(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166631
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】地盤補修工事の地盤強度検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20241122BHJP
G01V 5/00 20240101ALI20241122BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20241122BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01N23/04
G01V5/00 Z
E02D1/00
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082845
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(74)【代理人】
【識別番号】100234305
【弁理士】
【氏名又は名称】合瀬 恵
(72)【発明者】
【氏名】宮寺 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】藤牧 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】中居 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】春口 佳子
(72)【発明者】
【氏名】杉田 宰
(72)【発明者】
【氏名】須賀 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 修治
(72)【発明者】
【氏名】竹葉 紀子
(72)【発明者】
【氏名】野口 恭平
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
2G001
2G105
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040AB03
2D043AA01
2D043AB06
2D043AC03
2G001AA08
2G001BA11
2G001CA08
2G001DA02
2G001DA09
2G001FA04
2G001HA13
2G105AA02
2G105BB19
2G105CC03
2G105DD01
2G105EE02
2G105GG02
2G105LL01
(57)【要約】
【課題】ミュオン検出器により、地盤補修後の地盤強度を解析する。
【解決手段】地盤補修工事の改良体6の地盤強度を解析する地盤強度検査方法において、補修工事を行う区域の地下に設置されたミュオン検出器1を用い、前記地盤補修工事の前後で測定した宇宙線ミュオンの飛来方向分布及び飛来量から地盤強度を解析することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤補修工事の地中の強度を解析する検査方法において、
補修工事を行う区域の地下に設置されたミュオン検出器を用い、
前記地盤補修工事による地盤状態の時間変化に伴う宇宙線ミュオンの飛来方向分布と飛来量の変化を測定し、前記地盤補修工事前の情報と地盤補修工事中、又は地盤補修工事後の情報を組み合わせて解析し、補修後の地盤強度を評価することを特徴とする地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項2】
前記評価は前記地盤補修工事における補修後の地盤強度および改良体の位置、形状、密度、組成であることを特徴とする請求項1記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項3】
前記地盤補修工事は、高圧噴射撹拌工法、又は薬液注入工法、あるいは機械撹拌工法であることを特徴とする請求項1記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項4】
前記ミュオン検出器は、2層以上のドリフトチューブ検出器、2層以上のマルチワイヤ検出器、2層以上のGEM検出器、2層以上のシンチレーション検出器、2層以上の写真乾板、または2層以上のイメージングプレートの何れかである請求項1記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項5】
前記ミュオン検出器は場所をずらして複数設置され、各々の前記ミュオン検出器が宇宙線ミュオンの飛来方向分布を測定し、3次元における地中の密度分布及びその変化を解析または画像化することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項6】
前記ミュオン検出器は、シールド工法で掘削した地下トンネル内に設置されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項7】
前記解析は、地盤補修工事前と地盤補修工事後、または地盤補修工事中の宇宙線ミュオンの飛来方向分布及び飛来個数を測定して行うことを特徴とする請求項1から請求項4記載の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項8】
