(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166622
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】アダプタ及び光接続構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G02B6/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082828
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】指田 貴子
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 祥
(72)【発明者】
【氏名】上原 史也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 悠人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大
(72)【発明者】
【氏名】木村 元佳
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036QA12
2H036QA18
2H036QA42
2H036QA43
2H036QA47
2H036QA56
(57)【要約】
【課題】光学特性を良好に維持することが可能なアダプタを提供する。
【解決手段】アダプタは、第1方向に互いに対向する一対のフェルールを保持する。アダプタは、第1方向から見て一対のフェルールを囲む筒形状をなす筒状体を備える。筒状体は、第1方向に沿って延在しフェルールの側面に係合するガイドと、第1方向の第1端から第2端に向かって形成される第1スリットと、第3方向において第1スリットに対向し、第1端から第2端に向かって形成される第2スリットと、第1方向において第1スリットに対向し、第2端から第1端に向かって形成される第3スリットと、第3方向において第3スリットに対向し、第2端から第1端に向かって形成される第4スリットと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に互いに対向する一対のフェルールを保持するためのアダプタであって、
前記第1方向から見て前記一対のフェルールを半周以上にわたって囲む筒形状をなす筒状体を備え、
前記筒状体は、
前記第1方向に沿って延在し前記フェルールの側面に係合するガイドと、
前記第1方向の第1端から前記第1端とは反対の第2端に向かって形成され、前記第1方向に交差する第2方向に拡開可能な第1スリットと、
前記第1方向及び前記第2方向の両方に交差する第3方向において前記第1スリットに対向し、前記第1端から前記第2端に向かって形成され、前記第2方向に拡開可能な第2スリットと、
前記第1方向において前記第1スリットに対向し、前記第2端から前記第1端に向かって形成され、前記第2方向に拡開可能な第3スリットと、
前記第3方向において前記第3スリットに対向し、前記第2端から前記第1端に向かって形成され、前記第2方向に拡開可能な第4スリットと、を備える、アダプタ。
【請求項2】
前記第1スリット及び前記第2スリットは、前記第1端から前記第2端に向かって1mm以上にわたって形成されており、
前記第3スリット及び前記第4スリットは、前記第2端から前記第1端に向かって1mm以上にわたって形成されており、
前記第1スリットと前記第3スリットとの間、及び、前記第2スリットと前記第4スリットとの間は、前記第1方向において1mm以上離れている、請求項1に記載のアダプタ。
【請求項3】
前記筒状体は、
前記第1スリット及び前記第3スリットが形成された第1壁体と、
前記第1壁体に対面し、前記第2スリット及び前記第4スリットが形成された第2壁体と、を含み、
前記第2方向において、前記第1スリット及び前記第3スリットの幅は、前記第1壁体の幅よりも2mm以上狭くなっており、
前記第2方向において、前記第2スリット及び前記第4スリットの幅は、前記第2壁体の幅よりも2mm以上狭くなっている、請求項1又は2に記載のアダプタ。
【請求項4】
請求項1に記載のアダプタと、
前記アダプタの前記筒状体に保持された前記一対のフェルールと、を備える、光接続構造。
【請求項5】
前記ガイドは、前記第2方向において互いに対面する第1ガイド及び第2ガイドを有し、
前記一対のフェルールのそれぞれは、前記第1ガイド及び前記第2ガイドに係合する一対の係合部を有する、請求項4に記載の光接続構造。
【請求項6】
前記一対のフェルールのそれぞれは、前記第3方向において互いに対向する第1側面及び第2側面と、前記第2方向において互いに対向する第3側面及び第4側面とを備え、
前記一対の係合部は、前記第3側面及び前記第4側面に形成された、前記第1方向に延在する溝である、請求項5に記載の光接続構造。
【請求項7】
前記溝の前記第1方向に交差する断面形状は、V字状である、請求項6に記載の光接続構造。
【請求項8】
前記一対のフェルール同士を互いに対向する方向に付勢する一対のバネを更に備え、
前記第1ガイドと前記第2ガイドとが前記一対のフェルールを押圧する力は、前記一対のバネが前記一対のフェルールを付勢するバネ荷重よりも小さい、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の光接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アダプタ及び光接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに対向する一対のフェルールを保持するためのアダプタを備える光接続構造が開示されている。この光接続構造では、複数の光ファイバを保持したフェルールをアダプタに挿入して嵌合することによって複数の光ファイバを位置決めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光接続構造では、フェルールが挿入される方向に沿って、アダプタにスリットが形成されている。この場合、アダプタにフェルールが挿入された際に、スリットがその幅方向に開かれることにより、スリットに対面するアダプタの壁体が湾曲し得る。これにより、アダプタの湾曲によって生じた力がフェルールに作用し、フェルールが湾曲することで、光学特性が不安定になることが考えられる。
【0005】
