(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166632
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 27/00 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
B65H27/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082846
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅教
【テーマコード(参考)】
3F104
【Fターム(参考)】
3F104AA05
3F104FA01
3F104FA19
3F104JA03
3F104JB01
3F104JB05
3F104KA11
(57)【要約】
【課題】タブ付きのシートのタブの起き上がりを簡易な構成で抑制する。
【解決手段】シート搬送装置は、シート1が巻き掛けられるガイドロール20を備える。シート1は、幅方向の少なくとも一方の端部2Rに長手方向に沿って間欠的に設けられた複数のタブ4を備える。複数のタブ4は、それぞれ端部2Rよりも幅方向に突出している。ガイドロール20は、円筒状のロール本体部21と、ロール本体部21に対してシート1の幅方向の外側に接続された小径部22と、を備える。ロール本体部21は、端部2Rの搬送経路よりもシート1の幅方向の中央寄りに配置されている。ロール本体部21には、シート1のうち端部2Rよりも幅方向の中央寄り部分が巻き掛けられる。小径部22は、ロール本体部21に対して段差23を介して接続され、ロール本体部21よりも外径が小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のシートを長手方向に搬送するシート搬送装置であって、
前記シートの搬送経路に配置されるとともに前記シートの幅方向に延び、前記シートが巻き掛けられるガイドロールを備え、
前記シートは、前記幅方向の少なくとも一方の端部に前記長手方向に沿って間欠的に設けられ、それぞれ前記端部よりも前記幅方向に突出した複数のタブを備え、
前記ガイドロールは、
前記シートの前記複数のタブが形成された端部の搬送経路よりも前記幅方向の中央寄りに配置され、前記シートのうち当該端部よりも前記幅方向の中央寄り部分が巻き掛けられる円筒状のロール本体部と、
前記ロール本体部に対して前記幅方向の外側に段差を介して接続され、前記ロール本体部よりも外径が小さい小径部と、を備えている、
シート搬送装置。
【請求項2】
前記ロール本体部は、前記シートの前記複数のタブが形成された端部の搬送経路よりも、1mm以上、前記幅方向の中央寄りに配置されている、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記小径部は、円筒状に構成されており、その半径は、前記ロール本体部の半径よりも0.5mm以上小さい、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記ロール本体部の直径は、前記シートの前記長手方向に関する前記タブの長さよりも短い、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記ロール本体部には、80度以上の抱き角で前記シートが巻き掛けられる、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記シートの前記幅方向の位置を検出するセンサを備え、前記センサによって検出された前記シートの位置に基づいて前記シートの前記幅方向の位置を修正する蛇行修正装置をさらに備えている、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記シートは、金属製の集電箔に電極活物質層が形成された、蓄電デバイスの電極シートである、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、活物質を含む合材が塗工された電極シートを加熱しながら搬送する加熱搬送炉が開示されている。特許文献1に記載された加熱搬送炉において、電極シートは、複数の凹凸ロールの間をジグザグに屈曲させられて搬送される。各凹凸ロールは、小径部と、小径部の両端に位置する大径部と、を備えている。