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特開2024-166626半導体モジュール、および半導体モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166626
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】半導体モジュール、および半導体モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241122BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082833
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044AA01
5F044AA07
5F044AA14
(57)【要約】
【課題】半導体モジュールの信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体モジュールは、半導体素子を搭載する回路基板と、半導体素子を収容するケースと、ケースの内外を貫通するリード端子と、ケース内で半導体素子とリード端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、リード端子は、ボンディングワイヤが接合されるパッド部を有し、ケースは、パッド部を囲むようにパッド部の少なくとも一部を底面とする凹部を有し、凹部の側面のうち、回路基板の厚さ方向にみてボンディングワイヤに重なる部分である第1側面は、当該底面から凹部の開口に向かうに従い凹部を広げるように傾斜する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を搭載する回路基板と、
前記半導体素子を収容するケースと、
前記ケースの内外を貫通するリード端子と、
前記ケース内で前記半導体素子と前記リード端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、
前記リード端子は、前記ボンディングワイヤが接合されるパッド部を有し、
前記ケースは、前記パッド部を囲むように前記パッド部の少なくとも一部を底面とする凹部を有し、
前記凹部の側面のうち、前記回路基板の厚さ方向にみて前記ボンディングワイヤに重なる部分である第1側面は、前記底面から前記凹部の開口に向かうに従い前記凹部を広げるように傾斜する、
半導体モジュール。
【請求項2】
前記凹部の側面のうち、前記第1側面とは異なる側面を第2側面としたとき、
前記凹部の深さ方向における前記第1側面の高さは、前記凹部の深さ方向における前記第2側面の高さよりも低い、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記ケースは、前記リード端子の前記凹部に隣り合う部分を挟む位置に設けられる凹状の2つの欠損部を有する、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記ケースは、枠状をなしており、
前記第1側面の下端と前記ケースの内周面との間の距離をWとし、
前記第1側面の高さをHとしたとき、
H/Wは、0.5以上2.0以下の範囲内にある、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記回路基板の厚さ方向にみて前記ボンディングワイヤの延びる方向における前記底面の長さをLとし、
前記第1側面の高さをHとしたとき、
H/Lは、0.2以上0.8以下の範囲内にある、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記パッド部に対する前記第1側面の傾斜角度は、45°以下である、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記ケース内に充填される封止樹脂をさらに備え、
前記ケースの内壁面には、前記ケースと前記封止樹脂との密着性を高めるコーティング材が塗布される、
請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
半導体素子を搭載する回路基板と、
前記半導体素子を収容するケースと、
前記ケースの内外を貫通するリード端子と、
前記ケース内で前記半導体素子と前記リード端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備える半導体モジュールの製造方法であって、
前記リード端子を含むリードフレームを準備する準備工程と、
型を用いて、前記リードフレームをインサート品とするインサート成形により前記ケースを形成するケース形成工程と、
前記ボンディングワイヤを形成するワイヤ形成工程と、を含み、
前記リード端子は、前記ボンディングワイヤが接合されるパッド部を有し、