本開示は、光学特性を良好に維持することが可能となる、アダプタ及び光接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るアダプタは、第1方向に互いに対向する一対のフェルールを保持する。アダプタは、第1方向から見て一対のフェルールを半周以上にわたって囲む筒形状をなす筒状体を備える。筒状体は、第1方向に沿って延在しフェルールの側面に係合するガイドと、第1方向の第1端から第1端とは反対の第2端に向かって形成され、第1方向に交差する第2方向に拡開可能な第1スリットと、第1方向及び第2方向の両方に交差する第3方向において第1スリットに対向し、第1端から第2端に向かって形成され、第2方向に拡開可能な第2スリットと、第1方向において第1スリットに対向し、第2端から第1端に向かって形成され、第2方向に拡開可能な第3スリットと、第3方向において第3スリットに対向し、第2端から第1端に向かって形成され、第2方向に拡開可能な第4スリットと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光学特性を良好に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光接続構造を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す光接続構造におけるフェルールと光ファイバとを示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す光接続構造におけるアダプタを示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すアダプタに保持された状態のフェルールを模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1変形例の光接続構造を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す光接続構造におけるアダプタを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す光接続構造におけるフェルールを示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示すアダプタに保持された状態のフェルールを模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、第2変形例の光接続構造におけるフェルール及びアダプタを示す断面図である。
【
図10】
図10は、第3変形例の光接続構造におけるフェルール及びアダプタを示す断面図である。
【
図11】
図11は、第4変形例の光接続構造におけるフェルール及びアダプタを示す断面図である。
【
図12】
図12は、第5変形例の光接続構造におけるフェルール及びアダプタを示す断面図である。
【
図13】
図13は、第6変形例の光接続構造におけるフェルール及びアダプタを示す断面図である。
【
図14】
図14は、第7変形例の光接続構造におけるフェルール及びアダプタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
[1]一実施形態に係るアダプタは、第1方向に互いに対向する一対のフェルールを保持する。アダプタは、第1方向から見て一対のフェルールを半周以上にわたって囲む筒形状をなす筒状体を備える。筒状体は、第1方向に沿って延在しフェルールの側面に係合するガイドと、第1方向の第1端から第1端とは反対の第2端に向かって形成され、第1方向に交差する第2方向に拡開可能な第1スリットと、第1方向及び第2方向の両方に交差する第3方向において第1スリットに対向し、第1端から第2端に向かって形成され、第2方向に拡開可能な第2スリットと、第1方向において第1スリットに対向し、第2端から第1端に向かって形成され、第2方向に拡開可能な第3スリットと、第3方向において第3スリットに対向し、第2端から第1端に向かって形成され、第2方向に拡開可能な第4スリットと、を備える。
【0010】
このアダプタでは、筒状体の内側に一対のフェルールが保持された状態において、第1スリット、第2スリット、第3スリット及び第4スリットの幅が大きくなるように筒状体が弾性変形する。この場合、スリットの幅が小さくなるように筒状体に生じる復元力によって、フェルールの側面にガイドが係合することにより、第1方向から見たときの一対のフェルールの位置決めがなされる。第1スリットと第2スリットとは第3方向において互いに対向している。また、第3スリットと第4スリットとは第3方向において互いに対向している。そのため、アダプタに一対のフェルールが保持された状態では、第1スリットが第2方向に広がる際には、同様に第2スリットも第2方向に広がり、第3スリットが第2方向に広がる際には、同様に第4スリットも第2方向に広がる。したがって、アダプタが湾曲することが抑制されるため、光学特性を良好に維持することが可能となる。
【0011】
[2]一実施形態として、上記[1]において、第1スリット及び第2スリットは、第1端から第2端に向かって1mm以上にわたって形成されており、第3スリット及び第4スリットは、第2端から第1端に向かって1mm以上にわたって形成されており、第1スリットと第3スリットとの間、及び、第2スリットと第4スリットとの間は、第1方向において1mm以上離れていてもよい。この構成では、アダプタの強度を所定の範囲に保つことができる。
【0012】
[3]一実施形態として、上記[1]又は上記[2]のいずれかにおいて、筒状体は、第1スリット及び第3スリットが形成された第1壁体と、第1壁体に対面し、第2スリット及び第4スリットが形成された第2壁体と、を含み得る。第2方向において、第1スリット及び第3スリットの幅は、第1壁体の幅よりも2mm以上狭くなっていてよい。第2方向において、第2スリット及び第4スリットの幅は、第2壁体の幅よりも2mm以上狭くなっていてよい。この構成では、アダプタの強度を所定の範囲に保つことができる。
【0013】
[4]一実施形態に係る光接続構造は、[1]から[3]のいずれかに記載のアダプタと、アダプタの筒状体に保持された一対のフェルールと、を備える。この構成では、光学特性が良好に維持された一対のフェルールを有する光接続構造を提供することができる。
【0014】
[5]一実施形態として、上記[4]において、ガイドは、第2方向において互いに対面する第1ガイド及び第2ガイドを有し得る。一対のフェルールのそれぞれは、第1ガイド及び第2ガイドに係合する一対の係合部を有し得る。この構成では、フェルールの係合部が第1ガイド及び第2ガイドに係合することによって、第1方向から見たときのフェルールの位置が適切に決定される。
【0015】
[6]一実施形態として、上記[5]において、一対のフェルールのそれぞれは、第3方向において互いに対向する第1側面及び第2側面と、第2方向において互いに対向する第3側面及び第4側面とを備えてよい。一対の係合部は、第3側面及び第4側面に形成された、第1方向に延在する溝であってよい。この場合、第1ガイド及び第2ガイドが、第1方向から見たときに溝に係合することにより、フェルールを適切に位置決めできる。
【0016】
[7]一実施形態として、上記[6]において、溝の第1方向に交差する断面形状は、V字状であってよい。この構成では、第1方向から見たとき、第1ガイド及び第2ガイドのそれぞれの先端が、円弧形状を呈している場合に、第1ガイド及び第2ガイドによって好適にフェルールを保持できる。
【0017】
