(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024166654
(43)【公開日】2024-11-29
(54)【発明の名称】廃スラッジ抜出し方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/22 20060101AFI20241122BHJP
G21F 9/04 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G21F9/22 M
G21F9/04 B
G21F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023082881
(22)【出願日】2023-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
(72)【発明者】
【氏名】横山 聡
(57)【要約】
【課題】配管の閉塞と汚染水の発生量の抑制とが可能な廃スラッジ抜出し方法を提供する。
【解決手段】廃樹脂と廃液からなる廃スラッジが貯蔵されている貯蔵容器の廃液に注入管を介して水を注入する。そして、貯蔵容器で廃液に一部浸水している吸込管から、撹拌された廃スラッジを吸い込み、吸込管内の廃スラッジの濃度を計測する濃度計で、廃スラッジの濃度を計測する。さらに、吸込管の下流に接続された吐出管を介して移送された廃スラッジを、貯蔵容器の廃液内に設置された撹拌ノズルから吐出して、貯蔵容器内の廃スラッジを撹拌する。濃度計において、吸込管内の廃スラッジの濃度の流束分布の均一性を確認した後、吐出管から廃スラッジを抜出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃樹脂と廃液からなる廃スラッジが貯蔵されている貯蔵容器の前記廃液に注入管を介して水を注入し、
前記貯蔵容器で前記廃液に一部浸水している吸込管から、撹拌された前記廃スラッジを吸い込み、
前記吸込管内の前記廃スラッジの濃度を計測する濃度計で、前記廃スラッジの濃度を計測し、
前記吸込管の下流に接続された吐出管を介して移送された前記廃スラッジを、前記貯蔵容器の前記廃液内に設置された撹拌ノズルから吐出して、前記貯蔵容器内の前記廃スラッジを撹拌し、
前記濃度計において、前記吸込管内の前記廃スラッジの濃度の流束分布の均一性を確認した後、前記吐出管から前記廃スラッジを抜出す
廃スラッジ抜出し方法。
【請求項2】
前記吸込管と前記吐出管との間に配置されたポンプの駆動を制御して前記吸込管からの吸い込み量を調整する
請求項1に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【請求項3】
前記吸込管、前記ポンプ、前記吐出管、および、前記貯蔵容器で、前記吸込管で吸い込んだ前記廃スラッジを循環させる
請求項2に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【請求項4】
前記吐出管から前記注入管に前記吸込管で吸い込んだ前記廃スラッジを合流させて、前記撹拌ノズルから前記貯蔵容器内に前記廃スラッジを供給し、前記貯蔵容器内の前記廃スラッジを撹拌する
請求項3に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【請求項5】
前記吸込管が前記廃スラッジで閉塞しない濃度、かつ、放射能濃度が許容値以下になるように、前記注入管から前記貯蔵容器に水を注入する
請求項1に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【請求項6】
先端にエダクタが設置されている前記撹拌ノズルから前記廃スラッジを前記貯蔵容器内に供給する
請求項1に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【請求項7】
前記吸込管の前記廃スラッジの濃度が、前記吸込管が前記廃スラッジで閉塞しない濃度の下限値に近づいた場合に、前記貯蔵容器内での前記廃スラッジの撹拌を弱めるまたは停止することにより、前記吸込管の前記廃スラッジの濃度を上げる
請求項1に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【請求項8】
廃樹脂と廃液からなる廃スラッジが貯蔵されている貯蔵容器の前記廃液に注入管を介して水を注入し、
前記貯蔵容器で前記廃液に一部浸水している吸込管から、撹拌された前記廃スラッジを吸い込み、
前記吸込管内の前記廃スラッジの濃度を計測する濃度計で、前記廃スラッジの濃度を計測し、
前記吸込管の下流に接続された吐出管を介して移送された前記廃スラッジを、前記吐出管の下流に配置された脱水機に移送して、前記脱水機で前記廃スラッジから前記廃樹脂を分離し、
前記脱水機で分離された分離廃液を、配管を介して前記脱水機の下流側に配置された廃液貯蔵容器で保管し、
前記廃液貯蔵容器内の分離廃液を、送水機を用いて前記貯蔵容器の前記廃液内に設置された撹拌ノズルから吐出して、前記貯蔵容器内の前記廃スラッジを撹拌し、
前記濃度計において、前記吸込管内の前記廃スラッジの濃度の流束分布の均一性を確認した後、前記吐出管から前記廃スラッジを抜出す
廃スラッジ抜出し方法。
【請求項9】
前記分離廃液を前記廃液貯蔵容器から前記注入管に移送し、前記注入管から前記撹拌ノズルを用いて前記貯蔵容器内に前記分離廃液を供給する