前記地盤補修工事前の情報は、地上の構造物の位置と密度または組成、地盤補修工事で形成された改良体の位置と密度または組成、周辺のボーリングデータ、地中レーダーにより得られた地下水の位置や土壌密度、比抵抗トモグラフィで得られた帯水層分布、弾性波トモグラフィで得られた密度や土壌硬度、測定中の気温と湿度または気圧、前記ミュオン検出器の視野角内の地上や地中を重量物が移動する情報、およびこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項9】
前記解析は、ミュオンの飛来量の測定値から求めた合計密度長から改良体以外の密度長を引き改良体の密度長を求めることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項10】
前記解析は、得られた宇宙線ミュオンの飛来量もしくは密度長をシミュレーション結果と数値比較または画像比較することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項11】
前記地盤強度は、換算N値または地耐力または地盤硬度であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項記載の地盤補修工事の地盤強度検査方法。
【請求項12】
地盤補修工事の地中の性状を解析する検査装置において、
補修工事を行う区域の地下に設置されたミュオン検出器と、
このミュオン検出器によって計測された宇宙線ミュオンの飛来方向分布及び飛来量の変化を測定し補修後の地盤強度を評価する解析装置から構成されることを特徴とする地盤補修工事の地盤強度検査装置。
【請求項13】
前記ミュオン検出器を前記補修工事を行う区域の地下に複数個所設置し、
前記解析装置は、複数個所で測定した前記ミュオン検出器の視差角を利用して、前記地盤強度を3次元で解析または画像化することを特徴とする請求項12記載の地盤補修工事の地盤強度検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、宇宙線ミュオンを用いた地盤補修工事の地盤強度検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下建設工事において見られるトラブル事例は低平地にできた大都市に多く、均等係数の小さい細砂や大礫などの地盤で発生している。近年でもシールド工事に起因すると思われる地中空洞が発見される事象が発生しており、こうしたトラブル後に行う緩んだ地盤の補修工事として、地上から高圧噴射撹拌工法、薬液注入工法、機械撹拌工法等が知られており、例えば高圧噴射撹拌工法では地下の砂層に空気とセメント系固化材を高圧で噴射しながら土と混合攪拌し、円筒形の改良体を造成する。
【0003】
地盤補修後の地盤硬度、具体的には改良体の換算N値を非破壊で検査する需要が高まっている。N値は地盤の強さを表す指標で、地耐力(kN/m2)の約1/10の値であり、例えば高層マンションの場合、N値50以上で5m以上の層を支持層としている。一般的に砂地盤はN値が高いほど相対密度が高くなり、例えば式1に示すMeyerhofの関係式が知られている。
(数1)
Dr=21√(N/(σv+0.7))・・・(1)
【0004】
ここでDrは相対密度、σvは上位の地盤の荷重により受ける有効上載圧(kgf/cm2)である。
【0005】
地中の検査手法としては、地中レーダー、比抵抗トモグラフィ、弾性波トモグラフィ等が知られているが、地中レーダーは地中での電磁波の散乱および吸収により事実上5m以深の探知には不向きである。また、比抵抗トモグラフィと弾性波トモグラフィは多数のボーリング孔を掘削する必要があるため現実的ではない。
【0006】
一方、物質内部をイメージングする技術として、宇宙線ミュオン等の荷電粒子を使用した透視技術が知られている。宇宙線に起因して発生する宇宙線ミュオンは、非常に高いエネルギーを持ち、X線や他の放射線と比べて透過力が高いため、例えば、火山やピラミッドといった大型構造物等のイメージング手法として用いられている。また、坑道の中にミュオン検出器を設置し、土被り厚によるミュオンのフラックス変化を測定したり、地中に設置したミュオン検出器でミュオンの角度分布を測定することにより、地中のトモグラフィ解析を行う手法も提案されている。
【0007】
宇宙線ミュオン(以下、「ミュオン」ともいう、)は、物質中を徐々にエネルギーを失いながら透過する。ミュオンのエネルギー損失は凡そ対象物の密度長、即ち対象物の密度と厚さの積に比例する。そのため、宇宙線ミュオンの飛来量から測定対象の密度長を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-271059号公報
【特許文献2】特開2002-106291号公報
【特許文献3】特開2011-202356号公報
【特許文献4】国際公開第2011/058911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の検査手法は、いずれも地盤補修工事後の地盤強度検査に適用された例はない。
【0010】
本発明の実施形態は、地盤補修工事による地盤強度を非破壊で解析する検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査方法は、地盤補修工事の地中の性状を解析する検査方法において、補修工事を行う区域の地下に設置されたミュオン検出器を用い、前記地盤補修工事による地盤状態の変化に伴う宇宙線ミュオンの飛来方向分布と飛来量の変化を測定し、前記地盤補修工事前の情報と補修工事後の情報を組み合わせて解析し、補修後の地盤強度を評価することを特徴とする。
【0012】