[8]一実施形態として、上記[5]から[7]のいずれかにおいて、光接続構造は、一対のフェルール同士を互いに対向する方向に付勢する一対のバネを更に備え、第1ガイドと第2ガイドとが一対のフェルールを押圧する力は、一対のバネが一対のフェルールを付勢するバネ荷重よりも小さくてもよい。この構成では、アダプタに保持された状態のフェルールがバネ荷重によって第1方向に移動され得る。すなわち、対向した状態の一対のフェルール同士を互いに押圧することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るアダプタ及び光接続構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
図1は、一実施形態に係る光接続構造を示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示す光接続構造におけるフェルールを示す断面図である。
図3は、
図1に示す光接続構造におけるアダプタを示す断面図である。
図4は、
図3に示すアダプタに保持された状態のフェルールを模式的に示す図である。
図1に示すように、光接続構造100は、一対の光コネクタ1と、一対の光コネクタ1を保持するアダプタ40と、を備える。光コネクタ1のそれぞれは、複数の光ファイバ20(
図2参照)と、複数の光ファイバ20を保持するフェルール10と、フェルール10を付勢するバネ30と、を有する。バネ30は、不図示の保持部材によって後端が保持される。以下、フェルール10の長手方向を第1方向D1とし、フェルール10の幅方向を第2方向D2とし、第1方向D1及び第2方向D2に交差する方向を第3方向D3とする。第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は、例えば、互いに直交している。
【0020】
図1に示されるように、フェルール10は、略直方体形状を有する。フェルール10は、前端10aと第1方向D1において前端10aとは反対側の後端10bとを有する。フェルール10は、第1方向D1における前端10aに設けられた光学端面11と、第1方向D1における後端10bに設けられた後端面12と、第1方向D1に沿って延びる第1側面15、第2側面16、第3側面13、及び、第4側面14とを有する。第1側面15及び第2側面16は、第3方向D3において互いに対向する。第3側面13及び第4側面14は、第2方向D2において互いに対向する。光学端面11は、光学的に接続される相手側のフェルール10(他のフェルール)に対向する。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、フェルール10は、複数の光ファイバ20を保持するための複数(図示例では12箇所)の保持孔18を有する。光ファイバ20は、保持孔18に挿入された状態で保持孔18に保持される。光ファイバ20は、例えば、コア及びクラッドを有するシングルモードファイバであってもよい。保持孔18は、第1方向D1に沿って延びている。保持孔18は、フェルール10の光学端面11に開放されている。複数の保持孔18は、第2方向D2に沿って並んで配置されている。また、保持孔18は、光ファイバテープ心線を挿入するための開口17に連通している。開口17は、後端面12に形成されている。
【0022】
図2に示されるように、フェルール10の第3側面13には、後述する第3凸部53に係合する第1凹部23(係合部、V溝)が設けられている。第1凹部23は、第1方向D1に沿って延在している。第1凹部23は、第1方向D1の任意の位置における第2方向D2及び第3方向D3に沿った断面形状が一様となるように形成されている。例えば、第1凹部23における第1方向D1に交差する断面は、V字状である。V字状の第1凹部23を構成する一対の斜面23a,23bは、一定の角度θ1で開いている。例えば、角度θ1は、30°から150°の範囲であり、一例として約120°であってよい。なお、溝の底部23cには、R加工が施されていてもよい。溝の底部23cは、斜面23aと斜面23bとを接続する部分である。
【0023】
フェルール10の第4側面14には、第3側面13と同様に、後述する第4凸部54に係合する第2凹部24(係合部、V溝)が設けられている。第2凹部24は、第1方向D1に沿って延在している。第2凹部24は、第1方向D1の任意の位置における第2方向D2及び第3方向D3に沿った断面形状が一様となるように形成されている。例えば、第2凹部24における第1方向D1に交差する断面は、V字状である。V字状の第2凹部24を構成する一対の斜面24a,24bは、一定の角度θ1で開いている。なお、溝の底部24cには、R加工が施されていてもよい。溝の底部24cは、斜面24aと斜面24bとを接続する部分である。
【0024】
フェルール10は、例えば、樹脂によって形成されている。フェルール10は、一例としては、ウルテム(登録商標)等のPEI(ポリエーテルイミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、又はPES(ポリエーテルサルホン)の材料によって構成されている。フェルール10は、アダプタ40に挿抜可能に構成されている。フェルール10は、例えば、後端10bから前端10aに向かって第1方向D1に沿ってアダプタ40に挿入され、アダプタ40に嵌合される(
図1及び
図4参照)。
【0025】
図1に示されるように、光接続構造100では、一対のフェルール10が一対のバネ30によって付勢されている。具体的には、バネ30は、フェルール10を後端10bから前端10aに向けて付勢している。一例としては、バネ30は、互いに対向する方向に一対のフェルール10同士を付勢する。フェルール10の後端面12には、バネ30の端部を外周から保持するための突起12aが形成されている。なお、バネ30は、例えば、アダプタ40に対する相対的な位置が決められたハウジング等に収容された状態でフェルール10を第1方向D1に沿って押圧してもよい。フェルール10を押圧するバネ30の付勢力の大きさは、特に限定されないが、例えば10N以下であってよく、より好ましくは5N以下であってよい。
【0026】
アダプタ40は、一対のフェルール10が第1方向D1に互いに対向するように、一対のフェルール10を保持する部材である。アダプタ40は、第1方向D1に延在する筒状体41によって構成されている。筒状体41は、例えば、筒形状(枠状)を有する。筒状体41は、第1方向D1の第1端40aと、第1端40aとは反対側の第2端40bとを有する。筒状体41は、フェルール10を筒形状の内部に挿抜可能に構成されている。例えば、アダプタ40は、筒状体41の内部においてフェルール10と他のフェルール10とが互いに対向するようにフェルール10が挿入して嵌合するように構成されている。
【0027】
筒状体41は、弾性変形可能に構成されている。筒状体41は、例えば樹脂によって形成されている。筒状体41は、例えば、ウルテム(登録商標)等のPEI(ポリエーテルイミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PES(ポリエーテルサルホン)、又はPA(ポリアミド)の材料によって構成されている。
【0028】
図3及び
