(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166624
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082831
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 友介
(72)【発明者】
【氏名】石山 裕人
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼本 敬治
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE02
5H730EE03
5H730EE08
5H730FG05
5H730ZZ01
5H730ZZ04
5H730ZZ11
5H730ZZ12
(57)【要約】
【課題】ノイズ対策用コンデンサの耐振動性を確保し、小型で安価な電力変換装置を得ることを目的とする。
【解決手段】本体部分が立ち上がるようにプリント基板50に実装されたノイズ対策用コンデンサ11、ノイズ対策用コンデンサの本体部分を囲み、プリント基板50から離れた側が開口するコンデンサケース60、枠部61の上端面61fuのノイズ対策用コンデンサ11を挟んで対向する2か所と両端が固着し、本体部分と固着してノイズ対策用コンデンサ11をコンデンサケース60に対して固定する固着部材72、およびプリント基板50と枠体60を筐体40とともに固定する締付部材8a,8b、を備えるように構成した。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子を用いて形成された電力変換回路、
前記電力変換回路を収納する筐体、
電極パターンが形成されたプリント基板、
本体部分から突き出た端子のうち一方の端子が前記電極パターンを介して前記電力変換回路に電気接続され、他方の端子が前記電極パターンを介して前記筐体に電気接続され、前記本体部分が前記プリント基板から立ち上がるように前記プリント基板に実装されたノイズ対策用コンデンサ、
前記本体部分を囲み、前記プリント基板から離れた側が開口するケース、
前記本体部分と固着して前記ノイズ対策用コンデンサを前記ケースに対して固定する固着部材、および
前記プリント基板と前記ケースを前記筐体とともに固定する締付部材、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電極パターンのうち前記他方の端子が接続された電極パターンと前記筐体との接続箇所は、前記プリント基板と前記ケースとの固定箇所と同一箇所であることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記ケースの前記プリント基板との固定部には、前記電極パターンへの対向面から反対側の面にかけて導通する導通部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ケースと前記ノイズ対策用コンデンサは、前記プリント基板と前記筐体との間に形成された空間に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記一方の端子に対応する第一端子が前記電力変換回路の正極側に電気接続される第一コンデンサと、前記第一端子が前記電力変換回路の負極側に電気接続される第二コンデンサとで構成し、
前記第一コンデンサと前記第二コンデンサそれぞれは、前記第一端子と、前記他方の端子に対応する第二端子を結ぶ線分が1直線上に並び、かつ前記第一端子どうし、あるいは前記第二端子どうしが互いに対向するように、前記プリント基板に平行な面内に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記一方の端子に対応する第一端子が前記電力変換回路の正極側に電気接続される第一コンデンサと、前記第一端子が前記電力変換回路の負極側に電気接続される第二コンデンサとで構成し、
前記第一コンデンサと前記第二コンデンサそれぞれは、前記他方の端子に対応する第二端子と前記第一端子を結ぶ線分が距離をあけて平行に並び、かつ前記第一端子どうしを結ぶ線分と前記第二端子どうしを結ぶ線分が平行になるように、前記プリント基板に平行な面内に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記プリント基板に平行な面内に配置された複数のコンデンサを電気接続して構成し、
前記ケースは、前記複数のコンデンサを仕切る仕切り壁を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ケースは、前記本体部分と前記プリント基板を仕切る底板部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記プリント基板と前記ケースとの間で、
位置決め構造、嵌合構造、および圧入構造のいずれかを構成していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記ケースの前記本体部分を囲む部分のうち、前記固着部材が固着する部分は、他の部分よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記固着部材が固着する部分は、前記プリント基板からの高さにおいて、前記端子の根元部分に対応する部分から前記プリント基板に向かって厚みが薄くなっていることを特徴とする請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記固着部材は、前記ケースの前記本体部分を囲む部分の前記本体部分を挟んで対向する2か所に両端が固定され、
前記2か所を結ぶ線分が、前記一方の端子と前記他方の端子を結ぶ線分に対して垂直であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記プリント基板に平行な面内に配置された複数のコンデンサを電気接続して構成した複数のコンデンサユニットをさらに電気接続して構成し、
前記プリント基板には、前記複数のコンデンサユニットそれぞれに対応して設けられた前記ケースが配列されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記ケースは前記プリント基板に近い側も開口していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車またはハイブリッド自動車のように、駆動源にモータが用いられる電動車両には、複数の電力変換装置が搭載されている。電力変換装置としては、商用の交流電源から直流に変換して高圧バッテリに充電する充電器、高圧バッテリの直流電源から補助機器用のバッテリの電圧(例えば12V)に変換するDC/DCコンバータ、バッテリからの直流電力をモータへの交流電力に変換するインバータ等が挙げられる。
【0003】