前記ケースは、前記パッド部を囲むように前記パッド部の少なくとも一部を底面とする凹部を有し、
前記凹部の側面のうち、前記回路基板の厚さ方向にみて前記ボンディングワイヤに重なる部分である第1側面は、前記底面から前記凹部の開口に向かうに従い前記凹部を広げるように傾斜する、
半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体モジュール、および半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体モジュールに代表される半導体モジュールは、一般に、半導体素子を搭載する回路基板と、半導体素子を収容するケースと、回路基板に電気的に接続される複数のリード端子と、を備える。ここで、リード端子は、例えば、特許文献1から4に開示されるように、ケースの内外を貫通しており、ケース内においてボンディングワイヤを介して半導体素子に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-184449号公報
【特許文献2】国際公開第2015/152373号
【特許文献3】特開2017-199818号公報
【特許文献4】特開2022-82033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リード端子に超音波を用いてワイヤボンディングする際、共振によりリード端子とケースとの接合強度が低下する場合がある。これを防止するには、特許文献1、2に開示されるように、リード端子のワイヤボンディングのためのパッド部をケースに押さえ付けるように、パッド部を底面とする凹部をケースに設けることが考えられる。しかし、特許文献1、2に開示される構成では、当該凹部の側面が全周にわたりパッド部から急峻に立ち上がる形状をなすため、ボンディングワイヤがケースに接触することにより信頼性の低下を招く虞がある。
【0005】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、優れた信頼性を有する半導体モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の好適な態様に係る半導体モジュールは、半導体素子を搭載する回路基板と、前記半導体素子を収容するケースと、前記ケースの内外を貫通するリード端子と、前記ケース内で前記半導体素子と前記リード端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、前記リード端子は、前記ボンディングワイヤが接合されるパッド部を有し、前記ケースは、前記パッド部を囲むように前記パッド部の少なくとも一部を底面とする凹部を有し、前記凹部の側面のうち、前記回路基板の厚さ方向にみて前記ボンディングワイヤに重なる部分である第1側面は、前記底面から前記凹部の開口に向かうに従い前記凹部を広げるように傾斜する。
【0007】
本開示の好適な態様に係る半導体モジュールの製造方法は、半導体素子を搭載する回路基板と、前記半導体素子を収容するケースと、前記ケースの内外を貫通するリード端子と、前記ケース内で前記半導体素子と前記リード端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備える半導体モジュールの製造方法であって、前記リード端子を含むリードフレームを準備する準備工程と、型を用いて、前記リードフレームをインサート品とするインサート成形により前記ケースを形成するケース形成工程と、前記ボンディングワイヤを形成するワイヤ形成工程と、を含み、前記リード端子は、前記ボンディングワイヤが接合されるパッド部を有し、前記ケースは、前記パッド部を囲むように前記パッド部の少なくとも一部を底面とする凹部を有し、前記凹部の側面のうち、前記回路基板の厚さ方向にみて前記ボンディングワイヤに重なる部分である第1側面は、前記底面から前記凹部の開口に向かうに従い前記凹部を広げるように傾斜する。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、半導体モジュールの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る半導体モジュールの平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3】リード端子のパッド部と回路基板との電気的な接続状態を示す斜視図である。
図4】リード端子のパッド部とケースの凹部とを示す平面図である。
図5図4中のB-B線断面図である。
図6】実施形態に係る半導体モジュールの製造方法の流れを示す図である。
図7】準備工程を説明するための図である。
図8】ケース形成工程を説明するための図である。
図9】ワイヤ形成工程およびコーティング工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
1.実施形態