図4に示されるように、筒状体41は、例えば、第1方向D1から見た場合に、矩形枠状を呈している。筒状体41は、第1壁体45、第2壁体46、第3壁体43及び第4壁体44を有する。第1壁体45及び第2壁体46は、第1方向D1から見たときに矩形の長辺を構成している。第1壁体45は、一方のフェルール10の第1側面15及び他方のフェルール10の第2側面16(
図1参照)に対面する第1内周面45aを有する。第2壁体46は、一方のフェルール10の第2側面16及び他方のフェルール10の第1側面15(
図1参照)に対面する第2内周面46aを有する。第3壁体43及び第4壁体44は、第1方向D1から見たときに矩形の短辺を構成している。第3壁体43は、フェルール10の第3側面13に対面する第3内周面43aを有する。第4壁体44は、第4側面14に対面する第4内周面44aを有する。
【0029】
筒状体41は、フェルール10の第3側面13に形成された第1凹部23に係合する第3凸部53(第1ガイド)と、第4側面14に形成された第2凹部24に係合する第4凸部54(第2ガイド)とを備える。第3凸部53及び第4凸部54は、第1方向D1の任意の位置における第2方向D2及び第3方向D3に沿った断面形状が一様となるように形成されている。一例として、第3凸部53及び第4凸部54は、第3内周面43a及び第4内周面44aにそれぞれ形成されている。第3凸部53及び第4凸部54は、第1方向D1に延在している。第3凸部53及び第4凸部54は、第3内周面43a及び第4内周面44aからそれぞれ内向きに突出する突起状(山形の形状)を呈している。第3凸部53及び第4凸部54は互いに対向している。
【0030】
第3凸部53及び第4凸部54は、例えば、第1方向D1に交差する断面においてそれぞれV字状である。第3凸部53において、略V字状をなす突起を構成する一対の斜面53a,53bは、一定の角度θ2で接続されている。同様に、第4凸部54において、略V字状をなす突起を構成する一対の斜面54a,54bは、一定の角度θ2で接続されている。角度θ2は、第1凹部23及び第2凹部24の角度θ1と同じ大きさであってよい。なお、第1方向D1から見たとき、第3凸部53及び第4凸部54のそれぞれの先端53c,54cは、円弧形状を呈するようにR加工が施されていてよい。その場合、先端53c,54cのR加工の曲率は第1凹部23及び第2凹部24のR加工の曲率と同じであってよい。
【0031】
第1方向D1から見て、筒状体41の第3凸部53の先端53cから第4凸部54の先端54cまでの無負荷状態における距離L1は、フェルール10の第1凹部23の底部23cから第2凹部24の底部24cまでの距離L2(
図2参照)よりも小さい。アダプタ40の筒状体41にフェルール10が保持される場合、筒状体41は、第2方向D2に押し拡げられるように弾性変形する。第3凸部53及び第4凸部54は、筒状体41が弾性変形したときの復元力によって、フェルール10の第3側面13と第4側面14とを押圧する。
【0032】
ここで、抜き力について具体的に説明する。抜き力は、フェルール10をアダプタ40から引き抜く際にフェルール10を前端10aから後端10bに向けて引く力の最大値である。抜き力は、アダプタ40に挿入して嵌合されたフェルール10に対する側圧であるフェルール10の側圧に相当する。フェルール10の側圧とは、本実施形態では、第3凸部53と第4凸部54とが一対のフェルール10を押圧する力である。抜き力は、アダプタ40に挿入されたフェルール10とアダプタ40とをどの程度干渉させるかを決定するための指標であってもよい。抜き力は、10N以下であってもよいし、5N以下であってもよい。また、抜き力は、アダプタ40が弾性変形する範囲の大きさであってもよい。
【0033】
抜き力は、以下のように測定される。まず、アダプタ40にフェルール10を挿入する。次に、フェルール10を固定し、アダプタ40を一定速度で引き抜く。最後に、アダプタ40を引き抜く際にかかった最大荷重を測定し、測定した数値を抜き力とする。なお、フェルール10以外をアダプタ40に挿入して抜き力が測定されてもよい。例えば、検査用のゲージブロックをアダプタ40に挿入して抜き力が測定されてもよい。一例としては、ゲージブロックは、金属製の板状であってもよい。アダプタ40に挿入されたゲージブロックとアダプタ40との干渉量は、フェルール10とアダプタ40との干渉量と同一であってもよい。ゲージブロックは、予め設計した干渉量を満たす寸法を有してもよく、一例としては、ゲージブロックの第2方向D2に沿った幅が、フェルール10の第1凹部23の底部23cから第2凹部24の底部24cまでの距離L2(
図2参照)と同一であってもよい。
【0034】
抜き力が満たすべき数値範囲について詳細に説明する。まず、抜き力は、フェルール10がアダプタ40に挿入されていない場合のバネ30の付勢力(コネクタ収納時のバネ荷重)以下である。具体的には、抜き力は、一対のバネ30が一対のフェルール10を付勢する際の付勢力以下である。例えば、抜き力は、1.5N以下であってもよい。
【0035】
次に、抜き力は、フェルール10がアダプタ40に挿入されていない場合のバネ30の付勢力(以下、「コネクタ収納時のバネ荷重」と表記する)と、フェルール10がアダプタ40に挿入されて他のフェルール10と突き合わされた場合のバネ30の付勢力(以下、「フェルールバック時のバネ荷重」と表記する)との差分以下である。例えば、抜き力は、1.8N以下であってもよい。
【0036】
なお、フェルール10は、第1方向D1に沿ってバネ30を収縮させつつ、光コネクタ1のハウジング(不図示)に収納されている。この場合のバネ30の付勢力が、コネクタ収納時のバネ荷重である。また、フェルール10がアダプタ40に挿入されて他のフェルール10と突き合わされると、フェルール10及び他のフェルール10が第1方向D1に沿って互いに押圧する。このとき、他のフェルール10によってフェルール10が押圧されることにより、第1方向D1に沿ってバネ30がさらに収縮する。この場合のバネ30の付勢力が、フェルールバック時のバネ荷重である。さらに、コネクタ収納時のバネ荷重の値及びフェルールバック時のバネ荷重の値は、光コネクタ1の各部品の寸法に基づいて算出された数値範囲のうちの最小値である。このとき、バネ30が規定の寸法まで圧縮された際の付勢力がコネクタ収納時のバネ荷重及びフェルールバック時のバネ荷重としてそれぞれ測定される。
【0037】
最後に、抜き力は、フェルール10をアダプタ40に繰り返し着脱した際に光学特性が安定するのに必要なバネ30の荷重以上である。具体的には、抜き力は、フェルール10をアダプタ40に繰り返し着脱した際に、接続損失の変動値の標準偏差の3倍(3σ)が、0.1dB以下となるために必要なバネ30の荷重以上である。例えば、抜き力は、0.7N以上であってもよい。この場合、アダプタ40に挿入して嵌合されたフェルール10に対する側圧が十分に大きくなり、光学特性を良好に維持することが可能となる。例えば、フェルール10をアダプタ40に繰り返し着脱した場合であっても、複数の光ファイバ20の位置決め精度等の劣化が抑制されるので、光学特性を良好に維持することが可能となる。なお、フェルール10をアダプタ40に繰り返し着脱した際に光学特性が安定するのに必要なバネ30の荷重は、実際に測定された数値に基づいて算出される。また、上記バネ30の荷重は、設計時に予め設定されたバネ荷重の数値の1%以上15%以下であってもよい。
