(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166630
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】遠方監視制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241122BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H02J13/00 J
G01R31/00
H02J13/00 M
H02J13/00 311R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082842
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】今森 隆士
【テーマコード(参考)】
2G036
5G064
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA01
2G036BB07
5G064AA04
5G064AB01
5G064AC01
5G064AC06
5G064AC10
5G064CB07
5G064CB11
5G064DA02
5G064DA03
(57)【要約】
【課題】制御所から伝送される指令に応じて選択‐制御の2挙動方式における選択リレーおよび制御リレーの接点が正しく閉じるか否かを、現場機器を動作させることなく試験することが困難であること。
【解決手段】遠方監視制御装置は、遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は制御所からの指令を有効にする信号を生成し、直接側に切換えられている場合は、運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは制御所からの指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは制御所からの指令を無効にする信号を生成する信号生成部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御所に設置され、複数の機器にそれぞれ対応する複数の選択リレーと前記選択リレーの動作により選択された機器を制御するための制御リレーとを用いて、制御所より伝送される指令に基づいて機器を選択して制御する遠方監視制御装置であって、
遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、前記遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成し、直接側に切換えられている場合は、前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ前記通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは前記制御所からの前記指令を無効にする信号を生成する信号生成部、
を備える遠方監視制御装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記遠方‐直接の切換スイッチと連動して反対のスイッチ動作を行う第1の切換スイッチと、前記運用‐テストの切換スイッチと連動して反対のスイッチ動作を行う第2の切換スイッチと、前記通常‐模擬遠方の切換スイッチとを含むリレーシーケンス回路により構成されている、
請求項1に記載の遠方監視制御装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、コンピュータと前記コンピュータにより実行されるプログラムとを備え、前記コンピュータと前記プログラムとの協働により、前記信号の生成動作を行うように構成されている、
請求項1に記載の遠方監視制御装置。
【請求項4】
前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられることにより前記選択リレーおよび前記制御リレーの制御コモンに電気的に接続されるテスト端子を有する、
請求項1に記載の遠方監視制御装置。
【請求項5】
前記遠方‐直接の切換スイッチと前記制御リレー間の配線経路上に設けられ、前記運用‐テストの切換スイッチと連動して反対のスイッチ動作を行う第3の切換スイッチを有する、
請求項1に記載の遠方監視制御装置。
【請求項6】
被制御所に設置され、複数の機器にそれぞれ対応する複数の選択リレーと前記選択リレーの動作により選択された機器を制御するための制御リレーとを用いて、制御所より伝送される指令に基づいて機器を選択して制御する遠方監視制御装置の動作方法であって、
遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、前記遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成する工程と、
