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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166642
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 12/06 20210101AFI20241122BHJP
   F24H 15/464 20220101ALI20241122BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20241122BHJP
   H04M 1/72412 20210101ALI20241122BHJP
   H04W 12/63 20210101ALI20241122BHJP
   H04W 52/38 20090101ALI20241122BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241122BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20241122BHJP
【FI】
H04W12/06
F24H15/464
H04M1/00 U
H04M1/72412
H04W12/63
H04W52/38
H04W84/10 110
F24H1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082858
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕史
【テーマコード(参考)】
3L122
5K067
5K127
【Fターム(参考)】
3L122BA42
3L122DA16
3L122EA09
3L122GA08
3L122GA12
5K067AA34
5K067DD11
5K067EE02
5K067JJ54
5K127AA36
5K127BA03
5K127BB22
5K127BB33
5K127DA15
5K127GD16
5K127HA09
5K127JA23
(57)【要約】
【課題】パスコード入力を伴わないペアリングによる給湯装置との近距離無線通信におけるセキュリティ性および利便性の両立を図る。
【解決手段】給湯装置100は、携帯通信端末30等の外部機器との間で、通信接続の確立に応じて自動的に接続先の外部機器を認証する態様で、近距離無線通信を実行する。給湯装置100からの近距離無線通信の送信出力は、外部機器との通信接続の確立前第1出力に設定され、外部機器との通信接続が確立されると第1出力から第2出力に上昇される。さらに、給湯装置100からの近距離無線通信の送信出力は、一旦通信接続された外部機器との通信接続が切断されると、基準時間が経過するまでの間は第2出力に維持されて当該外部機器との再接続を待機する一方で、基準時間が経過しても再接続されない場合には第2出力から第1出力に低下される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器との間の近距離無線通信のための通信部と、
前記通信部による前記近距離無線通信の送信出力を制御する制御部とを備え、
前記通信部は、前記近距離無線通信の通信接続の確立に応じて自動的に接続先の前記外部機器を認証するように構成され、
前記制御部は、前記外部機器との通信接続の確立前は前記送信出力を第1出力とする一方で、前記外部機器との通信接続が確立されると前記送信出力を前記第1出力から第2出力に上昇し、さらに、
一旦通信接続された前記外部機器との通信接続が切断されると、基準時間が経過するまでの間は前記送信出力を前記第2出力に維持して当該外部機器との再接続を待機する一方で、前記基準時間が経過しても前記再接続されない場合には、前記送信出力を前記第2出力から前記第1出力に低下する、給湯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通信部の初期化処理において、前記送信出力を前記第1出力に設定する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記近距離無線通信における受信電波強度を検出する検出部を含み、
前記制御部は、一旦通信接続された前記外部機器との通信接続が切断される直前での前記受信電波強度に応じて、前記受信電波強度が高いと前記基準時間が短くなるように、前記基準時間を可変に設定する、請求項1記載の給湯装置。
【請求項4】
前記外部機器は、携帯通信端末であり、
前記携帯通信端末は、所定のアプリケーションソフトが起動されると、前記通信部からの前記近距離無線通信の送信信号の受信に応じて、前記給湯装置に対する通信接続要求を出力するように構成され、
前記通信部は、前記通信接続要求の受信に応じて、当該通信接続要求を出力した前記携帯通信端末との前記通信接続を確立する、請求項1~3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給湯装置に関し、より特定的には、近距離無線通信機能を有する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器等の厨房機器と、携帯端末と、給湯リモコンと、サーバとを備えた通信システムにおいて、加熱調理器と、携帯端末および給湯リモコンとの間でBluetooth(登録商標)方式による通信(BT通信)を行うとともに、給湯リモコンがWiFi(登録商標)方式による通信(Wi-Fi通信)を実行してインターネット経由でサーバに通信接続する構成が、特開2020-112319号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