【0038】
抜き力が満たすべき数値範囲の一例について説明する。フェルール10及びアダプタ40の材質がウルテムであり、設計時に予め設定されたバネ荷重が5.0N±0.5Nである場合について説明する。この場合、コネクタ収納時のバネ荷重は、1.4Nである。フェルールバック時のバネ荷重とコネクタ収納時のバネ荷重との差分は、1.8Nである。フェルール10をアダプタ40に繰り返し着脱した際に光学特性が安定するのに必要なバネ30の荷重は、0.1N以上0.7N以下である。抜き力は、フェルール10をアダプタ40に繰り返し着脱した際に光学特性が安定するのに必要なバネ30の荷重以上、コネクタ収納時のバネ荷重以下、且つフェルールバック時のバネ荷重とコネクタ収納時のバネ荷重との差分以下である。以上のことから、抜き力は、0.1N以上1.4N以下である。この場合、抜き力が適度な大きさになり、フェルール10をアダプタ40から容易に引き抜くことが可能となる。その結果、ユーザの利便性が向上する。
【0039】
再び、筒状体について説明する。筒状体41は、フェルール10が挿入されると僅かに押し広げられてフェルール10を押圧するように、複数のスリットを有している。例えば、図示例の筒状体41は、第1スリット42Aと、第2スリット42Bと、第3スリット42Cと、第4スリット42Dとを有する。第1スリット42Aは、第1方向D1の第1端40aから第2端40bに向かって形成されている。第1スリット42Aは、筒状体41に対して第2方向D2に押し広げる力が加わった場合に、第2方向D2に僅かに拡開可能となっている。図示例では、第1スリット42Aは、第1壁体45の第1端40aから第1方向D1に沿って第2端40bに向かって形成されている。第1スリット42Aは、第1方向D1の中心よりも第1端40aに近い位置まで形成されている。第1スリット42Aは、第2方向D2において第1壁体45の中心に形成されている。
【0040】
第2スリット42Bは、第1方向D1の第1端40aから第2端40bに向かって形成されている。第2スリット42Bは、筒状体41に対して第2方向D2に押し広げる力が加わった場合に、第2方向D2に僅かに拡開可能となっている。図示例では、第2スリット42Bは、第2壁体46の第1端40aから第1方向D1に沿って第2端40bに向かって形成されている。第2スリット42Bは、第1方向D1の中心よりも第1端40aに近い位置まで形成されている。第2スリット42Bは、第2方向D2において第2壁体46の中心に形成されている。そのため、第2スリット42Bは、第3方向D3において第1スリット42Aに対向している。
【0041】
第3スリット42Cは、第1方向D1の第2端40bから第1端40aに向かって形成されている。第3スリット42Cは、筒状体41に対して第2方向D2に押し広げる力が加わった場合に、第2方向D2に僅かに拡開可能となっている。図示例では、第3スリット42Cは、第1壁体45の第2端40bから第1方向D1に沿って第1端40aに向かって形成されている。第3スリット42Cは、第1方向D1の中心よりも第2端40bに近い位置まで形成されている。第3スリット42Cは、第2方向D2において第1壁体45の中心に形成されている。そのため、第3スリット42Cは、第1方向D1において第1スリット42Aに対向している。
【0042】
第4スリット42Dは、第1方向D1の第2端40bから第1端40aに向かって形成されている。第4スリット42Dは、筒状体41に対して第2方向D2に押し広げる力が加わった場合に、第2方向D2に僅かに拡開可能となっている。図示例では、第4スリット42Dは、第2壁体46の第2端40bから第1方向D1に沿って第1端40aに向かって形成されている。第4スリット42Dは、第1方向D1の中心よりも第2端40bに近い位置まで形成されている。第4スリット42Dは、第2方向D2において第2壁体46の中心に形成されている。そのため、第4スリット42Dは、第3方向D3において第3スリット42Cに対向しており、第1方向D1において第2スリット42Bに対向している。
【0043】
図1に示すように、第1スリット42Aと第3スリット42Cとは第1方向D1において互いに離間しており、第2スリット42Bと第4スリット42Dとは第1方向D1において互いに離間している。これにより、第1壁体45は、第4壁体44に接続された第1部分45Aと、第3壁体43に接続された第2部分45Bと、第1部分45Aと第2部分45Bとを第1方向D1の中央で接続する第3部分45Cとを有する。同様に、第2壁体46も、第4壁体44に接続された第1部分46Aと、第3壁体43に接続された第2部分46Bと、第1部分46Aと第2部分46Bとを第1方向D1の中央で接続する第3部分46Cとを有する。
【0044】
第1スリット42A及び第2スリット42Bは、第1端40aから第2端40bに向かって1mm以上にわたって形成されていてよい。同様に、第3スリット42C及び第4スリット42Dは、第2端40bから第1端40aに向かって1mm以上にわたって形成されていてよい。第1スリット42Aと第3スリット42Cとの間隔、及び、第2スリット42Bと第4スリット42Dとの間隔は、第1方向D1において1mm以上離れている。第1スリット42Aと第3スリット42Cとの間隔は、第1方向D1における第3部分46Cの長さであり、第2スリット42Bと第4スリット42Dとの間隔は、第1方向D1における第3部分46Cの長さである。第2方向D2において、第1スリット42A及び第3スリット42Cの幅は、第1壁体45の幅よりも2mm以上狭くなっている。すなわち、第1部分45A及び第2部分45Bの第2方向D2における長さは、それぞれ1mm以上であってよい。第2方向D2において、第2スリット42B及び第4スリット42Dの幅は、第2壁体46の幅よりも2mm以上狭くなっている。すなわち、第1部分46A及び第2部分46Bの第2方向D2における長さは、それぞれ1mm以上であってよい。
【0045】
第1スリット42A、第2スリット42B、第3スリット42C及び第4スリット42Dは、互いに、第1方向D1において同じ長さを有し、第2方向D2において同じ幅を有していてよい。第1スリット42A、第2スリット42B、第3スリット42C及び第4スリット42Dは、無負荷状態において第2方向D2に幅を有さなくてもよい。すなわち、無負荷状態において、第1部分45Aと第2部分45Bとは互いに当接していてもよく、第1部分46Aと第2部分46Bとは互いに当接していてもよい。
【0046】