請求項8に記載の廃スラッジ抜出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等における貯蔵容器からの廃スラッジ抜出し方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、貯蔵容器には、原子炉の運転によって生じた、放射性を帯びた廃スラッジが貯蔵される。廃スラッジは、長年にわたり、徐々に貯蔵され、かつ放射能が減衰され、貯蔵容器内一杯に貯蔵される。貯蔵容器には、貯蔵された廃スラッジを抜出し、減容固化処理、または焼却処理等の処理処分をするため、廃スラッジ抜出装置が設置される。貯蔵容器内の廃スラッジは、重量差により、底部に廃樹脂、上部に廃液の二重層になって溜まる。従って、抜出し時には、貯蔵容器内に撹拌機を挿入して、廃液と廃樹脂等を混合して廃スラッジの抜出しを行っている。
廃スラッジ抜出し方法としては、貯蔵容器内の廃スラッジ濃度を連続的に調整しながら廃スラッジを連続的に排出し、かつ抜出用配管の閉塞を防止する技術が提案されている(特許文献1を参照)。また原子力発電所により、貯蔵容器の大きさや形状が異なることから、適用性に重点を置き、静的機器のエジェクタを組合わせた樹脂抜出し装置や抜出し方法が提案されている(非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sensitivity analysis of waste resin agitation and extraction in a mock-up test
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、貯蔵容器内の噴射ノズルから液体を注入して抜出ノズル付近を局部的に撹拌する。しかしながら、廃樹脂と廃液の混合液である廃スラッジは、非ニュートン流体であることが知られている。非ニュートン流体は粒子径等によりせん断速度に対する粘性係数の変化が非常に大きい場合がある。このため、噴射流れにより局部的に撹拌された領域内で、廃スラッジの流れが一様でない場合、均一の廃スラッジ濃度に調整できず、撹拌された領域内で粘性が大きい箇所が生じる。このため、粘性の高い廃スラッジによって抜出しノズルや廃スラッジ抜出し用配管が閉塞する可能性がある。
また、非特許文献1に記載の装置および方法では、貯蔵容器の外部からの駆動水によりエジェクタを作動させるため、廃スラッジを抜出すために多量の水が必要になる。この駆動水が貯蔵容器内の廃スラッジと混合し排出されるため、汚染水量が増加する。
【0006】
上述した問題の解決のため、本発明においては、配管の閉塞と汚染水の発生量の抑制とが可能な廃スラッジ抜出し方法を提供する。
【0007】
また、本発明の上記の目的及びその他の目的と本発明の新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の廃スラッジ抜出し方法は、廃樹脂と廃液からなる廃スラッジが貯蔵されている貯蔵容器の廃液に注入管を介して水を注入する。そして、貯蔵容器で廃液に一部浸水している吸込管から、撹拌された廃スラッジを吸い込み、吸込管内の廃スラッジの濃度を計測する濃度計で、廃スラッジの濃度を計測する。さらに、吸込管の下流に接続された吐出管を介して移送された廃スラッジを、貯蔵容器の廃液内に設置された撹拌ノズルから吐出して、貯蔵容器内の廃スラッジを撹拌する。濃度計において、吸込管内の廃スラッジの濃度の流束分布の均一性を確認した後、吐出管から廃スラッジを抜出す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管の閉塞と汚染水の発生量の抑制とが可能な廃スラッジ抜出し方法を提供することができる。
【0010】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】廃スラッジ抜出し方法を適用可能な貯蔵容器および廃スラッジの抜出し装置の構成を示す図である。
【
図2】外部から貯蔵容器への水の注入方法を示す図である。
【
図3】廃スラッジの循環、および、撹拌方法を示す図である。
【
図4】吸込管内に配置される濃度計による濃度測定の一例を示す図である。
【
図5】廃スラッジの濃度分布の判定について説明するためのグラフである。
【
図7】廃スラッジから廃液を分離して循環させる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る廃スラッジ抜出し方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。また、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
[廃スラッジ抜出し装置の構成]
図1に本形態の廃スラッジ抜出し方法に適用可能な廃スラッジ抜出し装置を示す。また、
図2に、廃スラッジ抜出し装置における水注入方法を示す。
図3に廃スラッジ抜出し装置における、廃スラッジの循環、および、撹拌方法を示す。また、
図6に廃スラッジ抜出し装置における、廃スラッジの循環、および、廃スラッジの抜出し方法を示す。
【0014】
図1に示す廃スラッジ抜出し装置1は、廃スラッジ20が貯蔵された貯蔵容器5に、外部からの水の供給、廃スラッジ20の撹拌、および、廃スラッジ20の抜出しを行う構成を有する。また、貯蔵容器5から廃スラッジ抜出し装置1内に廃スラッジ20を吸い込むためのポンプ11と、ポンプ11によって吸い込まれた廃スラッジ20の濃度測定を行う濃度計19とを備える。
【0015】
貯蔵容器5に貯蔵されている廃スラッジ20は、廃樹脂8と廃液7とからなり、長期の保存によって廃樹脂8上に廃液7が分離した状態となる。