1-1.半導体モジュールの全体構成
図1は、実施形態に係る半導体モジュール10の平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。半導体モジュール10は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュール等のパワーモジュールである。半導体モジュール10は、例えば、産業、鉄道車両、自動車または家庭用電気機械等の機器に搭載されるインバーターまたは整流器等の装置での電力制御に用いられる。
【0012】
図1および図2に示すように、半導体モジュール10は、複数の半導体素子21、22と複数の回路基板30とケース40と複数の端子51、52、53と複数のリード端子60と複数の配線板71、72とベース80と複数のボンディングワイヤBWと封止樹脂PAとを備える。なお、図1では、作図の便宜上、封止樹脂PAの図示が省略される。
【0013】
以下、まず、図1および図2に基づいて、半導体モジュール10の各部の概略を順次説明する。なお、以下の説明は、便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。Z軸は、半導体モジュール10の厚さ方向に平行な軸である。以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向とは反対の方向がX2方向である。Y軸に沿う一方向がY1方向であり、Y1方向とは反対の方向がY2方向である。Z軸に沿う一方向がZ1方向であり、Z1方向とは反対の方向がZ2方向である。これらの方向と鉛直方向との関係は、特に限定されず、任意である。また、以下では、Z軸に沿う方向にみることを「平面視」という場合がある。
【0014】
半導体素子21および半導体素子22のそれぞれは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはパワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等のスイッチング素子である。半導体素子21、22のそれぞれの裏面には、ドレイン電極またはコレクタ電極である入力電極が設けられる。一方、半導体素子21、22のそれぞれのおもて面には、ソース電極またはエミッタ電極である出力電極と、ゲート電極である制御電極と、が設けられる。
【0015】
本実施形態では、半導体素子21および半導体素子22のそれぞれがIGBTおよびFWD(Free Wheeling Diode)の両機能を有するRC(Reverse-Conducting)-IGBT等の素子である。すなわち、半導体素子21および半導体素子22のそれぞれは、当該スイッチング素子のほか、FWD等のダイオードを含む。したがって、半導体素子21、22のそれぞれの裏面には、前述の入力電極のほか、カソード電極が設けられる。一方、半導体素子21、22のそれぞれのおもて面には、前述の出力電極のほか、アノード電極が設けられる。
【0016】
図1に示す例では、半導体素子21および半導体素子22のそれぞれの数が3個であり、半導体素子21および半導体素子22が対をなす。すなわち、半導体素子21および半導体素子22の対の数が3対である。そして、3対の半導体素子21および半導体素子22は、U相、V相、W相の3個のハーフブリッジ回路を構成する。ここで、半導体素子21が高電位側の素子であるとともに、半導体素子22が低電位側の端子である。
【0017】
なお、半導体素子21および半導体素子22の対の数は、図1に示す例に限定されず、任意である。また、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオードは、半導体素子21、22とは別体として設けられてもよい。
【0018】
以上の複数の半導体素子21および複数の半導体素子22は、回路基板30に搭載される。
【0019】
回路基板30は、DCB(Direct Copper Bonding)基板またはAMB(Active Metal Brazing)基板等の積層基板である。回路基板30は、絶縁基板31と、絶縁基板31のおもて面に設けられる回路板32と、絶縁基板31の裏面に設けられる放熱板33と、を有する。
【0020】
絶縁基板31は、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムまたは窒化ケイ素等のセラミックスで構成される。回路板32および放熱板33のそれぞれは、例えば、銅またはアルミニウム等の金属で構成される。回路板32は、半導体モジュール10の主電流の経路の一部を構成する。放熱板33は、半導体素子21、22からの熱を放熱する機能を有する。
【0021】
