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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166643
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082861
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真次
(72)【発明者】
【氏名】小川 法行
(72)【発明者】
【氏名】東堂園 英樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷川 弘典
(72)【発明者】
【氏名】浦川 亮太
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD45
3H067EA16
3H067EB07
3H067ED02
3H067ED13
3H067ED15
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】構成が簡便な切換弁を提供する。
【解決手段】ハウジング10に設けられたハウジング側架設部60と、ロータ50において回転軸80aから離間した位置に設けられたロータ側架設部55との間に引張バネ70が架設され、複数の回動位置のうち、一つの回動位置における引張バネ70の長さは他の回動位置における引張バネ70の長さと異なり、複数の回動位置のうち引張バネ70が最も縮んだ状態となる回動位置が基準位置となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に形成される弁室に配置され、回転軸回りに回動するロータと、
前記ロータを動かす駆動手段と、を備え、
前記ハウジングには、前記弁室に連通し流体を導入する導入ポートと、前記弁室に連通し流体を導出する導出ポートと、が形成されており、
前記ロータが前記ハウジングに対して回動することにより複数の回動位置をとり、各回動位置に応じて前記導入ポートと前記導出ポートとの間の流路を切り換える切換弁であって、
前記ハウジングに設けられたハウジング側架設部と、前記ロータにおいて前記回転軸から離間した位置に設けられたロータ側架設部との間に引張バネが架設され、
前記複数の回動位置のうち、一つの前記回動位置における引張バネの長さは他の前記回動位置における引張バネの長さと異なり、
前記複数の回動位置のうち前記引張バネが最も縮んだ状態となる前記回動位置が基準位置となる切換弁。
【請求項2】
前記基準位置における前記引張バネは自然長である請求項1に記載の切換弁。
【請求項3】
前記ロータは前記基準位置よりも回転方向両側に回動可能となっている請求項1に記載の切換弁。
【請求項4】
前記切換弁は、6ポート3位置型弁である請求項3に記載の切換弁。
【請求項5】
前記ハウジングに設けられているハウジング側マグネットと、前記ロータに設けられているロータ側マグネットと、をさらに備え、
前記ハウジング側マグネットは、前記複数の回動位置のうち少なくとも一つの回動位置において前記ロータ側マグネットと軸方向で重なる位置に配置されている請求項1に記載の切換弁。
【請求項6】
前記ロータの回動範囲で描かれる前記引張バネの軌跡は、周方向で連続している請求項1に記載の切換弁。
【請求項7】
前記引張バネは、前記ロータに形成された区画室内に配置されている請求項1に記載の切換弁。
【請求項8】
前記ハウジング側架設部は、軸方向に延びるハウジング側ピンであり、前記ロータ側架設部は、軸方向に延びるロータ側ピンである請求項1に記載の切換弁。
【請求項9】
前記ロータにおける座面および前記ハウジングにおける当接面のうち少なくとも一方は、低摩擦材料である請求項1ないし8のいずれかに記載の切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切換弁、例えば流体が流れる流路を切り換える切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において、流体供給源と、流体作動装置、熱交換器等の流体負荷とが流路によって接続された流体回路が用いられている。このような流体回路には、作動流体の流路を切り換える切換弁を設けることで、一つの流体回路によって流体負荷を作動させるモードを複数実現させたものもある。
【0003】
例えば、特許文献1の切換弁は、ケーシングによって形成されている弁室内に弁体が配置されている。また、弁体は、電磁力を利用して回動可能となっている。ケーシングには、1つの供給ポートと、2つの制御ポートと、1つの排出ポートが形成されている。弁体には、2つの円筒穴が形成されている。
【0004】
このような特許文献1の切換弁は、中立位置において2つの円筒穴が供給ポートおよび排出ポートに対して非連通であり、流体の流れを停止させる。また、中立位置から弁体を一方側に回動させると、一方の円筒穴を通じて供給ポートから一方の制御ポートに向かって流体が流れ、他方の円筒穴を通じて他方の制御ポートから排出ポートに向かって流体が流れる。また、中立位置から弁体を他方側に回動させると、一方の円筒穴を通じて一方の制御ポートから排出ポートに向かって流体が流れ、他方の円筒穴を通じて供給ポートから他方の制御ポートに向かって流体が流れる。このように、特許文献1の切換弁は、3か所の回動位置に切り換え可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-283483号公報(第7-11頁、第21図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1の切換弁においては、角度変位検出器が設けられており、弁体の位置を特定することが可能となっている。この特定した弁体の位置情報に基づいて、各回動位置に弁体を正確に回動させることができる。しかしながら、角度変位検出器を用いることにより、角度変位検出器そのものばかりでなく、位置情報特定、出力信号算出などの各種演算を行うためのプログラムや、これらを円滑かつ迅速に処理可能な演算回路などが必要となるため、コスト高になるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、構成が簡便な切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の切換弁は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に形成される弁室に配置され、回転軸回りに回動するロータと、
前記ロータを動かす駆動手段と、を備え、