廃スラッジ抜出し装置1は、貯蔵容器5内の廃液7の液相内に、一方の端部にエダクタ6が設置された撹拌ノズル4が配置されている。エダクタ6は、廃液7内に浸かった状態で設置される。また、撹拌ノズル4の他方の端部には貯蔵容器5の外部から続く注入管2が設置されている。注入管2には、第1の弁3が設けられている。第1の弁3を開放することにより、注入管2から撹拌ノズル4に外部から水が供給される。このため、貯蔵容器5には、外部から注入管2、撹拌ノズル4、および、エダクタ6を介して水が注入される。また、撹拌ノズル4は、水の流れを示す矢印10からわかるように、注入管2が上流側、エダクタ6が下流側となる。撹拌ノズル4は、例えば、多関節アームや伸縮ロッドによって構成される。また、エダクタ6は、吐出方向を自在に変更できる構成を有する。
【0016】
また、廃スラッジ抜出し装置1は、一方の端部が廃液7に浸水する位置に配置された吸込管9を有する。吸込管9の他方の端部には、ポンプ11が設置されている。また、吸込管9には、吸込管9内を流れる廃スラッジ20の濃度を測定可能な濃度計19が配置されている。吸込管9は、ポンプ11の駆動により、一方の端部から廃スラッジ20が吸い込まれ、濃度計19を通過してポンプ11に流れる。このため、吸込管9では、廃液7側が廃スラッジ20の流れの上流側、ポンプ11が下流側となる。吸込管9は、例えば、配管やホースによって構成される。また、ポンプ11は、スラリーポンプのような容積形ポンプを用いることができる。
濃度計19は、吸込管9においてポンプ11の上流側であり、貯蔵容器5内の廃液7に浸水しない位置に配置されている。
【0017】
ポンプ11の下流側には、吐出管が接続されている。本形形態の廃スラッジ抜出し装置1では、吐出管として、第1の吐出管12と、第1の吐出管12から分岐する第2の吐出管14および第3の吐出管17とを備える。このため、ポンプ11の下流側には、第1の吐出管12が接続されている。また、第1の吐出管12は、第2の吐出管14と、第3の吐出管17とに分岐されているため、ポンプ11から第1の吐出管12に流入した廃スラッジ20は、第2の吐出管14と、第3の吐出管17とにそれぞれに分岐して流出可能である。
【0018】
第2の吐出管14は、下流側の端部が撹拌ノズル4に接続されている。
図1に示す構成では、注入管2と撹拌ノズル4との接続位置に、第2の吐出管14が接続されている。また、第2の吐出管14には、第2の弁15が設けられている。第2の弁15を開放することにより、第1の吐出管12から第2の吐出管14に廃スラッジ20が流入し、第2の吐出管14から撹拌ノズル4に廃スラッジ20を供給することができる。このとき、注入管2に設けられた第1の弁3は閉鎖しておく。これにより、廃スラッジ20の流れを示す矢印13で示すように、廃スラッジ20が、吸込管9、ポンプ11、第1の吐出管12、第2の吐出管14、撹拌ノズル4、および、エダクタ6によって、貯蔵容器5と廃スラッジ抜出し装置1とを循環する構成が形成される。
【0019】
第3の吐出管17は、下流側の端部が廃スラッジ抜出し装置1の外部に設置されいてる。このため、第1の吐出管12から第3の吐出管17に流入した廃スラッジ20は、第3の吐出管17から外部に抜出される。また、第3の吐出管17には、第3の弁18が設けられている。第3の弁18を開放することにより、第1の吐出管12から第3の吐出管17に廃スラッジ20が流入し、廃スラッジ20が抜出される。
【0020】
第3の弁18は、配線16によってポンプ11と濃度計19とに信号の送受信が可能なように接続されている。濃度計19で測定された吸込管9内の廃スラッジ20の濃度、(濃度分布)に応じて、第3の弁18の開閉が操作される。なお、配線16は、濃度計19からの信号を送信できればよく、有線による接続であっても無線による接続であってもよい。
【0021】
[廃スラッジ抜出し方法;濃度調整]
廃スラッジ抜出し方法では、まず、廃スラッジ20の吸込管9内での濃度を濃度計19で監視しながら、吸込管9が廃スラッジ20で閉塞されない廃スラッジ濃度であり、かつ放射能濃度が許容値以下になるように、貯蔵容器5内の廃液7の量を調整する。廃スラッジ濃度は、吸込管9が閉塞されない濃度内で高い方がよい。濃度を高くすることより、廃スラッジ抜出し方法によって発生する汚染水の量を低減できる。また、貯蔵容器5内の廃液の量の調整は、注入管2による外部からの水の供給量によって行う。
【0022】
撹拌ノズル4およびエダクタ6によって廃液7に液体を供給すると、貯蔵容器5内の上層にある廃液7が撹拌されるとともに、廃液7の撹拌によって下層にある廃樹脂8も撹拌される。そして、撹拌を継続することにより、廃液7と廃樹脂8とが混合して均一な濃度になる。
【0023】
上述の撹拌によって均一な濃度に混合された廃スラッジ20の濃度を、吸込管を閉塞しない濃度、かつ許容値以下の放射能濃度がとするためには、廃液7の量が少ない場合、外部から貯蔵容器5に水を供給することで廃液7の量を調整する。
図2に、外部から貯蔵容器5への水の供給方法を示す。
図2に示すように、注入管2に設置する第1の弁3を開放し、貯蔵容器5の外部から注入管2、撹拌ノズル4、および、エダクタ6を介して、貯蔵容器5内の廃液7に外部から水の供給を行う。このように、貯蔵容器5内の廃液7の量を調整することにより、吸込管9内での廃スラッジ20の濃度を調整する。なお、注入管2から水の供給を行っている間は、第2の弁15を閉じておく。
【0024】
また、廃液7の量が多い場合には、第3の弁18を開放し、ポンプ11を駆動することにより、廃液7を昇圧させ吸込管9、第1の吐出管12から第3の吐出管17を通し、貯蔵容器5の外に廃液7を排出する。この段階では、吸込管9に流入する廃スラッジ20の廃樹脂8の濃度が小さく廃液7が主体となるため、粘度が小さく吸込管9、第1の吐出管12および第3の吐出管17が閉塞する可能性は低い。この濃度調整の段階で廃液7の量を減らし、廃スラッジ20の量を低減することにより、この後の廃スラッジ20の循環による濃度の均一化および抜出し処理の時間を短縮できる。このように、貯蔵容器5内の廃液7の量を調整することにより、吸込管9内での廃スラッジ20の濃度を調整することもできる。