また、上記実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査装置は、地盤補修工事の地中の性状を解析する検査装置において、補修工事を行う区域の地下に設置されたミュオン検出器と、このミュオン検出器によって計測された宇宙線ミュオンの飛来方向分布及び飛来量の変化を測定し補修後の地盤強度を評価する解析装置から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査方法及び検査装置によれば、ミュオン検出器からなる検査装置を用いたことで、地盤強度及びその変化を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査装置の構成図。
【
図2】第1の実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査方法の説明図。
【
図5】第2の実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る地盤補修工事の検査方法及び地盤強度検査装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
【0016】
第1の実施形態に係る地盤補修工事の検査方法及び検査装置について、
図1及び
図2を参照して説明する。ここで、
図1は第1の実施形態に係る地盤補修工事前の地盤強度検査装置の模式的な構成図であり、
図2は地盤補修工事後の地盤強度検査方法の説明図である。
【0017】
本第1の実施形態に係る地盤補修工事の地盤強度検査装置9は、
図1に示すように、ビルや家屋等の地上構造物5の下方の地中3に緩んだ地盤2があり、シールド工法で掘削されたトンネル4に設置されたミュオン検出器1と解析装置7とから構成されている。
【0018】
ミュオン検出器1は、荷電粒子を粒子単位で測定できるものであればよく、ドリフトチューブ検出器のほか、マルチワイヤ検出器、GEM検出器(ガス電子増幅器:ガス検出器)、シンチレーション検出器、写真乾板またはイメージングプレートなどからなり検出面を少なくとも2層以上有する検出器が適用可能である。検出方式や検出器の外形は問わない。また、1つの検出器で直交する2方向位置を特定できる方式のものも適用可能である。
【0019】
以下、ドリフトチューブ検出器の例を用いてミュオン検出器1の動作と構成を説明する。ミュオン検出器1は、
図3および
図4に示すようにミュオン検出器1内を宇宙線ミュオン11が通過することにより発生した電子が移動するドリフト時間に基づいて、ミュオン検出器1内での通過位置を検出するドリフトチューブ検出器14が用いられる。このミュオン検出器1としてのドリフトチューブ検出器14は、筒体としての円筒管15内の中心位置に、高電圧が印加される芯線16が張設されると共に、円筒管15内に希ガスを主成分とする電離ガスが封入されている。宇宙線ミュオン11がドリフトチューブ検出器14内を通過すると、電離ガスが電離されてイオンと電子に分離される。
【0020】
分離した電子が移動して芯線16に到達したとき、ドリフトチューブ検出器14から検出信号が出力されて、ドリフトチューブ検出器14における宇宙線ミュオン11の通過が検出される。電離ガスの電離により電子が発生する時刻と電子が芯線16に到達する時間(検出信号の発生時刻)とから、電子が発生してから芯線16に移動するまでの移動時間(ドリフト時間)が判明する。このドリフト時間に基づいて芯線16までの電子の移動距離(ドリフト半径)を求めることで、ドリフトチューブ検出器内での宇宙線ミュオン11の通過位置が検出可能になる。
【0021】
宇宙線ミュオン11を検出して検出信号を出力するミュオン検出器1は、
図3及び
図4に示すように、複数本がX方向に配列された層が4層以上(例えば6層)設けられて、宇宙線ミュオン11のX方向位置を検出するX方向算出部20Xを構成すると共に、複数本がX方向に直交するY方向に配置された層が4層以上(例えば6層)設けられて、宇宙線ミュオン11のY方向位置を検出するY方向算出部20Yを構成する。ここで、X方向算出部20Xのミュオン検出器1の層とY方向算出部20Yのミュオン検出器1の層とは、例えば2層毎に交互に配置されている。
【0022】
X方向算出部20Xは、上述の例えば6層の複数本のミュオン検出器1のほか、各ミュオン検出器1にそれぞれが接続された複数個の信号処理回路12と、複数個の信号処理回路12にそれぞれが接続された複数の時刻算出手段13と、を有して構成される。同様に、Y方向算出部20Yは、例えば6層の複数本のミュオン検出器1のほか、各ミュオン検出器1にそれぞれが接続された複数個の信号処理回路12と、複数個の信号処理回路12にそれぞれが接続された複数の時刻算出手段13と、を有して構成される。
【0023】
上述のX方向算出部20X及びY方向算出部20Yをそれぞれ構成するミュオン検出器1、信号処理回路12及び時刻算出手段13は、フレーム17に支持されてミュオンの軌跡を検出するモジュール構造体21を構成する。このモジュール構造体21において、フレーム17の周囲はカバー18に覆われる。このカバー18には、カバー18内で発生した熱を放熱する放熱手段としての放熱窓19が形成されている。なお、上述のモジュール構造体21のミュオン検出器1、信号処理回路12及び時刻算出手段13は、X方向及びY方向に直交するZ方向付近から入射する宇宙線ミュオン11を検出対象とする。
【0024】
フレーム17は、ミュオン検出器1、信号処理回路12及び時刻算出手段13を固定して支持するためのものであり、材質及び形状などは問わない。但し、フレーム17は、荷重による撓みや温度変化による歪などによってもミュオン検出器1の据付時の設置精度を確保し得る程度の剛性などの特性を有する必要がある。