特許文献1によれば、電極シートの両側縁が大径部により伸ばされるため、搬送後のプレス工程で合材の塗工部がプレスされ伸ばされても、両側縁にシワが発生することを抑制できる、とされている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、電極板の材料を搬送する搬送装置が開示されている。上記電極板の材料は、幅方向の端部から突出した複数のタブを有する金属板である。特許文献2に記載の搬送装置は、上下に対となった搬送ローラによって金属板を搬送する。特許文献2に記載の搬送装置は、タブの下方への垂れ下がりやばたつきを防止して、タブが搬送ローラに巻き込まれることを防止するガイド手段を備えている。
【0004】
例えば特許文献3には、タブを有する電極シートを巻回する巻回装置が開示されている。特許文献3によれば、電極シートを巻回して平らな状態から湾曲した状態に変化させると、タブの折れ曲がりや立ち上がりが起きやすい、とされている。特許文献3に記載の巻回装置は、タブにエアを吹きつけることにより、タブに巻芯の回転軸側に向けた力を付与し、タブの折れ曲がりや立ち上がりを抑制するブロー機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-228349号公報
【特許文献2】特開2016-219329号公報
【特許文献3】特開2021-086698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているような、シートをガイドロールに巻き掛けて搬送経路を屈曲させるシート搬送装置でタブ付きのシートを搬送する場合にも、特許文献3に記載されているようなタブの起き上がりが発生する可能性がある。特許文献3に記載されているようなブロー機構を設ければ、タブの起き上がりは抑制できると考えられる。ただし、その場合、シート搬送装置の構成が複雑化する。ここでは、シートをガイドロールに巻き掛けて搬送経路を屈曲させるシート搬送装置であって、タブ付きのシートを搬送したときのタブの起き上がりをより簡易な構成で抑制できるシート搬送装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示されるシート搬送装置は、帯状のシートを長手方向に搬送するシート搬送装置であって、前記シートの搬送経路に配置されるとともに前記シートの幅方向に延び、前記シートが巻き掛けられるガイドロールを備えている。前記シートは、前記幅方向の少なくとも一方の端部に前記長手方向に沿って間欠的に設けられた複数のタブを備えている。前記複数のタブは、それぞれ前記端部よりも前記幅方向に突出している。前記ガイドロールは、円筒状のロール本体部と、前記ロール本体部に対して前記幅方向の外側に接続された小径部と、を備えている。前記ロール本体部は、前記シートの前記複数のタブが形成された端部の搬送経路よりも前記幅方向の中央寄りに配置されている。前記ロール本体部には、前記シートのうち当該端部よりも前記幅方向の中央寄り部分が巻き掛けられる。前記小径部は、前記ロール本体部に対して段差を介して接続され、前記ロール本体部よりも外径が小さい。
【0008】
上記シート搬送装置によれば、後述する理由により、複数のタブを備えたシートを搬送したときのタブの起き上がりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】従来のガイドロールの模式的な斜視図である。
【
図4】従来のシート搬送装置におけるタブの長さおよびガイドロールの直径とタブの起き上がりとの関係を示すグラフである。
【
図5】シート搬送装置におけるタブの長さおよびガイドロールの直径とタブの起き上がりとの関係を示すグラフである。
【
図6】従来のシート搬送装置における抱き角とタブの起き上がりとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、シート搬送装置の一実施形態を説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも実際の実施品が忠実に反映されたものではない。
【0011】
[シート搬送装置の構成]
図1は、一実施形態に係るシート搬送装置10の模式的な側面図である。シート搬送装置10は、帯状のシート1を長手方向に搬送するものである。好適な一例では、シート1は、金属製の集電箔2に電極活物質層3が形成された、蓄電デバイスの電極シート1である(