前記ハウジングには、前記弁室に連通し流体を導入する導入ポートと、前記弁室に連通し流体を導出する導出ポートと、が形成されており、
前記ロータが前記ハウジングに対して回動することにより複数の回動位置をとり、各回動位置に応じて前記導入ポートと前記導出ポートとの間の流路を切り換える切換弁であって、
前記ハウジングに設けられたハウジング側架設部と、前記ロータにおいて前記回転軸から離間した位置に設けられたロータ側架設部との間に引張バネが架設され、
前記複数の回動位置のうち、一つの前記回動位置における引張バネの長さは他の前記回動位置における引張バネの長さと異なり、
前記複数の回動位置のうち前記引張バネが最も縮んだ状態となる前記回動位置が基準位置となる。
これによれば、切換弁は、非稼働時に、引張バネの復帰力を利用してロータを基準位置に自動復帰させることができる。これにより、流路を切り替えるために必要な構成を簡便にすることができる。
【0009】
前記基準位置における前記引張バネは自然長であってもよい。
これによれば、切換弁は、安定してロータを基準位置に自動復帰させることができる。
【0010】
前記ロータは前記基準位置よりも回転方向両側に回動可能となっていてもよい。
これによれば、切換弁は、基準位置以外のいずれの回動位置にロータが回動されても、引張バネの復帰力を利用して基準位置に自動復帰させることができる。
【0011】
前記切換弁は、6ポート3位置型弁であってもよい。
これによれば、切換弁は、基準位置以外のいずれの回動位置にロータが回動されても、引張バネの復帰力のみを利用して基準位置に自動復帰させることができる。
【0012】
前記ハウジングに設けられているハウジング側マグネットと、前記ロータに設けられているロータ側マグネットと、をさらに備え、
前記ハウジング側マグネットは、前記複数の回動位置のうち少なくとも一つの回動位置において前記ロータ側マグネットと軸方向で重なる位置に配置されていてもよい。
これによれば、切換弁は、ロータを一の回動位置に精度よく配置することができる。
【0013】
前記ロータの回動範囲で描かれる前記引張バネの軌跡は、周方向で連続していてもよい。
これによれば、いずれの回動位置においても引張バネが回転軸と干渉することが防止されるため、切換弁は、基準位置以外のいずれの回動位置であってもロータを安定して基準位置に自動復帰させることができる。
【0014】
前記引張バネは、前記ロータに形成された区画室内に配置されていてもよい。
これによれば、切換弁は、引張バネを流体から隔離して保護することができる。
【0015】
前記ハウジング側架設部は、軸方向に延びるハウジング側ピンであり、前記ロータ側架設部は、軸方向に延びるロータ側ピンであってもよい。
これによれば、簡便な構成でありながら、引張バネを保持し続けることができる。
【0016】
前記ロータにおける座面および前記ハウジングにおける当接面のうち少なくとも一方は、低摩擦材料であってもよい。
これによれば、ロータ回動時に生じる摩擦を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る実施例1の切換弁の断面図である。
図2】ケースの上面図である。
図3】ステータの上面図である。
図4】ロータの上面図である。
図5】ロータの下面図である。
図6】(a)はロータの第1回動位置における切換弁の流路パターンを示す図であり、(b)はロータの第1回動位置における切換弁の要部を示す図である。
図7】(a)はロータの第2回動位置における切換弁の流路パターンを示す図であり、(b)はロータの第2回動位置における切換弁の要部を示す図である。
図8】(a)はロータの第3回動位置における切換弁の流路パターンを示す図であり、(b)はロータの第3回動位置における切換弁の要部を示す図である。
図9】本発明に係る実施例2の切換弁におけるロータの上面図である。
図10】実施例2の切換弁におけるステータの上面図である。
図11】本発明に係る実施例3の切換弁の断面図である。
図12】実施例3の切換弁における要部を一部破断して示す上面図である。
図13】実施例3の切換弁における要部の変形例を示す上面図である。
図14】本発明に係る実施例4の切換弁における要部を示す図である。
図15】本発明に係る実施例5の切換弁における要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る切換弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0019】
実施例1に係る切換弁につき、図1から図8を参照して説明する。以下、図1の上下を切換弁の上下として説明する。詳しくは、モータが配置される紙面上側を切換弁の上側、その反対側である紙面下側を切換弁の下側として説明する。
【0020】
図1に示されるように、本発明の切換弁V1は、流体回路を複数の回動位置のうちの一の回動位置を選択し、作動流体が流れる流路を切り換えるために使用されるものである。実施例の切換弁V1は電動モータ式回動弁である。
【0021】
図1に示されるように、切換弁V1は、固定側部材としてのハウジング10と、ロータ50と、ハウジング側架設部であるハウジング側ピン60と、引張バネ70と、駆動手段としての駆動ユニット80と、から主に構成されている。なお、図1では、ロータ50は後述する第1回動位置にある状態を図示しており、図2図5は、図1を元に図示している。
【0022】
ハウジング10は、下向きに開口する有天井円筒状のケース20と、円柱状のステータ30と、から構成されている。ケース20およびステータ30は金属材料または樹脂材料により形成されている。ケース20とステータ30との間の空間は、後述するロータ50が配置される弁室40となっている。
【0023】
ケース20は外周面下端に外径側に突出するフランジ部20aが周方向に離間して複数設けられている。ステータ30はその外周面に外径側に突出するフランジ部30aが周方向に離間して複数設けられている。ケース20とステータ30は、フランジ部20aおよびフランジ部30aが図示しないボルトにより締結されることにより接続固定されている。
【0024】
図1図2に示されるように、ケース20における天井部21には、挿通孔22と、第1ポートP1が設けられている。
【0025】
挿通孔22は、上面視円形状をなし、天井部21の中心を上下方向に貫通している。挿通孔22は、後述するように回転軸80aが挿通されるようになっている。
【0026】
第1ポートP1は、上面視円形状をなし、挿通孔22より上面視略9時の位置を上下方向に貫通している。第1ポートP1は、図示しない外部の流体負荷から吐出される作動流体を切換弁V1内に導入する導入ポートとして機能している。
【0027】