【0025】
このミュオン検出器1によって、宇宙線ミュオン11の物質中の透過率から物質の密度長を評価することができる。
【0026】
このミュオン検出器1は
図2に示すように改良体6の直下に置いても、直下外で改良体6を視野角内に収める場所に置いてもよい。このミュオン検出器1は上部方向から飛来する宇宙線ミュオン11を、視野角αの範囲で予め設定した時間計測する。
【0027】
なお、
図1及び
図2の例では、1台のミュオン検出器1が配置されているが、測定時間を短縮するために2台以上に増やしてもよい。
【0028】
また、解析装置7はミュオン検出器1の近傍に配置してもよいが、トンネル4の外部に配置してもよい。
【0029】
このように構成された地盤補修工事の地盤強度検査装置10において、地盤補修工事により改良体6が
図2に示すように造成された場合を想定する。この場合の地盤補修工事は、高圧噴射撹拌工法、又は薬液注入工法、あるいは機械撹拌工法である。地盤補修工事前に計測した宇宙線ミュオン11の飛来方向分布及び飛来量と、地盤補修工事中、又は地盤補修工事後において測定した宇宙線ミュオン11の飛来方向分布及び飛来量との差分を解析することで改良体以外の構造物の影響を排し改良体の位置と形状、密度、組成を得ることができる。
【0030】
その上で、宇宙線ミュオンの飛来方向分布及び飛来量から得られる密度長を用い、ミュオンの飛来量の測定値から求めた合計密度長から改良体以外の密度長を引き改良体の密度長を求めることによって、改良体6の地盤強度となる地盤硬度の換算N値を解析装置7によって解析することができる。さらに、得られた宇宙線ミュオン11の飛来量もしくは密度長をシミュレーション結果と数値比較または画像比較することもできる。
【0031】
なお、地盤補修工事前の情報としては、地上の構造物の位置と密度または組成、地盤補修工事で形成された改良体の位置と密度または組成のほか、周辺のボーリングデータ、地中レーダーにより得られた地下水の位置や土壌密度、比抵抗トモグラフィで得られた帯水層分布、弾性波トモグラフィで得られた密度や土壌硬度、測定中の気温と湿度または気圧、前記ミュオン検出器の視野角内の地上や地中を重量物が移動する情報、およびこれらの組み合わせである。
【0032】
計測時間については、連続的に計測してもよいが、工事工程上の要所もしくは定期検査のように必要な時に計測してもよい。また、工事前、工事中、工事後の宇宙線ミュオンの飛来方向分布及び飛来量の時間変化を計測解析して、地盤強度及びその変化を随時測定することも可能である。
【0033】
また、ミュオン検出器1は、視野角内の地上や地中3を移動する車両等の重量物による宇宙線ミュオン11の飛来方向分布および飛来量の変化を除外又は較正し、地中3の性状及びその変化を解析することも可能である。
【0034】
以上説明したように、本第1の実施形態の地下工事の地盤強度検査方法及び検査装置によれば、ビルや家屋等の地上構造物5、地中3の下水管等の地中構造物、地中3に存在する空洞、地下水脈等の宇宙線ミュオン11の測定値に影響を与える構造物があっても、地盤補修工事前後の宇宙線ミュオンの測定値の差分を見ることでこれらの影響を排除しながら、地盤補修工事で造成した改良体6の位置と形状を測定でき、更には宇宙線ミュオン11の飛来量から地盤強度として換算N値の評価が可能となり、その後の工事工程等において適切な工事を実施することができる。なお、この地盤強度として換算N値のほか地耐力または宇宙線ミュオンの測定値による地盤の組成および密度によってもとめられる地盤硬度を採用してよいことは勿論である。
[第2の実施形態]
【0035】
第2の実施形態に係る地盤補修工事の検査方法及び検査装置について、
図5を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様又は類似の構成については、同一の符号を付し重複説明を省略する。
【0036】
本第2の実施形態では、
図5に示すように、地盤補修工事の検査装置30はトンネル4の内部にミュオン検出器1aとミュオン検出器1bの場所をずらして2台設置している。このミュオン検出器1a及びミュオン検出器1bは、改良体6の直下に置いても、直下外で改良体6を視野角内に収める場所に置いてもよい。また、ミュオン検出器1を1台で運用し、地盤状態の時間変化の影響を受けない範囲で、それぞれの場所をずらした位置での宇宙線ミュオ11ンを測定してもよい。
【0037】
作用効果は上記第1の実施形態と同様であるが、複数台のミュオン検出器1の視差を利用して、地中を3次元的に解析できる。これにより、地中における改良体6の密度分布、換算N値の分布及びその変化を広範囲に解析し、分布ごとに色分け等して画像化することができる。
【0038】
なお、トンネル4の内部に配置するミュオン検出器1a、1bの台数及び測定位置は限定されず、適宜増減可能であり、適宜位置を決められた場所に変更することもできる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1、1a~1b…ミュオン検出器、2…緩んだ地盤、3…地中、4…トンネル、5…地上構造物、6…改良体、7…解析装置、9,10,30…地盤補修工事の検査装置、11…宇宙線ミュオン、12…信号処理回路、13…時刻算出手段、14…ドリフトチューブ検出器、15…円筒管、16…芯線、17…フレーム、18…カバー、19…放熱窓、20X…X方向算出部、20Y…Y方向算出部、21…モジュール構造体。