前記遠方‐直接の切換スイッチが直接側に切換えられている場合は、前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ前記通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは前記制御所からの前記指令を無効にする信号を生成する工程と、
を含む、
遠方監視制御装置の動作方法。
【請求項7】
被制御所に設置され、複数の機器にそれぞれ対応する複数の選択リレーと前記選択リレーの動作により選択された機器を制御するための制御リレーとを用いて、制御所より伝送される指令に基づいて機器を選択して制御する遠方監視制御装置を構成するコンピュータに、
遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、前記遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成する処理と、
前記遠方‐直接の切換スイッチが直接側に切換えられている場合は、前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ前記通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは前記制御所からの前記指令を無効にする信号を生成する処理と、
を行わせるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠方監視制御装置、遠方監視制御方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、変電所等には現場に設置された機器(遮断器など)を遠方から監視および制御するための遠方監視制御装置が設置されている。このような遠方監視制御装置は、長期間に亘って高い信頼性が必要とされるため、現場に設置された後も定期的な試験により健全性の維持が図られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-83886号公報
【特許文献2】特開2009-17619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠方監視制御装置における試験では、選択‐制御の2挙動方式における選択リレーおよび制御リレーの接点が制御所からの指令に応じて正しく閉じるか否かを確認する必要がある。このような試験は、現場に設置された機器(現場機器)を動作させずに実施することが望まれる。その理由は、現場機器の中には送電線に設けられた遮断器(Circuit Breaker)のように、動作させると大規模停電などの大きな被害につながる機器があるためである。
【0005】
しかるに、従来の遠方監視制御装置では、遠方‐直接の切換スイッチを遠方側に切換えると、制御所から伝送される指令に応じて選択リレーおよび制御リレーの接点の開閉制御は可能になるものの現場機器が動作し、一方、遠方‐直接の切換スイッチを直接側に切換えると、遠方監視制御によって現場機器は動作しなくなるが、そもそも選択リレーおよび制御リレーの接点の開閉を制御所からの指令に応じて制御することができなかった。そのため、制御所から伝送される指令に応じて選択‐制御の2挙動方式における選択リレーおよび制御リレーの接点が正しく閉じるか否かを、現場機器を動作させることなく試験することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決する遠方監視制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る遠方監視制御装置は、
被制御所に設置され、複数の機器にそれぞれ対応する複数の選択リレーと前記選択リレーの動作により選択された機器を制御するための制御リレーとを用いて、制御所より伝送される指令に基づいて機器を選択して制御する遠方監視制御装置であって、
遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、前記遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成し、直接側に切換えられている場合は、前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ前記通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは前記制御所からの前記指令を無効にする信号を生成する信号生成部、
を備えるように構成されている。
【0008】
本発明の他の形態に係る遠方監視制御装置の動作方法は、
被制御所に設置され、複数の機器にそれぞれ対応する複数の選択リレーと前記選択リレーの動作により選択された機器を制御するための制御リレーとを用いて、制御所より伝送される指令に基づいて機器を選択して制御する遠方監視制御装置の動作方法であって、
遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、前記遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成する工程と、
前記遠方‐直接の切換スイッチが直接側に切換えられている場合は、前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ前記通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは前記制御所からの前記指令を無効にする信号を生成する工程と、
を含むように構成されている。
【0009】
また、本発明の他の形態に係るプログラムは、
被制御所に設置され、複数の機器にそれぞれ対応する複数の選択リレーと前記選択リレーの動作により選択された機器を制御するための制御リレーとを用いて、制御所より伝送される指令に基づいて機器を選択して制御する遠方監視制御装置を構成するコンピュータに、
遠方‐直接の切換スイッチ、運用‐テストの切換スイッチ、および、通常‐模擬遠方の切換スイッチを少なくとも含む複数のスイッチ群のうち、前記遠方‐直接の切換スイッチが遠方側に切換えられている場合は前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成する処理と、
前記遠方‐直接の切換スイッチが直接側に切換えられている場合は、前記運用‐テストの切換スイッチがテスト側に切換えられており且つ前記通常‐模擬遠方の切換スイッチが模擬遠方側に切換えられているときは前記制御所からの前記指令を有効にする信号を生成するが、それ以外のときは前記制御所からの前記指令を無効にする信号を生成する処理と、
を行わせるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上述したような構成を有することにより、制御所から伝送される指令に応じて選択‐制御の2挙動方式における選択リレーおよび制御リレーの接点が正しく閉じるか否かを、現場機器を動作させることなく試験することができる。そのため、リレーの融着等の問題を早期に発見することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る遠方監視制御装置を備えた遠方監視制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る遠方監視制御装置および電力機器の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】、本発明の一実施形態に係る遠方監視制御装置における制御部の要部の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る遠方監視制御装置の要部構成図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る遠方監視制御装置においてCL160を模擬遠方試験するシーケンスと各ステップにおけるスイッチの状態などを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以降の説明において、複数の同一または類似の要素が存在する場合、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあり、また、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に枝番号を加えることがある。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る遠方監視制御装置20を備えた遠方監視制御システム1の構成例を示すブロック図である。遠方監視制御システム1は、発電所、変電所などの電気所に設置された電力機器30を遠方の制御所から監視および制御するためのシステムである。
図1を参照すると、遠方監視制御システム1は、制御所に設けられた制御所装置10と、被制御所に設けられた遠方監視制御装置20とから構成される。遠方監視制御システム1は、制御所装置10から遠方監視制御装置20を介して電力機器30に制御情報を送信し、反対に電力機器30から遠方監視制御装置20を介して制御所装置10に表示・計測情報を送信することにより、制御所から電力機器30を監視および制御している。
【0013】
図2は、遠方監視制御装置20および電力機器30の構成の一例を示すブロック図である。
図2を参照すると、遠方監視制御装置20は、処理部21と送受信部22と制御部23とを含んで構成されている。送受信部22は、制御所装置10との間で制御情報および表示・計測情報を送受信する。処理部21は、送受信部22を介して受信した制御所からの制御情報に基づいて制御部23を介して電力機器30に制御情報を送信する。また、処理部21は、制御部23を介して受信した電力機器30からの表示・計測情報を、送受信部22を介して制御所装置10に送信する。また、電力機器30は、例えば、トリップコイルや投入コイルといった操作部31と、送電線32の遮断器33とを含んで構成されている。
