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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166644
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】シートバックフレーム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20241122BHJP
   A47C 7/02 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082862
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 翔
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BC27
3B087BD03
3B087CD05
3B087CE05
3B087DA07
3B087DB02
3B087DD09
(57)【要約】
【課題】ロッドを合理的な構成により保護することが可能なシートバックフレームを提供すること。
【解決手段】シートバック1の骨格を成すシートバックフレーム2は、フレーム本体10と、ロッド20と、パッド支持ワイヤ30と、を有する。フレーム本体10は、シートバック1の左右の側部骨格を成す一対のサイドフレームを有する。ロッド20は、一対のサイドフレームの間をシート幅方向に延びる。パッド支持ワイヤ30は、フレーム本体10に溶着されてフレーム本体10に前側から被せられるシートバックパッド3をパッド裏側から支持する。パッド支持ワイヤ30は、ロッド20を前方に越える位置に張り出すロッド保護部31Dを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの骨格を成すシートバックフレームであって、
前記シートバックの左右の側部骨格を成す一対のサイドフレームを有するフレーム本体と、
一対の前記サイドフレームの間をシート幅方向に延びるロッドと、
前記フレーム本体に溶着されて前記フレーム本体に前側から被せられるシートバックパッドをパッド裏側から支持するパッド支持ワイヤと、を有し、
前記パッド支持ワイヤが、前記ロッドを前方に越える位置に張り出すロッド保護部を有するシートバックフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のシートバックフレームであって、
前記フレーム本体が、前記ロッドよりも高い位置において一対の前記サイドフレームの間に架橋される架橋フレームを有し、
前記パッド支持ワイヤが、前記架橋フレームに溶着される溶着部と、該溶着部から下方に延びる下方延出部と、該下方延出部から前記ロッドの下側を通って前記ロッドを前方に越える位置まで張り出す前方張出部と、を有し、前記ロッド保護部が、前記前方張出部の張り出した先に形成されるシートバックフレーム。
【請求項3】
請求項2に記載のシートバックフレームであって、
前記パッド支持ワイヤが、互いにシート幅方向に並んで前記架橋フレームから下方に延びる前記下方延出部を成す一対の縦ワイヤ部と、一対の前記縦ワイヤ部の下端から前方に曲げられるように延びる前記前方張出部を成す一対の張出ワイヤ部と、一対の前記張出ワイヤ部の張り出した先端同士を繋ぐようにシート幅方向に延びる前記ロッド保護部を成す横ワイヤ部と、を有する1本のフォームドワイヤから成る本体ワイヤを有するシートバックフレーム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のシートバックフレームであって、
前記ロッド保護部が、前記ロッドと上下方向の配置が重なるように設けられるシートバックフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックフレームに関する。詳しくは、シートバックの骨格を成すシートバックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックの骨格を成すシートバックフレームが開示されている。このシートバックフレームは、シートバックの周囲に沿った骨格を成すフレーム本体と、フレーム本体に被せられるシートバックパッドをパッド裏側から支持するパッド支持ワイヤと、を有する。
【0003】