図1に示す例では、回路基板30の数が3個であり、3個の回路基板30が半導体素子21および半導体素子22の対に対応する。そして、回路板32は、回路基板30ごとに、互いに間隔をあけて配置される島状の3個の部分で構成される。当該3個の部分のうちの1つの部分である第1の部分には、半導体素子21の裏面と端子51とが半田等の導電性接合剤により接合される。また、当該3個の部分のうちの第1の部分とは異なる1つの部分である第2の部分には、半導体素子22の裏面と配線板71の一端とが半田等の導電性接合剤により接合される。配線板71の他端は、半導体素子21のおもて面に半田等の導電性接合剤により接合される。さらに、当該3個の部分のうちの第1の部分および第2の部分とは異なる1つの部分である第3の部分には、端子52と配線板72の一端が半田等の導電性接合剤により接合される。配線板72の他端は、半導体素子22のおもて面に半田等の導電性接合剤により接合される。なお、半田は、例えば、鉛フリーはんだであってよい。鉛フリーはんだは、例えば、錫、銀、銅、亜鉛、アンチモン、インジウム、ビスマスの少なくとも2つを含む合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。また、図1に示す回路板32の形状は、一例であり、これに限定されない。
【0022】
配線板71、72のそれぞれは、導電性の部材である。配線板71、72のそれぞれは、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金または鉄合金等の金属で構成されており、金属板の折り曲げ加工等により得られる。なお、配線板71の形状は、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0023】
ケース40は、回路基板30に搭載される複数の半導体素子21および複数の半導体素子22を収容する枠状部材である。ケース40は、実質的な絶縁体であり、例えば、エポキシ樹脂、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene terephthalate)等の樹脂を含む樹脂組成物で構成される。当該樹脂組成物には、ケース40の機械的強度または熱伝導性の向上等の観点から、アルミナまたはシリカ等の無機フィラーが含有されてもよい。当該樹脂材料で構成されるケース40は、複数の端子51、52、53および複数のリード端子60をインサート品とするインサート成形により、複数の端子51、52、53および複数のリード端子60と一体に成形される。なお、当該樹脂組成物に用いる樹脂は、熱可塑性樹脂に限定されず、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0024】
ここで、後述するように、ケース40の回路基板30が設けられる側の面である内壁面Fには、ケース40と封止樹脂PAとの密着性を高めるコーティング材CAが塗布される。これにより、ケース40と封止樹脂PAとの密着性が向上するので、信頼性を高めることができる。
【0025】
図1に示す例では、ケース40が平面視で3個の回路基板30上の複数の半導体素子21、22を包含する開口41を有する。ここで、開口41は、2個の隔壁41bにより3つの空間に仕切られており、当該3つの空間のそれぞれには、回路基板30が配置される。また、開口41を区画する壁面には、Z1方向を向く段差面41aが設けられる。段差面41aには、後述のリード端子60のパッド部62が配置される。なお、開口41の形状は、図1および図2に示す例に限定されず、例えば、隔壁41bが省略されてもよい。
【0026】
以上のケース40には、複数の端子51、52、53および複数のリード端子60が一体成形により取り付けられる。
【0027】
端子51、52、53のそれぞれは、図示しないバスバーと半導体モジュール10とを接続するための端子である。端子51、52、53のそれぞれは、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金または鉄合金等の金属で構成されており、金属板の折り曲げ加工等により得られる。
【0028】
図1に示す例では、端子51、52、53のそれぞれが前述のU相、V相、W相の相ごとに設けられており、端子51、52、53のぞれぞれの数が3個である。ここで、端子51は、高電位側の端子であり、前述の半導体素子21の裏面に回路基板30の回路板32の第1の部分を介して電気的に接続される。端子52は、低電位側の端子であり、前述の半導体素子22のおもて面に回路基板30の回路板32の第3の部分と配線板72とを介して電気的に接続される。端子53は、出力用の端子であり、前述の半導体素子22の裏面に回路基板30の回路板32の第2の部分を介して電気的に接続される。
【0029】
リード端子60は、半導体素子21、22の動作を制御する図示しない制御回路と半導体モジュール10とを接続するための端子であり、ケース40の内外を貫通する。当該制御回路は、半導体モジュール10の外部に設置される。リード端子60には、半導体素子21,22の動作を制御するための信号が当該制御回路から供給される。リード端子60は、端子51、52、53と同様、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金または鉄合金等の金属で構成されており、金属板の折り曲げ加工等により得られる。