近年、燃費向上、および車室空間の拡大のため、電動車両の搭載機器には実装スペースの縮小が求められており、電力変換装置に対しても小型化、低コスト化が求められている。ここで、電力変換装置を小型化すると、部品間で電磁結合が発生してノイズが増大するため、ラインバイパスコンデンサとも称されるノイズ対策用コンデンサが必要になる。その場合、ノイズ対策用コンデンサはプリント基板上に実装されるが、電動車両のエンジンルームに搭載される場合は、ことさら高い耐振動性が求められるため、体積が大きく長い端子を有するノイズ対策用コンデンサには振動対策が必要になる。
【0004】
そこで、ノイズ対策用コンデンサをプリント基板上から排し、プリント基板とは別体のケースにノイズ対策用コンデンサを収納して固着部材で固定する電力変換装置(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-39384号公報(段落0045~0051、
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ノイズ対策用コンデンサを別体のケースに収納する場合、ケースを筐体に固定するための締結部、および締結部材といった追加部材が必要になり、電力変換装置が大型化、高コスト化するという課題があった。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、ノイズ対策用コンデンサの耐振動性を確保し、小型化、低コスト化を図れる電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される電力変換装置は、複数の半導体素子を用いて形成された電力変換回路、前記電力変換回路を収納する筐体、電極パターンが形成されたプリント基板、本体部分から突き出た端子のうち一方の端子が前記電極パターンを介して前記電力変換回路に電気接続され、他方の端子が前記電極パターンを介して前記筐体に電気接続され、前記本体部分が前記プリント基板から立ち上がるように前記プリント基板に実装されたノイズ対策用コンデンサ、前記本体部分を囲み、前記プリント基板から離れた側が開口するケース、前記本体部分と固着して前記ノイズ対策用コンデンサを前記ケースに対して固定する固着部材、および前記プリント基板と前記ケースを前記筐体とともに固定する締付部材、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される電力変換装置によれば、プリント基板上でノイズ対策用コンデンサの振動対策が実現できるので、ノイズ対策用コンデンサの耐振動性を確保し、小型で安価な電力変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる電力変換装置の構成を説明するための回路図である。
【
図2】実施の形態1にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための平面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる電力変換装置を形成するプリント基板から、コンデンサケース、固着部材、締結部材を除いた状態の平面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための正面側から見た断面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための側面側から見た断面図である。
【
図6】実施の形態1の第一変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための平面図である。
【
図7】実施の形態1の第二変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための平面図である。
【
図8】実施の形態1の第三変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための正面側の断面図である。
【
図9】実施の形態1の第四変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための平面図である。
【
図10】実施の形態1の第五変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1~
図5は、実施の形態1にかかる電力変換装置の構成について説明するためのものであり、
図1は電力変換装置の構成を説明するための入力機器と出力機器を含めた回路図、
図2は電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための平面図、
図3は
図2に対してコンデンサケース、固着部材、締付部材を除き、ノイズ対策用コンデンサの端子位置を描画した平面図である。また、
図4はプリント基板の正面側から見た断面形状を示すための
図2のA-A線による断面図、
図5はプリント基板の側面側から見た断面形状を示す
図2のB-B線による断面図である。
【0012】
なお、
図2~
図5では、本願の特徴部分を明確にするために、電力変換装置のノイズ対策用コンデンサに着目し、その他の部品は省略している。また、本願で例示するDC/DCコンバータを含め、実際の電力変換装置は、周囲が筐体で覆われている。また、電力変換装置の投影面積を削減して小型化する手段として、筐体に配置したスイッチング素子等の複数の半導体素子と、複数の半導体素子を除く電力変換回路の部品、およびノイズ対策用コンデンサが配置されたプリント基板が、プリント基板上面視で重なるように配置されていることを想定した構成となっている。また、以降の変形例を含め、
図3以外の平面図においては部材に隠れた電極パターンの外形を破線で示している。また、
図2では、コンデンサケースの枠部の形状についても、破線で示している。
【0013】
以下、図面に基づいて実施の形態1にかかる電力変換装置の詳細について説明する。なお、本願では、直流電力の電圧を所望の電圧に降圧するDC/DCコンバータを例として説明するが、それに限ることはない。ノイズ対策用コンデンサを搭載する電力変換装置であれば、昇圧型のコンバータでも、AC/DCインバータ、DC/ACインバータ、あるいはそれらを組み合わせたものでもよいことは言うまでもない。
【0014】
[DC/DCコンバータの回路構成]
本願の電力供給装置であるDC/DCコンバータ1は、
図1に示すように、入力電源91(高圧バッテリ)から供給された直流電力を所望の電圧に降圧し、外部負荷92、あるいは出力電源93(低圧バッテリ)に供給するものである。DC/DCコンバータ1としては、ノイズ対策用コンデンサ回路10、平滑コンデンサ20、電力変換回路30が接続されている。
【0015】
