パターン幅オフセット値保持部1105を有する点である。駆動タイミング生成部1103は、検査パターン幅のオフセット値を用いて、各ノズル列の検査タイミングに応じた検査データウインドウを生成できる。
【0073】
また、駆動タイミング生成部1103は、列間レジ切り替え信号を受けて、列間レジ値保持部1101から取得したレジ値を無効にし、検査駆動ウインドウをノズル列毎に生成して、図6の駆動制御部607及び吐出検査制御部608に送る。尚、ノズル列毎の検査駆動ウインドウについて、これらは、レジ値が無効のため同じ信号となる。
【0074】
また、駆動タイミング生成部1103は、プリントバッファ604に保持されている検査データに基づき検知ウインドウを生成し、該生成した検知ウインドウを吐出検査制御部608に送信する。
【0075】
図12は、本実施形態に係る駆動タイミング制御部606の動作を説明するための図であって、各種信号の波形などを示す。図12のタイミングチャートで表現される信号は夫々、駆動タイミング制御部606に対して、入力又は出力する信号である。具体的には、記録媒体の搬送に同期したタイミングトリガと同等の駆動トリガ、印刷の区間を知らせる印刷ウインドウ、ノズルを検査する検査区間を知らせる検査ウインドウがある。また、A列の印刷データ(図6の第1吐出データ)をプリントバッファ604から取得するタイミングを示すA列印刷データウインドウ、B列の印刷データをプリントバッファ604から取得するタイミングを示すB列印刷データウインドウがある。さらに、列間レジ機能が有効かそれとも無効かを知らせる列間レジ切り替え信号、列毎の検査データをプリントバッファ604から取得するタイミングを示す検査データウインドウがノズル列毎(図12ではA列、B列、H列)にある。またさらに、実際のノズルの吐出に検査のタイミングを合わせるための検知ウインドウ(内部信号)がある。
【0076】
図12に示すように、各列(A列、B列・・)の印刷データウインドウは、外部から送られる印刷ウインドウ及び検査ウインドウを基準に、図11の列間レジ値保持部1101に保持されている列間のズレ量分遅延して、駆動タイミング制御部606から出力される。その際、検査ウインドウが入力されているタイミングでは、各列の印刷データウインドウの信号値は順次Lowとなる。信号値がLowの状態をNOActive状態とする。図12の場合、A列は列間のズレ量が0、B列は列間のズレ量が距離Dの場合の波形を示している。検査ウインドウの立ち上がりエッジを起点に、図11の遅延回路1104によって、検査データの直前の画像のための吐出が全ノズル列で終わるタイミングまで遅延させ、そのタイミングを、列間レジ切り替え信号値をHighにするタイミングとする。信号値がHighの状態をActive状態とする。図12は、列Hの画像が終わったタイミングで列間レジ切り替え信号をHighにすることを示している。列間レジ切り替え信号は、図12に示すように、検知ウインドウ(内部)が閉じた時点で、列間レジ切り替え信号値をLowにする。
【0077】
各ノズル列の検査データウインドウは、列間レジ切り替え信号に基づき、駆動タイミング生成部1103によって生成される。詳しくは、列間レジ切り替え信号の値がHighの区間において、信号の値が、検査データに含まれる検査パターンのサイズ分だけHighとなるよう生成される。駆動タイミング生成部1103は、検査パターン幅オフセット値保持部1105に保持される検査パターンのオフセット値を用いて、各列の検査データをプリントバッファ604から読み出すタイミングでHighとなる信号(検査データウィンドウ)を生成する。本実施形態では、図12に示すように、A列、B列の順にActive状態となる。一方、検査しないH列は常にNOActive状態が維持される。検知ウインドウ及びノズル列毎の駆動ウインドウ(図12では図示せず)は実際の吐出のタイミングの信号となるため、検査データウインドウから数カラム遅れた信号となっている。各種信号の遅延については、図11の駆動トリガ生成部1102で生成される駆動トリガをカウントして行っている。