図1図3に示されるように、ステータ30は円柱状の基部31を備えている。基部31には、大径凹部32と、小径凹部33と、第2ポートP2と、第3ポートP3と、第4ポートP4と、第5ポートP5と、第6ポートP6が設けられている。
【0028】
大径凹部32は、基部31における上端面31aの中心を下方に向かって凹設されており、上方側に開放されている。大径凹部32には、後述する回転軸80aの下端が図示しない軸受と共に挿入されている(図1参照)。
【0029】
小径凹部33は、基部31における上端面31aの大径凹部32より上面視略3時の位置を下方に向かって凹設されており、上方側に開放されている。小径凹部33は、大径凹部32よりも小径である。小径凹部33には、円柱状のハウジング側ピン60が圧入固定されている(図1参照)。
【0030】
なお、ハウジング側ピンは、ケース20やステータ30のようなハウジングの一部として一体成形されていてもよい。また、ハウジング側ピンは、ハウジングに固定された別部材に形成されていてもよく、ハウジングに設けられている別部材に固定されていてもよい。このように、本発明におけるハウジングに設けられたハウジング側架設部とは、ハウジングと一体であってもよく、ハウジングと別体であってもよく、ハウジングと一体に設けられている別部材に固定されていてもよい。これは、後述するハウジングに設けられているハウジング側マグネットについても同様である。
【0031】
第2ポートP2と、第3ポートP3と、第4ポートP4と、第5ポートP5と、第6ポートP6は、上面視円形状をなし、基部31の中心を中心軸とした、かつ小径凹部33より外径側の同一円周上の各所にて基部31を上下方向に貫通している。
【0032】
詳しくは、図3に示されるように、第5ポートP5は上面視で略3時の位置に設けられている。第6ポートP6は上面視で略1時の位置に設けられている。第2ポートP2は上面視で略11時の位置に設けられている。第3ポートP3は上面視で略9時の位置に設けられている。第4ポートP4は上面視で略7時の位置に設けられている。
【0033】
第6ポートP6は、切換弁V1内の作動流体を図示しない外部の流体負荷に導出する導出ポートとして機能している。
【0034】
第2ポートP2~第5ポートP5は、導入ポートとしての機能と導出ポートとしての機能が適宜切り替えられる制御ポートとして機能している。
【0035】
図1に示されるように、基部31における外周面には、周方向に亘って延びる環状の溝が形成されており、この溝にはパッキンが配置されている。このパッキンにより、ケース20とステータ30との間は密封されている。
【0036】
図1図2図4図5に示されるように、ロータ50は、円板状の基部51と、基部51の中央より上方側に突出する凸部52を有する側断面倒立T字状を成している。ロータ50には、貫通孔53と、スリット54と、連通口A1と、第1連通溝G1と、第2連通溝G2と、第3連通溝G3と、ロータ側架設部であるロータ側ピン55が設けられている。
【0037】
貫通孔53は、上面視矩形状をなし、凸部52における上端面から基部51における下端面51aに亘って上下方向に貫通している。
【0038】
スリット54は、上面視逆向きC字状をなし、ロータ50が第1回動位置にあるときの基部51における上面視略11時方向から略5時方向までの範囲に亘って上下方向に貫通している。
【0039】
より詳しくは、スリット54は、同心円弧状に延びる内周壁と外周壁およびこれらに連なる側壁54a,54bを有している。詳しくは、側壁54aは上面視略5時方向に位置し略径方向に延び、その両端は内周壁と外周壁それぞれの上面視略5時方向に位置する端に連接されている。また、側壁54bは上面視略11時方向に位置し略径方向に延び、その両端は内周壁と外周壁それぞれの上面視略11時方向に位置する端に連接されている。
【0040】
スリット54には、ハウジング側ピン60が遊挿されている(図1参照)。
【0041】
図4に示されるように、連通口A1は、上面視円形状をなし、ロータ50が第1回動位置にあるときの基部51におけるスリット54より外径側の上面視略11時の位置を上下方向に貫通している。
【0042】
図5に示されるように、第1連通溝G1と、第2連通溝G2と、第3連通溝G3は、基部51の中心を中心軸とした略同一円周上に沿って形成されている。この同一円周上には、連通口A1も形成されている。
【0043】
より詳しくは、第1連通溝G1は、ロータ50が第1回動位置にあるときの基部51における下面視略2時方向から4時方向に亘って形成されている下面視矩形状をなしている。第1連通溝G1は、基部51における下端面51aから上方に向かって凹設されており、下方側に開放されている。
【0044】
第2連通溝G2は、ロータ50が第1回動位置にあるときの基部51における下面視略6時方向から8時方向に亘って形成されている下面視湾曲した矩形状をなしている。第2連通溝G2は、基部51における下端面51aから上方に向かって凹設されており、下方側に開放されている。
【0045】
第3連通溝G3は、ロータ50が第1回動位置にあるときの基部51における下面視略9時方向から11時方向に亘って形成されている下面視矩形状をなしている。第3連通溝G3は、基部51における下端面51aから上方に向かって凹設されており、下方側に開放されている。
【0046】
基部51における下端面51aは、ステータ30における基部31の座面としての上端面31aに当接する当接面である(図1参照)。
【0047】
また、基部51における下端面51aには、第1連通溝G1の外側を囲う溝と、第2連通溝G2の外側を囲う溝と、第3連通溝G3の外側を囲う溝が形成されており、各溝にはパッキンが配置されている(図1参照)。
【0048】
図4に示されるように、ロータ側ピン55は、円柱状であり、基部51に一体成形されている。ロータ側ピン55は、ロータ50が第1回動位置にあるときの基部51におけるスリット54より外径側の上面視略3時の位置から上方側に突出している。また、ロータ側ピン55は、連通口A1と同じ同一円周上に形成されている。
【0049】
なお、ロータ側ピンは、ロータ50と別体であってもよい。また、ロータ側ピンは、ロータに固定された別部材に形成されていてもよく、ロータに設けられている別部材に固定されていてもよい。このように、本発明におけるロータに設けられたロータ側架設部とは、ロータと一体であってもよく、ロータと別体であってもよく、ロータと一体に設けられている別部材に固定されていてもよい。これは、後述するロータに設けられているロータ側マグネットについても同様である。
【0050】
図1に戻って、ロータ側ピン55と、スリット54に遊挿されているハウジング側ピン60におけるロータ50よりも上方に突出している上端部には、引張バネ70が架設されている。