パッド支持ワイヤは、フレーム本体を構成する両サイドフレームの間に架橋された架橋パイプに溶着されている。パッド支持ワイヤは、架橋パイプから下方に延出して、架橋パイプと共にシートバックパッドの天板部をパッド裏側から支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5835063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッド支持ワイヤの前方に左右のリクライナ同士を連結するロッドが設けられる場合、車両の後部衝突の発生時に、着座乗員からロッドに対して動作不良を及ぼすような過大な荷重がかけられるおそれがある。そこで、本発明は、ロッドを合理的な構成により保護することが可能なシートバックフレームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートバックフレームは、次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、シートバックの骨格を成すシートバックフレームであって、前記シートバックの左右の側部骨格を成す一対のサイドフレームを有するフレーム本体と、一対の前記サイドフレームの間をシート幅方向に延びるロッドと、前記フレーム本体に溶着されて前記フレーム本体に前側から被せられるシートバックパッドをパッド裏側から支持するパッド支持ワイヤと、を有し、前記パッド支持ワイヤが、前記ロッドを前方に越える位置に張り出すロッド保護部を有するシートバックフレームである。
【0008】
第1の発明によれば、パッド支持ワイヤのロッド保護部により、着座乗員からロッドに荷重がかけられないようにロッドを保護することができる。このように、シートバックパッドをパッド裏側から支持するパッド支持ワイヤの構成を利用して、ロッドを合理的に保護することができる。
【0009】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記フレーム本体が、前記ロッドよりも高い位置において一対の前記サイドフレームの間に架橋される架橋フレームを有し、前記パッド支持ワイヤが、前記架橋フレームに溶着される溶着部と、該溶着部から下方に延びる下方延出部と、該下方延出部から前記ロッドの下側を通って前記ロッドを前方に越える位置まで張り出す前方張出部と、を有し、前記ロッド保護部が、前記前方張出部の張り出した先に形成されるシートバックフレームである。
【0010】
第2の発明によれば、パッド支持ワイヤが、ロッドよりも高い位置にある架橋フレームからロッドの後側と下側とを通るように迂回して、ロッド保護部をロッドの前側に張り出させる構成となる。それにより、ロッドの上方にシートバックパッドを着座乗員の荷重により後方に沈み込ませることが可能な空き領域を設定することができる。
【0011】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記パッド支持ワイヤが、互いにシート幅方向に並んで前記架橋フレームから下方に延びる前記下方延出部を成す一対の縦ワイヤ部と、一対の前記縦ワイヤ部の下端から前方に曲げられるように延びる前記前方張出部を成す一対の張出ワイヤ部と、一対の前記張出ワイヤ部の張り出した先端同士を繋ぐようにシート幅方向に延びる前記ロッド保護部を成す横ワイヤ部と、を有する1本のフォームドワイヤから成る本体ワイヤを有するシートバックフレームである。
【0012】
第3の発明によれば、パッド支持ワイヤの本体ワイヤを1本のフォームドワイヤで構成することで、パッド支持ワイヤを少ない溶接点数で構成することができる。
【0013】
本発明の第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記ロッド保護部が、前記ロッドと上下方向の配置が重なるように設けられるシートバックフレームである。
【0014】
第4の発明によれば、ロッド保護部によってロッドをより適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るシートバックフレームが適用されたシートバックの斜視図である。
図2】シートバックフレームの斜視図である。
図3】シートバックフレームの正面図である。
図4】シートバックを図3のIV-IV線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
《第1の実施形態》
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートバックフレーム2の構成について、図1図4を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図4のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るシートバックフレーム2は、自動車用シートのシートバック1の骨格として構成されている。シートバック1は、上記シートバックフレーム2と、シートバックフレーム2に前側から被せられるシートバックパッド3と、シートバックパッド3を覆うシートバックカバー4と、を有する。