【0078】
図12に示す結果から、仮にA列とB列との間のズレ量がDから変わったとしても、検査データの内容に影響しないことが分かる。このように本実施形態によれば、印刷中にノズル列間の距離が変化し、列間距離の調整値を動的に変えた場合でも、印刷前に準備した検査データを使うことができるようになる。
【0079】
また、各列の検査パターンのタイミングでしか検査データウインドウをActiveにしないので、各列に対する検査パターンをすべて共通にすることができる。
【0080】
<従来技術の課題>
本開示の課題である従来技術の問題について、図13及び図14を参照して説明する。従来技術の問題とは具体的に、本開示の技術を適用しない記録ヘッドを用いて、ノズルを検査するための検査データに基づき印刷した場合に発生する問題である。
【0081】
図13(b)は、図13(a)記載の記録ヘッドのA列の検査データに基づき吐出する前に印刷される画像(図中「1ページ目の画像後端」)と、A列の検査データに基づき吐出した後に印刷される画像(図中「2ページ目の画像後端」)とのイメージを表す。図13(b)のようなデータ構造をとった場合、A列の検査データに基づきA列のノズルから吐出しているとき、A列以外の列のノズルが、前の画像(1ページ目の画像後端)の吐出データに基づき吐出している状態になるが、かかる状態は適切でない。その理由は、前述した通り、複数ページの連続印刷中、ページ画像と異なる検査パターンを印刷する場合、ある列の検査データに基づく吐出中、当該ある列以外の列の吐出を停止しなければならない制約があるためである。そのため、A列以外の列のノズルから吐出されない状態を作るため、図13(c)に示すように、1ページ目の画像後端とA列の検査パターンとの間に、Nullデータを配する必要がある。
【0082】
図14(a)及び図14(b)は夫々、ノズル列の物理的な位置ずれに応じた検査データのデータ構造を説明するための図であって、1ページ目の画像と2ページ目の画像との画像間で、A列及びB列のノズル検査を行う例を示している。
【0083】
図14(a)はA列に対して、B列が距離D1離れている場合の、各列に対する検査データのデータ構造を示しており、図中、左から右にかけて時間経過する。尚、時間の単位は、駆動トリガのカウント数である。
【0084】
図14(a)に示すように、B列の検査に関して、A列の検査データに対して距離D1分遅れたタイミングで、Nullデータ(又は予備吐データ)、B列の検査パターン、及びNullデータ(又は予備吐データ)から成るB列の検査データに基づく吐出が始まる。このB列の検査データは、A列の検査パターンの印刷が終わるタイミングまで、Nullデータ(又は予備吐データ)である必要がある。また、B列の検査パターンの印刷が終わった後、2ページ目の画像の印刷が始まるまでの調整用データとして、Nullデータ(又は予備吐データ)が必要となる。
【0085】
また、図14(a)は、A列に対してH列が距離D2離れている場合の、H列の検査データのデータ構造を示している。図示するように、H列の検査データは、A列の検査データに対して、全体的に距離D2分遅れたタイミングとなるように用意されている。
【0086】
図14(b)は、A列に対してB列が距離D3(D3>D1)離れている場合の、各列に対する検査データのデータ構成を示している。尚、左から右にかけて時間経過する点、及び、時間の単位は駆動トリガのカウント数である点は、図14(a)と同様である。
【0087】
図14(b)に示すように、B列の検査に関して、A列の検査データに対して距離D3分遅れたタイミングで、Nullデータ(又は予備吐データ)、B列の検査パターン、及びNullデータ(又は予備吐データ)から成るB列の検査データに基づく吐出が始まる。このB列の検査データは、A列の検査パターンの印刷が終わるタイミングまで、Nullデータ(又は予備吐データ)である必要がある。また、B列の検査パターンの印刷が終わった後、2ページ目の画像の印刷が始まるまでの調整用データとして、A列の検査データにNullデータ(又は予備吐データ)が必要となる。