【0030】
図1に示す例では、リード端子60は、U相、V相、W相の相ごとに10個ずつ設けられる。ここで、各相の10個のリード端子60のうち、5個のリード端子60は、半導体素子21に対応し、残りの5個のリード端子60は、半導体素子22に対応する。なお、リード端子60の数、配置は、図1に示す例に限定されず、適宜に変更され得る。
【0031】
図2に示すように、リード端子60は、L字状に屈曲した金属板で構成される。ここで、リード端子60は、ピン部61とパッド部62とを有する。
【0032】
ピン部61は、Z軸に沿う方向に延びるリード端子60の棒状部分である。ピン部61のZ1方向での端は、ケース40の外壁面から突出する。このように、ピン部61は、ケース40の外壁面から突出する部分である端子部を有する。当該端子部は、半導体モジュール10を実装する図示しない基板に接続される。一方、ピン部61のZ2方向での端は、パッド部62に接続される。なお、ピン部61の形状は、図1に示す例に限定されず、例えば、ピン部61の先端が2つの部分に分岐した形状でもよい。
【0033】
パッド部62は、前述のケース40の段差面41aに沿って配置されるリード端子60の板状部分である。パッド部62は、ピン部61のZ2方向での端からケース40内側に向けて延びる。パッド部62は、ケース40の内側に露出する部分を有する。当該部分には、ボンディングワイヤBWの一端が接合される。ボンディングワイヤBWの他端は、半導体素子21または半導体素子22の図示しない制御電極に接続される。
【0034】
このように、ボンディングワイヤBWは、ケース40内で回路基板30とリード端子60とを電気的に接続する。ボンディングワイヤBWは、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属で構成される。なお、ボンディングワイヤBWの数は、図1に示す例に限定されず、例えば、1個のパッド部62に対して2本以上のボンディングワイヤBWが用いられてもよい。
【0035】
ベース80は、放熱用の板状部材であり、半導体モジュール10の底板を構成する。ベース80の上面には、前述の複数の回路基板30が半田等の接合材により接合されるとともに、前述のケース40のZ2方向での端がエポキシ系またはシリコーン系等の接着剤により接合される。一方、ベース80の下面には、図示しない放熱フィン等の放熱部材または冷却器が配置されてもよい。ベース80は、例えば、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成される金属板である。ベース80は、熱伝導性を有しており、半導体素子21、22からの熱を放熱する。また、ベース80は、導電性を有しており、例えば、接地電位等の基準電位に電気的に接続されてもよい。なお、ベース80は、放熱フィン等の放熱部材または冷却器と一体で構成されてもよい。
【0036】
封止樹脂PAは、ケース40内に充填されるポッティング材である。封止樹脂PAは、例えば、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂で構成される。ここで、封止樹脂PAには、熱伝導性を高める観点から、シリカまたはアルミナ等の無機フィラーが含まれることが好ましい。なお、封止樹脂PAは、ゲル状であってもよい。
【0037】
1-2.リード端子のパッド部の近傍におけるケースの構成
図3は、リード端子60のパッド部62と回路基板30との電気的な接続状態を示す斜視図である。図3では、半導体素子22に対応する5個のパッド部62と5個のボンディングワイヤBWとが示される。ここで、半導体素子22は、5個のパッド部62に対応する5個の制御電極22aを有しており、各制御電極22aには、対応するボンディングワイヤBWを介して、対応するパッド部62が電気的に接続される。
【0038】
図3に示す例では、パッド部62とこれに対応する制御電極22aとは、Z軸に沿う方向にみてY軸に沿う方向に並ぶ。したがって、各ボンディングワイヤBWは、Z軸に沿う方向にみてY軸に沿う方向に延びる。すなわち、パッドとこれに対応する制御電極22a、各ボンディングワイヤBWは、ケース40の長辺に沿うように並んでいる。なお、ボンディングワイヤBWの延びる方向は、パッド部62とこれに対応する制御電極22aとの配置に応じて決められ、図3に示す例に限定されず、例えば、Z軸に沿う方向にみてY軸に対して傾斜した方向であってもよい。
【0039】