【0025】
廃液7の量は、廃樹脂8の量や種類、粒径、密度等の物理的性質等によって適宜設定される。後述する廃スラッジ20を循環させながら、濃度計19による廃スラッジ20の濃度測定の結果を基に、外部から貯蔵容器5への水の供給量を調整してもよい。例えば、貯蔵容器5内に貯蔵された廃樹脂8の量と、廃液7の量とから、予め外部からの水の供給量を設定する。そして、設定された量の水を供給した後、廃スラッジ20を循環させる。このとき、循環させる廃スラッジ20の濃度を濃度計19で測定する。廃スラッジ20の循環を開始した初期では、廃液7と廃樹脂8とが均一に混同していない場合が多いため、濃度計19で計測さされる廃スラッジ20の濃度が低い状態となる。そして、循環を継続することにより廃液7と廃樹脂8との混合が均一になっていくため、濃度計19で計測される廃スラッジ20の濃度が徐々に高くなる。
【0026】
このとき、循環の継続時間に対して濃度の変化量(濃度勾配)が想定よりも大きい場合には、廃液7の量が少ないと推定される。この場合には、第1の弁3を開放し、注入管2、撹拌ノズル4、および、エダクタ6を介して、外部から貯蔵容器5に水を供給する。外部から水を供給する場合には、ポンプ11を停止、および、第2の弁15を閉鎖し、廃スラッジ20の循環を停止する。
また、循環の継続時間に対して濃度の変化量(濃度勾配)が想定よりも小さい場合には、廃液7の量が多いと推定される。この場合には、第3の弁18を開放し、吸込管9、ポンプ11、第1の吐出管12、および、第3の吐出管17を介して、貯蔵容器5から外部に低濃度の廃スラッジ20を排出する。廃スラッジ20を排出する場合には、第2の弁15を閉鎖し、廃スラッジ20の循環を停止する。
【0027】
[廃スラッジ抜出し方法;循環方法]
次に、
図3に示すように、上述の廃スラッジ抜出し装置1と貯蔵容器5とで廃スラッジ20を循環させながら、吸込管9内の廃スラッジ20の濃度を濃度計19で測定する。
廃スラッジ20の循環は、第2の弁15を開放し、ポンプ11を駆動することで行う。これにより、貯蔵容器5内の廃スラッジ20が、吸込管9に吸い込まれる。吸込管9に吸い込まれた廃スラッジ20は、吸込管9内で濃度計19によって、廃スラッジ20の濃度が測定される。さらに、廃スラッジ20は、吸込管9から第1の吐出管12に移送され、分岐を第2の吐出管14側へ流入する。このとき、第3の弁18が閉鎖されているため、第1の吐出管12から、第3の吐出管17へは廃スラッジ20が流入しない。
そして、廃スラッジ20が、第2の吐出管14から撹拌ノズル4に流入し、エダクタ6から貯蔵容器5内に供給される。このとき、第1の弁3を閉鎖して注入管2からの水の供給を停止する。また、第1の弁3が閉鎖されているため、廃スラッジ20は、第2の吐出管14から注入管2へは流入しない。
【0028】
これにより、
図3において廃スラッジ20の流れを示す矢印13で示すように、廃スラッジ20が、吸込管9、ポンプ11、第1の吐出管12、第2の吐出管14、撹拌ノズル4、および、エダクタ6によって、貯蔵容器5と廃スラッジ抜出し装置1とを循環する。
廃スラッジ20の循環では、ポンプ11の駆動を制御、例えば、ポンプ11の回転数を制御することにより、吸込管9の吸い込み量、および、吸込管9内の廃スラッジ20の流量を制御することができる。
【0029】
また、ポンプ11の駆動を制御することにより、エダクタ6から貯蔵容器5に供給される廃スラッジ20の流量や流速等を制御することができる。このため、エダクタ6から貯蔵容器5内に吐出される廃スラッジ20によって、貯蔵容器5内で発生する旋回水流の流速や圧力を調整することができる。例えば、ポンプ11の回転速度を高めることにより、エダクタ6から貯蔵容器5内に吐出される廃スラッジ20の流量、流速を大きくし、貯蔵容器5内での廃液7および廃樹脂8の撹拌速度、混合速度を高めることができる。
【0030】
廃スラッジ20の循環を開始した当初は、廃液7の液相を主体として旋回水流が発生し、主に廃液7の撹拌が行われる。この廃液7を主体とする撹拌は、上述の注入管2を介した外部から貯蔵容器5へ水を供給する段階でも発生する。廃スラッジ20の循環を開始した当初では、吸込管9内の廃スラッジ20は廃液7が主体のため、濃度計19で測定される吸込管9内の廃スラッジ20の濃度は低い状態である。
【0031】
そして、廃スラッジ20の循環を継続することにより、廃液7を主体とする旋回水流による撹拌に影響を受けて、廃液7の下部に沈殿している廃樹脂8が、廃液7の液相に接触する界面付近から廃液7に混合される。さらに、循環を継続することにより、徐々に廃樹脂8を含む廃液7の旋回水流に混合される、廃樹脂8の量が増加する。このため、廃スラッジ20の循環を継続することにより、廃樹脂8の殆どが、貯蔵容器5内の旋回水流によって押し流されるとともに、廃液7と混ざり合って一様な流動性を持つ廃スラッジ20となる。旋回水流は、ある程度以上の出力でポンプ11を駆動して廃スラッジ20の循環を継続している間は、貯蔵容器5内で継続的に生み出される。このため、貯蔵容器5内の廃スラッジ20の廃樹脂8は、貯蔵容器5の底部に堆積することなく、貯蔵容器5の内部の廃スラッジ20中で浮遊する。
【0032】