図2参照)。電極シート1は、ここでは、リチウムイオン二次電池の電極シート1である。ただし、シート搬送装置10によって搬送されるシートは、リチウムイオン二次電池の電極シート1には限定されず、公知の各種蓄電デバイスの電極シートであってもよい。または、シート搬送装置10によって搬送されるシートは、蓄電デバイスの電極シートでなくてもよい。なお、ここでの蓄電デバイスとは、電気エネルギーを取り出し可能なデバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する。
【0012】
電極シート1は、帯状の集電箔2の表面に電極活物質層3が形成されたものである。電極シート1が正極シートの場合、集電箔2は、例えば、アルミニウム箔である。電極シート1が正極シートの場合、電極活物質層3は、正極活物質を含んでいる。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。電極シート1が負極シートの場合、集電箔2は、例えば、銅箔である。電極シート1が負極シートの場合、電極活物質層3は、負極活物質を含んでいる。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。集電箔2の材料および電極活物質は、上記した材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。
【0013】
図2は、シート搬送装置10において電極シート1が巻き掛けられるガイドロール20の模式的な斜視図である。
図2に示すように、電極活物質層3は、電極シート1(詳しくは、集電箔2)の幅方向の両端部2Lおよび2Rの間の部分に形成されている。ここでは、電極活物質層3は、集電箔2の幅方向の両端部2Lおよび2Rの間の全幅にわたって形成されている。ただし、電極活物質層3は、集電箔2の幅方向の両端部2Lおよび2Rの間の一部に形成されていてもよい。その場合、電極シート1は、電極活物質層3が形成されず集電箔2が露出した未形成部を有する。
図2に示すように、電極シート1は、幅方向の一方の端部2Rに設けられた複数のタブ4を備えている。複数のタブ4は、電極シート1の長手方向に沿って間欠的に設けられている。ここでは、複数のタブ4は、電極シート1の幅方向の一方の端部2Rに沿って設けられている。他方の端部2Lには、タブ4は設けられていない。ただし、タブ4は、電極シート1の幅方向の両方の端部2Rおよび2Lに沿って設けられていてもよい。
図2に示すように、複数のタブ4は、それぞれ、電極シート1の端部2Rよりも、電極シート1の幅方向に突出している。
【0014】
図1に示すように、シート搬送装置10は、電極シート1の搬送経路に配置された複数のガイドロール20を備えている。ただし、ガイドロール20の数は1つであってもよい。
図2に示すように、複数のガイドロール20は、それぞれ電極シート1の幅方向に延びている。電極シート1の幅方向に関する各ガイドロール20の長さは、電極シート1の幅よりも長い。各ガイドロール20には、電極シート1が巻き掛けられる。電極シート1の搬送経路は、各ガイドロール20において屈曲され、複数回方向が変わっている。ガイドロール20に巻き掛けられることにより、電極シート1には張力が付与される。シート搬送装置10は、電極シート1を送る図示しない駆動装置を備えている。駆動装置は、例えば、電極シート1を挟持して回転する一対のニップローラである。
【0015】
図2に示すように、本実施形態では、各ガイドロール20は、円筒状のロール本体部21と、ロール本体部21に対して電極シート1の幅方向の外側に接続された小径部22と、を備えている。小径部22の外径は、ロール本体部21の外径よりも小さい。本実施形態では、小径部22はロール本体部21と同心の円筒状に構成されており、
図1に示すように、小径部22の半径R2は、ロール本体部21の半径R1よりも小さい。小径部22は、ロール本体部21に対して段差23を介して接続されている。ロール本体部21と小径部22との境界は、段差23を構成している。
【0016】