【0019】
図2図3に示すように、シートバックフレーム2は、シートバック1の周囲に沿った骨格を成す正面視枠状のフレーム本体10を有する。フレーム本体10は、シートバック1の左右の側部骨格を成す一対のサイドフレーム11と、各サイドフレーム11の上端部間に一体的に架橋される不図示のアッパフレームと、を有する。
【0020】
また、フレーム本体10は、各サイドフレーム11の上下方向の中間部間に一体的に架橋される架橋パイプ12を有する。架橋パイプ12は、丸パイプ材から成る。架橋パイプ12は、各サイドフレーム11の間をシート幅方向に延びるように設けられている。ここで、架橋パイプ12が、本発明の「架橋フレーム」に相当する。
【0021】
また、シートバックフレーム2は、各サイドフレーム11の下部間にシート幅方向に延びるように通されるロッド20を更に有する。ロッド20は、中空丸棒状の部材から成る。ロッド20は、各サイドフレーム11の外側面に連結される不図示の各リクライナ同士を連結するコネクティングロッドとして構成されている。
【0022】
各リクライナ(不図示)は、いわゆる有段式の角度調整機構を備える構成とされる。具体的には、各リクライナは、常時はばね力によりシートバック1の背凭れ角度を固定したロック状態に保持される。各リクライナは、これらのうちの一方に連結された不図示の操作レバーが回転操作されることで、ロッド20を介して他方にもその回転操作力が伝達されて、各々のロック状態が一斉に解除されるように操作される。
【0023】
なお、各リクライナは、いわゆる無段式の角度調整機構を備えるものであっても良い。具体的には、各リクライナが、常時噛合う歯車で構成されるものである。各リクライナは、常時はばね力によりシートバック1の背凭れ角度を固定したロック状態に保持される。各リクライナは、フレーム本体10に固定された不図示の電動モータの駆動により、ロッド20を介して双方に回転駆動力が伝達されて、各々の歯車の噛合い位置を変化させながらシートバック1の背凭れ角度を変化させていく。
【0024】
ロッド20は、架橋パイプ12よりも低い位置において、各サイドフレーム11の間をシート幅方向に真っ直ぐ延びるように設けられている。シートバックフレーム2は、更に、上記架橋パイプ12に溶着されたパッド支持ワイヤ30を有する。
【0025】
図4に示すように、パッド支持ワイヤ30は、シートバックパッド3をパッド裏側から支持する、いわゆる形状出しワイヤとして構成されている。パッド支持ワイヤ30は、架橋パイプ12から下方に延びている。パッド支持ワイヤ30は、側面視J字状に曲げられた形状とされる。パッド支持ワイヤ30は、ロッド20の後側領域を通って下方に延びると共に、ロッド20の下側領域を通って前方に延びるようにロッド20を迂回して設けられている。
【0026】
パッド支持ワイヤ30は、そのロッド20の下側領域を前方に延びる前方張出部31Cにおいて、シートバックパッド3の下部の後側に引き込まれる部分をパッド裏側から支持する。この支持により、シートバックパッド3は、その着座乗員の尻後部を支える下部が、シートバック1の外形形状を狙い通りに出せる状態に保持される。
【0027】
シートバックパッド3は、上記パッド支持ワイヤ30の他、架橋パイプ12によってもパッド裏側から支持されている。この架橋パイプ12による支持により、シートバックパッド3は、その着座乗員の背部を支える中間部が、シートバック1の外形形状を狙い通りに出せる状態に保持される。
【0028】
上述したパッド支持ワイヤ30は、詳しくは、その側面視J字状に曲げられた先の部分(ロッド保護部31D)が、ロッド20を前方に越える位置まで張り出す形状とされる。図2図3に示すように、ロッド保護部31Dは、シートバックフレーム2のシート幅方向の中央部分を通ってシート幅方向の双方に広く延びるように設けられている。
【0029】
図4に示すように、上記ロッド保護部31Dにより、シートバックパッド3のロッド20の前側に被せられる部分が、着座乗員から荷重を受けても、ロッド20よりも前側の位置でパッド裏側から支持される。それにより、ロッド20が、着座乗員からの荷重を受けないように保護される。
【0030】
詳しくは、車両の後部衝突の発生時に、着座乗員の背部や尻後部がシートバックパッド3に前側から強く押し付けられることがあっても、この荷重がロッド20にかけられることがないようにロッド20がロッド保護部31Dによって保護される。その結果、車両の後部衝突の発生時に、ロッド20に動作不良を及ぼすような過大な荷重がかけられることが防止される。