以上説明のとおり、アダプタ40は、第1方向D1に互いに対向する一対のフェルール10を保持する。アダプタ40は、第1方向D1から見て一対のフェルール10を半周以上にわたって囲む筒形状をなす筒状体41を備える。筒状体41は、第1方向D1に沿って延在しフェルール10の第3側面13及び第4側面14に係合する第3凸部53及び第4凸部54と、第1方向D1の第1端40aから第2端40bに向かって形成され、第2方向D2に拡開可能な第1スリット42Aと、第3方向D3において第1スリット42Aに対向し、第1端40aから第2端40bに向かって形成され、第2方向D2に拡開可能な第2スリット42Bと、第1方向D1において第1スリット42Aに対向し、第2端40bから第1端40aに向かって形成され、第2方向D2に拡開可能な第3スリット42Cと、第3方向D3において第3スリット42Cに対向し、第2端40bから第1端40aに向かって形成され、第2方向D2に拡開可能な第4スリット42Dと、を備える。
【0047】
このアダプタ40では、筒状体41の内側に一対のフェルール10が保持された状態において、第1スリット42A、第2スリット42B、第3スリット42C及び第4スリット42Dの幅が大きくなるように筒状体41が弾性変形する。この場合、スリットの幅が小さくなるように筒状体41に生じる復元力によって、フェルール10の第3側面13及び第4側面14に第3凸部53及び第4凸部54が係合することにより、第1方向D1から見たときの一対のフェルール10の位置決めがなされる。第1スリット42Aと第2スリット42Bとは第3方向D3において互いに対向している。また、第3スリット42Cと第4スリット42Dとは第3方向D3において互いに対向している。そのため、アダプタ40に一対のフェルール10が保持された状態において、第1スリット42Aが第2方向D2に広がる際には、同様に第2スリット42Bも第2方向D2に広がり、第3スリット42Cが第2方向D2に広がる際には、同様に第4スリット42Dも第2方向D2に広がる。したがって、アダプタ40が湾曲することが抑制されるため、光学特性を良好に維持することが可能となる。
【0048】
第1スリット42A及び第2スリット42Bは、第1端40aから第2端40bに向かって1mm以上にわたって形成されており、第3スリット42C及び第4スリット42Dは、第2端40bから第1端40aに向かって1mm以上にわたって形成されており、第1スリット42Aと第3スリット42Cとの間、及び、第2スリット42Bと第4スリット42Dとの間は、第1方向D1において1mm以上離れていてもよい。この構成では、アダプタ40の強度を所定の範囲に保つことができる。
【0049】
第2方向D2において、第1スリット42A及び第3スリット42Cの幅は、第1壁体45の幅よりも2mm以上狭くなっていてよい。第2方向D2において、第2スリット42B及び第4スリット42Dの幅は、第2壁体46の幅よりも2mm以上狭くなっていてよい。この構成では、アダプタ40の強度を所定の範囲に保つことができる。
【0050】
光接続構造100は、アダプタ40と、アダプタ40の筒状体41に保持された一対のフェルール10と、を備える。この構成では、光学特性が良好に維持された一対のフェルール10を有する光接続構造100を提供することができる。
【0051】
一対のフェルール10のそれぞれは、第3凸部53及び第4凸部54にそれぞれ係合する第1凹部23及び第2凹部24を有し得る。この構成では、フェルール10の第1凹部23及び第2凹部24が第3凸部53及び第4凸部54に係合することによって、第1方向D1から見たときのフェルール10の位置が適切に決定される。
【0052】
第1凹部23及び第2凹部24は、第3側面13及び第4側面14に形成された、第1方向D1に延在する溝であってよい。この場合、第3凸部53及び第4凸部54が、第1方向D1から見たときに溝に係合することにより、フェルール10を適切に位置決めできる。
【0053】
第1凹部23及び第2凹部24の第1方向D1に交差する断面形状は、V字状であってよい。この構成では、第1方向D1から見たとき、第3凸部53及び第4凸部54のそれぞれの先端が、円弧形状を呈している場合に、第3凸部53及び第4凸部54によって好適にフェルール10を保持できる。
【0054】
光接続構造100は、一対のフェルール10同士を互いに対向する方向に付勢する一対のバネ30を備え、第3凸部53及び第4凸部54が一対のフェルール10を押圧する力は、一対のバネ30が一対のフェルール10を付勢するバネ荷重よりも小さくてもよい。この構成では、アダプタ40に保持された状態のフェルール10がバネ荷重によって第1方向D1に移動され得る。すなわち、対向した状態の一対のフェルール10同士を互いに押圧することができる。
【0055】
以上、本開示に係る光接続構造及びアダプタについて詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態や変形例に適用することが可能である。
【0056】
本開示に係る光接続構造の第1変形例について説明する。
図5は、第1変形例の光接続構造を示す斜視図である。
図6は、第1変形例のアダプタを示す斜視図である。
図7は、第1変形例のフェルールの断面形状を示す図である。
図8は、
図6に示すアダプタに
図7に示すフェルールが保持された状態を模式的に示す図である。
【0057】
図5に示すように、光接続構造101は、一対のフェルール10と、一対のフェルール10を保持するアダプタ140と、を含む。
図5において示されていないが、光接続構造101においても、上記実施形態と同様に、一対のフェルール10は一対のバネ30によって内側に付勢されている。また、第1変形例では、抜き力が満たすべき数値範囲は、上記実施形態と同様である。例えば、抜き力は、0.7N以上である。なお、第2変形例から第7変形例でも、抜き力が満たすべき数値範囲は、上記実施形態と同様である。
【0058】
アダプタ140は、一対のフェルール10を互いに対向するように保持する。アダプタ140は、第1方向D1に延在する筒状体141を含む。
図6に示されるように、筒状体141は、第1方向D1から見たときに、例えば矩形枠状を呈している。すなわち、アダプタ140は、
図6に示されるように、第1壁体145、第2壁体146、第3壁体143及び第4壁体144、を有する。第1壁体145及び第2壁体146は、第1方向D1から見たときに矩形の長辺を構成している。第1壁体145は、第1側面15に対面する第1内周面145aを有する。第2壁体146は、第2側面16に対面する第2内周面146aを有する第3壁体143及び第4壁体144は、第1方向D1から見たときに矩形の短辺を構成している。第3壁体143は、フェルール10の第3側面13に対面する第3内周面143aを有する。第4壁体144は、第4側面14に対面する第4内周面144aを有する。
【0059】
第1変形例に係る筒状体141は、上述した実施形態と同様、フェルール10が挿入された際に弾性変形し易いように、複数のスリットを有している。すなわち、筒状体141は、第1壁体145の第1端140aから第1方向D1に沿って第2端140bに向かって形成された第1スリット142Aと、第2壁体146の第1端140aから第1方向D1に沿って第2端140bに向かって形成された第2スリット142Bと、第1壁体145の第2端140bから第1方向D1に沿って第1端140aに向かって形成された第3スリット142Cと、第2壁体146の第2端140bから第1方向D1に沿って第1端140aに向かって形成された第4スリット142Dと、有する。第1スリット142A、第2スリット142B、第3スリット142C及び第4スリット142Dの形状(構成)は、上述した実施形態における第1スリット42A、第2スリット42B、第3スリット42C及び第4スリット42Dの形状(構成)と同様であってよい。