このとき、濃度計19で測定される吸込管9内の廃スラッジ20の濃度は、循環を継続する時間の経過とともに増加する。これは、廃スラッジ20の循環を開始した当初は、吸込管9内の廃スラッジ20は廃液7が主体であるが、時間経過とともに廃液7に混合される廃樹脂8の量が増加するためである。そして、貯蔵容器5内の全て廃樹脂が廃液7と混ざり合って一様な流動性を持つ廃スラッジ20となると、濃度計19で測定される吸込管9内の廃スラッジ20の濃度も一定になる。この吸込管9内で一定となる廃スラッジ20の濃度が、吸込管9が廃スラッジ20で閉塞しない濃度、かつ、放射能濃度が許容値以下となる濃度となるように、上述の外部から貯蔵容器5への水の供給、または、廃液7の抜出しによる、貯蔵容器5内の廃スラッジ20の濃度調整が行われる。
【0033】
[廃スラッジ抜出し方法;濃度測定]
次に、濃度計19による吸込管9内での廃スラッジ20の濃度の測定について説明する。濃度計19による吸込管9内での廃スラッジ20の濃度の測定により、貯蔵容器5内の廃スラッジ20が一様な流動性を持つ状態となっているかどうかを確認することができる。
また、本形態の廃スラッジ抜出し方法において、濃度計19によって測定される廃スラッジ20の濃度は例えば、廃スラッジ20内の廃樹脂8の充填率として規定することができ、[廃樹脂/(廃樹脂+廃液)=廃樹脂の充填率]として表すことができる。ここで(廃樹脂+廃液)は廃スラッジ20と同意義である。
【0034】
廃液7中に廃樹脂8が混合した廃スラッジ20は、非ニュートン流体であり、吸込管9内での濃度、すなわち、吸込管9内での廃スラッジ20の平均の濃度[廃樹脂/廃スラッジ]が一定の値になっても、吸込管9内では廃スラッジ20の濃度分布に片寄りが存在する場合がある。例えば、吸込管9の断面方向において、廃スラッジ20の廃樹脂の分布が均一とならず、濃度の片寄り等により流束に濃度分布が発生する場合がある。
【0035】
廃スラッジ20は非ニュートン流体であるため、廃樹脂濃度の差が廃スラッジ20の粘度やせん断応力に大きく影響する。このため、吸込管9内で廃スラッジ20の流束に濃度分布があると、高濃度部分と低濃度部分とにおいて廃スラッジ20の流速、せん断応力に大きく差が発生し、廃スラッジ20の流れの一様性が失われる。
このように、廃スラッジ20の流れの一様性が失われている状態では、廃スラッジ20の循環、抜出しを継続している間に、吸込管9が廃スラッジ20によって閉塞する可能性がある。
【0036】
このため、吸込管9内の廃スラッジ20の濃度を測定する濃度計19は、吸込管9内での廃スラッジ20の濃度(平均濃度)だけでなく、吸込管9の断面方向における廃スラッジ20の流速分布や、廃スラッジ20の濃度分布も測定する。
図4に、吸込管9内に配置される濃度計19による濃度測定の一例の概略構成を示す。
図4に示すように、吸込管9の断面において、濃度計19による濃度測定用のサンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5が複数設けられている。これらのサンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5は吸込管9の断面の中心から外周方向に向けて設けられている。また、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5は、吸込管9の断面の中心から同距離において所定の角度で円周方向の複数個所に設けられている。例えば、
図4に示す構成では、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5は、吸込管9の断面注入管からの径方向距離が等間隔に設けられている。また、
図4では、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5は、45°ピッチで複数個所に設けられている。
濃度計19は、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5において、例えば、ガンマー線密度計や、超音波密度計を用いて吸込管9内を流通する廃スラッジ20の廃樹脂8の濃度を測定する。そして、濃度計19では、例えば、径方向距離が同じサンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5において、異なる角度位置で測定された廃樹脂濃度を平均することにより、吸込管9内の径方向距離での廃樹脂濃度の平均値を求めることができる。
【0037】
また、濃度計19は、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5における廃スラッジ20の測定濃度と、各サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5の径方向距離との関係から、吸込管9内の廃スラッジ20の濃度分布を判定する。
吸込管9内の廃スラッジ20の濃度分布の判定について
図5を用いて説明する。
図5は、横軸が吸込管9の断面におけるサンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5の径方向距離、縦軸が廃樹脂の充填率[廃樹脂/(廃樹脂+廃液)]で規格化された廃樹脂濃度を示すグラフである。また、
図5に、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5で測定された、径方向距離での廃樹脂濃度の平均値として、均一状態、不均一状態の2種を示している。なお、
図5に示すグラフでは、縦軸の廃樹脂濃度として、上記廃樹脂の充填率を、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5の値の平均値を1.0として規格化した値を用いている。このため、均一状態、および、不均一状態のそれぞれの廃樹脂濃度を平均すると理論的には1.0となる。
【0038】