図3に示すように、ケース40は、パッド部62を囲むようにパッド部62の少なくとも一部を底面とする凹部42を有する。当該底面は、パッド部62のZ1方向を向く面の少なくとも一部であり、凹部42内に露出する。すなわち、当該底面は、パッド部62のベース80が設けられている側の面とは反対側の面の少なくとも一部であり、凹部42内に露出する。凹部42は、Z軸に沿う方向を深さ方向とする窪みである。図3に示す例では、凹部42がケース40の段差面41aに設けられる。
【0040】
図4は、リード端子60のパッド部62とケース40の凹部42とを示す平面図である。図5は、図4中のB-B線断面図である。なお、図4および図5では、見やすくするため、ボンディングワイヤBWの図示が省略される。
【0041】
図4および図5に示すように、ケース40は、凹部42の側面を区画する壁部4を有する。壁部4は、ケース40の一部である。壁部4は、図4に示すように、Z軸に沿う方向にみてパッド部62の外縁の少なくとも一部に重なり、かつ、図5に示すように、パッド部62よりもZ1方向に位置する。すなわち、壁部4は、平面視でパッド部62の外縁の少なくとも一部に重なり、かつ、パッド部62よりもピン部61が突出するケース40の外壁面側に位置する。これにより、パッド部62へのボンディングワイヤBWの接続を可能としつつ、パッド部62が壁部4によりケース40に押さえ付けられる。
【0042】
このように、ケース40がパッド部62を囲むようにパッド部62の少なくとも一部を底面とする凹部42を有することにより、パッド部62がケース40に押さえ付けられる。このため、リード端子60に超音波を用いてワイヤボンディングする際、共振によるリード端子60とケース40との接合強度の低下を防止することができる。また、凹部42をケース40に設けることにより、ケース40と封止樹脂PAとの密着性を向上させるためのコーティング材CAを凹部42内に留めることができる。この結果、コーティング材CAによりケース40と封止樹脂PAとの密着性を好適に向上させることができる。
【0043】
図4に示すように、凹部42の底面は、Z軸に沿う方向にみてX軸に沿う1対の辺とY軸に沿う1対の辺とを有する矩形状をなす。すなわち、凹部42の底面は、平面視でケース40の長辺に沿う1対の辺とケース40の短辺に沿う1対の辺とを有する矩形状をなす。また、凹部42の側面は、X軸に沿う第1側面42aおよび第2側面42bと、Y軸に沿う1対の第2側面42cと、を有する。
【0044】
第1側面42aは、凹部42の側面のうち、回路基板30の厚さ方向にみて前述のボンディングワイヤBWに重なる部分である。第2側面42b、42cは、凹部42の側面のうち、第1側面42aとは異なる側面である。ここで、第1側面42aは、第2側面42bに対してY2方向の位置に配置される。つまり、第1側面42aは、第2側面42bに対して回路基板30が設けられる側に配置される。また、1対の第2側面42cのY2方向での端には、第1側面42aのX1方向およびX2方向での両端が接続される。一方、1対の第2側面42cのY1方向での端には、第2側面42bのX1方向およびX2方向での両端が接続される。
【0045】
ここで、第1側面42aは、凹部42の底面から凹部42の開口に向かうに従い凹部42を広げるように傾斜角度θで傾斜する。これにより、パッド部62と制御電極22aにボンディングワイヤBWを接合する際に、ケース40の第1側面42aとボンディングワイヤBWを接合するワイヤ接合ツール(図示なし)との接触を低減することができ、ケース40に対するボンディングワイヤBWの接触を低減することができる。ここで、前述のように、ケース40に凹部42を設けることにより、リード端子60とケース40との接合強度の低下を防止したり、コーティング材CAによりケース40と封止樹脂PAとの密着性を好適に向上させたりする効果と相まって、半導体モジュール10の信頼性を向上させることができる。
【0046】
図5に示す例では、第1側面42aが平面である。なお、第1側面42aの形状は、図5に示す例に限定されず、例えば、凸状または凹状に湾曲した形状であってもよいし、階段状であってもよいし、パッド部62に対する傾斜角度の異なる複数の部分を有する形状であってもよい。
【0047】
凹部42の深さ方向における第1側面42aの高さHは、凹部42の深さ方向における第2側面42b、42cの高さH0よりも低い。このような高さHおよび高さH0の大小関係を有する態様では、第1側面42aの高さHが第2側面42b、42cの高さH0以上である態様に比べて、ケース40に対するボンディングワイヤBWの接触を低減することができる。また、第2側面42b、42cの高さH0が第1側面42aの高さHよりも高いことにより、コーティング材CAを凹部42内に好適に留めることができる。
【0048】
なお、凹部42の深さ方向は、Z1方向またはZ2方向である。また、高さHは、高さH0以上であってもよい。ただし、コーティング材CAを凹部42内に好適に留める観点から、高さHは、高さH0よりも低いことが好ましい。
【0049】