特許文献1には、上記通信システムにおいて、給湯リモコンおよび加熱調理器の間でBT通信が確立されている場合に、サーバに格納されたレシピデータが、中継装置として動作する給湯リモコンを経由して、加熱調理器に送信されることが記載される。又、給湯リモコンの代わりに、加熱調理器の近傍に配置される機器、例えばレンジフードを、中継装置として使用してもよいことが記載されている。
【0004】
また、特開2013-157896号公報(特許文献2)には、予めペアリングされた複数の電子機器との近距離無線通信において、ペアリング時の電波強度に基づいて再接続の順序を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-112319号公報
【特許文献2】特開2013-157896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近距離無線通信は、ペアリングされた機器間で実行されることが一般的である。しかしながら、給湯装置本体については、給湯装置のリモコンとは異なり、文字等の情報を表示するためのユーザインターフェイスが乏しいことが一般的である。このため、給湯装置本体と外部機器との間で近距離無線通信する際には、ワンタイムパスコードを用いたペアリングを行うことが困難である。
【0007】
一方で、パスコードを用いないペアリングによって、給湯装置本体と外部機器とを通信接続する態様では、電波が届く範囲内の電子機器が給湯装置と通信接続可能となるため、セキュリティ性が懸念される。
【0008】
しかしながら、セキュリティ性を考慮して給湯装置から電波が届く範囲を狭くすると、給湯装置本体との通信接続を伴った配設作業等の際に、外部機器の移動等に伴い一旦確立された通信接続が頻繁に切断されることによる利便性の低下が懸念される。一方で、通信接続の確立前後の間で、電波が届く範囲を単純に切り替える制御としても、通信接続が切断された後に再接続する際に、利便性が低下することが懸念される。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、パスコード入力を伴わないペアリングによる給湯装置との近距離無線通信におけるセキュリティ性および利便性の両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面では、給湯装置は、外部機器との間の近距離無線通信のための通信部と、通信部による前記近距離無線通信の送信出力を制御する制御部とを備える。通信部は、前記近距離無線通信の通信接続の確立に応じて自動的に接続先の前記外部機器を認証するように構成される。制御部は、前記外部機器との通信接続の確立前は前記送信出力を第1出力とする一方で、前記外部機器との通信接続が確立されると前記送信出力を前記第1出力から第2出力に上昇する。さらに、制御部は、一旦通信接続された前記外部機器との通信接続が切断されると、基準時間が経過するまでの間は前記送信出力を前記第2出力に維持して当該外部機器との再接続を待機する一方で、前記基準時間が経過しても前記再接続されない場合には、前記送信出力を前記第2出力から前記第1出力に低下する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パスコード入力を伴わないペアリングによる給湯装置との近距離無線通信において、近距離無線通信の送信出力の制御によってセキュリティ性および利便性の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る給湯装置と外部機器との通信接続態様を説明する概念図である。
図2】本実施の形態に係る給湯装置の通信のための構成を説明するブロック図である。
図3】本実施の形態に係る給湯装置による外部機器との通信接続のための制御処理を説明するフローチャートである。
図4図3の制御処理に従う送信出力の制御を説明する概念図である。
図5図3の制御処理の変形例に従う送信出力の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る給湯装置と外部機器との通信接続態様を説明する概念図である。
【0015】
図1を参照して、本実施の形態に係る給湯装置100は、複数の給湯口111に接続された配管を経由して、加熱された湯を給湯先へ供給する。例えば、給湯先には、図示しないカランおよび浴槽が含まれる。或いは、給湯先が、高温水を熱源とする暖房機(図示せず)を含むことにより、給湯装置100は、暖房機能を有することができる。
【0016】
給湯装置100の内部には、回路基板150が装着される。当該回路基板150には、給湯装置100を駆動および制御するための回路群(後述)が搭載される。さらに、給湯装置100は、BLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))に従う通信(以下、BLE通信)等の近距離無線通信機能を有しており、スマートフォンまたはタブレット等の携帯通信端末30に代表される、近距離無線通信機能を有する「外部機器」との間で通信接続可能に構成される。