【0088】
尚、H列に関しては図14(a)と同様である。図14(a)及び図14(b)に示すように、検査データのデータ構造は各列の位置ずれ量に応じて変化することが分かる。そのため、印刷途中でノズル列の列間距離が変化した場合には、検査データを改めて用意しなければならない。
【0089】
<本開示の効果>
以上説明したように、第1実施形態又は第2実施形態で示す構成及び制御を採用することにより、記録ヘッドの熱膨張や紙の伸縮の影響に因って、ノズル列の列間レジが動的に変化する場合に、それに応じた検査データ作成とメモリへの展開が不要となる。例えば、不吐ノズル検知用の検査データは指定ノズルを選択して吐出させるため、ノズルデータに変換した後のデータを直接、印刷直前のプリントバッファに展開しなければならず、それゆえデータ量が多い。そのため、画像印刷中にノズル列の列間レジを変化させた際に、改めて作成した検査データを通常の画像データ送信ラインを使用して送信する場合、データ転送路の帯域を上げる必要が出てくる。
【0090】
しかし、本開示の技術によれば、そのような帯域上昇が不要になるため、伝送路のスペックアップをする必要がない。よって、連続印刷中にノズルの不吐状態を検知し、該検知した不吐状態の情報に応じて他のノズルで補完して画像品位の低下を抑えるような印刷システムを、コストアップせずに実現できる。本開示の技術によれば、例えば、高速通信方式(PCIe等)のレーン数を増やす、高速通信方式のリビジョンを上げるなどのコストアップ要因を減らすことができる。
【0091】
[その他の実施形態]
また、前述の実施形態について、インクを加熱して吐出させるいわゆるサーマルヘッドを前提に説明しているが、ピエゾ素子を用いた記録ヘッドにも、本開示の技術的思想を適用できる。この理由は、ピエゾ素子を用いた記録ヘッドにおいても、ピエゾ素子に駆動波形を与えるために配置される駆動波形生成回路(IC)が発熱するため、当該ICが記録素子基板近傍に配置されている場合など、前述のサーマルヘッドと同様の事象が生じるためである。
【0092】
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0093】
[本開示の技術的特徴]
本開示は、以下の構成を含む。
【0094】
(構成1)複数のノズル列を有し、前記複数のノズル列はそれぞれ複数のノズルから成る、記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対し、記録媒体を所定の速度で搬送する搬送手段と、ノズル列間のズレに合わせてインクを吐出するタイミングを変更するための補正値を記憶する記憶手段と、前記搬送手段による搬送動作を停止させることなく、画像を印刷する印刷動作と、ノズルの検査データに基づき印刷する検査動作との切り替えを行う切り替え手段と、前記記録ヘッドからインクを吐出させるための信号を、前記補正値に基づいて生成する第1生成手段と、を有し、前記第1生成手段は、前記切り替え手段による前記印刷動作から前記検査動作への切り替えに同期して、前記補正値を有効から無効に切り替える、ことを特徴とする記録装置。
(構成2)前記記録媒体にインクを吐出するための吐出データを生成する第2生成手段と、前記第2生成手段により生成される前記吐出データが記憶されるバッファであって、該吐出データとして、前記印刷動作のための第1吐出データと、前記検査動作のための第2吐出データと、がある、前記バッファと、を更に有する、構成1に記載の記録装置。
(構成3)前記第1生成手段は、前記記録媒体の搬送に同期した第1信号と、前記印刷動作の区間を知らせるための第2信号と、前記検査動作の区間を知らせるための第3信号と、に基づき、前記補正値を用いて、データを取得するノズル列毎のタイミングを知らせるための第4信号と、インク吐出のタイミングを知らせるための第5信号と、ノズル検査の検知のタイミングを知らせるための第6信号と、を生成し、前記第1生成手段には、前記補正値の有効と無効とを切り替えるための切り替え信号が入力され、前記切り替え信号は、前記第3信号に基づき生成される、構成1又は2に記載の記録装置。