【0060】
筒状体141は、フェルール10の第1凹部23に嵌合する第3凸部153と、第2凹部24に嵌合する第4凸部154とを備える。第3凸部153及び第4凸部154は、第1方向D1の任意の位置における第2方向D2及び第3方向D3に沿った断面形状が一様となるように形成されている。一例としては、第3凸部153及び第4凸部154は、第3壁体143及び第4壁体144が内側に湾曲することによって、第3内周面143a及び第4内周面144aにそれぞれ形成されている。第3凸部153及び第4凸部154は、第1方向D1に延在している。筒状体141は、上記実施形態と同様に、弾性変形可能な樹脂によって形成されている。
【0061】
第3凸部153及び第4凸部154は、第1方向D1から見た場合に、第3内周面143a及び第4内周面144aからそれぞれ内向きに突出する円弧状を呈している。第3凸部153及び第4凸部154は、互いに対向している。本例において、円弧状をなす第3凸部153及び第4凸部154のそれぞれの曲率は、互いに等しくなっている。すなわち、第3内周面143aの円弧状部分に接する仮想円Sと第4内周面144aの円弧状部分に接する仮想円Sとは、互いに同じ径を有する。一例として、この仮想円Sの半径は、0.2mmから2.0mm程度であってよい。
【0062】
無負荷状態において、第3内周面143aの円弧状部分に接する仮想円Sの中心から第4内周面144aの円弧状部分に接する仮想円Sの中心までの距離L3(
図6参照)は、第1凹部23に接する仮想円Sの中心から第2凹部24に接する仮想円Sの中心までの距離L4(
図7参照)よりも小さくなっている。なお、第3側面13及び第4側面14に接する仮想円Sの径は、第3内周面143a及び第4内周面144aに接する仮想円Sの径と同じである。アダプタ140の筒状体141にフェルール10が保持される場合、筒状体141は、第2方向D2に押し拡げられるように弾性変形する。第3凸部153及び第4凸部154は、筒状体141が弾性変形したときの復元力によって、フェルール10の第3側面13と第4側面14とを押圧する。
【0063】
上記実施形態では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凹部23及び第2凹部24がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凸部53及び第4凸部54がそれぞれ設けられたが、これに限定されない。
図9から
図14は、第2変形例から第7変形例の光接続構造を説明するための図である。
図9から
図14では、第1方向D1から見た場合における、アダプタ及びフェルールの断面図が示されている。なお、これらの図では要部のみが描かれており、例えば、アダプタの第1壁体及び第2壁体は描かれていない。
【0064】
図9に示すように、第2変形例では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凸部223及び第2凸部224がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凹部253及び第4凹部254がそれぞれ設けられてもよい。フェルールの第1凸部223の第1方向D1に交差する方向の断面形状はV字状である。第1方向D1から見たとき、V字状をなす第1凸部223の頂点223aは、第2方向D2の外側に突出している。また、アダプタの第3凹部253の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第1凸部223の頂点223aの角度θ3と同じ大きさの角度に開いたV字状である。
【0065】
フェルールの第2凸部224の第1方向D1に交差する方向の断面形状はV字状である。第1方向D1から見たとき、V字状をなす第2凸部224の頂点224aは、第2方向D2の外側に突出している。また、アダプタの第4凹部254の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第2凸部224の頂点224aの角度θ3と同じ大きさの角度に開いたV字状である。
【0066】
図10に示すように、第3変形例では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凹部323及び第2凸部324がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凸部353及び第4凹部354がそれぞれ設けられてもよい。第1凹部323の第1方向D1に交差する方向の断面形状はV字状である。第1方向D1から見たとき、V字状をなす第1凹部323の底部323aは、第2方向D2の内側に向かって凹んでいる。第3凸部353の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第1凹部323の底部323aの角度θ4と同じ大きさの角度の頂部353aを有するV字状である。
【0067】
第2凸部324の第1方向D1に交差する方向の断面形状はV字状である。第1方向D1から見たとき、V字状をなす第2凸部324の頂点324aは、第2方向D2の外側に向かって突出している。第4凹部354の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第2凸部324の頂点324aの角度θ5と同じ大きさの角度に開いたV字状である。
【0068】
例えば、
図11に示すように、第4変形例では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凸部423及び第2凸部424がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凹部453及び第4凹部454がそれぞれ設けられてもよい。第1凸部423及び第2凸部424が第2方向D2における外側に突出し、第3凹部453及び第4凹部454は、第1凸部423及び第2凸部424にそれぞれに対応するように溝状に形成されてもよい。第1凸部423及び第2凸部424の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、所定の曲率で湾曲するU字状である。第1方向D1から見た場合に、第1凸部423及び第2凸部424は第2方向D2の外側に向かって突出している。また、第3凹部453の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第1凸部423の曲率と同じ曲率で湾曲するU字状を有している。第4凹部454の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第2凸部424の曲率と同じ曲率で湾曲するU字状を有している。