【0014】
図3は、制御部23の要部の構成の一例を示す図である。
図3を参照すると、制御部23は、遠方‐直接の切換スイッチ43Rと、制御リレーOP(CL)と、選択リレーPOSと、端子231と、P電源(制御用の直流プラス電源)を備えている。遠方‐直接の切換スイッチ43Rは、遠方側に切換えられると閉じ、直接側に切換えられると開く手動スイッチである。選択リレーPOSは、複数の電力機器30の中から1つの電力機器30を選択するためのリレーであり、接点が閉じることで対応する電力機器30を選択するように動作する。制御リレーOP(CL)は、選択リレーPOSで選択した電力機器30を制御するためのリレーであり、接点が閉じることで電力機器30を制御するように動作する。一般に制御リレーOP(CL)は、オープン(OP)用とクローズ(CL)用とに分かれているが、
図3では説明の便宜上、簡略化している。上記の遠方‐直接の切換スイッチ43Rと制御リレーOP(CL)と選択リレーPOSは、選択‐制御の2挙動方式の遠方監視制御装置20に基本的に備わる構成要素である。
【0015】
制御部23は、上記の基本的な構成要素に加えて、さらに、運用‐テストの切換スイッチ43T1と、試験用制御コモンであるテスト端子232と、信号生成部233とを備えている。
【0016】
運用‐テストの切換スイッチ43T1は、運用側に切換えられると開き、テスト側に切換えられると閉じる手動スイッチであり、一方の端子は制御リレーOP(CL)および選択リレーPOSの制御コモンTCCOMに接続され、他方の端子はテスト端子232に接続されている。そのため、テスト端子232は、切換スイッチ43T1がテスト側に切換えられて閉じることにより制御コモンTCCOMに電気的に接続される。
【0017】
信号生成部233は、通常‐模擬遠方の切換スイッチ234を備え、制御所装置10からの指令の有効、無効を示す表示信号235を生成するように構成されている。信号生成部233は、遠方‐直接の切換スイッチ43Rが遠方側に切換えられている場合は、有効を示す表示信号235を生成する。また、信号生成部233は、遠方‐直接の切換スイッチ43Rが直接側に切換えられている場合は、運用‐テストの切換スイッチ43T1がテスト側に切換えられており且つ通常‐模擬遠方の切換スイッチ234が模擬遠方側に切換えられているときは、有効を示す表示信号235を生成し、それ以外のときは無効を示す表示信号235を生成する。即ち、信号生成部233は、遠方‐直接の切換スイッチ43Rが直接側に切換えられている場合、運用‐テストの切換スイッチ43T1がテスト側に切換えられ且つ通常‐模擬遠方の切換スイッチ234が模擬遠方側に切換えられている場合に限り、有効を示す表示信号235を生成する。
【0018】
表示信号235は、制御部23から処理部21に伝達され、さらに処理部21から送受信部22を通じて制御所装置10へ伝送されるように構成されている。制御所装置10は、表示信号235が有効、無効の何れであるかを、制御所装置10に設けられた制御盤(図示せず)に表示することにより制御所の操作員に表示する。また、制御所装置10は、表示信号235が有効の場合、制御盤から電力機器30の選択・制御の操作を受け付け、受け付けた操作に応じた制御情報を生成して遠方監視制御装置20へ送信する。また、制御所装置10は、表示信号235が無効の場合、制御盤からの電力機器30の選択・制御の操作を拒否する。一方、遠方監視制御装置20の処理部21は、表示信号235が有効の場合、制御所装置10からの制御情報を受け付け、それに応じて制御部23を制御する。また、処理部21は、表示信号235が無効の場合、制御所装置10から制御情報を受信したとしてもその制御情報に応じて制御部23を制御することはなく拒否する。
【0019】
信号生成部233は、
図3に示すように、遠方‐直接の切換スイッチ43Rと連動して反対のスイッチ動作を行う切換スイッチ43Dと、運用‐テストの切換スイッチ43T1と連動して反対のスイッチ動作を行う切換スイッチ43T2と、上述した通常‐模擬遠方の切換スイッチ234とを、図示の如く接続したリレーシーケンス回路により実現することができる。この場合、表示信号235は、P電源の電位にならないときに有効、なるときに無効を示す。この信号生成部233では、切換スイッチ43Dは、遠方‐直接の切換スイッチ43Rが遠方側、直接側の何れであるかを検出する手段を構成し、切換スイッチ43T2は、運用‐テストの切換スイッチ43T1が運用側、テスト側の何れであるかを検出する手段を構成する。また、切換スイッチ43Dと切換スイッチ234と切換スイッチ43T2との
図3に示すような接続関係は、遠方‐直接の切換スイッチ43Rが直接側であることと、通常‐模擬遠方の切換スイッチ234が模擬遠方側であることと、運用‐テストの切換スイッチ43T1がテスト側であることとの論理積条件を検出する手段を構成する。