【0051】
引張バネ70は、長手方向の各端部70a,70bがC字状に形成されている。端部70aは、ロータ側ピン55に外挿されて、ロータ側ピン55回りに回動可能となっている。端部70bは、ハウジング側ピン60に外挿されて、ハウジング側ピン60回りに回動可能となっている。
【0052】
なお、引張バネは、ロータ側ピンやハウジング側ピンに対して相対回動不能に固定されていてもよい。このような構成であれば、ロータ側ピンやハウジング側ピンがそれぞれの軸回りに回動可能に設けられていることが好ましい。
【0053】
駆動ユニット80は、ハウジング10に密封状に固定されており、ロータ50を回動駆動させるようになっている。具体的には、駆動ユニット80は、複数のギアと、ギアに噛み合う回転軸80aと、それらを駆動させるモータと、がケーシングされている。
【0054】
次に、ロータ50の一つの回動位置としての第1回動位置、他の回動位置としての第2回動位置、他の回動位置としての第3回動位置について図6図8を用いて説明する。なお、説明の便宜上、ケース20の図示を省略している。さらになお、ロータ50の連通溝G1~G3をドットで示している。
【0055】
ここで、本発明における回動位置とは、第1回動位置、第2回動位置、第3回動位置のように、ロータ50が停止する位置を示すものであり、ロータ50が回動している途中の位置については含まない。
【0056】
図6に示される切換弁V1の第1回動位置における流路パターンにあっては、切換弁V1が用いられる流体回路は第1のモードで運転される。図7に示される切換弁V1の第2回動位置における流路パターンにあっては、切換弁V1が用いられる流体回路は第2のモードで運転される。図8に示される切換弁V1の第3回動位置における流路パターンにあっては、切換弁V1が用いられる流体回路は第3のモードで運転される。
【0057】
図1を参照して、弁室40には、第1ポートP1より流体が導入される。この流体の圧力はロータ50の背圧として作用する。背圧を受けるロータ50がステータ30に向かって押圧されることで、ロータ50における下端面51aがステータ30における上端面31aに当接される。さらに、ロータ50に設けられている各パッキンが上端面31aに圧着される。これにより、切換弁V1の第1回動位置における流路パターンにあって、連通するように設定されているポートに、それ以外のポートから切換弁V1に導入された流体が混入することが防止されている。これは、第2回動位置、第3回動位置についても同様である。
【0058】
図6(a)に示されるように、切換弁V1の第1回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1は、連通口A1を通じて第2ポートP2に連通している。第3ポートP3は、第1連通溝G1を通じて第4ポートP4に連通している。第5ポートP5は、第3連通溝G3を通じて第6ポートP6に連通している。
【0059】
切換弁V1の第1回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1から第2ポートP2に向かって流体が流れる。第3ポートP3から第4ポートP4に向かって流体が流れる。第5ポートP5から第6ポートP6に向かって流体が流れる。
【0060】
ロータ50の第1回動位置では、駆動ユニット80は非通電状態にある。また、第1回動位置での、ロータ側ピン55とハウジング側ピン60との位置関係は、後述する第2回動位置および第3回動位置での位置関係と比較して、最も近接した状態にある。そのため、引張バネ70は本実施例における複数の回動位置の中で最も縮んだ状態にある。つまり、第1回動位置が基準位置となる。
【0061】
この状態で、引張バネ70は、自然長よりもわずかに引き伸ばされた状態にある。
【0062】
これにより、第1回動位置においても引張力が生じるため、引張バネ70は、ロータ50を第1回動位置に保持し続けることができる。なお、この状態で引張バネ70は自然長であってもよい。このような構成であっても、一定以上の初張力を有する引張バネであればロータ50を第1回動位置に保持し続けることができる。
【0063】
また、第1回動位置では、ハウジング側ピン60は、スリット54における各側壁54a,54bから離間している。
【0064】
ロータ50が第1回動位置ある状態において、駆動ユニット80に第1所定値の通電がなされるとモータは回転軸80aを上面視時計回り方向に回動させる。これにより、ロータ50は、図6(b)から図7(b)に移行するように、上面視時計回り方向に回動される。そして、図7(b)に示されるように、スリット54における側壁54bがハウジング側ピン60に当接する第2回動位置にて停止する。
【0065】
また、第1所定値として設定されている通電量を超える通電がなされても、スリット54における側壁54bがハウジング側ピン60に当接することでその回動が停止されるため、ロータ50を第2回動位置にて停止させることができる。このことから、第1所定値として設定されている通電量は、第1回動位置から第2回動位置に到達するために必要な最小限の通電量よりもやや大きい値が設定されていることが好ましい。
【0066】
図7(a)に示されるように、切換弁V1の第2回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1は、連通口A1を通じて第5ポートP5に連通している。第2ポートP2は、第1連通溝G1を通じて第6ポートP6に連通している。第4ポートP4は、第2連通溝G2を通じて第3ポートP3に連通している。
【0067】
切換弁V1の第2回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1から第5ポートP5に向かって流体が流れる。第2ポートP2から第6ポートP6に向かって流体が流れる。第4ポートP4から第3ポートP3に向かって流体が流れる。
【0068】
引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第2回動位置に到達するまでの間、第2回動位置側に回動することに応じて引き伸ばされ続ける。言い換えれば、引張バネ70は、第2回動位置側に回動することに応じて復帰力が高められる。
【0069】
また、引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第2回動位置に到達するまでの間、ロータ50における凸部52から離間した位置を、ロータ50における下端面51aやステータ30における上端面31aと略平行に引き伸ばされながら移動する。
【0070】