ノイズ対策用コンデンサ回路10は、4つのコンデンサ11a、11b、11c、および11d(個々に区別しない場合は、ノイズ対策用コンデンサ11と称する)で構成している。コンデンサ11a、11bは、一方の端子が入力電源91および電力変換回路30の正極側と接続され、他方の端子が筐体40に接続されることで接地している。コンデンサ11c、11dは、一方の端子が入力電源91および電力変換回路30の負極側と接続され、他方の端子が筐体40に接続されることで接地している。
【0016】
また、電力変換回路30は、入力側から出力側に向かって、インバータ回路31、トランス32、整流回路33、平滑リアクトル34、平滑コンデンサ35の順に配置されている。インバータ回路31は4つの半導体スイッチング素子31a~31dで、整流回路33は2つの整流素子33a、33bで構成している。そして、電圧検出回路、電流検出回路等を含み、インバータ回路31の半導体スイッチング素子31a~31dの動作を制御する制御回路36をさらに備えている。
【0017】
ここで、ノイズ対策用コンデンサ11は、4つの容量が全て同一である。ノイズ対策用コンデンサは容量が小さいほど高周波帯域でのインピーダンス特性が優れているため、容量を複数のコンデンサに分担させることで、高周波帯域で減衰効果が高いフィルタ性能を得ることができる。
【0018】
また、インバータ回路31を構成する4つの半導体スイッチング素子31a~31dは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられている。制御回路36は、制御線を介して半導体スイッチング素子31a~31dをオン/オフしてPWM(Pulse Width Modulation)駆動する。半導体スイッチング素子31aのソースと半導体スイッチング素子31bのドレインとの接続点は、トランス32の1次巻線の一端に接続され、半導体スイッチング素子31cのソースと半導体スイッチング素子 31dのドレインとの接続点は、トランス32の1次巻線の他端に接続されている。
【0019】
トランス32の2次巻線には整流回路を構成する半導体整流素子33e、33fが接続されている。半導体整流素子33e、33fは、例えば、整流用ダイオードが用いられている。2次側整流のため、半導体整流素子33e、33fの後段には平滑リアクトル34、平滑コンデンサ35が接続されている。なお、出力電源93の負極側と接続される平滑コンデンサ35の端子は、筐体40と接続されることで接地している。
【0020】
[DC/DCコンバータの機械的構造]
また、
図4に示すように、プリント基板50は基材51の一方の面(図中上側の面)に電極パターン55a~55d、他方の面(図中下側の面)に電極パターン55e、55f(個々に区別しない場合、電極パターン55と称する)が形成された2層基板である。そして、一方の面の電極パターン55cと他方の面の電極パターン55eはスルーホール56aを介して電気的に接続しており、一方の面の電極パターン55dと他方の面の電極パターン55fはスルーホール56bを介して電気的に接続している。
【0021】
また、スルーホール56a、スルーホール56bは円環状(
図3)に複数配置されており、その中央に、後述する締付部材8a、8bを通すための貫通孔58a、58bが設けられている。
【0022】
コンデンサ11bは、本体部分の底面(図中下側の面)で間隔をあけて配置された端子12cと12dが下方に向かって突き出ており、コンデンサ11dも、底面で間隔をあけて配置された端子12gと12hが下方に向かって突き出ている。同様に、コンデンサ11aも底面で間隔をあけて配置された端子12aと12bが下方に向かって突き出ており、コンデンサ11cも底面で間隔をあけて配置された端子12eと12fが下方に向かって突き出ている。なお、個々の端子を区別しない場合は端子12と称する。
【0023】
4つのノイズ対策用コンデンサ11それぞれは、端子12がある方をプリント基板50に向けてプリント基板50の実装面50fmに実装され、本体部分が実装面50fmから所定の高さまで立ち上がる。このとき、コンデンサ11a、11bの一方の端子12a、12cは、
図3に示すように、電極パターン55aを介して電力変換回路30の正極側と接続されている。同様に、コンデンサ11c、11dの一方の端子12e、12gは、電極パターン55bを介して電力変換回路30の負極側と接続されている。
【0024】
また、コンデンサ11c、11dの他方の端子12f、12hは、
図5に示すように電極パターン55d、スルーホール56b、電極パターン55fを介して筐体40と接続されている。同様に、コンデンサ11a、11bの他方の端子12b、12dは、電極パターン55c、スルーホール56a、電極パターン55eを介して筐体40と接続されている。
【0025】
さらに、端子12b、12dが接続された電極パターン55cは、コンデンサケース60のツバ部62a部分にインサート成形により埋め込まれた鉄等の導電性部材63aと、ネジ等の締付部材8aを介した経路でも筐体40と接続されている。同様に、端子12f、12hが接続された電極パターン55dは、コンデンサケース60のツバ部62bにインサート成形で埋め込まれた鉄等の導電性部材63bと、ネジ等の締付部材8bを介した経路でも筐体40と接続されている。なお、ツバ部62aと62bを区別しない場合、ツバ部62と称する。
【0026】
なお、
図4、
図5では、プリント基板50は2層基板としているが、2層以上の多層基板であってもよい。
【0027】
ここで、
図2に示すように、コンデンサケース60には、環状の枠部61が形成されており、枠部61から張り出すようにツバ部62a、62bが形成されている。そして、締付部材8a、8bによって、ツバ部62a、62bとプリント基板50を密着させた際、枠部61がノイズ対策用コンデンサ11の側面(図中上下左右の面)を囲むように、コンデンサケース60はプリント基板50に固定されている。
【0028】
コンデンサケース60をプリント基板50に固定した際の枠部61の高さは、ノイズ対策用コンデンサ11の上面11fu、つまりプリント基板50(実装面50fm)からの立ち上がり高さに揃えている。そのため、ノイズ対策用コンデンサ11の上面11fuと枠部61の上端面61fuは面一の関係となる。それに対し、ノイズ対策用コンデンサ11を挟んで対向する枠部61の辺間を架橋するように、シリコン等で構成した制振機能を有する固着部材72a、72b(個々に区別しない場合、固着部材72と称する)が配置されている。これにより、ノイズ対策用コンデンサ11の本体部分(プリント基板50から立ち上がった部分)が機械的に固定される。
【0029】
このようにすることで、背景技術で説明したようなノイズ対策用コンデンサの耐振動性を向上のために別体とすることで必要となっていた、ノイズ対策用コンデンサの各端子を電力変換回路および筐体と接続するためのバスバーが不要となる。さらに、コンデンサケースを筐体に固定するための締結部材等の追加部材を削減できるため、コストアップを抑制しつつ、小型で安価な電力変換装置を実現することが可能となる。