段差23は、ここでは、ロール本体部21の外周面に直交するように延びている。段差23の高さH1は、ロール本体部21の半径R1と小径部22の半径R2との差に相当する。本実施形態では、段差23の高さH1は、ガイドロール20の周方向の位置によらず一定である。ただし、段差23の高さH1は、ガイドロール20の周方向の位置により変化してもよい。例えば、小径部22は、断面が非円形であってもよい。小径部22および段差23は、タブ4が電極シート1の両端部2R、2Lに形成されている場合には、ロール本体部21の両側に設けられる。
【0017】
図2に示すように、ロール本体部21は、複数のタブ4が形成された電極シート1の端部2Rの搬送経路よりも電極シート1の幅方向の中央寄りに配置されている。電極シート1は、端部2Rがロール本体部21よりも(ロール本体部21と小径部22との境界である段差23よりも)幅方向の外側を通るように搬送される。ロール本体部21には、電極シート1のうち、端部2Rよりも幅方向の中央寄り部分が巻き掛けられる。電極シート1のうち、端部2Rから幅方向内方に所定距離W1内の部分、および、複数のタブ4は、他の部分がロール本体部21に巻き掛けられた状態においても、ガイドロール20に巻き掛けられることなく宙に浮く。
【0018】
ロール本体部21と小径部22とは、ここでは、一体に形成されている。ただし、ロール本体部21と小径部22とは、別部品として構成されていてもよい。ロール本体部21と小径部22とは、一体となって電極シート1の搬送方向に回転する。
図2に示すように、ガイドロール20は、小径部22に接続されるとともに、小径部22よりも幅方向の外方に延びる支軸24を備えている。支軸24は、電極シート1の幅方向に延びている。支軸24は、図示しないベアリングによって、電極シート1の搬送方向に回転可能に支持されている。支軸24は、ロール本体部21および小径部22を電極シート1の搬送方向に回転可能に支持する回転軸であってもよい。
【0019】
図1に示すように、シート搬送装置10は、電極シート1の幅方向の位置を修正する蛇行修正装置30をさらに備えている。蛇行修正装置30は、電極シート1の幅方向の位置を検出するセンサ31を備えている。センサ31は、例えば、端部2Rまたは2Lの位置を検出するカメラである。ただし、センサ31の構成は特に限定されない。蛇行修正装置30は、センサ31によって検出された電極シート1の位置に基づいて、電極シート1の幅方向の位置を修正する。ここでは、蛇行修正装置30は、電極シート1の搬送経路に並んで配置された一対のガイドロール20を連動して傾ける傾動装置32を備えている。傾動装置32は、端部2R側を下げるか、または、端部2L側を下げるように一対のガイドロール20を連動して傾ける。これにより、電極シート1の幅方向の位置が修正される。電極シート1の幅方向の位置ずれが抑制されることにより、電極シート1は、端部2Rがロール本体部21の外側を通る所定の搬送経路に沿って搬送される。なお、蛇行修正装置30によっても電極シート1の幅方向の位置が僅かに(例えば、0.1mm程度)ずれていることもあり得、そのため、電極シート1の端部2Rとロール本体部21との間の距離W1は、電極シート1の幅方向の位置ずれの最大値よりも長く設定されている。
【0020】
[タブの起き上がりの理由]
特許文献3に記載されているように、電極シートのようなタブ付きのシートをロールに巻き掛け、平らな状態から湾曲した状態に変化させると、ロールの径方向外方へのタブの起き上がりが発生しやすいことが知られている。本願発明者の知見によれば、タブの起き上がりが発生する理由は以下のようなものである。
【0021】
電極シート1が全幅にわたってガイドロール120に巻き掛けられる従来のガイドロール120の構成を
図3に示す。
図3に示すように、従来のガイドロール120では、小径部は設けられず、小径部が設けられたとしても、電極シート1は、全幅にわたってロール本体部121に巻き掛けられる。従来のガイドロール120では、電極シート1の幅方向に関するロール本体部121の長さは、電極シート1の幅よりも長い。
図3に示すように、タブ4の根元の電極シート1がガイドロール120に巻き掛けられている間、当該タブ4には、ガイドロール120の径方向外向きの慣性力(遠心力)F1が作用する。この慣性力F1に起因して、タブ4は、ガイドロール120の径方向外方に起き上がる。慣性力F1自体がタブ4を折り曲げるほど大きくなくても、タブ4は、慣性力F1により、ガイドロール120の径方向外方に向かって僅かに変形する。電極シート1がガイドロール120に巻き掛けられる部分の張力により、タブ4には電極シート1の幅方向内側方向の引っ張り応力が働き、タブ4は電極シート1の幅方向内側方向に収縮しようとする。このとき、タブ4がガイドロール120の径方向外方に向かって僅かに変形していると、タブ4のガイドロール120の径方向外方の面により強い引張り応力が働く。これにより、タブ4はガイドロール120の径方向外方に反り上がる。