図5に示すように、不均一状態の廃スラッジ20は、径方向においてサンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5のそれぞれにおいて、測定された廃樹脂濃度の値が一定ではない。具体的には、吸込管9の中心側で廃樹脂濃度が高く、外周方向に向かって廃樹脂濃度が低くなっている。このように、径方向において測定された廃樹脂濃度の値が一定ではない場合、吸込管9内の廃スラッジ20が一様な流れとなっていないことを示す。
これに対し、均一状態の廃スラッジ20は、径方向においてサンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5のそれぞれにおいて、測定された廃樹脂濃度の値が一定である。また、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5のそれぞれで測定された廃樹脂濃度が、規格化された廃樹脂濃度の理論値1.0とほぼ一致する値となっている。このように、サンプリング点r
1,r
2,r
3,r
4,r
5での各測定濃度が
、縦軸の廃樹脂濃度の理論値1.0になれば、吸込管9内の廃スラッジ20が均一状態であり、一様な流れとなったと判定することができる。ただし、厳密には1.0にならない場合が想定されるため、例えば、各測定点での樹脂濃度が1.0から±0.1程度の範囲となった場合に、均一状態と判断してもよい。
なお、
図5に示す値は一例であり、廃樹脂濃度の値や濃度分布の傾向はこの限りではない。
上述の方法により、濃度計19は、吸込管9の断面方向における廃スラッジ20の流束分布や濃度分布に片寄りがなく、廃スラッジ20の流れに均一性(一様性)があるかどうかを測定することができる。
【0039】
また、濃度計19は、ポンプ11よりも上流側に配置される。ポンプ11によって吸込管9内の廃スラッジ20に圧力等の外力が加わるため、廃スラッジ20の流れの状態、廃スラッジ20の濃度分布が、貯蔵容器5内の廃スラッジ20と異なる様子になる。このため、濃度計19をポンプ11の上流側に配置することにより、貯蔵容器5内と同じ状態の廃スラッジ20の濃度分布を吸込管9において測定することができる。
【0040】
また、廃スラッジ抜出し装置1では、濃度計19とポンプ11が配線16で接続されている。このため、ポンプ11は、濃度計19の信号を基に出力が制御され、濃度計19の信号を基に貯蔵容器5の廃液7と廃樹脂8の撹拌に必要な、廃スラッジ20の循環量を調整することができる。
【0041】
[廃スラッジ抜出し方法;廃スラッジの抜出し]
濃度計19において、吸込管9の断面方向における廃スラッジ20の流速分布や濃度分布に片寄りが無く、吸込管9内の廃スラッジ20の流れに一様性が確認された後、
図6に示すように、廃スラッジ20を抜出す。
廃スラッジ20の抜出しは、第3の弁18を開放することによって行う。第3の弁18は、配線16によって濃度計19およびポンプ11に接続されている。このため、濃度計19において吸込管9内の廃スラッジ20の流れに一様性が確認された信号が、配線16を伝送されて第3の弁18に送達される。この信号を受けて第3の弁18が開放される。また、第3の弁18を開放した場合にも、第2の弁15は開放した状態を維持し、第1の弁3は閉鎖した状態を維持する。
【0042】
第3の弁18が開放されることにより、
図3において廃スラッジ20の流れを示す矢印13で示すように、廃スラッジ20の循環経路から、一部の廃スラッジ20が第3の吐出管17に移送される。すなわち、貯蔵容器5から、吸込管9、ポンプ11、および、第1の吐出管12に移送された廃スラッジ20が、1の吐出管12から第2の吐出管14と第3の吐出管17とに分岐される。そして、第2の吐出管14側に移送される廃スラッジ20は、廃スラッジ抜出し装置1と貯蔵容器5とを循環する。第3の吐出管17側に移送される廃スラッジ20は、廃スラッジ抜出し装置1から抜出される。
このように、第2の弁15と第3の弁18とを開放することにより、廃スラッジ20を循環させながら抜出すことができる。
【0043】
また、廃スラッジ20の抜出しでは、濃度計19によって、吸込管9の廃スラッジ20の濃度、廃液7と廃樹脂8の濃度、流速分布等を監視しながら、吸込管9の流量を一定に保つように、ポンプ11の回転数を制御する。これは、濃度計19において吸込管9内の廃スラッジ20の濃度や流束の均一性を確認し、濃度計19からポンプ11に信号を送ることにより、ポンプ11の出力や回転数が制御される。
例えば、廃スラッジ20の濃度や流束の均一性が良好な場合には、濃度計19からポンプ11に、出力を高めるように信号を送信する。ポンプ11の出力を高めることにより、循環させる廃スラッジ20の量、および、抜出される廃スラッジ20の量が増加する。このため、貯蔵容器5内でより廃スラッジ20の撹拌速度が高まり、より均一な廃液7と廃樹脂8との混合が得らえる。さらに、廃スラッジ20の抜出し量を多くすることができ、廃スラッジ20の抜出しにかかる時間を短くすることができる。
また、廃スラッジ20の流束の均一性が低下している場合には、廃スラッジ20の濃度分布の状態に応じてポンプ11の出力を調整するように信号を送信する。そして、ポンプ11の出力を高めるか、又は、下げることにより、循環する廃スラッジ20の量や、貯蔵容器5内に吐出される廃スラッジ20の流速を調整し、貯蔵容器5内の廃スラッジ20の撹拌状態を調整する。
【0044】