【0030】
また、
図4、
図5に示すように、電極パターン55c、55dと、筐体40との接続箇所は、プリント基板50とコンデンサケース60を固定する箇所と同一箇所となっている。このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれの端子12と筐体40との接続箇所をプリント基板50に別途設ける必要がなくなり、プリント基板50の投影面積と追加の締付部材を削除することが可能となる。そのため、DC/DCコンバータ1のような電力変換装置を小型化と低コスト化を実現することができる。
【0031】
また、コンデンサケースをプリント基板と別体で設ける場合、ノイズ対策用コンデンサを電力変換回路と筐体に電気接続するためのバスバーが必要になる。しかし、本願では、コンデンサケース60のツバ部62aには、導電性部材63a、63bがインサート成形等によって埋め込まれている。このようにすることで、コンデンサケース60の筐体40に対する固定が強固になるとともに、筐体40への電流経路を容易に形成できるので、上述したバスバー等の追加部材が不要になる。さらに、ノイズ対策用コンデンサ11の他方の端子12b、12d、12f、12hから筐体40までの接続経路として、導電性部材63a、63b、ネジ等の締付部材8a、8bを介した経路も追加される。
【0032】
そのため、ノイズ対策用コンデンサ11の他方の端子12b、12d、12f、12hからから筐体40までのインピーダンスを低減することが可能になり、高周波帯域でのフィルタ性能を改善することができる。これにより、ノイズ対策用コンデンサ11全体の容量、および分担数を削減することが可能になり、電力変換装置を小型化、低コスト化することができる。
【0033】
ここで、固着部材72は、
図2で示すように、コンデンサケース60の枠部61の対向する2辺に対して垂直方向に配置して固定されている。固着部材72は、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれの振動が大きい方向にそれぞれ長尺方向を合わせて配置している。このようにすることで、耐振動性を確保しつつ、コンデンサケース内に固着部材を充填してノイズ対策用コンデンサを固定する場合と比べて固着部材72の使用量を削減できるため、電力変換装置を低コスト化することができる。
【0034】
また、
図2、
図4、
図5に示すように、コンデンサケース60を、環状の枠部61と枠部61の外周面から張り出すツバ部62とで構成することで、ノイズ対策用コンデンサ11の側面のみを囲み、上方が開放されるようになった。このようにすることで、プリント基板50にノイズ対策用コンデンサ11を実装した後に、コンデンサケース60をプリント基板50に取り付けることができる。そのため、ノイズ対策用コンデンサ11を含むプリント基板50への部品実装工程と、コンデンサケース60の組付け工程の分離が可能になり、複雑な組立工程が不要となって製造コストを削減することができ、電力変換装置を低コスト化することができる。
【0035】
また、
図3で説明した、コンデンサケース60の位置決めを兼ねたプリント基板50に設けた圧入用ホール57a、57bと、
図5に示したコンデンサケース60に設けた圧入用ピン68a、68bとで圧入構造を構成している。このようにすることで、組み立て時におけるコンデンサケース60の位置を定めるための専用治具、あるいはプリント基板50とコンデンサケース60を仮固定するための固定部材等が不要になって工数も削減できる。
【0036】
加えて、筐体40に組み付けなくてもプリント基板50とコンデンサケース60を固定(仮固定)できるので、プリント基板50を筐体40に組み付ける前段階において固着部材を塗布することも可能となるため、作業性を向上させることができる。その結果、製造コストを削減することが可能となり、電力変換装置を低コスト化できる。
【0037】
なお、
図3と
図5では、圧入構造を設けた場合について説明したが、これに限ることはない。プリント基板50とコンデンサケース60の位置決め構造のみ設けた場合、プリント基板50とコンデンサケース60との間にスナップフィット等の嵌合構造を設けた場合でも、工数が削減でき、電力変換装置を低コスト化することが可能になる。
【0038】
さらに、
図2と
図5で示すように、コンデンサケース60の枠部61には、固着部材72が固着されている箇所の厚みが、その他の箇所よりも厚い厚肉部61kを有する形状となっている。このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれとコンデンサケース60に対する固着部材72との密着性を向上させることが可能になり、耐振動性を向上することができる。
【0039】
さらに、コンデンサケース60の厚肉部61kは、
図5に示すように、プリント基板50からの高さにおいて、ノイズ対策用コンデンサ11の素子本体部分から端子12が突き出る方向に沿って肉薄になるように傾斜を有する形状となっている。このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11と電極パターン55を接続するための半田とコンデンサケース60(枠部61)との干渉を回避することができる。その結果、コンデンサケース60の組立性が向上し、製造コストを削減することが可能となり、電力変換装置を低コスト化することができる。
【0040】
ここで、ノイズ対策用コンデンサ11と電極パターン55a~55dの配置と接続関係に関して
図3に戻って説明する。コンデンサ11aと11cは、端子12aと端子12b間を結ぶ線分Labと、端子12eと端子12f間を結ぶ線分Lefが1つの直線と重なるように配置されており、端子12aと端子12eが対向するように配置されている。また、コンデンサ11bと11dは、端子12cと端子12d間を結ぶ線分Lcdと、端子12gと端子12h間を結ぶ線分Lghが1つの直線と重なるように配置されており、端子12cと端子12gが対向するように配置されている。
【0041】
また、端子12aと端子12cは電極パターン55aに接続され、端子12eと端子12gは電極パターン55bに接続され、さらに端子12bと端子12dは電極パターン55cに接続され、端子12fと端子12hは電極パターン55dに接続されている。このようにすることで、部品間の絶縁距離を確保するために電極パターンを削減することなく、筐体40と接続される電極パターン55c、55dの面積を広くすることが可能となり、電極パターン55のパターン幅を広くすることができる。
【0042】
これにより、ノイズ対策用コンデンサ11の他方の端子12から筐体40までのインピーダンスを低減することが可能になり、高周波帯域でのフィルタ性能を改善することができる。これにより、ノイズ対策用コンデンサ11の容量、および個数を削減することが可能になり、電力変換装置を小型化、低コスト化することができる。
【0043】
変形例.