【0020】
上記のような機能を有する信号生成部233は、リレーシーケンス回路により実現できる以外に、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理部とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などで構成された記憶部とを含むコンピュータと、プログラムとで実現することもできる。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されて提供され、コンピュータの立ち上げ時などに演算処理部に読み取られ、演算処理部の動作を制御することにより、演算処理部上に信号生成部233を実現する。
【0021】
次に、遠方監視制御装置20の動作を説明する。
【0022】
遠方監視制御装置20の図示しない制御電源を投入した時点では、例えば、遠方から制御が行えるように、切換スイッチ43Rは遠方側(閉)になっている。また、切換スイッチ234は通常側になっている。そのため、P電源が切換スイッチ43Rを通じて制御リレーOP(CL)に印加されている。また、切換スイッチ43Dは開いているため、信号生成部233からの表示信号235はP電源でないため有効を示している。
【0023】
制御所装置10は、表示信号235が有効であるので、遠方監視制御が行える状態であると判断する。そのため、制御所装置10は、制御所に設置された操作盤から電力機器30の選択・制御の操作が入力されると、それに必要な制御情報を生成して遠方監視制御装置20へ送信する。また、遠方監視制御装置20の処理部21は、表示信号235が有効なので、制御所装置10からの制御情報を受け付け、それに応じて制御部23を制御する。そのため、処理部21は、例えば、電力機器30-1の選択・制御の制御情報を受信すると、選択リレーPOS-1および制御リレーOP(CL)の接点を閉じる制御を実施する。この結果、P電源が、切換スイッチ43R、制御リレーOP(CL)、選択リレーPOS-1、および、端子231-1を通じて電力機器30-1に供給され、操作部31によって遮断器33が開閉されることになる。
【0024】
一方、直接制御が行えるように、上記の状態から被制御所の操作員が切換スイッチ43Rを直接側(開)に切換えると、それに連動して切換スイッチ43Dが開から閉になり、P電源の電圧が切換スイッチ43D、切換スイッチ234の通常側を通じて表示信号235に現れ、表示信号235が有効から無効に変化する。この表示信号235の変化は速やかに処理部21に伝達され、さらに処理部21から制御所装置10に伝送される。制御所装置10は、表示信号235が無効であれば、遠方から制御が行えない状態であると判断する。そのため、制御所装置10は、制御所に設置された操作盤から電力機器30の選択・制御の操作を受け付けない。また、処理部21は、表示信号235が無効であれば、たとえ制御所装置10から制御情報を受信してもそれを拒否する。これによって、被制御所に設けられた直接制御盤(図示せず)から制御が行える状態のときに遠方から誤って制御がかけられて感電などの事故が発生するのが防止される。
【0025】
また、試験を行うために、上記の状態からさらに、被制御所の操作員が切換スイッチ43T1をテスト側(閉)に切換えると、テスト端子232が制御コモンTCCOMに電気的に接続される状態になる。この時点でも、表示信号235は無効のままである。但し、切換スイッチ43T2は、この時点で切換スイッチ43T1に連動して開になる。そして、引き続いて被制御所の操作員が切換スイッチ234を通常側から模擬遠方側に切換えると、切換スイッチ43T2が開いているため、P電源が表示信号235に現れないようになり、表示信号235は無効から有効に変化する。この表示信号235の変化は速やかに処理部21に伝達され、さらに処理部21から制御所装置10に伝送される。このため、制御所装置10は、制御所に設置された操作盤から試験のために電力機器30の選択・制御の操作が入力されると、それに必要な制御情報を生成して遠方監視制御装置20へ送信する。また、遠方監視制御装置20の処理部21は、表示信号235が有効であるので、制御所装置10からの制御情報を受け付け、それに応じて制御部23を制御する。その結果、処理部21は、例えば、電力機器30-1の選択・制御の制御情報を受信すると、選択リレーPOS-1および制御リレーOP(CL)の接点を閉じる制御を実施することになる。しかし、切換スイッチ43Rは開状態になっているため、選択リレーPOS-1および制御リレーOP(CL)の接点が閉じても電力機器30-1の操作部31にはP電源は印加されない。その結果、遮断器33が動作することはない。
【0026】
被制御所の操作員は、例えば、テスターなどの測定機器を使用して、テスト端子232と端子231-1間で導通確認を行うことにより、選択リレーPOS‐1および制御リレーOP(CL)の接点が閉じたか否かを確認することができる。また、上記と同様にして、他の選択リレーと制御リレーの接点が制御所からの指令に応じて閉じるか否かを試験することができる。