以上の廃スラッジ抜出し方法により、廃スラッジ20を濃度計19で監視しながら、吸込管9が廃スラッジ20で閉塞しない濃度、かつ、放射能の濃度が許容値以下になるように貯蔵容器5の廃液7の量を調整することができる。そして、吸込管9、ポンプ11、第1の吐出管12、第2の吐出管14、撹拌ノズル4、および、エダクタ6で構成される廃スラッジ20の循環経路を構成することができる。このため、貯蔵容器5内を撹拌するための廃スラッジ20の量を確保しつつ、貯蔵容器5から抜出される廃スラッジ20の量を、ポンプ11の出力で調整することができる。
【0045】
また、濃度計19において、吸込管9内の廃スラッジ20の濃度を測定するとともに、廃スラッジ20の流れの一様性(濃度分布、流速分布)を測定する。この濃度計19において廃スラッジ20の流れの一様性が確認されるまで、廃スラッジ20の循環による貯蔵容器5内の廃スラッジ20の撹拌を継続する。この結果、貯蔵容器5内の全体にわたって、廃スラッジ20が均一に混合できるため、吸込管9の入口でも均一な混合状態の廃スラッジ20が吸い上げられる。このため、吸込管9、および、吐出管の内部で粘性が高くなる部分は生ず、管内での廃スラッジ20の閉塞を抑制することができる。
そして、廃スラッジ20の抜出し中も、貯蔵容器5内を撹拌するための廃スラッジ20の量を確保することができ、貯蔵容器5内で均一に混合された状態の廃スラッジ20を、継続的に抜出すことができる。
【0046】
[廃スラッジ抜出し方法;変形例]
次に、上述の廃スラッジ抜出し方法の変形例について説明する。
図7に、廃スラッジ抜出し方法の変形例に適用可能な廃スラッジ抜出し装置30を示す。
図7に示す廃スラッジ抜出し装置30は、上述の
図1に示す廃スラッジ抜出し装置1とは、注入管2の入口側、および、第3の吐出管17の出口側の構成のみが異なる。このため、
図7に示す廃スラッジ抜出し装置30では、
図1に示す廃スラッジ抜出し装置1と共通の構成については説明を省略する。
【0047】
図7に示す廃スラッジ抜出し装置30は、第3の吐出管17の下流側に、脱水機24が接続されている。脱水機24は、例えば、遠心、機械的圧搾、空気加圧等の方法によって廃スラッジ20の脱水を行う装置を用いることができる。このため、第1の吐出管12から第3の吐出管17に移送された廃スラッジ20は、脱水機24に排出される。脱水機24は、廃スラッジ20を脱水することで、廃スラッジ20を再び廃液7と廃樹脂8とに分離する。廃スラッジ20から分離された廃樹脂8は、脱水機24から抜出され、減容固化処理や焼却処理等の処理が行われる。
【0048】
脱水機24で分離された廃液(以降、分離廃液31)は、脱水機24の下部に接続された配管25を通り、廃液貯蔵容器26に送られる。廃液貯蔵容器26は、脱水機24から移送され分離廃液31が保管されている。
また、廃液貯蔵容器26の下部には、第2の吸込管27の一方の端部が接続されている。また、第2の吸込管27の他方の端部は、送水機28の吸込み側に接続されている。送水機28の吐出側には、第4の吐出管29の一方の端部が接続されている。また、第4の吐出管29の他方の端部は、注入管2の上流側に接続されている。第4の吐出管29は、注入管2の第1の弁3よりも上流側に接続されている。
【0049】
送水機28は、例えば、ターボポンプや加圧機によって構成される。送水機28は、配線16によって濃度計19に接続されている。このため、送水機28は、濃度計19の信号を基に出力が制御される。この濃度計19からの信号による送水機28の出力の制御は、上述の濃度計19からの信号によるポンプ11の制御と同様に行われる。
【0050】
上記構成により、吸込管9、ポンプ11、第1の吐出管12、第3の吐出管17、脱水機24、配管25、廃液貯蔵容器26、第2の吸込管27、送水機28、第4の吐出管29、注入管2、撹拌ノズル4、および、エダクタ6で構成される循環経路が形成される。循環経路では、吸込管9、ポンプ11、第1の吐出管12、第3の吐出管17、および、脱水機24への投入までは、廃液7と廃樹脂8とが混合した廃スラッジ20が移送される。そして、脱水機24の出口から、配管25、廃液貯蔵容器26、第2の吸込管27、送水機28、第4の吐出管29、注入管2、撹拌ノズル4、および、エダクタ6までは、た廃スラッジ20から廃樹脂8が除去された分離廃液31が移送される。
【0051】
この循環経路において、貯蔵容器5から吸込管9への廃スラッジ20の吸い込み量は、ポンプ11の出力によって調整される。また、エダクタ6から貯蔵容器5への分離廃液31の吐出量は、送水機28の出力によって調整される。
循環経路では、第2の吐出管14の第2の弁15を閉鎖し、第1の弁3と第3の弁18を開放した状態で、ポンプ11を駆動することにより、貯蔵容器5内の廃スラッジ20が、吸込管9に吸い上げられる。そして、第1の吐出管12、および、第3の吐出管17を経由して脱水機24に廃スラッジ20が移送される。
また、第1の弁3を開放した状態で、送水機28を駆動することにより、廃液貯蔵容器26内に保管された分離廃液31が、第2の吸込管27、第4の吐出管29、注入管2、撹拌ノズル4、および、エダクタ6を経由して貯蔵容器5に移送される。
【0052】
上記構成の装置を用いた廃スラッジ抜出し方法では、上記の循環経路を用いることにより、外部からの水の供給に替えて、廃液貯蔵容器26内の分離廃液31を用いて貯蔵容器5内の廃スラッジ20の濃度を調整することができる。分離廃液31は、元々が他の貯蔵容器5内に貯蔵された廃液であるため、外部からの注水による廃液7の増加が起こらない。この結果、廃スラッジの抜出しにおいて、汚染水の発生量を抑制することができる。
なお、廃液貯蔵容器26内に十分な量の分離廃液31が保管されていない場合には、外部から水の注入を行ってもよい。例えば、廃液貯蔵容器26に外部から注水することにより、廃液貯蔵容器26内に十分な水量を確保する。この場合でも、廃液貯蔵容器26内の分離廃液31の分だけ汚染水の発生量を抑制することができる。