【0022】
[タブの起き上がりが抑制される理由]
本実施形態に係るシート搬送装置10では、
図2に示すように、電極シート1のうち、ロール本体部21に巻き掛けられる部分の張力による伸びE1は、浮いている部分、例えば、端部2R付近の伸びE2よりも大きくなる。この伸びの差により、タブ4は、ガイドロール120の径方向内方に向かって僅かに倒れる。本実施形態でも、電極シート1がガイドロール120に巻き掛けられる部分の張力により、タブ4には電極シート1の幅方向内側方向の引っ張り応力が働く。タブ4は、電極シート1の幅方向内側方向に収縮しようとする。本実施形態では、タブ4は、伸びE1とE2との差により、ガイドロール120の径方向内方に向かって僅かに変形している。そのため、タブ4のガイドロール120の径方向内方の面により強い引張り応力が働き、タブ4はガイドロール120の径方向内方に倒れようとする。しかし、タブ4は小径部22により支持され、その変形は抑制される。タブ4は、ガイドロール120の径方向外方にも内方にも反り返らない。従来のガイドロール120では、
図3に示すように、電極シート1の伸びE3には、幅方向の位置による差が生じない。そのため、従来のガイドロール120では、上記したようなタブ4の起き上がり防止効果が奏されない。
【0023】
[ガイドロールの好適な形状]
以下では、ガイドロール20の好適な形状について説明する。
図4は、従来のシート搬送装置におけるタブ4の長さL1(
図3参照)およびガイドロール120の直径D1(
図3参照)とタブ4の起き上がりとの関係を示すグラフである。タブ4の長さL1は、電極シート1の長手方向に関するタブ4の長さである。
図4のグラフにおける「〇」は、従来のシート搬送装置において、タブ4の起き上がりが発生しなかった条件を示している。
図4のグラフにおける「×」は、タブ4の起き上がりが発生した条件を示している。なお、「×」の条件においては、タブ4の起き上がりが多数発生した。
図4に示すように、ガイドロール120の直径D1(
図3参照)よりもタブ4の長手方向の長さL1(
図3参照)が長い場合に、タブ4の起き上がりが発生しやすい。
【0024】
図5は、本実施形態に係るシート搬送装置10におけるタブ4の長さL1およびガイドロール120の直径D1とタブ4の起き上がりとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、本実施形態に係るシート搬送装置10では、
図4において結果が「×」であった条件の結果が「〇」に改善している。本実施形態では、ガイドロール120の直径D1よりもタブ4の長手方向の長さL1が長い場合でも、タブ4の起き上がりがほとんど発生しない。
図4および
図5に示すように、本実施形態に係るガイドロール20は、ロール本体部21の直径D1が電極シート1の長手方向に関するタブ4の長さL1よりも短い場合に、特に効果を奏する。
【0025】
図6は、従来のシート搬送装置における抱き角θとタブ4の起き上がりとの関係を示すグラフである。抱き角θは、
図3に示すように(
図1も参照)、ガイドロール120に電極シート1が巻き掛けられている部分の角度である。
図6のグラフG1は、従来のシート搬送装置においてガイドロール120の直径D1をタブ4の長さL1よりも小さくした場合の抱き角θとタブ4の起き上がりとの関係を示している。グラフG2は、従来のシート搬送装置においてガイドロール120の直径D1をタブ4の長さL1よりも大きくした場合の抱き角θとタブ4の起き上がりとの関係を示している。グラフG3は、従来のシート搬送装置においてガイドロール120の直径D1をグラフG2の場合よりもさらに大きくした場合の抱き角θとタブ4の起き上がりとの関係を示している。
図6に示すように、従来のシート搬送装置においては、ガイドロール120の直径D1がどのような寸法である場合でも、抱き角θ(