このことから、引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第3回動位置に到達するまでの間、直線形状を保ち続けることができる。すなわち引張バネ70は屈曲することが防止されている。これにより、切換弁V1は安定して引張バネ70の復帰力をロータ50に作用させることができる。
【0071】
さらに、引張バネ70は、端部70aがロータ側ピン55に対して回動可能であり、各端部70bがハウジング側ピン60に対して回動可能である。そのため、引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第3回動位置に到達するまでの間、円滑に伸長できる。
【0072】
ロータ50が第2回動位置で停止している状態において、第2回動位置における引張バネ70の長さは、第1回動位置における引張バネ70の長さよりも長くなる。すなわち、第2回動位置における引張バネ70の長さは、第1回動位置における引張バネ70の長さと異なっている。
【0073】
駆動ユニット80への通電が停止されると、引張バネ70の復帰力によってロータ50は、第2回動位置から第1回動位置に向かって移動し、引張バネ70が最も縮んだ状態となる第1回動位置にて停止される。
【0074】
ロータ50が第1回動位置ある状態において、駆動ユニット80に第2所定値の通電がなされるとモータは回転軸80aを上面視反時計回り方向に回動させる。これにより、ロータ50は、図6(b)から図8(b)に移行するように、上面視反時計回り方向に回動される。そして、図8(b)に示されるように、スリット54における側壁54aがハウジング側ピン60に当接する第3回動位置にて停止する。
【0075】
また、第2所定値として設定されている通電量を超える通電がなされても、スリット54における側壁54aがハウジング側ピン60に当接することでその回動が停止されるため、ロータ50を第3回動位置にて停止させることができる。このことから、第2所定値として設定されている通電量は、第1回動位置から第3回動位置に到達するために必要な最小限の通電量よりもやや大きい値が設定されていることが好ましい。
【0076】
図8(a)に示されるように、切換弁V1の第3回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1は、連通口A1を通じて第3ポートP3に連通している。第2ポートP2は、第3連通溝G3を通じて第6ポートP6に連通している。第4ポートP4は、第1連通溝G1に連通しているものの、第1連通溝G1は他のポートに対して非連通である。第5ポートP5は、第2連通溝G2に連通しているものの、第2連通溝G2は他のポートに対して非連通である。すなわち、第4ポートP4と第5ポートP5は閉塞されている。
【0077】
切換弁V1の第3回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1から第3ポートP3に向かって流体が流れる。第2ポートP2から第6ポートP6に向かって流体が流れる。第4ポートP4と第5ポートP5からは外部への流体の流通が停止されている。
【0078】
引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第3回動位置に到達するまでの間、第3回動位置側に回動することに応じて引き伸ばされ続け、復帰力が高められる。
【0079】
また、引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第3回動位置に到達するまでの間、ロータ50における凸部52から離間した位置を、ロータ50における下端面51aやステータ30における上端面31aと略平行に引き伸ばされながら移動する。
【0080】
このことから、引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第3回動位置に到達するまでの間、直線形状を保ち続け、引張バネ70は屈曲することが防止されている。これにより、切換弁V1は安定して引張バネ70の復帰力をロータ50に作用させることができる。
【0081】
さらに、引張バネ70は、端部70aがロータ側ピン55に対して回動可能であり、各端部70bがハウジング側ピン60に対して回動可能である。そのため、引張バネ70は、ロータ50が第1回動位置から第3回動位置に到達するまでの間、円滑に伸長できる。
【0082】
ロータ50が第3回動位置で停止している状態において、第3回動位置における引張バネ70の長さは、第1回動位置における引張バネ70の長さよりも長くなる。すなわち、第3回動位置における引張バネ70の長さは、第1回動位置における引張バネ70の長さと異なっている。
【0083】
なお、図7図8を参照して、本実施例では、第3回動位置における引張バネ70の長さは、第2回動位置における引張バネ70の長さよりも短い構成であるが、これに限られず、第3回動位置における引張バネ70の長さは、第2回動位置における引張バネ70の長さよりも長い構成であってもよく、第3回動位置における引張バネ70の長さは、第2回動位置における引張バネ70の長さと同じ構成であってもよい。
【0084】
駆動ユニット80への通電が停止されると、引張バネ70の復帰力によってロータ50は、第3回動位置から第1回動位置に向かって回動し、引張バネ70が最も縮んだ状態となる第1回動位置にて停止される。
【0085】
以上説明したように、本実施例の切換弁V1は、非稼働時、すなわち非通電時に、引張バネ70の復帰力を利用してロータ50を基準位置としての第1回動位置に自動復帰させることができる。これにより、第1回動位置を基準として、第2回動位置や第3回動位置に到達するための回動量を決定することができる。そのため、ロータ50の位置を都度検出するためのセンサや制御を省略することができる。このように、切換弁V1は、流路を切り替えるために必要な構成を簡便にすることができる。
【0086】
また、切換弁V1は、ロータ50の復帰手段として引張バネ70を採用しているため、1つの引張バネ70のみでロータ50を自動復帰させることができる。
【0087】
例えば、復帰手段として圧縮バネを採用する場合には、第2回動位置から第1回動位置に復帰させるための圧縮バネと、第3回動位置から第1回動位置に復帰させるための圧縮バネがそれぞれ必要となる。また、各圧縮バネを保持するための構造が必要となる。このように、部品点数増につながる。
【0088】
さらに、圧縮バネを採用する構成において、ロータを第1回動位置に停止させた状態を保持し続けるためには、第2回動位置から第1回動位置に復帰させるための圧縮バネからロータに作用する付勢力と、第3回動位置から第1回動位置に復帰させるための圧縮バネからロータに作用する付勢力とが釣り合う位置を、第1回動位置に位置合わせする必要がある。このことから、製造される部材それぞれの公差を加味して、各付勢力を精度よく調整する必要があるため、製造コスト増につながる。