図4に示すように、ケース40は、凹状の2つの欠損部43を有する。欠損部43は、パッド部62のZ1方向を向く面よりもZ2方向に窪んだ凹部である。つまり、欠損部43は、パッド部63の裏面からベース80へ向かう方向に窪んだ凹部である。この2つの欠損部43は、リード端子60の凹部42に隣り合う部分を挟む位置に設けられる。図4に示す例では、2つの欠損部43がZ軸に沿う方向にみて壁部4の外側でパッド部62を挟む。このように、2つの欠損部43がリード端子60の凹部42に隣り合う部分を挟む位置に設けられることにより、後述するように、ケース40の成形のための型100の下型110には欠損部43に対応する凸状の規制部112が設けられる。このため、ケース40成形時におけるリード端子60の位置ずれを低減することができる。また、欠損部43に封止樹脂PAが進入する。これにより、ケース40と封止樹脂PAとの密着面積が増大し、ケース40と封止樹脂PAとの密着性を高めることができる。
【0050】
図4に示す例では、パッド部62は、凹部42の内側でケース40内に露出するほか、パッド部62の先端がケース40内に露出する。ここで、当該先端は、後述の規制部112とともに型100に対するリード端子60の位置決めに用いることができる。
【0051】
また、前述のように、ケース40は、枠状をなす。ここで、第1側面42aの下端とケース40の内周面44(内周縁)との間の距離をWとし、第1側面42aの高さをHとしたとき、H/Wは、0.5以上2.0以下の範囲内にあることが好ましい。H/Wがこのような範囲内にある場合、パッド部62と回路基板30との間の距離を短くしつつ、ケース40に対するボンディングワイヤBWの接触を低減しやすい傾斜角度θの第1側面42aを実現することができる。なお、距離Wは、壁部4の第1側面42aを有する部分のY軸に沿う方向での幅であるともいえる。
【0052】
さらに、回路基板30の厚さ方向にみてボンディングワイヤBWの延びる方向における凹部42の底面の長さをLとし、第1側面42aの高さをHとしたとき、H/Lは、0.2以上0.8以下の範囲内にあることが好ましい。H/Lがこのような範囲内にある場合、パッド部62の小型化を図りつつ、ケース40に対するボンディングワイヤBWの接触を低減しやすい高さの第1側面42aを実現することができる。
【0053】
パッド部62に対する第1側面42aの傾斜角度θは、45°以下であることが好ましい。傾斜角度θがこのような範囲内にある場合、第1側面42aの傾斜角度θが45°よりも大きい態様に比べて、ケース40に対するボンディングワイヤBWの接触を低減することができる。なお、傾斜角度θは、パッド部62のZ1方向を向く面と第1側面42aとのなす角度である。
【0054】
図4および図5に示す例では、第2側面42b、42cがパッド部62のZ1方向を向く面に対して直交する。したがって、パッド部62のZ1方向を向く面と第2側面42b、42cとのなす角度は、傾斜角度θよりも大きい。これにより、コーティング材CAを凹部42内に留める効果が好適に発揮される。なお、第2側面42b、42cがパッド部62のZ1方向を向く面に対して直交せずに傾斜してもよい。この場合、その傾斜の角度は、傾斜角度θと等しくてもよいし異なってもよい。これにより、コーティング材CAが、凹部42内に流入しやすくなる。
【0055】
1-3.半導体モジュールの製造方法
図6は、実施形態に係る半導体モジュール10の製造方法の流れを示す図である。半導体モジュール10の製造方法は、図6に示すように、準備工程S10とケース形成工程S20とワイヤ形成工程S30とコーティング工程S40と封止工程S50とをこの順で含む。
【0056】
準備工程S10は、ケース形成工程S20に必要な要素を準備する。当該要素には、リード端子60を含む後述のリードフレーム600が含まれる。ケース形成工程S20は、型100を用いて、リードフレーム600をインサート品とするインサート成形によりケース40を形成する。ワイヤ形成工程S30は、ボンディングワイヤBWを形成する。コーティング工程S40は、ケース40と封止樹脂PAとの密着性を高めるためのコーティングを行う。封止工程S50は、封止樹脂PAを形成する。以下、各工程を順に詳述する。
【0057】
図7は、準備工程S10を説明するための図である。準備工程S10では、図7に示すように、複数のリード端子60を含むリードフレーム600と型100とが準備される。また、準備工程S10では、リードフレーム600および型100のほか、ケース形成工程S20に必要な要素が適宜に準備される。
【0058】
リードフレーム600は、複数のリード端子60とそれ以外の部分とで構成される。リードフレーム600の複数のリード端子60以外の部分は、ケース形成工程S20の後に切除される。
【0059】
型100は、下型110および上型120を有する。下型110は、ケース40のおもて面を成形する成形面111を有する。ここで、成形面111には、複数の規制部112を有する。複数の規制部112は、前述の複数の凹状の欠損部43を成形するための凸部である。一方、上型120は、ケース40の裏面を成形する成形面121を有する。