なお、上記例では、コンデンサケースは、ノイズ対策用コンデンサの側面のみを囲むように構成した場合について説明したが、これに限ることはない。第一変形例では、各コンデンサ間を仕切る壁を設けた例を、第二変形例では、ノイズ対策用コンデンサの底面も覆うようにコンデンサケースを構成した例について説明する。
【0044】
第一変形例.
図6は第一変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための、固着部材を除いた状態の平面図である。
図6に示すように、第一変形例にかかる電力変換装置(DC/DCコンバータ1)では、コンデンサケース60の枠部61の内側にノイズ対策用コンデンサ11それぞれを区切る壁部61sを設けた。
【0045】
このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれの配置精度を向上させつつ、ノイズ対策用コンデンサ11とコンデンサケース60に対する固着部材72a、72bの密着性を向上することができるため、耐振動性を一層向上させることができる。
【0046】
第二変形例.
図7は第二変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための、
図6と同様に固着部材を除いた状態の平面図である。
図7に示すように、第二変形例にかかる電力変換装置(DC/DCコンバータ1)では、コンデンサケース60の枠部61の下部にプリント基板50とノイズ対策用コンデンサ11を仕切る底板部61bを設けた。
【0047】
さらに、枠部61の内側にノイズ対策用コンデンサ11それぞれを区切る壁部61sを設けた。このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれの配置精度を向上させつつ、ノイズ対策用コンデンサ11とコンデンサケース60に対する固着部材72a、72bの密着性を向上することができるため、耐振動性を一層向上させることができる。
【0048】
ここで、底板部61bは、ノイズ対策用コンデンサ11の各端子12を、プリント基板50の図示しないスルーホールに誘導するために、円柱形状、円錐形状等のガイド形状を有する構成としてもよい。ガイド形状を有する場合、まず、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれをコンデンサケース60に組み込んで固着部材72a、72bで固定し、その後、それらをプリント基板50に実装するかたちになる。
【0049】
このようにすることで、プリント基板50のスルーホールへのノイズ対策用コンデンサ11の各端子12の挿入性が向上し、組み立て時における歩留まりを改善、製造コストを削減することが可能となり、電力変換装置をさらに低コスト化することができる。
【0050】
第三変形例.
また、上記例では、ノイズ対策用コンデンサとコンデンサケースと固着部材をプリント基板の上面側(筐体とは反対側)に配置した場合について説明したが、これに限ることはない。第三変形例では、ノイズ対策用コンデンサとコンデンサケースと固着部材をプリント基板と筐体の間に配置した例について説明する。
図8は第三変形例にかかる電力変換装置の構成を説明するためのもので、
図4に対応する断面図である
【0051】
第三変形例にかかる電力変換装置(DC/DCコンバータ1)は、
図8に示すように、ノイズ対策用コンデンサ11、電極パターン55a~55d、コンデンサケース60、固着部材72を、プリント基板50の筐体40との対向面側に配置した構成としてもよい。通常、筐体に配置された複数の半導体素子とプリント基板をプリント基板上面視で重ねて配置することにより、デッドスペースが発生する。しかし、本変形例では、プリント基板50の筐体40との対向面側に、ノイズ対策用コンデンサ11とコンデンサケース60と固着部材72を収納することで、発生したデッドスペースを有効活用でき、電力変換装置を小型化できる。
【0052】
また、本変形例でも、ノイズ対策用コンデンサ11の端子12それぞれは、筐体40に対して、コンデンサケース60の導電性部材63a、63bを介して最短経路で接続されることになる。そのため、経路のインピーダンスを低減することが可能になり、高周波帯域でのフィルタ性能を改善することができる。これにより、ノイズ対策用コンデンサ11全体の容量、および分担数を削減することが可能になり、電力変換装置を小型化、低コスト化することができる。
【0053】
第四変形例.