【0089】
これらに対して、本実施例の切換弁V1は、1つの引張バネ70のみでロータ50を自動復帰させることができる。そのため、切換弁V1は、部品点数を少なくすることができる上に、製造コストも低減することができる。
【0090】
さらに、切換弁V1は、経年変化などにより引張バネ70の引張力が変化しても、第1回動位置にロータ50が位置している状態が最も縮んだ状態であり続ける。そのため、切換弁V1は、製品寿命に優れている。
【0091】
また、切換弁V1は、引張バネ70の復帰力を第2回動位置または第3回動位置から第1回動位置に復帰させるために利用している構成である。例えば、先に弾性変形させた引張バネの復帰力を利用して第1回動位置から第2回動位置にロータを移動させるような構成と比較して、本実施例の切換弁V1は、回動位置を精度よく切り換えることができる。
【0092】
また、引張バネ70は、ロータ50の第1回動位置において最も縮んだ状態となる。そのため、切換弁V1は、安定してロータ50を第1回動位置に自動復帰させることができる。
【0093】
さらに、引張バネ70は、上述したようにロータ50の第1回動位置においても復帰力が生じているため、第2回動位置や第3回動位置に到達するまでに駆動ユニット80への通電が停止されても、確実にロータ50を第1回動位置に自動復帰させることができる。
【0094】
また、ロータ50は、第1回動位置から回転方向両側に回動可能である。言い換えれば、第1回動位置は、第2回動位置と第3回動位置との間に設けられている。これにより、ロータ50が第2回動位置側に回動されても、第3回動位置側に回動されても、引張バネ70は復帰力が高められる。そのため、切換弁V1は、第2回動位置であっても第3回動位置であっても、ロータ50を第1回動位置に自動復帰させることができる。
【0095】
また、後述する実施例4のように、第1回動位置から周方向一方側にのみ回動可能とし、かつその途中に後述する実施例5のようなストッパS1,S2などの回動位置保持手段を配置して第1回動位置以外の複数の回動位置を設けたような構成と比較して、引張バネ70が最も引き伸ばされているときの長さを短くしやすくなっている。そのため、本実施例1の切換弁V1は引張バネ70が疲労しにくく、製品寿命に優れている。加えて、引張バネ70がロータ50における凸部52などの他の部材に干渉しにくくすることができる。さらに、部品定数を少なくすることができる。そのため、本実施例1の切換弁V1は製造コストのさらなる低減を達成することができる。
【0096】
また、切換弁V1は、第1ポートP1から第6ポートP6を備え、ロータ50の位置を第1から第3回動位置のいずれかに切り換えることのできる6ポート3位置型弁である。これにより、切換弁V1は、第2回動位置や第3回動位置にロータ50が回動されても、引張バネ70の復帰力のみを利用して第1回動位置に自動復帰させることができる。
【0097】
さらに、本実施例1の切換弁V1は、ロータ50を回動させるにあたり、後述する実施例5のストッパS1,S2などを通過させるために必要な通電量を省力化することができる。
【0098】
また、図7図8にて第1回動位置における引張バネ70(図6参照)を基準として仮想線で示すように、ロータ50の回動範囲で描かれる引張バネ70の軌跡T1,T2は、軸方向かつ周方向で屈曲することなく滑らかに連続している。言い換えると、引張バネ70はロータ50の回動範囲で屈曲することなく直線状をなしている。これにより、引張バネ70は、切換弁V1の動作時に、ロータ側ピン55やハウジング側ピン60以外の構造に接触して動作が不安定にならないようになっている。
【0099】
このように、いずれの回動位置においても引張バネ70が回転軸80aと干渉することが防止されるため、切換弁V1は、第2回動位置、第3回動位置のいずれであっても、ロータ50を安定して第1回動位置に自動復帰させることができる。
【0100】
また、引張バネ70は、回転軸80aと略平行に軸方向に延びるハウジング側ピン60とロータ側ピン55に架設されている。このことから、切換弁V1は、簡便な構成でありながら、引張バネ70を保持し続けることができる。
【0101】
また、ステータ30における上端面31aには、低摩擦材料でコーティングがなされている。これにより、ロータ50回動時に生じる摩擦を低減することができる。
【0102】
なお、ステータにおける座面を含む一部またはステータ全体が低摩擦材料で形成されていてもよい。
【0103】
また、ロータ50における当接面が低摩擦材料で形成またはコーティングされていてもよい。このような構成であれば、パッキンはステータ側に設けられていることが好ましい。
【0104】
さらに、座面と当接面の両方が低摩擦材料で形成またはコーティングされていてもよい。
【0105】
また、本実施例のように、ロータ50の回り止めと引張バネ70の保持をハウジング側ピン60が兼ねている構成に限られず、後述する実施例4のように、ロータの回止を行うピンと、引張バネの保持をするためのハウジング側ピンのような回止手段が別体であってもよい。
【0106】
また、ロータの上面視形状は、本実施例のような円板状に限られず、後述する実施例4のように、円板の4分の1が切り取られた形状であってもよく、扇状であってもよく、多角形状であってもよく、適宜変更されてもよい。
【実施例0107】
次に、実施例2に係る切換弁につき、図9図10を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0108】
図9図10に示されるように、本実施例2の切換弁は、ロータ150に1つのロータ側マグネットM11が埋設されており、ステータ130に3つのハウジング側マグネットM21,M22,M23が埋設されている。
【0109】
ハウジング側マグネットM21は、ロータ150が第1回動位置に到達した際にそのマグネットM11と軸方向に重なる位置に埋設されている。ハウジング側マグネットM22は、ロータ150が第2回動位置に到達した際にそのマグネットM11と軸方向に重なる位置に埋設されている。ハウジング側マグネットM23は、ロータ150が第3回動位置に到達した際にそのマグネットM11と軸方向に重なる位置に埋設されている。
【0110】
これによれば、ロータ150が第1回動位置に自動復帰するにあたって、マグネットM11,M21同士が誘引しあうため、確実にマグネットM11,M21同士を磁着させることができる。そのため、本実施例の切換弁は、精度よくロータ150を第1回動位置に自動復帰させることができる。
【0111】