【0027】
一連の試験の終了後、被制御所の操作員が、切換スイッチ234を「模擬遠方」から「通常」に切換え、切換スイッチ43T1を運用側(開)に切換えると、表示信号235が有効から無効に変化する。これによって、直接制御盤から電力機器30を制御できる状態になる。さらに、被制御所の操作員が、切換スイッチ43Rを直接側(開)から遠方側(閉)に切換えると、切換スイッチ43Dが開くので表示信号235が無効から有効に変化する。これによって、制御所の制御盤から電力機器30を制御できる状態になる。
【0028】
以上のように本実施の形態に係る遠方監視制御装置20は、遠方‐直接の切換スイッチ43Rが遠方側に切換えられている場合は制御所装置10からの指令を有効にする表示信号235を生成し、直接側に切換えられている場合は、運用‐テストの切換スイッチ43T1がテスト側に切換えられており且つ通常‐模擬遠方の切換スイッチ234が模擬遠方側に切換えられているときは制御所装置10からの指令を有効にする表示信号235を生成するが、それ以外のときは制御所装置10からの指令を無効にする表示信号235を生成する信号生成部233を有する。そのため、試験中は遠方‐直接の切換スイッチ43Rを直接側、運用‐テストの切換スイッチ43T1をテスト側、通常‐模擬遠方の切換スイッチ234を模擬遠方側にそれぞれ切換えておくことにより、制御所装置10から伝送される制御情報に応じて選択‐制御の2挙動方式における選択リレーPOSおよび制御リレーOP(CL)の接点が正しく閉じるか否かを、電力機器30を動作させることなく試験することが可能になる。
【0029】
また、遠方監視制御装置20は、運用‐テストの切換スイッチ43T1がテスト側(閉)に切換えられることにより選択リレーPOSおよび制御リレーOP(CL)の制御コモンTCCOMに電気的に接続されるテスト端子232を有する。そのため、被制御所の操作員は、例えば、テスターなどの測定機器を使用して、テスト端子232と選択・制御した電力機器30に対応する端子231間で導通確認を行うことにより、選択リレーPOSおよび制御リレーOP(CL)の接点が閉じたか否かを容易に確認することができる。
【0030】
<実施例>
次に、本実施形態に係る遠方監視制御装置20の実施例について説明する。
【0031】
図4は、本実施例に係る遠方監視制御装置20の要部構成図である。
図4を参照すると、DC分電盤から供給される直流電源は110P端子および110N端子より遠制補助盤に入力され、制御電源スイッチ8Sを通じて、切換スイッチ43Rに供給されると共に、PB端子およびNB端子を通じて被制御装置に入力される。
【0032】
切換スイッチ43Rを経由した直流プラス電源PRは、制御コモンTCCOMとして、上中下段の互いに連動する3つのスイッチから構成される切換スイッチ43Tの上段スイッチを通じて制御リレーOP(CL)の一端側に供給される。CL母線およびOP母線は、制御リレーOP(CL)の他端側と選択リレーPOSの一端側に接続されており、何れか1つの選択リレーPOSと制御リレーOP(CL)の接点が閉じることにより、制御リレーOP(CL)の一端側に供給されている直流プラス電源が、選択された選択リレーPOSに対応するCL041~CL160端子またはOP041~OP160端子を通じて主盤に設けられた操作部に供給されるように構成されている。
【0033】
また、テスト端子TESTは、切換スイッチ43Tの中段スイッチを通じて、制御コモンTCCOMに接続されるようになっている。さらに、切換スイッチ43Tの下段スイッチと、通常‐模擬遠方の切換スイッチ234と、切換スイッチ43Dとを含んで構成される信号生成部233が遠制補助盤に設けられており、被制御装置を経由して直流プラス電源PSが切換スイッチ43Dの一端側に印加されるように構成されている。信号生成部233の表示信号235は、
図4では、表示入力(4群0個)(直接で開)のSR040として扱われている。
【0034】
切換スイッチ43Tの中段スイッチは、
図3の切換スイッチ43T1に相当し、下段スイッチは、
図3の切換スイッチ43T2に相当する。上段スイッチは、中段スイッチがテスト側(閉)のときに開、通常側(開)のときに閉となるスイッチであり、試験中における制御電源の制御リレーへの供給を確実に遮断するために設けられている。
【0035】
図5は、CL160を模擬遠方試験するシーケンスと各ステップにおけるスイッチの状態などを示す図である。図中、★を付した箇所は前ステップからスイッチ状態が変化した箇所を表している。以下、
図4および
図5を参照して、CL160を模擬遠方試験する動作について説明する。
【0036】
<模擬遠方試験開始ステップ>
模擬遠方試験開始時、制御電源スイッチ8Sは開、遠方‐直接の切換スイッチ43Rは閉、切換スイッチ43Dは開、通常‐テストの切換スイッチ43Tの上段スイッチは閉、中段スイッチは開、下段スイッチは閉、模擬遠方スイッチは通常側に、それぞれ切り換っている。