本第四変形例では、ノイズ対策用コンデンサと電極パターンの配置と接続関係が上記各例とは異なる例について説明する。
図9は第四変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための、実施の形態1の
図2に対応する平面図であり、端子と電極パターンの接続関係を説明するため、端子の位置を破線の円で示している。
【0054】
第四変形例にかかる電力変換装置(DC/DCコンバータ1)は、
図9に示すように、端子12bと端子12dが電極パターン55aに接続され、端子12cと端子12gが電極パターン55bに接続されている。そして、端子12aと端子12eが電極パターン55cに接続され、端子12fと端子12hが電極パターン55dに接続されている。これが、実施の形態1の
図3での説明と異なる点である。
【0055】
このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11の端子12aと端子12e間、端子12cと端子12g間は、それぞれ絶縁距離を確保する必要がなくなり、ノイズ対策用コンデンサ11を近接配置することができる。その結果、コンデンサケース60(枠部61)部分の体積を削減することが可能になるため、電力変換装置を小型化、低コスト化することができる。
【0056】
第五変形例.
上記各例では、4つのノイズ対策用コンデンサを2行2列に配置した例について説明した。本第五変形例では、4つのノイズ対策用コンデンサを一列に配置した例について説明する。
図10は第五変形例にかかる電力変換装置を形成するプリント基板の構成を説明するための、実施の形態1の
図2に対応する平面図であり、
図9と同様に端子の位置を破線の円で示している。
【0057】
第五変形例にかかる電力変換装置(DC/DCコンバータ1)は、
図10に示すように、電極パターン55a~55dは、プリント基板50の面内に2行2列に分かれて配置している。そして、4つのノイズ対策用コンデンサ11は、線分Lab、Lcd、Lef、Lghが互いに平行で、かつ、端子12b、12d、12f、12hが同じ側になり、電極パターン55c、55dを介して筐体40と接続されるように配置している。
【0058】
このようにすることで、ノイズ対策用コンデンサ11と電力変換回路30を接続する電極パターン55a、55bのパターン幅を短く且つ太くすることができる。そのため、ノイズ対策用コンデンサ11周辺のプリント基板50の温度上昇を低減することが可能になり、さらに耐熱温度が低い安価なコンデンサに置き換えることもできるため、電力変換装置を低コスト化できる。
【0059】
他の態様.
上記各例では、4つのノイズ対策用コンデンサ11に対して、1つのコンデンサケース60を設けた場合を例について図示したが、これに限ることはない。例えば、コンデンサ11aと11cの組に対して、およびコンデンサ11bと11dの組みに対して、それぞれコンデンサケース、あるいは環状の枠部を設けた形状としてもよい。
【0060】
このようにすることでも、ノイズ対策用コンデンサ11と筐体40の接続をそれぞれ最短にできる。そのため、ノイズ対策用コンデンサ11の他方の端子から筐体40までのインピーダンスを低減することが可能になり、高周波帯域でのフィルタ性能を改善することができる。これにより、ノイズ対策用コンデンサ11全体の容量、および分担数を削減することが可能になり、電力変換装置を小型化、低コスト化することができる。
【0061】
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載されたよう様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態で開示した内容の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組合せで実施の形態に適用可能である。したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態で開示した構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0062】
以上のように、本願の電力変換装置(DC/DCコンバータ1)によれば、複数の半導体素子を用いて形成された電力変換回路30、電力変換回路30を収納する筐体40、(例えば、実装面50fmに)電極パターン55が形成されたプリント基板50、本体部分から突き出た端子12のうち一方の端子12が電極パターン55を介して電力変換回路30に電気接続され、他方の端子12が電極パターン55を介して筐体40に電気接続され、本体部分がプリント基板50から立ち上がるようにプリント基板50に実装されたノイズ対策用コンデンサ11、本体部分を囲み、プリント基板50から離れた側が開口するケース(コンデンサケース60)、(例えば、中間部分が)本体部分と固着してノイズ対策用コンデンサ11をケース(コンデンサケース60)に対して固定する固着部材72、およびプリント基板50とケース(コンデンサケース60)を筐体40とともに固定する締付部材8a,8b、を備えるように構成した。これにより、追加部材を必要とせずに、ノイズ対策用コンデンサ11の耐振動性を確保し、小型化、低コスト化を図れる電力変換装置を得ることができる。
【0063】
さらに、電極パターン55のうち(筐体40に電気接続される)他方の端子が接続された電極パターン55と筐体40との接続箇所は、プリント基板50とケース(コンデンサケース60)との固定箇所と同一箇所であるように構成した。これにより、電気接続と機械的固定を一度の工程で実現でき、工数を削減することができる
【0064】
とくにケース(コンデンサケース60)のプリント基板50との固定部(例えば、ツバ部62)には、電極パターン55への対向面から反対側の面にかけて導通する導通部(導電性部材63a,63b)が形成されているように構成すれば、機械的な安定性が増すとともに、電極パターン55と締付部材8a,8bとの電気接続がより良好になり、ノイズ対策用コンデンサ11から筐体40への良好で最短な電流経路を形成することができる。さらに、コンデンサケースを別体にしたときに必要となるバスバー等の追加部材が不要になるとともに、筐体40までのインピーダンスを低減することが可能になり、高周波帯域でのフィルタ性能を改善することができる。