【0017】
図2には、図1に示された給湯装置100の通信のための構成を説明するブロック図が示される。
【0018】
図2を参照して、図1に示された回路基板150には、電源回路152と、コントローラ機能を有するマイクロコンピュータ(単に「マイコン」とも表記)155と、無線通信部160と、有線通信部170とが搭載される。なお、回路基板150は、図2中の回路要素の一部ずつが搭載された複数の基板の集合体であってもよい。
【0019】
電源回路152は、コンセント151が電源(例えば、商用AC電源)に接続されて、給湯装置100が電源オン状態となると、給湯装置100の構成機器の電源電圧を生成する。図2の例では、マイコン155の電源電圧Vd1、無線通信部160の電源電圧Vd2、および、有線通信部170の電源電圧Vd3が、電源回路152によって生成される。なお、マイコン155、無線通信部160、および、有線通信部170の少なくとも一部において、電源電圧は共通であってもよい。
【0020】
有線通信部170は、通信線(例えば、2心通信線)45によって、リモートコントローラ(以下、単に「リモコン」と表記)40と有線通信接続される。リモコン40は、表示部41および入力部42を有する。ユーザは、表示部41による表示画面に従って入力部42を操作することにより、湯張りや給湯設定温度等の給湯装置100の動作および機能に関する設定を入力することができる。リモコン40は、浴室および/または台所に配設することができる。
【0021】
マイコン155は、リモコン40へのユーザ設定入力に従って給湯装置100を給湯動作させるために、図示しない燃焼機構に対する燃料ガスの供給等を制御するための電磁弁(図示せず)および、当該燃料ガスと混合される空気を供給するための給気ファン(図示せず)等を制御する。マイコン155は「制御部」の一実施例に対応する。マイコン155は、回路基板150上において、無線通信部160および有線通信部170の各々との間で、データを送受信可能に構成される。
【0022】
無線通信部160は、BLE通信等の近距離無線通信機能を有する。無線通信部160は「通信部」の一実施例に対応し、例えば、BLE通信モジュールによって構成することができる。無線通信部160には、受信電波強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を検出するための検出部165が設けられる。
【0023】
給湯装置100の配設時には、初期設定のために当該給湯装置100の情報等のデータを作業者に提供することが必要になる。一方で、給湯装置100では、文字表示等のユーザインターフェイスが乏しいことが一般的であるため、当該データを作業者に直接的に提示することが困難である。
【0024】
このため、作業者の携帯通信端末30と給湯装置100との間の近距離無線通信によって、給湯装置100のマイコン155に格納された初期設定用のデータを当該携帯通信端末30に送信することで、当該データの効率的な提供が可能となる。なお、以下では、近距離無線通信としてBLE通信が用いられるものとして、実施の形態の説明を進める。
【0025】
BLE通信等の近距離無線通信は、通信接続された機器間でのペアリング後、当該ペアリングされた機器間で実行される。この際のペアリングについては、ワンタイムパスワード等のパスコードの入力による相互認証を伴うパスキーエントリー形式と、パスコードの入力を伴わず無線によって通信接続された相手先を自動的に認証するジャストワークス形式とが存在する。
【0026】
本実施の形態に係る給湯装置100ではユーザインターフェイスの面からワンタイムパスワードを提示することが困難であるため、通信接続された相手先を自動的に認証するジャストワークス形式によるペアリング認証が採用される。したがって、給湯装置100から送信されたBLE通信の電波が届く範囲内、即ち、通信接続可能な範囲内に位置する携帯通信端末30であれば、給湯装置100とのペアリングが可能となる。
【0027】
このため、給湯装置100が屋外に配設されるケースが多いことを考えると、上述した電波が届く範囲(通信接続可能な範囲)を広くし過ぎると、セキュリティ性が低下することが懸念される。
【0028】
一方で、当該電波が届く範囲(通信接続可能な範囲)が狭すぎると、給湯装置100から送信されたデータを用いた初期設定作業等の作業性が低下することが懸念される。
【0029】
したがって、本実施の形態に係る給湯装置では、以下に説明するような、BLE通信の送信出力制御を実行する。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る給湯装置による外部機器との通信接続のための制御処理を説明するフローチャートである。また、図4には、図3の制御処理に従う送信出力の制御を説明する概念図が示される。図3に示された制御処理は、マイコン155によって実行することができる。
【0031】
図3を参照して、マイコン155は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、無線通信部160の初期設定(BLE設定)を実行すると、S120により、BLE送信出力を第1出力P1に設定する。S110の初期設定は、給湯装置100の電源投入時、および、無線通信部160のリセット処理時に実行され、この際に、BLE送信出力も第1出力P1に初期設定される。