また、マグネットM11,M21同士を軸方向で磁着させることにより、ロータ50に設けられている各パッキンを上端面31aに効率よく圧着させることができる。そのため、本実施例の切換弁は、背圧のみを利用する前記実施例1よりもロータ150とステータ130の間の密封性能を高めることができる。これは、マグネットM11,M22同士を磁着させた場合、マグネットM11,M23同士を磁着させた場合についても同様である。
【0112】
また、ロータ150が第2回動位置に回動するにあたって、マグネットM11,M22同士が誘引しあうため、確実にマグネットM11,M22同士を磁着させることができる。そのため、本実施例の切換弁は、精度よくロータ150を第2回動位置に停止させることができる。
【0113】
同様に、マグネットM11,M23同士を磁着させることにより、本実施例の切換弁は、精度よくロータ150を第3回動位置に停止させることができる。
【0114】
また、ステータ130における上端面31aには、低摩擦材料でコーティングがなされている。これにより、ロータ側マグネットM11とハウジング側マグネットM21~M23のいずれかが誘引しあっている状態であっても、ロータ150を円滑に回動させることができる。
【0115】
なお、ロータ側マグネットやハウジング側マグネットの数は適宜変更されてもよい。例えば、第1回動位置にて2つ以上のロータ側マグネットとハウジング側マグネットが磁着されてもよい。
【0116】
また、ロータ側マグネットとハウジング側マグネットは、少なくとも一箇所の回動位置にのみ対応する位置に設けられていてもよく、すべての回動位置よりも少ない回動位置に対応する位置に配置されていてもよく、配置箇所と回動位置との対応関係は適宜変更されてもよい。
【0117】
また、各マグネットは、埋設に限られず、ロータまたはステータに接着剤などで固定されていてもよく、露出されていてもよい。
【0118】
また、マグネットM11,M22同士を磁着させること、マグネットM11,M23同士を磁着させることにより、第2回動位置や第3回動位置にロータ150を停止させ続けてもよい。このような構成であれば、第2回動位置や第3回動位置にロータ150を停止させ続けるために必要な電力を低減することができる。また、このような構成であれば、ロータ側マグネットM11をハウジング側マグネットM22,M23から引き離すに足る通電を行うことで第1回動位置に復帰させることができる。
【実施例0119】
次に、実施例3に係る切換弁につき、図11図13を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0120】
図11図12に示されるように、本実施例3の切換弁V2は、ロータ250に壁部56と、天井部57が形成されている。
【0121】
壁部56は、上面視D字状をなし、ロータ250の外周面に沿って延びる部分と、ロータ250の略直径部分に沿って延びる部分とを有している。
【0122】
天井部57は、平板状であり、ロータ250における凸部52と壁部56との上端に架設された状態で接着固定されている。また、天井部57は、壁部56と共に区画室58を画成している。
【0123】
区画室58には、スリット54と、ロータ側ピン55と、ハウジング側ピン60と、引張バネ70が配置されている。区画室58外には連通口A1が配置されている(図12参照)。
【0124】
また、ロータ250における下端面には、環状の溝が形成されており、同溝にはパッキン59が配置されている。
【0125】
これらにより、区画室58は、弁室40(図1参照)および各ポートP1~P6のいずれとも非連通となっている。すなわち、区画室58は、いずれの流路からも区画された空間である。
【0126】
これによれば、切換弁V2は引張バネ70を流体から隔離して保護することができる。
【0127】
また、切換弁V2は、ロータ250における上端面のうち、壁部56よりも外側の領域と、天井部57における上端面に背圧を作用させることができる。
【0128】
なお、パッキン59以外の個所に適宜パッキンを設けるなどして、ステータにおける座面とロータにおける当接面との間を通じて区画室内に流体が流入しない構成であれば、パッキン59は省略されてもよい。
【0129】
また、変形例を示す図13を参照して、切換弁V3におけるロータ350のように、例えば流体が液体かつ少量であり、壁部56のみで囲繞される区画室358内に流体が流入することを阻止可能であれば、天井部57は省略されていてもよい。このような構成であれば、切換弁V3は、ロータ350における上端面のうち、壁部56よりも外側の領域に背圧を作用させることができる。
【実施例0130】
次に、実施例4に係る切換弁につき、図14を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0131】
図14に示されるように、本実施例4の切換弁V4は、ステータ430には第7ポートP7と、第8ポートP8が形成されている。
【0132】
また、ステータ430における外径側には、周方向に離間して回止ピン34と、ハウジング側ピン460と、回止ピン35が一体に形成されている。なお、各ピンは、ステータとは別体であり、ステータに固定されていてもよい。その場合、前記実施例1のように凹部に圧入固定されていてもよく、接着、溶着などにより固定されていてもよい。
【0133】
ロータ450における基部451は、円板の4分の1が切り取られた形状をなし、周方向両端に径方向に延びる壁部451b,451cが形成されている。
【0134】
また、ロータ450には、壁部451cより周方向に突出する部分に軸方向に延びるロータ側ピン455が形成されている。
【0135】
これによれば、図14(a)を参照して、引張バネ70の復帰力によってロータ450を第1回動位置に自動復帰させることができる。また、第1回動位置にてロータ450における壁部451cを回止ピン34に当接させることで、位置決めを行うことができる。このとき、連通口A1は第8ポートP8に連通している。
【0136】
図14(b)を参照して、駆動ユニット80(図1参照)に通電し、ロータ450を回動させ、壁部451bを回止ピン35に当接させることで、第2回動位置に位置決めすることができる。このとき、連通口A1は第7ポートP7に連通している。
【0137】
これらのように、本発明の切換弁は、回動位置が2か所であってもよい。
【0138】
なお、本実施例では、回止ピン34,35を備える構成として説明したが、これに限られず、回止ピンは省略されていてもよい。また、回止ピンの代わりに、前記実施例2のように磁石を利用してもよく、別の回止手段が適用されていてもよい。
【0139】