【0065】
ケース(コンデンサケース60)とノイズ対策用コンデンサ11は、プリント基板50と筐体40との間に形成された空間に配置されているようにすれば、デッドスペースを有効化して、より小型化できる。
【0066】
ノイズ対策用コンデンサ11は、(電力変換回路30に接続する)一方の端子に対応する第一端子が電力変換回路30の正極側に電気接続される第一コンデンサと、(電力変換回路30に接続する)一方の端子に対応する第一端子が電力変換回路30の負極側に電気接続される第二コンデンサとで構成し、第一コンデンサと第二コンデンサそれぞれは、第一端子と、他方の端子に対応する第二端子を結ぶ線分(LabとLef、LcdとLgh)が1直線上に並び、かつ第一端子どうし、あるいは第二端子どうしが互いに対向するように、プリント基板50(実装面50fm)に平行な面内に配置されているように構成すれば、電極パターン55の幅を広くとることができ、インピーダンスを低減して高周波帯域でのフィルタ性能をより向上させることができる。
【0067】
ノイズ対策用コンデンサ11は、(電力変換回路30に接続する)一方の端子に対応する第一端子が電力変換回路30の正極側に電気接続される第一コンデンサと、(電力変換回路30に接続する)第一端子が電力変換回路30の負極側に電気接続される第二コンデンサとで構成し、第一コンデンサと第二コンデンサそれぞれは、(筐体40と電気接続する)他方の端子に対応する第二端子と第一端子を結ぶ線分(LabとLefとLcdとLgh)が距離をあけて平行に並び、かつ第一端子どうしを結ぶ線分と第二端子どうしを結ぶ線分が平行になるようにプリント基板50(実装面50fm)に平行な面内に配置されているように構成すれば、電極パターン55の幅を短く、かつ太くできるので、温度上昇を低減し、耐熱温度が低い安価なコンデンサを使用することができる。
【0068】
ノイズ対策用コンデンサ11は、プリント基板50(実装面50fm)に平行な面内に配置された複数のコンデンサ11a~11dを電気接続して構成し、コンデンサケース60は、複数のコンデンサを仕切る仕切り壁(壁部61s)を有するように構成すれば、ノイズ対策用コンデンサ11の配置精度を向上させることができ、かつ固着部材72の密着性の向上により耐振動性がさらに向上する。
【0069】
ケース(コンデンサケース60)は、ノイズ対策用コンデンサ11の本体部分とプリント基板50(実装面50fm)を仕切る底板部61bを有するように構成すれば、ノイズ対策用コンデンサ11の配置精度を向上させることができる。さらに、底板部61bと枠部61が連なっていれば、枠部61の形状安定性が向上する。
【0070】
プリント基板50とケース(コンデンサケース60)との間で、位置決め構造、嵌合構造、および圧入構造(例えば、圧入用ピン68a,68bと圧入用ホール57a,57b)のいずれかを構成していれば、ノイズ対策用コンデンサ11それぞれの端子12のプリント基板50のスルーホールへの挿入性が向上し、歩留まりが改善し、製造コストを削減できる。また、プリント基板50を筐体40に組み付ける前段階においてもプリント基板とコンデンサケース60との位置決めができるので、その段階で固着部材を塗布することも可能となり、作業性を向上させることができる。
【0071】
ケース(コンデンサケース60)の本体部分を囲む部分(枠部61)のうち、固着部材72が固着する部分(厚肉部61k)は、他の部分よりも厚く形成されているように構成すれば、コンデンサケース60に対する固着部材72の密着性を向上させることができる。
【0072】
固着部材72が固着する部分(厚肉部61k)は、プリント基板50(実装面50fm)からの高さにおいて、端子12の根元部分に対応する部分からプリント基板50に向かって厚みが薄くなっているように構成すれば、はんだとコンデンサケース60との干渉を回避しやすくなるので、組み立て性が向上し製造コストを低減できる。
【0073】
固着部材72は、ケース(コンデンサケース60)の本体部分を囲む部分(枠部61)の本体部分を挟んで対向する2か所に両端が固定され、その2か所を結ぶ線分が、(電力変換回路30に接続する)一方の端子と(筐体40と電気接続する)他方の端子を結ぶ線分に対して垂直であるように構成すれば、耐振動性を確保しつつ、充填による固着と比較すれば、固着部材72の使用量を低減することができる。
【0074】
ノイズ対策用コンデンサ11は、プリント基板50に平行な面内に配置された複数のコンデンサを電気接続して構成した複数のコンデンサユニットをさらに電気接続して構成し、プリント基板50には、複数のコンデンサユニットそれぞれに対応して設けられたケース(コンデンサケース60)が配列されているように構成すれば、コンデンサユニットごとに扱うことができるので、高周波特性を向上させるためにコンデンサごとの容量を減らして、コンデンサ数を増加させても、工程の複雑化を回避することができる。
【0075】
ケース(コンデンサケース60)はプリント基板50に近い側も開口しているように構成すれば、コンデンサケース60のプリント基板50への組み付けの有無に関係なく、ノイズ対策用コンデンサ11をプリント基板へ実装できるので、工程の自由度が高まる。
【0076】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0077】
(付記1)
複数の半導体素子を用いて形成された電力変換回路、
前記電力変換回路を収納する筐体、
電極パターンが形成されたプリント基板、
本体部分から突き出た端子のうち一方の端子が前記電極パターンを介して前記電力変換回路に電気接続され、他方の端子が前記電極パターンを介して前記筐体に電気接続され、前記本体部分が前記プリント基板から立ち上がるように前記プリント基板に実装されたノイズ対策用コンデンサ、
前記本体部分を囲み、前記プリント基板から離れた側が開口するケース、
前記本体部分と固着して前記ノイズ対策用コンデンサを前記ケースに対して固定する固着部材、および
前記プリント基板と前記ケースを前記筐体とともに固定する締付部材、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【0078】
(付記2)