【0031】
図2図3に示すように、パッド支持ワイヤ30は、本体ワイヤ31及び架橋ワイヤ32の2本のワイヤから成る。本体ワイヤ31は、パッド支持ワイヤ30の主要部を構成するワイヤであり、左右対称状に曲成された1本のフォームドワイヤから成る。架橋ワイヤ32は、左右対称状に曲成された本体ワイヤ31にシート幅方向に架橋されて本体ワイヤ31を補剛するワイヤである。
【0032】
具体的には、本体ワイヤ31は、架橋フレームに溶着される左右一対の溶着部31Aと、各溶着部31Aから下方に延びる左右一対の下方延出部31Bと、を有する。また、本体ワイヤ31は、各下方延出部31Bの下端からロッド20の下側を通って前方に張り出す左右一対の前方張出部31Cと、各前方張出部31Cの張り出した先の端部同士を繋ぐようにシート幅方向に延びるロッド保護部31Dと、を有する。
【0033】
図4に示すように、各前方張出部31Cは、それぞれ、ロッド20を前方に越える位置まで張り出す。各前方張出部31Cは、各下方延出部31Bの下端から側面視V字状に2段階に折り曲げられるように前方に張り出す形状とされる。
【0034】
図2に示すように、本体ワイヤ31は、次のように曲成された1本のフォームドワイヤから成る。すなわち、本体ワイヤ31は、互いにシート幅方向に並んで上下方向に延びる一対の縦ワイヤ部W1と、これら縦ワイヤ部W1の下端から前方に曲げられるように延びる一対の張出ワイヤ部W2と、一対の張出ワイヤ部W2の張り出した先の端部同士を繋ぐようにシート幅方向に延びる横ワイヤ部W3と、を有する形に曲成された1本のフォームドワイヤから成る。
【0035】
上述した左右一対の溶着部31Aは、各縦ワイヤ部W1の上端部分を架橋パイプ12の外周面に沿って湾曲させるように形成されている。各溶着部31Aは、架橋パイプ12の外周面に前方から互いの湾曲同士を嵌合させるように当てて溶接することで架橋パイプ12に溶着されている。
【0036】
それにより、各溶着部31Aは、架橋パイプ12の外周面に沿ってパイプ周方向に長く線当接するように当てられている。そして、各溶着部31Aは、その架橋パイプ12の外周面に沿って当てられたパイプ周方向に沿って架橋パイプ12と溶接されている。それにより、各溶着部31Aは、架橋パイプ12に対してパイプ周方向に長く溶接されて強固に溶着されている。
【0037】
各溶着部31Aは、上記のように架橋パイプ12の外周面に前方から当てられて溶着されることにより、それらの上側の端末が架橋パイプ12の前端よりも後側の位置でエッジを後方に向けて設けられる。それにより、シートバックパッド3に着座乗員の荷重がかけられた際に、各溶着部31Aの上側の端末がシートバックパッド3に接触しにくく、座り心地が阻害されにくくなっている。
【0038】
また、左右一対の下方延出部31Bは、各縦ワイヤ部W1によって形成されている。また、左右一対の前方張出部31Cは、各張出ワイヤ部W2によって形成されている。図4に示すように、各張出ワイヤ部W2は、各縦ワイヤ部W1の下端から第1の曲げ部P1により図示前斜め下方に延びるように折り曲げられている。更に、各張出ワイヤ部W2は、それらの前方に向かって延びる部分の途中箇所が、ロッド20よりも後側の領域において、第2の曲げ部P2により図示前斜め上方に延びるように折り曲げられている。
【0039】
上記折り曲げにより、各前方張出部31Cが、各下方延出部31Bの下端から側面視V字状に2段階に折り曲げられるように前方に張り出す形状とされている。各前方張出部31Cは、それらの第2の曲げ部P2から図示前斜め上方に延びる部分が、ロッド20の後下側の領域からロッド20を前方に越える位置まで斜めに真っ直ぐ延び出す。
【0040】
各前方張出部31Cの前方に張り出した先の先端P3は、ロッド20と上下方向の配置が重なる位置に設けられる。ロッド保護部31Dは、各前方張出部31Cの先端P3同士を繋ぐ横ワイヤ部W3によって形成されている。したがって、ロッド保護部31Dは、ロッド20を前方に越える位置において、ロッド20と上下方向の配置が重なるようにロッド20に沿ってシート幅方向に真っ直ぐ延びるように設けられる。
【0041】
上記の配置は、シートバック1が着座乗員の背部を標準姿勢で支える背凭れ角度(直立より僅かに後傾する角度)となっている場合において成立する関係となっている。このような配置とされることで、ロッド保護部31Dは、シートバック1がその背凭れ角度の調整範囲(直立姿勢と後側に略水平に倒される姿勢との間の範囲)において角度調整されても、常にロッド20を前方に越える位置に配置される関係が維持されるようになっている。
【0042】