【0060】
下型110の成形面111上には、ケース形成工程S20において、図7中二点鎖線で示すように、リードフレーム600が配置される。ここで、複数の規制部112のそれぞれは、複数のリード端子60のいずれかに隣り合う。これにより、リードフレーム600のリード端子60は、複数の規制部112により、成形面111に対して位置決めされる。
【0061】
図8は、ケース形成工程S20を説明するための図である。ケース形成工程S20では、図8に示すように、型100を用いて、リードフレーム600をインサート品とするインサート成形によりケース40を形成する。
【0062】
具体的に説明すると、前述のように型100に対してリードフレーム600を配置するとともに、型100を型閉めした後、その状態で、前述の樹脂組成物が加熱により軟化された状態で型100内に注入される。このとき、複数のリード端子60の移動が複数の規制部112により規制される。その後、型100内の樹脂組成物の温度を軟化点よりも低い温度に低下させることにより、当該樹脂組成物が固化される。これにより、リードフレーム600と一体化したケース40が得られる。その後、型100からケース40が取り外される。
【0063】
図9は、ワイヤ形成工程S30およびコーティング工程S40を説明するための図である。ワイヤ形成工程S30では、超音波を用いてワイヤボンディングによりボンディングワイヤBWが形成される。このとき、第1側面42aが前述のように傾斜するので、第1側面42aとボンディングワイヤBWまたはワイヤボンディングに用いるキャピラリとの接触が防止される。
【0064】
ワイヤ形成工程S30の後、コーティング工程S40では、ケース40の内壁面Fに、ケース40と封止樹脂PAとの密着性を高めるコーティング材CAが塗布される。コーティング材CAは、例えば、ポリアミド系のコーティング材である。ケース40の内壁面Fに対するコーティング材CAの塗布方法としては、特に限定されず、スプレーまたはディッピング等の公知の方法を用いることができる。
【0065】
以上の半導体モジュール10によれば、前述のように、ケース40がパッド部62を囲むようにパッド部62の少なくとも一部を底面とする凹部42を有するので、パッド部62がケース40に押さえ付けられる。このため、リード端子60に超音波を用いてワイヤボンディングする際、共振によるリード端子60とケース40との接合強度の低下を防止することができる。また、第1側面42aが底面から凹部42の開口に向かいに従い凹部42を広げるように傾斜するので、ケース40に対するボンディングワイヤBWの接触を低減することができる。さらに、ケース40内に封止樹脂PAを充填する場合、ケース40と封止樹脂PAとの密着性を向上させるためのコーティング材CAを凹部42内に留めることができる。この結果、コーティング材CAによりケース40と封止樹脂PAとの密着性を好適に向上させることができる。以上から、半導体モジュール10の信頼性を向上させることができる。
【0066】
2.変形例
本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0067】
2-1.変形例1
前述の実施形態では、リード端子60がL字状に屈曲した金属板で構成される態様が例示されるが、この態様に限定されない。すなわち、リード端子60の形状は、パッド部62を有する形状であればよく、任意である。
【0068】
2-2.変形例2
前述の実施形態では、凹部42の底面の平面視形状が四角形である態様が例示されるが、この態様に限定されず、当該平面視形状は、例えば、四角形以外の多角形であってもよい。
【0069】
2-3.変形例3
前述の実施形態では、コーティング材CAを用いる態様が例示されるが、この態様に限定されない。コーティング材CAは、必要に応じて用いられ、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
4…壁部、10…半導体モジュール、21…半導体素子、22…半導体素子、22a…制御電極、30…回路基板、31…絶縁基板、32…回路板、33…放熱板、40…ケース、41…開口、41a…段差面、41b…隔壁、42…凹部、42a…第1側面、42b…第2側面、42c…第2側面、43…欠損部、51…端子、52…端子、53…端子、60…リード端子、61…ピン部、62…パッド部、71…配線板、72…配線板、80…ベース、100…型、110…下型、111…成形面、112…規制部、120…上型、121…成形面、600…リードフレーム、BW…ボンディングワイヤ、CA…コーティング材、H…高さ、H0…高さ、PA…封止樹脂、S10…準備工程、S20…ケース形成工程、S30…ワイヤ形成工程、S40…コーティング工程、S50…封止工程、W…距離、θ…傾斜角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9