【0069】
例えば、
図12に示すように、第5変形例では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凹部523及び第2凹部524がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凸部553及び第4凸部554がそれぞれ設けられてもよい。第1凹部523及び第2凹部524が溝状に形成され、第3凸部553及び第4凸部554が第1凹部523及び第2凹部524にそれぞれに対応するように第2方向D2において内側に向かって凹んでいてもよい。第1凹部523及び第2凹部524の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、所定の曲率で湾曲するU字状である。また、第3凸部553の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第1凹部523の曲率と同じ曲率で湾曲するU字状を有している。第4凸部554の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第2凹部524の曲率とそれぞれ同じ曲率で湾曲するU字状を有している。
【0070】
例えば、
図13に示すように、第6変形例では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凸部623及び第2凹部624がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凹部653及び第4凸部654がそれぞれ設けられてもよい。第1凸部623が第2方向D2において外側に突出し、第3凹部653が第1凸部623に対応するように溝状に形成されてもよい。第2凹部624が溝状に形成され、第4凸部654が第2凹部624に対応するように第2方向D2において内側に突出してもよい。第1凸部623及び第2凹部624の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、所定の曲率で湾曲するU字状である。また、第3凹部653の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第1凸部623の曲率と同じ曲率で湾曲するU字状を有している。第4凸部654の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、第2凹部624の曲率とそれぞれ同じ曲率で湾曲するU字状を有している。
【0071】
図14に示すように、第7変形例では、フェルール10の第3側面13及び第4側面14には、第1凸部723及び第2凸部724がそれぞれ設けられ、アダプタ40の第3内周面43a及び第4内周面44aには、第3凹部753及び第4凹部754がそれぞれ設けられてもよい。第1凸部723及び第2凸部724が第2方向において外側に突出し、第3凹部753及び第4凹部754が第1凸部723及び第2凸部724にそれぞれ対応するように溝状に形成されてもよい。第1凸部723及び第2凸部724の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、所定の曲率で湾曲するU字状である。第1方向D1から見たとき、第1凸部723及び第2凸部724は第2方向D2の外側に向かって突出している。また、第3凹部753及び第4凹部754の第1方向D1に交差する方向の断面形状は、所定の角度で開いたV字状を有している。
【0072】
アダプタ40は、その全部が樹脂によって構成されていなくてもよく、その一部が樹脂等の弾性材料によって構成されることで弾性変形可能であればよい。
【0073】
上記実施形態では、アダプタ40を構成する筒状体41が、第1方向D1から見て筒形状を有する例を示したが、筒形状の形状は、これに限定されない。筒状体は、実質的に筒状であればよく、第1方向D1から見たときに、第1方向D1に沿った軸線を中心として半周程度以上にわたって壁体が形成されていればよい。例えば、上記の実施形態における筒状体41においては、第1壁体45の第3部分45Cを有しておらず、第1部分45A及び第2部分45Bのみによって第1壁体45が構成されていてもよい。この形態では、第1スリット42Aと第3スリット42Cとが互いに接続されることによって、第1壁体45に第1端40aから第2端40bにわたる1つのスリットが形成される。このような筒状体は、第1方向D1から見たときに完全な筒形状(環状)を形成しないが、本明細書においては、当該筒状体の形状も筒形状であると定義する。このように、第3部分45C,46Cのいずれかを有さない場合、フェルールはより小さい力で筒状体によって保持される。
【符号の説明】
【0074】
1…光コネクタ
10…フェルール
10a…前端
10b…後端
11…光学端面
12…後端面
12a…突起
13…第3側面
14…第4側面
15…第1側面
16…第2側面
17…開口
18…保持孔
20…光ファイバ
23…第1凹部(係合部)
23a…斜面
23b…斜面
23c…底部
24…第2凹部(係合部)
24a…斜面
24b…斜面
24c…底部
30…バネ
40…アダプタ
40a…第1端
40b…第2端
41…筒状体
42A…第1スリット
42B…第2スリット
42C…第3スリット
42D…第4スリット
43…第3壁体
43a…第3内周面
44…第4壁体
44a…第4内周面
45…第1壁体
45a…第1内周面
45A…第1部分
45B…第2部分
45C…第3部分
46…第2壁体
46A…第1部分
46B…第2部分
46C…第3部分
46a…第2内周面
53…第3凸部(第1ガイド)
53a…斜面
53b…斜面
53c…先端
54…第4凸部(第2ガイド)
54a…斜面
54b…斜面
54c…先端
100…光接続構造
101…光接続構造
140…アダプタ
140a…第1端
140b…第2端
141…筒状体
142A…第1スリット
142B…第2スリット
142C…第3スリット
142D…第4スリット
143…第3壁体
143a…第3内周面
144…第4壁体
144a…第4内周面
145…第1壁体
145a…第1内周面
146…第2壁体
146a…第2内周面
153…第3凸部
154…第4凸部
223…第1凸部
223a…頂点
224…第2凸部
224a…頂点
253…第3凹部
254…第4凹部
323…第1凹部
323a…底部
324…第2凸部
324a…頂点
353…第3凸部
353a…頂部
354…第4凹部
423…第1凸部
424…第2凸部
453…第3凹部
454…第4凹部
523…第1凹部
524…第2凹部
553…第3凸部
554…第4凸部
623…第1凸部
624…第2凹部
653…第3凹部
654…第4凸部
723…第1凸部
724…第2凸部
753…第3凹部
754…第4凹部
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
L1…距離
L2…距離
L3…距離
L4…距離
S…仮想円
θ1…角度
θ2…角度
θ3…角度
θ4…角度
θ5…角度