前記電極パターンのうち前記他方の端子が接続された電極パターンと前記筐体との接続箇所は、前記プリント基板と前記ケースとの固定箇所と同一箇所であることを特徴とする付記1に記載の電力変換装置。
【0079】
(付記3)
前記ケースの前記プリント基板との固定部には、前記電極パターンへの対向面から反対側の面にかけて導通する導通部が形成されていることを特徴とする付記2に記載の電力変換装置。
【0080】
(付記4)
前記ケースと前記ノイズ対策用コンデンサは、前記プリント基板と前記筐体との間に形成された空間に配置されていることを特徴とする付記1から3のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0081】
(付記5)
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記一方の端子に対応する第一端子が前記電力変換回路の正極側に電気接続される第一コンデンサと、前記第一端子が前記電力変換回路の負極側に電気接続される第二コンデンサとで構成し、
前記第一コンデンサと前記第二コンデンサそれぞれは、前記第一端子と、前記他方の端子に対応する第二端子を結ぶ線分が1直線上に並び、かつ前記第一端子どうし、あるいは前記第二端子どうしが互いに対向するように、前記プリント基板に平行な面内に配置されていることを特徴とする付記1から4のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0082】
(付記6)
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記一方の端子に対応する第一端子が前記電力変換回路の正極側に電気接続される第一コンデンサと、前記第一端子が前記電力変換回路の負極側に電気接続される第二コンデンサとで構成し、
前記第一コンデンサと前記第二コンデンサそれぞれは、前記他方の端子に対応する第二端子と前記第一端子を結ぶ線分が距離をあけて平行に並び、かつ前記第一端子どうしを結ぶ線分と前記第二端子どうしを結ぶ線分が平行になるように、前記プリント基板に平行な面内に配置されていることを特徴とする付記1から4のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0083】
(付記7)
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記プリント基板に平行な面内に配置された複数のコンデンサを電気接続して構成し、
前記ケースは、前記複数のコンデンサを仕切る仕切り壁を有することを特徴とする付記1から6のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0084】
(付記8)
前記ケースは、前記本体部分と前記プリント基板を仕切る底板部を有することを特徴とする付記1から7のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0085】
(付記9)
前記プリント基板と前記ケースとの間で、
位置決め構造、嵌合構造、および圧入構造のいずれかを構成していることを特徴とする付記1から8のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0086】
(付記10)
前記ケースの前記本体部分を囲む部分のうち、前記固着部材が固着する部分は、他の部分よりも厚く形成されていることを特徴とする付記1から9のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0087】
(付記11)
前記固着部材が固着する部分は、前記プリント基板からの高さにおいて、前記端子の根元部分に対応する部分から前記プリント基板に向かって厚みが薄くなっていることを特徴とする付記10に記載の電力変換装置。
【0088】
(付記12)
前記固着部材は、前記ケースの前記本体部分を囲む部分の前記本体部分を挟んで対向する2か所に両端が固定され、
前記2か所を結ぶ線分が、前記一方の端子と前記他方の端子を結ぶ線分に対して垂直であることを特徴とする付記1から11のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0089】
(付記13)
前記ノイズ対策用コンデンサは、前記プリント基板に平行な面内に配置された複数のコンデンサを電気接続して構成した複数のコンデンサユニットをさらに電気接続して構成し、
前記プリント基板には、前記複数のコンデンサユニットそれぞれに対応して設けられた前記ケースが配列されていることを特徴とする付記1から12のいずれか1に記載の電力変換装置。
【0090】
(付記14)
前記ケースは前記プリント基板に近い側も開口していることを特徴とする付記1から7、および付記9から13のいずれか1に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0091】
1:DC/DCコンバータ(電力変換装置)、 10:ノイズ対策用コンデンサ回路、 11:ノイズ対策用コンデンサ、 11a,11b,11c,11d:コンデンサ、 12,12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h:端子、 20:平滑コンデンサ、 30:電力変換回路、 31:インバータ回路、 31a,31b,31c,31d:半導体スイッチング素子、 32:トランス、 33:整流回路、 33a,33b:整流素子、 34:平滑リアクトル、 35:平滑コンデンサ、 36:制御回路、 40:筐体、 50:プリント基板、 50fm:実装面、 51:基材、 55,55a,55b,55c,55d,55e,55f:電極パターン、 56a,56b:スルーホール、 57a,57b:圧入用ホール、 58a,58b:貫通孔、 60:コンデンサケース(ケース)、 61:枠部、 61fu:上端面(端面)、 61k:厚肉部、 62,62a,62b:ツバ部、 63a,63b:導電性部材(導通部)、 8a,8b:締付部材、 68a,68b:圧入用ピン、 72,72a,72b:固着部材、 91:入力電源、 92:外部負荷、 93:出力電源、 Lab,Lcd,Lef,Lgh:線分。