(構成4)使用する吐出データを選択する選択手段であって、前記第4信号に応じて、前記バッファに記憶されている前記第1吐出データと、前記第2吐出データと、の何れかを前記バッファから選択的に読み出す前記選択手段を更に有する、構成1乃至3の何れか1つに記載の記録装置。
(構成5)前記第5信号に応じて、前記記録ヘッドを駆動する駆動制御手段と、前記第6信号に応じて、前記ノズル検査を実施する検査制御手段と、を更に有する、構成1乃至4の何れか1つに記載の記録装置。
(構成6)前記検査制御手段は、検査結果データに基づき、吐出不能状態のノズルを示す不吐ノズル情報を取得する、構成1乃至5の何れか1つに記載の記録装置。
(構成7)前記不吐ノズル情報を用いて、吐出不能状態のノズルの代わりに他の吐出可能状態のノズルを用いてインク吐出するための吐出データを生成する不吐補完処理を実行する実行手段を更に有する、構成1乃至6の何れか1つに記載の記録装置。
(構成8)前記記録ヘッドにおいて、前記複数のノズル列は、第1方向に配置され、前記複数のノズル列のそれぞれにおける前記複数のノズルは、前記第1方向と交差する第2方向に配置され、前記搬送手段は、前記記録媒体を、前記記録ヘッドに対して相対的に前記第1方向に搬送する、構成1乃至7の何れか1つに記載の記録装置。
(構成9)前記記録ヘッドは、ノズルからのインクの吐出状態を検知するためのセンサを有する、構成1乃至8の何れか1つに記載の記録装置。
(構成10)前記第1生成手段は、前記切り替え信号を生成する遅延回路を更に有し、前記切り替え信号により、前記検査動作の直前の前記印刷動作で印刷する画像のためのインク吐出が、全てのノズル列で完了するまで、前記検査データに基づくインク吐出が開始しない、構成1乃至9の何れか1つに記載の記録装置。
(構成11)前記検査データに基づく前記第2吐出データによって記録される画像は、前記第1吐出データによって記録される第1画像と第2画像との間に配される、構成1乃至10の何れか1つに記載の記録装置。
(構成12)前記複数のノズル列のそれぞれに対応する検査データに基づいて印刷される検査領域の画像は、予備吐データ又はNullデータに基づく画像を少なくとも含み、また、当該検査領域の画像は、ノズル列毎の検査パターンを含む場合があり、前記第1生成手段は、前記検査パターンの幅に応じたオフセット値を用いて、前記第4信号と、前記第5信号と、前記第6信号と、を生成する、構成1乃至11の何れか1つに記載の記録装置。
(構成13)複数のノズル列を有し、前記複数のノズル列はそれぞれ複数のノズルから成る、記録ヘッドと、前記記録ヘッドに対し、記録媒体を所定の速度で搬送する搬送手段と、ノズル列間のズレに合わせてインクを吐出するタイミングを変更するための補正値を記憶する記憶手段と、前記搬送手段による搬送動作を停止させることなく、画像を印刷する印刷動作と、ノズルの検査データに基づき印刷する検査動作との切り替えを行う切り替え手段と、前記記録ヘッドからインクを吐出させるための信号を、前記補正値に基づいて生成する生成手段と、を有する記録装置の制御方法であって、前記生成手段が、前記切り替え手段による前記印刷動作から前記検査動作への切り替えに同期して、前記補正値を有効から無効に切り替えるステップを有する、ことを特徴とする制御方法。
(構成14)コンピュータに構成13に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0095】
112、609 記録ヘッド
606 駆動タイミング制御部
701 列間レジ値保持部
703 駆動タイミング生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14