図3参照)が80度以上となるとタブ4の起き上がりの発生率が高くなる。従って、本実施形態に係るガイドロール20は、ロール本体部21に80度以上の抱き角θで電極シート1が巻き掛けられる場合に、特に効果を奏する。なお、抱き角が80度を下回るガイドロールを有するシート搬送装置は、実際の電極シート1の搬送では稀である。
【0026】
さらに、本願発明者の知見によれば、ロール本体部21は、複数のタブ4が形成された電極シート1の端部2Rの搬送経路よりも、1mm以上、電極シート1幅方向の中央寄りに配置されることが好ましい。すなわち、
図2の距離W1が1mm以上であることが好ましい。かかる配置によれば、電極シート1の端部2Rから中央方向に1mmの部分までは少なくとも宙に浮く。電極シート1の浮いた部分が1mm以上あれば、タブ4は、ロール本体部21に巻き掛けられた部分の伸びE1と宙に浮いた部分の伸びE2との差により、ガイドロール120の径方向内方に倒れやすくなる。よって、かかる構成により、タブ4の起き上がりをより確実に抑制することができる。
【0027】
本実施形態に係るシート搬送装置10は、電極シート1の幅方向の位置を検出するセンサ31を備え、センサ31によって検出された電極シート1の位置に基づいて電極シート1の幅方向の位置を修正する蛇行修正装置30を備えている。蛇行修正装置30がない場合、電極シート1の端部2Rとロール本体部21との間の距離W1を一定に保つことができず、電極シート1の端部2Rはロール本体部21よりも内方を通り得る。蛇行修正装置30を設けることにより、電極シート1の幅方向の位置ずれを抑えることができ、その結果、電極シート1の端部2Rをロール本体部21よりも外方の適切な位置に確実に位置付けることができる。
【0028】
なお、ロール本体部21と電極シート1の端部2Rとの距離W1が長過ぎると、電極シート1のタブ4およびその根元部分がガイドロール20の径方向内方に曲げられ、電極シート1の段差23に接する位置に痕跡が残るおそれがある。そのため、ロール本体部21と電極シート1の端部2Rとの距離W1は、2mm以下が好ましい。
【0029】
本願発明者の知見によれば、小径部22の半径R2は、ロール本体部21の半径R1よりも0.5mm以上小さいことが好ましい。すなわち、段差23の高さH1は、0.5mm以上であることが好ましい。かかる構成によれば、タブ4がガイドロール20の径方向内方に倒れるための空間が生まれる。よって、かかる構成によれば、タブ4の起き上がりをより確実に抑制することができる。ロール本体部21の半径R1と小径部22の半径R2との差(段差23の高さH1)は、好適には、1mm以下である。ガイドロール20の強度を確保する観点から、小径部22の半径R2は、ロール本体部21の半径R1よりも小さ過ぎないことが好ましい。
【0030】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るシート搬送装置10が奏することのできる作用効果について説明する。
【0031】
本実施形態に係るシート搬送装置10は、帯状の電極シート1を長手方向に搬送するシート搬送装置であって、電極シート1の搬送経路に配置されるとともに電極シート1の幅方向に延び、電極シート1が巻き掛けられるガイドロール20を備えている。電極シート1は、その幅方向の少なくとも一方の端部2Rに長手方向に沿って間欠的に設けられた複数のタブ4を備えている。複数のタブ4は、それぞれ端部2Rよりも電極シート1の幅方向に突出している。ガイドロール20は、円筒状のロール本体部21と、ロール本体部21に対して電極シート1の幅方向の外側に接続された小径部22と、を備えている。ロール本体部21は、複数のタブ4が形成された電極シート1の端部2Rの搬送経路よりも電極シート1の幅方向の中央寄りに配置されている。ロール本体部21には、電極シート1のうち端部2Rよりも幅方向の中央寄り部分が巻き掛けられる。小径部22は、ロール本体部21に対して段差23を介して接続され、ロール本体部21よりも外径が小さい。
【0032】
かかるシート搬送装置10によれば、前述した理由により、タブ4の起き上がりを抑制できる。かかるシート搬送装置10では、特許文献3に記載されたブロー機構のような特別な構成を設けないため、より簡易な構成で、これを実現することができる。また、かかるシート搬送装置10では、特許文献2に記載されたガイド手段のような部材も設けない。そのため、タブ4がガイド手段と擦れて損傷するおそれを低減することもできる。
【0033】