各前方張出部31Cは、それらの第2の曲げ部P2から図示前斜め上方に延びる部分が、シートバックパッド3の下部の後側に引き込まれる部分をパッド裏側(図示後斜め上側)から支持するパッド支持部となっている。各前方張出部31Cの第2の曲げ部P2から図示前斜め上方に延びる部分は、それぞれ、直線状に延びる形状とされている。
【0043】
また、ロッド保護部31Dも、上述した各前方張出部31Cによって支持されるシートバックパッド3のパッド裏側の部分の前端に当てられて、同部分をパッド裏側(図示後側)から支持するパッド支持部として機能するようになっている。すなわち、ロッド保護部31Dは、車両の後部衝突の発生によって着座乗員からシートバックパッド3に大荷重がかけられてからパッド裏側の部分に当てられるのではなく、初期の状態からパッド裏側の部分に当てられる構成とされている。
【0044】
なお、ロッド保護部31Dは、初期の状態ではシートバックパッド3のパッド裏側の部分には当てられず、車両の後部衝突の発生によって着座乗員からシートバックパッド3に大荷重がかけられることでパッド裏側の部分に当てられるものであっても良い。
【0045】
パッド支持ワイヤ30は、上記のように架橋パイプ12からロッド20の後側領域を通って下方に延びると共に、ロッド20の下側領域を通って前方に延びるように設けられている。それにより、パッド支持ワイヤ30は、ロッド20と架橋パイプ12との間の空間を広く空けるようにロッド20を迂回して設けられている。上記構成により、ロッド20と架橋パイプ12との間に、シートバックパッド3を着座乗員の荷重により後方に深く沈み込ませることが可能な空き領域が設定されている。
【0046】
図2及び図4に示すように、架橋ワイヤ32は、各前方張出部31Cの第1の曲げ部P1と第2の曲げ部P2との間を延びる部分に図示後斜め下側から当てられて溶着されている。それにより、架橋ワイヤ32は、各前方張出部31Cの間をシート幅方向に延びるように架橋されて本体ワイヤ31を補剛している。
【0047】
各前方張出部31Cの第1の曲げ部P1と第2の曲げ部P2との間を延びる部分は、それぞれ、直線状に延びる形状とされている。それにより、架橋ワイヤ32が、各前方張出部31Cに対して適切に当てられて溶着されている。
【0048】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートバックフレーム2は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0049】
すなわち、シートバックフレーム(2)は、シートバック(1)の骨格を成すフレームであって、フレーム本体(10)と、ロッド(20)と、パッド支持ワイヤ(30)と、を有する。フレーム本体(10)は、シートバック(1)の左右の側部骨格を成す一対のサイドフレーム(11)を有する。ロッド(20)は、一対のサイドフレーム(11)の間をシート幅方向に延びる。
【0050】
パッド支持ワイヤ(30)は、フレーム本体(10)に溶着されてフレーム本体(10)に前側から被せられるシートバックパッド(3)をパッド裏側から支持する。パッド支持ワイヤ(30)は、ロッド(20)を前方に越える位置に張り出すロッド保護部(31D)を有する。
【0051】
上記構成によれば、パッド支持ワイヤ(30)のロッド保護部(31D)により、着座乗員からロッド(20)に荷重がかけられないようにロッド(20)を保護することができる。このように、シートバックパッド(3)をパッド裏側から支持するパッド支持ワイヤ(30)の構成を利用して、ロッド(20)を合理的に保護することができる。
【0052】
また、フレーム本体(10)が、ロッド(20)よりも高い位置において一対のサイドフレーム(11)の間に架橋される架橋フレーム(12)を有する。パッド支持ワイヤ(30)が、架橋フレーム(12)に溶着される溶着部(31A)と、溶着部(31A)から下方に延びる下方延出部(31B)と、下方延出部(31B)からロッド(20)の下側を通ってロッド(20)を前方に越える位置まで張り出す前方張出部(31C)と、を有する。ロッド保護部(31D)が、前方張出部(31C)の張り出した先に形成される。
【0053】
上記構成によれば、パッド支持ワイヤ(30)が、ロッド(20)よりも高い位置にある架橋フレーム(12)からロッド(20)の後側と下側とを通るように迂回して、ロッド保護部(31D)をロッド(20)の前側に張り出させる構成となる。それにより、ロッド(20)の上方にシートバックパッド(3)を着座乗員の荷重により後方に沈み込ませることが可能な空き領域を設定することができる。
【0054】