【0037】
<8S入(遠制盤電源)ステップ>
被制御所の操作員が手動で制御電源スイッチ8Sを閉じる。これにより、制御電源が、切換スイッチ43R、切換スイッチ43Tの上段スイッチを通じて制御リレーOP(CL)の一端側に印加され、また被制御装置を通じて切換スイッチ43Dの一端側に印加される。切換スイッチ43Dが開いているので、表示入力SR040は遠方を表している。
【0038】
<43RD(直接)ステップ>
次に、被制御所の操作員が手動で切換スイッチ43Rを開くと、それに連動して切換スイッチ43Dが閉じる。これにより、制御リレーOP(CL)の一端側への制御電源の供給が絶たれる。また、切換スイッチ43Dが閉じることにより、電源PSが切換スイッチ43D、模擬遠方スイッチを通じて表示入力SR040に現れ、表示入力SR040は直接を表すようになる。
【0039】
<43T(試験)>
次に、被制御所の操作員が手動で切換スイッチ43Tの上段スイッチを開くと、それに連動して中段スイッチが閉じ、下段スイッチが開く。中段スイッチが閉じることにより、TEST端子が制御コモンTCCOMに電気的に接続される。また、上段スイッチが開くことにより、制御リレーOP(CL)への制御電源の供給が、開状態の切換スイッチ43Rおよび当該上段スイッチの直列回路により確実に遮断される。
【0040】
<模擬遠方スイッチ(模擬遠方)>
次に、被制御所の操作員が手動で通常‐模擬遠方の切換スイッチを模擬遠方側に切換えると、切換スイッチ43Tの下段スイッチが開いているため、電源PSが表示入力SR040に現れなくなり、遠方(模擬)の信号が制御所に送信されることになる。
【0041】
<制御所よりCL160制御>
次に、制御所の操作員が制御所装置10の制御盤からCL160の制御を行うと、制御信号が制御所装置10から遠方監視制御装置20へ送信される。遠方監視制御装置20の処理部21は、この制御信号を送受信部22経由で受信すると、制御部23中のCL160に対応する選択リレーPOS130の接点を閉じ、また、制御リレーCL1の接点を閉じる制御を行う。このとき、制御リレーCL1の一端側への制御電源の供給は切換スイッチ43R、43Tの上段スイッチの開により絶たれているため、選択リレーPOS130および制御リレーCL1の接点が閉じてもCL160を通じて主盤に制御電源が供給されることはない。そのため、CL160に対応する現場機器は動作しない。
【0042】
<TEST端子とCL160端子間で導通確認>
次に、被制御所の操作員は、例えば、テスターなどの測定機器を使用して、TEST端子とCL160端子間で導通確認を行うことにより、選択リレーPOS130および制御リレーCL1の接点が閉じたか否かを確認する。
【0043】
以上でCL160を模擬遠方試験することができたことになる。CL041等、他の箇所の模擬遠方試験も継続して行う場合、<制御所よりCL160制御>および<TEST端子とCL160端子間で導通確認>と同様なステップを繰り返す。そして、一連の模擬遠方試験を終了した場合、被制御所の操作員は、通常‐模擬遠方の切換スイッチを「模擬遠方」から「通常」に切換えると、表示入力SR040が遠方から直接に変化する。これによって、直接制御盤から現場機器を制御できる状態になる。さらに、被制御所の操作員が、切換スイッチ43Rを閉じると、それに連動して切換スイッチ43Dが開くので表示入力SR040が直接から遠方に変化する。これによって、制御所の制御盤から現場機器を制御できる状態になる。
【0044】
なお、一連の模擬遠方試験の終了後、被制御所の操作員が、切換スイッチ43Tの中段スイッチを運用側(開)に切換えるのを忘れると、上段スイッチが開いたままになる。このような戻し忘れを防止するために、例えば、切換スイッチ43Tの中段スイッチが閉じたときに、表示ポジションの特定ビット(例えばF2ビット(試験ビット))をONにする機構を設けておいてよい。
【0045】
以上、上記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。例えば、上述したCPUの代わりに、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating number Processing Unit)、PPU((Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、遠方監視制御装置の試験全般に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 遠方監視制御システム
10 制御所装置
20 遠方監視制御装置
21 処理部
22 送受信部
23 制御部
30 電力機器
31 操作部
32 送電線
33 遮断器
231 端子
232 テスト端子
233 信号生成部
234 通常‐模擬遠方の切換スイッチ
235 制御所装置からの指令の有効、無効を示す表示信号