【0032】
無線通信部160は、マイコン155によって設定されたBLE送信出力に従う電波強度のBLE送信信号を出力する。また、無線通信部160は、携帯通信端末30を含む外部機器との通信接続の有無、および、受信電波強度RSSIを示す情報を、マイコン155に対して送信する。
【0033】
マイコン155は、無線通信部160の初期設定後は、S130により、外部機器(携帯通信端末30)からの通信接続の待機状態であるアドバタイズを、無線通信部160に開始させる。これにより、無線通信部160は、ブロードキャスト通信を行う状態、即ち、第1出力P1によるBLE送信出力の下で、電波が届く範囲(通信接続可能な範囲)内の任意の外部機器と通信接続可能な状態となる。
【0034】
携帯通信端末30は、給湯装置100と通信接続するためのアプリケーションソフトが起動されると、給湯装置100からのBLE送信信号の受信に応じて、当該BLE送信信号の送信元である給湯装置100に対して、BLE通信接続要求を出力する。
【0035】
無線通信部160は、当該BLE通信接続要求を受信すると、BLE通信接続要求を送信した携帯通信端末30との間でBLE通信接続を確立する。無線通信部160は、通信接続が確立されると、そのことをマイコン155に通知する。
【0036】
これにより、ペアリングされていない携帯通信端末30との通信接続が確立された場合には、自動的に当該携帯通信端末30を認証して、ペアリング情報の送受信が行われ、以降では、当該ペアリング情報に基づく暗号化を伴って、給湯装置100および携帯通信端末の間でデータが送受信される。
【0037】
ペアリング済の携帯通信端末30との通信接続が確立された場合には、ペアリング処理が再度実行されることなく、既に送受信されたペアリング情報に基づく暗号化を伴って、給湯装置100および携帯通信端末30の間でデータが送受信される。
【0038】
マイコン155は、無線通信部160からの通知に基づいて無線通信部160によるBLE通信を検出すると(S140のYES判定時)、S150に処理を進めて、無線通信部160のアドバタイズを終了させるとともに、S160により、BLE送信出力を、第1出力P1から第2出力P2に上昇させる。これにより、無線通信部160は、BLE送信出力が第2出力P2に設定された下で、携帯通信端末30と通信接続される。
【0039】
マイコン155は、BLE送信出力を第2出力P2に上昇した後、S170により、一旦確立された無線通信部160および携帯通信端末30のBLE接続が切断されたか否かを確認する。S170がNO判定となるBLE接続の継続中には、S175により、無線通信部160からマイコン155に送信された、BLE通信での受信電波強度(RSSI)がモニタされる。
【0040】
マイコン155は、無線通信部160および携帯通信端末30のBLE接続の切断が検出されると(S170のYES判定時)、S180により、無線通信部160のアドバタイズを開始させる。これにより、無線通信部160は、BLE送信出力が第2出力P2に設定された下でアドバタイズすることになる。
【0041】
さらに、マイコン155は、無線通信部160のアドバタイズの開始後、S190により、BLE接続が切断された携帯通信端末30との再接続が検出されるか否かを確認するとともに、S195により、無線通信部160のアドバタイズ開始(S180)から基準時間Trが経過したか否かを確認する。
【0042】
マイコン155は、基準時間Trが経過するまでに(S195のNO判定時)、携帯通信端末30との再接続が検出されると(S190のYES判定時)と、S200により、無線通信部160のアドバタイズを終了させて、処理をS170に戻す。これにより、BLE送信出力が第2出力P2に設定された下での、無線通信部160および携帯通信端末30のBLE接続が再開される。
【0043】
これに対して、マイコン155は、基準時間Trが経過しても、携帯通信端末30との再接続が検出されない場合には(S195のYES判定時)、S210により、BLE送信出力を第2出力P2から第1出力P1に低下させる。これにより、無線通信部160は、初期設定(S120,S130)後と同様に、BLE送信出力が第1出力P1に設定された下でアドバタイズすることになる。
【0044】
図4(a)には、BLE送信出力が第1出力P1であるときの通信可能範囲BL1が点線で示される一方で、図4(b)には、BLE送信出力が第2出力P2であるときの通信可能範囲BL2が点線で示される。BLE送信出力、即ち、送信信号の電波強度の大小により、通信可能範囲BL2は、通信可能範囲BL1を内包する態様で、通信可能範囲BL1よりも広くなることが理解される。
【0045】
図4(a)および(b)において、携帯通信端末の位置30Aは、通信可能範囲BL1および通信可能範囲BL2の両方の範囲内である。一方で、携帯通信端末の位置30Bは、通信可能範囲BL1の範囲外である一方で、通信可能範囲BL2の範囲内である。
【0046】
図3でのS120,S130の初期設定後、および、S210のBLE接続の切断から基準時間Tr経過後には、図4(a)に示される通信可能範囲BL1の内側の携帯通信端末30のみが、給湯装置100(アドバタイズ中の無線通信部160)と通信接続可能である。
【0047】