また、パッド支持ワイヤ(30)が、1本のフォームドワイヤから成る本体ワイヤ(31)を有する。本体ワイヤ(31)は、互いにシート幅方向に並んで架橋フレーム(12)から下方に延びる下方延出部(31B)を成す一対の縦ワイヤ部(W1)と、一対の縦ワイヤ部(W1)の下端から前方に曲げられるように延びる前方張出部(31C)を成す一対の張出ワイヤ部(W2)と、を有する。
【0055】
また、本体ワイヤ(31)は、一対の張出ワイヤ部(W2)の張り出した先端(P3)同士を繋ぐようにシート幅方向に延びるロッド保護部(31D)を成す横ワイヤ部(W3)を有する。このように、パッド支持ワイヤ(30)の本体ワイヤ(31)を1本のフォームドワイヤで構成することで、パッド支持ワイヤ(30)を少ない溶接点数で構成することができる。
【0056】
また、ロッド保護部(31D)が、ロッド(20)と上下方向の配置が重なるように設けられる。上記構成によれば、ロッド保護部(31D)によってロッド(20)をより適切に保護することができる。
【0057】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0058】
1.本発明のシートバックフレームが適用されるシートバックは、自動車や鉄道等の車両に搭載されるシートの他、航空機や船舶等の車両以外の乗物に搭載されるシートに適用されるものであっても良い。
【0059】
2.パッド支持ワイヤは、シートバックパッドをパッド裏側から支持できるようにフレーム本体に溶着されるものであれば良い。具体的には、パッド支持ワイヤは、各サイドフレームの間に架橋される架橋フレームの他、各サイドフレームに溶着されるものであっても良い。
【0060】
また、パッド支持ワイヤは、フレーム本体から片持ち状に張り出すように設けられるブラケットに溶着されるものであっても良い。架橋フレームは、丸パイプ材から成るものの他、板状のプレス材から成るものであっても良い。
【0061】
3.パッド支持ワイヤは、必ずしも本体ワイヤが左右対称状に曲成された1本のフォームドワイヤから成るものでなくても良い。すなわち、パッド支持ワイヤは、ロッド保護部が片持ち状に張り出すように形成されるものであっても良い。また、パッド支持ワイヤは、ロッド保護部が、パッド支持ワイヤを構成するワイヤ部に溶着されて設けられる構成であっても良い。
【0062】
また、パッド支持ワイヤは、下方延出部と、前方張出部と、ロッド保護部とが、それぞれ、互いに溶着により一体化される別々のワイヤで構成されるものであっても良い。また、前方張出部が下方延出部から曲成され、ロッド保護部が前方張出部に溶着されるものであっても良い。また、ロッド保護部が前方張出部から曲成され、前方張出部が下方延出部に溶着されるものであっても良い。
【0063】
4.パッド支持ワイヤの溶着部は、架橋フレームに前方から当てられるものの他、後方、下方又は上方から当てられて溶着されるものであっても良い。架橋フレームが丸パイプ材から成る場合において、パッド支持ワイヤの溶着部がパイプの外周面に沿って湾曲した形状とされる場合、溶着部がパイプに後方から当てられると溶着部の端末が前方にエッジを向けるように配置されるおそれがある。したがって、その場合には、溶着部を端末が前方にエッジを立てる形状とならないように溶着部を下方や後方に曲げ返す形状とすると良い。
【0064】
5.パッド支持ワイヤは、架橋フレームからロッドの下側ではなく上側を通ってロッドの前方に延びる形状であっても構わない。ロッド保護部は、ロッドと上下方向の配置が重ならないように設けられるものであっても良い。すなわち、ロッド保護部は、ロッドよりも低い位置、又はロッドよりも高い位置に設けられるものであっても良い。
【0065】
6.パッド支持ワイヤは、その下方延出部から前方に張り出す前方張出部が、側面視V字状に折れ曲がる形ではなく、側面視U字状に湾曲する形に形成されていても良い。このような構成であっても、側面視U字状に湾曲する前方張出部により、シートバックパッドの下部の後側に引き込まれる部分をパッド裏側から支持することができる。
【0066】
上記実施形態では、前方張出部が下方延出部から第1の曲げ部と第2の曲げ部との2点で曲げられて前方に張り出す形状とされたものを例示したが、3点以上曲げられて前方に張り出すものであっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 シートバック
2 シートバックフレーム
3 シートバックパッド
4 シートバックカバー
10 フレーム本体
11 サイドフレーム
12 架橋パイプ(架橋フレーム)
20 ロッド
30 パッド支持ワイヤ
31 本体ワイヤ
31A 溶着部
31B 下方延出部
31C 前方張出部
31D ロッド保護部
32 架橋ワイヤ
W1 縦ワイヤ部
W2 張出ワイヤ部
W3 横ワイヤ部
P1 第1の曲げ部
P2 第2の曲げ部
P3 先端
図1
図2
図3
図4