電極シート1の幅方向に関するロール本体部21と電極シート1の端部2Rとの距離W1、および、段差23の高さH1の好適な範囲と、これらを好適な範囲内とすることによって奏される作用効果とは、前述した通りである。本実施形態に係るシート搬送装置10が特に作用効果を発揮するロール本体部21の直径D1および抱き角θの範囲も前述の通りである。蛇行修正装置30が奏することのできる作用効果も前述した通りである。
【0034】
[他の実施形態]
以上、ここで提案されるシート搬送装置の一実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は一例に過ぎず、他の態様で実施することもできる。例えば、上記した実施形態では、段差23は、ロール本体部21の外周面に直交するように延びていた。しかし、段差は、タブがガイドロールの径方向内方に倒れることを阻害しない限りにおいて、ロール本体部の外周面に斜交するようにテーパ状に延びていてもよい。また、段差の断面形状は真っ直ぐでなくてもよく、例えば、シートの幅方向内方にえぐれた形状であってもよい。
【0035】
例えば、一部のガイドロールには、電極シートの端部よりも幅方向内方に位置するロール本体部、および、小径部を設けなくてもよい。ここに開示した技術は、シート搬送装置の全てのガイドロールに適用されなくてもよい。
【0036】
上記した実施形態では、シート搬送装置10によって搬送されるのは、電極活物質層3とタブ4とが形成された電極シート1であった。しかし、シート搬送装置は、電極活物質層が形成されていない電極シートを搬送するものであってもよい。
【0037】
その他、上記した実施形態は、特に言及された場合を除いて本発明を限定しない。また、ここで開示される技術は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされ得る。
【0038】
本明細書は、以下の各項に記載の開示を含んでいる。
【0039】
項1:
帯状のシートを長手方向に搬送するシート搬送装置であって、
前記シートの搬送経路に配置されるとともに前記シートの幅方向に延び、前記シートが巻き掛けられるガイドロールを備え、
前記シートは、前記幅方向の少なくとも一方の端部に前記長手方向に沿って間欠的に設けられ、それぞれ前記端部よりも前記幅方向に突出した複数のタブを備え、
前記ガイドロールは、
前記シートの前記複数のタブが形成された端部の搬送経路よりも前記幅方向の中央寄りに配置され、前記シートのうち当該端部よりも前記幅方向の中央寄り部分が巻き掛けられる円筒状のロール本体部と、
前記ロール本体部に対して前記幅方向の外側に段差を介して接続され、前記ロール本体部よりも外径が小さい小径部と、を備えている、
シート搬送装置。
【0040】
項2:
前記ロール本体部は、前記シートの前記複数のタブが形成された端部の搬送経路よりも、1mm以上、前記幅方向の中央寄りに配置されている、
項1に記載のシート搬送装置。
【0041】
項3:
前記小径部は、円筒状に構成されており、その半径は、前記ロール本体部の半径よりも0.5mm以上小さい、
項1または2に記載のシート搬送装置。
【0042】
項4:
前記ロール本体部の直径は、前記シートの前記長手方向に関する前記タブの長さよりも短い、
項1~3のいずれか一つに記載のシート搬送装置。
【0043】
項5:
前記ロール本体部には、80度以上の抱き角で前記シートが巻き掛けられる、
項1~4のいずれか一つに記載のシート搬送装置。
【0044】
項6:
前記シートの前記幅方向の位置を検出するセンサを備え、前記センサによって検出された前記シートの位置に基づいて前記シートの前記幅方向の位置を修正する蛇行修正装置をさらに備えている、
項1~5のいずれか一つに記載のシート搬送装置。
【0045】
項7:
前記シートは、金属製の集電箔に電極活物質層が形成された、蓄電デバイスの電極シートである、
項1~6のいずれか一つに記載のシート搬送装置。
【符号の説明】
【0046】
1 電極シート(シート)
2 集電箔
2L 端部
2R タブが設けられた端部
3 電極活物質層
4 タブ
10 シート搬送装置
20 ガイドロール
21 ロール本体部
22 小径部
23 段差
24 支軸
30 蛇行修正装置
31 センサ
32 傾動装置
D1 ロール本体部の直径
R1 ロール本体部の半径
R2 小径部の半径
W1 ロール本体部と電極シート端部との距離
θ 抱き角