【0053】
また、上記構成の循環経路を用いることにより、廃液7を循環させてエダクタ6から貯蔵容器5内に吐出することができる。ここで、循環される廃液7は、脱水機24までは廃スラッジ20の形態であり、脱水機24以降は分離廃液31の形態で移送される。このとき、送水機28の出力を調整することにより、エダクタ6から貯蔵容器5に供給される分離廃液31の流量や流速等を制御することができる。このため、エダクタ6から貯蔵容器5内に吐出される分離廃液31によって、貯蔵容器5を撹拌し、廃液7と廃樹脂8とを均一に混合することが可能となる。
なお、廃液貯蔵容器26内に十分な量の分離廃液31が保管されていない場合には、第2の弁15を開放することにより、貯蔵容器5内の廃スラッジ20を循環させて、エダクタ6から貯蔵容器5内に廃スラッジ20を吐出させてもよい。この場合、ポンプ11の駆動によって第1の吐出管12から第3の吐出管17へ移送される廃スラッジ20の一部を、第2の吐出管14側へ移送する。そして、第2の吐出管14と撹拌ノズル4との接続部で、注入管2側から移送される分離廃液31に、第2の吐出管14からの廃スラッジ20を合流させ、撹拌ノズル4、および、エダクタ6から、分離廃液31と廃スラッジ20の混合液を貯蔵容器5内に吐出してもよい。
【0054】
また、濃度計19の信号を基に送水機28の出力を制御することにより、貯蔵容器5の廃液7と廃樹脂8の撹拌に必要な分離廃液31の量を制御することができる。
例えば、貯蔵容器5内の廃液7の撹拌が小さく、濃度計19で測定される吸込管9内の廃樹脂8の濃度が高くなる場合には、吸込管9が廃樹脂8で閉塞しやすい状況になる。この場合、濃度計19から送水機28に対して、測定した廃スラッジ20の濃度を基に、出力の増加を指示する信号を送信する。送水機28は、濃度計19からの信号を受けて、出力を上げることで第4の吐出管29内の分離廃液31の流量を増加させる。これにより、撹拌ノズル4、および、エダクタ6から貯蔵容器5に吐出される分離廃液31の流量、流速を大きくし、貯蔵容器5内での廃液7および廃樹脂8の撹拌速度、混合速度を高めることができる。この結果、吸込管9の閉塞を防止することができる。
【0055】
一方、貯蔵容器5内の廃液7と廃樹脂8の撹拌が大きく、濃度計19で測定される吸込管9内の廃樹脂8の濃度が低い場合、廃樹脂8の抜出し量が少なく時間効率が悪くなる。この場合、濃度計19から送水機28に対して、測定した廃スラッジ20の濃度を基に、出力の低下を指示する信号を送信する。送水機28は、濃度計19からの信号を受けて、出力を下げることで第4の吐出管29内の分離廃液31の流量を低下、または、停止させる。これにより、撹拌ノズル4、および、エダクタ6から貯蔵容器5に吐出される分離廃液31の流量、流速を小さくし、貯蔵容器5内での廃液7および廃樹脂8の撹拌速度、混合速度を低下させることができる。このとき、貯蔵容器5内の廃スラッジ20の循環による貯蔵容器5内への廃スラッジ20の吐出は継続してもよい。この結果、吸込管9の入口での廃樹脂8の濃度を高くすることができ、廃樹脂8の抜出し量を増加させることができる。
【0056】
上述の各廃スラッジ抜出し方法によれば、貯蔵容器5内の全体にわたって、廃スラッジ20が均一に混合され、吸込管9の入口でも均一な廃スラッジ20が吸い上げられる。このため、吸込管9、第1の吐出管12、第2の吐出管14、および、第3の吐出管17の内部で、廃スラッジ20の粘性が高くなる部分が生じず、各管内での閉塞の発生を抑制することができる。従って、上記廃スラッジ抜出し方法により、滞りなく廃スラッジを抜出すことができる。
また、上述の各廃スラッジ抜出し方法によれば、貯蔵容器5の外部からの水供給を少なくできる、または、廃液7を循環させることにより、汚染水量の低減または一定に保つことができる。
【0057】
なお、上述の実施形態の廃スラッジ抜出し方法では、注入管2と、第2の吐出管14とを同じ撹拌ノズル4に接続し、貯蔵容器5への外部からの注水と、廃スラッジ20の供給を同じ管を用いているが、これは別の配管を用いてもよい。例えば、第2の吐出管14の出口を貯蔵容器5の廃液7の液相内に設けることにより、第2の吐出管14から直接貯蔵容器5内に廃スラッジ20を供給してもよい。この場合には、外部から注水される撹拌ノズル4とは別の配管によって、廃スラッジ20の循環が貯蔵容器5と廃スラッジ抜出し装置30とを循環する構成となる。
また、廃スラッジ抜出し方法の変形例では、第2の吐出管14と、第4の吐出管29とを同じ撹拌ノズル4に接続し、貯蔵容器5への廃スラッジ20の供給と、分離廃液31の供給を同じ管を用いているが、これは別の配管を用いてもよい。例えば、第4の吐出管29の出口を貯蔵容器5の廃液7の液相内に設けることにより、第4の吐出管29から直接貯蔵容器5内に分離廃液31を供給してもよい。この場合には、廃スラッジ20の貯蔵容器5と廃スラッジ抜出し装置30と循環に用いられる撹拌ノズル4とは別の配管によって、分離廃液31が貯蔵容器5に供給される構成となる。
【0058】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,30 廃スラッジ抜出し装置、2 注入管、3 第1の弁、4 撹拌ノズル、5 貯蔵容器、6 エダクタ、7 廃液、8 廃樹脂、9 吸込管、10,13 矢印、11 ポンプ、12 第1の吐出管、14 第2の吐出管、15 第2の弁、16 配線、17 第3の吐出管、18 第3の弁、19 濃度計、20 廃スラッジ、24 脱水機、25 配管、26 廃液貯蔵容器、27 第2の吸込管、28 送水機、29 第4の吐出管、31 分離廃液、r1,r2,r3,r4,r5 サンプリング点