即ち、図4(a)の状態では、携帯通信端末30は、位置30Bでは給湯装置100と通信接続することができず、位置30Aまで近付かないと、給湯装置100と通信接続を確立することができない。例えば、第1出力P1は、給湯装置100からの距離が2~3[m]程度の範囲内を通信可能範囲BL1がカバーする様に、設定することができる。
【0048】
一方で、一旦、給湯装置100と通信接続された携帯通信端末30は、図4(b)に示される通信可能範囲BL2の内側であれば、給湯装置100(無線通信部160)との通信接続を維持することが可能である。
【0049】
即ち、図4(b)の状態では、携帯通信端末30は、位置30Aで給湯装置100との通信接続を確立した後(図3でのS140YES判定時)、位置30Bまで移動しても、給湯装置100との通信接続を維持することができる。例えば、第2出力P2は、給湯装置100からの距離が10[m]程度の範囲内を通信可能範囲BL2がカバーする様に、設定することができる。
【0050】
図4(b)において、携帯通信端末30が、通信可能範囲BL2の内側の位置30Bから通信可能範囲BL2の外側の位置30Cに移動すると、携帯通信端末30および給湯装置100の通信接続は切断される。しかしながら、当該切断から基準時間Trが経過するまでの期間内は、無線通信部160は、BLE送信出力が第2出力P2に維持されたままでアドバタイズする。
【0051】
このため、基準時間Tr以内では、携帯通信端末30は、位置30Cから位置30Bに戻ることにより、通信接続前の通信可能範囲BL1の内側まで戻ることなく、給湯装置100(アドバタイズ中の無線通信部160)と、再度通信接続することができる。
【0052】
このように、本実施の形態に係る給湯装置では、外部機器(携帯通信端末30)との通信接続確立前の通信可能範囲BL1(図4(a))を狭くすることで、パスコード入力を伴わないペアリングによる近距離無線通信(BLE通信)の下でのセキュリティ性を高めることができる。
【0053】
さらに、通信接続の確立後には、通信可能範囲BL1よりも広い通信可能範囲BL2(図4(b))を設定し、かつ、一旦確立された通信接続の切断時には、基準時間Trが経過するまでは、通信可能範囲BL2を維持して再接続を待機することで、通信接続の利便性を向上することができる。
【0054】
この結果、パスコード入力を伴わないペアリングによる給湯装置との近距離無線通信において、送信出力の制御によってセキュリティ性および利便性の両立を図ることができる。
【0055】
図5には、図3に示された制御処理の変形例が示される。
【0056】
図5の制御処理では、マイコン155は、無線通信部160および携帯通信端末30のBLE接続の切断が検出されたときに(S170のYES判定時)、S177の処理をさらに実行する。
【0057】
マイコン155は、S177では、S175によって継続的にモニタされた受信電波強度(RSSI値)から通信接続の切断直前における受信電波強度を求めるとともに、当該切断直前の受信電波強度に応じて基準時間Trを設定する。具体的には、切断直前の受信電波強度に基づいて、携帯通信端末30による通信接続の切断の態様を予測することで、基準時間Trが可変に設定される。
【0058】
無線通信部160および携帯通信端末30のBLE接続は、アプリケーションソフトの終了、または、携帯通信端末30の電源オフ等のユーザ操作に応じて切断することができる。このような態様で通信接続が切断された場合には、再接続の可能性は低いので、基準時間Trは短く設定することがセキュリティ性からは好ましい。
【0059】
一方で、図4(b)の通信可能範囲BL2の境界付近で携帯通信端末30の位置が変化したことによって電波強度が不足した場合には、BLE接続は、ユーザの意図に依らず切断される。このような態様で通信接続が切断された場合には、再接続の可能性が高いので、基準時間Trを長く設定することがユーザ利便性からは好ましい。
【0060】
切断直前の受信電波強度が高い場合には、ユーザ操作に応じて、即ち、ユーザの意図によって通信接続が切断されたと推測される。したがって、マイコン155は、再接続の可能性が低いと予測して、基準時間Trを短く設定する。
【0061】
これに対して、切断直前の受信電波強度が低い場合には、ユーザの意図ではなく、電波状況または携帯通信端末30の位置によって通信接続が切断されたと推測される。このため、マイコン155は、再接続の可能性が高いと判断して、基準時間Trを長く設定する。
【0062】
このような基準時間Tr(S195)の可変設定により、一旦確立された通信接続が切断された際のセキュリティ性および利便性の両立度をさらに高めることができる。
【0063】
なお、外部機器(携帯通信端末30)と、給湯装置100との間の近距離無線通信は、本実施の形態で例示したBLE通信に限定されず、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等の他の通信方式が用いられてもよい。
【0064】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
30 携帯通信端末、30A,30B,30C 位置(携帯通信端末)、40 リモコン、41 表示部、42 入力部、100 給湯装置、111 給湯口、150 回路基板、151 コンセント、152 電源回路、155 マイコン、160 無線通信部、165 検出部(RSSI)、170 有線通信部、BL1,BL2 通信可能範囲、Tr 基準時間、Vd1,Vd2,Vd3 電源電圧。
図1
図2
図3
図4
図5