また、本実施例の引張バネ70は、ロータ450が第1回動位置にあるとき、前記実施例1と同様に自然長よりも引き伸ばされた状態にあるが、これに限られず、一定以上の初張力を有する引張バネであればロータ450が第1回動位置にあるとき自然長であってもよい。このような構成であっても、ロータ450が第1回動位置にあるとき駆動ユニット80による回転力が初張力を上回るまでロータ450を第1回動位置に安定して停止させ続けることができる。
【実施例0140】
次に、実施例5に係る切換弁につき、図15を参照して説明する。なお、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。また、図15(a)はロータが第3回動位置にある状態が図示されたものであり、図15(b)はロータが第1回動位置にある状態が図示されたものであり、図15(c)はロータが後述する第4回動位置にある状態が図示されたものであり、図15(d)はロータが第2回動位置にある状態が図示されたものである。
【0141】
図15に示されるように、本実施例5の切換弁V5は、ロータ550の上部に2つのストッパS1,S2が設けられている。
【0142】
ストッパS1,S2は、ロータ550の第1回動位置と第2回動位置との間の第4回動位置にて、ハウジング側ピン60を挟持可能に配置されている。より詳しくは、ストッパS1,S2は、ロータ550の上部に軸支されており、バネの力で所定の位置に自動復帰するように構成されている。
【0143】
これによれば、図15(b)から図15(d)に移行するように、ロータ550を第1回動位置から第2回動位置に移動させるにあたっては、モータの回転に伴ってロータ550が回動することにより、ハウジング側ピン60によって各ストッパS1,S2が回動されるため、相対的にハウジング側ピン60を通過させることができる。
【0144】
また、ロータ550を第2回動位置から第1回動位置に回動させるにあたっては、図15(d)から図15(a)に移行するように、駆動ユニット80に第1所定値とは通電方向が逆かつ特定量の通電をなし、ロータ550が上面視反時計回り方向に回動することにより、ハウジング側ピン60によって各ストッパS1,S2が回動されるため、相対的にハウジング側ピン60を通過させることができる。
【0145】
その後、通電を停止することにより、引張バネ70の復帰力によって第1回動位置にロータ550を自動復帰させることができる。
【0146】
なお、ロータ550を第1回動位置から第3回動位置に移動させる場合と、第3回動位置から第1回動位置に移動させるにあたっては、前記実施例1と同様である。
【0147】
図15(b)から図15(c)に移行するように、第1所定値と通電方向は同一である一方、通電量が小さい第3所定値の通電が駆動ユニット80になされると、ロータ550が移動されてストッパS1を通過したのち、ストッパS2に接触して回動が規制され、かつストッパS1が復帰してストッパS1,S2に挟持される。これにより、ロータ550を第4回動位置に停止させることができる。
【0148】
このときの切換弁V5の第4回動位置における流路パターンにあっては、第1ポートP1は、連通口A1を通じて第6ポートP6に連通している。第2ポートP2は、第3ポートP3に連通している。第4ポートP4と第5ポートP5は閉塞されている。
【0149】
また、第4回動位置では、ハウジング側ピン60がストッパS1,S2によって挟持されているため、通電を停止させてもハウジング側ピン60はストッパS1,S2によって挟持され続ける。すなわち、切換弁V5は第4回動位置にロータ550を保持し続けることができる。
【0150】
また、第4回動位置から第1回動位置にロータ550を移動させるにあたっては、図15(c)から図15(a)に移行するように、駆動ユニット80に第3所定値とは通電方向が逆かつ特定量の通電をなし、ストッパS1をハウジング側ピン60が相対的に通過させたのち、通電を停止することで引張バネ70の復帰力によって第1回動位置にロータ550を自動復帰させることができる。
【0151】
このように、ロータ550を第4回動位置に保持可能なストッパS1,S2などの回動位置保持手段を備える構成とすることで、4か所以上の回動位置にロータを停止させることができる。なお、回動位置保持手段は、上述したような磁石を利用したものであってもよく、適宜変更されてもよい。
【0152】
また、本実施例のように回動位置保持手段を備えるような構成であれば、本実施例の第1回動位置と第3回動位置の間の領域のように、回動方向におけるいずれかの終端位置と基準位置との間には、回動位置保持手段が設けられておらず、確実に引張バネの復帰力のみでロータを基準位置に自動復帰させることが可能な領域が確保されていることが好ましい。
【0153】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0154】
例えば、前記実施例1~5では、駆動手段はモータを備える駆動ユニットである構成として説明したが、これに限られず、手動でロータを回動させるための軸とハンドルあってもよく、電磁石に通電することにより電磁石の位置まで永久磁石を吸引させることを利用してロータを回動させる構成であってもよく、その駆動手段は適宜変更されてもよい。
【0155】
また、前記実施例1~3,5で6ポートを備える電磁弁を例示し、前記実施例4では3ポートを備える電磁弁を例示したが、これに限られず、ポートの数は適宜変更されてもよい。例えば、前記実施例4では、第1ポートと第7ポートだけが形成されていてもよい。すなわち、第1ポートと第7ポートとの連通・非連通を切り替える構成であってもよい。
【0156】
また、前記実施例1~5では、ハウジング側架設部とロータ側架設部は共にピンである構成として説明したが、これに限られず、各架設部は、単に引張バネが溶着・接着など適宜の方法で固定されている箇所であってもよく、ハウジングやロータに固定されるフック、カラビナなどの部材であってもよく、その構成は適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0157】
10 ハウジング
20 ケース
30 ステータ
31a 上端面(座面)
40 弁室
50 ロータ
51a 下端面(当接面)
52 凸部
55 ロータ側ピン(ロータ側架設部)
60 ハウジング側ピン(ハウジング側架設部)
70 引張バネ
80 駆動ユニット(駆動手段)
80a 回転軸
130,430 ステータ
150~550 ロータ
58,358 区画室
455 ロータ側ピン
460 ハウジング側ピン
M11 ロータ側マグネット
M21~M23 ハウジング側マグネット
V1~V5 切換弁
図1
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